2022年01月29日

【ドクター・スリープ】My Cinema File 2509

ドクター・スリープ.jpeg

原題: Doctor Sleep
2019年 アメリカ
監督: マイク・フラナガン
出演: 
ユアン・マクレガー:ダニー・トランス
レベッカ・ファーガソン:ローズ・ザ・ハット
カイリー・カラン:アブラ・ストーン
カール・ランブリー:ディック・ハロラン
ザーン・マクラーノン:クロウ・ダディ
クリフ・カーティス:ビリー・フリーマン

<映画.com>
********************************************************************************************************
スタンリー・キューブリック監督がスティーブン・キングの小説を原作に描いた傑作ホラー『シャイニング』の40年後を描いた続編。雪山のホテルでの惨劇を生き残り大人へと成長したダニーを主人公に、新たな恐怖を描く。40年前、狂った父親に殺されかけるという壮絶な体験を生き延びたダニーは、トラウマを抱え、大人になったいまも人を避けるように孤独に生きていた。そんな彼の周囲で児童ばかりを狙った不可解な連続殺人事件が発生し、あわせて不思議な力をもった謎の少女アブラが現れる。その力で事件を目撃してしまったというアブラとともに、ダニーは事件を追うが、その中で40年前の惨劇が起きたホテルへとたどり着く。大人になったダニーを演じるのはユアン・マクレガー。監督・脚本は「オキュラス 怨霊鏡」「ソムニア 悪夢の少年」やキング原作のNetflix映画「ジェラルドのゲーム」といった作品を手がけてきたマイク・フラナガン。
********************************************************************************************************

『シャイニング』の40年後を描いた続編ということで、興味を持って観た作品。事前に前作を観た上での鑑賞である。時に1980年のフロリダ州。湖畔のキャンプ場に遊びに来ている一家。その家の少女が1人でいるところにローズという女性が現れる。警戒感を持たない少女であるが、謎の集団が現れて少女を捕らえる。

同じころ。前作で母親と共に生き残ったダニー少年は、かつての悪夢のような体験の記憶に悩まされる日々を送っている。そんなダニーを導くのは、同じ能力“シャイニング”を持つディック・ハロラン。ディックはすでに前作の事件で殺されてしまったが、ダニーの前に姿を現している。ディックはダニーを怯えさせる悪霊対策として、頭の中に“箱”を置き、そこに悪霊を閉じ込めるのだと教える。ダニーはバスルームに出る老婆の幽霊で試して成功する。

そして40年。ダニーは成人し、ダンと名乗っている。アルコールに溺れ自堕落な生活を送っているが、そんなダニーの前にディックが現れ、正しい行いをするように諭す。一方、ロングアイランドの映画館では、他人を言葉で操る能力を持つ少女アンディが助平心を出していた親父を言葉で眠らせ財布をすり取る。それを見ていた謎の女ローズとその仲間クロウが近寄り、アンディを拉致する。そして自分たちの仲間になれば若さを保てると勧誘し、アンディは謎の儀式を受ける。

ダン(ダニー)は、バスで住み慣れた街を離れ、見知らぬ街に降り立つ。バス停近くの公園で偶然出会った男ビリーは親切な男で、住む家を紹介し、当座の家賃を立て替えてくれた上に仕事まで斡旋してくれる。その後ダンはグループカウンセリングで知り合った医師ダルトンに誘われてホスピスでも働くことになる。そこで“シャイニング”の能力を活かし、死を間近にした患者を心穏やかに息を引き取らせる。それが評判を呼び、いつの間にか“ドクター・スリープ”と呼ばれるようになる。

ある晩、自宅に戻ったダンは、黒板になっている壁に“HELLO”と書かれているのを見つけ、“Hi”と返事を書き込む。書き込んだのもダンの返事に答えたのも同じ“シャイニング”の力をもつ少女アブラ。そして不気味に活動するローズとその仲間たち。ローズたちは、少年少女たちをさらってきては、生気を吸い取っている。それでなんと不老不死を実現している。そして食事のために、ある野球少年を拉致し、ナイフで傷つけて口から出てくる生気を皆で吸い込む。そしてその様子を遠く離れた場所に住むアブラが感知し、少年とともに悲鳴を上げる。それはダンにも伝わり、ダンの部屋の黒板には“MURDER”の文字が浮かぶ・・・

続編と言っても、単に主人公が前作の生き残りの少年というだけで、ストーリーもまったくの別物。人間の生気を吸って不老不死を身を維持する謎の集団と、“シャイニング”の強力な能力のある少女アブラを巡っての戦いが描かれていき、続編であることは所々に出てくる前作のシーンで無理やりこじつけられている感がある。前作でラストに残された古い写真にジャックが写っていた理由が明らかになるわけではなく、実に続編とは名ばかりの作品である。

まぁ、それでもそこそこ楽しめるところはあるので良しとしたいところ。主演はユアン・マクレガーであり、それだけでも観る価値はある。おそらく、名作“シャイニング”の続編をつくろうと考えた人たちがいて、アイディアは良かったが、前作でほぼ完結しているストーリーに無理やり新たなストーリーをこじつけたからこうなったのであろうと背景を想像してしまう。前作から時間が経ち過ぎているし、私のように前作を鑑賞して「予習」しておかないと続編としての連続性すらわからないかもしれない。

物語は、ローズらの謎の不老不死集団とアブラを守るダンとの戦いとして進んでいく。懐かしのオーバールックホテルが無理矢理のこじつけで登場するが、そこまでして続編ぶらなくてもいいようにしか思えない。とりあえずストーリーは楽しめるが、バーカウンターで父親そっくりのバーテンダーを登場させたりという涙ぐましい努力は買ってもいいかもしれない。あまり続編ということを意識せずに楽しみたい映画である・・・


評価:★★☆☆☆







posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | ホラー・オカルト・悪魔 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月29日

【シャイニング】My Cinema File 2495

シャイニング .jpeg

原題: The Shining
1980年 アメリカ
監督: スタンリー・キューブリック
出演: 
ジャック・ニコルソン:ジャック・トランス
シェリー・デュヴァル:ウェンディ・トランス
ダニー・ロイド:ダニー・トランス
スキャットマン・クローザース:ディック・ハロラン
バリー・ネルソン:スチュアート・アルマン
フィリップ・ストーン:デルバート・グレイディ
ジョー・ターケル:ロイド

<映画.com>
********************************************************************************************************
スティーブン・キングの小説をスタンリー・キューブリック監督が映画化した名作ホラー。冬の間は豪雪で閉鎖されるホテルの管理人職を得た小説家志望のジャック・トランスは、妻のウェンディーと心霊能力のある息子ダニーとともにホテルへやってくる。そのホテルでは、かつて精神に異常をきたした管理人が家族を惨殺するという事件が起きており、当初は何も気にしていなかったジャックも、次第に邪悪な意思に飲みこまれていく。主演のジャック・ニコルソンがみせる狂気に満ちた怪演は見どころ。高い評価を受けた作品だが、内容が原作とかけ離れたためキングがキューブリック監督を批判したことでも知られる。
********************************************************************************************************

ジャック・ニコルソンの怪演が何とも言えず強烈な印象で記憶に残っていたこの映画。続編を観るために何十年ぶりかで2度目の鑑賞である。

小説家志望の男、ジャックがロッキー山上にあるオーバールック・ホテルの管理人の職に応募してくるところから物語は始まる。このホテルは山奥にあり、冬になると道路が雪で覆われてしまう事から冬期は休業している。しかしその間ホテルを管理する者が必要であり、この期間の管理人を募集しているのである。そしてジャックにしてみれば、誰にも邪魔されることなく小説を書きながらこなせる仕事は、好都合だったのである。

しかしオーナーは念を押す。誰も来ない冬のホテルの中に缶詰めになる事は、肉体的よりも精神に負担がかかり、事実、数年前に雇われたグレイディという男が妻と二人の娘を斧で惨殺したうえ、自分は猟銃自殺するという凄惨な事件が起こしたという話をする。しかしジャックは、自分は大丈夫だと気にせずに仕事を引き受ける。こうしてジャックは、妻ウェンディと一人息子のダニーと共にホテルに向かう。

仕事の説明をするのは、黒人コックのハロラン。陽気にホテルについて説明するハロランだが、ダニーを見て「シャイニング」という不思議な力があると告げる。そして自分にも同じ能力があり、このホテルで過去に忌まわしい事件が起こったことから怖い物に遭遇するかもしれないと警告する。そして237号室には近づいてはいけないと付け加える。慌ただしく手仕舞いしたホテルは、例年通り激しい吹雪に覆われ、家族三人は山奥のホテルの中に孤立状態になる。

「シャイニング」というのは、霊感のようなものなのだろう。ダニーにはそれがあって、小さな子供によくあるように架空の友達と話をしているが、この友達は口の中に住んでいて、ダニーを眠らせては夢を見させるという。ハロランとの会話には、物語の伏線となる話がいろいろと込められている。それにしても、雪に覆われて下界から孤立したホテルに親子3人で過ごすというのもなかなかすごい。

そんな中で、ダニーは1人遊びをする。廊下を三輪車で走り回り、ミニカーを並べて遊ぶ。そしてしばしば頻繁に現れる双子の女の子。最初は鍵がかかっていて入れなかった237号室なのに気がつけば部屋のドアが開いている。ダニーはハロランの警告にも関わらずそこに入っていく。その頃、ジャックは悪夢にうなされる。驚いて起こしに来たウェンディに、ジャックはウェンディとダニーを殺してしまう夢を見たとなお動揺して告げる。そこへダニーがやってくるが、ダニーの首には絞められたようなアザがあり、ウェンディは過去のこともあってジャックの仕業だと思い非難する。

こうしてだんだんと3人に何かが忍び寄る。ウェンディには執筆している作品を見せないジャック。禁止されれば見たくなる。ウェンディはジャックがいない時にタイプライターを覗き込み、打ってある文章を読む。そこにあったのは、“All work and no play makes Jack a dull boy”という諺の羅列。中学生で習う成句であり、意味もよく理解できたことからその不気味さとともによく覚えているシーンである。そして「友達」の警告なのか、ダニーは寝ぼけながら「REDRUM」と呟く。それを壁にも書くが、ウェンディが鏡に映ったその文字を見ると「MURDER」となっている。なかなかよくホラームードを盛り上げてくれる。

そしてジャックに狂気が宿る。斧を手にしてウェンディとダニーを追うジャックの様子は、再度観てもなかなかのもの。壊されたドアから覗く狂気に満ちた顔はこの映画の象徴的なシーンである。ラストシーンは記憶になかったが、ホテルに飾ってある写真の中にジャックの姿が映っていて、これが何を意味しているのかよくわからなかった。もう少し説明して欲しかったところである。原作者のスティーブン・キングから映画は酷評されたらしいが、映画は映画で今観ても深く印象に残る名作であると思う。

これに続く続編も楽しみな一作である・・・


評価:★★★☆☆










posted by HH at 00:00| 東京 🌁| Comment(0) | ホラー・オカルト・悪魔 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月24日

【クリムゾン・ピーク】My Cinema File 2492

クリムゾン・ピーク.jpeg

原題: Crimson Peak
2015年 アメリカ
監督: ギレルモ・デル・トロ
出演: 
ミア・ワシコウスカ:イーディス・カッシング
ジェシカ・チャステイン:ルシール・シャープ
トム・ヒドルストン:トーマス・シャープ
チャーリー・ハナム:アラン・マクマイケル
ジム・ビーバー:カーター・カッシング

<映画.com>
********************************************************************************************************
『パシフィック・リム』 『パンズ・ラビリンス』の鬼才ギレルモ・デル・トロ監督が、『アリス・イン・ワンダーランド』のミア・ワシコウスカ、『アベンジャーズ』のトム・ヒドルストン、『ゼロ・ダーク・サーティ』のジェシカ・チャスティンら注目俳優共演で描くダークミステリー。10歳の時に死んだはずの母親を目撃して以来、幽霊を見るようになった女性イーディス。父親の謎の死をきっかけに恋人トーマスと結婚することになった彼女は、トーマスや彼の姉ルシールと一緒に屋敷で暮らしはじめる。その屋敷は、冬になると地表の赤粘土が雪を赤く染めることから「クリムゾン・ピーク」と呼ばれる山頂にあった。ある日、イーディスの前に深紅の亡霊が現われ、「クリムゾン・ピークに気をつけろ」と警告する。
********************************************************************************************************

主人公のイーディス・カッシングは、小説家を志す少女。幼い頃、母親をコレラで亡くし、実業家の父カーターと暮らしている。イーディスには霊感があり、母親が死んだ時、幽霊となった母親が現れ、”クリムゾン・ピークに気を付けなさい!”と警告を受ける。と言われてもその時はまだ意味が分からない。それ以後、しばしば幽霊が視えるようになる。

月日が経ち、美しく成長したイーディスは幽霊をモチーフにした小説を執筆する。しかし、世は男性社会。女流作家は認められなくもないが、「恋愛小説を書きなさい」と諭される。幼馴染で医師のアラン・マクマイケルは、そんなイーディスに好意を持っている。

ある日、イーディスは発明家で準男爵の称号を持つトーマス・シャープと出会う。彼は自分の発明を完成させるため、父カーターをはじめ、多くの事業者の前でプレゼンテーションを行うが、いい返事はもらえない。父カーターは、トーマスの人物に疑問を感じ、探偵に調査を依頼する。そんな父カーターの心配をよそに、イーディスはトーマスに好意を抱いていく。

イーディスはすっかりにトーマスに夢中になる。トーマスもイーディスにプロポーズしようとするが、トーマスの悪しき素性を暴いた父カーターは、手切れ金を渡し、イーディスを振った上でイギリスに帰るように要求する。単に引き離しても恋は盲目で逆効果なのは「ロミオとジュリエット」を挙げるまでもないこと。父親としては賢いやり方である。

イーディスは、父の差し金とも知らず、イギリスに帰ると宣言したトーマスに追い打ちをかけるように小説を批判されて落ち込む。ところが、翌日、父カーターは公衆浴場で何者かに襲われて命を落とす。目撃者もなく、不幸な事故として扱われる。邪魔者がいなくなり、悲しみに暮れるイーディスの心を掴んだトーマスは、イーディスと結婚し、イギリスの彼の生家アレル・デイルへと帰る。

一方、カーターの遺体確認に立ち会った医師アランは、カーターの後頭部に残る殴られたような傷を発見し、独自に捜査を始める。トーマスの生家は、クリムゾン・ピークと呼ばれた丘陵地帯にあり、雪が降ると大地にはまるで血が染み出たような跡が見えるという特徴の土地であった。

こうしてトーマスと姉ルシールと広大な屋敷で暮らし始めたイーディスだが、深夜になると女の幽霊が廊下やバス・ルームに現れる。物語は怪奇色を帯びてくる。美しき姉ルシールの様子もおかしい。近隣に家一つない荒涼地帯にポツンと立つ屋敷。そもそも何でこんなところに家を建てたのだろうかと訝しく思う。そしてトーマスと姉ルシールが隠す事実。

幽霊が登場するが、この映画はオカルト・ホラーではなく、恐ろしい人間の業の物語。どこかで歯車が狂いおかしな世界から逃れられなくなってしまった姉弟。ハラハラする展開がラストにかけて続く。それにしてもイーディスの母親、こういう未来が見えていたなら「トーマスに気をつけろ」と警告すればよかったのにと思ってしまう。

イーディスは後にこの出来事を基にして、小説「クリムゾン・ピーク」を完成させる。と言っても、その小説はあまりおもしろくないんじゃないかと思わされる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | ホラー・オカルト・悪魔 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年12月20日

【テルマ】My Cinema File 2327

テルマ.jpg

原題: Thelma
2017年 ノルウェー・フランス・デンマーク・スウェーデン
監督: ヨアキム・トリアー
出演: 
エイリ・ハーボー:テルマ
カヤ・ウィルキンス:アンニャ
ヘンリク・ラファエルソン:トロン
エレン・ドリト・ピーターセン:ウンニ

<映画.com>
********************************************************************************************************
鬼才ラース・フォン・トリアーを親類に持ち、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品された「母の残像」などで注目されるノルウェーのヨアキム・トリアー監督が手がけたホラー。ノルウェーを舞台に、幼い頃の記憶を封印された少女テルマが、成長して初めての恋を経験したことをきっかけに、恐るべき秘密へとつながっていくさまを描いた。ノルウェーの田舎町で、信仰心が強く抑圧的な両親の下で育ったテルマには、なぜか幼い頃の記憶がなかった。そんな彼女がオスロの大学に通うため一人暮らしを始め、同級生の女性アンニャと初めての恋に落ちる。欲望や罪の意識に悩みながらも、奔放なアンニャに惹かれていくテルマ。しかし、やがてテルマは突然の発作に襲われるようになり、周囲で不可解な出来事が続発。そしてある日、アンニャがこつ然と姿を消してしまい……。
********************************************************************************************************

舞台は冬のノルウェー。幼きテルマは、父トロンと共に湖にきている。湖は凍っており、2人で氷の上を歩く。氷の下では小さな魚が泳いでおり、やがて氷にヒビが入り、いずれ訪れる春を予感させる。一見、微笑ましい光景であるが、森に入ったところで雰囲気が変わる。トロンは猟銃を持っていて、鹿を発見する。銃を構えるが、次の瞬間、その銃口を我が子に向ける。引き金を引くことはなかったが、我が子に対する行為としては異様である。

時は流れ、テルマは成長し、オスロの大学に入学する。親元を離れ、寮生活を送ることになるが、両親も2人揃ってテルマと共にやってくる。母親は車椅子である。外見は普通の親子であるが、なぜかどこかよそよそしい雰囲気が漂っている。冒頭の父親の異様な行動も、このよそよそしさもやがて理由がわかる。物語のイントロとしてはなかなか面白いと思う。

しばらくしたある日、図書館を訪れたテルマはアンニャという女子学生と知り合う。しかし、突然謎の発作に襲われ、昏倒してしまう。病院で診察してもらうが原因はわからない。そしてこれを機にテルマとアンニャは親交を深めるようになる。敬虔なキリスト教徒の家庭に育ったテルマにとって、自由奔放なアンニャは新鮮そのもの。彼女の影響で酒や煙草を始め、やがて同性ながらもベッドを共にするようになる。その間もテルマの発作は続く。

医師はテルマの故郷の病院から幼い頃からのカルテを取り寄せ原因を探る。精密検査の結果、テルマの症状は心因性発作であると診断されるが、テルマの祖母が以前精神を病んでいたことから、遺伝的素因も疑われる。テルマの祖母は亡くなったと聞かされていたが、実は老人ホームに入れられて生きているということもわかる。しかし、祖母はテルマが会いに行った時には、もはや誰もわからない状態。そしてホームのスタッフから、祖母はかつて祖父が船に乗ったまま行方不明になってからおかしくなったと聞かされる。

そしてアンニャが忽然と姿を消してしまう。ここに至り、テルマは両親から幼少期の出来事を聞かされる。父親が猟銃をテルマに向けた理由も、母親が車椅子の理由も、テルマと両親の間にあるよそよそしい雰囲気もすべて謎が解ける。しかし、ここからストーリー的に不鮮明になる。おそらく祖母から(先祖代々?)伝わるテルマの不思議な能力は、一体なんなのか。それは明らかにならない。

これは超能力の話なのかそれともホラーなのかもよくわからない。不思議な力は超能力と言えそうだし、ベッドにいた赤ん坊が、母親が一瞬目を離した隙に忽然と姿を消し、湖の氷の下で凍り付いて発見されるシーンはどう見てもホラーだ。両親の明暗が分かれたのも何故なのかよくわからないし、冬のノルウェーの灰色の空のごとく、ストーリーもグレーだ。これをどう観たら良いのだろうか。

オスロに戻ったテルマは、なぜかアンニャと再会を果たす。それもまた謎。一々明らかにならなくても良いかもしれないが、個人的にはモヤモヤ感が残ってしまった。感じ方は人それぞれかもしれないが、気になる人には気になる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | ホラー・オカルト・悪魔 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月24日

【ELI/イーライ】My Cinema File 2185

ELIイーライ.jpg


原題: Eli
2019年 アメリカ
監督: キアラン・フォイ
出演: 
チャーリー・ショットウェル: イーライ
マックス・マーティーニ: ポール
セイディ・シンク: ヘイリー
リリ・テイラー: イザベラ・ホーン医師
ケリー・ライリー: ローズ

<映画.com>
********************************************************************************************************
自己免疫疾患を抱える少年が、治療のため訪れた不気味な病院で体験する恐怖を描いたNetflixオリジナルのホラー映画。4年前に重度の自己免疫疾患を発症した11歳の少年イーライは、自宅内の無菌室での不自由な生活を余儀なくされていた。両親は治療のため、ホーン医師が運営する医療施設に彼を入居させることに。不気味な雰囲気の施設内でイーライに施される治療は、苦痛を伴う恐ろしいものだった。その一方で、イーライは施設内のあちこちで心霊現象に遭遇する。そんな彼の前に、施設の近所に住む少女ヘイリーが現れる。主人公イーライ役に「はじまりへの旅」のチャーリー・ショットウェル。共演に『死霊館』のリリ・テイラー、テレビドラマ「ストレンジャー・シングス」のセイディ・シンク。Netflixで2019年10月18日から配信。
********************************************************************************************************

 Netflixの独自配信映画は良質の面白い映画が多いが、これもその一つ。予想外の展開に次ぐ展開で圧倒された映画である。

イーライは免疫不全の病気を患っており外気に触れるだけで身体中がアレルギー反応を起こして火傷をしたように全身が赤くなってしまう。したがって移動中のホテルでは簡易ビニールハウスの中で大人しくしている。外を移動する際は、宇宙服のような防護服に身を包まないといけない。両親とともにすがるような気持ちで、最後の望みを託した最新の治療を受ける施設へと向かっている。

イーライと両親が着いたところは、洋館を改造した空調設備完備の施設。中に入るとイーライは防護服を脱ぎ、普通に生活ができる。何事も当たり前のようにあればありがたみを感じないもの。イーライの姿からは普通に生活ができることがいかにありがたいかが伝わってくる。そして治療が開始されるが、担当するのはいかにも怪しげな女性医師と看護師が2人。

イーライは個室を与えられ、1人で寝起きすることになる。最初の夜、不安を隠しきれぬまま窓から外を眺めていると、外から誰かが窓に息を吹きかける。その瞬間、これはホラー映画なのだなと理解できる。ジャブとしては、実に効果的である。さらに洋館の外に住む女の子がイーライに興味を示して寄ってくる。しかし、あくまでも厳重に封鎖された窓越しの対面である。

そして怪奇現象が本格化する。ちょっとした光の加減で女の子の霊が一瞬姿を現す。さらに怒涛の勢いの怪奇現象が続く。窓に吹きかけた息で曇ったところに自分の名前ELIと書くと、「LIE」(嘘)と霊が書いてくる。タンスに逃げ込めばそれをひっくり返され、ドアに「LIE」嘘の文字を書きなぐられる。挙句に足を引っ張られて建物外に通じるエアロックに押し込められて危険な外気にさらされようとされる。物理的な現象が伴うのはなかなかの迫力である。

ところが映画は終盤にかけてどんでん返しの連続となる。白と黒とが、つまり正義と悪とがコロコロと入れ替わり、目まぐるしく見方が変わる。一体何がどうなっているのか最後までわからない。このストーリー展開は凄い。当然、ラストの結末なんて予想できるわけがない。普通のホラー映画であれば、霊なり悪霊なりが退治されるまで一直線のストーリーであるが、曲がりくねって先が見通せないストーリーは気が抜けない。ホラー映画とは言え、怖いというより面白い。

大作ではなくても堪能できる。Netflix侮りがたしと思わせてくれる一作である・・・


評価:★★★☆☆







posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | ホラー・オカルト・悪魔 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする