2013年06月23日

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い.jpg

原題: Extremely Loud and Incredibly Close
2011年 アメリカ
監督: スティーブン・ダルドリー
出演: 
トーマス・ホーン:オスカー・シェル
トム・ハンクス:トーマス・シェル
サンドラ・ブロック:リンダ・シェル
マックス・フォン・シドー:間借人
ビオラ・デイビス:アビー・ブラック
ジョン・グッドマン:スタン
ジェフリー・ライト:ウィリアム・ブラック
ゾーイ・コールドウェル:おばあちゃん

<映画.com>
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2005年に発表され、「9・11文学の金字塔」と評されたジョナサン・サフラン・フォアによるベストセラー小説を、「リトル・ダンサー」「めぐりあう時間たち」のスティーブン・ダルドリー監督が映画化。
9・11テロで最愛の父を亡くした少年オスカーは、クローゼットで1本の鍵を見つけ、父親が残したメッセージを探すためニューヨークの街へ飛び出していく。
第2次世界大戦で運命の変わった祖父母、9・11で命を落とした父、そしてオスカーへと歴史の悲劇に見舞われた3世代の物語がつむがれ、最愛の者を失った人々の再生と希望を描き出していく。
脚本は「フォレスト・ガンプ 一期一会」のエリック・ロス。
オスカーの父親役にトム・ハンクス、母親役にサンドラ・ブロックらアカデミー賞俳優がそろう。
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主人公は10歳の少年オスカー。
父親から何かを調査するという事の面白さを教わり、今はニューヨークにある5区の他に幻の6区を探している。
父親との楽しい時間は、「最悪の日」と呼ぶ9.11で突然終わってしまう。

そして1年。
ある日思い立って入った父親のクローゼットの中で、オスカーは偶然青い花瓶に入った鍵を見つける。
それが何の鍵なのか探し当てる事で、父親との絆を取り戻せるような気がして、オスカーはそれを探す事を決意する。

大人だったら、ちょっと考えてそんなのは無理だと思うところだろう。
ところが子供は大人ほど常識に染められていない。
鍵袋に書かれていた“ブラック”という言葉。
オスカーはこれを人の名前だと思い、ニューヨークの電話帳に乗っているブラックさん427名すべてを訪ねる事を決意する。

そしてここがまた子供の強みでもあるが、突然のオスカーの訪問に、最初のアビー・ブラックは家に招き入れる。
しかもどうやら夫婦で危機的な対立の真っ最中にもかかわらず。
アビーの写真を取り、調査結果を父親に教えられた通りに丁寧にまとめていくオスカー。

途中で協力者が現れる。
おばあちゃんの家の同居人である。
口がきけない同居人は筆談でオスカーと会話しながら、彼に様々な影響を与えていく。
やがてオスカーは、同居人の正体に気がつく。
そこにもまた隠されたドラマがある。

トム・ハンクス演じる父親は、仕事も家庭も大事にする男。
心から妻を愛し、そして何よりオスカーを愛している。
オスカーのために割く時間は1秒とて無駄とは考えない。
黒煙を上げる貿易センタービルから、何度も家に電話をかける。
何かを感じつつ、オスカーと連絡をしようとするが、やがてビルは崩壊する。

同居人を演じるのは、マックス・フォン・シドー。
気がついた時にはもう老人役が多かった気がする名優であるが、ここでもいい味を醸し出している。
オスカーとの交流は何とも言えない温かみがある。

そして母親のサンドラ・ブロック。
「スピード」の印象が今も強烈だし、何となく「デンジャラス・ビューティー」や「あなたは私の婿になる」のようなコメディーから、マシンガン・トークの女という印象がある。
オスカーを取った「しあわせの隠れ場所」は比較的静かな役だったが、それでも芯の強い女という印象は大半の映画で共通しているイメージだと思う。
しかし、ここではすべて封印。
最後にオスカーに対して、とてつもなく深い愛情を示し、それが映画に強烈なインパクトを与える。

9.11をただ単に悲劇だ悲劇だというのではなく、オスカーとオスカーが抱える心の傷からの再生を助ける大人たちとの心打たれるドラマとなっている。
オスカーがどんな大人になっていくのか。
きっといい大人になるに違いないと思わせられる映画である。


評価:★★★☆☆





posted by HH at 21:12 | 東京 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2013年05月08日

メタル・ヘッド

メタル・ヘッド.jpg
    
原題: Hesher
2010年 アメリカ
監督: スペンサー・サッサー
出演: 
ジョセフ・ゴードン=レヴィット:ヘッシャー
ナタリー・ポートマン:ニコル
デヴィン・ブロシュー:TJ
レイン・ウィルソン:ポール
パイパー・ローリー:マドレーヌ

<Movie Walker 解説>
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『(500)日のサマー』などで爽やかな印象を与えていたジョセフ・ゴードン=レヴィットが一転、過激なメタル男に扮し、その言動で周囲の人々を変えていく様をつづる人間ドラマ。
ナタリー・ポートマンが地味なスーパーのレジ係の女性役に加え、製作も担当。
監督は短編作などで注目を浴びた期待の新鋭スペンサー・サッサー。
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自動車事故で母を失い、心に大きな傷を負った13歳の少年TJ。
そして、妻の死から立ち直れない父親ポール。
人生を見失い、スーパーのレジ係として働く女性ニコル。
そんな3人の前に突然現れたのは、長髪で半裸の謎の男ヘッシャー。

ずかずかとTJの祖母の家に勝手に上がり込み、洗濯を始める。
家主の事など眼中にない堂々たる立居振舞いで、そのまま強引に住みつくヘッシャー。
ヘッシャーはとにかく破天荒。
大音響でヘヴィメタルを流しながら、下品で乱暴な言動を繰り返す。
TJをいじめる友人に対しては、車に火をつける過激振り。

TJは死んだ母親を恋しがり、事故を起こした車の処分を止めようとする。
父も生きる気力を無くしたような日々を送り、老いた祖母はそんな彼らをどうする事もできず、家の中は死んだような雰囲気。
スーパーでレジを打つニコルは、駐車場で殴られているTJを助けた事から彼と仲良くなるが、お金もなく目標もなくその日暮らし。

とにかく、暗い雰囲気なのである。
そこにハチャメチャなヘッシャーが割り込んでくるが、3人はそれに対しなす術もない。
にも関わらず、そんなヘッシャーの行動が、3人の中にある何かを変えていくというお話。

ヘッシャーを演じるのは、ジョセフ・ゴードン=レビット。
「インセプション」「ダークナイト・ライジング」などでお目にかかっていたが、何となく線の細い男役というイメージがあった。
ここではイメージを一新し、挑発にイレズミだらけの半裸スタイルという強烈な姿で登場。
最初から最後まで、何をやらかすかわからない様子を堪能させていただいた。
ただ強烈なだけでなく、心の底に優しいものを秘めているところも印象的だった。

邦題は何だかよくわからないが、原題はそのものずばりでわかりやすい。
ナタリー・ポートマンファンとしても、楽しめる映画である。


評価:★★☆☆☆


        
posted by HH at 23:05 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2013年05月02日

ペーパーバード 幸せは翼に乗って

ペーパーバード.jpg

原題: Pajaros de papel
2010年 スペイン
監督: エミリオ・アラゴン
出演: 
イマノル・アリアス:ホルヘ
リュイス・オマール:エンリケ
ロジェ・プリンセプ:ミゲル
カルメン・マチ:ロシオ
フェルナンド・カヨ:モンテロ

<Movie Walker 解説>
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2010年モントリオール世界映画祭で観客賞を受賞した、心あたたまる人間ドラマ。
スペイン内戦で妻子を失い、生きる希望をなくした喜劇役者が、ひとりの孤児との触れ合いを通して、再び笑顔を取り戻していく。
伝統ある喜劇役者の家系に生まれた作曲家で俳優のエミリオ・アラゴンが監督に初挑戦。
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日本では洋画と言えばハリウッドモノが大半。
されど他の国々でも映画は作られている。
すべてを観る事はできないが、この映画のように賞を取ったりしたものは日本でも観る事ができるわけで、こういう機会を利用して観る事にしている。

物語は、内戦下のスペイン・マドリード。
スペインでは第2次大戦前夜に内戦があり、有名なフランコ総統が内戦に勝利して独裁権力を握る。
ファシスト党でありながら、第2次大戦ではドイツら枢軸国とともに参戦しなかったために、“難を逃れ”戦後も長期政権となった。

そんな内戦下、喜劇役者のホルヘは妻マリア、息子ラファと幸せに暮らしていたが、ある日、舞台を終えたホルヘは帰宅途中爆撃に遭う。
帰宅すると、そこはがれきの山となっており、妻子はその下敷きになっていた。
深い悲しみの中、ホルヘは姿を消す。

1年後、内戦が終わり、ホルヘは劇団に戻る。
戦争で両親を失った少年ミゲルを引き取っていたエンリケと再会し、一緒に暮らすことになる。
ホルヘは、息子と同じ年頃のミゲルを冷たく突き放してしまう。
それでもミゲルはホルヘを慕い、芸を覚えようとする。
一方、反体制派に対して厳しい弾圧を行っていたフランコ政権は、行方不明になっていた1年間の間に反フランコ政権の襲撃事件に関与していたとして、ホルヘを要注意人物としてマークする・・・

物語はホルヘが舞台に復帰し、エンリケやミゲル少年との交流を続けていく姿を追う一方、独裁者フランコ総統の厳しい弾圧が回りに及ぶ様子が描かれて続いて行く。
豊かな社会では人々は娯楽にお金を使い、そこに携わる人たちも潤う。
しかし、内戦で疲弊した社会では、そうもいかない。
物語の背景には、そんな貧乏一座の苦労がある。

激動の歴史の中、時として流れは個人の思いとは違う方向に流れていく。
抗う事のできない流れの中で、懸命に明日を生きようとする人たち。
スペインの歴史を多少なりとも理解してから観た方が、よりわかりやすいのではないだろうか。
年老いたミゲル少年の想いが最後にじんわりと伝わってくる映画である・・・


評価:★★☆☆☆


     

     
posted by HH at 23:21 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2013年04月20日

ウィンターズ・ボーン

ウィンターズ・ボーン.jpg


原題: Winter's Bone
2010年 アメリカ
監督: デブラ・グラニック
出演: 
ジェニファー・ローレンス:リー・ドリー
ジョン・ホークス:ティアドロップ・ドリー
ケヴィン・ブレズナハン:リトル・アーサー
デイル・ディッキー:メラブ
ギャレット・ディラハント:シェリフ・バスキン

<Movie Walker他 解説>
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ダニエル・ウッドレルの同名小説を映画化。
2010年サンダンス映画祭でグランプリを受賞し、第83回アカデミー賞で作品賞、主演女優賞ほか4部門にノミネートされたヒューマンドラマ。
『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』でミスティーク役に抜擢された新進女優ジェニファー・ローレンスが、たった1人で家族を守る17歳の少女を等身大で好演し、観る者の涙を誘う。
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ミズーリ州南部のオザーク山脈に住む17歳の少女リーは、12歳の弟と6歳の妹をかいがいしく世話し、その日暮らしの生活をどうにか切り盛りしている。
ドラッグ・ディーラーの父ジェサップは長らく不在で、辛い現実に耐えかねて精神のバランスを崩した母親は言葉を発することすらほとんどない。

そんなある日、リーは地元の保安官から、警察に逮捕され懲役刑を宣告されたジェサップが、自宅と土地を保釈金の担保にして失踪、もしこのまま翌週の裁判に彼が出廷しない場合、リーたちの家は没収されると聞かされる。
そんな事言われても、お金はない。
住む家を失ったら、幼い兄弟を抱え生きていく術がなくなる。
やむなく、リーは父親を捜しに行く事になる。

貧しい地域である事は、雰囲気として伝わってくる。
これと言った産業があるわけではなく、暇を持て余した男たちは酒を飲むかその金欲しさに良からぬ事をするか。
リーが訪ね歩く一軒一軒の家は、どこも荒んだ雰囲気が漂う。
頼った親友は、同じ年なのに結婚して子供がいるが、旦那は良きマイホームパパとは程遠い。

やがてどうやら父親は殺されたらしいとわかってくる。
しかし、失踪は失踪。
死んだとわかれば保釈も無効となり、保釈金の担保も不要となる。
家も失わなくて済む事になる。
リーは現実的な選択として、「死体捜し」を選ぶ。
「誰が殺したかは興味ない」というリーのセリフ。
17歳の背中には重すぎる。

お金に困ったリーが、陸軍事務局に行くシーン。
4万ドルがもらえるという理由で入隊しようとするリーだが、18歳未満は親の承諾が必要と説明され困惑する。
ストーリーとは関係ないが、こういう理由で入隊する若者はけっこう多いのではないかと思う。

お金で兵を集める事が良いか悪いかは別として、男でも女でも何の取柄がなくとも軍隊に入ればお金がもらえる。
お金を求める人からすれば、それは立派な雇用機会である。
ただ4万ドルが支給されるのは、入隊して数週間後の不特定時期だとの説明もなされる。
「お金をもらってドロン」を避けるためであろうが、実にリアルだ。

やがてリーの元に父親に関する情報がもたらされる。
17歳で孤軍奮闘する少女に、さすがに同情したのであろうが、そこから先の展開はまた過酷なもの。
どうやら父親は村の掟に背いたために殺されたらしいのだが、リーはその先もその村で幼い兄弟と母親を養っていかなければならない。
だから事件の真相には目をつぶらないといけない。

17歳でこんな体験をしたら、この女の子はどんな大人になるのだろう。
ふとそんな事が脳裏をよぎった。
きちんとした産業(働く場所)があって、大人は家族のために働くことができる社会というのが、いかに大切なのかというのがわかる気がする。
それは子供がいつまでも子供でいられる社会でもある。

アカデミー賞ではなくても、映画祭でグランプリを取ったというのも頷ける。
骨太のヒューマンドラマである。


評価:★★★☆☆




    
posted by HH at 22:58 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2013年04月07日

ラビット・ホール

ラビットホール.jpg


原題: Rabbit Hole
2010年 アメリカ
製作: ニコール・キッドマン
監督: ジョン・キャメロン・ミッチェル
出演: 
ニコール・キッドマン:ベッカ・コーベット
アーロン・エッカート:ハウイー・コーベット
ダイアン・ウィースト:ナット
タミー・ブランチャード:イジー
マイルズ・テラー:ジェイソン
サンドラ・オー:ギャビー

<Movie Walker 解説>********************************************************************************************************
幼い息子を亡くした夫婦の喪失と再生を、静謐なタッチで見つめたヒューマン・ドラマ。
製作と主演を兼ねたニコール・キッドマンは、ピューリッツァー賞に輝いた同名戯曲に感動し、自らの製作会社で映画化を実現させた。
アカデミー賞主演女優賞候補にもなった彼女の繊細な演技と、温かさと深い余韻を誘う結末も印象的な感動作。
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郊外の閑静な住宅街に暮らすベッカ。
庭いじりをしている時、隣人の夕食の誘いを断る横顔はどこか悲しげ。
夫のハウイーも、夜中に暗い部屋で一人子供の動画を見ている。
何も説明がなくても、それで夫婦の子供が死んだ事がわかる。
このあたりの演出は、映画ならではだ。

悲しみに包まれているベッカとハウイーのコーベット夫妻。
日本にはない子供を失った親の会に参加するも、ベッカの方はどうも馴染めず、やがて辞めてしまう。
哀しみの癒し方は人それぞれ。
残念ながらベッカのそれとハウイーのそれは違う。
悲しみは同じはずなのに、やがて二人の間にすれ違いが生じ始める。

ハウイーは協調型。
子供を失った親の会にも積極的に参加し、亡き息子の思い出を大切にしながらベッカとともに再出発しようとしている。
しかし、ベッカは一人自分の哀しみの世界に籠る事を良しとしている。

ベッカとハウイーの気持ちはそれぞれよく理解できる。
自分だったらどっちだろうと考えかけてやめる。
実際子供のいる身としては、そんな事考えたくもない。
刺々しい対応を取るのはベッカ。
ハウイーも、ベッカの母親も妹も、ベッカを理解し癒そうとするが、頑ななベッカの心はほぐれない。

周囲もそんなベッカにイライラがつのっていく。
きっと、実際に離婚してしまう夫婦ってこういう経過を辿るのではないだろうかと思ってしまう。
そんな心理描写に妙に感心してしまう。

レベッカの前に現れた一人の高校生。
彼が密かに作っていた漫画のタイトルが「ラビット・ホール」。
死んだ父親の科学者を探して、ラビット・ホールと呼ばれるパラレルワールドへのトンネルをくぐる少年の話だ。
この世界とは全く同じ世界がどこかにあるというパラレル・ワールド理論。
何かを暗示しているかのよう。

レベッカがやはり息子(レベッカの兄)を失った母親に聞く。
子供を失った悲しみはなくなるのか、と。
母親は答える。
「なくならない、でも小さくなる。
気がつくとポケットの小石のようにそこにある。
そして時にそれを感じる」
死んだ者を忘れてしまうのは、何だか悪い気がするが、いつまでも打ちひしがれているのもどうかと言うところ。
人はそうして悲しみと付き合っていくのかもしれない。

やがてレベッカに変化の兆しが現れる。
それは観る者を幸福感で満たしてくれる。
良かったな、と素直に思える。
こういう映画も良いものだと素直に思う・・・


評価:★★★☆☆
   
   


posted by HH at 22:03 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ