
2023年 日本
監督: 松本優作
出演:
東出昌大:金子勇
三浦貴大:壇俊光
皆川猿時:桂充弘
和田正人:浜崎太一
木竜麻生:桜井恵子
池田大:林良太
金子大地:山本幸助
阿部進之介:松山
渋川清彦:伊坂誠司
田村泰二郎:比嘉誠
渡辺いっけい:北村文也
吉田羊:金子勇の姉
吹越満:秋田真志
吉岡秀隆:仙波敏郎
<映画.com>
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ファイル共有ソフト「Winny」の開発者が逮捕され、著作権法違反ほう助の罪に問われた裁判で無罪を勝ち取った一連の事件を、東出昌大主演、「ぜんぶ、ボクのせい」の松本優作監督のメガホンで映画化。
2002年、データのやりとりが簡単にできるファイル共有ソフト「Winny」を開発した金子勇は、その試用版をインターネットの巨大掲示板「2ちゃんねる」に公開する。公開後、瞬く間にシェアを伸ばすが、その裏では大量の映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、次第に社会問題へ発展していく。違法コピーした者たちが逮捕される中、開発者の金子も著作権法違反ほう助の容疑で2004年に逮捕されてしまう。金子の弁護を引き受けることとなった弁護士・壇俊光は、金子と共に警察の逮捕の不当性を裁判で主張するが、第一審では有罪判決を下されてしまい……。
金子役を東出、壇弁護士役を三浦貴大がそれぞれ演じるほか、吉岡秀隆、吹越満らが脇を固める。
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「Winny」にまつわる訴訟については何となく記憶に残っている。そしてそれが日本のソフト開発を遅らせることになったという評価があることも。されど詳細についてはわからないままであり、そんな詳細も知りたいと観ることにした映画。
時に2002年、散らかった部屋で1人の男がパソコンに向かっている。いかにもオタクっぽいその男が主人公の金子勇である。金子は自分の作ったファイル共有ソフトをネットに公開する。それはユーザー同士のデータのやり取りを無料でできるという画期的なもので、またたくまにネットユーザーに受け入れられて拡散していく。しかし、Winnyには悪しき面がある。それは映画や音楽などの著作権保護対象物を違法アップロードできてしまうというところ。そして警察が動き出す。
翌2003年、Winnyを違法目的に使用した者が逮捕される。そして警察はWinnyの製作者である金子の家にもやってくる。担当の刑事は穏やかな口調で、取調室では金子に対し、誓約書を書いてくれと持ち掛ける。天才グラマーであってもそのあたりは疎い金子は、疑問を持つこともなく一字一句警察の言うとおりに書類を書く。ところがそれは誓約書ではなく、供述調書。自ら違法目的での動画のやり取りを前提としてWinnyを作成したことになってしまい、そのまま逮捕される。容疑は著作権法違反ほう助。
そんな金子を弁護することになったのは弁護士の壇俊光。壇は弁護団を結成するが、金子の逮捕を知ったネットユーザーたちは自ら支援金を集めて弁護費用として申し出る。さっそく金子と対面した壇は、金子にまず諸注意を与えるが、すでに書かされてしまった供述調書は取り消せない。それにしてもこうした警察の捜査のやり方は改めて問題であると感じる。一方、この頃、愛媛県警では、署員に架空の領収書を書くように指示が出る。1人拒絶するのは仙波敏郎。架空の領収書を利用した裏金作りであり、これが並行して描かれる。
金子の逮捕理由であるが、何が悪いのか一見よくわからない。しかし、映画の中ではそれが壇弁護士によって簡潔に説明される。「包丁を作った者がいて、その包丁で人が刺された場合、包丁を作った人は罪に問われるのか。もし、罪に問われるとなると包丁を作る人がいなくなってしまう」。ここではWinnyが包丁にあたるわけであり、あたらめて逮捕が不当なのだと理解できる。当然、壇の弁護方針も「あくまでプログラマーとして開発しただけで、悪用されることを想定していなかった」という主張になっていく。
事件の背景には、著作権を守ってほしいという業界の切実な思いがあり、それは尊重されなければならない。それがWinnyを使って簡単にできるようになってしまったところが問題で、警察(検察)としてはWinnyを違法ソフトと位置付けてしまえば、使うのに躊躇するだろうという腹積もりがあったのかもしれない。そして2006年、金子は一審で有罪判決を受けてしまう。弁護団は金子の保釈を勝ち取る。それはかなりの戦果のように思う。しかし、金子は保釈条件として当然Winnyの改良等を行ってはならないという条件が付される。
映画の金子は実に純粋無垢なプログラマー。ソフト開発のことになると周りが見えなくなる。開発を禁止された金子は、ストレスが溜まっていく。物語は金子の少年時代も描かれる。本屋でプログラムのページを立ち読みしてきては、それを電気屋の店頭に置いてあるPCに打ち込んでいく。何度も往復してプログラムを起動させる。まさに同じことをしていた友人を持っていたゆえに、その友人の顔が浮かんでしまった。
最終的に金子は最高裁まで争って無罪を勝ち取る。しかし、訴訟によって失われた時間は目に見えない損失を日本に与えたという指摘はその通りに思えてしまう。警察もその動機は善であったと思うが、より大きな視点が欠けていたとしか思えない。並行して描かれる裏金事件は意外なところでWinnyと接点を持つ。事件について、あらためて理解を深めるとともに金子勇という天才の時間を奪ってしまった損失は大きいのだろう。こうした事件のあらましを理解するという意味でも映画は大いに役に立つ。改めてそんな感を持った一作である・・・
評価:★★☆☆☆





