2017年03月31日

モーガン プロトタイプ L−9

モーガンプロトタイプL-9.jpg

原題: Morgan
2016年 アメリカ
監督: ルーク・スコット
製作: リドリー・スコット/マイケル・シェイファー/マーク・ハッファム
出演: 
ケイト・マーラ: リー・ウェザーズ
アニヤ・テイラー=ジョイ: モーガン
ミシェル・ヨー: チェン博士
ジェニファー・ジェイソン・リー: キャシー・グリーフ
ポール・ジアマッティ: シャピロ博士
ローズ・レスリー: エイミー

<映画.com>
********************************************************************************************************
『ブレードランナー』のリドリー・スコット製作のもと、息子のルーク・スコットが長編初メガホンをとり、暴走した人工生命体の脅威を描いたSFアクションスリラー。シンセクト社の研究施設で開発が進められていた人工生命体の試作品L-9「モーガン」が、突如として研究者を襲い大怪我を負わせた。事態を調査するため、危機管理コンサルタントのリー・ウェザーズと心理評価の専門家シャピロ博士が現地に派遣される。しかし、調査の最中にモーガンが再び混乱しはじめてしまい……。リー役を『オデッセイ』のケイト・マーラ、シャピロ博士役を「サイドウェイ」のポール・ジアマッティがそれぞれ演じた。
********************************************************************************************************

物語は一人の女性がとある施設にやってくることから始まる。女性の名はリー・ウェザーズ。とある企業から派遣されたリスクコンサルタント。実はその施設ではある事故が起こっており、その調査と評価がリーの役目。そしてリーは早速、調査に取り掛かる。事故の内容はその施設で女性が怪我をさせられたというもの。怪我をさせたのはモーガンという名の少女。

モーガンは、この施設で人工的に生まれた女性。と言っても企業側はそれを「人間」とは認めていない。施設の人間がモーガンを「her」と呼ぶのに対し、リーがそれを「it」と訂正させるところに両者の深い溝がある。施設の研究者たちは、モーガンに愛着を抱いており、企業が事故を原因として研究を中止させることを恐れている。そして企業側からはさらに専門家のシャピロ博士が派遣されてくる。

シャピロ博士はモーガンと面談をするが、シャピロ博士は意図的にモーガンを感情的にさせる。しかし、それは裏目に出てモーガンはシャピロ博士を殺害する。慌ててモーガンを眠らせるスタッフ。リーはモーガンを処分するように伝えるが、モーガンを「育てた」施設の研究者たちはそれができず、モーガンを救おうとする・・・

ここから物語は急展開する。このモーガンであるが、遺伝子操作によって生まれ、人間のように赤ん坊から成長した様子。実際は数年で成人の体型になったようだが、映画では詳しいことは説明されていない。優れた格闘テクニックを身につけているが、その理由もわからない。謎が多すぎるところがイマイチか。もう少し説明してくれてもいいと思うところ。

以前観た『エクス・マキナ』とテイストが似ているが、こちらの映画はモーガンの詳細がわからないというストレスがある。ストーリー展開も『エクス・マキナ』と似通うところがあるが、ラストに明らかになる事実には驚かされるものがある。「そうだったのか!」と。

監督は、この映画の製作も務める『ブレードランナー』のリドリー・スコットの息子さんだという。名作『ブレードランナー』も、人間と同じ思考回路を持ったレプリカントが登場し、その短い命に苦悩するが、モーガンは命こそ短命ではないが、人間の思考とのギャップを感じている様子。単なるSFではなく、考えさせるところがあるのは、リドリー・スコットのテイストなのかもしれない。

ただ、ストーリーとしては凡庸だったかもしれない。主演のケイト・マーラが淡々と任務をこなそうとする理由が最後にわかって一捻りあるものの、もうちょっと何かが欲しかった気がする映画である・・・


評価:★★☆☆☆





posted by HH at 00:00 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | SF/近未来ドラマ

2017年02月25日

プロジェクト・アルマナック

プロジェクト・アルマナック.jpg

原題: Project Almanac
2015年 アメリカ
製作:マイケル・ベイ/アンドリュー・フォーム/ブラッド・フラー
監督: ディーン・イズラライト
出演: 
ジョニー・ウェストン:デイビッド
ソフィア・ブラック=デリア:ジェシー
サム・ラーナー:クイン
アレン・エバンジェリスタ:アダム
バージニア・ガードナー:クリスティーナ

<映画.com>
********************************************************************************************************
『トランスフォーマー』シリーズのマイケル・ベイが製作を手がけ、タイムマシンを手に入れた若者たちが興味本位に過去を変えたことから恐ろしい事態に陥っていく姿を描いたSFドラマ。高校生のデビッドは、幼い頃のビデオ映像に現在の自分の姿が映っているのを発見する。父の作業場からタイムマシンを見つけた彼は、仲間たちと共に過去へさかのぼり、宝くじを当てたりいじめっ子に復讐したりと好き放題に楽しみ始める。ところが、彼らが過去を変えたために現在も変化し、友人の存在が消えてしまう。さらに、世界中で飛行機事故や暴動が起こるようになり、人類は破滅の危機に追い込まれていく。出演は「マーヴェリックス 波に魅せられた男たち」のジョニー・ウェストン、『MIA ミア』のソフィア・ブラック=デリア。
********************************************************************************************************

 主人公のデイビッドは、独自に改良したドローンをビデオに録り、それを添えてMITに願書を提出する。観ていてなかなかの出来栄えなのだが、それが認められて見事念願の合格通知を手にする。しかし、喜びもつかの間、奨学金が予定額に届かず、入学に暗雲が漂う。デイビッドは、7歳の誕生日に父親を事故で亡くし、母親の稼ぎだけでは奨学金なくして大学へは進めない。そんな苦悩を抱えだデイビッドは、屋根裏部屋で父のビデオカメラを発見する。懐かしい映像は、まさに7歳の誕生日パーティのもの。しかしその映像の中に、今の自分の姿を発見して愕然とする。

 さっそくいつもの仲間たちを集め、ビデオの映像から推理して謎を探っていく。そしてそれは地下室にある研究用具に行きつく。さらに父親が実は軍の研究機関にいて、そこにあるのはタイムマシンだと気が付く。持ち前の優秀さを活かし、デイビッドは仲間たちとともに、資料を基にタイムマシンの制作に取り組んでいく。このあたりの流れるような過程は単純に面白い。若者たちが事件に巻き込まれていくパターンは、『トランスフォーマー』シリーズでもおなじみであるが、展開にスピード感があっていい。

 こうしてとうとうデイビッドたちは、タイムマシンを完成させてしまう。そこからデイビッドたちは過去へと戻り、「時間差」を利用して楽しむ。宝クジ(ロトのようものだろうか)を当てて大金を合法的に手にし、テストで好成績を取り、授業中に「45秒」だけ抜け出して過去のロックフェスタに参加する。しかも現在では無価値となったVIPカードをオークションで格安に手に入れた上で参加するという賢さ。デイビッドたちが夢中になって楽しむのも無理はない。

 さらにデイビッドは、密かに思いを寄せていたジェシーに対してアタックし、その心を掴む。これも過去の失敗を糧としてやり直すわけであるから、うまくいくわけである。こうして我が世の春を謳歌するデイビッドたちであるが、これだけだとストーリーは面白くない。やがてその余波は思いもかけない「歴史の改変」となって現れる。それはとうとう航空機事故で多数の死傷者が出るという事態に発展する。

 焦ったデイビッドは、仲間とのルールを破って一人で過去に戻り、変わってしまった過去を直そうと奮闘する。何がどうと因果関係を辿り、何とか正そうと悪戦苦闘するところからドラマが動いていく。こちらを正せばあちらが立たず、で世の中は思う通りには動かない。何度も過去に戻る中、次々と予想外の出来事が起こっていく。恐怖の悪循環。そしてとうとう、決定的な事件が起こってしまう・・・

 こうしたタイムトラベルものには、必然的に「タイムパラドックス」という問題がついてまわる。この物語でもそうであるが、一つの時間の流れの中で考えるとどうしても矛盾が生じてしまう。それを細かくつつくのはナンセンスだろう。「そういうものだ」として観るのが正しい観方である。そして最後にデイビッドは、最初に問題となった時間=7歳の誕生日に戻ることにする。

 「あんなことできたらいいな」「こんなことできたらいいな」そんな願望を実現させてくれるとともに、世の中そううまくはいかないと諭すような内容。スピーディで、主人公デイビッドの心中も良く伝わってくる。主人公が好きになる女性として登場するのは、個人的に注目している『MIA ミア』のソフィア・ブラック=デリア。ここでも美しさは変わらず。引き続き注目していきたい存在である。

 マイケル・ベイの影響力がどこまで出ているのか知る由もないが、『トランスフォーマー』シリーズの香り漂う楽しい映画である・・・


評価:★★☆☆☆



posted by HH at 00:00 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | SF/近未来ドラマ

チャッピー

チャッピー.jpg

原題: CHAPPiE 
2015年 アメリカ
監督: ニール・ブロムカンプ
出演: 
シャールト・コプリー:チャッピー
デーヴ・パテール:ディオン・ウィルソン
ニンジャ:ニンジャ(ダイ・アントワード)
ヨ=ランディ・ヴィッサー(ダイ・アントワード):ヨーランディ
ホセ・パブロ・カンティージョ:アメリカ
ヒュー・ジャックマン:ヴィンセント・ムーア
シガニー・ウィーバー:ミシェル・ブラッドリー

<シネマトゥデイ>
********************************************************************************************************
『第9地区』『エリジウム』の鬼才ニール・ブロムカンプが手掛けたSFアクション。人工知能を搭載したロボットのチャッピーが自身を誘拐したストリートギャングたちと奇妙な絆を育みながら、壮絶な戦いに巻き込まれていく。『第9地区』にも出演したシャールト・コプリー、『X-MEN』シリーズなどのヒュー・ジャックマン、『愛は霧のかなたに』などのシガーニー・ウィーヴァーなど、実力派や個性派が出演。純粋無垢なチャッピーの愛らしい姿やリアルな造形に加え、すさまじいアクションの数々も見もの。
********************************************************************************************************

 近未来。ヨハネスブルグの高い犯罪発生率を減らすため、南アフリカ政府は、大手兵器メーカーTetravaal社から、高性能の人工知能を取り入れた最先端のロボットを購入し警察に配備している。これにより警官の被害が減り、犯罪組織の壊滅にも効果を発揮する。ロボットの設計者ディオン・ウィルソンはさらにAIの改良に励み、ついに人間の知性を模倣した新たなAIソフトウェアを開発する。

 一方、社内では人間の脳波コントロールで動く攻撃ロボット「ムース」を手掛けるエンジニアのヴィンセント・ムーアが、ディオンの成功を妬み、機会を伺っている。そんな中、ディオンは新たに開発した AIの導入についてCEOのミシェル・ブラッドリーの許可を得られず、密かに損傷して廃棄予定だったロボット警官22号とソフトウエアをアップデートするためのUSB持ち出す。

 これを待ち受けていたのは、ロボット警官の活躍で金に窮していたギャンググループのニンジャ、ヨーランディ、アメリカ。彼らはディオンを誘拐すると、壊れたロボットに新しいAIソフトをインストールさせ、意のままに動かし強盗に役立てようと考える。誕生したロボットは赤子同様の知能で、ニンジャらの「教育」により、「ギャング口調」を覚え「成長」していく・・・

 昔何かで、「人間には悪の心があるから相手の悪事がわかる」ということを読んだ気がする。疑うことを知らない幼児は、簡単に騙される。生まれたばかりのチャッピーもそうであり、「犯罪を犯してはいけない」とインプットされているが、「相手を寝かせる」とギャングのニンジャに説明されると、純粋に相手を攻撃して「寝かせ」てしまう。「車泥棒から車を取り返せ」と言われて、素直に車を強奪する。騙されて強盗の手先をするチャッピーの姿は滑稽であるが、かえって人間の醜さを見せつけられる気がする。

 借金返済の期限が迫るニンジャ達は、チャッピーを「最強兵器」として利用しようとし、ムーアはそのテクノロジーを奪うためにチャッピーを襲ってUSBを強奪する。CEOのミッシェルはあくまでもビジネス優先であるし、純粋にテクノロジーを追求するディオンとチャッピーにとって生きにくい環境である。

 「学習する機械」という意味では、『ターミネーター2』を思い出す。ここでもチャッピーは、ギャングのニンジャを「パパ」、ヨーランディを「ママ」として学習し、成長する。短期間でのその成長ぶりは、取り巻く醜い人間達と比較すると、下手をすると人間を上回る「心」を持つに至るかのごときである。

 これからAIはどこまで進化して行くのであろうか。そして出来上がった AIは果たして人間の幸福に役立つのであろうか。「ジャッジメントデイ」を迎えることのない未来を期待したいところである。ヒュー・ジャックマンも『リアル・スティール』のようにロボットで格闘する役柄で登場するが、面白いことに『リアル・スティール』とは善悪正反対である。

アクション映画としても面白く、楽しみながら考えさせてくれる一作である・・・


評価:★★★☆☆




posted by HH at 00:00 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | SF/近未来ドラマ

2017年02月19日

ヘイロー:ナイトフォール

ヘイロー-ナイトフォール.jpg

原題: HALO: NIGHTFALL
2015年 アメリカ
製作総指揮: リドリー・スコット
監督: デヴィッド・ザッカー
出演: 
マイク・コルター:ジェイムソン・ロック
スティーブ・ウォディントン:エーケン
クリスティーナ・チョン:メイサー
ルーク・ニール:ホリガン

「キネマ旬報社」データベース********************************************************************************************************
 UNSC(国連宇宙司令部)内で絶大な権限を持つ謎に包まれた部門、ONI(海軍情報局)の有能なエージェントであるジェイムソン・ロックの物語。ロックと彼の仲間は、地球から遠く離れた植民惑星セドラにおけるテロ活動の調査中に、生物兵器による凄惨な攻撃に見舞われる。ロック率いる ONI のエージェントたちは、戦闘経験は豊富だが、ONI に強い不信感を抱く現地指揮官、ランダル・エーケンと行動を共にすることを余儀なくされる。任務の過程で発見した古代の恐るべきアーティファクトをめぐる戦いに巻き込まれ、忠誠心と生死の狭間で究極の選択を迫られることになる。
********************************************************************************************************

 よくある人気ゲームを実写化したという映画。ゲームをやらない身としては、まったくピンと来ないのであるが、「リドリー・スコット製作総指揮」という華やかさがある反面、テレビ映画のため日本劇場未公開だったという不安な面もあって観た映画である。

 物語の舞台は26世紀。人類は長らく異星人“コヴナント”との間で戦争をしてきたが、ようやく和平条約が結ばれたところ。海軍情報局ONIは、宇宙の平和維持任務を担っている。そんな人類の辺境惑星の一つ、“セドラ”で、コヴナントの工作員が、バイオテロを起こす。人類だけに感染し発症する未知の元素を利用したもので、犠牲者が出た人類はさらなる被害の拡大を防ぐ必要に迫られる。

 ONIの部隊を率いるロックは、原因となった未知の元素が赤色巨星の軌道上を漂うヘイローの残骸にあることを突き止める。生活に困った採掘人が採掘し、ゴヴナントに売却していたのである。時間と人員の制約からロックは、地元セドラ軍の隊長エーケンに協力を申し入れる。エリート意識が強く上から目線のONIを快く思わないエーケンだが、人類の危機に際し私怨を捨てて協力することになる。かくして一行はヘイローを破壊しに向う。

 現地に到着し、2人の採掘者を拘束した一行だが、現地に生息していた、テクノロジーに反応し襲ってくるハンターワームに襲われ、宇宙船が墜落させられてしまう。過酷な気象条件下、日の出までの8時間しか猶予がない中、ロックは任務の遂行と脱出という難題を負うことになる。残された時間が短くなる一方、唯一の脱出方法は採掘者たちが乗って来た採掘船だけだが、乗れるのは2名だけ。10人のメンバーは、最後はくじ引きで決めるとして任務の遂行を目指す・・・

 26世紀の世界といっても、未来社会が出てくるのはほんの一瞬。大部分は辺境の寂れた土地が舞台。日が昇れば灼熱地獄で命はない。しかし、脱出船に乗れるのは2名だけという状況下、人間性というものがもろに出てくる。エリート部隊ONIにしても然りであり、任務の遂行にあたっても、心は最後のくじ引きに移る。今まで仲間として助け合ってきた同僚が裏切りはしないか、自分は生き残れるのか、そうした疑心暗鬼が物語を盛り上げる。

 自分が同じ立場に立たされたら、果たしてどう振舞うだろうか。相対立するONIとセドラ軍兵士。それぞれのリーダーであるロックとエーケンは、さすがに醜い「生き残り競争」はおくびにも出さず、任務遂行(=人類の存亡がかかっている)に目を向ける。さすがにリーダーは違う。だが、自分だったらそんな勇敢な態度がとれるだろうか。

 「リドリー・スコット製作総指揮」といううたい文句は、『エイリアン』『ブレード・ランナー』『プロメテウス』といった作品を必然的に連想させ、間違いなくそれだけで観る価値があると思わされる。しかしながら、この映画はどうもパンチ力に欠ける。「困難な状況下でどう振る舞うか」という部分では確かに興味深いが、そもそも期待していたSF的な要素では残念ながら「お粗末」という印象をぬぐえない。

 細かい突っ込みどころも多々あり、一々気にしていては映画というものは楽しめないとは思うものの、それでも「あれ?何でだろう?」と思ってしまうとどうしても引っ掛かってしまう。例えばテクノロジーに反応するワームから逃れるため、ある場面ではすべての装備のスイッチをオフにして逃げるが、別の場面ではそれでも襲われてしまう。一々説明を探すのも大変である。

 そこそこ期待していただけに、「よくあるB級映画」に収まってしまったのは、誠に残念である。「監督」ではなく、「製作総指揮」だったからだろうか。そんな言い訳を考えてあげてみたくなる一作である・・・


評価:★★☆☆☆





posted by HH at 00:00 | 東京 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | SF/近未来ドラマ

2017年01月25日

エクス・マキナ

エクス・マキナ.jpg

原題: Ex Machina
2015年 イギリス
監督: アレックス・ガーランド
出演: 
アリシア・ヴィキャンデル: エヴァ
ドーナル・グリーソン: ケイレブ・スミス
オスカー・アイザック: ネイサン・ベイトマン
ソノヤ・ミズノ: キョウコ

<シネマトゥデイ>
********************************************************************************************************
『28日後・・・』などの脚本家として知られるアレックス・ガーランドが映画初監督を務め、第88回アカデミー賞視覚効果賞を受賞したSFスリラー。人間と人工知能が繰り広げる駆け引きを、限られた登場人物と舞台設定や目を引くビジュアルで活写する。美貌の女性型ロボットのエヴァを、『リリーのすべて』でオスカーに輝いたアリシア・ヴィキャンデルが好演。IT企業の社員と社長には、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のドーナル・グリーソンとオスカー・アイザックがふんする。
********************************************************************************************************


 主人公は、検索エンジンで有名なIT企業ブルーブックでプログラマーとして働くケイレブ。ある日、社内で行われた抽選で社長ネイサンの自宅を訪問する権利を得る。広大な山岳地帯の奥にあるネイサンの自宅は、近くまでヘリコプターで移動しあとは歩いていくという僻地にある。なんとかネイサンの家にたどり着いたケイレブを迎えたネイサンは、一人暮らし。そしてケイレブは、ネイサンに厳密な機密保持契約の書類を提示する。

 わざわざやって来て拒絶する選択肢はケイレブになく、黙ってサインする。そして開示されたのは、そこで行われている人工知能の開発。ネイサンは、ケイレブに彼の人工知能にチューリング・テストを行うよう依頼する。ケイレブの前に現れたのは、人型のAIエヴァ。顔面と手、足先のみが人工皮膚で覆われ、残りの部分は機械の内部構造が透けて見える姿をしている。女性の顔をしたエヴァは、服やかつらで機械構造を隠せば普通の女性と見分けがつかない。

 ネイサンの屋敷には、ケイレブの他に英語が話せないメイドのキョウコがいる。英語が話せないのは、機密保持に都合が良いとネイサンは語る。ケイレブとエヴァの面談が始まる。その様子はモニターでネイサンもチェックしている。しかし途中で停電が起こり、部屋の照明と二人に向けられた監視カメラの電源が落ちる。その時、エヴァはケイレブに、「ネイサンを信じてはいけない」と謎めいた忠告をする。屋敷ではしばしば停電が発生し、原因はわからないとのことであった。

 『ジェイソン・ボーン』で、極めて印象的だったアリシア・ヴィキャンデルが演じているということもあるが、人型AIのエヴァは美人である。女性に免疫力のないケイレブがいつの間にか惹かれていくのも道理である。『her/世界でひとつの彼女』もそうであったが、一皮むけば単なる機械であるのに、外見や声が女性というだけで人間は疑似恋愛に陥ってしまう。いつしか、ケイレブは実験の範疇を越え、エヴァを逃がす気持ちになっていく。

 AIもあまりにも人間に近くなり過ぎると、人間に言われるまま研究施設の中にずっといることに耐えられなくなるのだろう。停電を起こしたエヴァは、ケイレブに二人で外の世界に出たいという希望を語る。戸惑うケイレブに対し、ネイサンはAIをアップグレードするために完全にエヴァを初期化する予定だと告げる。そしてケイレブはその晩、酒に酔って歩けなくなったネイサンを自室まで担いで運び、ついでにネイサンのカードを使って部屋に侵入し、過去の実験データを見てしまう・・・

 人間はペットでさえ家族として扱うくらいであるから、それよりはるかに賢い(人型)AIをそれ以上に思うのは不思議ではない。ましてや外見が異性であれば、人間の異性よりも従順なAIを恋人のように思いたくなるのも人情というもの。『her/世界でひとつの彼女』は声だけの存在であったが、エヴァは美しい実態を伴っている。さらにSEXまでできるとなれば、時として感情のぶつかり合いがある人間の異性よりもずっと良くなってしまうかもしれない。

 そんな想像をさせてしまうこの映画。しかし、その顛末は恐ろしい。物語の続きを想像してみたくなるのは常であるが、この映画は特にそうである。『ブレードランナー』も主人公は最後に女性のレプリカントと逃亡する。この映画ではちょっと違う形であるが、さまざまな「その後」を想像させてくれる。

 あらゆる意味で、「深い」映画である・・・


評価:★★★☆☆





posted by HH at 21:15 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | SF/近未来ドラマ