2017年07月28日

さいはてにて やさしい香りと待ちながら

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2015年 日本
監督: チアン・ショウチョン
出演: 
永作博美:吉田岬
佐々木希:山崎絵里子
桜田ひより:山崎有沙
保田盛凱清:山崎翔太
臼田あさ:美城山恵
イッセー尾形
:弁護士
村上淳:清水俊夫
永瀬正敏:男
浅田美代子:山崎由希子

<シネマトゥデイ>
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『四十九日のレシピ』などの永作博美と『アフロ田中』などの佐々木希が共演を果たしたヒューマンドラマ。故郷の能登でコーヒー店を開いた孤独な女性と、近所に住むシングルマザーの触れ合いを通して、人と人との関わり合いが生み出す温かさや喜びを浮き上がらせていく。メガホンを取るのは、台湾映画界の名匠ホウ・シャオシェンに師事し、『風に吹かれて−キャメラマン李屏賓(リー・ピンビン)の肖像』で注目を浴びた女流監督チアン・シウチュン。ハートウオーミングな物語に加え、オールロケを敢行した能登半島の美しい風景も見ものだ。
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冒頭、弁護士が主人公の吉田岬と話をしている。どうやら失踪した父親が残した借金の話なのだが、岬はあっさりと払うと答え、その答えを予想していなかった弁護士は面食らう。何気ないシーンだが、この映画での岬の性格を表しているかのようである。そして弁護士は、失踪した父親が残したという不動産の話をする。その物件がある石川県能登半島の最も北側にある奥能登に、岬は古い自動車に家財道具を乗せてやってくる。

そこは父の残した海辺の船小屋。岬には幼い頃、この小屋で父がギターをつま弾く記憶がある。寂れて朽ち果てつつあるその小屋を岬は改築し、焙煎コーヒーのお店『ヨダカ珈琲』を開く。越してきたその日、岬は小屋の前にある民宿に宿を取ろうと訪ねて行くが、そこに現れた若い女性は岬を民生委員と勘違いし、追い返す。やむなく近くのスーパーに買い物に行った岬は、そこで商品を万引きしようとしていた有沙と翔太という姉弟を見かける。

やがてヨダカ珈琲の改築が終わり、開業する。こんな人通りもない辺鄙なところにと思っていたが、ヨダカ珈琲の販売ルートは通販。インターネットで注文を受け、全国に珈琲豆を発送している。なるほどと思わず頷く。一方、眼前の民宿に住んでいるのは若いシングルマザーの絵里子と二人の子供たち有沙と翔太。絵里子は、2人を放置してどこかへ行ってしまい、ネグレクトかと思っていたが、やがて深い事情が分かってくる。

放置された有沙は給食費が払えない。困り果てて知り合った岬に借金を申し入れるが、岬は借りるのは良くないとして、逆に店で働くことを勧める。喜んだ有沙はさっそくヨダカ珈琲で働き始める。そんなヨダカ珈琲には、有沙の担任・恵が家庭訪問に来たついでに寄り、岬と知り合う。絵里子の家にはよからぬ男が出入りし、男が来ている間、居場所のない有沙と翔太は外で時間を潰すことになる・・・

いかにも日本映画的なドラマが展開される。シングルマザーの絵里子は、子供を置いたまま金沢のキャバクラで働いている。その間、小学生の姉弟は二人きりで何日も過ごす。ひどい母親だと思ったが、やがてやむない家庭事情が見えてくる。こんなドラマが展開される。主人公には主人公の事情があり、そこまでの経緯は描かれていないが、根底に流れる悲しみが感じられる。

主人公を演じるのは永作博美。個人的なイメージだが、この方は薄幸な女性というイメージがよく合う。特にそれを感じたのが『八日目の蝉』であるが、この映画でも失踪した父親を幼き日の思い出を抱えて探す(実際にはかつての船小屋で待っているのだが)女性のイメージにピッタリなのである。そしてそんな女性が最後に小さな幸せに辿り着く。しみじみとした味わいがある。

それにしても『ふしぎな岬の物語』も岬の喫茶店が舞台であったが、似たような舞台で、面白いなと感じる。この映画のヨダカ珈琲のようにネット販売というルートがあれば別であるが、店頭販売だけでは商売になりそうもないなぁどと、ついつい現実目線で観てしまった。
それはともかくとして、永作博美の存在感といい、登場人物たちのドラマと相まって、しみじみとした味わいの映画である・・・


評価:★★☆☆☆




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2017年07月23日

岸辺の旅

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2015年 日本・フランス
監督: 黒沢清
出演: 
深津絵里:薮内瑞希
浅野忠信:薮内優介
小松政夫:島影
村岡希美:フジエ
奥貫薫:星谷薫
赤堀雅秋:タカシ

<シネマトゥデイ>
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『アカルイミライ』がパルムドールにノミネートされた経験もある黒沢清監督が、湯本香樹実が2010年に上梓した小説を映画化。3年間行方をくらましていた夫がふいに帰宅し、離れ離れだった夫婦が空白の時間を取り戻すように旅に出るさまを描く。脚本は『私の男』などで知られる宇治田隆史が黒沢監督と共同で担当。『踊る大捜査線』シリーズなどの深津絵里と、『バトルシップ』『マイティ・ソー』シリーズなどでハリウッド進出も果たした浅野忠信が夫婦愛を体現する。
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なんとも不思議な物語。主人公の瑞希は、ピアノの家庭教師をしている。のんびりとした性格の主人公は、深津絵里のイメージによくあう。どうやら一人暮らしの瑞希の前に、突然1人の男が姿を表す。それも家の中で、靴を履いたままで、だ。その男優介は瑞希の夫であり、そして祐介が語るには、すでに自分は死んで海の底なのだと。

現れた夫は幽霊であるというが、実態もあって歩けば足音もする。実に不思議な設定である。そして瑞希は、夫に見せたいところがあるからと思い出の地をめぐる旅に出ようと誘われる。電車に乗って辿り着いた最初の街で、ふたりは新聞配達業に携わる老人、島影の店を訪ねる。優介は過去に島影の下で働いていたとのことであるが、実は島影もまた死者であるという。では配っている新聞はいつのものだと突っ込みたくなりつつ、ストーリーを追う。

次にふたりが訪れたのは、夫婦の経営する食堂。今度は生きている夫婦らしいが、ここでも死者であるはずの夫も普通の存在。これなら死ぬのも悪くはなさそうである。やがて瑞希は2階に残されたピアノを見つけ、それをめぐる妻フジエと死別した妹との思い出を聞かされる。そしてそこに現われる死んだ妹・・・

旅を続ける2人は優介が過ごした時間を追体験して行く。最後に訪れた山奥の農村では、優介は私塾を開いていて、そこで久しぶりの講義を行う。そしてそこでも一家の働き手であった男が、死後再び妻の前に現れたりする。それぞれの物語は静かに進んで行くが、どうもこの物語の設定に馴染めない自分には、どこか物語に入り込めない。やはり死者はもう少し死者らしくあってほしいのである。

この映画に対する違和感は、やはりそこに尽きる。生きている人間と変わりない幽霊の姿は、どこか興ざめである。生きている人間と変わらず実態を持つから、当然夫婦間にはセックスもある。こうなると妄想は勢いが止まらない。そんなリアリティのないスートリーの世界には入っていけず、どこか醒めた目で映画を観てしまっていた。人の感覚はそれぞれだから一概にはいえないが、自分にとってみれば映画の世界に入っていけない映画はそこまでである。

いい映画かどうかは別として、自分にとっては、受け入れにくい映画であった・・・


評価:★★☆☆☆





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2017年07月14日

セッション

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原題: Whiplash
2014年 アメリカ
監督: デミアン・チャゼル
出演: 
マイルズ・テラー:アンドリュー・ニーマン
J・K・シモンズ:フレッチャー
メリッサ・ブノワ:ニコル
ポール・ライザー:ジム・ニーマン
オースティン・ストウェル:ライアン
ネイト・ラング:カール

<シネマトゥデイ>
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サンダンス映画祭でのグランプリと観客賞受賞を筆頭に、さまざまな映画賞で旋風を巻き起こした音楽ドラマ。ジャズドラムを学ぼうと名門音楽学校に入った青年と、彼にすさまじいスパルタ的指導を行う教師の姿を追い掛けていく。メガホンを取るのは、『グランドピアノ 狙われた黒鍵』などの脚本を手掛けてきた俊英デイミアン・チャゼル。主演は『ダイバージェント』などのマイルズ・テラーと『JUNO/ジュノ』などのJ・K・シモンズ。熱いドラマはもちろん、マイルズが繰り出すパワフルなドラミングにも圧倒される。
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主人公は、偉大なジャズ・ドラマーになるという野心を抱いて、全米屈指の名門校シェイファー音楽院に入学した19歳のアンドリュー・ニーマン。ある晩、1人でドラムの練習をしていると、そこに名高いフレッチャー教授がふらりとやってくる。緊張感ある会話は、あっけなく終わる。しかもせっかくのチャンスなのに、フレッチャーはニーマンの演奏をほんの数秒聴いただけで出て行ってしまう。

数日後、ニーマンは指導教官の下でレッスンを受けている。そこに突然現れたフレッチャー。その場にいたメンバー全員の音をチェックすると、主奏者のライアンを差し置いて、ニーマンに自分のバンドに移籍するよう命じる。喜びを噛みしめる一方で、友達のいないニーマンは、時折父と行く映画館の売店でバイトをしているニコルに恋心を抱き、フレッチャーにスカウトされた日、思い切ってデートに誘いOKをもらう。ニーマンにはその先にはバラ色の学生生活が見えていたと思う。

 意気揚々とフレッチャーの教室に行くが、そこは異様なまでの緊張感に包まれた空間。時間ピッタリに現れたフレッチャーは、早速指導を始めるが、僅かな音程のズレを責められた生徒が退場させられる。ニーマンもすぐにフレッチャーの恐怖の指導の洗礼を受ける。指摘されたテンポのズレはごくわずかなもので、観ているこちらもニーマンもわからない。鬼の形相で何度もダメ出しをされ、ビンタでテンポを矯正される。両親の悪口や人格攻撃までされ、あっという間にニーマンは涙ぐむ。これこそがフレッチャーの教室が異様な緊張感に包まれていた理由である。今の日本でやったら大問題になるかもしれない。

しかしニーマンは根性がある。翌日からひたすらドラムを叩き続ける。叩きすぎて手の皮がむけ血が滲み出すが、絆創膏を何枚も貼って練習を続ける。その努力は実るのであるが、1つ壁を越せばフレッチャーはまた次の壁を築く。以前は目もかけなかったライアンを新たな候補として連れてきて、徹底して競わせる。追い詰められたニーマンは、事故で大怪我を負いながらも演奏しようとする。その様は狂気のごとくである・・・

フレッチャーの信念は、一言で言えば「厳しさが人を育てる」というもの。かつて「バード」と異名をとったチャーリー・パーカーが、若い頃ミスをしてシンバルを投げつけられたというエピソードを語る。この時の屈辱感をバネに、チャーリー・パーカーが奮起したというもの。褒めて伸ばすという考え方をフレッチャーは否定し、「Good job!」という言葉が才能を滅ぼすと語る。

そのやり方は、しかし危険なもの。事実、フレッチャーの教え子はそれで精神を病み自殺している。ニーマンもギリギリのところまで追い込まれ、ついには暴発してしまう。フレッチャーの厳しさの裏には愛情があったのかどうか、それは正直言ってよく分からない。そしてニーマンは叩かれても叩かれてもなおへこたれない精神力があり、それがラストの大爆発へと繋がる。ラストのニーマンとフレッチャーの、師弟でありながら本気で真剣で殺し合うかのような演奏は圧巻である。それはまるで、「師匠を殺して勝てば卒業、負ければ殺されておしまい」という卒業試験であるかのようである。

そんな迫力満点の演奏で映画は終わる。その後どうなったかは想像するしかない。しかし、思うにニーマンは実力派ドラマーとなって行くであろう。そしてそれをフレッチャーのおかげであることを彼を憎みながらも思うような気がする。才能を育てるということには何が必要なのだろうか。フレッチャーは果たして名コーチなのだろうか。深く考えさせられる映画である・・・


評価:★★☆☆☆





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2017年07月09日

アル・パチーノ ブロークン 過去に囚われた男

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原題: Manglehorn
2014年 アメリカ
監督: デビッド・ゴードン・グリーン
出演: 
アル・パチーノ:マングルホーン
ホリー・ハンター:ドーン
ハーモニー・コリン:マングルホーンの息子
クリス・メッシーナ

<映画.com>
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過去の愛に囚われた孤独な男が新たな一歩を踏み出すべく奮闘する姿を、名優アル・パチーノ主演で描いたヒューマンドラマ。鍵修理屋を営みながら愛猫と暮らす老人マングルホーン。息子家族と疎遠になり孤独な毎日を送る彼は、毎週訪れる銀行の女性受付係ドーンと交わす他愛のない会話を大切にしていた。ある日、マングルホーンが通うカフェにドーンが現われる。これをきっかけにドーンとの距離を縮めていくマングルホーンだったが、心の奥底ではかつて愛した女性クララへの未練をいまも引きずっていた。ドーン役に「ピアノ・レッスン」のオスカー女優ホリー・ハンター。「セルフィッシュ・サマー」「スモーキング・ハイ」のデビッド・ゴードン・グリーン監督がメガホンをとった。
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主人公の老人マングルホーンは、小さな街で鍵修理屋を営んでいる。小さな店を1人で切り盛りしながら、時折鍵の開錠の出張作業をこなしている。1人暮らしで、家族と言えば成功しているビジネスマンの息子であるが、2人の関係はあまりいいとは言えない。とは言え、孫娘は目に入れても痛くない様子で、時間を作っては一緒に過ごしている。

孤独な独り暮らしを支えるのは愛猫のファニー。そして毎週通う銀行では、窓口の女性ドーンとの会話が楽しみ。夜になると、かつて愛した女性クララに対し出すことのない手紙を書く日々を送っている。そんなある日、マングルホーンがいつも通っているカフェに行くと、そこへ突如ドーンが姿を現す。実は密かにマングルホーンに好意を持ったドーンが、意を決して会いに来たのである。

これをきっかけに、マングルホーンとドーンはともに一時を過ごすようになる。ドーンの家に招待されて訪問し、かねてから話題に出ていた愛犬も紹介される。ドーンがマングルホーンに好意を抱いていることは間違いなく、2人の関係は深まっていくかに思える。しかし、あるデートの時、マングルホーンは過去に愛した女性クララへの絶えない思い語りだし、それを聞いていたドーンはショックで席を立ってしまう・・・

映画を観終わってみると、何とも言いようがないものがこみ上げてくる。まずドラマ自体が面白くない。淡々と進み、終わる内容は盛り上がりに欠ける。主人公のマングルホーンがなぜ今もクララを忘れられないのかよくわからないし、気持ちはわからなくもないがイマイチ共感しにくい。息子とのギクシャクした関係や、その後息子が頼って来た際の対応など、どうにもこうにも解釈が難しい。

さらには理解不能な邦題。「アル・パチーノ」と入れたのは、これで客を引こうとしたのだろう(事実私もそれで迷わず観たし、それがこの映画の唯一の見どころである)が、「ブロークン」って何だ(まぁわからなくもないが、下手な英語だろう)という感じだし、「過去に囚われた」と言っても忘れられない女がいるというだけのこと。原題だけでは確かにおかしいが、それでもこの邦題はないよなと思う。

静かな展開のドラマは、静かに終わる。もう一度観たいというシロモノではなく、大好きな俳優アル・パチーノ主演でもそれは変わらない。やがて観たことすら忘れてしまうタイプの映画である・・・


評価:★★☆☆☆




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2017年07月08日

素晴らしきかな、人生

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原題: Collateral Beauty
2016年 アメリカ
監督: デヴィッド・フランケル
出演: 
ウィル・スミス:ハワード
エドワード・ノートン:ホイット
ケイト・ウィンスレット:クレア
マイケル・ペーニャ:サイモン
ヘレン・ミレン:ブリジット
ナオミ・ハリス:マデリン
キーラ・ナイトレイ:エイミー
ジェイコブ・ラティモア:ラフィ
アン・ダウド:サリー・プライス

<シネマトゥデイ>
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『プラダを着た悪魔』などのデヴィッド・フランケル監督が手掛けたヒューマンドラマ。愛する者を失い仕事も私生活も行き詰まった男が、クセのある舞台俳優たちとの交流を経て人生を見つめ直す。『幸せのちから』などのウィル・スミスを筆頭に、ケイト・ウィンスレット、キーラ・ナイトレイ、エドワード・ノートン、ヘレン・ミレンら豪華俳優陣が出演。温かなストーリー、女優たちが身にまとう華麗なファッションの数々に注目。
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 タイトルを見て、てっきり古き良き名作『素晴らしき哉、人生!』(原題:It's a Wonderful Life)のリメイクだと思ったのだが、内容はまったくの別物。原題が同じなら仕方がないが、これも全くの別物。なのになんで同じ邦題をつけたのか、まったくもって理解不能な一作。とは言え、それは映画の製作者には全く関係ない事ゆえ、堪えることにしたい。

物語は、ニューヨークの広告代理店の一室から始まる。共同代表で同社のカリスマである主人公ハワードは、まさに絶頂の時を迎え、余裕の笑みで社員一同に向かってスピーチをする。しかし、すぐに画面は3年後となり、憔悴しきったハワードを映し出す。それはとても冒頭でスピーチをしていた人物と同一人物とは思えない。画面で一目見て何があったのだろうと思わせる。これぞ映画ならではの表現力であろう。

そのハワードは、実はこの間に最愛の娘を亡くし、以来2年間気力を失い抜け殻のようになってしまっている。仕事にも当然支障をきたし、有力クライアントから取引を切られ、会社はまさに存亡の危機に瀕している。共同パートナーのホイット、顧問のサイモン、そして顧客担当重役のクレアは、同僚としてそして友人としてハワードを案じているが、心を閉ざしたハワードをどうすることもできない。

ホイットらは会社の危機に際し、身売りを決意する。しかし、それには株式の60%を保有するハワードの同意が必要。しかし、話をすることすら困難であり、やむなく探偵を雇いハワードの意思能力喪失を主張しようとする。そしてハワードが投函した宛先を「愛」「時間」「死」とした手紙を発見する。そして偶然知り合った3人の舞台俳優に、それぞれ「愛」「時間」「死」としてハワードに接触するよう依頼する・・・

この映画の原題は、『Collateral Beauty』。映画の中では「幸せのオマケ」と訳されているが、不幸中の幸いとでもいうのか、不幸の中にあってもそれでも少しだけ生まれる幸せを意味している。ハワードのみならず、登場人物たちにはみな不幸と呼べる状況がある。ホイットは自身の不倫が原因で離婚し、最愛の娘との関係がギクシャクしている。サイモンは末期がん、クレアは独身だが子供が欲しいと強く願っていて精子バンクの資料を取り寄せている。そしてみんなそれぞれに「幸せのオマケ」がもたらされる。

季節はクリスマス。年に一度奇跡が起こっても不思議ではない季節。名作『素晴らしき哉、人生!』との唯一の共通点とも言える。そしてホイットたちの企みは、意外な結末を迎える。ハワードはハワードで子供を失った親たちの会に参加し、そこで主催者のマデリンと出会う。この二人の関係もラストで驚きを見せてくれる。

観終わって、何でかつての名作と同じタイトルをつけたのか、その理由がわかる。やっぱり、辛いことがあっても人生は素晴らしいのである。その判断を正しいとは思わないが、そういう気持ちになることだけは確かである。奇跡が起こっても不思議ではない季節に、みんなに訪れた「幸福のオマケ」。それをしつかりと噛みしめることになる。気が付けば、大物俳優が大挙登場している。まるで物語に引き寄せられたかのようである。
思わず、そんな評価をしたくなってしまう映画である・・・


評価:★★★☆☆





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