2025年09月28日

【首】My Cinema File 3069

首.jpg
 
2023年 日本
監督: 北野武
出演: 
ビートたけし:羽柴秀吉
西島秀俊:明智光秀
加瀬亮:織田信長
中村獅童:難波茂助
木村祐一:曽呂利新左衛門
遠藤憲一:荒木村重
勝村政信:斎藤利三
寺島進:般若の佐兵衛
桐谷健太:服部半蔵
浅野忠信:黒田官兵衛
大森南朋:羽柴秀長
六平直政:安国寺恵瓊
大竹まこと:間宮無聊
津田寛治:為三
荒川良々:清水宗治
寛一郎:森蘭丸
副島淳:弥助
小林薫:徳川家康
岸部一徳:千利休

<シネマトゥデイ>
********************************************************************************************************
『アウトレイジ』シリーズなどの北野武監督が自身の小説を原作に、本能寺の変を描く時代劇。北野監督が脚本などのほか羽柴秀吉役も務め、天下取りを狙う織田信長、徳川家康、さらに明智光秀ら戦国武将たちの野望を映し出す。『ドライブ・マイ・カー』などの西島秀俊、『それでもボクはやってない』などの加瀬亮のほか、中村獅童、浅野忠信、大森南朋、遠藤憲一らがキャストに名を連ねる。
********************************************************************************************************

天正6年、織田家臣・荒木村重が突如謀反を起こしたところから物語は始まる。孤軍奮闘の村重は、反織田勢力である毛利の援軍を頼りにしていたものの、ついに援軍が送られることはなく、立て篭もる有岡城は落城する。しかし、張本人の村重は城を抜け出して逃げおおせてしまう。この事態に信長は激怒。かくなる上は、1番功績のあった人間を跡取りにすると羽柴秀吉、明智光秀、丹羽長秀、滝川一益ら一同に宣言し、光秀に村重の追跡を命じる。

さらに信長は裏切った村重への制裁のため、村重の家臣や親族を女子どもを含め全員斬殺する。追跡を命じられた光秀だが、もともと村重と親交があったため、織田家中では村重の謀反に関わっているとも噂され、光秀は窮地に立たされる。ところが当の村重は抜け忍の曽呂利新左衛門によって捕らえられてしまう。それと知らぬ光秀は千利休の茶会に招かれ、その場で村重を引き渡される。光秀は村重を亀山城へ連れ帰り、密かに匿うことにする。

一方、曽呂利からその情報を得た秀吉は、曽呂利を召し抱える代わりに遂行不可能と思える二つの命令を下す。曽呂利は旅の途中で、首級を挙げた友人を殺害し侍大将に成り上がろうとした農民・茂助を仲間に加えると、かつて自身が抜けた忍びの里・甲賀に立ち寄る。そこは光源坊という不気味な男が仕切るところ。曽呂利は信長が信忠に送った密書を買い取るという任務を完遂し、次に亀山城に忍び込んで光秀と村重の肉体関係を目撃する。しかし、光秀は間者の存在に気づき、間者が甲賀の人間であると知ると里を襲撃して光源坊を含む里の人間全てを殺害する。

秀吉のもとに戻った曽呂利は、密書を秀吉に見せる。そこには信長が家臣に家督を継がせる気など毛頭なく、信忠に継がせた上で邪魔な家臣を殺害するように記されており、秀吉は激怒する。一方、秀吉の軍師・黒田官兵衛は逆に光秀と密書を利用してある計略を思いつき、秀吉に進言する。秀吉はその計略の実行を命じる。その頃、光秀は村重を匿いつつ、彼を追う任務をしている振りをする危うさから、村重が徳川家康のもとに逃げ込んだように見せかける策を村重自身から提案される・・・

世は織田信長が破竹の勢いで勢力を伸ばしている時代。中心となるのは羽柴秀吉と明智光秀。冒頭から荒木村重の反乱が波乱を加え、村重と光秀とが男色関係にあることが描かれる。信長と森蘭丸との男色関係は知られているが、村重と光秀との関係は創作だろうと思う。それにしてもこの映画では信長が魔王として狂気の様が描かれる。短刀に饅頭を刺し、それを村重に食べさせる。刃が口の中に入っているにもかかわらず、それをひねるので饅頭を加えた村重の口は血だらけになる。

信長は反乱を起こした村重の一族郎党を女子供も含めて見せしめのために殺害する。『レジェンド&バタフライ』(My Cinema File 3051)では、ちょっとドジなところもあるいい男に描かれていたが、この映画ではただの狂人。いろいろな解釈があっていいと思うが、ちょっと振れすぎているようにも思う。様々な登場人物が入り乱れる物語。この時代、相手の首を上げることが手柄になったため、競って殺した敵の首を切り落とす。極めて残酷なのであるが、やはり野蛮な時代であったと言えるのだろう。

いろいろな映画やドラマや小説などで描かれてきた歴史上の戦国武将たちのまた別の解釈の物語。基本的な史実は変わらないが、人物像などは解釈によって随分と異なる。たけし監督ならではの解釈なのであろうが、それぞれ独自の解釈を楽しみたい。個人的には遠藤憲一演じる荒木村重が異彩を放っていてユニークであった。これはこれとして楽しめた映画である・・・


評価:★★☆☆☆








posted by HH at 00:00| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 時代劇/西部劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年09月13日

【この茫漠たる荒野で】My Cinema File 3062

この茫漠たる荒野で .jpg

原題: News of the World
2020年 アメリカ
監督: ポール・グリーングラス
出演: 
トム・ハンクス:ジェファソン・カイル・キッド大尉
ヘレナ・ゼンゲル:ジョハンナ
マイケル・アンジェロ・コビーノ:アルメイ
レイ・マッキノン:サイモン
メア・ウィニンガム:ドリス
エリザベス・マーベル:ガネット夫人
フレッド・ヘッキンジャー:ジョン
ガブリエル・イーバート:ファーリー

<シネマトゥデイ>
********************************************************************************************************
南北戦争後のアメリカを舞台に、退役軍人の男と少女の過酷な旅を描いたドラマ。ポーレット・ジルズのベストセラー小説を原作に、『キャプテン・フィリップス』などのポール・グリーングラスが監督、『LION/ライオン〜25年目のただいま〜』などのルーク・デイヴィスが共同で脚本を手掛けた。オスカー俳優トム・ハンクスが主演を務め、彼と共に旅する少女をヘレナ・ゼンゲルが演じるほか、エリザベス・マーヴェル、レイ・マッキノン、メア・ウィニンガムらが共演する。
********************************************************************************************************

時は1870年、所はテキサス州北部のウィチタフォールズ。主人公のジェファソン・カイル・キッドは元南軍兵士であり、今もなお「大尉」と自らを称している。各地を回って新聞の最新ニュースを読み伝える“講話会”を催している。1人10セントで誰でも聴講できるものであるが、まだメディアが未発展のこの時代ならではの職業である。ウィチタフォールズでの講話を終えて次の街へ移動する途中、ジェファソンは何者かに襲われた馬車を発見する。

緊張しつつ辺りを探ると、“テキサスは白人の地だ”と書かれた貼り紙をされた黒人が木に吊るされている。さらに周辺を捜索したキッドは、白人の少女をみつけて保護しようとするが、言葉が通じない。所持品を確認するとアメリカ先住民族管理局の書類がみつかり、少女の名は“ジョハンナ・リオンバーガー”ということがわかる。そして連邦局によって親類の家に行くために連れられている途中だったとわかる。

そこに北軍中隊が通りかかるが、少女の処遇に関してはキッドに一任して去ってしまう。行きがかり上、ジェファソンはジョハンナをレッドリバーの陸軍局まで連れて行くことになる。もともとジョハンナはカイオワ族に襲われて家族を殺害され連れ去られていたが、軍がカイオワ族を討伐した時に保護されたのである。おまけにジョハンナはカイオワ族と暮らしていたため、カイオワ語しか話せない。ジェファソンはジョハンナをレッドリバーの陸軍局に連れて行くが、担当官が出張で3カ月戻らないため、ジェファソンが自らジョハンナを親類の家に送り届けることにする。

当時は馬で移動するしかない時代。知人に馬車を用意してもらいジェファソンはジョハンナと旅に出る。ジョハンナとは言葉が通じず、コミュニケーションがとれない。途中、ダラスの街でなじみの宿の女将エマのところに寄ったジェファソンは、カイオワ語がわかるエマの通訳で自分の名前は“シカダ”であり、家は兵士に焼かれカイオワの家族は殺されたと語る。ジョハンナには叔母がいるが、叔母が住むカストロヴィルまでは長い道のり。その夜、ジェファソンはジョハンナを伴い講話会を開くが、終わった後ジョハンナを売ってほしいと男がつきまとってくる・・・

その昔、西部劇と言えばガンファイトがメインであったが、最近は人間ドラマに比重が置かれている。この物語も同様、偶然出会った薄幸な少女を主人公が唯一の身内である叔母の家に届ける役目を自ら引き受ける物語。偶然拾ってレッドリバーの陸軍局に届け、そのまま置いてくれば主人公も十分役割を果たしたと言える。しかし、担当者が不在で3カ月も待たなければならないという状況で、それだけの期間放置するのは忍びなかったのであろう、ジェファソンは自ら送り届ける役目を買って出る。南北戦争によって運命を狂わされたということもあるが、ジェファソンは優しい男である。

当時の西部は無法地帯とも言える。ジョハンナに目をつけた男たちに狙われ、この物語で唯一のガンファイトに発展する。それにしてもよくある「正義の味方が無敵の強さを発揮する」というのとは程遠く、友人が持たせてくれた銃と20発の弾丸で迎え撃つことになる。もともと持っていたライフルは鳥撃ち用で殺傷力がない。まだ元南軍兵士に対する警戒感が強い世の中であることがさらりと描かれる。絶体絶命のピンチを救ったのがジョハンナの機転。何とか連携プレイで3人の悪党を倒して窮地を脱する。

旅をする中で、お互いに英語とカイオワ語を教え合う2人の姿は心打たれるものがある。まだ世の中全体が貧しく、みんな自分のことで精一杯である事が伺われる。さらにイーラス郡にたどり着くと、そこでは次の危機が待っている。現代のアメリカはなぜ銃社会で、なぜそれを解消できないのか。そこには西部の無法地帯を自らの銃で身を守ってきた歴史があるのだろうとは思うが、この映画を観ていると一層その感が強くなる。互いに助け合えればいいのだが、アングロサクソンは基本他人を見れば敵と思えという文化が強いように思う。

弱肉強食の世界でジェファソンはジョハンナを連れ、旅をする。今では数時間の距離を何日もかけて。心がすさむような現実の世界で、唯一の救いはジェファソンとジョハンナの交流だろうか。血のつながらない2人が実の父娘のようになっていく。ジェファソンは従軍中に妻を亡くし、ジョハンナは相対立する白人とカイオワ族との間で2つの家族を失う。砂嵐に遭遇した2人を助けたのはカイオワ族というのも何とも言えない。西部は白人の侵略の地でもあるという事を強く感じる。世界を血みどろに彩ってきたのは、アングロサクソンである。

主演はトム・ハンクス。数々の名作に主演してきており、その主演作を観ずして映画は語れない感がある。ラストで新聞のニュースを伝える講話会を2人で行う姿が胸を打つ。ガンファイトではなく、人間ドラマを見せる西部劇が今の西部劇。そんな現在の胸を打つ西部劇である・・・


評価:★★★☆☆








posted by HH at 00:00| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 時代劇/西部劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年08月16日

【レジェンド&バタフライ】My Cinema File 3051

レジェンド&バタフライ.jpg
 
2023年 日本
監督: 大友啓史
出演: 
木村拓哉:織田信長
綾瀬はるか:濃姫(帰蝶)
宮沢氷魚:明智光秀
市川染五郎:森蘭丸
和田正人:前田犬千代(前田利家)
高橋努:池田勝三郎(池田恒興)
斎藤工:徳川家康
北大路欣也:斎藤道三
本田博太郎:織田信秀
尾美としのり:平手政秀
音尾琢真:木下藤吉郎(羽柴秀吉)
伊藤英明:福富平太郎貞家
中谷美紀:各務野

<シネマトゥデイ>
********************************************************************************************************
『HERO』シリーズなどの木村拓哉が戦国・安土桃山時代の武将・織田信長を、『奥様は、取り扱い注意』シリーズなどの綾瀬はるかが正室・濃姫を演じる時代劇。大うつけと呼ばれた若き日の信長が、尾張国と敵対する美濃国の濃姫と政略結婚をし、やがて天下統一を目指す。監督を『るろうに剣心』シリーズなどの大友啓史、脚本を『コンフィデンスマンJP』シリーズなどの古沢良太が担当する。
********************************************************************************************************

織田信長は歴史上でも極めて目立つ存在であり、いろいろな形で映画でも描かれている。今さら感は強いのであるが、演じるのがキムタクで、さらに綾瀬はるかが共演とあれば興味をそそられるというもの。そんなわけで鑑賞に至る。

時に1549年、織田信長はまだ尾張の国を治める織田信秀の嫡男として自由奔放に暮らしている。そんな中、父信秀は「マムシ」と呼ばれる美濃の斎藤道三と和平を結ぶため、信長と斎藤道三の娘・濃姫との縁談をまとめる。婚姻の日、野放図に振る舞う信長は妻となった濃姫に酌や肩を揉むことを命じるが、気の強い濃姫は毅然とした態度を取り、織田家と婚姻を結んだのはあくまでも斎藤道三が尾張を乗っ取るためだと言い放つ。この言い分に怒った信長は濃姫を手打ちにしようとするが、武芸に長けた濃姫は信長を組み伏せてしまう。

これまでのイメージとは異なるスタート。ふたりの関係は険悪なまま進んだある日、信長は鷹狩りに行くが、濃姫が同行することになり、あろう事か獲物の大きさを競い合うことになる。ここでも濃姫は圧倒的な腕前を見せ、逆に焦る信長は足を踏み外し崖から落ちて濃姫に助けられる事になる。崖上で美濃には無かった海を初めて見た濃姫は、いずれ海の向こうにある異国に行ってみたいと信長に気持ちを吐露する。これがラストの伏線となる。現実的に歴史的にはあり得ないストーリー展開だが、これはこれとして観ていく。

1556年、斎藤道三は息子の斎藤義龍に謀反を起こされ長良川の戦いで討ち死にする。父の死により濃姫の立場も変わり、織田家に「人質」として惨めな扱いをされるくらいならばと自刃を試みるが、信長はそれを止め、「人質」ではなく「妻」であると言い渡す。そして運命の1560年、駿河一帯を治める今川義元が尾張に侵攻してくる。混乱の渦中に陥った織田家の中で、濃姫は侍女の各務野から城を捨て落ち延びるようにと勧められるが、濃姫はひとり信長のもとを訪れ、立ち尽くす信長に喝を入れ、2人は取るべき戦略を議論し合う。

そして信長は、濃姫の提案する「桶狭間」での奇襲作戦を実行することを決める。濃姫は侍従の貞家に今回の作戦はあくまでも信長がひとりで決めたことにするようにくぎを刺す。信長は桶狭間で見事今川を討ち取り、その勢いのままに美濃へと攻め込み、斎藤義龍を討ち取ると濃姫に所領を与える。それは濃姫の生まれ育った故郷であり、さらに信長は美濃を岐阜と改める。この快進撃に目をつけたのは室町幕府再興を目指す足利義昭。協力を求められるが、それは多くの大名を敵に回すことでもあり、信長は逡巡するが、濃姫はその背中を力強く押す・・・

これまでの信長のイメージとは異なり、濃姫の後押しで成功を成し遂げていく信長。上京した信長は濃姫を連れてお忍びで京の街を歩く。金平糖を買ったりスリを追いかけて行った先で濃姫が浮浪者に襲われたことで大乱闘となる。あり得ない展開ではあるが、それはそれとして楽しめば楽しめる。この映画は「信長の野望」というよりも信長と濃姫とのロマンスドラマという側面を強くしていく。それでも歴史は歴史、比叡山延暦寺を焼き討ちし、女子供を含めた皆殺しを家臣団に命令する。人のすることではないと家臣の忠言を受けるが、嬉々として名乗りをあげたのは明智光秀であった・・・

ロマンスドラマとしての色を濃くしていくが、歴史はその先に本能寺があることを知っている。そこにどのように向かっていくのかが後半の見どころとなる。史実にこだわるとこの映画はあまり面白くないだろう。しかしながら、史実は史実としてドラマを楽しむのであればこれはこれで面白い。光秀が信長を裏切る経緯もそれらしく描かれており、違和感はない。ラストに描かれる信長と濃姫は史実はともかくとして幸せな夫婦そのもの。それは観ていて心地良い。これまでのイメージとは異なる物語は、これはこれでいいと思える。

織田信長だからこうでなくてはならないとは思わない。特に本能寺で覚悟を決めた信長の意外な行動には意表を突かれたし、エンタメとしては面白かったと言いたい。こういう時代劇もいいなと思える一作である・・・


評価:★★☆☆☆








posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 時代劇/西部劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年07月12日

【最後の忠臣蔵】My Cinema File 3032

最後の忠臣蔵.jpg
 
2010年 日本
監督: 杉田成道
原作
池宮彰一郎
出演: 
役所広司:瀬尾孫左衛門
佐藤浩市:寺坂吉右衛門
桜庭ななみ:可音
安田成美:ゆう
笈田ヨシ:茶屋四郎次郎
山本耕史:茶屋修一郎
伊武雅刀:進藤長保
風吹ジュン:きわ
田中邦衛:奥野将監
片岡仁左衛門:大石内蔵助

<映画.com>
********************************************************************************************************
TVシリーズ「北の国から」を手がけた杉田成道が、池宮彰一郎の人気小説を役所広司、佐藤浩市主演で映画化。赤穂浪士の吉良邸討ち入りで、大石内蔵助率いる46名が切腹により主君に殉じた中、密かに生き残った瀬尾孫左衛門(役所)と寺坂吉右衛門(佐藤)という2人の武士がいた。討ち入りの事実を後世に伝えるため生かされた寺坂は、事件から16年後、討ち入り前夜に逃亡した瀬尾に巡り会い、瀬尾の逃亡の真相を知る。
********************************************************************************************************

元禄15年に起こった赤穂事件、すなわち忠臣蔵は様々な形で表現されてきている。この物語も「忠臣蔵」と名打っており、当然クライマックスの討ち入りを中心とした物語かと思っていたが、この物語は、事件の後から始まる。主人公の1人は、当時伝令として動いていた寺坂吉右衛門。事件当夜、大石内蔵助からの直々の命により、自分が見聞きした赤穂事件の真実を後世に伝え、そして亡くなった浪士達の遺族を援助せよという命を受けてその場を離れる。

浪士たちはみな切腹となるが、大石内蔵助の命により生き延びることとなった寺坂吉右衛門は、長きにわたり遺族を援助する旅に出る。しかし、遺族達はバラバラに散っており、それは苦難の旅。そしていつしか事件から16年の月日が経ち、とうとう最後の一人を見つけ出す。こうして永年に渡る任務は無事に果たされ、まもなく赤穂浪士達の17回忌が執り行われるという頃、寺坂吉右衛門は法事に出席するべく京を訪れる。そこで親友であった瀬尾孫左衛門の姿を見かける。

その瀬尾孫左衛門はもう1人の主人公。当初は討ち入りのメンバーであったが、前日に突如として出奔していた。周りの者はそんな瀬尾孫左衛門のことを臆病者と考えていた。しかし、瀬尾孫左衛門と仲の良かった寺坂吉右衛門は、自分にも黙って姿を消したことにどうしても納得できないものを感じていた。その瀬尾孫左衛門は、武士という身分を捨て、古美術商として娘可音とともにひっそりと暮らしていた。その日、孫左衛門は、手に入れた希少な陶器を購入してくれそうな豪商茶屋四郎次郎を懇意にしているゆうから紹介されて訪れていた。

帰宅した孫左衛門を迎えた可音。しかし、言葉遣いから親子というより主従関係。どうやら2人に血のつながりはなく本当の父娘ではない様子である。2人はある日、町で評判の芝居を観に行く。そこで可音を見染めたのは、たまたま同じ芝居を観に来ていた豪商茶屋四郎次郎の嫡男である修一郎。それまで嫁取りに興味を示さなかった修一郎が夢中になった事から、茶屋四郎次郎は可音を妻として迎え入れることにする。ところがどこの誰かわからない。そこで知り合ったばかりだが、顔の広そうな孫左衛門に探すように依頼する。孫左衛門の胸中は複雑である。

「忠臣蔵」というタイトルはどこへやらの物語展開。なぜ討ち入り前日に孫左衛門は突然失踪したのか。瀬尾孫左衛門の性格を知る寺坂吉右衛門は、どうしても何か理由があるはずと瀬尾孫左衛門の行方を探す。可音は16歳。そして瀬尾孫左衛門と可音の関係から、何となくの理由は見えてくる。「忠臣蔵」の後日談であるが、ともに大石内蔵助に忠義を立てる瀬尾孫左衛門と寺坂吉右衛門の今も消えない友情と2人の忠義を物語は描いていく。主君の仇討ちに散った47士に対し、裏切り者の汚名を浴びてもなお忠義に生きる瀬尾孫左衛門。

主演は役所広司と佐藤浩市。役所広司は、時代劇がよく合うように思う。『清州会議』(My Cinema File 1337)の柴田勝家や『関ヶ原』(My Cinema File 2016)の徳川家康、『峠 最後のサムライ』(My Cinema File 2898)の河井継之助などどれも貫禄たっぷりである。ここでは秘めたる忠義にひたすら生きる主人公がよく似合う。佐藤浩市とともに見せる役者である。

主君に対する忠義に殉じた大石内蔵助。瀬尾孫左衛門は大石内蔵助の臣下という設定だが、瀬尾孫左衛門もまた大石内蔵助に対する忠義に殉じる。「武士道とは死ぬことと見つけたり」という「葉隠れ」の言葉が脳裏に浮かぶ。「忠臣蔵」というタイトル通りの忠義に生きた武士の物語である・・・


評価:★★☆☆☆







posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 時代劇/西部劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年03月09日

【十一人の賊軍】My Cinema File 2981

十一人の賊軍.jpg
 
2024年 日本
監督: 白石和彌
出演: 
山田孝之:政
仲野太賀:鷲尾兵士郎
尾上右近:赤丹
鞘師里保:なつ
佐久本宝:ノロ
千原せいじ:引導
岡山天音:おろしや
松浦祐也:三途
一ノ瀬颯:二枚目
小柳亮太:辻斬
本山力:爺っつぁん
野村周平:入江数馬
音尾琢真:仙石善右エ門
玉木宏:山縣狂介
阿部サダヲ:溝口内匠
ゆりやんレトリィバァ:村娘

<シネマトゥデイ>
********************************************************************************************************
『日本侠客伝』『仁義なき戦い』シリーズなどを手掛けた脚本家・笠原和夫のプロットを原案に描くアクション時代劇。江戸幕府から明治政府へと政権が移り変わろうとしていた戊辰戦争の最中、新発田藩(現・新潟県新発田市)で起きた抗争を映し出す。監督を手掛けるのは『碁盤斬り』などの白石和彌。『ステップ』などの山田孝之、『泣く子はいねぇが』などの仲野太賀が主演を務める。
********************************************************************************************************

幕末、戊辰戦争が始まった頃の新潟、新発田藩。主人公となる政は妻・さだが藩士に手ごめにされたと知って激怒し、相手の隙をついて襲い、刺殺する。政は捕えられて死罪を宣告され磔にされる。処刑を待つ間、花火師の息子で知的障害のあるノロは、磔にされた政を見て兄だと勘違いし彼を助けようとするが失敗し、ともに牢獄へ入れられてしまう。

その頃、新発田藩の上層部では官軍につくか、奥羽越列藩同盟につくかの選択を迫られている。若殿・溝口直正はまだ若く、家老の溝口内匠はどちらにつくかの判断に迷う。その迷いは奥羽越列藩同盟側にも伝わり、同盟軍の色部長門と斉藤主計は軍を引き連れて城に居座り、藩主に目通りを求めて圧力をかけてくる。

しかし、この時点で藩主は官軍につく事を宣言しており、ギリギリまで態度を曖昧にしたい溝口は同盟軍に藩主は病気だと偽って時間稼ぎをする。斎藤たちには同盟軍のために兵を出すと言いつつ、その裏では官軍の山縣狂介に同盟軍が城から出て行ったら新発田藩は無血開城して官軍に協力すると二股外交を試みる。

溝口は忠義に厚い鷲尾兵士郎に藩境の重要な砦を官軍から守る任務を与える。同盟軍が城から出ていくまでの間、官軍を食い止めるのである。鷲尾は死刑囚を決死隊として連れていく事になる。死刑囚たちには、同盟軍が出て行ったら狼煙が上がるので、それまで持ち堪えたら無罪放免にするという餌を与える。

兵士郎と入江数馬が率いる決死隊は10人。政もその1人に選ばれる。砦には同盟の旗を掲げ、官軍には同盟が行く手を阻んでいるように見せかける。そこへ水本正虎と弟の正鷹率いる官軍先遣隊が到着する。両者の間にあるのは吊り橋のみ。まともに戦えば勝ち目はないが、吊り橋が官軍の進軍を妨げる。そして溝口の企みを知らない兵士郎は、官軍が攻めてきたと思い込んで戦いの合図を出す・・・

戊辰戦争で、官軍と奥羽越列藩同盟との間で揺れる小藩である新発田藩。どうやって生き残るか、幕僚たちは苦悩する。あらかじめ勝ち馬がわかっていれば問題ないが、下手に負け馬に加担すれば藩が崩壊する。そんなトップと最前線では死刑囚たちが命をかけて藩境の砦を死守する様子が描かれる。決死隊内も疑心暗鬼があり、一枚岩とは言えない。藩の利益よりも自分の利益が優先される。

この時期のこの地域については、奥羽列藩同盟から描いた映画『峠 最後のサムライ』(My Cinema File 2898)が記憶に新しい。勝ち馬に乗ろうとどっちつかずの態度を取り、せこい時間稼ぎをする新発田藩の様子は、『峠 最後のサムライ』(My Cinema File 2898)の長岡藩から比べると武士らしくない。されど力の弱い小藩にとっては、やむを得ない対応なのかもしれない。

映画の内容はほとんどフィクションなのだろうが、面白おかしく決死隊の様子を描いていく。大義のためよりも自分のためにやむなく戦う罪人たちだが、互いに命をかけて戦ううちに違う感情が芽生えてくる。大義も立場によって微妙に異なる。罪人たちにも家族がいて守るものがある。物語は史実はともかくとして、あつい戦いを繰り返す。この時代、理不尽を嘆いても仕方がなかったのかもしれない。

激動の時代だから、人間の熱い思いが溢れるのかもしれない。両サイドから観るという事で、『峠 最後のサムライ』(My Cinema File 2898)と併せて観るのもいいかもしれない映画である・・・


評価:★★☆☆☆









posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 時代劇/西部劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする