2025年03月24日

【きみの瞳(め)が問いかけている】My Cinema File 2986

きみの瞳(め)が問いかけている.jpg
 
2020年 日本
監督: 三木孝浩
出演: 
吉高由里子:柏木明香里
横浜流星:アントニオ篠崎塁
やべきょうすけ:原田陣
田山涼成:大内会長
野間口徹:尾崎隆文
岡田義徳:坂本晋
奥野瑛太:久慈充

<MOVIE WALKER PRESS解説>
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『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の三木孝浩監督が手がけるラブストーリー。不慮の事故で視力を失った明香里を吉高由里子が、罪を犯しキックボクサーの夢を失った塁を横浜流星が演じ、互いに惹かれ合うも残酷な運命に翻弄されていく男女の姿を描く。チャールズ・チャップリンの名作『街の灯』をモチーフにした韓国映画『ただ君だけ』のリメイクで、世界で活躍する韓国出身の人気グループBTSが主題歌を担当している。
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無口で暗い表情の若者が酒屋の配達のバイトを黙々とこなす。重い酒樽を持って階段を上り下りし、体力勝負の仕事である。それが終わればネットカフェで眠る。若者は元キックボクサーの塁。あるビルの管理の仕事の募集を見かけ、夜はそこでも働くようになる。前任者のおじいさんは、突然姿を消したとの事で、寝起きしていた管理室には生活の跡がそのまま残っている。新しい仕事場での勤務初日。管理室に見知らぬ女性がずかずか入ってきて、親しげに塁に話しかけながら、差し入れを渡す。どうやら目が不自由なようで、塁を前任者と勘違いしている。

その女性の名は明香里。前任者のおじいさんとは親しくしていて、一緒にテレビドラマを見ていたそうである。人違いと気づいた明香里は、管理室から慌てて出ていこうとするが、雨が降り始めたこともあり、塁は、管理室でドラマを見ていくよう声を掛けて引き止める。楽しそうにドラマを見終えると、管理室の入り口にある金木犀の鉢植えの水やりを忘れないように告げて明香里は帰って行く。

明香里はコールセンターで働いている。なるほど、目が見えない者でも働くことができる職場の1つである。上司は明香里に優しいが、さりげなく肩に手を置く。それは今の基準ではセクハラ認定されてもおかしくない。その頃、塁はかつて所属していたキックボクシングジムを訪れ、会長とコーチに謝罪する。どうやら突然姿を消したようである。コーチの話から塁は有望だった事がわかる。そしてコーチは復帰を促すが、塁は断る。

1週間後、明香里が再び管理人室にやって来る。お気に入りのテレビドラマがあるようである。金木犀の香りに満足する明香里。管理人室に入るとさり気なく窓を開けてもいいかと尋ねる。履き古したスニーカーが異臭を放っている事に気づく塁。テレビドラマのヒロインに夢中になる明香里。不愛想な塁も少しずつ表情に笑顔と言葉が増えていく。そして次の週、塁はスニーカーを新調し、身だしなみを気にしながら明香里が来るのを待つ。

なぜか名前を尋ねられた塁は答えられない。転んで足をくじいた明香里を塁は自宅まで送る。最後はおぶって長い階段を登り、自宅に辿りつく。ついでに排水口のつまりも直してくれた塁へのお礼に、明香里はコンサートのチケットを渡す。一緒に行く相手がいないと断ろうとする塁だが、明香里の提案で一緒にコンサートに行く約束をする。そして2人でコンサートに行く。こうして2人は少しずつ距離を縮めていく。

コンサートの後、明香里の希望で焼肉屋へ行く2人。目が見えないというのは、健常者にはわからない不便がある。食事中、明香里は肉を落として来ていたニットを汚してしまう。しかし、本人には汚れをうまくふき取れない。それを塁も指摘できない。距離が縮んだり少し離れたり。恋愛というものはそんなものかもしれない。それでも明香里は目が見えなくなった経緯が事故にあり、その事故で両親がなくなっている事を語る。塁も不器用ながら自分のことを打ち明ける。名前はアントニオ・篠崎塁。

2人の恋愛に絡んでくるのが明香里の職場の上司。コンサートのチケットも上司のプレゼントであり、その日もネックレスの入ったプレゼントを渡され、食事に誘われる。一方、塁も実は刑務所に入っており、その原因は施設で一緒に育った半グレ集団のリーダー恭介。恭介は塁に地下格闘技の試合に出場するように迫ってくる。2人の恋愛の前に漂う暗雲。そして2人は過去にそれと知らずに意外な接点があったことがわかる。

恋愛ドラマに障害はつきもの。そして半グレ集団との付き合いは大きな障害。目が見えない女性との恋愛ドラマは過去にもあったが、ヒロインの明香里を演じるのは吉高由里子。お相手は横浜流星で、ともに美男美女であることは否定しないが、何となく吉高由里子が演じるのは違和感がある。2人の年齢差もあるが、吉高由里子が若々しい恋愛ドラマの主人公というのがどうもピンとこない。原作があってその設定がそうなっているのだろうかと思ったりする。

個人的にはこの手の恋愛ドラマは少々合わなくなってきていると感じる。ラストの展開で浜辺で2人が再会するシーンも心は物語の中に入っていけない。それはストーリーの限界か自分の年齢によるものかはよくわからない。そろそろこの手の恋愛ドラマからは卒業なのかもしれない。それでもラストの展開がもう少し自然であったら、という思いはある。韓国ドラマのように無理にドラマチックにし過ぎてコケた印象がある。ラストがもう少し自然であれば、感情移入できたかもしれない映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2025年02月23日

【余命10年】My Cinema File 2973

余命10年.jpg

2022年 日本
監督: 藤井道人
原作小坂流加
出演: 
小松菜奈:高林茉莉
坂口健太郎:真部和人
山田裕貴:富田タケル
奈緒:藤崎沙苗
井口理:三浦アキラ
黒木華:桔梗
田中哲司:平田先生
原日出子:百合子
リリー・フランキー:梶原
松重豊:明久

<映画.com>
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小坂流加の小説を原作にしたラブロマンス。難病で余命10年の女性と、彼女の同窓生である男性が恋に落ちる。メガホンを取るのは『宇宙でいちばんあかるい屋根』などの藤井道人。主演は『恋する寄生虫』などの小松菜奈、『仮面病棟』などの坂口健太郎。『おとなの事情 スマホをのぞいたら』などの岡田惠和、ドラマ「恋はつづくよどこまでも」などの渡邉真子が脚本を務め、『天気の子』などのRADWIMPSが音楽を手掛けている。
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物語は2011年から始まる。入院していた主人公の茉莉は、同室の患者からビデオをもらう。その患者は幼い子を残して亡くなる。茉莉はまだ二十歳だが、10年以上生きる人はほとんどいないといわれる難病の肺動脈性肺高血圧症を患っている。2年間という長い入院生活を終えて退院の日を迎えた茉莉は、もらったビデオを回しながら家族と共に帰宅する。学生時代の友人たちとも再会し、楽しく過ごした帰り道、沙苗から出版社で一緒に働かないかと誘われるが、茉莉は笑顔で断る。

2014年。病気は小康状態。茉莉は、久しぶりに同窓会に出席する。茉莉は病気のことは隠し、東京でOLをしているとみんなに嘘をつく。地元に残っているのが大半な中、茉莉と同じように東京に出ている和人と再会する。一次会が終わると、飲み過ぎて気分が悪くなった和人を介抱しながら、茉莉は学生時代の思い出話をする。何かを思いつめたような表情の和人は、その後、自室のベランダから飛び降りる。幸いにも命をとりとめた和人。親とは絶縁しているようで、行きがかり上、茉莉は同じく同窓生のタケルと一緒に見舞う。

和人なりに生きる事に意味を感じられずの行動だが、余命宣告を受けている茉莉には受け入れられるものではない。そんな気持ちを隠して席を立つ茉莉。後日、病院で茉莉が母親といるのをみかけた和人は、茉莉の母親が病気だと勘違いし、茉莉が自殺しようとした自分に腹を立てたのは母を思ってのことだと和人は誤解する。茉莉とタケルが「焼き鳥屋げん」で開いてくれた退院祝いの席で、和人は茉莉に謝る。帰り道の桜並木でカメラ撮影をしながら茉莉は、和人と話をする。今後の展開を予感させる雰囲気である。

やがて茉莉は在宅で沙苗の出版社のウェブライターの仕事を始め、和人も「焼き鳥屋げん」で働き始める。それぞれ前を向いて歩いていく。2016年、茉莉の姉の桔梗が結婚する。茉莉は陰で親戚が自分の病気の事を話しているのを聞いてしまう。和人との関係は良好だが、余命を考えて恋を避ける茉莉は、和人から告白される。しかし、ひどい息切れを起こしてその場に倒れて救急搬送され、茉莉の病は和人の知るところとなる・・・

タイトルからして死別系悲恋モノという感じがしていたが、どうやら実話をベースとした小説が原作のようである。ふだん、当たり前のように生きている我々は、命が無限だとは思わないが、その期限を意識することはない。しかし、病気などで余命を知らされると、途端に生きる日々が大事になる。茉莉は「あと10年しか生きられないとしたらあなたは何をしますか?」とした小説の執筆に取り掛かる。それを読んだ友人の沙苗は、涙を流しながら世に出そうと話す。

余命宣告を受けてしまうと、相手の事を考えると恋愛には消極的になる。それは相手の時間を奪う事にもなり、どうしても遠慮が出てしまう。茉莉もそうして身を引くが、帰宅して母親にすがり、もっと生きたいと言って泣くシーンは心に迫るものがある。もしも、自分の娘だったらと親としては切なく思う。単なる「お涙頂戴悲恋ストーリー」を予想していたらちょっと違った。主演の2人の共演も好印象の映画である・・・


評価:★★★☆☆








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2024年12月14日

【火口のふたり】My Cinema File 2942

火口のふたり.jpg
 
2019年 日本
監督: 荒井晴彦
原作: 白石一文
出演: 
柄本佑永:原賢治
瀧内公美:佐藤直子

<シネマトゥデイ>
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直木賞作家の白石一文の小説を原作にした衝撃作。再会した男女が、次第に愛の嵐にのみ込まれていく。『大鹿村騒動記』などの脚本家で、『この国の空』では監督を務めた荒井晴彦がメガホンを取る。『素敵なダイナマイトスキャンダル』などの柄本佑と『彼女の人生は間違いじゃない』などの瀧内公美が主人公の男女を演じる。
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ある日、川で釣りをしている主人公の賢治のもとに電話がかかってくる。川で釣りをしている雰囲気からもわかるが、賢治は離婚して独り身であり、おまけに失職して現在は無職である。電話は従妹の直子の結婚を知らせるもの。式に出席するようにとのことで、賢治は故郷の秋田に帰省する。事情はよくわからないが、実家に賢治を迎えてくれる者はいない。そこへ従妹の直子が賢治の帰省を聞きつけて訪ねてくる。

久しぶりの再会に、直子は遠慮なく賢治を買い物に連れ出す。新居に設置するテレビを買いに行こうというもの。直子の結婚相手は自衛隊員だと言う。既に2人で暮らす新居も購入しており、直子は賢治を招待する。と言ってもテレビを運ばせたということである。築20年で500万という戸建ての住宅は、東京の感覚からすると破格の安値である。そして直子はとあるアルバムを賢治に見せる。

それは、2人の男女があられもない姿で所かまわず抱き合う姿。そして写っているのは賢治と直子。どうやら2人は従妹同士でありながら、かつて東京で一緒に暮らし、そういう関係にあったようである。普通、そういうものは男が取っているものであり、女が取っておいているというのも珍しい。しかも、結婚を前にしてそういう写真を見せるのは誘っていると取られてもおかしくない。そしてその通り直子は賢治を誘う。「今夜だけあの頃に戻ってみない?」と。

そしてそのまま2人は「あの頃」の関係に戻る。新居のまだ夫となる男が使っていない新しいベッドでという背徳感が何とも言えない。めくるめくひと時であるが、この2人のセックスシーンは表の映画にしては際どい。そして翌日、直子の家に賢治が訪ねてくる。そして遠慮なく直子を押し倒す。「今だけ」という約束もどこへやら。食事しながら「今だけ」と言ったのにと抗議する直子。しかし、賢治の要望にそれなら夫が戻ってくるまでと変わる。

直子が持っていたアルバムには、ベッドだけでなく、トイレや路地裏などいろいろなところでやりまくっている。若さゆえと言えるが、それを思い出したかのように賢治と直子は絡み合う。2人で全裸でベッドに腰掛けながらセックスについて語り合う。画面は全裸の2人を映し、ぼかしが入るものの普通の映画では珍しいようにも感じる。『愛のコリーダ』(My Cinema File 2889)の時代であれば2人のセックスシーンだけで有名になっていたかもしれない。

こうして賢治と直子は、2人だけの濃密な時間を過ごす。祭り見学に向かう高速バスの座席に隣り合って座り、賢治は直子の下半身をまさぐる。他の乗客もいる中、声を出すわけにはいかない。昔のように建物の間の細い路地裏でつながる。あやしげな声を聞きつけた小学生が覗きに来たりするが、それでも所かまわずという心境はわからなくもない。それは若さゆえなのかもしれないが、本能的な感じもする。

直子は結婚を控えている。それでもそんなことを気にするまでもない。結婚相手には気の毒であるが、それ以上のものがあるのだろう。2人の姿に「将来」という言葉はない。ただ、ただ刹那的に快楽を求める。そういう時期があってもいいだろう。ただやっているだけの映画であるが、それ以上にそういう時を過ごせる2人の姿に何とも言えないうらやましさを覚える映画である・・・


評価:★★☆☆☆










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2024年11月03日

【夏の終り】My Cinema File 2930

夏の終り.jpg
 
2013年 日本
監督: 熊切和嘉
原作: 瀬戸内寂聴
出演: 
満島ひかり:相澤知子
綾野剛:木下涼太
小林薫:小杉慎吾
赤沼夢羅
安部聡子
小市慢太郎

<シネマトゥデイ>
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作家、尼僧として活躍する瀬戸内寂聴が自身の体験を基につづったロングセラー小説を、『海炭市叙景』などの熊切和嘉監督が映画化。妻子がいながら不倫を続ける年上の男性作家、昔関係のあった女性にさまざまな感情が芽生え苦しむ年下の男、その二人の間で揺れ動く女性が織り成す三角関係を描く。自らのうちに潜む女の業に苦悩しながらも自分なりの愛を追い求めるヒロインを、満島ひかりが熱演。相手役をベテラン小林薫と綾野剛が務める。
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冒頭、1人の男がとある一軒の家を訪ねてくる。周辺の状況からこれは昔の日本が舞台だとわかる。昭和20年代だろうか。男は木下涼太。相澤という表札のかかった家から出てきた主人に挨拶をする。外出から帰ってきた1人の女性。アツアツのコロッケを主人と分ける。年齢は少し離れていそうだが、仲がよさそうである。主人の慎吾は作家のようである。主人は木下が訪ねてきた話をする。話の内容から主人とは初対面であったようである。

女性の名は知子。どうやら染物職人のようである。ある日、慎吾が帰宅すると、制服姿の女生徒が寝っ転がって本を読んでいる。「先生」と慎吾を呼ぶが、その関係ははっきりしない。そこへ知子が帰宅し、女生徒にみかんを勧める。どうやら2人で女生徒とは懇意にしているようである。しかし、この女生徒がどういう関係なのか、なぜ我が家のようにこの家に入り浸っている(家にあった本を勝手に読み、挙句に借りて帰って行く)のか、最後までわからずじまいであった。

とある年末の晩、男はどこかへと出掛けていく。寂しそうに見送る知子。風邪を引かないでと言いながら、年明け早々に知子は風邪をひいて寝込む。そういう時、心細いものである。そんな時、涼太から新年の挨拶の電話があり、知子は涼太に見舞いに来いと言う。それを受けて涼太は迎えに来る。この映画は、場面場面で画面が暗くなって入れ替わる。次はその夜のシーンで、帰宅した慎に涼太がきたことを知子は嬉しそうに語る。

やがて2人の関係が正式な夫婦ではないことがわかってくる。慎には実は家族がいる。つまり知子とは不倫関係ということになる。それで2人の関係の理由がわかる。そう言えば、原作者の瀬戸内寂聴は、この手の不倫の話が映画化(『あちらにいる鬼』(My Cinema File 2703))もされているなと思い出す。しかし、ある晩、銭湯に行くと家を出た知子はそのまま涼太の家に行き、関係を持つ。実は知子と涼太は旧知の仲。それは沖縄時代に遡り、知子は夫と子どもがいる身でありながら涼太に惹かれ、夫と子どもを捨てて沖縄から出てきていたという過去が語られていく。

その後、東京で1人働いていた知子は、小説家の慎吾と知り合い、そしていつしか半同棲生活を始めている。その生活は既に8年の長きに及んでいる。2人の関係は慎吾の本妻も知っている。ある日、知子の下に本妻から電話がかかってくる。慎吾の親戚の1人が入院したから見舞いの品を贈れという伝言であるが、そこに本妻の妾に対する優越感の誇示を感じさせられる。一方の知子もそれを感じて本妻に対して劣等感を抱く。この映画は言葉での説明ではなく、登場人物たちの行動で多くを語っている。

慎吾は知子の家に来ると実に優しく家事もこなす。風邪で寝込んだ知子に寄り添い、手を握る。自ら廊下の雑巾がけをする。涼太に会っても何も言わない。昭和の男にしては甲斐甲斐し過ぎる。しかし、それは優しさからではないだろう。それは知子という「都合の良い女」に後ろめたさを感じているからだろう。知子もきっと本妻の座を望んでいる。しかし、それを男は望まない。都合の良い関係を8年もズルズル続けさせてくれるのであれば、廊下の雑巾がけなど男はいくらでもやる。

知子も本心を隠して慎吾を迎える。しかし、抑えきれない思いを我慢できずに涼太の下へ走る。そこで刹那のひと時を過ごすが、涼太と一緒になりたいわけではない。だから知子を求める涼太が後を追ってくると、冷たく突き放す。そして涼太はそんな関係に満足できず、知子を追い求める。いつか知子が慎吾の事を諦め、自分の下に戻ってくるのではないかという期待をこめて。そんなことを感じるのは、自分も人間の心理というものが少しわかってきたからなのかもしれない。

主演は満島ひかり。昭和の女のはかなげな希望と絶望の日々の姿に感じさせるものが多い。出演作品の中でも、『悪人』(My Cinema File 741)『一命』(My Cinema File 1070)『愚行録』(My Cinema File 2028)など、薄幸の女性を演じる事がままある。「そういう役が似合っている」のではなく、「そういう役を演じられる」のだと思う。原作もかなり実体験に基づいているのであろうか。観終わって味わい深い一作である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年10月25日

【世界一キライなあなたに】My Cinema File 2927

世界一キライなあなたに.jpg

原題: Me Before You
2016年 アメリカ
監督: テア・シャーロック
出演: 
エミリア・クラーク:ルイーザ・クラーク(ルー)
サム・クラフリン:ウィル・トレイナー
ジャネット・マクティア:カミーラ・トレイナー
チャールズ・ダンス:スティーブン・トレイナー
ブレンダン・コイル:バーナード・クラーク

<シネマトゥデイ>
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世界中で読まれているジョジョ・モイーズの恋愛小説「ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日」を映画化。バイク事故で車いすの生活となり生きる気力をなくした青年実業家と、彼の介護に雇われた女性の切ない恋の行方を描く。主人公の女性をテレビシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」などのエミリア・クラーク、実業家を『ハンガー・ゲーム』シリーズなどのサム・クラフリンが演じる。そのほか『アルバート氏の人生』などのジャネット・マクティア、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』などのチャールズ・ダンスらが脇を固める。
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とある有能そうなビジネスマンが、忙しげに電話をかけながらビルの外へ出てくる。電話に気を取られたその時、一台のバイクが突っ込んでくる・・・

一方、主人公のルイーザはパン屋に勤めているが、閉店にともなって失職する。両親と家族を支えるためにパン屋で働いていたが、のんびりしているゆとりはなく、すぐに新しい職を探し始める。しかし、なかなかこれといった仕事が見つからない。最後に職業案内所で障害者の世話係という仕事を紹介される。他の仕事に比べても給料がよく、ルイーザは早速、面接に行く。

そこは裕福な豪邸。面接相手は障害者の母親で、事故に遭って障害を負った息子ウィルの世話係を探していたのである。運よく採用されたが、息子とは冒頭で事故に遭った男。首から下が不随であり、わずかに手を動かせる程度という状態。そんな我が身を悲観してか、ウィルは人に対して愛想が悪く、これまで何人も世話係が辞めていっていた。ルイーザにも冷たくあたり、10日間経っても心を開こうとはしなかった。

ルイーザは、自分なりにいろいろと試みるが、ウィルは心を開かない。頭にきたルイーザは、ウィルに本音をぶちまける。本当はファションの仕事に就きたいこと、でも家族のためにお金が必要なこと。そうした態度がウィルの心に響いたのか、ウィルはルイーザに対して徐々に心を開いていく。車椅子で少しずつ外へも出るようになる。いつしかウィルはルイーザに笑顔を見せるほどになり、そんなウィルを母親は安堵の表情で見つめる。

しかし、そんなある日、ルイーザはウィルの両親が衝撃的な話をしているのを耳にしてしまう。実はウィルは安楽死を望んでおり、スイスの安楽死の協会へ半年後に行くことを決めていたのである。何とかそれを思いとどまらせようとする母親と、望み通りにしてあげようとする父親とが口論していたのである。話を聞いてしまったルイーザは、ウィルに生きてほしくて、考え方を変えさせようと、彼にたくさんの経験をさせようと計画する。

明るい世話係が人生を悲観している障害者に人生の楽しみを思い出させていくという展開は、『最強のふたり』(My Cinema File 1182)を彷彿させられる。ここでもルイーザはウィルのために様々な計画を考えて実行に移していく。ウィルの元彼女の結婚式に出席したり、コンサートに行ったりと、ルイーザがいなければおそらくやらなかったこと。ウィルもそれらを楽しみながら過ごしていく。『最強のふたり』(My Cinema File 1182)でも同様に障害を持った主人公は前向きになっていったが、ルイーザはウィルから安楽死の意志は変わらないことを聞かされ、絶望の淵に落とされる。

よくよく考えてみると、ウィルの気持ちはよくわかる。当然ながら次第にルイーザに惹かれていくが、ほとんど動けない自分にとってその気持ちを生かす事は出来ない。ただでさえ絶望の中にいるのにさらに絶望の度合いを深めていく。ウィルの身になって考えてみると、「ルイーザの献身によってウィルは生きる希望を見出してメデタシメデタシ」というわけにはいかない。なかなか考えさせられるストーリーである。それにしても、安楽死が認められる環境にあるという事はうらやましい環境でもある。日本でもそういう環境が整うことを望んでしまう。

とんちんかんな邦題にあきれるのはいつもの事として、“Me Before You”という原題には深く感じさせるものがある。邦題に先入観を持たずに観たい映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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