2025年04月05日

【侍タイムスリッパー】My Cinema File 2990

侍タイムスリッパー.jpg
 
2024年 日本
監督: 安田淳一
出演: 
山口馬木也:高坂新左衛門
冨家ノリマサ:風見恭一郎
沙倉ゆうの:山本優子
峰蘭太郎:殺陣師・関本
庄野ア謙:山形彦九郎
紅萬子:住職の妻・節子
福田善晴:西経寺住職
井上肇:撮影所所長・井上
安藤彰則:斬られ役俳優・安藤
田村ツトム:錦京太郎

<映画.com>
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現代の時代劇撮影所にタイムスリップした幕末の侍が時代劇の斬られ役として奮闘する姿を描いた時代劇コメディ。
幕末の京都。会津藩士の高坂新左衛門は家老から長州藩士を討つよう密命を受けるが、標的の男と刃を交えた瞬間、落雷によって気を失ってしまう。目を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所だった。新左衛門は行く先々で騒動を起こしながら、江戸幕府が140年前に滅んだことを知り、がく然とする。一度は死を覚悟する新左衛門だったが、心優しい人たちに助けられ、生きる気力を取り戻していく。やがて彼は磨き上げた剣の腕だけを頼りに撮影所の門を叩き、斬られ役として生きていくことを決意する。
テレビドラマ「剣客商売」シリーズなど数々の時代劇に出演してきた山口馬木也が主演を務め、冨家ノリマサ、沙倉ゆうのが共演。「ごはん」「拳銃と目玉焼」の安田淳一が監督・脚本を手がけ、自主制作作品でありながら東映京都撮影所の特別協力によって完成させた。
2024年8月17日に池袋シネマ・ロサの一館のみで封切られ(8月30日からは川崎チネチッタでシーンを追加した「デラックス版」が上映スタート)、口コミで話題が広まったことから同年9月13日からはギャガが共同配給につき、新宿ピカデリー、TOHOシネマズ日比谷ほか全国100館以上で順次拡大公開。インディペンデント映画として異例の大ヒットを記録したうえ、第48回日本アカデミー賞では最優秀作品賞を受賞する快挙となった。
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口コミで話題が広まり、インディペンデント映画として異例の大ヒットを記録したうえ、第48回日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞したこともあって興味をもっていた作品。『カメラを止めるな!』(My Cinema File 2022)と同じようなパターンかと個人的にも期待していたところもある。

物語のはじまりは幕末の京都。会津藩士・高坂新左衛門は村田左之助とともに長州藩士・山形彦九郎を暗殺すべくこれを待ち受ける。そしてとある寺の門を出てきた山形を待ち伏せし、いざ勝負と対峙する。暗殺と言っても奇襲ではなく、正々堂々とした果たし合いの感がある。しかし、そこでにわかに天候が崩れ、落雷が二人を直撃する。衝撃で気を失った高坂が目覚めると、あたりの様子が一変している。どこかの町の様であるが、行き交う人の様子が異なる。じつはそこは現代の京都にある時代劇撮影所。そして撮影の真っ最中であった。

不良浪人に町娘が絡まれている。助けようとした高坂の前に心配無用之助と名乗る武士があらわれ、町娘を救う。ホッとした高坂だが、なぜかまた同じ状況が繰り返される。今度は助太刀を申し入れたところで、ストップが入る。戸惑う高坂に撮影助監督である山本優子は、撮影グループが違うのではと親切に伝える。戸惑いながらあたりをうろつく高坂は、セットに頭を痛打して気を失う。病院に運ばれた高坂は、成り行きから再び山本の世話になる。戸惑いは消えず、病院を出た高坂は現代の京都の町を歩き回り途方に暮れる。

見た事もない街、見た事もない乗り物。実際、江戸時代の人間が突然現代に現れたら相当戸惑うだろう。そして見かけた展示会のチラシから高坂は自分が140年後の日本にタイムスリップしてしまったことを知る。愕然とした高坂があてどなく街を彷徨い歩くうちに見覚えのある寺の前に辿り着く。そこは高坂が長州藩士・山形彦九郎と対峙したところ。一晩をその門前で過ごした高坂は、親切な住職夫妻に助けられ、しばらく寺に居候することになる。

とりあえず住むところを確保した高坂は少しずつ現代に慣れていく。初めてのテレビに驚くも、放映されていた時代劇を見て高坂は感銘を受ける。そんな中、寺で時代劇の撮影が行われることになるが、斬られ役の出演者が急病になり、高坂に声がかかる。なにせ「本物の」髷を結っており、立ち居振る舞いも本物の武士である。無事、演技も済ませて斬られ役を体験した高坂は、それこそ現代で自分ができる唯一の仕事だと気づき、殺陣のプロ集団「剣心会」への入門を決意する。

撮影助監督の優子の紹介もあり、剣心会代表・関本の了解を得て入門が認められた高坂は、斬られ役として新生活をスタートさせる。元は本物の武士であり、しかも真剣な姿勢と本物の風格で、高坂は次第に仕事の幅を広げていく。そしてそれが実を成し、スター俳優・風見恭一郎が主演する新作映画『最後の武士』の制作が発表された際、高坂は風見本人から指名を受け、準主役という大役に抜擢される。斬られ役の高坂にとっては青天の霹靂のような話。高坂は辞退を申し出るが、風見は高坂に衝撃の事実を打ち明ける・・・

侍が現代にタイムスリップするという物語。突然見も知らぬ世界に置かれて戸惑う主人公が、次第に現代社会に馴染んでいく。テレビを見て驚き、ドラマのストーリーに感激して涙を流す。自分もいつの間にか140年も未来に吹っ飛んだら、と想像してしまう。ドラマでは描かれていないが、主人公の高坂にも家族がいたのだろうが、その家族は、と想像は限りない。幕末に会津藩が味わった悲劇を知ってショックを受ける高坂。そしてどこへ行くかと思われたストーリーは意外な展開を見せていく。

ラストは未来に飛ばされた高坂の自分の時代への思いが蘇る。手に汗握る真剣勝負。この映画がなぜ口コミで広まったのかよくわかる。ラストシーンはその後を楽しく想像させてくれる。こういう映画が自主製作で創られたというところに、日本映画も捨てたものではないと思わされる。製作者たちの熱い思いが、主人公の姿に表れているように思う。こういう映画がこれからも創られる事を願わずにはいられない一作である・・・


評価:★★★☆☆










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2025年03月08日

【TANG タング】My Cinema File 2980

TANG タング.jpg
 
2022年 日本
監督: 三木孝浩
原作: デボラ・インストール「ロボット・イン・ザ・ガーデン」
出演: 
二宮和也:春日井健
満島ひかり:春日井絵美
市川実日子:野村桜子
小手伸也:加藤飛鳥
奈緒:大槻凛
京本大我:林原信二
山内健司:小出光夫
濱家隆一:大釜仁
景井ひな:原田カオリ
武田鉄矢:馬場昌彦

<映画.com>
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日本でもベストセラーとなったイギリスの小説「ロボット・イン・ザ・ガーデン」を、二宮和也主演で映画化。『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』「思い、思われ、ふり、ふられ」の三木孝浩が監督、ドラマ「恋はつづくよどこまでも」の金子ありさが脚本を手がけ、人生に迷うダメ男と記憶喪失のロボットが繰り広げる冒険を、日本版にアレンジして描く。
ある理由から、自分の夢も妻との未来も諦めてしまった春日井健。そんな彼の家の庭に、記憶を失ったロボットのタングが迷い込んでくる。時代遅れな旧式のタングを捨てようとする健だったが、タングが失った記憶には、世界を変えるほどの秘密が隠されていた。
健の妻を満島ひかり、健とタングを監視する謎の男を小手伸也、中国在住のロボット歴史学者を奈緒が演じる。『STAND BY ME ドラえもん』などの「白組」がVFXを担当。
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物語の舞台はAIが進化し、人間とロボットが一緒に暮らす近未来。主人公の春日井健は、かつては研修医であったが、今はゲーム三昧のニート生活を送っている。そんな夫を弁護士である妻の絵美は献身的に支えている。しかし、その日、夫が紹介された病院の面談をドタキャンした事実を知って腹を立てる。庭の柵を直すように言われていた健は、妻の怒りから逃げるように庭に出る。するとそこになにやら旧式のロボットが迷い込んでいるのを見つける。試しに話しかけてみると、ロボットは「タング」と名乗る。

最新の高性能ロボットがCMで流れる世界にあって、タングはいかにも古めかしいロボットという姿。人間の言葉を理解し、コミュニケーションは取れるものの、記憶を失くしているようで何も情報を得られない。健はそんなタングを、リサイクルショップに持って行き売り払おうとするが、タングは店員の目を盗んで抜け出して健の後を追う。結局、タングは健の家に居座ることになる。ティッシュ箱を発見し、次々とティッシュを取り出して喜ぶ様子は子供のようでもある。

そんなタングの様子を尻目に、健と絵美の物語も描かれる。何があったのか、働く気力を失った健に絵美は腹を立てる。挙句に健の父親の形見である時計を床に投げつけてはめ込まれていたガラスを割ってしまう。仕事をしながら家事もこなす絵美。父親の時計のネジすら毎日絵美が巻いているとなれば絵美の怒りも無理はない。とうとう健とタングは一緒に家を追い出されてしまう。

気付くとタングの体から液体が漏れており、体内にあったメーカーのタグから検索すると、旧式タイプを最新タイプへ交換するキャンペーンを行っている事を知る。これ幸いとタングを最新の料理ロボットと交換して絵美にプレゼントすれば仲直りが出来るかもしれないと、健はタングを連れて本社のある福岡へと向かう。ところがせっかく行ったのに、製造会社では適応外として断られてしまう。

途方に暮れた健だが、たまたまその場に居合わせた社員の林原は、タングに感情があることに驚き、タングに応急処置をほどこすと、中国の深センにいるロボット博士・大槻を紹介する。さすがに中国まで行くのをためらう健だが、健の好きなコーヒーを宝物の100円硬貨で買い、揺れてこぼしながらも一生懸命届けてくれたタングの優しさに触れて決心する。こうして健とタングは深センに向かう・・・

近未来の深センは、ロボット科学の最前線で、マッピング映像にあふれた様子はとても華やかな大都会。アメリカではなく、中国であることが何とも言えない。ここから物語は動いていく。何やら怪しげな2人組がタングを「誘拐」する。ここからタングにまつわる陰謀が露になっていく。そんな陰謀を縦糸に、健の過去と妻の絵美との物語を横糸にドラマは進んでいく。健が自信を失くしたのにもそれなりに理由がある。

そこからのストーリーはなんとなく子供向けという内容。悪の親玉を演じるのは武田鉄矢。面白いキャスティングであるが、それだけ。子供向けの映画であると考えれば納得できるが、大人にはちょっとキツイ。もっともこの映画を観ようと思ったのは満島ひかりが出演していたから。その目的では満足いくので、何を求めるかで感想も異なるだろう。この手のロボットドラマではどこかで見たようなストーリーの焼きまわし感は否めない。ストーリーを観ていくのは子供と一緒がいいかもしれない。

個人的には満島ひかりを観て満足の一作である・・・


評価:★★☆☆☆








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2025年01月18日

【シビル・ウォー アメリカ最後の日】My Cinema File 2959

シビル・ウォー アメリカ最後の日.jpg

原題: Civil War
2024年 アメリカ
監督: アレックス・ガーランド
出演: 
キルステン・ダンスト:リー・スミス
ワグネル・モウラ:ジョエル
ケイリー・スピーニー:ジェシー・カレン
スティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン:サミー
ソノヤ・ミズノ:アニャ
ニック・オファーマン:大統領

<映画.com>
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『エクス・マキナ』のアレックス・ガーランドが監督・脚本を手がけ、内戦の勃発により戦場と化した近未来のアメリカを舞台に、最前線を取材するジャーナリストたちを主人公に圧倒的没入感で描いたアクションスリラー。
連邦政府から19の州が離脱したアメリカでは、テキサス州とカリフォルニア州の同盟からなる「西部勢力」と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。就任3期目に突入した権威主義的な大統領は勝利が近いことをテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。戦場カメラマンのリーをはじめとする4人のジャーナリストは、14カ月にわたって一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うべく、ニューヨークからホワイトハウスを目指して旅に出る。彼らは戦場と化した道を進むなかで、内戦の恐怖と狂気を目の当たりにしていく。
出演は「パワー・オブ・ザ・ドッグ」のキルステン・ダンスト、テレビドラマ「ナルコス」のワグネル・モウラ、『DUNE デューン 砂の惑星』のスティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン、「プリシラ」のケイリー・スピーニー。
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物語は内戦に陥ったアメリカを描いて始まる。連邦政府から19の州が離脱し、政府軍とテキサス州とカリフォルニア州による西部軍(WF=Western Forces)との間で内戦になっている。大統領は強気の演説を繰り返すが、もはやワシントンD.C.の陥落は目前に迫っている。戦場カメラマンのリーはとある現場で取材している。給水車に群がる人たち。気づくとカメラを手にした若い女性が無防備に立っており、リーは自分の「ブレス」と書かれたビブスを渡す。その時、現場で自爆テロが起きる。

かろうじて難を逃れたリー。宿泊しているホテルでジャーナリストのジョエルと、厳戒な警備網を潜り抜けて大統領にインタビューしようと計画する。大統領は既にメディアの取材に14か月間答えていない。既に3期目の任期に突入し、FBIを解散させている。詳しくは描かれていないがこのあたりが内戦の理由と関係しているのかもしれない。話を聞いたニューヨーク・タイムズのベテラン記者サミーも同行を申し出る。そこにリーが助けた若い女性カメラマンのジェシーが現れる。リーの反対を押し切り、ジョエルとサミーは、ジェシーを車に乗せる。

一路ホワイトハウスへと向かう4人。途中、政府軍とWFとの交戦があり、銃弾の飛び交う中を取材するリーたち。WFは政府軍を鎮圧するも、降伏した政府軍兵士を射殺する。米軍らしからぬ行為である。果たしてどちらに正義があるのかわからない。米国内の移動であるが、出会う人たちが敵味方か判別できない。ガソリンスタンドに寄った一行だが、そこにいる武装した集団との交流は緊張感に包まれる。裏の空き地では痛めつけられて瀕死の男が吊り下げられている。

この映画では視点は主人公のリーに合わされている。そして政府軍、WFのどちらに正義があるかという事は明確ではない。大統領は現行憲法では禁止されている3期目に入っていて、さらにFBIを廃止するなど独裁色を強めている。それに抵抗するWFは降伏した政府軍兵士を射殺するなどモラルが欠如しており、どちらか曖昧な武装勢力が各地に跋扈している。道中、記者仲間が理不尽な物言いをつけられて射殺されるのも一例である。非武装の記者だからといって安全ではない。

そんな内戦が現実的かと問われると、現在のトランプ大統領の再選が実現し、またまた大胆な発言を見ると、3期目を目指すというのもあながちあり得ない事ではない。中国では習近平が憲法を改正して3期目であるし、そうした「あり得そうな近未来」と言えなくもない。ひょっとしたらこの映画の制作の背後にはトランプ大統領に対する警戒感があるのではないかと思ってしまうくらいである。内戦と言っても、映画では激しい戦闘シーンはラストのホワイトハウスを巡る攻防戦以外ほとんど出てこない。

そんな内戦の行方を追う一方、映画は若いカメラマンのジェシーの成長を追う。リーに憧れていたと言い、時に無謀とも思える行動を取り、リーの教えを受けながら成長していく。ラストのホワイトハウスでの行動はその成長の表れでもある。そんなジャーナリストの姿を見ると、そこには本物のジャーナリズムがあるように思う。それに比べると、我が国に本物のジャーナリズムが果たしてあるのかと思えてならない。そんな事をつらつらと考えさせられるところがある。特に集大成となるクライマックスのホワイトハウスでの攻防戦は実に見応えがある。繰り返すが、どちらに正義があるというものでもない。

映画は表現が自由であり、ありうべき近未来、ありそうもない近未来のいずれも表現可能である。ただそこに実現可能性があれば、表面的なストーリーの流れとは別に深く考えさせられるものがある。観ながら感じたが、アメリカの地理にもう少し明るければ、違う楽しみ方もできたかもしれない。決して絵空事ではない「起こりえる近未来」であるが、「起こってほしくない近未来」でもある。エンディングでホワイトハウスを陥落させた兵士たちの笑顔の写真にも深く考えさせられる映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2024年12月08日

【マッドマックス:フュリオサ】My Cinema File 2939

マッドマックス-フュリオサ.jpg

原題: Furiosa: A Mad Max Saga
2024年 アメリカ
監督: ジョージ・ミラー
出演: 
アニヤ・テイラー=ジョイ:フュリオサ
クリス・ヘムズワース:ディメンタス
トム・バーク:警護隊長ジャック
アリーラ・ブラウン:少女フュリオサ
チャーリー・フレイザー:メリー・ジャバサ
ラッキー・ヒューム:リズデール・ペル/イモータン・ジョー
ジョン・ハワード:人食い男爵
リー・ペリー:武器将軍
ネイサン・ジョーンズ:リクタス
ジョシュ・ヘルマン:スクロータス
アンガス・サンプソン:オーガニック・メカニック

<シネマトゥデイ>
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『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に続き、シリーズの生みの親であるジョージ・ミラーが監督を務めるアクション。世界崩壊から45年後、故郷からさらわれたフュリオサがバイカーたちの軍門に降り、荒廃した世界で城塞都市の支配者イモータン・ジョーとの戦いに巻き込まれる。主人公フュリオサを『ラストナイト・イン・ソーホー』などのアニャ・テイラー=ジョイ、バイカー軍団のリーダーを『アベンジャーズ』シリーズなどのクリス・ヘムズワースが演じる。
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『マッドマックス』というタイトルがついているので、てっきり例のシリーズの続編かと思っていたら、スピンアウト作品であった。前作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(My Cinema File 1493)に登場したイモータン・ジョーの部下フュリオサがこの物語の主人公。前作ではイモータン・ジョーから5人の妻を奪って逃走したフュリオサであるが、そこに至る経緯がこの物語で描かれる。

物語は5つの章に分かれて描かれる。
最初は「到達不能極 (THE POLE OF INACCESSIBILITY)」。放射能に汚染された荒れ地と化したオーストラリアの中に奇跡的に木々が残る地域が残っている。そこで、仲間とともに果物を収穫しようとしていた少女フュリオサは、いかつい男たちが侵入してきているのに気づく。密かに近づいてバイクを壊そうとするが、逆に男たちに攫われてしまう。

フュリオサの母メリーは、娘を連れ去ったバイカーを追う。道中3人のうち2人を倒すが、残る1人はディメンタス率いるキャンプに逃げおおせてしまう。男はこの情報をディメンタスに直接伝えて手柄にしようとする。メリーは密かにキャンプに侵入して単身果敢にフュリオサを救出する。しかし、追って襲い掛かるバイク軍団に追い詰められ、フュリオサに果物の種を託すと自ら囮になってフュリオサを逃がそうとする。だが、そこは子供。捕らえられた母を見捨てられず、自らもまた捕らえられ、そして母を眼の前で殺されてしまう。フュリオサはディメンタスの娘として囲われることとなる。

続いて「荒れはてた地の教訓 (LESSONS FROM THE WASTELAND)」。ディメンタス率いるバイク軍団は、清浄な水と作物に恵まれたシタデルを発見し包囲するが、当地の支配者イモータン・ジョーは死をも厭わない狂信的なウォー・ボーイズを配下にしており、撃退されてしまう。ディメンタスは諦めることなく、今度はシタデルにガソリンを供給している「ガスタウン」を占拠し、イモータン・ジョーとの交渉の材料に使う。そして水と食料の配給を確保するが、逆にフュリオサと医者のオーガニック・メカニックを差し出すことになる。フュリオサはイモータン・ジョーの妻たちとともに幽閉される。しかし、イモータン・ジョーの息子の一人リクタスがフュリオサに手を出そうとした機会を利用して逃げ出す事に成功する。

次は「潜伏 (THE STOWAWAY)」。逃げても外の砂漠世界では生きていけない。フュリオサは髪を切り、口の利けない少年のふりをしてイモータン・ジョーの配下に潜んで時を過ごす。成長したフュリオサを描くのが、「故郷へ (HOMEWARD)」。そして物語の結末となる「復讐の彼方 (BEYOND VENGEANCE)」となる。愛する母親を目の前で殺され、意に反して母の敵でもある男に捕らえられ、さらに取引材料としてイモータン・ジョーに渡されてしまうフュリオサ。少女が暴力の荒れ狂う世界で生き残っていく姿は痛ましいものがある。それでも知恵と勇気で雌伏の時を過ごす。

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(My Cinema File 1493)では、主役のマックスよりも目立ってしまった感があったフュリオサであるが、その生い立ちにこんな物語があったのかと思わされる。「マッドマックス」と言えば、もはや荒廃した世界でのバイオレンス・ストーリーの代名詞という感がある。マックスの登場しない「マッドマックス」がこれからも続いていくのであろうか。

それもまた良しと思わせてくれる一作である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年10月16日

【マダム・ウェブ】My Cinema File 2923

マダム・ウェブ.jpg

原題: Madame Web
2024年 アメリカ
監督: S・J・クラークソン
出演: 
ダコタ・ジョンソン:キャシー・ウェブ/マダム・ウェブ
シドニー・スウィーニー:ジュリア・コーンウォール
セレステ・オコナー:マティ・フランクリン
イザベラ・メルセド:アーニャ・コラソン
タハール・ラヒム:エゼキエル・シムズ
マイク・エップス:オニール
エマ・ロバーツ:メアリー・パーカー
アダム・スコット:ベン・パーカー

<MOVIE WALKER PRESS解説>
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未来を予知する謎の女性マダム・ウェブの活躍を描くマーベル初の本格ミステリー・サスペンス。NYの救命士・キャシー・ウェヴは、生死を彷徨う事故をきっかけに未来予知の能力を得る。そんななか、偶然出会った3人の少女が、黒いマスクとスーツの男に殺される未来を見る。出演は『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』シリーズのダコタ・ジョンソン、「リアリティ」のシドニー・スウィーニー、「ゴーストバスターズ アフターライフ」のセレステ・オコナー。監督はTV『Marvel ザ・ディフェンダーズ』のS・J・クラークソン。
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物語は1973年、ペルーのジャングルで始まる。コンスタンス・ウェブは研究者。臨月にも関わらず、ジャングルの中でとある蜘蛛を探している。その蜘蛛には古来より病気を治すなどの不思議な力があるという。コンスタンスの助手のシムズは、密かにコンスタンスの研究ノートを写真に撮る。そしてコンスタンスがとうとう幻の蜘蛛を捕まえると、シムズは周りの隊員を銃で撃ち、コンスタンスから蜘蛛を奪う。抵抗するコンスタンスともみ合ううちにシムズはコンスタンスを銃で撃ってしまう。蜘蛛を奪ったシムズはそのまま逃げていく。

撃たれたコンスタンスを助けたのは、ラス・アラニャスと呼ばれる地元の部族。コンスタンスを洞窟内の池に連れて行くと、幻の蜘蛛にコンスタンスを噛ませる。幻の蜘蛛の不思議な力が働いたのか、コンスタンスはそのまま水中で赤ん坊を出産する。族長のサンティアゴは「この子は強い。困難になって戻ってきたら、私が迎えよう」と約束する。しかし、赤ん坊を生んだコンスタンスはそのまま息を引き取る。

所変わって2003年のニューヨーク。主人公のカサンドラ・ウェブ(通称キャッシー)は、救急隊員。その日も急患を乗せて混雑する道路を病院に急ぐ。後部では同僚のベン・パーカーが患者の処置をしている。その時、救急車の前にスケートボードの少女マティが飛び出してきて轢きそうになる。これが後の伏線の一つ。アパートに帰ったキャッシーは、窓から入って来た野良猫に牛乳を飲ませ、母のトランクを開ける。中には母の写真とともに蜘蛛の絵や化学式が書かれた手帳がある。キャシーこそ、コンスタンスが生んだ赤ん坊である。

キャッシーとベンは、また新たな事故現場に行く。橋から落ちそうな車から運転手を救出するが、キャッシーは車とともに川に転落してしまう。川に落ちたキャッシーは、不思議な体験をする。周りに蜘蛛の糸のようなものが漂い、青い風船が割れ、両手が血まみれになり、花火が打ち上がり、自分が分裂し、ネオン看板の「S」の文字が落下し、自分が落下する幻影を見る。ベンの心肺蘇生によって息を吹き返すキャッシー。ベンがキャッシーの瞳孔を調べ、血中酸素濃度を測る。ところがキャッシーが「また測るのか?」と言う。ベンも訝しがる。

 一方、シムズはすっかり成功者になっている。オペラを見ていた美人と出会い、家に連れて行く。部屋ではあの幻の蜘蛛を飼っている。美女とベッドを共にしたシムズだが、いつも同じ夢に悩まされる。それは3人の謎の女たちに追い詰められる夢。覆面をした謎の女たちに襲われ、最後はビルの窓から転落する。悪夢で跳び起きたシムズはそれが予知夢だと考え、奴らを見つけて、先に殺すと決める。どこの誰だか分かるのかという事について、シムズはテクノロジーを利用して顔認証で探すとする。実はベッドをともにした美女はNSAの社員であり、シムズはパスワードを聞き出すとこれを殺害する。

キャッシーは、臨死体験以来、不思議な能力を身につける。それは未来予測。少し先の未来を実体験する。そのため、はじめはキャッシーも気がつかない。ただ、同じ場面が繰り返される事で次第に気がついていく。しかし、気づく前に埠頭の倉庫の火事で同僚が事故死する幻影を見ながらそれを阻止できず、キャッシーは深く傷つく。シムズは助手としてアマリアを雇い、NSAの監視システムにアクセスして夢の3人の女を探す。夢を10年後と仮定して現在の顔を再現すると、10代の少女をターゲットと決める。

こうして物語は進んでいく。シムズが3人の女に襲われるのは未来の話。現在はまだ少女であり、3人にその力はない。そこに予知能力を供えたキャシーが絡んでいく。何かに導かれるように、見知らぬ男に3人の少女が襲われるシーンを見て、助けに動く。キャッシーには予知能力はあるが、戦闘能力はない。一方、蜘蛛の力なのかシムズには人間の力を超越した能力がある。3人の少女を守るキャッシーとシムズの戦いがクライマックスに向けて進んでいく。

一応、マーベルの作品であるが、ヒーローモノと言えるのだろうかと思うと、主人公のキャッシーには予知能力しかなく、3人の女もまだ少女でヒーローに変身する前。イマイチヒーローが誰なのか曖昧である。さらに冒頭で不思議な蜘蛛が登場するが、何となくスパイダーマンの二番煎じのように思えてしまう。焦点が定まらないという感じが漂う。これから何らかのヒーローになるのであれば、まずそれを確立させてから本映画は「前日譚」として描いたらいいように思う。

さらにタイトルは「マダム・ウェブ」であるが、キャッシーは独身である。3人の少女の保護者にでもなるのだろうか。また、3人はのちにスパイダーウーマンにでもなるのだろうか。どうにも疑問だらけの中途半端なヒーローモノである。主演は『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(My Cinema File 1606)シリーズのダコタ・ジョンソンであり、ビジュアル的にはバッチリなのであるが、不完全なストーリーが足を引っ張る。

マーベルのヒーローモノだと期待して観たが、残念ながら大きく期待外れの内容であった。はたして続編は作られるのだろうか。そうだとしたら、ヒーロー像を確立しないと厳しいと思える映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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