2025年11月14日

【ミスター・ガラス】My Cinema File 3087

ミスター・ガラス.jpg

原題: Glass
2019年 アメリカ
監督: M・ナイト・シャマラン
出演: 
ブルース・ウィリス:デヴィッド・ダン
サミュエル・L・ジャクソン:ミスター・ガラス
ジェームズ・マカボイ:ケヴィン・ウェンデル・クラム
アニヤ・テイラー=ジョイ:ケイシー・クック
スペンサー・トリート・クラーク:ダンの息子
シャーレイン・ウッダード:ミスター・ガラスの母
サラ・ポールソン:精神分析医

<映画.com>
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M・ナイト・シャマラン監督がブルース・ウィリス&サミュエル・L・ジャクソン共演で送り出した「アンブレイカブル」のその後を描いたサスペンススリラー。同じくシャマラン監督作でジェームズ・マカボイ主演の『スプリット』とも世界観を共有する。フィラデルフィアのとある施設に、それぞれ特殊な能力を持つ3人の男が集められる。不死身の肉体と悪を感知する力を持つデヴィッド、24人もの人格を持つ多重人格者ケヴィン、驚くべきIQの高さと生涯で94回も骨折した壊れやすい肉体を持つミスター・ガラス。彼らの共通点は、自分が人間を超える存在だと信じていること。精神科医ステイプルは、すべて彼らの妄想であることを証明するべく、禁断の研究に手を染めるが……。「アンブレイカブル」でデヴィッドを演じたウィリス、ミスター・ガラスを演じたジャクソン、『スプリット』でケヴィンを演じたマカボイが同役を続投。
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登場人物の1人デヴィッド・ダンは、妻を5年前に亡くし、今は息子のジョセフと共にフィラデルフィアで家庭向けのセキュリティー器具を売る店を営んでいる。しかし、ダンはその裏で息子の助けを借りながら密かに人々を犯罪から守っている。実はダンは、不死身の肉体と悪を感知する力を有していて、常人にはできないことが可能なのである。最近は散歩と称し、連続する監禁事件について探っている。

その連続監禁事件の犯人は「群れ」と称される男で、実は『スプリット』(My Cinema File 2085)に登場した解離性同一性障害の男ケヴィンである。今回もまた学生チアガールを誘拐して監禁している。息子とともにそれまでの行動パターンから監禁場所と思われる倉庫街を割り出し、「散歩」していたダンは偶然ケヴィンとすれ違いざまに肩が触れあう。その瞬間、ダンにはケヴィンが犯人で、監禁されている女性たちの姿が脳裏に浮かび上がる。

すぐにケヴィンのアジトに行き、監禁されていた女性達を救出したダンだが、そこにケヴィンが戻ってくる。そして24ある人格のうちもっとも強力な強さを誇る「ビースト」が現れる。対するダンも超人的な力を有し、2人の戦いは人間の常識を超えた激しいものとなる。その激しい戦いは決着がつく前に終わる。現れた警官隊に包囲され、2人の「野獣」は拘束されてフィラデルフィアの精神病院に送り込まれる。そこで待ち受けていたのはエリー・ステイプル医師。

ステイプル医師は2人の弱点を心得ている。ダンは水に弱いため、独房内には強力なスプリンクラーが設置されていて、何かあれば放水してダンの力を奪うことができる。ケヴィンについては、厄介なのはビーストであり、強力な照明装置の点灯により人格を切り替えてしまうことによってその力を封じてしまうのである。ステイプル医師は自分がスーパーヒーローであると妄想を抱く人々の治療を専門としており、2人の治療を開始する。

一方、そのステイプル医師のカウンセリングを受ける男がもう1人いる。それは、フィラデルフィアでの列車事故の首謀者「ミスター・ガラス」と呼ばれるイライジャ・プライス。ガラスと称される通り、イライジャの体は弱く、それまでに94回の骨折をしており、歩くのもままならないのか車椅子である。しかし、その明晰な頭脳はずば抜けており、実は監禁されつつも密かに厳重に施錠された部屋から抜け出て病院内の設備を掌握している。そしてある計画を胸に秘めている。

4人目の登場人物は、『スプリット』(My Cinema File 2085)でケヴィンに誘拐されたケイシー。ケイシーは恐ろしい目にあったにもかかわらず、病院にやってきてケヴィンとの面会を求める。当初は反対されたものの、ケヴィンと話をさせるとケヴィン内の様々な人格とうまく話ができる事が判明する。監禁された際のやり取りの成果なのだろう。この成果はステイプル医師も認めざるを得ず、継続的にケイシーに話をさせることにする。時にフィラデルフィアでは最も高いオオサカタワー開業のニュースが流れている・・・

この映画は三部作の最終作だという。「アンブレイカブル」も『スプリット』(My Cinema File 2085)も観ているが、どちらも連作という認識はまったくなかった。それが突然融合された感じで、よほど意識していないとわからない。しかし、前2作を観ていなくとも、あるいは観ていてもシリーズだとわからなくとも一応観ることはできる。実はステイプル医師は、精神科医ではなく、ある組織から派遣されていた女。その組織の目的は、超人の存在を世の中から隠す事。ミスター・ガラスはその計画を破綻させようと目論む。

超人と言っても力が強いだけというもの(ダンには「察知力」があるようであるが)。氾濫するスーパーヒーローモノから比べるとかわいいものだと言えるだろう。それゆえに人間によって制圧されることも可能である。この映画はスーパーパワーを持つスーパーヒーローの物語というよりも、常人よりも優れた能力を持つ者を封じ込めようとする人間とのドラマと言える。世間に見せては不都合な真実をこの世から葬ろうとする勢力とそれに抗う者との物語である。

そういう意味では、単純に観て楽しめる映画という範疇に収まるものではない。それにしても連作だとわかっていたら、せめて「アンブレイカブル」はもう一度観ていたと思う。時間も経ちすぎていてもはや内容もあまり記憶にない。わかっていたらもう少し意味がわかって面白味が増していたかもしれない。それでも名優ががっぷり四つに組んだ見応えのある一作である・・・


評価:★★★☆☆








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2025年07月18日

【search/サーチ】My Cinema File 3033

search/サーチ.jpg

原題: Searching
2018年 アメリカ
監督: アニーシュ・チャガンティ
出演: 
ジョン・チョー:デヴィッド・キム
ミシェル・ラー:マーゴット・キム
デブラ・メッシング:ローズマリー・ヴィック
サラ・ソーン:パメラ・ナム・キム
ジョセフ・リー:ピーター・キム
スティーヴ・マイケル・アイク:ロバート・ヴィック
リック・サラビア:ランディ・カートフ
ショーン・オブライエン:ラジオ番組の司会者

<映画.com>
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物語がすべてパソコンの画面上を捉えた映像で進行していくサスペンススリラー。16歳の女子高生マーゴットが突然姿を消し、行方不明事件として捜査が開始されるが、家出なのか誘拐なのかが判明しないまま37時間が経過する。娘の無事を信じたい父親のデビッドは、マーゴットのPCにログインして、Instagram、Facebook、Twitterといった娘が登録しているSNSにアクセスを試みる。だがそこには、いつも明るくて活発だったはずの娘とは別人の、デビッドの知らないマーゴットの姿が映し出されていた。『スター・トレック』シリーズのスールー役で知られるジョン・チョウが、娘を捜す父親デビッド役を演じた。製作に『ウォンテッド』のティムール・ベクマンベトフ。Googleグラスだけで撮影したYouTube動画で注目を集めた27歳のインド系アメリカ人、アニーシュ・チャガンティが監督を務めた。
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主人公のデビッド・キムは、家族の姿を収めたホームビデオをパソコンの画面上で鑑賞している。そこに写っているのはありし日の妻のパメラ。パメラは癌で亡くなっており、今は高校生の娘のマーゴットと2人きりの生活である。しかし、父娘の関係はどこも難しいものがある。そんなある日、マーゴットは勉強会に参加すると言って外出する。翌朝、デビッドはマーゴットが帰宅しておらず、しかも就寝中に3回も電話をかけてきていたことに気づく。

デビッドはその日がマーゴットが通っているピアノのレッスンの日であることを思い出し、ピアノ教室に連絡を入れる。するとマーゴットは半年前に勝手に退会しているという。不安に駆られたデビッドは弟のピーターに相談するが、「マーゴットくらいの年頃なら、親に告げずにフラっと遠出してもおかしくない」と言われる。悲しいかなこんな時、娘の交友関係を知らないため心当たりを当たる事もできない。それでも妻の遺したアドレスをもとにマーゴットの幼なじみの家に連絡を入れる。

すると、彼らがキャンプの企画を立てていたことを知らされる。一旦は安堵するも、実はマーゴットは待ち合わせ場所に来なかったと知らされる。ここに至って、デビッドは娘の失踪を警察に届け出て、担当がローズマリー・ヴィック刑事に割り当てられる。よくある展開では、思春期の娘の失踪だけに家出ではないかと疑われ、2〜3日様子を見ましょうなどと言われるが、この物語では警察は素早い動きを見せる。各地の防犯カメラの映像から、マーゴットは車で移動していたことが確認される。

警察が捜査している間に、何もせずにはいられないデビッドはマーゴットのPCを調べる。悪戦苦闘してFacebookにログインするも、マーゴットと本当に親しい友人は一人もわからない。また、デビッドがピアノ教室の月謝として渡していたお金は、マーゴットの銀行口座に貯蓄され、失踪直前に謎のアカウントに2,500ドル送金されていた事がわかる。さらにマーゴットは自分の偽造IDを作っており、娘のことを何一つ把握できていなかった事実を突きつけられデビッドは消沈する。

さらに調べた結果、デビッドはマーゴットのYouCastアカウントを突きとめ、娘が謎のユーザーと頻繁に会話しているのを発見する。「fish_n_chips」と名乗るそのユーザーは、自身の母親が闘病中であると語っており、それがマーゴットの関心を引いたようであった。しかしヴィック刑事は、調査の結果そのユーザーは無関係だったと言う。YouCastの映像とマーゴットのInstagramの投稿を照らし合わせたデビッドは、彼女がしばしばバルボッサ湖を訪れていること、湖はマーゴットの車が最後に目撃された高速道路の先にあったことから、湖を訪れたデビッドは、そこでマーゴットのキーホルダーを発見する。

ただちに警察がバルボッサ湖に派遣され、周囲の捜索を行ったところ、湖に沈められたマーゴットの車と2,500ドルの現金が発見される。こうした状況から事件は大々的なニュースになり、捜索隊が連日湖の周辺を捜索する。しかし、手がかりはつかめない。そんな中、デビッドは、マーゴットの居場所を知るとSNS上で吹聴していた若者を直接問い詰めに行き、暴力沙汰となったことが原因で捜査から締め出されてしまう。勇足にもめげてはいられない。デビッドは自力で娘の捜索を続ける・・・

『search/サーチ(原題はsearching)』というタイトルにある通り、突然娘が失踪した父親が、娘の手掛かりを求めて探していくというもの。現代ではその手法はSNSであったりする。デビッドは何とか娘のアカウントから手掛かりを求めていく。警察の捜査だけではこの事件は解決しなかったことから、娘を案じる父親の執念が実ったものと言える。調べていくうちに信頼していた弟のピーターがマーゴットと怪しい会話をしている履歴を発見し、まさかの弟が事件に関与しているという疑惑が出てくる。

いったいマーゴットに何があったのか。乗っていた車が湖に沈んでいたことから事件に巻き込まれたことは間違いない。疑惑が浮かんでは消え、事前の知識が何もないところで観たのであるが、意外に引き込まれてしまったというのが正直なところ。事件はさらに意外な展開を見せていく。それは主人公デビッドの気付きによるもので、それはまさに父親の捜査能力というよりも娘に対する執念の一言に尽きる。事件前はギクシャクしていた父娘関係もラストの写真を見ると安堵させられる。

途中の伏線もしっかり回収されており、ストーリーも面白い。この後、どんな父娘になっていったのか。ミステリー的な展開から、最後は幸せな想像をさせてくれる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2025年06月20日

【アニー・イン・ザ・ターミナル】My Cinema File 3023

アニー・イン・ザ・ターミナル.jpg

原題: Terminal
2018年 イギリス・ハンガリー・アメリカ・香港
監督: ボーン・スタイン
出演: 
マーゴット・ロビー:アニー / ボニー
サイモン・ペッグ:ビル・ブレイスウェイト
デクスター・フレッチャー:ヴィンス / ヴィンセント
マックス・アイアンズ:アルフレッド
マイク・マイヤーズ:フランクリン / クリントン

<映画.com>
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『スーサイド・スクワッド』のハーレイ・クイン役で大きな注目を集め、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』ではアカデミー主演女優賞にノミネートもされたマーゴット・ロビーが、主演のほかプロデューサーも務めたリベンジスリラー。イギリス、ロンドンの地下鉄終着駅のある街。ダイナーで働く女性アニーには、街の裏側で起こる厄介ごとをひそかに片付け、後始末する謎の美女という裏の顔があった。実は彼女にはある目的があり……。『ミッション:インポッシブル』シリーズのサイモン・ペッグ、「オースティン・パワーズ」のマイク・マイヤーズら個性派俳優が共演。主演のロビーが、ウエイトレスやナース、ポールダンサーなどさまざまなコスチュームで登場するのも見どころとなる。新宿シネマカリテの特集企画「カリコレ2018/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2018」(18年7月14日〜8月24日)上映作品。
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ロンドンのとある地下鉄。駅の構内で次の電車を待つ一人の男。男は元国語教師のビル。しかし、他に人影はなく、それもそのはずで、夜間の駅を管理する足の不自由な老駅員から終電は過ぎてしまい始発は朝の4時だと告げられる。困った様子のビルに、老駅員は24時間営業しているダイナーがあると伝える。教えてもらったダイナー「終着駅」へ向かったビルは、店内に入る。他に客の姿は無く、金髪のウェイトレス、アニーが迎える。

咳込みながらも煙草を吸い続けるビル。店内は2人きりであり、アニーはビルに話しかける。ビルは病気を患っているが、医者に見放されて半ば自暴自棄になっている。そんなビルに、アニーは「死は自分を自由にするチャンス」と語り、死を迎える事を楽しむように提案する。そしてビルに自ら命を絶つ事すら勧めるが、ビルはその提案を拒否する。するとアニーは、アニーの新しい恋人である殺し屋に殺してもらう事はどうかと持ち掛ける。

その3週間前。2人組の殺し屋ヴィンスとアルフレッドは、ダイナー「終着駅」で仕事の話をしている。堅物で切れ者のヴィンスと軽い性格で物事を深く考えないアルフレッド。ヴィンスは、自宅の留守番電話に入っていたメッセージに従い、地下鉄の駅のロッカーから黒いアタッシュケースを手に入れている。黒いアタッシュケースには、次に行う指示が書かれており、その独特の接触方法から、ヴィンスとアルフレッドは裏世界の大物 ミスター・フランクリンが自分たちに仕事を与えようとしていると察し、興奮する。

ヴィンスとアルフレッドは指示通りストリップバーを訪ねる。そこにいたのはアニー。妖艶なポールダンスを披露する。アニーはミスター・フランクリンのアタッシュケースをヴィンスに渡す。ミスター・フランクリンの次の指示は「ある廃墟ビルで直接会い、仕事の話をする」というもの。ただし、廃墟ビルには、ヴィンスかアルフレッドのどちらか1人で来る事とする。ヴィンスが指定された廃墟ビルに1人で向かうと、そこにはまたアニーがいる。アニーに案内された部屋でヴィンスはミスター・フランクリンからの電話を受ける。

一方、1人になったアルフレッドは「終着駅」にいるアニーに会いに行く。そこに、老駅員が現れ、アタッシュケースをアルフレッドに渡す。ヴィンスとアルフレッドが受け取ったメッセージは同じ。「ある部屋で待機してターゲットが通ったら狙撃する」という内容。そして、もう一つ「仕事が終わり次第、パートナーも消す事」と伝えられる。そして3週間後、ミスター・フランクリンの指示通りに部屋で待機しているヴィンスとアルフレッド。ターゲットが現れない苛立ちとお互いへの不信感から2人は精神的に疲弊している。

場面代わって、ビルはアニーに連れられてロンドン駅構内の地下にある巨大な穴がある場所へやってくる。死について話しているアニーはビルに穴の中に飛び降りるよう提案するが、その異常な要求にビルは怒りを覚える。アニーを罵倒するビルは、「悪い子だ!」と叫んだ瞬間、ある記憶が蘇る。それは孤児の子供が集まる施設で教師をしていた時代の記憶。その時、ビルは1人の女子生徒に性的な暴行を加えたのである。その記憶が目の前にいるアニーと結びつく・・・

全体的に暗くて怪しげな雰囲気の映画。ロンドンの地下鉄駅構内ということになっているが、どこか異世界のようでもある。主演のマーゴット・ロビーがそこに立つと『スーサイド・スクワッド』(My Cinema File 2561)のハーレイ・クインと見まがうほどである。この映画のアニーをハーレイ・クインと入れ替えても違和感はない。そして陰で暗躍する人物の正体。何となく想像がついてしまったが、それでもひねりが効いている。どこか異世界のような雰囲気の中、冷たくクールに、そして狂気を秘めた主人公の姿が何とも言えない映画である・・・


評価:★★☆☆☆









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2025年01月30日

【SWALLOW/スワロウ】My Cinema File 2962

スワロウ.jpg

原題: Swallow
2019年 アメリカ・フランス
監督: カーロ・ミラベラ=デイビス
出演: 
ヘイリー・ベネット:ハンター・コンラッド
オースティン・ストウェル:リッチー・コンラッド
エリザベス・マーヴェル:キャサリン・コンラッド
デヴィッド・ラッシュ:マイケル・コンラッド
ライト・ナクリ:ルアイ
デニス・オヘア:ウィリアム・アーウィン
ザブリナ・ゲバラ:アリス

<シネマトゥデイ>
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異物を飲み込み続けることで、自分を取り戻していく女性を描くスリラー。孤独に苛(さいな)まれた主人公が、ガラス玉などを飲み込むことで、痛みと同時にこれまで感じたことのない快楽と充足感を得る。『KRISTY クリスティ』などのヘイリー・ベネットが製作総指揮と主演を務め、カーロ・ミラベラ=デイヴィスが監督と脚本を担当。『セッション』などのオースティン・ストウェル、ドラマシリーズ「HOMELAND」などのエリザベス・マーヴェルらが出演する。
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主人公のハンターは、ニューヨーク郊外の贅沢な邸宅に引っ越し、夫リッチーと共に新生活をスタートさせる。夫は父親の経営する会社の役員を務め、ハンターはリッチで誰もが羨む生活を送っている。しかし、そんな贅沢な暮らしでも不満というものは沸いてくる。部屋のカーテンについて夫に相談しても「好きなようにしていいよ」と優しく答えてくれる。入念に夕食の準備をし、着飾って帰宅した夫を出迎えても仕事の電話に応じる夫。夫の立場から見ればやむを得ないが、ハンターには物足りなさが残る。

夫の両親やその家族らの集まりは、上流階級のエレガントな集いとなるが、ハンターには疎外感が付きまとう。話を振られたハンターが話し始めるも、そのペースにイラついたのか、父親は話を遮って話題を変えてしまう。途方に暮れたハンターの目に止まったのはキラキラと輝く氷。ハンターはそれを口に入れ、バリバリと音を立てて噛む。その場にいた家族はみな驚くが、気付いたハンターが詫びてその場は事なきを得る。

しばらくしてハンターの妊娠がわかる。周囲は大いに喜ぶ。ハンターは義母から自分が妊娠した時に読んだ本を渡される。しかし、ハンターの気は晴れない。ある日、いつものように家事をしていたハンターは、小物入れのなかに入っていたビー玉に目が留まる。そして、それを手に取り、おもむろに口の中に入れ、飲み込む。それから数日後、トイレに入ったハンターは、排泄後便器に手を入れる。取り出したのはビー玉。ハンターはそれを洗うと鏡台の上に保管する。

やがてハンターは、衝動を抑えきれず、今度は画鋲を口に入れる。舌が傷つき、一度は吐き出すものの、意を決してもう一度飲み込む。激痛に苦しむもその行動はエスカレートしていく。金属片や電池などあらゆるものを飲み込む。しまいには義母からもらった本すらも読んだページを破って口に入れる。ここに至り、『Swallow(飲み込む)』というタイトルの意味がわかってくる。鏡台の前には排泄されたものの「コレクション」が並ぶ。

やがて産院の検診で、腹に異物が入っていることが発覚する。飲み込んだものがすべてスムーズに排泄されていたわけではないのか、腹の中のから異物が次々と取り出される。ここに至り、夫らの知るところとなる。ハンターは精神疾患と診断されるが、夫は結婚前に言うべきだとハンターを責める。反省するハンターだが、夫と義父母から精神科医に通わされることになる。さらに住み込みの看護士を雇い、ハンターの手伝いをするという名目で実質的な監視役がつく。ハンターの日常生活はさらに苦しいものになっていく・・・

人間というものは、常に満足するという事ができないのだろうかとふと思う。ハンターは家族に恵まれたとは言えない環境に育ったが、どういう経緯か金持ちでハンサムな夫と結婚し、贅沢な暮らしができる誰もが羨む生活を送っている。しかし、何もしなくても良いという環境が返って心を蝕むのか、異物を飲み込むという行為に陥っていく。象徴的なのは雇われた看護師の言葉。シリアの内戦を逃れて来たという経歴のその看護師は、生きるか死ぬかという中で心の病気になる暇などなかったと言う。もっともである。

看護師からすればハンターの状況は「贅沢病」と映るのだろうが、ハンターにすれば慣れない贅沢におかしくなったという事もできるかもしれない。そしてハンターの身を案じる夫と義理の両親の対応も返って逆効果になる。自らの出自に関するトラウマもハンターの精神を蝕んでいく。そしてハンターはついにとある行動に出る。幸せ過ぎる環境が逆に働くというのも、恵まれていない人からすれば理解できないかもしれない。ハンターに批判的だった看護師が最後にハンターに同情的になったことに少し安堵する。

ラストでハンターの取った行動。それがハンターの幸せにつながったのだろうか。ハンターの幸せをちょっと願ってしまった映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年07月04日

【キャラクター】My Cinema File 2872

キャラクター.jpg
 
2021年 日本
監督: 永井聡
原案: 長崎尚志
出演: 
菅田将暉:山城圭吾
Fukase:両角
高畑充希:川瀬夏美
中村獅童:真壁孝太
小栗旬:清田俊介
松田洋治:辺見敦
小木茂光:奥村豊
テイ龍進:浅野文康
中尾明慶:大村誠
岡部たかし:加藤一郎
橋爪淳:山城健太
小島聖:山城由紀
見上愛:山城綾
宮崎吐夢:本庄勇人

<シネマトゥデイ>
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『アルキメデスの大戦』などの菅田将暉と、バンド「SEKAI NO OWARI」のメンバーで本作が俳優デビューとなるFukaseが共演するサスペンス。悪を描けない漫画家が、偶然目撃した猟奇的な殺人犯を参考に漫画のキャラクターを生み出すも、それにより人生を翻弄(ほんろう)される。原案・脚本を担当するのは、漫画原作者として「MASTERキートン」などを手掛けてきた長崎尚志。監督を菅田が主演した『帝一の國』などの永井聡が務める。
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主人公は漫画家のアシスタントをしている山城圭吾。自身、漫画家を目指してコツコツと自作の漫画を描いている。それを支えるのは、同棲中の恋人・川瀬夏美。山城は画力の高さを評価されているが、新人賞で佳作を獲ったことはあるものの、デビューするまでには至っていない。これが最後と思い定めた作品を出版社の編集者大村に見せるも、あっさりとダメだしされてしまう。画力は高いが、「リアリティーがない」というのがその理由であった。「せめてリアリティーのあるキャラクターが欲しい」との要望に項垂れる山城であった。

その日、山城は従事している人気ホラー漫画家の本庄にアシスタントを辞めることを伝える。その最後の日、本庄はアシスタントたちに「誰が見ても幸せそうな家をスケッチしてくれ」と頼む。みんなが忙しそうな様子を見て、山城がこれを引き受ける。山城は幸せそうな家を探して夜の住宅街を自転車で走り回り、とある一軒家に目をつけてスケッチを始める。家の中からは大音量でオペラ音楽が流れており、しばらくして玄関のドアが開く。スケッチを咎められると思った山城は、慌てて声を掛けると返事もなくドアが閉まる。

すると隣家の住民から音楽がうるさいと苦情があり、山城はそれを伝えに家人に呼び掛ける。返事がないのを不審に思った山城は恐る恐る家の中に入っていく。すると、リビングでこの家に住む船越一家の4人が椅子にロープで縛り付けられ、滅多刺しにされて殺害されているのを発見してしまう。驚いて腰を抜かした山城は、庭に包丁を手にした男の姿を目撃する。すぐに警察と救急車が駆け付け、現場の船越家一帯は騒然とした雰囲気に包まれる。

捜査を担当するのが、神奈川県警察本部捜査第一課の清田とその上司の真壁。山城は第一発見者として事情聴取を受けるが、犯人の顔を見ていたにも関わらず、なぜか見ていないと供述する。第一発見者は容疑者の筆頭であるが、山城には被害者の死亡推定時刻にアシスタントとしてのアリバイがあり、山城は解放されて帰宅する。しかし、清田は山城が何かを隠していることを敏感に感じ取る。そして帰宅した山城は、やめるはずの漫画を一心不乱に描き始める。脳裏にあるのは、事件現場で目撃した犯人の顔。

一方、警察は捜査本部を立ち上げ、現場近くに住む辺見敦という男を調べる事にする。辺見は過去にストーカー殺人事件を起こし、医療少年院に入れられた前科があった。警察の取り調べに対し、辺見はあっさりと「私がやりました」と告白する。しかし、犯行の動機や凶器の行方、被害者との関係については「覚えていない」と繰り返す。警察は辺見を殺人容疑で逮捕するが、清田は何か納得できないものを感じている。

それから1年。山城の描いた漫画『34(さんじゅうし)』は大ヒットし、山城は一躍人気漫画家の仲間入りを果たしている。弱いと言われていたリアリティは、本物の殺人事件を目の当たりにした事で改善されたのである。一躍成功者となった山城は、夏美と結婚し、セキュリティの厳重な高級マンションに引っ越している。『34』の登場キャラクターである殺人鬼“ダガー”は、あの夜の殺人鬼の男そのものである。

その男は、警察に捕まるどころか容疑すらかけられることなく、とある山道を歩いている。どうやら乗っていた車が故障してしまったようであるが、通りかかった1台の車が男の前で止まる。車に乗っていたのは、4人家族の原一家。親切心から男を途中まで乗せることにするが、妻は不安気な様子。男は「4人家族は幸せですね」と呟き、一家の子供が読んでいた『34』を見ると、“ダガー”は自分に似ていないかと訊く。そして場面は変わり、山道脇の崖に転落した車の車中から座席に縛り付けられて殺害された原一家の4人の遺体が発見される。

事件現場にやってきたのは、所轄外の清田とその上司の真壁。管轄の刑事に疎まれながら、清田は、車の天井から凶器とみられる包丁を発見する。よく見つけたと褒める真壁に対し、清田は山城の漫画『34』を見せる。そこには今回の原一家殺害現場の様子が驚くほど克明に描かれており、車の天井から凶器が見つかるという展開も描かれた内容そのままであった。真壁と清田は、一連の事件の犯人は同一犯で、真犯人は作者の山城本人か『34』を読んだ模倣犯の可能性があると考える・・・

ひょんな事から殺人事件の現場を目撃してしまった漫画家志望の主人公。画力はいいが、ストーリーにリアリティがないとして日の目を見れずにいる。それが本物の殺人事件の現場を目撃してしまった事から運命が変わる。実際の事件はリアリティそのもの。弱点が克服されて殺人鬼が登場する漫画を大ヒットさせる。しかし、今度は犯人がその漫画を見てなぞるように事件を起こす。そして山城に共感した犯人が、今度は山城に接触してきて「共作」を申し出る。こうして山城は不本意な形で殺人鬼に付きまとわれるようになる・・・

実際の殺人現場と殺人犯とを目撃してしまった山城。それまでの不遇を抜け出すチャンスとばかりに事件をベースに漫画を描きあげ、そしてこれが成功する。その心境はよくわかる。もしも自分が山城の立場だったら同じことをするだろう。だが、犯人を目撃したことは警察に打ち明けても良かっただろうと観ていて思う。自分だったらそうした上で漫画にしただろう。そうすれば、山城の身に起こったようなことは避けられていたかもしれない(そうしたら映画にもならなかっただろう)。

やがてずうずうしく山城に接触してくる犯人。そうするとその先の展開も少し見えてくる。山城も勇気を振り絞り行動に移す事で犯人と対峙することになる。菅田将暉、高畑充希、中村獅童、小栗旬とそれだけで観たくなるようなキャスト。犯人役は「SEKAI NO OWARI」のFukase。と言ってもあまり興味のない身には初めて観るが、狂気とどこかネジの外れた言動がなかなかいい感じであった。最後の瞬間まで楽しめ、そしてほっとした後、山城の目に何か違う色が宿るのを観た気がした。

先が読めそうで読ませてくれなかったストーリー展開。なかなか楽しめた一作である・・・


評価:★★★☆☆








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