2012年12月27日

人生の特等席

人生の特等席.jpg

原題: Trouble with the Curve
2012年 アメリカ
監督: ロバート・ロレンツ
出演: 
クリント・イーストウッド(Gus)
エイミー・アダムス(Mickey)
ジャスティン・ティンバーレイク(Johnny)
ジョン・グッドマン(Pete Klein)
マシュー・リラード(Phillip Sanderson)
ロバート・パトリック(Vince)

<STORY>********************************************************************************************************
長年大リーグの名スカウトとして腕を振るってきたガス・ロベル。
伝説のスカウトマンとして知られる存在の彼だったが、年齢のせいで視力が弱ってきていた。
それでも引退する素振りを微塵も見せない彼に、球団フロントは疑問を抱き始める。
そんな苦しい立場のガスに救いの手を差し伸べたのは、父との間にわだかまりを感じ続けてきたひとり娘のミッキーだった。
ガスはスカウトマンの誇りをかけ、父娘二人で最後のスカウトの旅に出る。
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「グラン・トリノ」以来のクリント・イーストウッド最新作である。
歳をとっても尚健在なクリント・イーストウッド。
今度の役柄はメジャーリーグのスカウト。
冒頭のトイレのシーンから、老いを披露してくれる。

スカウトのガスは早くに妻を亡くし、一人暮らしをしている。
一人娘のミッキーは弁護士として順調にキャリアを続けている。
二人の親子関係は、事情があってあまりうまくいっていない。
しかし、ガスの親友でもあるピートの依頼で、ミッキーは父のスカウト旅行に付き合う事にする。
ガスも視力が弱ってきて、仕事にも支障をきたしていたのである。

思いもかけない親子旅。
二人は評判の高校生ボブの試合を追う事になる。
そしてそこにかつてガスがスカウトし、今は肩を壊して引退しスカウトとなっているジョニーが加わる。
ガスとミッキー、ミッキーとジョニー、そしてガスとジョニーの人間模様が描かれる・・・

それにしてもこの映画、今年公開された同じメジャーリーグの映画「マネー・ボール」へのアンチ・テーゼのような映画である。
「マネー・ボール」では、「セイバー・メトリクス理論」という、データを中心にして選手を起用しようという新しい手法を採用したアスレチックスが取り上げられていた。
従来からの、現場を歩くタイプのスカウトはみな過去の遺物扱いだった。

ところがこの映画では、「目で見る、耳で聞く」といった古いタイプのスカウトに脚光を当てている。
現場を見ずにデータだけで判断しようとした男は、最後に大恥をかかされる。
スカウトとしてはどちらが良いのか、結論は難しいが、クリント・イーストウッド流の「マネー・ボール」への反撃パンチなのだろうか。

パートナーへの昇進がかかる大事な仕事を前にし、父のために職場を離れたミッキー。
野球をこよなく愛し、現場で選手を観察し、球音に耳を澄ませるガス。
親子関係にしろ、古いタイプのスカウトにしろ、本当に大事なものは何かという事を訴えかけてくるところがある。

ハリウッド映画らしく、最後はパーフェクトなハッピーエンド。
ベースボールはやっぱりアメリカの文化なのだと改めて思う映画である。


評価:★★★☆☆
    
     


    
   
posted by HH at 19:21 | 東京 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2012年12月26日

マイ・バック・ページ

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2011年 日本
監督: 山下敦弘
出演: 
妻夫木聡(沢田雅巳)
松山ケンイチ(梅山)
忽那汐里(倉田眞子)
石橋杏奈(安藤重子)
中村蒼(柴山洋)
韓英恵(浅井七重)

<STORY>********************************************************************************************************
東大安田講堂事件をきっかけに全共闘運動が急激に失速を見せていた、1969年。
東都新聞社で週刊誌編集記者として働く沢田は、取材対象である活動家たちの志を理解し、共有したいという思いと、ジャーナリストとして必要な客観性の狭間で葛藤していた。
2年後のある日、沢田は先輩の中平とともに梅山と名乗る男から接触を受ける。
梅山から「武器を揃え、4月に行動を起こす」と言われ、沢田は疑念を抱きつつも親近感を覚えるようになる・・・
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この映画は、評論家の川本三郎氏が、1968年から1972年の『週刊朝日』および『朝日ジャーナル』の記者として活動していた時代を綴った回想録だと言う事である。

映画の中では、主人公は沢田という若者。
東大を卒業し、東都新聞社に就職する。
世の中は学園紛争に騒然となっており、東大安田講堂事件が大きなニュースとなる。
沢田は、そうしたニュースを扱う社会部への憧れを押さえながら、週刊誌の連載企画に携わる日々。

独自の取材をこなす一方で、先輩中平とともに成田の三里塚闘争などの取材にもあたる。
そんな中、梅山と名乗る男が接触してくる。
梅山はこれから武器を揃え、仲間と共に行動を起こすと宣言する。
沢田は大きなネタを扱うチャンスとして、梅山の行動を追う事にする。

梅山も東大の学生。
革命を志し、仲間を集める。
沢田ら週刊誌への接触も売り込みである。
安田講堂事件が終わったあと、自らが行動する時と仲間と共に動き始める。
そして武器を奪うため、自衛隊朝霞基地に潜入した仲間が自衛官を刺殺する・・・

今はもう学園紛争も過去の話。
良い悪いは別として、学生たちにはエネルギーが満ち溢れていた感じがする。
しかしそのエネルギーも、向かう先が重要。
革命と称した学生たちが、多くの事件を起こしたが、梅山もその一人となる。

時代の波だったのだろうか。
一人の男の体験談という事実も物語に厚みをもたらす。
主演の妻夫木聡も迷いながら生きている若者という感じがよく出ていた。
居酒屋で泣くシーンは、その前の女子高生の「きちんと泣ける男の人が好き」というセリフを意識したものだろうが、なかなか味わいのあるシーンだ。

そしてもう一人の主役の松山ケンイチ。
夢見る革命家を熱演。
持論を滔々と語る若者を見ていると、一人前の口を聞きながら、何もわかっていない男が腹立たしくもあり滑稽でもある。
同じ時代を舞台とした「ノルウェイの森」も松山ケンイチが主演であったが、何となく時代の雰囲気にあっている気がする。

時代と言えば時代だったのだろうか。
日本全体が若気の至りの時代だったのかもしれない。
世代的には少し前の世代であり、記憶にはあまり残っていないが、追体験できるというところが映画の良いところ。
時代の雰囲気を味わってみるのもいいかもしれない映画である。


評価:★★☆☆☆
     




   
    
posted by HH at 22:45 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2012年12月08日

戦火のナージャ

戦火のナージャ.jpg


原題: UTOMLYONNYE SOLNTSEM 2/BURNT BY THE SUN 2: EXODUS
2010年 ロシア
監督: ニキータ・ミハルコフ
出演: 
ニキータ・ミハルコフ(Sergei Petrovich Kotov)
ナージャ・ミハルコフ(Nadya)
オレグ・メンシコフ(Mitya Arsentyev)
ビクトリア・トルストガノワ(Marusia)
ドミートリ・ジュゼフ(Vania)

<STORY>********************************************************************************************************
KGBの幹部ドミートリはスターリンに呼び出され、大粛清で処刑されたはずのコトフ大佐の捜索を命じられる。
1941年、ドイツの侵攻による混乱の中、コトフは強制収容所から脱出し奇しくも生き延びていた。
その頃、ドミートリに匿われて成長した愛娘ナージャも父が生きていることを確信する。
やがて看護師となったナージャと、一兵卒として最前線に送られたコトフは、それぞれが地獄のような戦場をさまようのだった。
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第二次世界大戦下の旧ソ連のある父娘の物語。
冒頭でスターリンが登場する。
さすがというべきだろうか、何の説明もなくても一見してその人とわかる。
立ち居振る舞いは知る由もないが、外見がこれだけ似ていると、実際もこんな感じだったのだろうかと思わせられる。

そんなスターリンは恐怖の存在。
大粛清もよく知られている。
スターリンに呼び出されたドミートリ。
その緊張ぶりから、スターリンに対する恐れを感じる事ができる。
そしてドミートリは、かつて粛清されたはずのコトフ大佐の捜索を命じられる。

ドミートリはコトフとは旧知の仲。
密かにコトフの妻と娘のナージャを匿っていた。
成長したナージャは看護師となり、父を捜しに行く。
1941年、ドイツ軍が突如としてソ連領に侵攻。
その混乱の中で、コトフは強制収容所から脱出する。

1943年、スターリンの命を受けてコトフの行方を捜索するドミートリ。
2年の時間を前後しながら物語は進む。
背景として描かれる独ソ戦。
ソ連は第二次世界大戦で最も多くの死者を出した国。

最前線に援軍として送られてきたエリート部隊が到着する。
身長180cm以上の自らもエリートと自任する部隊。
迎えるはコトフも名を連ねる犯罪者を集めた部隊。
武器は弾が4発のライフル。
そしてそれすらも与えられない兵士が混じる。

ドイツ軍を待ち構えるも、何とドイツ軍は後方から戦車部隊が進撃してくる。
わずか15分で240名の部隊は壊滅する。
道中立ちよった村で、村人を虐殺するドイツ軍。
映画だから強調している部分はあるかもしれないが、ドイツと日本の戦死者の総数の3倍近い戦死者を記録しているソ連ゆえに、それも事実の一つなのかもしれない。

ナージャも奇跡的な運にも支えられ、戦火の中を生き抜いていく。
父も娘も互いに相手を想いながら、戦火の中をさまよう。
胸の踊る戦争映画ではなく、ただひたすら過酷な戦場とスターリンの姿を浮かび上がらせていく。

タイトルを見ると、どうやらこの映画は続編のよう。
前編にも興味を惹かれるところである。
主演のコトフ役は監督でもあるニキータ・ミハルコフであり、娘のナージャ役はミハルコフ監督の実の娘でもあるナージャなのだという。
ストーリーもさることながら、ロシア人から見た第二次世界大戦という意味で、興味深い映画である・・・


評価:★★☆☆☆



    
    
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2012年11月29日

BIUTIFULビューティフル

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原題: BIUTIFUL
2010年 スペイン=メキシコ
監督: アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演: 
ハビエル・バルデム(Uxbal)
マリセル・アルバレス(Marambra)
エドゥアルド・フェルナンデス(Tito)
ディアリァトゥ・ダフ(Ige)
チェン・ツァイシェン(Hai)
ギレルモ・エストレラ(Mateo)
ルオ・チン(Liwei)

<STORY>********************************************************************************************************
スペインのバルセロナに暮らす男・ウスバルは、妻・マランブラと別れ、男手一つで二人の子どもを育てていた。
彼はアフリカ系や中国系の不法移民たちへの仕事の口利きや、警察への仲介などで収入を得ている。
ある日、彼は病院で自分が末期ガンで、余命二ヶ月の宣告を受ける。
しかし、そのことは誰にも告げず、子どもたちに少しでも金を残そうとしていた。
マランブラとも再び同居を始め、彼は死の準備を整えようとするのだが…。
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邦題の「BIUTIFUL」を見た時に、スペルが間違っていると思ったのだが、この映画はスペイン語の映画。
どうやら間違いではないのだと気がつく。

主人公はバルセロナで子供二人を男手一つで育てているウスバル。
仕事はと言うと、アフリカや中国からの不法入国者に仕事を紹介したりしている。
時に警官を買収したりして、彼らをサポートしている。
はっきり言ってまともな仕事ではないのであるが、今や失業率が20%以上と言われるスペインの実情を伺い知るかのようである。

セネガルから出て来た青年たちは路上でコピー商品や麻薬を売る。
中国からの労働者はコピー商品を作る。
劣悪な生活環境なのだが、それでも故国よりマシなのだろう。
何とも言えない、社会の底辺に生きる人々。

そんなウスバルには、人にはない能力がある。
はっきりとは描かれていないのだが、どうやら死んだ者と話ができるらしい。
それもこの世に思いを残して死んだ者のようである。
というと「シックスセンス」
のような映画かと言えば、そうではない。
ウスバルの能力は、箸休めのようなサイドストーリーでしかない。

そんなウスバルだが、癌で余命2ヶ月と診断される。
心配なのは子供たち。
別れた妻とは交流があるものの、精神状態が普通でない元妻にはとてもではないが子供は任せられない。
癌が進行する中で、後の事を考え、お金を貯めるウスバル・・・

「ビューティフル」というタイトルとは裏腹に、ストーリーはどこを見ても「ビューティフル」ではない。
それどころか、社会の底辺で一生浮かばれないまま蠢く人々の姿を見せつけられ、何とも言いようのない気持ちになりさえする。

しかし、よくよく観ていくと、ウスバルは一人、周りの人のために働く。
劣悪な倉庫で、寒さに震えながら寝る中国人たちにストーブの手配をしたり、熱心に仕事の口利きをしたり。
逮捕されて国外退去処分になったセネガル出身の男の妻子に住むところを提供したり。
元妻との復縁を試みたり。
そして何より子供たちへの愛情。

社会の底辺にいながらも、それとなく互いに助け合う人たち。
救いのないようでいても、そこには救いがある。
ひょっとしたら、それこそがビューティフルなのかもしれないと思う。
ウスバルの能力は、しっかりと受け継がれていく。
それは誰かの役に立つのだろうか。
そんな余韻を残して終わる映画である。


評価:★★☆☆☆
     




    
    
posted by HH at 23:28 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2012年11月10日

トスカーナの贋作

トスカーナの贋作.jpg



原題: Copie conforme
2010年 フランス・イタリア
監督: アッバス・キアロスタミ
出演: 
ジュリエット・ビノシュ(Elle)
ウィリアム・シメル(James Miller)

<STORY>********************************************************************************************************
イタリア、南トスカーナの小さな町。
新作発売の講演に訪れたイギリス人作家ミラーは、講演を途中退席したフランス人女性が経営するギャラリーを訪ねる。
車で出かける事になった二人は、車内で“本物”と“贋作”についての議論を繰り広げる。
議論に疲れて入ったカフェで女店主から夫婦と勘違いされた事から、二人はあたかも長年連れ添った夫婦であるように装う。
そして“夫婦”の会話を重ねながら、秋のトスカーナを散策する…。
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優れた芸術作品とは何だろうか。
ピカソの絵と無名作家の風景画を比べて見た時、無名作家の風景画の方がうまく見える事は想像に難くない。
その時、“わかる人”にしか“わからない”芸術は、果たして優れた芸術作品と言えるのだろうか。
“わからない”自分にはわからない。

本物と贋作というのが、この映画のテーマ。
冒頭、贋作についての著作を発表するジェームズ・ミラー。
そしてその発表会に訪れたエリ。
ジェームズに連絡をとったエリは、自分の経営するギャラリーを訪れたジェームズを乗せてドライブに出かける。
話題は当然、本物と贋作について。

コーラの瓶はありふれたものであるが、それが美術館に展示されていれば人はじっくり観察する。
同じ言葉でも、子供が言えば大人は聞き流すが、哲学者が言えば名言だと頷く。
二人の会話は物事の真理をついてくる。

目的地もなくドライブに出た二人は、あてもなく車を走らせる。
そして二人の会話は続いていく。
そして物語は二人が立ちよったカフェで転機を迎える。
物語としては、やはり起承転結があるもの。
ただし、その起伏はこの映画では大きくない。

物語は二人の会話を中心として続いていく。
他の登場人物たちはみなすれ違う人々だ。
二人の会話こそがこの物語のすべて。
起伏が小さいというのも、二人の会話がこの映画の世界のすべてであるがゆえ。
人によってはつまらない映画と言える。
事実、自分も途中で眠くなってしまった。

芸術作品を理解できる人からすれば、本物と贋作をテーマにしたこの映画の意味を感じとれるのかもしれない。
ただ、そうでない者には、眠いだけの映画になりかねない。
すべての映画が、波乱万丈、ハラハラドキドキである必要はない。
こうした映画もあってしかるべきだろう。

そうは思うものの、好みの問題から言えば、やっぱり眠い映画だった・・・


評価:★☆☆☆☆



    
    
posted by HH at 23:59 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ