2012年11月29日

BIUTIFULビューティフル

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原題: BIUTIFUL
2010年 スペイン=メキシコ
監督: アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演: 
ハビエル・バルデム(Uxbal)
マリセル・アルバレス(Marambra)
エドゥアルド・フェルナンデス(Tito)
ディアリァトゥ・ダフ(Ige)
チェン・ツァイシェン(Hai)
ギレルモ・エストレラ(Mateo)
ルオ・チン(Liwei)

<STORY>********************************************************************************************************
スペインのバルセロナに暮らす男・ウスバルは、妻・マランブラと別れ、男手一つで二人の子どもを育てていた。
彼はアフリカ系や中国系の不法移民たちへの仕事の口利きや、警察への仲介などで収入を得ている。
ある日、彼は病院で自分が末期ガンで、余命二ヶ月の宣告を受ける。
しかし、そのことは誰にも告げず、子どもたちに少しでも金を残そうとしていた。
マランブラとも再び同居を始め、彼は死の準備を整えようとするのだが…。
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邦題の「BIUTIFUL」を見た時に、スペルが間違っていると思ったのだが、この映画はスペイン語の映画。
どうやら間違いではないのだと気がつく。

主人公はバルセロナで子供二人を男手一つで育てているウスバル。
仕事はと言うと、アフリカや中国からの不法入国者に仕事を紹介したりしている。
時に警官を買収したりして、彼らをサポートしている。
はっきり言ってまともな仕事ではないのであるが、今や失業率が20%以上と言われるスペインの実情を伺い知るかのようである。

セネガルから出て来た青年たちは路上でコピー商品や麻薬を売る。
中国からの労働者はコピー商品を作る。
劣悪な生活環境なのだが、それでも故国よりマシなのだろう。
何とも言えない、社会の底辺に生きる人々。

そんなウスバルには、人にはない能力がある。
はっきりとは描かれていないのだが、どうやら死んだ者と話ができるらしい。
それもこの世に思いを残して死んだ者のようである。
というと「シックスセンス」
のような映画かと言えば、そうではない。
ウスバルの能力は、箸休めのようなサイドストーリーでしかない。

そんなウスバルだが、癌で余命2ヶ月と診断される。
心配なのは子供たち。
別れた妻とは交流があるものの、精神状態が普通でない元妻にはとてもではないが子供は任せられない。
癌が進行する中で、後の事を考え、お金を貯めるウスバル・・・

「ビューティフル」というタイトルとは裏腹に、ストーリーはどこを見ても「ビューティフル」ではない。
それどころか、社会の底辺で一生浮かばれないまま蠢く人々の姿を見せつけられ、何とも言いようのない気持ちになりさえする。

しかし、よくよく観ていくと、ウスバルは一人、周りの人のために働く。
劣悪な倉庫で、寒さに震えながら寝る中国人たちにストーブの手配をしたり、熱心に仕事の口利きをしたり。
逮捕されて国外退去処分になったセネガル出身の男の妻子に住むところを提供したり。
元妻との復縁を試みたり。
そして何より子供たちへの愛情。

社会の底辺にいながらも、それとなく互いに助け合う人たち。
救いのないようでいても、そこには救いがある。
ひょっとしたら、それこそがビューティフルなのかもしれないと思う。
ウスバルの能力は、しっかりと受け継がれていく。
それは誰かの役に立つのだろうか。
そんな余韻を残して終わる映画である。


評価:★★☆☆☆
     




    
    
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2012年11月10日

トスカーナの贋作

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原題: Copie conforme
2010年 フランス・イタリア
監督: アッバス・キアロスタミ
出演: 
ジュリエット・ビノシュ(Elle)
ウィリアム・シメル(James Miller)

<STORY>********************************************************************************************************
イタリア、南トスカーナの小さな町。
新作発売の講演に訪れたイギリス人作家ミラーは、講演を途中退席したフランス人女性が経営するギャラリーを訪ねる。
車で出かける事になった二人は、車内で“本物”と“贋作”についての議論を繰り広げる。
議論に疲れて入ったカフェで女店主から夫婦と勘違いされた事から、二人はあたかも長年連れ添った夫婦であるように装う。
そして“夫婦”の会話を重ねながら、秋のトスカーナを散策する…。
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優れた芸術作品とは何だろうか。
ピカソの絵と無名作家の風景画を比べて見た時、無名作家の風景画の方がうまく見える事は想像に難くない。
その時、“わかる人”にしか“わからない”芸術は、果たして優れた芸術作品と言えるのだろうか。
“わからない”自分にはわからない。

本物と贋作というのが、この映画のテーマ。
冒頭、贋作についての著作を発表するジェームズ・ミラー。
そしてその発表会に訪れたエリ。
ジェームズに連絡をとったエリは、自分の経営するギャラリーを訪れたジェームズを乗せてドライブに出かける。
話題は当然、本物と贋作について。

コーラの瓶はありふれたものであるが、それが美術館に展示されていれば人はじっくり観察する。
同じ言葉でも、子供が言えば大人は聞き流すが、哲学者が言えば名言だと頷く。
二人の会話は物事の真理をついてくる。

目的地もなくドライブに出た二人は、あてもなく車を走らせる。
そして二人の会話は続いていく。
そして物語は二人が立ちよったカフェで転機を迎える。
物語としては、やはり起承転結があるもの。
ただし、その起伏はこの映画では大きくない。

物語は二人の会話を中心として続いていく。
他の登場人物たちはみなすれ違う人々だ。
二人の会話こそがこの物語のすべて。
起伏が小さいというのも、二人の会話がこの映画の世界のすべてであるがゆえ。
人によってはつまらない映画と言える。
事実、自分も途中で眠くなってしまった。

芸術作品を理解できる人からすれば、本物と贋作をテーマにしたこの映画の意味を感じとれるのかもしれない。
ただ、そうでない者には、眠いだけの映画になりかねない。
すべての映画が、波乱万丈、ハラハラドキドキである必要はない。
こうした映画もあってしかるべきだろう。

そうは思うものの、好みの問題から言えば、やっぱり眠い映画だった・・・


評価:★☆☆☆☆



    
    
posted by HH at 23:59 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2012年10月20日

水曜日のエミリア

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原題: LOVE AND OTHER IMPOSSIBLE PURSUITS
2009年 アメリカ
監督: ドン・ルース
出演: 
ナタリー・ポートマン(Emilia Greenleaf)
スコット・コーエン(Jack)
チャーリー・ターハーン(William)
ローレン・アンブローズ(Mindy)
リサ・クドロー(Carolyne)

<STORY>********************************************************************************************************
ニューヨークで弁護士をしているエミリア。
彼女が恋に落ちた相手は、同じ事務所の上司ジャックだった。
エミリアの妊娠をきっかけにジャックの離婚が成立、晴れてふたりは結婚するが、エミリアには“略奪女”というレッテルが付いてまわり、さまざまな苦難が続く。
産まれたばかりの娘イサベルの突然死という悲劇を乗り越えられないばかりか、夫の連れ子で8歳になるウィリアムはなかなか心を開いてくれなかった…。
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ナタリー・ポートマン主演のホームドラマ。

子供を学校へ迎えに行くエミリア。
一緒になった母親との会話から、継子だとわかる。
そしてなぜか周囲の視線が冷たい。
その理由はすぐに明らかになる。

物語は少し前に戻り、新米弁護士として法律事務所に勤め始めたエミリアが上司ジャックと出会ったところが描かれる。
妻子持ちのジャックとの恋はいばらの道。
そのまま恋に落ち、結婚する。
いわゆる略奪婚。
しかし幸せな結婚式のあとにはリアルな現実が待っている。

せっかくジャックとの間に授かった子供イザベルは、生後間もなく突然死。
ジャックの連れ子ウィリアムはなかなかエミリアに心を開かない。
ウィリアムは離婚した両親の間を行き来して暮らしている様子。
そして水曜日に迎えに行くのはエミリアの役目。
邦題はここから来ているようだが、ストーリーとは何の関係もない。

うまくいかないウィリアムとの関係。
ラブラブだった夫とも、日常生活をともにすればすれ違いも生じてくる。
離婚した両親との関係。
そして仲の良い友人たち。
最愛の子供を失った哀しみは拭えないまま、周囲の関係との歯車が軋む。
人生とは苦難の連続。
そんな想いが脳裏を過る。

主演のナタリー・ポートマンは、この映画で製作総指揮も手掛けたとの事。
ある程度富と名声とが手に入ると、自分なりに気に入った映画を創りたいという望みも叶うようになるのだろうから、そういう意思が込められた映画なのだろう。
原作を読んで気に入ったのかもしれないが、一見地味な映画だが、ナタリー・ポートマンの想いが伝わってくるかのような気がする。

人間関係というのはやはり相手に対する想いが作る。
相手に好意を持てば、その関係はうまく行くが、逆であればうまくいかない。
ウィリアムは両親が離婚した事を心の底では悲しんでおり、それが形を変えてエミリアにぶつけられていく。
離婚の原因となった父親の行為を許せないエミリアは、自然と父親にも冷たく当たる。
そして、そんな気持ちは父と仲直りしようとする母親にも向けられる。
ジャックの前妻キャロラインがエミリアに向ける憎悪は言わずもがなである。

そんな対立が後半には和んでいく。
相手に対する思いやりは人の心を動かす。
そしてそれは観ている者にも伝播する。
世の中をより良く生きていくためには、実はこういう事が大事なんだと思える。

一見地味なホームドラマだが、ナタリー・ポートマンの魅力と共に堪能できた一作である・・・


評価:★★☆☆☆



    
ナタリー・ポートマン出演作品
「レオン」
「ヒート」
「スターウォーズ/エピソードU」
「スターウォーズ/エピソードV」
「Vフォー・ヴェンデッタ」
「マルゴリムおじさんの不思議なおもちゃ屋」
「マイ・ブルーベリー・ナイツ」
「ブーリン家の姉妹」
「ブラック・スワン」
「マイ・ブラザー」
「抱きたいカンケイ」


posted by HH at 18:58 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2012年10月16日

終わりなき叫び

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原題: Un Homme qui Crie
2010年 フランス・ベルギー・チャド
監督: マハマト=サレ・ハルーン
出演: 
ユースフ・ジャオロ(アダム)
ディオク・コマ(アブデル)
エミール・アボソロ・ムボ

<STORY>********************************************************************************************************
現在のチャド。
かつての水泳チャンピオンで、60代となった現在は、とある高級ホテルのプールの監視員を務めるアダム。ところが、同国で生じた内戦が次第に激化する中、その影響が彼の周囲にも浸透。
ホテルのオーナーが交代し、新任の女性上司から、アダムは、いまの仕事を息子のアブデルに譲り、代わりに門番となるよう言い渡される。
それに対して屈辱と怒りを覚えたアダムは、ひそかにある決断を下すのだが…。********************************************************************************************************

舞台はアフリカのチャド。
アダムはかつて水泳のチャンピオンとなった事もあり、今は息子とともに高級ホテルでプールの監視員をしている。
しかしホテルのオーナーが中国系に代わり、リストラが行われ、彼もプールの監視員から門番へと異動させられる。
代わりに監視員となったのは息子のアブデル。

輝かしい過去を誇り、みんなからいまだに「チャンプ」と呼ばれているアダムはそれに対して屈辱感を覚える。
周囲には内戦の影が忍び寄る。
そんな中、アダムは政府に対する戦費の寄付かあるいは息子を兵士にするように求められる・・・

ふだんハリウッド映画ばかりだからたまにはこういう映画もいいだろうと思って観る事にした。
WOWOWもこういう映画を提供してくれるところはありがたい。
チャドの事は知る由もないが、主人公が住んでいる地域はけっして豊かなものではない。
そんな中で、外国人向けのホテルに職を得ていられるというのは、それだけで恵まれているのかもしれない。
アダムはそこで一人息子と共に働いている。

やがてホテルのオーナーが中国系に代わる。
最近の経済発展を背景にアフリカへ資源外交を続けている中国の影が、こんなところでも見られるのか。
内戦が激化し、すると必然的にホテルの利用客も減り、経営陣はリストラで対応しようとする。
そんな背景が映画の中では重要なファクターになっている。

かつての栄光が失われつつあり、息子にももう追い抜かれようとしている。
冒頭で親子で潜水競争するシーンがそれを象徴している。
これの映画がチャドの物語なのか、あるいはアダムという個人の葛藤の物語なのかは難しいところ。
恐らくはその両方なのかもしれない。

アフリカの大地と川とが、ちっぽけな人間を見下ろすかのようなラストシーンが実に印象的な映画である・・・


評価:★★☆☆☆






posted by HH at 22:38 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2012年10月14日

ザ・ファイター

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原題: The Fighter
2010年 アメリカ
監督: デヴィッド・O・ラッセル
出演: 
マーク・ウォールバーグ(Micky Ward)
クリスチャン・ベール(Dicky Eklund)
エイミー・アダムス(Charlene Fleming)
メリッサ・レオ(Alice Ward)
ジャック・マッギー(George Ward)
フランク・レンズーリ(Sal Lanano)

<STORY>********************************************************************************************************
マサチューセッツ州ローウェルに住むプロボクサーの兄弟。
兄のディッキーは町の期待を一身に背負う名ボクサーだが、その短気で怠惰な性格からすさんだ毎日を送っていた。
一方異父弟のミッキーは、地道な性格。
兄と母に言われるがままに試合を重ねるが、どうにも勝つことが出来ない。
そんなある日、ディッキーが薬物に手を出し逮捕されてしまい、ミッキーはリングから遠ざかっていく。
しかし恋人シャーリーンの支えもあり、ミッキーはもう一度リングに上がる決意をする。
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実話を基にしたボクサーの兄弟の物語。
兄のディッキーは、それなりに名前を売ったプロボクサー。
名ボクサー、シュガー・レイ・レナードをダウンさせた事を今でも誇りに思っている。
そんなディッキーは、薬物に溺れながらも今は弟のミッキーのコーチを務めている。

マネージャーを務めるのは母親。
しかし、どうしても勝てない。
ある時勝てると思っていた相手が試合を棄権。
かわりに9キロも体重差のある相手と試合を組まされ、ミッキーは惨敗する。
付き合い始めた恋人シャーリーンからは、家族と手を切るように勧められる。

家族と手を切れば受け入れてくれるジムがある。
そんな思いを伝えたところ、ディッキーは事件を起こして刑務所送りとなる。
母も遠ざけたミッキーは、新しいマネージャーとトレーナーの元で順調に再起を遂げる。
そしていよいよ世界タイトル挑戦のチャンスが巡ってくる・・・

ミッキーを演じるのはマーク・ウォルバーグ。
寡黙なファイターという役柄は、「ザ・シューター」を彷彿とさせられる。
最後のエンドロールで本人が登場するが、実に雰囲気がよく似ている。

驚くのは共演のクリスチャン・ベール。
コカイン中毒の兄ディッキーとして登場するが、驚くほど痩せている。
もっとも過去にも「戦場からの脱出」で激やせを披露しているから何とも思わないが、先日「ダークナイト・ライジング」を観た後だけに、しばらく本人とはわからなかった。
この作品でオスカー(助演男優賞)を獲得しているが、それも当然と言える。

独特の喋り方に痩せぶりに、やかりエンドロールで登場する本人にそっくり。
雰囲気までそのままで、さすが役者魂と感心してしまう。
これからも出演作品は外せない役者になってしまった。
それにしても、事実は小説よりも奇なり。
なかなか心に残るストーリーの映画である・・・


評価:★★★☆☆



     

クリスチャン・ベール出演作品
「シャフト」
「戦場からの脱出」
「プレステージ」
「3時10分、決断の時」
「ダークナイト」
「ターミネーター4」
「パブリック・エネミーズ」
「ダークナイト・ライジング」


     
posted by HH at 21:30 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ