2025年08月07日

【夏目アラタの結婚】My Cinema File 3045

夏目アラタの結婚.jpg
 
2024年 日本
監督: 堤幸彦
原作:
乃木坂太郎
出演: 
柳楽優弥:夏目アラタ
黒島結菜:品川真珠
中川大志:宮前光一
丸山礼:桃山香
立川志らく:大高利郎
福士誠治:桜井健
今野浩喜:井出茂雄
佐藤二朗:藤田信吾
市村正親:神波昌治

<映画.com>
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乃木坂太郎の同名ベストセラーコミックを堤幸彦監督のメガホンで実写映画化し、死刑囚との獄中結婚から始まる危険な駆け引きの行方を描いたサスペンス映画。
日本中を震撼させた連続バラバラ殺人事件の犯人で、逮捕時にピエロのメイクをしていたことから「品川ピエロ」の異名で知られる死刑囚・品川真珠。児童相談所職員の夏目アラタはその事件の被害者の子どもに頼まれ、まだ発見されていない被害者の首を探すため真珠に接触を試みる。アラタの前に現れた真珠は、残虐な事件を起こした凶悪犯とは思えない風貌だった。アラタは真珠から情報を引き出すため、大胆にも彼女に結婚を申し込む。毎日1回20分だけ許される面会の中で、会うたびに変わる真珠の言動に翻弄されるアラタ。やがて真珠はアラタに対し、自分は誰も殺していないと衝撃の告白をする。
主人公・夏目アラタを柳楽優弥、死刑囚・品川真珠を黒島結菜が演じ、佐藤二朗、中川大志、丸山礼、立川志らく、市村正親が共演。『翔んで埼玉』シリーズの徳永友一が脚本を手がけた。
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下町の古びたアパートに警察官がやってくるところから物語は始まる。自転車で来た様子から、当初は軽く考えていたのだろう。しかし、管理人立会いの下でその一室に踏み込んだ警察官は、切断された手足をバッグに詰めているピエロのメイクをした小太りの女を発見して驚愕する。女はその場ですぐに逮捕されるが、室内の血痕から都内で発生していた他の事件との同一事件として連続バラバラ殺人事件と認定される。被害者は3人でいずれも社会的に成功している人物。しかし、被害者の周防英介は左腕、相沢純也は右足、山下良助は頭部が発見されないままであった。さらに室内には4人目の血痕が残っていて、その遺体はどこからも見つからないのであった。

犯人は品川真珠という20歳の女で、彼女は逮捕時の容姿から「品川ピエロ」と世間で呼ばれる。逮捕以降3年間、黙秘を続けるも一審の判決で死刑を言い渡される。被害者の1人山下良介の息子・卓斗は事件以後不登校になり、児童相談所で働く夏目アラタと度々面談していたが、ある日、アラタに謝罪とお願いがあると母親から連絡が入る。実は拓斗は発見されていない父の頭部がどこにあるのかを聞き出すため、アラタの名前で品川ピエロと文通を始めたと言う。実名だと被害者の親族だとバレると考え、家にアラタの名刺があったことから名前を拝借したようである。

しかし、最後に届いた手紙に「直接会って話そう」と書かれてあり、それ以降は手紙を送っても返事はなかったと言う。拓斗の頼みとは、代わりに真珠と面会して父親の頭部のありかを聞き出してほしいというものであった。そしてアラタはこの頼みを聞き入れることにする。さっそく品川ピエロこと品川真珠に面会するため、東京拘置所へと出向くアラタ。緊張感に包まれながら面会室でに現れた真珠は、報道などで伝えられた容姿とは全く違い、ほっそりとした幼さも残る若い女性であり、アラタは拍子抜けする。

ところが、真珠はアラタを見て「思っていたのと違う」と言って、戻ろうとする。驚いたアラタは、真珠を引き止めようと、咄嗟に俺と結婚しようと呼び止める。これが功を奏する。面会の席についた真珠は、手紙の文字は幼くて、“こんにちは”の「は」を「わ」と書いていたと指摘する。アラタは疑われ試されていると感じつつ、適当に誤魔化す。さらに真珠はアラタに事件の関係者かと聞く。真珠は自分のことを「ボク」と言い、恐くないのか、出所したら一緒に暮らせるのかと尋ねる。アラタは内心恐怖を覚えながらも、無罪の確率がないと踏んで「もちろん」と答える。

よく死刑囚と獄中結婚したというニュースを聞く。それは死刑制度反対の意思表示か売名行為かと思っていたが、実は死刑囚と結婚を望む人は、死刑が確定してしまうと家族以外の面会や手紙の条件が厳しくなるので、支援者や情報が欲しい記者が多いのだと言う。これはなるほどと思わされる。アラタは今後の文通について、筆跡でバレるのを防ぐため拓斗に清書をしてもらうことにするが、“こんにちは”のことを聞くと、拓斗はそれを否定する。アラタは鎌をかけられたことがわかる。

しばらくしてアラタの下に真珠の弁護士宮前光一が訪ねてくる。真珠との結婚が本意であるかを確認し、獄中結婚の多くは離婚に終わり、更に死刑囚との場合は周囲の理解が得られず、職場にも居づらくなることを諭す。実際にそうなのかもしれないが、そういう事を知るという意味では面白い。こうしてアラタは真珠との婚姻届を提出する。物語はアラタと真珠との面会を中心に進む。宮前は真珠の生い立ちを説明するが、IQが突然異常に高くなっていることなどの疑問点も語られる。アラタも面会での会話から真珠の頭の良さを感じており、謎が残る。

物語は真珠が自分は誰も殺していないと言い出し、ミステリーの様相も出てくる。探し求める頭部はどこにあるのか。真珠はアラタに遺体の一部を隠した場所を暗示する。そしてその通りに遺体の一部が発見される。少なくとも死体遺棄には関わっているようである。果たして真珠は殺人を犯していないのか。映画を観ながらいつの間にかどちらだろうかと先のストーリーを想像していく。それにしても真珠は不気味である。なかなかの美人なのであるが、唯一歯並びも含めて歯が汚い。演じるのは女優さんだからさすがに本物の歯ではないだろうが、真珠の育ちが見事に歯に現れている。

凶悪な死刑囚が獄中から面会に来た者を振り回すというのは、これまでも『羊たちの沈黙』(My Cinema File 2813)『死刑にいたる病』(My Cinema File 2657)などがあったが、相手は牢獄の中で何もできないとわかっていても不気味な恐怖を感じさせる。そして二審の裁判が始まると真珠はそれまでの黙秘一辺倒から一転して饒舌に語り始める。真珠の生い立ちから事件に至る経緯が明らかになる。それはなかなかのもの。主演の柳楽優弥も演技力の高い役者さんだから、強気と弱気とが入り混じったようなアラタの心理がよく伝わってくるようであった。そして判決は意外な事実が判明して着地する。

真珠の不気味さと振り回されつつ自分を貫くアラタ。法律の意外な盲点をついた展開。そして真珠とアラタの意外な接点。役者陣にもストーリーにも満足させられる。なかなか心にヒットした映画である・・・


評価:★★★☆☆








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2025年08月05日

【9人の翻訳家 囚われたベストセラー】My Cinema File 3043

9人の翻訳家 囚われたベストセラー.jpg

原題: Les traducteurs
2019年 フランス・ベルギー
監督: レジス・ロワンサル
出演: 
ランベール・ウィルソン:エリック・アングストローム
オルガ・キュリレンコ:カテリーナ・アニシノバ
リッカルド・スカマルチョ:ダリオ・ファレッリ
シセ・バベット・クヌッセン:エレーヌ・トゥクセン
エドゥアルド・ノリエガ:ハビエル・カサル
アレックス・ロウザー:アレックス・グッドマン
アンナ・マリア・シュトルム:イングリット・コルベル
フレデリック・チョウ:チェン・ヤオ
マリア・レイチ:テルマ・アルヴェス
マノリス・マブロマタキス:コンスタンティノス・ケドリノス
サラ・ジロドー:ローズマリー・ウエクス
パトリック・ボーショー:ジョルジュ・フォンテーヌ

<映画.com>
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世界的ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」をはじめとするダン・ブラウンの小説「ロバート・ラングドン」シリーズの出版秘話をもとにしたミステリー映画。シリーズ4作目『インフェルノ』出版時、違法流出防止のため各国の翻訳家たちを秘密の地下室に隔離して翻訳を行ったという前代未聞のエピソードを題材に描く。フランスの人里離れた村にある洋館。全世界待望のミステリー小説「デダリュス」完結編の各国同時発売に向けて、9人の翻訳家が集められた。翻訳家たちは外部との接触を一切禁止され、毎日20ページずつ渡される原稿を翻訳していく。しかしある夜、出版社社長のもとに「冒頭10ページをネットに公開した。24時間以内に500万ユーロを支払わなければ、次の100ページも公開する。要求を拒めば全ページを流出させる」という脅迫メールが届く。社長役に「神々と男たち」のランベール・ウィルソン、翻訳家役に『007 慰めの報酬』のオルガ・キュリレンコ、『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』のアレックス・ロウザー。「タイピスト!」のレジス・ロワンサルが監督・脚本を手がけた。
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世界中が待ち望んでいたベストセラーミステリー『デダリュス』三部作の完結編「死にたくなかった男」が、いよいよ出版されることになる。ドイツで開催されたブックフェアの会場で、出版社社長エリック・アングストロームが、「この話題作の出版独占権を獲得した」と高らかに宣言する。爆発的なヒット間違いなしとして、全世界で一斉発売すると発表する。『デダリュス』の原作者であるオスカル・ブラックは世間に顔を出しておらず、謎の人物であるが、エリックは彼の教え子であり、正体を知る唯一の人物となっている。

全世界で一斉発売するためには、事前に多言語の翻訳作業を行わないといけない。話題作であるがために翻訳作業の過程でストーリーが漏れるのは防がないといけない。そのためフランスの豪邸に9カ国の翻訳家たちが集められ、缶詰め状態で翻訳作業が行われることになる。そうしてロシア語の翻訳家カテリーナ、イタリア語の翻訳家ダリオ、デンマーク語の翻訳家エレーヌ、スペイン語の翻訳家ハビエル、英語の翻訳家アレックス、ドイツ語の翻訳家イングリット、中国語の翻訳家チェン、ポルトガル語の翻訳家テルマ、ギリシャ語の翻訳家コンスタンティノスの9人が集められる。残念ながら日本語版は同時発売の対象外らしい。

豪邸には、ロシアの豪富が核戦争に備えて作ったという広大な地下室があり、プールにシアタールーム、ボーリング場まで完備された豪華さ。9人の翻訳家は、入り口で携帯とパソコンとすべての通信機器を没収され、外部との接触を一切禁じられる。さらに警備員が監視する部屋で、毎日20ページだけ渡される原稿を翻訳するといった徹底した秘密管理の下で作業はスタートする。期限は1カ月、そして推敲に1カ月を要するスケジュールが知らされる。翻訳家たちは、それぞれに自分のスタイルがあり、このやり方に不満を漏らす者もいて重々しい空気が流れる。

物語はそれから2カ月後に飛ぶ。刑務所で対峙するのはエリックと英語の翻訳家アレックス。エリックはアレックスに対し、怒りを露わする。「どうやって盗んだんだ!」と。いったい何が起こったのか。興味をそそられるまま、物語は時を戻し、地下室での翻訳作業の様子を追う。カテリーナは熱狂的なオスカルのファンで、「デダリュス」シリーズの登場人物を真似て白いドレスに身を包み、新作をいち早く読むことができる翻訳作業に喜びを感じている。一方、コンスタンティノスは金のためだと開き直り、幼い子供と夫を残して単身やってきたのはエレーヌ。アレックスは皆が必死で翻訳に取り掛かる中、居眠りをする。翻訳家たちもそれぞれである。

クリスマスの夜、社長エリックの秘書で世話係のローズマリーを交え、パーティーを楽しむ翻訳家たち。しかし事件は次の日に起こる。エリックのもとに何者かから脅迫メールが届く。それは原稿の冒頭の10ページを流出させたというもの。さらに24時間以内に500万ユーロを振り込まないと、次の100ページも流出させるという。厳重に管理している原稿がネットに流出されたとあり、エリックは犯人は9人の翻訳家の中にいるはずと睨む。そして翻訳家たちの部屋を警備員が徹底的に調べ上げる。

エレーヌの部屋から小説の原稿が見つかるが、それはもともと小説家志望のエレーヌ自身が書いたもの。しかし、エリックは冷酷にもこの原稿を燃やしてしまう。また、ハビエルは左手にギブスをしていたが、ギブスの中に通信機を隠し持っているのだろうとギブスを剥がされる。カテリーナは、小説の続き見たさにエリックの書斎に忍び込んだことがあり、それを知ったダリオに犯人だと名指しされる。翻訳家たちの間にも疑心暗鬼が生じる。そうしている間にも脅迫メールは100ページ分を流出させたと告げてくる。次は6時間以内に2000万ユーロを振り込まないとさらに100ページ分が流出することになる・・・

全世界同時発売という事は、実際に小説が1つの言語で書かれている以上、発売前に翻訳を強いられることになる。その過程での原稿流出を危惧し、翻訳者を缶詰めにして翻訳作業を行うという事は実際にあったそうで、それもダン・ブラウンの小説「ロバート・ラングドン」シリーズの出版秘話だと聞くとなるほどと思わされる。この映画はさらにそこに加えて、秘密のはずの原稿がどこかから漏れてネットに晒されるという事態を描いている。せっかくの金のなる木がタダでネットにさらされるのは出版元には由々しき事態である。一体誰が、どうやってというミステリー要素の高い物語。

エリックに疑われているのは9人の翻訳家。9人は建物内に監禁状態であり、手元の荷物からは原稿が見つかっていない。焦るエリックを尻目に原稿は次々とネットにアップされる。エリックの焦りは募る。9人の中に犯人はいると睨み(そしてその通りであるのだが)、必死に犯人探しを続ける。やがて苛立つエリックによって事件が起きる。そして、隠されていた真相が明らかになる。犯人がなぜ原稿を流出させられたのか。そこにはトリックがあり、そしてエリックは収監され、物語は意外な結末を迎える。

ミステリー小説出版にからむミステリー。人間、欲が絡むとどうしても醜くなってしまう。ラストでとある少年と小さな本屋の店主との交流が描かれる。それは翻訳家の1人の少年時代の話。本好きな少年に店主は好感を持ち、ここで働かないかと誘う。純粋に本が好きな2人の出会い。金も名誉も関係なく、やがて少年は小説を書く。本来のあるべき姿がいつしか欲にまみれていく。エリックも欲にまみれなければ、もっと幸せに儲けられていたのかもしれない。映画はエンタメであると同時に時に人生の真理を伝えてくれる。そんなことを感じさせてくれる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2025年07月04日

【プロミシング・ヤング・ウーマン】My Cinema File 3029

プロミシング・ヤング・ウーマン.jpg

原題: Promising Young Woman
2020年 アメリカ
監督: エメラルド・フェネル
出演: 
キャリー・マリガン:カサンドラ・トーマス/キャシー
ボー・バーナム:ライアン
アリソン・ブリー:マディソン
クリス・ローウェル:アル
クランシー・ブラウン
ジェニファー・クーリッジ
ラヴァーン・コックス
コニー・ブリットン

<映画.com>
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Netflixオリジナルシリーズ「ザ・クラウン」でチャールズ皇太子の妻カミラ夫人役を演じ、テレビシリーズ「キリング・イヴ Killing Eve」では製作総指揮や脚本を担当するなど、俳優・クリエイターとして幅広く活躍するエメラルド・フェネルが、自身のオリジナル脚本でメガホンをとった長編映画監督デビュー作。ごく平凡な生活を送っているかに見える女性キャシー。実はとてつもなく切れ者でクレバーな彼女には、周囲の知らないもうひとつの顔があり、夜ごと外出する謎めいた行動の裏には、ある目的があった。明るい未来を約束された若い女性(=プロミシング・ヤング・ウーマン)だと誰もが信じていた主人公キャシーが、ある不可解な事件によって約束された未来をふいに奪われたことから、復讐を企てる姿を描く。主人公キャシーを「17歳の肖像」『華麗なるギャツビー』のキャリー・マリガンが演じ、「スキャンダル」『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』『スーサイド・スクワッド』で知られる女優マーゴット・ロビーが製作を務めている。2021年・第93回アカデミー賞で作品、監督、主演女優など5部門にノミネートされ、脚本賞を受賞した。
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とあるバーで飲む男3人組。視線は泥酔した女性に向かう。ものにできると見て3人組の1人が女に声をかけ、送るとタクシーに乗せる。しかし、男は途中で自分の家に女を連れ込む。泥酔している女にさらに酒を飲ませると、女をベッドに押し倒す。行為に及ぼうとした瞬間、女は目を覚まし、低い声で「何をしている?」と男に聞く。それは先ほどまでの泥酔が嘘のようにしらふな様子で男はたじろぐ・・・

女の名はキャシー。年齢は30歳目前であり、両親と同居しコーヒーショップで働いている。恋人も友達もいないキャシーを両親は心配しているが、キャシーにとっては疎ましいだけ。実はキャシーには両親も知らない顔がある。夜な夜な派手なメイクをし、露出の高い服を着て泥酔したふりをしては、下心をむき出しにして声をかけてくる男に制裁を下している。残念ながら冒頭の男にしても具体的に何をしているのかは描かれない。

キャシーがそんな事をしているのには理由がある。キャシーは元々医大に通う学生であったが、友人ニーナが医大生らのパーティで酔い潰れ、アル・モンローにレイプされたのである。訴えたものの、アル・モンローは親が有能な弁護士を雇った事もあり、処罰もされずに終わってしまう。ショックを受けたニーナは自殺し、ショックを受けたキャシーも大学を中退してしまう。そんなある日、キャシーの働くコーヒーショップに同じ大学に通い、現在は小児科医となったライアンが偶然やってくる。

同じ医大に通ったにもかかわらず、小児科医として働くライアンと中退してコーヒーショップで働くキャシー。2人の差は対照的。そして自らの失言に気付いたライアンは、コーヒーに唾を吐いてもいいよと冗談めかして言うが、キャシーは言葉の通りコーヒーに唾を吐く。ライアンは驚いた顔をしつつも、もともとキャシーに好意を抱いていたこともあり、そのコーヒーを飲み、食事に行かないかと誘う。すぐに応じるわけもなく、キャシーはデタラメな連絡先を教える。デタラメとわかったライアンは再びキャシーの働くコーヒーショップを訪れ、懲りずにキャシーを誘う。

そしてライアンが大学時代の旧友らと今も付き合いがあること、あの事件に関わりのある人々の名前を聞くとキャシーはある計画を練り始める。医学部の同級生で今はリッチな母親になったマディソン、大学の学部長、ニーナがアル・モンローを訴えた訴訟を揉み消した弁護士と次々にキャシーは訪れていく。しかし、弁護士はニーナの事件を揉み消したことを後悔し、仕事も休職し、心から悔いている様子にキャシーは許しを与える。その様子に復讐することの虚しさを感じ、ライアンとの恋愛に前向きになり始めたキャシーだが、マディソンから事件の動画を受け取り、そこには面白がっている周りの人々が写っており、その中にライアンの姿を見つける・・・

大学時代の親友がレイプされ、それを苦にして自殺したことから、自ら医学への道を閉ざして毎日を惰性で生きるキャシー。時折泥酔した振りをして男たちに復讐している。それがとうとう事件の当事者を狙っていく物語。原題は「将来を約束された若い女性」。何とも言えない原題である。男にとっては大したことではなくても、女にとってはショックである。自殺した友に比べ、この世の春を謳歌する男たち。復讐劇は蜜の味。しかし、すっきりした復讐劇にはならない。冒頭のキャシーの行為は描かれず、具体的にどんな事をしたのかわからない。何と言っても女の細腕である。

ラストに至る復讐劇は意外な方向へと進んでいく。ひとひねりされた展開は予想外であり、なかなかである。それにしてもこの結末をどう捉えるか。ハッピーエンドでもなく、すっきりした復讐劇でもない。何とも言えない結末の映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2025年02月14日

【ファントム・スレッド】My Cinema File 2968

ファントム・スレッド.jpg

原題: Phantom Thread
2017年 アメリカ
監督: ポール・トーマス・アンダーソン
出演: 
ダニエル・デイ=ルイス:レイノルズ・ウッドコック
レスリー・マンヴィル:シリル
ヴィッキー・クリープス:アルマ
カミーラ・ラザフォード:ジョアンナ
ジーナ・マッキー: ヘンリエッタ・ハーディング伯爵夫人
ブライアン・グリーソン:ロバート・ハーディング医師
ハリエット・サンソム・ハリス

<映画.com>
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『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のポール・トーマス・アンダーソン監督とダニエル・デイ=ルイスが2度目のタッグを組み、1950年代のロンドンを舞台に、有名デザイナーと若いウェイトレスとの究極の愛が描かれる。「マイ・レフトフット」 『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』 『リンカーン』で3度のアカデミー主演男優賞を受賞している名優デイ=ルイスが主人公レイノルズ・ウッドコックを演じ、今作をもって俳優業から引退することを表明している。1950年代のロンドンで活躍するオートクチュールの仕立て屋レイノルズ・ウッドコックは、英国ファッション界の中心的存在として社交界から脚光を浴びていた。ウェイトレスのアルマとの運命的な出会いを果たしたレイノルズは、アルマをミューズとしてファッションの世界へと迎え入れる。しかし、アルマの存在がレイノルズの整然とした完璧な日常が変化をもたらしていく。第90回アカデミー賞で作品賞ほか6部門にノミネートされ、衣装デザイン賞を受賞した。
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物語の舞台は1950年代のロンドン。主人公のレイノルズ・ウッドコックは、社交界のセレブや金持ちを顧客とするオートクチュールの仕立屋。独身の姉のシリルと2人で自らのファッション・ブランドを運営している。そんなレイノルズは仕事の虫。その日も朝から食事もそこそこに仕事をする。一緒に食卓についていた恋人も、甘い会話など望むべくもない。そんな態度に愛想をつかしてしまう。

ある日、郊外の別荘へ向かったレイノルズは、立ち寄ったレストランで働くウェイトレスのアルマを見染める。アルマもまんざらではない様子。そしてレイノルズはいきなりアルマを食事に誘う。仕事の虫の割には手が早い。高級レストランで食事をし、うっとりとしたアルマを別荘へと連れて行く。しかし、ベッドに直行するのではなく、仕事場へと誘い、そこでアルマの体の採寸を始める。どこまでが愛情でどこまでが仕事なのかわからないが、レイノルズはアルマを自宅へ連れ帰る。

レイノルズはそのままアルマをモデルとしてしまう。レイノルズとアルマは交際なのか仕事仲間なのか曖昧なままに関係を続ける。しかし、レイノルズの態度は変わらず、朝食時にも仕事に没頭し、アルマに対してトーストにバターを塗る音にも反応して文句を言う。されどアルマはそんなレイノルズを受け入れ、言われるままにモデルとしてショーにも登場する。ショーの後、疲れ果てたレイノルズをアルマはいたわり、やがてアルマはレイノルズのアシスタントのようになっていく。

ある時、レイノルズはバーバラという常連客に結婚式のドレスを納入する。結婚式の当日、レイノルズはアルマと共に式に出席する。しかし、その場でバーバラは酔ってしまい、醜態をさらす。それを見ていたアルマは、レイノルズにバーバラには自分たちのドレスはふさわしくないと告げる。2人は式の後バーバラの自宅に押しかけてドレスを返せと迫る。けれど当の本人はドレスを着たままベッドで酔いつぶれている。強引に押し入った2人はなんとバーバラからドレスを脱がして持ち帰る。

次にレイノルズはベルギーのプリンセス・モナのウエディングドレスの仕事を受注する。アルマは仕事のパートナーであるとともに私生活のパートナーでもあり、レイノルズを喜ばせようとサプライズの夕食を考える。それをシリルに相談するが、シリルはやめた方がいいと答える。ならばとアルマは1人で考えて準備をするが、帰宅したレイノルズはモナの仕事で不機嫌になっており、またサプライズを素直に喜ぶ性格でもない。自分のために手間暇かけて準備した事に感謝するような思いやりもない。とうとうアルマは日頃の不満をレイノルズにぶちまける・・・

主人公のレイノルズは、オートクチュールの仕立屋。腕が良いそうで評判を得ているが、性格は気難しい。時代の男のあり方もあるのかもしれないが、仕事以外に興味を示さず、女性との付き合いにおいてもお世辞でも相手を喜ばそうなんてしない。それでもモテるのは、ファッションという女性を毒する世界に君臨しているからなのかもしれない。そのオートクチュールであるが、1950年代のその様子は、『ミセス・ハリス、パリへ行く』(My Cinema File 2881)とまったく同じである。

『ミセス・ハリス、パリへ行く』(My Cinema File 2881)では、主人公のミセス・ハリスはパリのオートクチュールの代表クリスチャン・ディオールに憧れてお金を貯めてパリに行くが、同じロンドン市内の他の国内オートクチュールには魅力を感じなかったのだろうか、などと思ってみたりした。ビジュアル的にはじいさんに入るレイノルズを愛するアルマは、その愛が高じてとんでもない行動に出る。歪んだ愛の形とでも言えるだろう。この映画は、いったいどういう映画なのだろうか、恋愛映画なのかサスペンスなのか。

鬼気迫る様相で仕事に没頭するレイノルズと鬼気迫る内面の激しい愛でレイノルズに向かうアルマ。2人はとうとう結婚するが、それは純愛とは程遠い。一昔前のロンドンを舞台にした狂気的な愛の物語。アルマ役のヴィッキー・クリープスはあまり美人とは言えないが、狂気の愛を見せる迫力は十分である。原題は「幻の糸」とでも訳すのであろうか。ストーリーを合わせ考えると意味深さを感じさせる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年06月22日

【アムステルダム】My Cinema File 2869

アムステルダム.jpg

原題: Amsterdam
2022年 アメリカ
監督: デビッド・O・ラッセル
出演: 
クリスチャン・ベイル:バート・ベレンゼン
マーゴット・ロビー:ヴァレリー・ヴォーズ
ジョン・デビッド・ワシントン:ハロルド・ウッドマン
クリス・ロック:ミルトン・キング
ラミ・マレック:トム・ヴォーズ
マイク・マイヤーズ:ポール・カンタベリー
ロバート・デ・ニーロ:ギル・ディレンベック
テイラー・スウィフト:リズ・ミーキンズ

<MOVIE WALKER PRESS解説>
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ある殺人事件の容疑者にされてしまった3人の男女が巨大な陰謀に迫っていくクライムサスペンス。『アメリカン・ハッスル』のデヴィッド・O・ラッセルが史実を基に、ほぼ実話の物語を描いた。容疑者となる3人を、『ザ・ファイター』のクリスチャン・ベール、『スーサイド・スクワッド』のマーゴット・ロビー、『TENET テネット』のジョン・デビッド・ワシントンが演じるほか、アニャ・テイラー=ジョイ、マイケル・シャノン、ラミ・マレック、ロバート・デ・ニーロら豪華キャストが脇を固める。
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時は1930年代のニューヨーク。第1次世界大戦に参戦し、戦傷を負った医師バートは、自分と同じ復員兵に寄り添った治療をする医院を開いている。治療にくる復員兵たちに対し、バートは薬品を惜しげもなく差し出し、新薬と称して国が承認していない薬も作り出して治療にあたっている。そんなバートには戦友がいる。ある日、その一人である黒人弁護士のハロルドから呼び出される。軍隊で世話になったミーキンズ将軍が亡くなり、娘リズからその死因に不信なところがある事から解剖してほしいと頼まれたと言う。

世話になったこともあり、バートはミーキング将軍の死体の解剖を引き受ける。そして解剖の結果を受け取るが、胃の中の内容物から何者かの手によって殺害された可能性があるとわかる。さっそくリズに報告すべく、バートとハロルドは待ち合わせ場所へ向かうが、なぜかリズは2人を避けようとする。なんとかリズを捕まえた2人だが、リズは誰かに脅かされたようで怯えている。そして話の途中で、突然現れた男がリズを車道に突き飛ばし、リズは走ってきた車にひかれて死んでしまう。

呆然とするバートとハロルドだが、リズを突き飛ばした男は2人を指さし、2人が彼女を突き飛ばしたと叫び始める。明らかな濡れ衣であるが、明確な目撃者もなく、2人は不利な状況になる。警察も来て騒ぎも大きくなり、2人はあわてて逃げ出す。逃げながらバートは初めてハロルドと出会った時のことを思い出す。バートが部隊に派遣された時、黒人兵たちが平等に扱えと当時の部隊の上官に申し立てており、騒ぎをききつけたミーキンズ将軍がこれを認めてバートを上官に指名する。ハロルドはこの時の黒人兵の中心であった。

ハロルドはバートたちと激戦を闘い、ともに負傷して病院に担ぎ込まれる。そこで看護師として働いていたヴァレリーは、2人の手当を担当する。バートは片目を失い、背中に大けがを負う。ハロルドもまた左頬に醜い傷跡が残る。やがて2人は退院するが、以後2人はヴァレリーと意気投合し、3人は信頼のおける友人同士となる。片目を失ったバートに対し、アムステルダムに義眼を作るいい技師がいるとヴァレリーが言い、3人はアムステルダムへ行く。

アムステルダムでの療養生活は3人にとってとても楽しいものとなる。義眼を得たバート、ヴァレリーのハートを射止めたハロルドと、2人は心行くまで身体と心の傷を癒す。やがて傷が癒えたバートは、アメリカに帰国することにする。しかし、アメリカに帰国したバートがモルヒネ依存症になってしまったのを知り、ハロルドも彼を救うためにアメリカへ帰ることを決意する。それにヴァレリーを連れて行こうとするが、なぜかヴァレリーは置手紙をして姿を消してしまう・・・

『アムステルダム』というタイトルがついているものの、アムステルダムが物語の中心というわけではない。ストーリーの中心は何かの陰謀であり、それによって主人公が敬愛する将軍とその娘が殺されている。その陰謀を主人公が探っていくというもの。医師と弁護士という社会的に信頼が置ける職を持つ2人だが、殺人犯との汚名をきせられて警察から追われる。追われながらも黒幕を求めて東奔西走する。主人公のバートは名家の子女を妻に迎えるが、歓迎されていない。戦争に行ったのも従軍したのも高邁な理想というよりも厄介払いの感がある。

そんな主人公を演じるのは、クリスチャン・ベール。それだけでも観る価値はある。マーゴット・ロビー、ジョン・デビッド・ワシントンという共演陣も豪華であり、楽しみにして観たのではあるが、ストーリー自体のインパクトは今ひとつというところ。ただ、ラミ・マレックやロバート・デ・ニーロ、あげくにテイラー・スウィフトといった大物が脇役として登場するという豪華さに何とも言えない贅沢感がある。

アムステルダムは3人がひたすら楽しく過ごした町。またそこに行こうとバークを誘うハロルドとヴァレリー。その気持ちが良く伝わってくる。そういう意味では、タイトルにも含みのある事がわかる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | サスペンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする