
2020年 日本
監督: 三木孝浩
出演:
吉高由里子:柏木明香里
横浜流星:アントニオ篠崎塁
やべきょうすけ:原田陣
田山涼成:大内会長
野間口徹:尾崎隆文
岡田義徳:坂本晋
奥野瑛太:久慈充
<MOVIE WALKER PRESS解説>
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『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の三木孝浩監督が手がけるラブストーリー。不慮の事故で視力を失った明香里を吉高由里子が、罪を犯しキックボクサーの夢を失った塁を横浜流星が演じ、互いに惹かれ合うも残酷な運命に翻弄されていく男女の姿を描く。チャールズ・チャップリンの名作『街の灯』をモチーフにした韓国映画『ただ君だけ』のリメイクで、世界で活躍する韓国出身の人気グループBTSが主題歌を担当している。
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無口で暗い表情の若者が酒屋の配達のバイトを黙々とこなす。重い酒樽を持って階段を上り下りし、体力勝負の仕事である。それが終わればネットカフェで眠る。若者は元キックボクサーの塁。あるビルの管理の仕事の募集を見かけ、夜はそこでも働くようになる。前任者のおじいさんは、突然姿を消したとの事で、寝起きしていた管理室には生活の跡がそのまま残っている。新しい仕事場での勤務初日。管理室に見知らぬ女性がずかずか入ってきて、親しげに塁に話しかけながら、差し入れを渡す。どうやら目が不自由なようで、塁を前任者と勘違いしている。
その女性の名は明香里。前任者のおじいさんとは親しくしていて、一緒にテレビドラマを見ていたそうである。人違いと気づいた明香里は、管理室から慌てて出ていこうとするが、雨が降り始めたこともあり、塁は、管理室でドラマを見ていくよう声を掛けて引き止める。楽しそうにドラマを見終えると、管理室の入り口にある金木犀の鉢植えの水やりを忘れないように告げて明香里は帰って行く。
明香里はコールセンターで働いている。なるほど、目が見えない者でも働くことができる職場の1つである。上司は明香里に優しいが、さりげなく肩に手を置く。それは今の基準ではセクハラ認定されてもおかしくない。その頃、塁はかつて所属していたキックボクシングジムを訪れ、会長とコーチに謝罪する。どうやら突然姿を消したようである。コーチの話から塁は有望だった事がわかる。そしてコーチは復帰を促すが、塁は断る。
1週間後、明香里が再び管理人室にやって来る。お気に入りのテレビドラマがあるようである。金木犀の香りに満足する明香里。管理人室に入るとさり気なく窓を開けてもいいかと尋ねる。履き古したスニーカーが異臭を放っている事に気づく塁。テレビドラマのヒロインに夢中になる明香里。不愛想な塁も少しずつ表情に笑顔と言葉が増えていく。そして次の週、塁はスニーカーを新調し、身だしなみを気にしながら明香里が来るのを待つ。
なぜか名前を尋ねられた塁は答えられない。転んで足をくじいた明香里を塁は自宅まで送る。最後はおぶって長い階段を登り、自宅に辿りつく。ついでに排水口のつまりも直してくれた塁へのお礼に、明香里はコンサートのチケットを渡す。一緒に行く相手がいないと断ろうとする塁だが、明香里の提案で一緒にコンサートに行く約束をする。そして2人でコンサートに行く。こうして2人は少しずつ距離を縮めていく。
コンサートの後、明香里の希望で焼肉屋へ行く2人。目が見えないというのは、健常者にはわからない不便がある。食事中、明香里は肉を落として来ていたニットを汚してしまう。しかし、本人には汚れをうまくふき取れない。それを塁も指摘できない。距離が縮んだり少し離れたり。恋愛というものはそんなものかもしれない。それでも明香里は目が見えなくなった経緯が事故にあり、その事故で両親がなくなっている事を語る。塁も不器用ながら自分のことを打ち明ける。名前はアントニオ・篠崎塁。
2人の恋愛に絡んでくるのが明香里の職場の上司。コンサートのチケットも上司のプレゼントであり、その日もネックレスの入ったプレゼントを渡され、食事に誘われる。一方、塁も実は刑務所に入っており、その原因は施設で一緒に育った半グレ集団のリーダー恭介。恭介は塁に地下格闘技の試合に出場するように迫ってくる。2人の恋愛の前に漂う暗雲。そして2人は過去にそれと知らずに意外な接点があったことがわかる。
恋愛ドラマに障害はつきもの。そして半グレ集団との付き合いは大きな障害。目が見えない女性との恋愛ドラマは過去にもあったが、ヒロインの明香里を演じるのは吉高由里子。お相手は横浜流星で、ともに美男美女であることは否定しないが、何となく吉高由里子が演じるのは違和感がある。2人の年齢差もあるが、吉高由里子が若々しい恋愛ドラマの主人公というのがどうもピンとこない。原作があってその設定がそうなっているのだろうかと思ったりする。
個人的にはこの手の恋愛ドラマは少々合わなくなってきていると感じる。ラストの展開で浜辺で2人が再会するシーンも心は物語の中に入っていけない。それはストーリーの限界か自分の年齢によるものかはよくわからない。そろそろこの手の恋愛ドラマからは卒業なのかもしれない。それでもラストの展開がもう少し自然であったら、という思いはある。韓国ドラマのように無理にドラマチックにし過ぎてコケた印象がある。ラストがもう少し自然であれば、感情移入できたかもしれない映画である・・・
評価:★★☆☆☆