
原題: Sand Castle
2017年 イギリス
監督: フェルナンド・コインブラ
出演:
ニコラス・ホルト:マット・オークル二等兵
ローガン・マーシャル=グリーン:ハーパー軍曹
ヘンリー・カヴィル:サイバーソン大尉
グレン・パウエル:ディラン・チャツキー軍曹
ニール・ブラウン・Jr:エンゾ伍長
ボー・ナップ:バートン軍曹
サミー・シーク:マフムード
<映画.com>
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『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のニコラス・ホルト主演による戦争ドラマ。退役軍人の脚本家クリス・ロースナーの実体験を基に、イラク戦争に従軍した若き米軍兵士の姿を通して戦地の過酷な現実を描き出す。2003年、イラクの紛争地域。学費を稼ぐため軍に入隊した青年オークルは、同じ部隊の仲間たちとなじむこともできず、命じられた任務を必死にこなす日々を送っていた。そんなある日、彼の所属する部隊に新たな任務が下される。それは、危険地域バクーバで、米軍が破壊した水道設備を修復するというものだった。共演に『スパイダーマン ホームカミング』のローガン・マーシャル=グリーン、『マン・オブ・スティール』のヘンリー・カビル。Netflixで2017年4月21日から配信。
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物語は2003年のイラクで始まる。学費を稼ぐ目的で軍に入隊したオークルが主人公。しかし、僅か3ヶ月で入隊したことを後悔し始める。戦地に出ることを避けるため、自分の手をわざと車のドアに挟んで負傷兵となる。だが、その程度ではたかが知れている。ある程度経つと見抜かれたのかまだ残る痛みを訴えるも、原隊復帰を命じられる。そしてオークルが所属する第2歩兵部隊に命令が下される。
それはバグダッドの北北東に位置するバクーバの村で作戦に従事するもの。さっそく敵との激しい交戦の中、戦闘ヘリで敵の拠点を攻撃して制圧するが、その際にポンプ施設を破壊してしまう。そのため村への給水が滞り、村人の生活に支障が出てしまう。やむなく作戦本部はポンプ設備の修復と村人への水の支給を歩兵部隊へ命じる。オークルも第2歩兵部隊の一員としてこの任務に着くことになる。
第2歩兵部隊は、給水車を護送して水源と村とを往復しながらポンプ施設の修復を行うことになる。何よりも米兵だけでは人が足りず、現地の村人を雇い復旧作業に従事してもらうべく村人に協力を募るが、誰一人復旧作業への協力を申し出る村人は現れない。そこで部族長から村人の参加を促すようにと協力を求めるが、村には反米勢力もいて米軍に協力すれば報復される可能性があるとして部族長にも協力を拒まれてしまう。
米軍の立場からすると誰のための工事なのかと腹立たしいのかもしれないが、現地の人の立場だと「破壊したのは米軍なので米軍が治すのが筋」となるのだろう。そして給水車は途中でゲリラの待ち伏せ攻撃に遭う。何とかこれを撃退するも、給水車は穴だらけでせっかくの水が漏れてしまう。第2歩兵部隊のチャッキーは、村人のための水を運んでいるのにその村人たちに襲撃されることに理不尽さを覚える。
給水車を修繕し、再び水の配給を続ける第2歩兵部隊だが、今度は村人へ配水中に敵ゲリラの襲撃を受ける。村人も何人か犠牲になるが、今度はチャッキーが銃弾を浴びて戦死する。第2歩兵部隊は村人の生活を支える活動に対するモチベーションが低下する。それでも配水中に知り合った村の小学校の校長が現れ、水の配水をオークルに頼んでくる。それなら襲撃をやめさせろと突っぱねるオークルの気持ちは当然。だが、校長は襲撃者とは立場を異にしており、子供たちのためには水が必要だと粘る。オークルは一計を案じ校長の力を借りることを上官に提案して承認をもらう・・・
イラク戦争を背景とした映画は多々あるが、これはとある歩兵部隊の実体験を基にした映画だという。その活動は実に地味。派手な戦闘シーンがあるわけではなく、内容はとある村に対する水道の復旧活動が中心となる。しかし、敵ゲリラによる妨害工作を受ける中でそれは簡単ではない。現地の村人にもゲリラ活動を行う反米勢力はいるが、大半は普通の市民。そして戦争で一番被害を受けるのはこの普通の市民。それは大量破壊兵器云々といった政治的な話は全く関係のない市井の市民。
主人公も米軍の最下級の一兵士であり、その視点はあくまでも現場でのもの。村人の校長の協力でポンプを修理する村人たちが集まる。ようやく工事が順調に進むかと思われた翌日、村で逆さ吊りにされた焼死体が発見される。それはオークルたちに協力した校長の変わりはてた姿。武力で敵勢力を一掃してもゲリラは一掃できない。イラク戦争で問題になった事が一つの事例として描かれる。果たしてイラク戦争とは何だったのか。
繰り返される反抗勢力との激しい銃撃戦。オークルたちの部隊も無傷ではなく、負傷者も出る。そんな日常が描かれていく。やがてオークルに帰国命令が出る。それは冒頭でオークルが望んだものに他ならない。しかし、イラクでの復旧活動を送ったオークルには違う気持ちが芽生えている。それは成長なのであろうか。物語はオークルが帰国するところで終わりを告げる。帰国したオークルがどうなったのか。続きを創造してみたくなった映画である・・・
評価:★★☆☆☆