
2022年 日本
監督: 三浦大輔
出演:
藤ヶ谷太輔:菅原裕一
前田敦子:鈴木里美
中尾明慶:今井伸二
毎熊克哉:田村修
野村周平:加藤勇
香里奈:菅原香
原田美枝子:菅原智子
豊川悦司:菅原浩二
<シネマトゥデイ>
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映画化もされた「愛の渦」などで知られる三浦大輔が作・演出、アイドルグループ「Kis-My-Ft2」の藤ヶ谷太輔主演により2018年に上演された舞台を、三浦自身が映画化。ささいなきっかけから恋人や親友、家族などあらゆる人間関係を断ち切ろうとする青年の逃避行を描く。主演の藤ヶ谷をはじめ、前田敦子と中尾明慶が舞台版から続投し、映画版新キャストとして『純平、考え直せ』などの毎熊克哉と野村周平、『深呼吸の必要』などの香里奈、『百花』などの原田美枝子、『今度は愛妻家』などの豊川悦司らが出演する。
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この物語は日付が表示されて始まる。まずは11月19日木曜日。菅原裕一はフリーター。彼女の鈴木里美と同棲中。朝、仕事に向かう里美に眠そうに目を覚ます裕一。その夜、里美が帰宅する。実は裕一は浮気をしているのだが、スマホの画面を巧みに里美に見えなくしようとしていた態度に我慢できなくなった里美は裕一を問い詰める。里美も密かに裕一のパスワードを見抜いてチェックしていたのである。慌てた裕一はそそくさと荷物をまとめるとそのままアパートから出ていく。アパートの名義は里美になっているからと。
裕一は幼馴染の今井伸二に連絡を取り、伸二の家に転がり込む。それから1週間後の11月26日木曜日。居候の立場の裕一だが、洗濯も掃除も家事はすべて伸二がやっている。さらにトイレットペーパーが切れたことを指摘し、翌朝の仕事にそなえて寝る伸二のそばで平気でテレビを見続け、朝は起こさないように静かに出て行ってくれという裕一にさしもの伸二もキレて注意をする。するとそれが気に入らなかったのか、裕一は荷物をまとめると伸二の家を出て行く。スマホの電話帳から選んだのは、バイト先の先輩田村。
それからまた1週間後の12月3日木曜日。さすがに先輩の家とあって裕一はこまめに家事をする。これを田村は重宝し、裕一との関係も良好。しかし、やっぱりいろいろと気づまりになり、裕一はここも出る事にする。次に頼ったのは後輩の加藤。これまでの経緯を説明すると加藤は感心する。助監督を務める勇に裕一の存在自体が映画だと言われ、裕一は成り行きから泊めてくれと言えなくなる。頼れる先はあまり多くない様子。裕一は姉の香に連絡を取り、香の家を訪れる。しかし、香に金を借りに来たと勘違いされ、またしてもそこを出る。もう行く先は実家しかない。
そして12月5日土曜日。裕一はお金を節約して長距離バスとフェリーを乗り継いで北海道苫小牧にある実家に帰り着く。母は裕一のことを喜んで迎える。母はクリーニング店で働いているが、リウマチを抱えて右半身が不自由である。父は女を作って何年も前に家を出ている。不自由な体で一軒家に1人暮らしの母に申し訳なさを感じた裕一は、このまま実家で暮らすことを決める。しかし、母は新興宗教にはまっており、裕一にも入るよう勧める。裕一はそれに嫌悪感を示すと実家を飛び出す・・・
こうして1週間ごとに住みついたところを飛び出す裕一。問題が生じるとそれに向き合うことなく逃げて行く姿はいかがなものかと思わざるをえない。東京に行く前の裕一のことは描かれておらずわからないが、もともとそんないいかげんな性格だったのだろうかと思ってみたりする。それでも女性にはモテるようなので、性根がしっかりしていたら仕事もできるのではないかと言う気がする。
フラフラと生きている若者にはイライラさせられるものであるが、主人公の裕一はそんな典型。先の事を考えずに流されるまま生きていく。しかし裕一には持つべき友がいる。自堕落に生きる父親は反面教師。落ちるところまで落ちた裕一は、最後にみんなに支えられて這い上がるきっかけを掴む。しかし、そこで突然思いもかけない事が起こる。タイトルはかつて流行った歌と一緒だが、最後に裕一は途方に暮れる。なかなか捻りの効いたストーリー。自分よりも酷い人間を見ると人は安心するものだろう。「俺もここまで酷くない」と。その後、裕一はどうなったのだろう。少なくとも冒頭の裕一ではないはず。そんなことを考えてみた映画である・・・
評価:★★☆☆☆