
2024年 日本
監督: 白石和彌
出演:
山田孝之:政
仲野太賀:鷲尾兵士郎
尾上右近:赤丹
鞘師里保:なつ
佐久本宝:ノロ
千原せいじ:引導
岡山天音:おろしや
松浦祐也:三途
一ノ瀬颯:二枚目
小柳亮太:辻斬
本山力:爺っつぁん
野村周平:入江数馬
音尾琢真:仙石善右エ門
玉木宏:山縣狂介
阿部サダヲ:溝口内匠
ゆりやんレトリィバァ:村娘
<シネマトゥデイ>
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『日本侠客伝』『仁義なき戦い』シリーズなどを手掛けた脚本家・笠原和夫のプロットを原案に描くアクション時代劇。江戸幕府から明治政府へと政権が移り変わろうとしていた戊辰戦争の最中、新発田藩(現・新潟県新発田市)で起きた抗争を映し出す。監督を手掛けるのは『碁盤斬り』などの白石和彌。『ステップ』などの山田孝之、『泣く子はいねぇが』などの仲野太賀が主演を務める。
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幕末、戊辰戦争が始まった頃の新潟、新発田藩。主人公となる政は妻・さだが藩士に手ごめにされたと知って激怒し、相手の隙をついて襲い、刺殺する。政は捕えられて死罪を宣告され磔にされる。処刑を待つ間、花火師の息子で知的障害のあるノロは、磔にされた政を見て兄だと勘違いし彼を助けようとするが失敗し、ともに牢獄へ入れられてしまう。
その頃、新発田藩の上層部では官軍につくか、奥羽越列藩同盟につくかの選択を迫られている。若殿・溝口直正はまだ若く、家老の溝口内匠はどちらにつくかの判断に迷う。その迷いは奥羽越列藩同盟側にも伝わり、同盟軍の色部長門と斉藤主計は軍を引き連れて城に居座り、藩主に目通りを求めて圧力をかけてくる。
しかし、この時点で藩主は官軍につく事を宣言しており、ギリギリまで態度を曖昧にしたい溝口は同盟軍に藩主は病気だと偽って時間稼ぎをする。斎藤たちには同盟軍のために兵を出すと言いつつ、その裏では官軍の山縣狂介に同盟軍が城から出て行ったら新発田藩は無血開城して官軍に協力すると二股外交を試みる。
溝口は忠義に厚い鷲尾兵士郎に藩境の重要な砦を官軍から守る任務を与える。同盟軍が城から出ていくまでの間、官軍を食い止めるのである。鷲尾は死刑囚を決死隊として連れていく事になる。死刑囚たちには、同盟軍が出て行ったら狼煙が上がるので、それまで持ち堪えたら無罪放免にするという餌を与える。
兵士郎と入江数馬が率いる決死隊は10人。政もその1人に選ばれる。砦には同盟の旗を掲げ、官軍には同盟が行く手を阻んでいるように見せかける。そこへ水本正虎と弟の正鷹率いる官軍先遣隊が到着する。両者の間にあるのは吊り橋のみ。まともに戦えば勝ち目はないが、吊り橋が官軍の進軍を妨げる。そして溝口の企みを知らない兵士郎は、官軍が攻めてきたと思い込んで戦いの合図を出す・・・
戊辰戦争で、官軍と奥羽越列藩同盟との間で揺れる小藩である新発田藩。どうやって生き残るか、幕僚たちは苦悩する。あらかじめ勝ち馬がわかっていれば問題ないが、下手に負け馬に加担すれば藩が崩壊する。そんなトップと最前線では死刑囚たちが命をかけて藩境の砦を死守する様子が描かれる。決死隊内も疑心暗鬼があり、一枚岩とは言えない。藩の利益よりも自分の利益が優先される。
この時期のこの地域については、奥羽列藩同盟から描いた映画『峠 最後のサムライ』(My Cinema File 2898)が記憶に新しい。勝ち馬に乗ろうとどっちつかずの態度を取り、せこい時間稼ぎをする新発田藩の様子は、『峠 最後のサムライ』(My Cinema File 2898)の長岡藩から比べると武士らしくない。されど力の弱い小藩にとっては、やむを得ない対応なのかもしれない。
映画の内容はほとんどフィクションなのだろうが、面白おかしく決死隊の様子を描いていく。大義のためよりも自分のためにやむなく戦う罪人たちだが、互いに命をかけて戦ううちに違う感情が芽生えてくる。大義も立場によって微妙に異なる。罪人たちにも家族がいて守るものがある。物語は史実はともかくとして、あつい戦いを繰り返す。この時代、理不尽を嘆いても仕方がなかったのかもしれない。
激動の時代だから、人間の熱い思いが溢れるのかもしれない。両サイドから観るという事で、『峠 最後のサムライ』(My Cinema File 2898)と併せて観るのもいいかもしれない映画である・・・
評価:★★☆☆☆