2024年11月20日

【アイス・ロード】My Cinema File 2935

アイス・ロード.jpg

原題: The Ice Road
2021年 アメリカ
監督: ジョナサン・ヘンズリー
出演: 
リーアム・ニーソン:マイク・マッシャン
ローレンス・フィッシュバーン:ジム・ゴールデンロット
ベンジャミン・ウォーカー:トム・バルネイ
アンバー・ミッドサンダー:タントゥー
マーカス・トーマス:ガーティ
ホルト・マッキャラニー:ランバート
マーティン・センスマイヤー:コーディ
マット・マッコイ:シックル
マット・サリンジャー:CEO

<映画.com>
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『96時間』シリーズのリーアム・ニーソンが主演を務め、地下に閉じ込められた26人の命を救うため巨大トラックで危険な氷の道を走り抜けるドライバーの戦いを描いたレスキューアクション。カナダのダイヤモンド鉱山で爆発事故が起こり、作業員26人が地下に閉じ込められた。事故現場に充満したガスを抜くための30トンもの救出装置をトラックで運ぶため、4人の凄腕ドライバーが集められる。鉱山への最短ルートは厚さ80センチの氷の道「アイス・ロード」で、スピードが速すぎれば衝撃で、遅すぎれば重量で、氷が割れて水に沈んでしまう。地下の酸素が尽きる30時間以内に装置を届けるべく、命がけでトラックを走らせる彼らだったが、事故には危険な陰謀が隠されていた。共演に『マトリックス』シリーズのローレンス・フィッシュバーン、『リンカーン 秘密の書』のベンジャミン・ウォーカー。「アルマゲドン」などの脚本家ジョナサン・ヘンズリーが監督・脚本を手がけた。
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北アメリカの極寒地では、冬季に凍った川や湖の道を30tのトラックが往来するのだとか。この物語ではウィニペグ湖の氷の上にできた道=アイス・ロードが舞台となる。氷の厚さは80p。一見分厚そうであるが、30tのトラックについては危ういのかもしれない。そして事件は起こる。カナダ・マニトバ州にあるダイヤモンド鉱山「カトカ」で、メタンガス爆発が起こる。作業員8人が死亡し、26人が安否不明となる。

作業員を救出するには、まず坑道に充満したメタンガスを抜かなければならない。しかし、現場にはそのために必要な坑口装置(ウェルヘッド)がない。これを聞いた天然資源省の次官オトゥールは、すぐに坑口装置の輸送を手配する。しかし長さ5m、重さ25tもある坑口装置は空輸することは不可能であり、方法は陸路しかない。しかし4月半ばの時期は氷が溶け始める事もあり、アイスロードも既に閉鎖済み。トラックドライバーたちもほとんど休暇中とあって人員確保も厳しい状況であった。

白羽の矢が当たったのは、現地に詳しいジム・ゴールデンロット。ジムは自らトラックドライバーと整備士を確保する代わりに、政府にはアイスロードを開くよう許可を求める。そして集まってきたのは腕利きのトラックドライバーたち。その中にマイク・マッキャンと弟で整備士のガーティがいる。このマイクが物語の主人公である。弟のガーティは、イラク戦争の帰還兵であるが、戦争の負傷の後遺症があって仕事が長続きしない。そんな中で、報酬の良いアイスロード運転手の募集に応募してきていた。

メンバーには1人、ジムの元部下タントゥーがチームに加わる。先住民としての誇りと怒りから、何かと周りとトラブルを起こしているが、ドライブテクニックは一流。しかもタントゥーの異父兄コーデ・マントゥースィは、安否不明の作業員のうちの一人であり、それも応募理由であった。運輸会社は万が一の事態を考慮して坑口装置を3基用意し、3台の大型トラックにそれぞれ載せてトラックを送り出す。溶け始めた氷の道を超重量のトラックが爆走するというのが、この物語のメインとなる。

もちろん、ただただ爆走して終わりであれば物語は面白くない。炭鉱事故には実は裏がある。そしてそれゆえに坑口装置が無事に届けられると具合の悪い者たちがいる。ただでさえ、春先で危険なアイスロードに加えて妨害工作まで行われるのである。成功報酬は20万ドル、脱落者が出た場合は、残ったメンバーで分配されるというおまけもつく。トラックの速度が速いと圧力波で氷が割れて水没、逆に遅いとタイヤにかかる重みで水没するという厳しい条件下でトラックは発進していく。

そう言えばその昔、『恐怖の報酬』というやはり危険なトラック輸送の映画があったなと思い出す。やはり同じように事故現場に危険なニトロを運ぶという物語で、川にかかった崩れかけた橋を渡るシーンのド迫力が記憶に残っている。やはり危険なものを危険な道を通って運ぶというストーリーがトラック輸送の物語の王道になるのであろうか。そしてさっそくアイスロードの氷が溶けて1台のトラックが水没する。そして準主役級のローレンス・フィッシュバーンが早々にいなくなるのに驚かされる。

危険なアイスロードにさまざまな妨害工作。リーアム・ニーソン主演であれば面白さが一段アップする。ただ、『恐怖の報酬』の橋渡りのシーンほどのインパクトは残念ながらなかったというのが正直なところである。大型トラックの迫力は十分。スリリングな展開を楽しめる一作である・・・


評価:★★☆☆☆








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2023年09月23日

【クワイエット・プレイス破られた沈黙】My Cinema File 2750

クワイエットプレイス破られた沈黙.jpeg

原題: A Quiet Place Part II
2021年 アメリカ
監督: ジョン・クラシンスキー
出演: 
エミリー・ブラント:イヴリン・アボット
ミリセント・シモンズ:リーガン・アボット
ノア・ジュープ:マーカス・アボット
キリアン・マーフィー:エメット
ジャイモン・フンスー:島の長
ディーン・ウッドワード:ボー・アボット
スクート・マクネイリー:桟橋の男
アリス・ソフィー・マリコワ:少女
オキエリエテ・オナオドワン:警察官
ウェイン・デュヴァル:ロジャー
ジョン・クラシンスキー:リー・アボット

<映画.com>
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エミリー・ブラント主演で、音に反応して人類を襲う“何か”によって文明社会が荒廃した世界を舞台に、過酷なサバイバルを繰り広げる一家の姿を描き、全米でスマッシュヒットを記録したサスペンスホラー『クワイエット・プレイス』の続編。生まれたばかりの赤ん坊と耳の不自由な娘のリーガン、息子のマーカスを連れ、燃えてしまった家に代わる新たな避難場所を探して旅に出たエヴリン。一同は、新たな謎と脅威にあふれた外の世界で、いつ泣き出すかわからない赤ん坊を抱えてさまようが……。主人公エヴリンをブラントが演じ、リーガン役のミリセント・シモンズ、マーカス役のノア・ジュプも続投。新キャストとしてキリアン・マーフィ、ジャイモン・フンスーが加わった。監督・脚本も前作同様、ブラントの夫で前作で夫婦共演もしたジョン・クラシンスキーが再び手がけた。
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音に反応して襲ってくる怪物との絶望的な戦いを描いた『クワイエット・プレイス』の続編。今回はそもそもの発端から描かれる。異変の第1日目。父親のリーは、いつものように馴染みの店で買い物をし、長男マーカスの野球の試合の応援に向かう。聴覚に障害のあるリーガンと次男ボーと妻イブリンと家族総出の応援である。マーカスが自信なさげに打席に立ったその時、上空に隕石のようなものが落ちてくる。それは異様な風景。人々は申し合わせたように試合を中止して家路に着く。

リーガンは父親の車に乗り込み、マーカスとボーはイブリンの車に乗り込む。リーが居合わせた警察官に何が起こったのか尋ねようとすると、正体不明の怪物が現れ人々を襲う。隕石の落下に伴って宇宙から飛来したということなのだろうが、早過ぎはしないかと心の中で突っ込みを入れる。まぁ、あまりこだわるところでもない。車のエンジンがかからなかったリーは、リーガンを連れて近くのレストランに逃げ込む。そこには同じように逃げ込んだ人々が息をひそめて隠れる。しかし、誰かの携帯電話が鳴ってしまい、怪物は次々と人々を襲う。かろうじて逃げ出したリーとリーガン。イブリンはマーカスとボーを乗せ、混乱する街から逃げ出す・・・

こうして悪夢が始まるのであるが、前作で描かれなかった前日譚が紹介されるのは物語を深く理解するのに役立つ。そして前作の苦闘を経た474日目。前作で既にリーとボーを失ったイブリンは、マーカスとリーガンと生まれたばかりの赤ん坊を連れて逃げ続けている。赤ん坊は酸素マスクをつけた状態でトランクの中に入れている。鳴き声対策であるが酸素ボンベの入手がネックになりそうである。裸足で歩き続けた3人は、とある廃工場へとやって来る。そこへ怪物が近づいてくるが、マーカスがトラバサミの罠にかかってしまう。叫び声を上げかけたマーカスの口をイブリンが塞いだが、一匹の怪物に見つかってしまう。

その事態にリーガンは冷静に補聴器から出るハウリングをラジオから流し、怪物の動きが止まって頭が開いたところをイブリンがショットガンでとどめを刺す。それを見ていたのは、冒頭で一緒に野球観戦をしていたエメット。エメットは家族を失いながらも1人廃工場の地下で生き残っていたのである。そこには密閉されるボイラーがあり、防音にもなるが、タオルで閂を押さえないと閉じ込められてしまうリスクがある。地獄で仏ではないが、女1人で子供3人を守らなければならないイブリンにとっては心強い味方であるが、エメットは気力を失っている。

イブリン達が一息ついた時、ラジオを調整していたマーカスが、どこかの放送局から「ビヨンド・ザ・シー」が流れていることに気づく。それは他にも生存者がいるという証。その曲名と地図とから、リーガンはその曲が近くの海をはさんだ孤島から流れていることを突き止める。リーガンはラジオで補聴器のハウリングを流すアイディアを思いつくが、マーカスからは大反対を受ける。しかし、思い立ったリーガンはイブリンには内緒で単身その島に向かう。それを知ったイブリンはエメットに連れ戻すように頼むが、エメットは躊躇する・・・

目が見えず、音に反応して襲ってくる怪物を相手に逃げるイブリンたち。大人やある程度分別のわかる子供であれば黙っていられるが、赤ん坊はそうはいかない。音を立てないことが最大の防御になる。さらに今回は、緊急避難室としてボイラーの窯の中というのが出てくるが、タオルで閂を押さえないと閉じ込められてしまうという危機管理が出てくる。次から次へと困難が登場人物たちを襲う。そして怪物には泳げないという弱点があることが判明するが、これも偶然から怪物が海を渡って孤島に逃げ住んでいた人々を襲うことになる。なかなかうまく見せ場を作ってくれる。

絶望の中にも希望がある物語。リーガンの勇気ある行動は自分自身のためだけではなく、人類全体のことを考えたもの。ハラハラドキドキの要素もあり、リーガンの勇気と意思はエメットを変え、そして人類に希望をもたらす。内容的にさらなる続編はなさそうである。イブリンを演じたエミリー・ブラントは、『ボーダーライン』(My Cinema File 1957)の主人公にも相通じるものがある。前作のヒットに味をしめて2匹目のどじょうを狙って失敗する作品が多い中、これは前作と合わせて、満足いく楽しめる映画である・・・


評価:★★★☆☆








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2023年08月06日

【FALL/フォール】My Cinema File 2728

FALL/フォール.jpeg

原題: Fall
2022年 アメリカ
監督: スコット・マン
出演: 
グレイス・キャロライン・カリー:ベッキー
ヴァージニア・ガードナー:ハンター
メイソン・グッディング:ダン
ジェフリー・ディーン・モーガン:ジェームズ

<映画.com>
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地上600メートルの超高層鉄塔に取り残された2人の若者の運命を描いたサバイバルスリラー。
山でのフリークライミング中に夫を落下事故で亡くしたベッキーは、1年が経った現在も悲しみから立ち直れずにいた。親友ハンターはそんな彼女を元気づけようと新たなクライミング計画を立て、現在は使用されていない超高層テレビ塔に登ることに。2人は老朽化して不安定になった梯子を登り、地上600メートルの頂上へ到達することに成功。しかし梯子が突然崩れ落ち、2人は鉄塔の先端に取り残されてしまう。
『シャザム!』のグレイス・フルトン(グレイス・キャロライン・カリー)とドラマ「マーベル ランナウェイズ」のバージニア・ガードナーが主演を務め、2022年版「スクリーム」のメイソン・グッディング、ドラマ「ウォーキング・デッド」シリーズのジェフリー・ディーン・モーガンが共演。「ファイナル・スコア」のスコット・マンが監督を務めた。
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冒頭、険しい崖でのフリークライミングにダンとベッキーの夫妻、そしてハンターが挑んでいる。最近は映像技術の進展著しく、実際には登っていないと思うが、それでも足がすくみそうなクライミングシーンである。ところが、ふとしたはずみでダンが転落してしまう。到底助かる高さではない。夫を失ったベッキーは、その事故から1年近くと経とうとしている現在も、悲しみから抜け出せずにいる。ダンの遺灰を葬ることもできないまま、生前の彼がスマホの留守番電話に登録していた応答メッセージを聴いては涙に暮れている。

そんなベッキーのことを、父親はなんとか立ち直らせようと心配し励ましているが効果はない。そんなある日、ベッキーの元に親友のハンターが久しぶりに訪ねてくる。ハンターは女性ながらも世界各地の危険な場所を冒険し、「デンジャーD」という名前でYouTuberとしても活動している。悲しみに打ちひしがれ続けているベッキーを立ち直らせるべく“ある計画”を持ちかける。それは、現在は使用されていない地上600mもの高さを誇る超高層鉄塔「B67テレビ塔」の頂上部まで登り、記念の動画撮影を行うというもの。

悲しみに暮れていたベッキーは、一度は断るものの、生前のダンが口にしていた「生きることを恐れるな」という言葉を思い出し、ハンターとともに鉄塔を登ることを決意する。いざ、鉄塔クライミングの決行当日。ベッキーはハンターとともに車で鉄塔へと向かう。鉄塔に続く出入口は封鎖されていたものの、そんなことで諦めるはずもなく、2人は車を止めて鉄塔まで徒歩で行く。そのあまりの高さを目の当たりにしたベッキーは、登るのを躊躇う。

しかし、ハンターに「ずっとそばにいる」という言葉に励まされ、ベッキーはハンターと命綱をつけて鉄塔の階段を登り始める。鉄塔は、もう使われておらず、従って手入れもされていない。錆びたハシゴは登るたびに軋み、鉄塔各所のボルトも酷く傷んでいる。地上600mと言えば、エッフェル塔や東京タワーの高さを遥かに超えスカイツリーに匹敵する。しかもエレベーターで登るのとはわけが違い、吹きさらしの中を登るのは尋常ではない。そして2人はついに鉄塔頂上部の足場へと到着する。

しかもそれで終わりではなく、ハンターはそこで自撮り棒やドローンで撮影を開始する。それも足場からぶら下がるという命知らずな記念撮影を行う。しかし、そこでベッキーは吹っ切れたのか、鉄塔の頂上部から長い間葬ることができずにいたダンの遺灰を撒く。それはベッキーが鉄塔の登頂を決意したもう一つの目的。そして目的を達成した2人は、鉄塔から降りることにする。

ところが、ベッキーが降り始めた途端、ボルトが外れてハシゴが崩落する。ベッキーは危ういところで落ちるのを免れるが、ハシゴは完全に崩落してしまい2人は下に降りる手段を失ってしまう。すぐに助けを呼ぶことを考えるが、携帯の電波は圏外であり、電話もメールもSNSで助けを呼びかけることもできない。入る時に立入禁止指定されていたように、周囲には民家も店も歩く人さえいない。まさに絶体絶命の大ピンチに陥ってしまう・・・

先日観た『127時間』(My Cinema File 2726)とは、また違ったシチュエーションであるが、まだ2人というのが救いかもしれない。いずれにせよ、こういう映画では、やはり「自分だったらどうするだろう」と考えてしまう。岩に腕を挟まれるのも驚異だが、この映画の最大の恐怖はなんと言っても「地上600m」という高さだろう。最近の映像技術は実際に「地上600m」で撮影しているかのようである。鉄塔を登るシーンも頂上の足場のシーンもどれも迫力に満ちていて、観ているこちらも足がすくむような気がしてしまう。さらにいつの間にか手のひらにも汗をかいている。

この高さの迫力は並ではない。何せ吹きさらしの「地上600m」である。「自分だったらどうするだろうか」と考えながら観ようとしたが、いやいやそもそも自分なら何があっても絶対に登らないと断固として考えてしまう。いくらハンターのような美女に誘われてもそれだけは断固として拒否するだろう。とは言え、取り残されてしまった2人はなんとか方法を考えるしかない。自力で降りるという選択肢は、持ち物からして不可能であり、なんとか助けを呼ぶしかない。

2人の奮闘は観る者も恐怖との戦い。何せ観ているこちらまで怖くなってしまうほどの映像の迫力。希望と絶望とが入り混じる。2人の間では、やはりハンターが勇敢である。その行動力は並の男では敵わないだろう。そんな大ピンチの中、実はハンターがベッキーに隠していたある秘密が露見する。そんなドラマを含みながらストーリーは進む。その意外な展開。ピンチに陥った時は何よりも冷静さと、そして知恵が必要だと思わされる。ところどころに伏線が仕込まれているのもドラマに一興を添える。

それにしても、やはりこんな冒険は自分だったらするまいと強く思う。高所恐怖症の人は、観ない方がいい映画である・・・


評価:★★★☆☆








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2023年07月04日

【チェイサー】My Cinema File 2709

チェイサー.jpeg

原題: Kidnap
2017年 アメリカ
監督: ルイス・プリエト
出演: 
ハル・ベリー:カーラ・ダイソン
セイジ・コレア:フランキー・ダイソン
リュー・テンプル:テレンス・“テリー”・ヴィッキー
クリス・マクギン:マーゴ・ヴィッキー
ジェイソン・ウィンストン・ジョージ:デヴィッド

<映画.com>
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ハル・ベリーが主演のほか製作を務め、さらわれた息子を助けるために奮闘する母親を演じたアクションスリラー。シングルマザーのカーラは、いつも訪れる公園で息子フランキーが何者かに車に乗せられ、連れ去られる場面に遭遇。必死で追いかけるが、フランキーを乗せた車は走り去ってしまう。犯人の正体は不明で、携帯電話も失くしてしまい、地元警察も動いてはくれないという状況の中、カーラはたった一人で最愛の息子を救い出す覚悟を決める。監督はリメイク版「プッシャー」を手がけたルイス・プリエト。
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主人公のカーラは食堂のウエイトレスとして働きながら息子のフランキーを育てている。夫とは現在離婚調停中である。フランキーを育てるためには働かなければならないのは当然であるが、ウエイトレスという仕事ではそれほど稼げるわけではなく、生活が苦しいことは画面から伝わってくる。その日もカウンターにフランキーを座らせて仕事を早く終わらせようとしているが、交代するべき同僚がなかなかやって来なかったり、客から様々な注文を受け、カーラは苛立っている。

ようやく仕事を終えたカーラは、フランキーと公園に出かける。母子の楽しいひと時であるが、そこへ弁護士から電話がかかってくる。離婚調停中の夫が親権を望んでいるという話であり、カーラにとっては深刻な内容。夫のデヴィッドは不動産業者で、恋人は小児科医となると、ウエイトレスのカーラにとっては親権を争うには不利な立場である。そんな内容の電話に気を取られ、ふと気が付くとフランキーが姿を消している。

カーラが慌てて探すと、フランキーが見知らぬ人物に車に押し込まれているのが目に入る。事態を察したカーラは慌てて追いかけるが、車は走り去ってしまう。カーラもすぐに自分の車に飛び乗り、追いかける。同時に通報しようとするが、なんと慌てたためスマホを落としてしまっている。もどかしいままカー・チェイスが始まる。こういう場合、自分ならどうするだろうと考えてしまう。華々しいカー・アクションなど映画の中の話である。やはりしっかり追尾してチャンスを待つだろうか。

カーラも必死に犯人たちの車の後を追う。犯人も荷物を捨てたりしてカーラの邪魔をする。タイヤを捨てるに至っては、避けようとして別の車にぶつかり、事故を起こしてしまう。周りの車こそいい迷惑であるが、カーラも止まるわけにはいかない。ついに犯人の男は刃物をフランキーの首元に押し当て、追跡をやめるようにカーラに合図する。こうなると難しい。殺されてしまっては元も子もない。フランキーを守るためにカーラは道を逸れる。

孤立無援の中で、しかも誰にも連絡できない状況で判断を下さないといけない。カーラに諦めるという選択肢はなく、覚悟を決めると再び走っていた高速道路に戻り、犯人の車の追跡を再開始する。冒頭で、フランキーが生まれてきた時からのホームビデオの映像が流れる。子育てにも歴史がある。母親であるカーラが脇目も振らず、犯人の車を追うのもよくわかる。やがてカーラの車のバックミラーに白バイが映る。大チャンスとカーラは白バイに合図を送る。ところが犯人もひるむことはない。白バイに体当たりして転倒させて逃げてしまう。しかし、そこで互いに道から外れ、止まった車から犯人の男が降りてくる・・・

突然、目の前で我が子が誘拐される。ほとんど悪夢のような出来事であるが、そんな目に遭った主人公の物語。母は強しと言われるが、なんの取り得もなさそうなウエイトレスの母親が、目の前で連れ去られた我が子を執念で追いかける物語。「一体何の目的で」というのは、観る者にも突きつけられる疑問。誘拐と言えば身代金というイメージがあるが、この物語ではそうではない。そしてその方が恐ろしい。もしもカーラが必死に追いかけていなければ、おそらく2度と会えなかったであろうと思われる。

そんな執念の母親を演じるのは、ハル・ベリー。正直言って、「この手のB級映画的な作品にどうして?」と思ったが、製作も兼ねていると知って納得。しかし、内容は予想外に面白かった。まずは犯人の狙いがわからない。観る者も主人公と一緒に追いかけながら考える。一旦、退いて連絡を待った方がいいのかと。しかし、それではダメだった事が最後に明らかになる。執念の追跡は最後に実る。そして、最後にまた波乱の一ひねりがある。

面白さの要因は、追跡劇の運もある。途中何度もカーラは犯人の車を見失う。スマホを落とし追跡しながらの連絡ができない。さらに車のガソリンが無くなってしまう。万事休すという場面が何度もあり、そのたびにカーラは運に助けられて追跡を続けられる。こうしたテンポのいい展開がストーリーに引き込んでくれて飽きさせないとこであった。観終わって満足するともに、子供のいる家庭にとってはちょっと恐ろしくもある映画である・・・


評価:★★★☆☆










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2023年06月03日

【ティル・デス】My Cinema File 2698

ティル・デス.jpeg

原題: Till Death
2021年 アメリカ
監督: S・K・デール
出演: 
ミーガン・フォックス:エマ
カラン・マルヴェイ:ボビー・レイ
オーエン・マッケン:マーク
アムル・アミーン:トム
ジャック・ロス:ジミー

<映画.com>
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『トランスフォーマー』シリーズのミーガン・フォックスが主演を務めたシチュエーションスリラー。結婚記念日を迎えた仮面夫婦のマークとエマ。マークは人里離れたレイクハウスでのバカンスを用意し、結婚生活をやり直したいとエマに告げる。夫婦関係の修復を期待して喜ぶエマだったが、翌朝目を覚ますと、彼女はなぜかマークと手錠でつながれていた。しかもマークは意味深な言葉を残し、拳銃で自分の頭を撃ち抜いてしまう。エマはマークの死体を引きずりながら湖畔から脱出しようとするが、車のガソリンは抜かれており、電話も故障していた。絶望するエマに追い打ちをかけるように、侵入者たちが彼女に襲いかかる。共演は「バイオハザード ザ・ファイナル」のオーエン・マッケン、『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』のカラン・マルベイ。
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主人公のエマは、トムと不倫をしている。しかし、それも終わりにしようとする。未練のあるトムは引き留め、翌日も会いたいと伝えるが、記念日だからとエマは断る。そのエマの夫マークは弁護士事務所のパートナーで、実はトムの上司。そしてトムの机の上に置いてあったファイルをエマが見ると、それはかつてエマが受けた忌まわしい暴行事件のもの。どうやらその時弁護士を引き受けたのがマークだったようである。

さりげなく登場人物の関係が描かれ、エマとマークの夫婦関係が冷え切っているのがわかる。マークはそれを修正しようと、結婚記念日にエマをディナーに誘い、ネックレスをプレゼントする。そしてサプライズで湖畔にあるコテージへエマを連れて行く。夫マークはそこでエマにやり直すチャンスを求める。そして2人で熱い一夜を過ごす。やり手の弁護士なのだろう、マークはリッチな雰囲気を漂わせている。うまく関係改善すればエマとしても問題ないだろうと思う。

翌朝、エマが余韻の中で目を覚ますと、何やら手首に手錠がかけられている。隣にいたマークに何事かと尋ねるエマ。するとあろうことか、マークはその場で拳銃を取り出すと自分の頭を撃ち抜く。返り血を浴びて呆然としたエマ。なんとか事態を把握すると、手錠の鍵を探すが見当たらない。マークが使った拳銃で手錠を壊そうとするが、弾装は空。鍵をこじ開けられるような物もなく、エマはマークの死体を引きずって利用できるものを探し始める。

しかし、探し始めてエマは事態の深刻さに気づいていく。スマホは水沈させられていて動かない。キッチンには包丁の類は一切ない。かろうじてごみ箱に車の鍵が捨てられているのを発見し、エンジンをかけようとするが、ご丁寧にガソリンが抜き取られている。ここに至り、観る者もマークが意図的に仕組んでいたものだとわかる。外は雪が積もっている。閉じ込めて餓死でもさせようというのであろうか。

するとほどなくして、トムが突然コテージに姿を見せる。思わぬ助け舟とエマは安堵するが、トムはエマにメールで呼び出されたと言う。しかし、エマはメールなど送っていない。トムによれば、事務所は警察の捜査を受けて大混乱していると言う。どうなるのかと思ったエマにトムが現れたので一安心と思うも、そこへパイプ修理のために呼ばれたと言う男が現れる。不審に思ったトムは彼に費用を払って帰らせようとするが、別の男が車から続けて降りてきてなんとトムを刺殺する。

トムが刺殺されてパニックに陥ったエマは、死体を引きずって身を隠す。そして2人の会話から、男の1人はかつてエマに暴行を加えた男ボビーだとわかる。ボビーとその弟を呼んだのはマーク。10年の懲役をくらったボビーはエマに恨みを抱き、さらに「コテージの金庫にダイヤがある」と吹き込まれてやってきたのである。ここにきてトムとの不倫を知ったマークがエマとトムを道連れにしようと手の込んだ仕掛けをした事が判明する・・・

人里離れたコテージで、死体につながれて動きが取れない主人公の女性が、自分を殺そうとねらう男たちと相対峙する物語。これも一種のシチュエーション・スリラーになるのだろう。あらゆるハンディを負った女性の主人公が、自分を殺そうとする相手からはたして無事に逃げ延びることができるのか。ハラハラドキドキの展開は、予想外に面白い。それにしても仕掛人のマークもなかなかすごい。自らの頭をぶち抜き、妻と不倫相手を道連れにする計画。自分の死後だと結果を見届ける事はできないわけであるが、そこまでする執念がすごい。

最後の最後まで画面にくぎ付けにされてしまった。短いが観て得した気分になれる映画である・・・

評価:★★☆☆☆







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