2013年08月05日

ショーシャンクの空に

ショーシャンクの空に.jpg

原題: The Shawshank Redemption
1994年 アメリカ
監督: フランク・ダラボン
原作: スティーブン・キング
出演: 
ティム・ロビンス/アンディ
モーガン・フリーマン/レッド
ウィリアム・サドラー/ヘイウッド
ボブ・ガントン/ノートン所長
ジェームズ・ホイットモア/ブルックス
クランシー・ブラウン/ハドレー主任
ギル・ベロウズ/トミー

<Movie Walker 解説>
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20年近くの刑務所生活の中でもおのれを見失わず、ついには脱獄に成功した男の奇妙な逸話の数々と、その親友の囚人をめぐるヒューマン・ドラマ。
ホラー小説の大家、スティーブン・キングの非ホラー小説の傑作といわれた中編『刑務所のリタ・ヘイワース』(邦訳は新潮文庫『ゴールデンボーイ』に所収)を、「フランケンシュタイン(1994)」の脚本家、フランク・ダラボンが初監督と脚色を手掛けて映画化。
製作はニキ・マーヴィン、撮影は「未来は今」のロジャー・ディーキンス、音楽は「ザ・プレイヤー」のトーマス・ニューマン、美術は「ドクトル・ジバゴ」「オリバー!」で2度アカデミー賞を受賞したテレンス・マーシュがそれぞれ担当。
主演は「星に想いを」のティム・ロビンスと「アウトブレイク」のモーガン・フリーマン。
共演は「トレスパス」のウィリアム・サドラー、「デモリションマン」のボブ・ガントン、「ナッツ」などのベテラン、ジェームズ・ウィットモアほか。
95年度キネマ旬報外国映画ベスト・ワン作品。
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過去に観た映画でも、内容は忘れてしまっていたりする事もあるし、もう一度観てみたいと思うものがある。
この映画はそんな映画であり、久しぶりに観たというわけである。

1947年、銀行の若き副頭取、アンディ・デュフレーン(ティム・ロビンス)は、妻と間男を殺した罪で終身刑を宣告される。
無実の主張をしたが聞き入れられず、状況証拠はあまりにも彼に不利なものばかりだった。
そして送られたのがショーシャンク刑務所。

刑務所の中には様々な囚人たちがいる。
頼まれたモノを、どういうルートでか手に入れてくる“調達係 ”のレッド(モーガン・フリーマン)もその一人。
初めは周囲から孤立していたアンディが最初に心を開き、鉱物採集の趣味を復活させたいと言い、レッドにロックハンマーを注文する。

一方、アメリカの刑務所と言えば必ず出てくるのが、オカマを掘る男たち。
ボグズ一派に目をつけられたアンディは、性的行為を強要される。
常に抵抗しつづけたアンディは、2年間というもの生傷が耐えなかった。
ある日、アンディは屋根の修理作業に駆り出された時、監視役のハドレー刑務主任(クランシー・ブラウン)が死んだ弟の遺産相続問題で愚痴をこぼしているのを聞き、解決策を助言する。
もともと銀行員でもあり、得意分野でもある。
彼は作業中の仲間たちへのビールを報酬に、必要な書類作成を申し出る。

取り引きは成立して囚人たちはビールにありつき、彼らはアンディに一目置くようになる。
そしてアンディは、レッドに当時人気のあった女優リタ・ヘイワースの調達を依頼し、請け負ったレッドは、大判ポスターという形でそれに応える。
さらにアンディを叩きのめしたボグズは、逆にアンディに目をかけるハドレーに半殺しにされ病院送りにされる。
ようやくアンディに落ち着いた日々が訪れる。

これ以降、アンディは楽な図書係に配属され、さまざまな刑務所の改革を試みる。
諦めが支配していた刑務所に、「希望」を持ち込もうとする。
そんな希望をレッドは「危険」だと諭す。
アンディを中心にしながら、映画には刑務所の酷い実態が描かれる。
ノートン所長(ボブ・ガントン)は、囚人たちを使って不正蓄財に励んでいる。
ハドレー主任に暴行された囚人が、それがもとで死んでもお咎めはない。
懲罰房は暗闇の牢獄で、人権無視のシロモノ。
一方で、凶器になるようなものも囚人たちは自由に入手している。

また、50年の収監を経て仮釈放される囚人が、外の生活に順応できず自殺するシーンが出てくる。
「車は若い頃に一度だけ見た事があるが、今はそこらじゅうに溢れている」という刑務所仲間に宛てた手紙が、印象的だ。
ただ終身刑になるにはそれなりの罪を犯しているわけで、冤罪なら別だが、個人的には仮釈放などすべきではないと考える自分からすれば、このくらいの事は当然だと思えてならない。

刑務所の囚人を主人公にした映画は、とかく囚人目線になるもので、死刑や終身刑の残酷性を訴えたりするものがあるが、基本的にはおかしな話だと思う。
レッドも何回も仮釈放審査を受け、その都度却下され、その都度がっかりする。
冷たいように描かれるが、そもそも審査などしなければレッドもよけいな期待せずに済むのだと思う。
この映画はそんな刑務所問題を提起するのが趣旨ではないと思うが、そんな事をつらつらと考えた。

無実の罪で長い年月を刑務所で過ごしたアンディ。
ラストのエンディングは、実にすっきりしたものとなる。
モーガン・フリーマンも、「許されざる者」に次いで、印象的な相棒役を務めている。
かつて危険だった「希望」に満ちたラスト。
二度観る価値ある映画である・・・


評価:★★★☆☆


     


    
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2013年07月31日

CUT

CUT.jpg

2011年 日本
監督: アミール・ナデリ
出演: 
西島秀俊/秀二
常盤貴子/陽子
菅田俊/正木
笹野高史/ヒロシ
でんでん

<映画.com>
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イランの名匠アミール・ナデリ監督が西島秀俊を主演に迎え、殴られ屋をして金を稼ぐ売れない映画監督の映画への愛情を描き出す。
いつも兄からお金を借りて映画を撮っていた秀二だったが、どの作品も映画館にかけることができない。
そんなある日、秀二は兄が借金のトラブルで死んだという報せを受け、兄が自分のために借金をしていたことを知る。
罪悪感にさいなまれる秀二は、兄の痛みを分かち合い、借金を返済するため、兄が死んだヤクザの事務所で殴られ屋を始めるが……。
青山真治が共同脚本で参加。共演は常盤貴子、笹野高史ら。
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映画監督の秀二(西島秀俊)は、いつも兄から金を借りて映画を撮っていたが、どの作品も商業映画として映画館でかけることさえできずにいた。
映画に賭ける情熱が迸る主人公の秀二。
十分な資金もなく、やむなく自分が理想とする過去の名作映画の上映会を細々と続けている。

そんなある日、秀二は兄が借金トラブルで死んだという知らせを受ける。
兄はヤクザの世界で働いていて、そこから秀二のために借金をしていたのだった。
秀二は何も知らずにいた自分を責め、兄のボスである正木(菅田俊)から、残った借金額を聞かされる。

1,300万円に及ぶ借金。
しかし自分の映画製作資金すら満足に手当てできない秀二に返すあてなどあるはずもない。
そこに現れたヤクザの親分(でんでん)。
面白半分に秀二を殴り、その対価を現金で渡す。

秀二は、それをヒントに殴られ屋をすることで返済することを決める。
場所は兄が殺された事務所のトイレの中。
殴られる痛みと苦痛とに耐えるには、その場所しかないと決めての事。
こうして、10日程しかない借金返済期限に向けて、秀二のチャレンジが始る・・・

ちょっと変わった映画である。
過去の名作映画に対する敬愛が溢れているという点では、「ヒューゴの不思議な発明」に相通じるものがあるかもしれない。
しかし、秀二は過去の名作を褒め称え、現代の映画は商業主義に堕落した映画と批判するが、その基準ははっきりしない。
現代の商業主義の大作でも、過去の名作に負けず劣らず優れている。
こんなところが、今一歩この映画に共感できないところとなっている。

そして秀二が始める殴られ屋。
そもそも兄がどうして殺されたのか、(しかも自分の組の事務所のトイレで、だ)よくわからないし、場所が場所なだけに、身内の犯行のような感じもする。
そうした部分もモヤモヤ感が拭えない。

さらに1,300万円の借金完済には、1発1万円としても1,300発。
10日あまりの間にこれだけ殴られたら普通死ぬだろう。
さらに殴るヤクザもそんなに毎日金を払って殴りたいのだろうか、という疑問も拭いきれない。
結局のところ、どこか不自然なのである。
秀二が批判する商業主義に毒された映画とは言わないが、名作にはほど遠い独りよがりさに溢れた映画だと言える。

結末的には面白いオチだったかもしれないが、プロセスがねぇ。
出演者は、常盤貴子のいつも伏し目がちな陽子といい、ヒロシといい、主演の西島秀俊も雰囲気としては良かったと思うのだが、こういうのは脚本のせいなのだろうか。
今一の映画となってしまっているのである。


評価:★★☆☆☆





    
   
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2013年07月16日

ハーフ・デイズ

ハーフ・デイズ.jpg


原題: UNCERTAINTY
2009年 アメリカ
監督: スコット・マクギー&デビッド・シーゲル
出演: 
ジョゼフ・ゴードン=レヴィット/ボビー
リン・コリンズ/ケイト
アサンプタ・セルナ/シルヴィア
オリヴィア・サルビー/ソフィー

<映画.com>
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「(500)日のサマー」、「インセプション」のジョセフ・ゴードン=レビット、「ジョン・カーター」のリン・コリンズがカップルを演じ、2人がたどる2通りの1日を並行して描くドラマ。
人生の岐路に立ち、先行きに不安を抱えていた恋人同士のボビーとケイトは、これから先をどう過ごすか、ブルックリン橋の上でコインを投げて決める。
そこから物語は2通りに分岐し、マンハッタンで怪しい携帯電話を拾ったことから何者かに命を狙われるはめになる2人と、ブルックリンのケイトの実家でホームパーティをして過ごす2人の姿が並行して描かれていく。
2つの1日はやがて、それぞれの結末を迎えるが……。
監督は「綴り字のシーズン」のスコット・マクギー&デビッド・シーゲル。
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7月4日、独立記念日。
ニューヨークのマンハッタン島とブルックリン区を結ぶブルックリン橋の中央にたたずむ恋人同士のボビーとケイト。
人生の岐路に立っていた二人は、マンハッタンへ向かう運命とブルックリンへ向かう運命と、どちらの運命を選ぶかコインの表裏に託す。
マンハッタンとブルックリン。
それぞれに向かった二人の、二通りの一日が平行して始る。

マンハッタン島の方へ向かった二人は、タクシーの中で携帯電話を拾う。
何気なく親切心から落とし主に連絡する。
連絡が取れて携帯電話を返そうと待ち合わせ場所に向かうと、まさに携帯電話を受け取りに来たと思われる男が射殺される。
自分達に危険が及んでいると察したボビーとケイトはその場から逃げ出す。
拾った携帯電話には、「返してくれたら50万ドル払う」というメッセージが届く。

一方、ブルックリンへ向かった二人は、ケイトの家族が開くホーム・パーティに参加する。
ケイトの両親に兄夫婦と子供たち、妹におじと賑やかに集う。
しかし、和やかにパーティの準備が進む中、家族内の確執など次第に家族や二人が抱える問題が浮き彫りになってくる。

拾った携帯を返してくれれば50万ドル払うと言われれば、普通の感覚でいけば危険なのはわかりきっている。
なのに大金に目がくらむ二人。
とても見てはいられない。
そして挙句の果てに、自らの命を危険に晒す事になる。

一方、穏やかな中にも静かな問題を抱える二人。
対照的な二つの運命が目の前で対比される。
実際に人生の岐路に立った時、それぞれ体験できればさぞかし後悔も少ないだろう。
映画の中だけの世界であるのが残念なところである。

主演は、ジョセフ・レヴッィト=ゴードン。
気がつけばここ数年、随分出演作を観ている。
映画によって様々な役どころを演じ分け、しかもその差が大きい。
器用な役者さんなのかもしれない。

一日で二つの運命が平行すると言う意味で邦題は付けられたと思うのだが、原題の方が深い味わいのある映画である・・・


評価:★★☆☆☆


ジョセフ・ゴードン=レヴィット出演作品
「アン・ハサウェイ/裸の天使」
「ルック・アウト」
「セント・アンナの奇蹟」
「キル・ショット」
「GIジョー」
「インセプション」
「メタル・ヘッド」
「ダークナイト・ライジング」
「50/50フィフティ・フィフティ」


    


    
   
posted by HH at 23:05 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2013年07月15日

50/50 フィフティ・フィフティ

50フィフティ.jpg

原題: 50/50
2011年 アメリカ
監督: ジョナサン・レビン
出演: 
ジョゼフ・ゴードン=レヴィット/アダム
セス・ローゲン/カイル
アナ・ケンドリック/キャサリン
ブライス・ダラス・ハワード/レイチェル
アンジェリカ・ヒューストン/ダイアン

<映画.com>
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「インセプション」のジョセフ・ゴードン=レビットが主演し、ガンで余命宣告を受けた青年の姿を笑いや涙を交えて描くハートフルドラマ。
酒もタバコもやらない普通の青年アダムは27歳でガンを患い、生存率50%と宣告される。
同僚や恋人、家族は病気を気づかってどこかよそよそしくなっていくなか、悪友カイルだけはガンをネタにナンパに連れ出すなど、いつも通りに接してくれていた。
アダムはなんとかガンを笑い飛ばそうと日々を過ごしていくが、刻々と進む病状に次第に平穏を装えなくなってしまう。
カイル役のセス・ローゲンが製作を務め、ガンを克服した親友の脚本家の実体験をもとに映画化した。
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シアトルの公営ラジオ局で働く27歳のアダムは、画家のレイチェルと付き合っている。
同僚で親友のカイルは、女好きでお気楽なタイプ。
ある日、アダムは腰の痛みが治まらないので検査を受けると、「悪性神経鞘腫 神経線維肉腫」、つまり「ガン」と診断される。
酒もタバコもやらないアダムだが、このガンは5年後の生存率が50%、転移後の生存率は10%という過酷な病気だった。
生きるも死ぬも50/50である。

腹をくくったアダムは、医師の指示に従って抗ガン剤治療を受け、さらにセラピストのキャサリンの診察を受けることになる。
まだ24歳でセラピーの経験が少ない彼女に不安を抱きつつアダムは前向きに病気と闘おうとするが、抗ガン剤治療は思った以上に過酷だった。

さらにガールフレンドのレイチェルの浮気が発覚し、アダムはレイチェルと縁を切る。
もともと運転免許証を持たないアダムは、レイチェルに病院までの送り向かえを頼んでいたが、これで足を失いやむなく不便なバスを利用する事になる。
スキンヘッドにするも、カイルはお構いなくアダムを連れ出し、癌をネタにナンパに走る。
こういうノー天気な友人は、ある意味ありがたいかもしれない。

生存率50/50という過酷な状況下での闘病生活。
彼女は裏切って別の男へと走る。
やっぱりそういうものなのかと思うも、そういうものなのかもしれない。
セラピストのキャサリンも一生懸命なのであるが、やはりそこは新人。
もしも自分がセラピーを受けたとしたら、逆にアドバイスしているかもしれない。
セラピストという職業も、相手次第では難しいのかもしれない。

そして母親の存在。
誰よりも息子を案じているが、息子からすれば一番煩わしい相手。
できればそばにいて欲しくない。
その気持ちは理解できるが、母親も可哀そうである。
自分がカイルの立場であったら、どんな風に接するであろうか。

主人公のアダムと彼を取り巻く人々。
静かなドラマだが、あれこれと考えながら観てしまう。
主演はジョセフ・ゴードン=レヴィット。
ハチャメチャにやり倒した「メタル・ヘッド」とは180度違う役柄で面白い。
役者というのだろうか。

味わいのある人間ドラマである。


評価:★★☆☆☆


ジョセフ・ゴードン=レヴィット出演作品
「アン・ハサウェイ/裸の天使」
「ルック・アウト」
「セント・アンナの奇蹟」
「キル・ショット」
「GIジョー」
「インセプション」
「メタル・ヘッド」
「ダークナイト・ライジング」


    


    
posted by HH at 23:38 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2013年07月09日

八日目の蝉

八日目の蝉.jpg

2011年 日本
監督: 成島出
出演: 
井上真央/恵理菜
永作博美/野々宮希和子
小池栄子/千草
森口瑤子/秋山恵津子
田中哲司/秋山丈博
劇団ひとり/岸田
風吹ジュン/沢田昌江

<Movie Walker 解説>
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角田光代のベストセラー小説を映像化した深遠な人間ドラマ。
主人公は、不倫相手の子供を誘拐し4年間育てた希和子と、彼女に育てられた過去を引きずったまま大人になった恵理菜。
“母性”をテーマに、それぞれが抱える複雑な思いを、時に繊細に、時に力強く描出。
変化を遂げていく女たちの姿に引き込まれ、最後まで目が離せない。
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冒頭、いきなり裁判のシーン。
まだ幼い我が子を誘拐され、一番かわいい盛りの4年間を奪われた母親が、犯人に憎しみをぶつける。
一方、被告となった女、希和子は静かに述べる。
「四年間、子育ての喜びを味わわせてもらったことを感謝します」と……。
この映画、何と深いシーンから始るのだろう。

被害者夫婦の間に生まれた生後6カ月の恵理菜を誘拐したのは、被害者の夫である丈博と不倫関係にあった野々宮希和子(永作博美)。
希和子は、妻帯者である丈博の子供を身ごもるが、結局中絶する。
しかもその後遺症で子供が産めない体になってしまう。

さらに希和子は、丈博から恵津子との子供のことを知らさる。
追いうちをかけるように恵津子から、子供を自慢されなじられてしまう。
思い余った希和子は、夫婦の留守宅に忍び込みこむと、一人寝ていた赤ん坊を抱かかえて雨の中を飛び出していく。
希和子は子供を薫と名づけ、人目を避け、各地を転々としながら二人で暮らす。

一方事件から月日が経ち、誘拐された赤ん坊=恵理菜(井上真央)は21歳の大学生となっている。
4歳で初めて実の両親に会い、私たちこそが正真正銘の家族だ、と言われても実感が持てず、ギクシャクした家庭に育ち、今は一人下宿生活を送っている。

知り合った妻帯者の岸田孝史(劇団ひとり)を好きになるが、やがて岸田の子供を身籠る。
そんな頃、恵理菜のバイト先にルポライターの安藤千草(小池栄子)が訪ねてくる。
千草はあの誘拐事件を本にしたいという。
そして二人で、かつて希和子と逃亡生活を送った地を訪ねて歩く…。

卵から孵った雛は、最初に目にしたものを親だと思いこむという。
この「刷り込み」という現象は、何も雛だけの話ではないかもしれない。
物心ついた時から、自分を慈しんで育ててくれる人を親だと思って懐くのは人間誰しも同じである。
そして、自分が本当にその親の子かどうかなどわかるはずもない。

映画は思い余って愛人の赤ん坊を誘拐してしまった女と、その女に4年間育てられた上で、実の親子に引き取られた娘の物語。
二人の女性の姿が、時を越えて同時並行で描かれる。
事件を起こした希和子も、被害者の妻も、当人である恵里菜も、幸せからは遠いところにいる。

4年の時を経て帰ってきた我が子であるが、4歳の子供にそんな事情などわかるはずもなく、ただ愛しいママと離れ離れになった悲しみがあるだけ。
実の母に懐かず、またそんな我が子に半狂乱になる母親。
見守る父親もすべての原因を作った諸悪の根源となれば、慰めの言葉も慰めにはならない。
そんな様子が、画面では描かれずとも自ずと脳裏に浮かんでくる。

恵里菜を取材する千草も、実は心に闇を抱えている。
恵里菜とは過去に意外な接点もある。
登場する女性たちに共通するのは「哀しみ」。
それぞれ種類は異なるが、その哀しみが観る者の心に染みいる。

犯罪者を悪人と言い切れないところが、「悪人」に相通じるところがある。
真の悪人は、実は男なのかもしれない。
原作も秀逸なのかもしれないが、日本映画の奥深さを感じさせられる映画である。


評価:★★★☆☆



    

     
    
posted by HH at 23:05 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ