2013年02月18日

カンパニー・メン

カンパニー・メン.jpg

原題: The Company Men
2010年 アメリカ
監督: ジョン・ウェルズ
出演: 
ベン・アフレック(Bobby Walker)
トミー・リー・ジョーンズ(Gene McClary)
ローズマリー・デウィット(Maggie Walker)
ケヴィン・コスナー(Jack Dolan)
クリス・クーパー(Phil Woodward)
マリア・ベロ(Sally Wilcox)

<STORY>********************************************************************************************************
総合企業のGTX社で若くして部長の座についたボビーだが、突然のリストラを受ける。
家族を養わなければならないボビーは再就職の道を歩むが、それはとても困難だった。
一方、GTX社創業時から在籍している重役のジーンはリストラに反対しながらも、最終的にはそれを受け入れざるを得なかった。
やがて、リストラはジーンの身にも及ぶ。
仕事が見つからないボビーは、相性が悪い妻の兄に頭を下げて建築現場で働く事になる。
しかしそんな苦境が、逆に家族の絆を深めていった…。
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直訳すると「会社人間」となるのであろうか。
日本よりはるかにシリアスなアメリカの企業で働く男たちの物語である。

冒頭でリーマンショックのニュースが流れる。
100年に一度と言われた不況を決定付けるニュース。
総合企業のGTX社で、37歳のボビーは部長職。
リーマン・ショックなど他所の出来事と見向きもしなかったに違いない。
ところが突然の解雇。

みんな私物を入れた段ボールを持って車に向かう。
アメリカらしい光景。
そしてボビーの再就職活動が始る。
支援センターのようなところへ通うボビー。
費用はGTXが出してくれるようである。

GTXで部長を務めたという自負が、ボビーの鼻を高くする。
再就職など簡単と思っていたが、ずるずると月日は過ぎる。
妻のマギーは倹約モードの生活に入るが、ポルシェに乗ってゴルフに行き、高給をもらっていた頃の生活を続けるボビー。
やがてとうとう高コストの生活を維持できなくなる。

子供の心遣いにとうとう改心したボビーは、ポルシェを手放し、自宅を売り、嫌な実家に家族で転がり込む。
ウマの合わなかった義兄に頭を下げ、大工の仕事を手伝う事になる。
一方GTXでは、買収防衛に躍起になる経営陣。
さらなるリストラの嵐が吹き荒れる・・・

リーマン・ショック後のアメリカのサラリーマンたちの悲哀が実にリアルに描かれる。
日本では簡単に解雇などできないが、アメリカは実に簡単。
ある朝出社したら解雇を告げられ、その日のうちに荷物をまとめて出ていかないといけない。
再就職活動の様子など、実に参考になる。
ストーリーとは別の部分で映画に引き込まれていくのは、自分もサラリーマンだからに他ならない。
「自分ならどうするだろう」
そんな事を自然に考えている。

実にドライなアメリカの企業。
解雇されて収入が途絶え、子供の学費の支払いに苦しむ社員を横目に、CEOは社員の平均給与の700倍の収入を得る。
何とも言えない世界。

久しぶのケヴィン・コスナーが、ボビーの義兄ジャックとして登場。
ジャックは大工の棟梁。
自ら仕事を取り、人を雇って働く自営業者だ。
零細企業の悲哀を、たぶんいろいろ味わっている。

優雅なサラリーマンだったボビーとウマが合わなかったのは、額に汗して肉体労働に励む自分とは正反対の世界で、スーツを着て高給を取るカンパニー・メンに反感を抱いていたからに他ならない。
それでも、仕事がなくてプライドを捨てて頭をさげてきたボビーを雇い、大して役に立たなくても余計に給料を払う。

仕事を取るためには安く請け負わないといけないが、一方で給料も払わないといけない。
足りない分は、一人残業と休日出勤を繰り返して賄っている。
そういう男が、ケヴィン・コスナーには良く似合う。
そしてそんなジャックの気持ちをやがて理解するようになるボビーに、ちょっと胸が熱くなったりする。
ボビーの妻も懸命に夫を支える。
窮地に陥ってこそ、家族の結束が固まる様子が胸に迫る。

日本よりはるかにシビアな環境で生きるアメリカのサラリーマン(カンパニー・メン)たち。
ストーリーはともかく、その生きる姿にあれこれと我が身を振り返ってみてしまう、サラリーマン必見の映画である。


評価:★★☆☆☆
     



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2012年12月30日

日輪の遺産

日輪の遺産.jpg

2011年 日本
監督: 佐々部清
原作: 浅田次郎
出演: 
堺雅人(真柴少佐)
中村獅童(望月庄造)
福士誠治(小泉中尉)
ユースケ・サンタマリア(野口先生)
八千草薫(金原久枝)


<STORY>********************************************************************************************************
終戦間近の昭和20年8月10日。
帝国陸軍の真柴少佐は、阿南陸軍大臣ら軍トップに呼集され、ある重大な密命を帯びる。
山下将軍が奪取した900億円(現在の貨幣価値で約200兆円)ものマッカーサーの財宝を、秘密裡に陸軍工場へ移送し隠匿せよ……。
その財宝は、敗戦を悟った阿南らが祖国復興を託した軍資金であった。
真柴は、小泉中尉、望月曹長と共に極秘任務を遂行。
勤労動員として20名の少女たちが呼集される。
御国のため、それとは知らず財宝隠しに加担するが、任務の終わりが見えた頃、上層部は彼女らに非情きわまる命令を下す。
果たして少女たちの運命は?そして財宝の行方は…?
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浅田次郎原作という事で気になっていた映画をようやく観た。
しかしながら期待とは裏腹に、ちょっと物足りなさが残る映画だった。
原作を読んでいないから何とも言えないが、面白くなかったのは原作のせいなのか、それとも脚本か。
いつか原作を読んで確認してみようと思う。

こういう歴史モノによくありがちだが、物語は現代から始る。
中学校の卒業式に参加した老夫婦が二人。
いかつい顔をした祖父は、卒業式の途中で倒れそのまま息を引き取る。
祖父が横たわるその横で、祖母は子供たちに昔の話をし始める。
それは、学校の石碑にもなっている当時の先生と友人たちとにまつわる話であった。

昭和20年8月10日。
すでに天皇陛下の裁断が下され、ポツダム宣言を受諾して降伏する事が内々に決まっていた。
陸軍近衛師団の真柴少佐は、阿南陸軍大臣らトップに呼び出され、会計のエキスパートである小泉中尉とともに密命を受ける。
フィリピンのマッカーサーから奪った財宝を、復興に備えて密かに隠せというものであった。
行動は隠密裏に行なわれ、作業は何も知らない勤労動員の女学生20名に託される。

浅田次郎原作というと、「地下鉄(メトロ)に乗って」「憑神」「椿山課長の七日間」などの映画を観たが、いずれも原作の良さを映画で表現しきれないという限界を露呈していた。
この映画の原作は読んでいないものの、同じ轍を踏んでいるのではないかと思わずにはいられない。

結論から言えば面白くない。
マッカーサーの遺産云々はともかくとして、前半に出てくる主人公久枝の恩師と級友がどうして終戦前日に亡くなったのかというのが話のポイント。
そしてそれはそれなりにうまく物語として完成しているのであるが、面白くない。
原作を読めば、そのあたりの原因はわかるかもしれないが、「作られ感」がどうしても強いのである。
原作にどこまで忠実なのかはわからないが、感動モノに仕上げようという意図が見え見えだと、かえって興醒めしてしまうものなのである。

それに時代考証的にもどうなのだろうかと疑問に思うところもいくつかあった。
玉音放送を敢えて聞かなかったりする事は、当時できたのであろうかとか。
戦後の日本の繁栄を見越したような発言とか。
曹長と久枝の年齢差は、とか。
考えると興味がそがれてしまうという部分が結構あった。

やはり「浅田次郎は原作で」が原則だろうか。
そんな事をまたしても思わされた映画である。


評価:★★☆☆☆
    



     
    
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2012年12月27日

人生の特等席

人生の特等席.jpg

原題: Trouble with the Curve
2012年 アメリカ
監督: ロバート・ロレンツ
出演: 
クリント・イーストウッド(Gus)
エイミー・アダムス(Mickey)
ジャスティン・ティンバーレイク(Johnny)
ジョン・グッドマン(Pete Klein)
マシュー・リラード(Phillip Sanderson)
ロバート・パトリック(Vince)

<STORY>********************************************************************************************************
長年大リーグの名スカウトとして腕を振るってきたガス・ロベル。
伝説のスカウトマンとして知られる存在の彼だったが、年齢のせいで視力が弱ってきていた。
それでも引退する素振りを微塵も見せない彼に、球団フロントは疑問を抱き始める。
そんな苦しい立場のガスに救いの手を差し伸べたのは、父との間にわだかまりを感じ続けてきたひとり娘のミッキーだった。
ガスはスカウトマンの誇りをかけ、父娘二人で最後のスカウトの旅に出る。
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「グラン・トリノ」以来のクリント・イーストウッド最新作である。
歳をとっても尚健在なクリント・イーストウッド。
今度の役柄はメジャーリーグのスカウト。
冒頭のトイレのシーンから、老いを披露してくれる。

スカウトのガスは早くに妻を亡くし、一人暮らしをしている。
一人娘のミッキーは弁護士として順調にキャリアを続けている。
二人の親子関係は、事情があってあまりうまくいっていない。
しかし、ガスの親友でもあるピートの依頼で、ミッキーは父のスカウト旅行に付き合う事にする。
ガスも視力が弱ってきて、仕事にも支障をきたしていたのである。

思いもかけない親子旅。
二人は評判の高校生ボブの試合を追う事になる。
そしてそこにかつてガスがスカウトし、今は肩を壊して引退しスカウトとなっているジョニーが加わる。
ガスとミッキー、ミッキーとジョニー、そしてガスとジョニーの人間模様が描かれる・・・

それにしてもこの映画、今年公開された同じメジャーリーグの映画「マネー・ボール」へのアンチ・テーゼのような映画である。
「マネー・ボール」では、「セイバー・メトリクス理論」という、データを中心にして選手を起用しようという新しい手法を採用したアスレチックスが取り上げられていた。
従来からの、現場を歩くタイプのスカウトはみな過去の遺物扱いだった。

ところがこの映画では、「目で見る、耳で聞く」といった古いタイプのスカウトに脚光を当てている。
現場を見ずにデータだけで判断しようとした男は、最後に大恥をかかされる。
スカウトとしてはどちらが良いのか、結論は難しいが、クリント・イーストウッド流の「マネー・ボール」への反撃パンチなのだろうか。

パートナーへの昇進がかかる大事な仕事を前にし、父のために職場を離れたミッキー。
野球をこよなく愛し、現場で選手を観察し、球音に耳を澄ませるガス。
親子関係にしろ、古いタイプのスカウトにしろ、本当に大事なものは何かという事を訴えかけてくるところがある。

ハリウッド映画らしく、最後はパーフェクトなハッピーエンド。
ベースボールはやっぱりアメリカの文化なのだと改めて思う映画である。


評価:★★★☆☆
    
     


    
   
posted by HH at 19:21 | 東京 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2012年12月26日

マイ・バック・ページ

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2011年 日本
監督: 山下敦弘
出演: 
妻夫木聡(沢田雅巳)
松山ケンイチ(梅山)
忽那汐里(倉田眞子)
石橋杏奈(安藤重子)
中村蒼(柴山洋)
韓英恵(浅井七重)

<STORY>********************************************************************************************************
東大安田講堂事件をきっかけに全共闘運動が急激に失速を見せていた、1969年。
東都新聞社で週刊誌編集記者として働く沢田は、取材対象である活動家たちの志を理解し、共有したいという思いと、ジャーナリストとして必要な客観性の狭間で葛藤していた。
2年後のある日、沢田は先輩の中平とともに梅山と名乗る男から接触を受ける。
梅山から「武器を揃え、4月に行動を起こす」と言われ、沢田は疑念を抱きつつも親近感を覚えるようになる・・・
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この映画は、評論家の川本三郎氏が、1968年から1972年の『週刊朝日』および『朝日ジャーナル』の記者として活動していた時代を綴った回想録だと言う事である。

映画の中では、主人公は沢田という若者。
東大を卒業し、東都新聞社に就職する。
世の中は学園紛争に騒然となっており、東大安田講堂事件が大きなニュースとなる。
沢田は、そうしたニュースを扱う社会部への憧れを押さえながら、週刊誌の連載企画に携わる日々。

独自の取材をこなす一方で、先輩中平とともに成田の三里塚闘争などの取材にもあたる。
そんな中、梅山と名乗る男が接触してくる。
梅山はこれから武器を揃え、仲間と共に行動を起こすと宣言する。
沢田は大きなネタを扱うチャンスとして、梅山の行動を追う事にする。

梅山も東大の学生。
革命を志し、仲間を集める。
沢田ら週刊誌への接触も売り込みである。
安田講堂事件が終わったあと、自らが行動する時と仲間と共に動き始める。
そして武器を奪うため、自衛隊朝霞基地に潜入した仲間が自衛官を刺殺する・・・

今はもう学園紛争も過去の話。
良い悪いは別として、学生たちにはエネルギーが満ち溢れていた感じがする。
しかしそのエネルギーも、向かう先が重要。
革命と称した学生たちが、多くの事件を起こしたが、梅山もその一人となる。

時代の波だったのだろうか。
一人の男の体験談という事実も物語に厚みをもたらす。
主演の妻夫木聡も迷いながら生きている若者という感じがよく出ていた。
居酒屋で泣くシーンは、その前の女子高生の「きちんと泣ける男の人が好き」というセリフを意識したものだろうが、なかなか味わいのあるシーンだ。

そしてもう一人の主役の松山ケンイチ。
夢見る革命家を熱演。
持論を滔々と語る若者を見ていると、一人前の口を聞きながら、何もわかっていない男が腹立たしくもあり滑稽でもある。
同じ時代を舞台とした「ノルウェイの森」も松山ケンイチが主演であったが、何となく時代の雰囲気にあっている気がする。

時代と言えば時代だったのだろうか。
日本全体が若気の至りの時代だったのかもしれない。
世代的には少し前の世代であり、記憶にはあまり残っていないが、追体験できるというところが映画の良いところ。
時代の雰囲気を味わってみるのもいいかもしれない映画である。


評価:★★☆☆☆
     




   
    
posted by HH at 22:45 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2012年12月08日

戦火のナージャ

戦火のナージャ.jpg


原題: UTOMLYONNYE SOLNTSEM 2/BURNT BY THE SUN 2: EXODUS
2010年 ロシア
監督: ニキータ・ミハルコフ
出演: 
ニキータ・ミハルコフ(Sergei Petrovich Kotov)
ナージャ・ミハルコフ(Nadya)
オレグ・メンシコフ(Mitya Arsentyev)
ビクトリア・トルストガノワ(Marusia)
ドミートリ・ジュゼフ(Vania)

<STORY>********************************************************************************************************
KGBの幹部ドミートリはスターリンに呼び出され、大粛清で処刑されたはずのコトフ大佐の捜索を命じられる。
1941年、ドイツの侵攻による混乱の中、コトフは強制収容所から脱出し奇しくも生き延びていた。
その頃、ドミートリに匿われて成長した愛娘ナージャも父が生きていることを確信する。
やがて看護師となったナージャと、一兵卒として最前線に送られたコトフは、それぞれが地獄のような戦場をさまようのだった。
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第二次世界大戦下の旧ソ連のある父娘の物語。
冒頭でスターリンが登場する。
さすがというべきだろうか、何の説明もなくても一見してその人とわかる。
立ち居振る舞いは知る由もないが、外見がこれだけ似ていると、実際もこんな感じだったのだろうかと思わせられる。

そんなスターリンは恐怖の存在。
大粛清もよく知られている。
スターリンに呼び出されたドミートリ。
その緊張ぶりから、スターリンに対する恐れを感じる事ができる。
そしてドミートリは、かつて粛清されたはずのコトフ大佐の捜索を命じられる。

ドミートリはコトフとは旧知の仲。
密かにコトフの妻と娘のナージャを匿っていた。
成長したナージャは看護師となり、父を捜しに行く。
1941年、ドイツ軍が突如としてソ連領に侵攻。
その混乱の中で、コトフは強制収容所から脱出する。

1943年、スターリンの命を受けてコトフの行方を捜索するドミートリ。
2年の時間を前後しながら物語は進む。
背景として描かれる独ソ戦。
ソ連は第二次世界大戦で最も多くの死者を出した国。

最前線に援軍として送られてきたエリート部隊が到着する。
身長180cm以上の自らもエリートと自任する部隊。
迎えるはコトフも名を連ねる犯罪者を集めた部隊。
武器は弾が4発のライフル。
そしてそれすらも与えられない兵士が混じる。

ドイツ軍を待ち構えるも、何とドイツ軍は後方から戦車部隊が進撃してくる。
わずか15分で240名の部隊は壊滅する。
道中立ちよった村で、村人を虐殺するドイツ軍。
映画だから強調している部分はあるかもしれないが、ドイツと日本の戦死者の総数の3倍近い戦死者を記録しているソ連ゆえに、それも事実の一つなのかもしれない。

ナージャも奇跡的な運にも支えられ、戦火の中を生き抜いていく。
父も娘も互いに相手を想いながら、戦火の中をさまよう。
胸の踊る戦争映画ではなく、ただひたすら過酷な戦場とスターリンの姿を浮かび上がらせていく。

タイトルを見ると、どうやらこの映画は続編のよう。
前編にも興味を惹かれるところである。
主演のコトフ役は監督でもあるニキータ・ミハルコフであり、娘のナージャ役はミハルコフ監督の実の娘でもあるナージャなのだという。
ストーリーもさることながら、ロシア人から見た第二次世界大戦という意味で、興味深い映画である・・・


評価:★★☆☆☆



    
    
posted by HH at 21:11 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ