
2023年 日本
監督/原作: 宮ア駿
出演:
山時聡真:眞人
菅田将暉:青サギ/サギ男
柴咲コウ:キリコ
あいみょん:ヒミ
木村佳乃:夏子
木村拓哉:勝一
竹下景子:いずみ
風吹ジュン:うたこ
阿川佐和子:えりこ
滝沢カレン:ワラワラ
大竹しのぶ:あいこ
國村隼:インコ大王
小林薫:老ペリカン
火野正平:大伯父
<MOVIE WALKER PRESS解説>
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宮崎駿監督が少年時代に母から手渡された同名小説『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎著)にインスパイアされ、オリジナルの物語に自身の少年時代を重ねた自伝的ファンタジー・アニメーション。舞台は宮崎監督の記憶の中に残る、かつての日本。母を戦火で失った11歳の少年・眞人(マヒト)は、父・勝一とともに東京を離れ、新たな母・夏子とともに庭園家屋で暮らし始める。眞人はそこでサギ男や屋敷に住む7人の老婆たち、漁師の女性・キリコなど魅力的なキャラクターにいざなわれ、生と死が混然となった不思議な世界へと分け入っていく。宮崎駿監督が2013年の『風立ちぬ』公開後に行った引退宣言を撤回し、2016年から7年の歳月を経て製作、ついに2023年に劇場公開された。公開前には、音楽は久石譲であること以外は、内容もキャスト・スタッフも明かされない宣伝戦略がとられた。日本公開から間をおかず世界各国で公開、2024年1月、第81回ゴールデングローブ賞の最優秀長編アニメーション映画賞受賞。さらに2024年3月、第96回アカデミー賞長編アニメ映画賞受賞。ジブリ作品のオスカー獲得は『千と千尋の神隠し』以来、21年ぶり2度目となった。
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物語の舞台は太平洋戦争が始まってから3年目の時代。主人公の眞人は軍需工場の経営者である父親の勝一と母ヒサコとの3人暮らし。その母は入院中であったが、空襲で病院が火に包まれ母を失う。父親はヒサコの実家へ工場とともに疎開し、ヒサコの妹夏子と再婚する。勝一は軍需工場の経営者であり、羽振りが良い。疎開先で眞人は転校先に車で送られて行くが、さっそく周りに眼をつけられて殴られる。手痛い洗礼である。眞人は道端の石で自分の頭を殴って出血を伴う大ケガを負い、屋敷で手当を受けて自室で寝込む。
そんな眞人は友達もできず屋敷で1人過ごす。時折青サギがやって来るのを眺めている。ある日、眞人は青サギに誘われるように敷地内にある古い塔に行く。崩れかけた塔を不思議に思った眞人は、土砂で半ば埋もれている入り口から入ろうとするが、屋敷に仕えるばあやたちに制止される。その晩、眞人は夏子から塔は、大伯父によって建てられ、その後大伯父は塔の中で忽然と姿を消したこと、大水が出たときに塔と母屋をつなぐ通路が落ちて迷路のようなトンネルが見つかり、危ないので入り口が埋め立てられたことを教えられる。
翌朝、それまで眞人の部屋にたびたびやって来ていた青サギを木刀を持って追いかける。すると青サギは言葉を話し、「死んだと言われているが、母親の遺体を見ていないでしょう。あなたの助けを待っていますよ」と話しかけられる。不思議な体験である。眞人のケガを知った勝一は、学校側に苦情を訴える。一方で夏子は妊娠し、つわりに苦しんで床に伏す。そして別の日、眞人は屋敷の窓から夏子が森の中へと歩いていく姿を見かける。特に気に留めず、落ちていた青サギの抜け羽を材料に弓矢を自作するが、ヒサコが眞人のために残した小説『君たちはどう生きるか』を見つけて読み進める。
やがて夏子が失踪したと屋敷中が大騒ぎになる。眞人は使用人のばあやキリコとともに夏子を探しに森へ入ると、塔の裏口にたどり着く。そこで青サギの声に促されるまま足を踏み入れた3人はいつの間にか閉じ込められてしまう。塔内で待ち構えていた青サギに眞人は矢を放つ。矢は青サギの嘴を穿つが、それが青サギの弱点をついたのか、青サギは半分鳥で半分人の姿になり、青サギの姿に戻れなくなってしまう。青サギは塔の最上階の人物に命令されたとし、眞人とキリコばあやは「下の世界」へいざなわれていく・・・
タイトルから『君たちはどう生きるか』の映画化かと思っていたら、内容はまったく関係ないもの。なぜそういうタイトルにしたのか疑問に思う。映画の中で主人公が『君たちはどう生きるか』を読んでいるシーンがでてくるので、意識している事は間違いがないが、なぜまったく別の内容のものにしたのかよくわからない。そして塔の中は別世界。そこはジブリならではのもの。その別世界で眞人は不思議な経験と冒険をするのである。
その塔の中の不思議な世界での体験が何かの意味をもっているならまだしも、そうではない(と自分には思えた)のでなおさらよくわからない。しかし、その不思議な世界で行方不明になっていた大伯父に会った眞人は、自らつけた傷について振り返る。それは少年が成長した証。さらに自分の母になるヒミに会う経験もする。少年の成長という大きな括りでは『君たちはどう生きるか』と通じるものがあるのかもしれない。元の世界に戻った眞人は、きっと立派な青年に成長して戦後の世界を生き抜いたに違いない。
タイトルにこだわらなければジブリ作品ならではの面白さを満載。子供が観ても大人が観ても違和感なく楽しめる一作である・・・
評価:★★☆☆☆