
原題: Any Day Now
2012年 アメリカ
監督: トラヴィス・ファイン
出演:
アラン・カミング:ルディ・ドナテロ
ギャレット・ディラハント:ポール・フラガー
アイザック・レイヴァ:マルコ・ディレオン
フランシス・フィッシャー:マイヤーソン判事
グレッグ・ヘンリー:ランバート
クリス・マルケイ:州検察官ウィルソン
ドン・フランクリン:ロニー・ワシントン−黒人の弁護士。
ジェイミー・アン・オールマン:マリアンナ・ディレオン−マルコの母。
<Movie Walker解説>
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1970年代の実話を基に、育児放棄されたダウン症の少年を育てたゲイのカップルの姿を描くヒューマンドラマ。
出演は、ドラマ『グッドワイフ』のアラン・カミング、『ノーカントリー』のギャレット・ディラハント。
監督は、本作が日本公開初作品となるトラヴィス・ファイン。
第11回トライベッカ映画祭観客賞他受賞多数。
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とあるゲイバーを訪れた検事のポール。
ダンサーとして口パクで踊っていたルディと知り合うと、そのまま車の中で人目をはばかるご関係。
そこへやってきた警官が、二人を見て露骨に顔をしかめると銃さえ突き付ける始末。
このシーンで、これは現代の物語ではないなと感じる。
あとで解説を見ると1970年代とある。
この時代背景もドラマの重要な一因である。
ルディのアパートは、いかにも貧困アパートという感じ。
隣人の母親は周囲の迷惑を顧みない大音響で音楽を聴き、障害児の子供の面倒をろくに見ない。
その母親はドラッグで逮捕され、その子供マルコは施設へと連れて行かれる。
ルディはポールと会った帰り、施設から逃げ出したマルコが町を彷徨っているのを見かける。
そしてそのまま引き取ることにする。
親権のないルディは、マルコが施設に連れ戻されるのを懸念し、ポールとともに母親の不在中の親権を得るべく奔走する。
やがて晴れてマルコの親権を獲得するとともに、ポールと3人で生活することになる。
しかし、やがてポールとルディの関係が周囲に露見。
ポールは職を失い、マルコの親権も取り消されてしまう。
ポールとルディは、ともに親権を取り戻すべく、再び法定闘争へと向かう・・・
昨今、アメリカではLGBTの婚姻が認められるなど、同性愛に対する態度は寛容になってきている。
この物語も、現代であればドラマになどならなかったであろう。
そういう意味では、「歴史ドラマ」とでも言えるかもしれない。
ルディを演じたアラン・カミングという役者さんは、あまり馴染みがないが、凄い演技力だと思っていたら、自身バイセクシャルらしい。
そしてマルコ役のアイザック・レイヴァも、表情といい後ろ姿といい、実にダウン症の少年ぽく見せてくれていた。
(たぶん自身がマルコと同じダウン症だったりするのではないかと思う)
普通のカップルだったら、たぶん何の問題もなく親権が認められていたであろう。
されどゲイのカップルということで、世間の嫌悪感を背景にそれを阻む。
法律自体の問題ではなく、それを運用する側の問題である。
誰に迷惑をかけるわけでもない。
障害を持った子供を育てるのに、施設よりも愛情を持って面倒を見てくれる人間のそばの方がいいに決まっているが、「ゲイ」という事実でそれを否定する。
ラストはちょっと切ない結末である。
それにしても、アメリカの社会はダイナミックだと思う。
このような時代から、わずか30〜40年で同性愛が公認されるわけである。
ノーマルな立場としては同性愛など理解できないが、まぁ人に迷惑をかけるわけでもないし、人の趣向をとやかく言うつもりもないが、この映画のような事態が今後起こらないというだけでも否定すべきものではないと思う。
是非観ておきたい映画である・・・
評価:★★★☆☆