2025年05月31日

【6888郵便大隊】My Cinema File 3016

6888郵便大隊.jpg

原題: The Six Triple Eight
2024年 アメリカ
監督: タイラー・ペリー
出演: 
ケリー・ワシントン:チャリティ・アダムス
エボニー・オブシディアン:レナ・デリコット・ベル・キング
ミローナ・ジェマイ・ジャクソン:キャンベル
グレッグ・サルキン:エイブラム
ドナ・ビスコー:エマ
バージャ=リン・オダムズ:スージー
シャニース・シャンテイ:ジョニー・メイ・バートン
サラ・ジェフリー:ドロレス
ペピ・ソヌーガ:エレイン
カイリー・ジェファーソン:バーニス
ジェイ・リーヴス:ヒュー・ベル二等兵
ディーン・ノリス:ハルト中将
サム・ウォーターストン:フランクリン・ルーズベルト
オプラ・ウィンフリー:メアリー・マクロード・ベスーン
スーザン・サランドン:エレノア・ルーズベルト

<シネマトゥデイ>
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第2次世界大戦下にアメリカ陸軍で活動した有色人種女性部隊の実話を基に、『マデア』シリーズなどのタイラー・ペリーが映画化した戦争ドラマ。有色人種女性によって結成された郵便管理大隊が各地で任務を遂行する。指揮官を『ジャンゴ 繋がれざる者』などのケリー・ワシントンが演じるほか、エボニー・オブシディアン、ミローナ・ジェマイ・ジャクソン、サム・ウォーターストン、オプラ・ウィンフリーなどが出演する。
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物語の舞台は、第二次世界大戦中のアメリカ。主人公の黒人女性レナは、白人の恋人エイブラムと楽しい大学生活を送っている。ところがエイブラムは世の中の流れに乗って勇んで入隊する。しかし、出すと言っていた手紙はまったく届かず、不安な日々を送っていたところ戦死したという知らせが届き絶望する。やがてレナは自ら軍へ入隊することを決意する。そしてここから物語は本格化する。

配属されたのは、黒人女性だけの部隊。そこで隊長を務めていたのはチャリティ・アダムズ大尉。女性であり、しかも黒人であり、男の軍隊ではかなり差別される立場にある。白人の男からは女である事、黒人である事の2つの理由から見下されたりする。軍隊では男であろうと女であろうと階級の重みは同じ。しかし、黒人女性という事で下の階級の白人男性から敬礼もされない。それでもチャリティは軍人としての威厳を保つ。

入隊したレナは普通の軍事教練を受ける。それまで運動などした事がなかったようなレナは、たちまち落ちこぼれとなる。チャリティ大尉から厳しい指導を受け、自分は嫌われていると思い込む。一方、何か役に立てる事はないかと模索するチャリティ大尉。その頃、とある女性が出征したまま手紙もこない息子の身を案じるが、思いあまってルーズベルト大統領夫人に直訴する。それを受けたファースト・レディは大統領を動かし、軍隊の郵便事情改善に乗り出す。

当時、ヨーロッパと太平洋とで戦っていた米軍。実は戦いの方に勢力を集中し、郵便は二の次の状態。改善せよと言われても戦力は割けない。そこで白羽の矢が立ったのが女性部隊。最近では女性も最前線に出ているようだし、この時代もソ連ではそうだったようだが、アメリカは女性を最前線には派遣しない。その点では後方支援として最適だったのかもしれない。そしてその任務が、チャリティ大尉率いる部隊に命じられる。

現地に派遣されたチャリティの部隊だが、いくつもの倉庫に保管された膨大な郵便物の山を前にさすがのチャリティも絶句する。黒人女性に命じられる任務はどうでもいいような雑用的なものになる。郵便が軽視されてきたのもそういう考え方であろう。しかし手紙の一つ一つが兵士やその家族へもたらす大きな存在意義をチャリティ大尉はレナに気づかされる。チャリティ大尉は何もないところから855名の部下を指揮し、郵便の配送体制をとっていく。

面白いのは郵送の設備の前に生活環境から整えていくところ。美容室なんかも整備される。後日、やって来た米軍の大将がこの美容室に顔をしかめるシーンが象徴的である。みんなが軽視する郵便の配送。やってみればそれは一筋縄ではいかない。配達先がわからないものなど、時に開封して内容を確認するという作業までこなし、滞っていた郵便配達が一斉に動き出す。受け取った兵士や家族の笑顔が何とも言えない。

そして物語のハイライトでは心無い上官にチャリティ大尉ははっきりと信念のこもった誇りある言葉を返す。その行動に何よりも心を動かされる。ラストでは今も100歳で存命な主人公が顔を見せる。その姿は今も誇らしげである。それにしても、当時の日本軍と比較するとあまりにもの違いである。改めて相手を考えない無謀な戦争だったと思わざるを得ない一作である・・・


評価:★★★☆☆











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2024年12月29日

【砂の城】My Cinema File 2948

砂の城.jpeg

原題: Sand Castle
2017年 イギリス
監督: フェルナンド・コインブラ
出演: 
ニコラス・ホルト:マット・オークル二等兵
ローガン・マーシャル=グリーン:ハーパー軍曹
ヘンリー・カヴィル:サイバーソン大尉
グレン・パウエル:ディラン・チャツキー軍曹
ニール・ブラウン・Jr:エンゾ伍長
ボー・ナップ:バートン軍曹
サミー・シーク:マフムード

<映画.com>
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『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のニコラス・ホルト主演による戦争ドラマ。退役軍人の脚本家クリス・ロースナーの実体験を基に、イラク戦争に従軍した若き米軍兵士の姿を通して戦地の過酷な現実を描き出す。2003年、イラクの紛争地域。学費を稼ぐため軍に入隊した青年オークルは、同じ部隊の仲間たちとなじむこともできず、命じられた任務を必死にこなす日々を送っていた。そんなある日、彼の所属する部隊に新たな任務が下される。それは、危険地域バクーバで、米軍が破壊した水道設備を修復するというものだった。共演に『スパイダーマン ホームカミング』のローガン・マーシャル=グリーン、『マン・オブ・スティール』のヘンリー・カビル。Netflixで2017年4月21日から配信。
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物語は2003年のイラクで始まる。学費を稼ぐ目的で軍に入隊したオークルが主人公。しかし、僅か3ヶ月で入隊したことを後悔し始める。戦地に出ることを避けるため、自分の手をわざと車のドアに挟んで負傷兵となる。だが、その程度ではたかが知れている。ある程度経つと見抜かれたのかまだ残る痛みを訴えるも、原隊復帰を命じられる。そしてオークルが所属する第2歩兵部隊に命令が下される。

それはバグダッドの北北東に位置するバクーバの村で作戦に従事するもの。さっそく敵との激しい交戦の中、戦闘ヘリで敵の拠点を攻撃して制圧するが、その際にポンプ施設を破壊してしまう。そのため村への給水が滞り、村人の生活に支障が出てしまう。やむなく作戦本部はポンプ設備の修復と村人への水の支給を歩兵部隊へ命じる。オークルも第2歩兵部隊の一員としてこの任務に着くことになる。

第2歩兵部隊は、給水車を護送して水源と村とを往復しながらポンプ施設の修復を行うことになる。何よりも米兵だけでは人が足りず、現地の村人を雇い復旧作業に従事してもらうべく村人に協力を募るが、誰一人復旧作業への協力を申し出る村人は現れない。そこで部族長から村人の参加を促すようにと協力を求めるが、村には反米勢力もいて米軍に協力すれば報復される可能性があるとして部族長にも協力を拒まれてしまう。

米軍の立場からすると誰のための工事なのかと腹立たしいのかもしれないが、現地の人の立場だと「破壊したのは米軍なので米軍が治すのが筋」となるのだろう。そして給水車は途中でゲリラの待ち伏せ攻撃に遭う。何とかこれを撃退するも、給水車は穴だらけでせっかくの水が漏れてしまう。第2歩兵部隊のチャッキーは、村人のための水を運んでいるのにその村人たちに襲撃されることに理不尽さを覚える。

給水車を修繕し、再び水の配給を続ける第2歩兵部隊だが、今度は村人へ配水中に敵ゲリラの襲撃を受ける。村人も何人か犠牲になるが、今度はチャッキーが銃弾を浴びて戦死する。第2歩兵部隊は村人の生活を支える活動に対するモチベーションが低下する。それでも配水中に知り合った村の小学校の校長が現れ、水の配水をオークルに頼んでくる。それなら襲撃をやめさせろと突っぱねるオークルの気持ちは当然。だが、校長は襲撃者とは立場を異にしており、子供たちのためには水が必要だと粘る。オークルは一計を案じ校長の力を借りることを上官に提案して承認をもらう・・・

イラク戦争を背景とした映画は多々あるが、これはとある歩兵部隊の実体験を基にした映画だという。その活動は実に地味。派手な戦闘シーンがあるわけではなく、内容はとある村に対する水道の復旧活動が中心となる。しかし、敵ゲリラによる妨害工作を受ける中でそれは簡単ではない。現地の村人にもゲリラ活動を行う反米勢力はいるが、大半は普通の市民。そして戦争で一番被害を受けるのはこの普通の市民。それは大量破壊兵器云々といった政治的な話は全く関係のない市井の市民。

主人公も米軍の最下級の一兵士であり、その視点はあくまでも現場でのもの。村人の校長の協力でポンプを修理する村人たちが集まる。ようやく工事が順調に進むかと思われた翌日、村で逆さ吊りにされた焼死体が発見される。それはオークルたちに協力した校長の変わりはてた姿。武力で敵勢力を一掃してもゲリラは一掃できない。イラク戦争で問題になった事が一つの事例として描かれる。果たしてイラク戦争とは何だったのか。

繰り返される反抗勢力との激しい銃撃戦。オークルたちの部隊も無傷ではなく、負傷者も出る。そんな日常が描かれていく。やがてオークルに帰国命令が出る。それは冒頭でオークルが望んだものに他ならない。しかし、イラクでの復旧活動を送ったオークルには違う気持ちが芽生えている。それは成長なのであろうか。物語はオークルが帰国するところで終わりを告げる。帰国したオークルがどうなったのか。続きを創造してみたくなった映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2023年12月23日

【スヘルデの戦い】My Cinema File 2785

スヘルデの戦い.jpeg
原題: De slag om de Schelde
2020年 オランダ・リトアニア・ベルギー
監督: マティス・バン・ヘイニンゲン・Jr.
出演: 
へイス・ブロム:スタベレン
ジェイミー・フラッターズ:ウィリアム
ユストゥス・フォン・ドホナーニ:ベルホーフ大佐
スーザン・ラデル:トゥン
トム・フェルトン:ターナー中尉

<シネマトゥデイ>
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第2次世界大戦の激戦の一つとして知られる「スヘルデの戦い」を題材にしたアクション。メガホンを取るのは『遊星からの物体X ファーストコンタクト』などのマシーズ・ヴァン・ヘイニンゲン・Jr。『BOYS/ボーイズ』などのヘイス・ブロム、ドラマシリーズ「ライアー 交錯する証言」などのジェイミー・フラタース、ドラマ「夜を生きる女たち」などのスーザン・ラデルのほか、テオ・バークレム=ビッグス、ヤン・ベイヴート、マルテ・シュナイダーらが出演する。
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第2次世界大戦は映画の題材には事欠かない。この映画が扱うのは、タイトルにある通り「スヘルデの戦い」。と言われても聞いたことはない。実はそれはオランダにある土地らしい。時に1944年6月6日、連合軍はノルマンディーに上陸する。そこから連合軍の進撃の様子が地図上で表される。ドイツ軍の抵抗を押しのけ、連合軍は陸路ベルギー・アントウェルペン港に達し、これを解放する。

しかし、アントウェルペン港を利用するには「スヘルデ川」の河口のドイツ軍を排除する必要がある。地元オランダの人々は、解放は目前であると期待している。行進するドイツ軍にカメラを向けていた青年にドイツ軍兵士が近寄りカメラを奪う。カメラを地面に叩きつけられた青年は腹いせに軍のトラックに投石し、これが運転手に命中。運転を誤ったトラックは暴走し、兵士を何人か轢いてしまう。青年は慌てて逃げていく。

9月16日、オランダのワルヘレンではワルヘレンを防衛するドイツ軍のベルクホーフ大佐は、ナチスの旗を掲げた市役所を訪問する。そして市長のオストヴェーンに、軍のトラックに投石した青年を見つけ出し、拘束するよう命じる。出頭しなければ代わりに無実の青年3人を処刑するという。オストヴェーンのもとで働いていたオランダ人女性トゥン・ヴィッサーは、これを知って青ざめる。ドイツ軍が探している青年は、弟のディルクであった。

その頃、連合軍はドイツ軍占領地域へ一挙に進攻する計画「マーケット・ガーデン作戦」を準備している。「マーケット・ガーデン作戦」と聞けば、かつての映画『遠すぎた橋』を思い起こす。イギリス人グライダーパイロットのウィリアム・シンクレアは、空挺部隊の一員として作戦に参加したいと思い、指揮官である父親のシンクレア大尉にその許可を求める。しかし、十分に訓練を積んでいるとはいえ、無茶をする息子の身を案じて、父はこれを却下する。それでも諦めきれないウィリアムは、上官に許可をとったと嘘をつき、グライダーに乗り込む。

所変わってソ連軍の攻勢により、エストニア・ナルヴァから退却したドイツ軍の中にはオランダ人兵士マリヌス・ファン・スタベレンがおり、ナルヴァでの戦いで左半身を負傷して病院に搬送される。その病院でスタベレンは、両足を失ったドイツ軍の将校と会う。2人はなぜか気が合い親交を深める。やがて傷が癒えたスタベレンは、戦線復帰しようと強襲部隊へ志願するが、ドイツ軍の将校は、コネを使ってゼーラントにあるドイツ軍司令部の事務職に配属させる。その日の夜、明日オランダへ旅立つスタベレンにそのことを伝えたドイツ軍将校は、拳銃で自らの頭を撃ち抜く・・・

連合軍によるマーケット・ガーデン作戦が決行される中、ドラマはオランダ人トゥン、イギリス軍人ウィリアム、そしてドイツ軍のオランダ人スタベレンの行動を追っていく。弟ディルクをドイツ軍から守ろうとするトゥンはパン屋で働く友人ヤンナを通じてレジスタンスに助けを求める。作戦に参加したウィリアムはドイツ軍の砲撃で乗っていたグライダーがドイツ軍支配地に墜落する。ディルクを助けようと、医師である父とともにベルクホーフの事務所を訪れたトゥンの漏らしたオランダ語の呟きをスタベレンはベルクホーフに伝える。

オランダで交差する3人の運命。オランダ人ではあるが、ドイツ軍に参加するスタベレンの立場は微妙である。トゥンの弟ディレクは、ドイツ軍を憎み、密かにドイツ軍陣地の様子をカメラに納めてレジスタンスに提供しようとしている。しかし、ドイツ軍のベルクホーフは冷酷であり、医師のヴィッサー博士の家に訪ね、自身の足の治療をさせつつ、息子を出頭させろと告げる。ヴィッサー博士は、出頭させるが何とか命だけは助けてほしいと歎願する。

そして背景ではスヘルデの戦いへと向かっていく。ドイツ軍がオランダ占領地でどんなことをしていたのかは知らない。しかし、地元住民を徴兵した(あるいは志願かもしれない)としても不思議ではないが、どんな気持ちで戦っていたのか、この映画ではスタベレンの姿でそれを描いていく。イギリス人パイロットウィリアムは、カナダ軍に合流し、スヘルデに向かう。トゥンはそのカナダ軍にある情報を伝えに行く。

まったく知りもしなかったスヘルデの戦いだが、3人の行動を中心に描き、エンターテイメントとしては十分に楽しめるものになっている。実際の戦闘をベースにした戦争映画ではあるが、戦闘シーンが中心ではない。あくまでもその戦闘にかかわったごく普通の登場人物たちの人間ドラマである。11月7日、連合軍によってワルヘレンは解放される。スヘルデの戦いでの死者は、連合軍が3,231名、ドイツ軍4,250名、戦いに巻き込まれた民間人2,283名とラストでテロップが流れる。その数字の1人1人にドラマがあるのだと思わずにはいられない。

オランダが解放されたのは、結局ドイツが降伏した1945年5月5日。第二次世界大戦はアメリカ・イギリス・ソ連対ドイツという図式だけではなかったということを改めて思わせてくれる映画である・・・


評価:★★☆☆☆










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2023年08月02日

【西部戦線異状なし】My Cinema File 2725

西部戦線異状なし.jpeg

原題: Im Westen nichts Neues
2022年 ドイツ
監督: エドワード・ベルガー
出演: 
フェリックス・カマラー:パウル・ボイマー
アルブレヒト・シュッフ:スタニスラウス・"カット"・カチンスキー
アーロン・ヒルマー:アルベルト・クロップ
モーリツ・クラウス:フランツ・ミュラー
アドリアン・グリューネヴァルト:ルートヴィヒ・ベーム
エディン・ハサノヴィッチ:チャーデン・スタックフリート
ダニエル・ブリュール:マティアス・エルツベルガー
チボー・ドゥ・モンタランベール:フェルディナン・フォッシュ将軍
デーヴィト・シュトリーゾフ:フリードリヒ将軍
アンドレアス・ドゥーラー:ホッペ中尉
ゼバスティアン・フールク:フォン・ブリクスドルフ少佐

<映画.com>
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アカデミー賞を受賞した1930年のルイス・マイルストン監督による映画版でも広く知られる、ドイツの作家エリッヒ・マリア・レマルクの長編小説「西部戦線異状なし」を、原作の母国ドイツであらためて映画化した戦争ドラマ。
第1次世界大戦下のヨーロッパ。17歳のドイツ兵パウルは、祖国のために戦おうと意気揚々と西部戦線へ赴く。しかし、その高揚感と使命感は凄惨な現実を前に打ち砕かれる。ともに志願した仲間たちと最前線で命をかけて戦ううち、パウルは次第に絶望と恐怖に飲み込まれていく。
監督は「ぼくらの家路」のエドワード・ベルガー。主人公パウルを演じたフェリックス・カメラーは、これが映画初出演。「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」 「キングスマン ファースト・エージェント」などのハリウッド大作でも活躍するドイツを代表する俳優ダニエル・ブリュールが、出演のほか製作総指揮にも名を連ねる。第95回アカデミー賞で作品賞ほか9部門にノミネートされ、国際長編映画賞、美術賞、撮影賞、作曲賞の4部門を受賞した。Netflixで2022年10月28日から配信。
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時に1917年の春、17歳の青年パウル・ボイマーは、学友のアルベルト・クロップ、フランツ・ミュラー、ルートヴィヒ・ベームとドイツ帝国陸軍に志願入隊する。第一次大戦開戦から3年、祖国ドイツのために戦おうという青年らしい理想に燃えた行動である。送り出す学校代表の愛国心に満ちたスピーチもその後押しをする。しかし、戦場は塹壕戦が硬直状態。戦死した兵士から軍服一式を脱がし、洗濯して補修された上で新兵に支給される。そうした現実をパウルたちは知るよしもない。

パウルたちは、トラックに乗せられ西部戦線へと向かう。そこはフランス北部のラ・マルメゾン近郊であるが、到着した西部戦線における塹壕戦の凄惨な現実はパウルたちの幻想を打ち砕く。そしてあろうことか、配属初日の夜、敵の砲撃を受けてルートヴィヒが戦死する。映画の最後に「西部戦線は1914年10月の戦闘開始からほどなくして、塹壕戦で膠着。1918年11月の終戦まで、前線はほぼ動かなかった」「僅か数百メートルの陣地を得るため、300万人以上の兵士が死亡。第一次世界大戦では約1700万人が命を落とした」というテロップが流れる。そうした現実が展開する。

1918年11月7日。ドイツの政治家マティアス・エルツベルガーはドイツ陸軍最高司令部を訪れ、ドイツ陸軍の参謀総長ヒンデンブルク元帥に連合国との休戦協議を開始するよう説得する。凄惨な最前線の消耗戦でドイツは疲弊しており、首脳部は戦争終結の道を探る。一方、そんな動きを知るよしもないパウルは仲間のカットとともに近くの農場からガチョウを盗み出す。前線では食料も不足気味なのだろう。農家からは銃で撃たれるが、無事逃げおおせて「戦利品」を部隊の仲間たちと分けあう。

翌11月8日の朝。パウルたち5人は、増援に来るはずだった新兵60人の捜索任務へと出発する。到着予定時刻に現れず行方不明となっていたもの。そして、とある工場で全員が死んでいるのを発見する。毒ガスによるものであるが、新兵は全員がガスマスクを装備している。おそらくマスクを外すのが早すぎたためだろうと判断する。ルートヴィヒもそうであるが、無常この上ない。そしてその頃、フリードリヒ将軍は、連合国との休戦交渉のため、エルツベルガーとドイツの代表団をフランス・パリ郊外のコンピエーニュに送る。

物語は、パウルら最前線の兵士たちとドイツ首脳陣の動きを交互に追う。塹壕を飛び出して突撃する部隊は、敵の機銃掃射を受けて次々と倒れる。運よく敵の塹壕に辿りつければそこから白兵戦。最後は殴り合いになる場面もある。連合国側は新兵器である戦車も投入する。戦闘シーンは、勇猛果敢などほど遠く、ひたすら悲惨な状況である。パウルは爆撃によるクレーターに落ち、共に落ちたフランス兵を白兵戦の末、刺殺する。しかし、フランス兵が身につけていた妻子の写真を見て涙にくれる。

映画はひたすら悲惨な最前線と後方とを比較する。父の代からの軍人であるフリードリヒ将軍は、休戦が決まったのにもかかわらず、休戦発効の11時までに少しでも平原を奪還するよう命じる。こうした好戦的な首脳陣の姿は何とも言えない現実を現している。原作はあまりにも有名な小説。その昔読んだ衝撃はまだ残っている。戦争はいつの世にあっても凄惨なものには違いないが、映画はそれをリアルに伝える。パウルたちのそれぞれの運命が重く響いてくる。みずからは戦闘経験のないフリードリッヒ将軍の姿に何とも言えない思いが残る。

歴史に残る反戦小説の映画化作品として、映画もまた優れた一作である・・・


評価:★★★☆☆








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2022年10月02日

【1944 独ソ・エストニア戦線】My Cinema File 2601

1944 独ソ・エストニア戦線.jpeg

原題: 1944
2015年 エストニア・フィンランド
監督: ルモ・ヌガネン
出演: 
クリスチャン・ウックスクラ:ユーリ・ヨギ
カスパール・フェルバート:カール・タミク
マイケン・シュミット:アイノ・タミク
ヘンリク・カルメット:クリスチャン
カール=アンドレアス・カルメット:カメンスキー
ゲルト・ラウドセップ:サーレスティ

<Amazon prime解説>
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同胞(エストニア人同士)が殺し合う、独ソ戦史上、最も残酷な戦いが遂に映画化!本国で大ヒットを記録し、アカデミー賞外国語映画賞エストニア代表作品として選出。
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1939年8月、ナチス・ドイツとソ連の間で不可侵条約が締結され、その1週間後、ドイツがポーランドへ侵攻して第二次世界大戦の火蓋が切られる。物語の舞台となるエストニアは、1940年にソ連が併合するが、独ソ戦の開始によってドイツが占領。これによりエストニア人はドイツ軍とソ連赤軍にそれぞれ動員されることになる。主人公のカール・タミクもその中の1人としてドイツ軍の軍服に身を包んでいる。

時に1944年。ソ連は反撃に転じ、赤軍はエストニア国境に迫りつつある。カールは第3小隊の小隊長サーレスティ、第3小隊分隊長ポデール、衛生兵のサイナス、狙撃手のカメンスキー、ラーディック、ピールらと共に、「タンネンベルク線擲弾兵の丘」の防衛を任されている。迫り来る赤軍を向こうに回し、カールたちは激戦の末、なんとか赤軍の撃退に成功する。しかし、補充兵は当初予定していた10名ではなく2名のみ。ドイツ軍の勢いも衰えている。

深夜。近くの塹壕が赤軍に攻撃され、サーレスティは仲間を率いて救援に向かう。なんとか味方と合流するが、その味方とはデンマーク人義勇兵。ここにも別の物語がありそうである。銃撃戦の末、敵を撃退し、奪われた陣地を取り戻す。しかしこの戦いでピールが重傷を負う。戦場では一時の油断も禁物。補充兵として配属されたコスチャは、塹壕から顔を出した途端に頭を撃ち抜かれる。

9月に入り、ドイツ軍がエストニア本土から撤退する。カールたちもドイツへと撤退することになる。その道中でも赤軍の攻撃機が襲来し、避難民たちに向けて銃撃する。サイナスは、小さな女の子を助けようとするが敵機の銃撃により命を落とす。サーレスティは、避難民たちに軍人用のトラックを譲り、仲間の1人にエストニアの首都タリンまで運ぶように命じる。配色濃厚な中、隊長として人間味溢れる対応である。そしてカールを始めとする一部のエストニア人将兵は、エストニアに残留しエストニアを守るために戦うことを決める。

そして9月。森林地帯に潜伏したカールたちは、赤軍の戦車部隊を襲撃。しかしその戦車部隊は、同じエストニア人で構成された部隊。カールは戦っていた相手がエストニア人だと気づいて銃を下ろすが、相手は同胞であることに気づかず、カールを射殺する。主人公が途中で戦死する中、射殺したエストニア人部隊の小隊長ユーリ・ヨギは、カールの所持していた手帳を見て同胞だと気づく。一方、互いに同胞だと気づいた両軍のエストニア人たちは戦闘を停止する・・・

同胞同士で殺し合うというのは、大国に翻弄される小国の悲劇に他ならない。他国でもスイスの傭兵が互いに戦ってきたというが、意味合いが異なる。後半はヨギに物語の中心が移る。カールを射殺してしまったヨギは、カールの手帳に挟まっていた姉のアイノ宛ての手紙をアイノに届けに行く。そこには家族がシベリア送りにされたことに罪の意識を感じるカールの言葉が綴られる。ヨギはカールの手紙を入手した経緯は告げられない。そしてカールの家族を追放処分にした男の名前はヨギだと告げられると、ヨギは苗字を名乗れずその場を去る。

物語は、ドイツ軍と赤軍に翻弄されるエストニア人たちの苦悩を描いていく。ヨギの配下に新たに配属された新兵が思わずドイツ式の「休め」をしてしまう。それを見ないふりするヨギ。その新兵は元ドイツ兵。これでもかというくらいエストニア人の悲劇を描いていく。戦後、エストニアはソ連邦に組み込まれる。そのソ連の解体によって独立を達成し、今はEUとNATO加盟国になっている。そんなエストニアには忘れられない過去なのであろう。

日本では珍しいエストニア映画であるが、他国の知られざる歴史を知るという意味でもこういう映画は意味がある。そんな思いにさせられる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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