2012年07月08日

レオニー

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原題: Leonie
2010年 日本
監督: 松井久子
出演: エミリー・モーティマー(レオニー)/中村獅童(野口米次郎)/原田美枝子(梅子)/竹下景子/中村雅俊

<STORY>********************************************************************************************************
1901年、米国の名門女子大学を卒業し教職に就いていたレオニー・ギルモアは、ニューヨークで新進気鋭の日本人詩人ヨネ・ノグチこと野口米次郎に雇われ念願の編集者になる。
文学上のパートナーだった2人の関係はやがて恋愛へと発展しレオニーは妊娠するが、ヨネは逃げるように帰国してしまう。
意を決して男子を出産したレオニーは、日露戦争を経て日本人への差別が激しくなると幼い息子と共に日本へ旅立つのだった。
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名前だけは何となく知っているイサム・ノグチ。
著名な芸術家であるが、映画化される伝記となるとそういう有名人のものになりそうな気がするが、この映画は彼の“母親”を取り上げている。
なぜ母親なのか興味を惹かれるながら観た映画である。

その母親レオニー・ギルモアは米国の名門女子大の出身。
在学中に日本から留学してきていた津田梅子(津田塾大創設者)と知り合う。
自分はかなりの変わり者だと自覚し、そんな自分にあえて好意を示してきたキャサリンと仲良くなり、生涯の友となる。

卒業し、編集者になりたくて応募したレオニーを待っていたのは日本人の野口米次郎。
詩人である米次郎とのコンビで、彼の作品は売れて行く。
まだ人種差別の色濃い時代。
名前から日本人だとわかって売れない事を案じ、あえて名前を伏せての出版であった。
そして、自然の流れで二人は結ばれる。

やがて日露戦争が始ると日本人への風当たりも強くなり、米次郎は街で暴行を受けるようになる。
そんなアメリカに嫌気がさし、米次郎は帰国を決意。
レオニーは妊娠するが、そんな彼女を置いて米次郎は帰国してしまう。

時代は「坂の上の雲」の時代。
日本人も世界の列強に伍すべく背伸びをしていた。
近代の礎を築いた人たちが、明日を夢見て活躍しており、映画の時代背景は躍動感を感じる。

妊娠した妻を置いて帰国してしまうなんて、なんて酷い男なのだろうと思ってしまうが、アメリカの人種差別もまた酷い。
故郷に戻り、一人男の子を生んだレオニーは、米次郎からの要請で日本へ渡る。
この時代、渡航は船で長い時間がかかる。
幼い子を連れて見知らぬ日本へ渡ったレオニーの決意もまた凄い。

舞台は日本へと移り、当時の様子も興味深い。
英語を教える事で生計を立てる事になったレオニー。
生徒たちとの交流や言葉の通じない日本での生活。
今にして思えば大変な苦労だっただろうと思ってしまう。
生まれた子供イサムは、すぐに日本語も覚え、母親の通訳をするまでになるのが面白いところだ。

映画はそんなレオニーの生涯を追っていく。
まだまだ世界が広かった時代。
勇気ある人生を貫いた女性。
なるほど、映画になるのもわかる気がする。

レオニーは1933年に世を去る。
第2次大戦前で良かったと言えるのかもしれない。
人の数だけ物語がある。
そんな事を感じた映画である・・・


評価:★★☆☆☆
     
      


    
   
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2012年06月25日

メッセージ そして、愛が残る

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原題:Et après /英題:AFTERWARDS
2008年 ドイツ=フランス=カナダ
監督: ジル・ブルドス
出演: ロマン・デュリス(Nathan)/ジョン・マルコヴィッチ(Doctor Kay)/エヴァンジェリン・リリー(Claire)/リース・トンプソン(Jeremy)/パスカル・ブシェール(Anna)

<STORY>********************************************************************************************************
法律事務所に勤めるネイサンの元に、ある日、ジョゼフ・ケイと名乗る医師が現れる。
幼い息子を突然亡くし、妻や娘と別れてひとり仕事に没頭していたネイサンに、ケイは見知らぬ青年の死を予告する。
半信半疑だったネイサンだが、不思議な出来事が続き、死を予見するケイの能力を信じるようになる。
ケイは死期の迫った人に、その運命と向き合う時間を与えるメッセンジャーの役目を果たしていたのだ。
そしてケイがネイサンの前に現れた理由が解き明かされていく。
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冒頭、湖のほとりで遊んでいた子供二人。
女の子が桟橋の木が壊れ池にハマる。
大人の助けを求めて走る男の子。
しかし、道路に飛び出した瞬間、車にはねられる。
ピクリとも動かぬ男の子の体は、やがて白い光に包まれる・・・

大人になったネイサンは弁護士。
しかし幼い息子を突然死で失い、妻のクレアとの関係もまずくなり別居する。
そんな彼の前にケイと言う名の医師が現れる。
彼は地下鉄駅で見知らぬ青年の死を予告し、的中させる。
彼には人の死を予見する能力があった。

人の死が予見できるというのも、何だかあんまり気持ちの良いものではない。
相手に教えてどうなるのだろうと言う気もする。
教えてもらって嬉しいと思う人と、そうでない人とがいるだろうが、それを見分けるのは難しい。

ケイを演じるのはジョン・マルコビッチ。
個人的な感覚かもしれないが、この人のねちっこいしゃべり方にどうもイライラ感がしてしまう。
何だか小バカにされているような気がして、それで「あなたは死にます」と言われたら、自分だったらブチ切れてしまうかもしれないと感じる。

自分の死期が近いとわかってしまったら、自分だったらどうするだろう。
そんな事を考えながら、ストーリーを追う。
ネイサンも妻と娘との元へ行き、和解しようとする。
そんな心が妻のクレアにも伝わる。

ハッピーエンドとは言えないエンディング。
いろいろと感じてくれというメッセージのようなものを感じる。
しかし、ジョン・マルコビッチへの反発からあまり面白いとは感じられなかった。
他の俳優だったら、もう少し印象が変わったかもしれない。
最初のシーンの映像の意味も、もう少しわかりやすくして欲しかった気もする。

人によってこの映画の評価は分かれるかもしれない。
良い映画だと思える要素もわかる。
ただ個人的にはちょっと合わなかったな、と言える映画である・・・


評価:★☆☆☆☆
    
     

    
posted by HH at 00:02 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2012年06月22日

白いリボン

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原題: Das weiße Band
2009年 オーストリア=フランス=イタリア=ドイツ
監督: ミヒャエル・ハネケ
出演: 
クリスティアン・フリーデル(The School Teacher)
レオニー・ベネシュ(Eva)
ウルトリッヒ・トゥクール(The Baron)
スザンネ・ローター(The Midwife)
ブルクハルト・クラウスナー(The Pastor)
ライナー・ボック(The Doctor)

<STORY>********************************************************************************************************
1913年夏、北ドイツのある村。
張られた針金が原因でドクターが落馬したのが発端だった。
翌日にはその針金が消え、小作人の妻が男爵家の納屋で起きた事故で命を落とす。
秋、収穫祭の日、母の死に納得できない息子が、男爵の畑のキャベツを切り刻む。
その夜、男爵家の長男ジギが行方不明になった。
一方、牧師は反抗的な自分の子供たちに“純心”の象徴である白いリボンを腕に巻かせる。
犯人がわからないまま、不信感が村に広がっていく。
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2009年カンヌ映画祭パルムドール受賞作品。
ヨーロッパの映画は、ハリウッドのそれとは一味違う。
さらにもまして、モノクロとくると映画全体を覆う暗い雰囲気がより一層際立つ感じがする。

物語の舞台は第一次大戦前のドイツ。
まだ男爵という爵位が残っており、その男爵を中心とした村に小作人たちが暮らしている。
そんな村で事件が起こる。
まずは村のドクターが、乗馬中に張られた針金に引っ掛かり落馬して重傷を負う。
明らかに意図的な事件だが、犯人はわからない。

続いて村の農婦が納屋の二階から落ちて死ぬ。
さらに男爵の息子ジギが、何者かに襲われて怪我をする。
そしてドクターを手伝う看護婦の知恵遅れの息子もまた、同じ目に会う。
そしてある晩、納屋が放火される。
すべて犯人は不明である。

村の有力者は男爵と牧師とドクター。
いずれも村で唯一の権威。
されど人格者というわけではなく、裏の顔を持つ。
男爵は夫婦関係に冷たい亀裂が入っており、牧師は家庭内でもあまりにも厳格過ぎ、ドクターは看護婦と不適切な関係を続けているといった有り様である。

村で起こる事件と3人の権力者を脇に置き、どうやら物語の語り部である教師の暮らしが描かれる。
男爵家のメイドに想いを寄せ、アプローチしていく。
まだ男女交際も不自由な時代を感じさせる二人の付き合いが、サイドストーリーとして語られる。

サラエボでオーストリア皇太子が暗殺される。
時代は戦争の足音がこだまする。
漠然と浮かび上がる犯人の姿。
心を病んでいると言える犯人だが、それを生み出しているのは明らかにその村である。

タイトルにある白いリボンとは、牧師が自分の子供につけさせたもの。
嘘をつく罰としてつけさせるのだが、どうやらそれは子供にとっては不名誉の証のようなものらしい。
ドイツらしい厳格な家庭で反抗は許されず、それがまた闇を生み出している事を連想させる。

ハリウッド映画のようなハッピーエンドとはほど遠く、重い雰囲気がのしかかってくる。事件の真相は結局わからないが、背景をあれこれと想像させてくれる。
そして大体の全体像もなんとなくわかる。
この村に特別に起こった事というよりも、大なり小なりどこにでも起こりうる事なのかもしれない。
観終わったあとに、考えさせてくれる映画である・・・

評価:★★☆☆☆
    
      

     
posted by HH at 22:19 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2012年06月09日

僕と妻の1778の物語

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2011年 日本
監督: 星護
出演: 草なぎ剛/竹内結子/谷原章介/吉瀬美智子/小日向文世/大杉漣

<STORY>********************************************************************************************************
SF作家・朔太郎と銀行に勤める妻、節子は、人も羨む仲睦まじい夫婦。
朔太郎は一旦小説を書き始めると声も聞こえないほど熱中し、新婚旅行も取りやめにしたほど。
しかし、そんな朔太郎を節子は愛し、優しく見守っていた。
ある日、節子は突然、激しい腹痛を訴え病院へ行くと、大腸ガンと診断される。
医者から告げられた余命は1年。
笑いに抗がん作用があると聞いた朔太郎は、節子を笑わせるために、1日1篇の短編小説を書き始める…。
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「癌で余命いくばくもない・・・」などというキャッチ・コピーを見ると、ついついわざとらしいお涙ちょうだいモノを想像して敬遠してしまう。
「食わず嫌い」と言えばその通り。
それでもなんとなく観てみようと思ったのは、主演が竹内結子だからという理由に他ならない。
いざ観てみると、あまりわざとらしいお涙ちょうだいモノにはなっていない。
やはり「食わず嫌い」はほどほどがいいかもしれない。

SF作家朔太郎と銀行に勤める妻節子は、高校時代から付き合って結婚したという仲の良い夫婦。
出来あがった作品は、真っ先に妻節子が目を通す。
新婚旅行に出かける時、玄関で小説のアイディアが閃いた朔太郎は、そこで小説を書き始め、ついに新婚旅行へ行かずに書き続けたというエピソードを持つ。
普通なら離婚モノなのに、笑って許してしまう妻節子は、まさに「妻の鏡」と羨ましく思う。
演じる竹内結子がそれを増幅しているところもある。

ところが、そんな夫婦に悪夢が襲いかかる。
妻節子が大腸がんに罹り、余命1年と宣告される。
苦悩する朔太郎。
生活のすべてを妻節子に負っていた彼には、してあげられる事がない。
考えた末、笑いが免疫力を高めるという医師の言葉を信じ、1日1話、楽しい話を書く事にする。
さっそく、第1話を原稿に書き始める・・・

朔太郎がいつも抱えているのは、ペンと原稿。
今時ならキーボードなのだろうが、時代を感じさせるシチュエーション。
それもそのはず、この話は眉村卓というSF作家の実話をもとにしているようだ。
事実には小説に勝る強さがある。
1日1話の小説を、タイトルにある通り1778話書き続けたエピソードは、それだけで胸が熱くなるものがある。

もう一人の主演が草なぎ剛。
この人は何となく独特のキャラを持っており、そういう役柄が良く合う。
「山のあなた 徳市の恋」は個人的には絶賛したい役柄だったが、ここでも妻に頼りきりの純情な夫という役柄がピッタリとハマっている。
竹内結子とのカップルは本当にほのぼのとしていて羨ましい。

懸念したお涙ちょうだい的な盛り上がりはなく、ごく自然にストーリーに入っていけた。
願わくば、1778も綴ったストーリーをもう少し紹介してもらいたかったところだ。
タイトルだけでも面白そうなものがあった。
毎日一日も欠かさず、書き綴ったという事実が胸に温かいモノを呼び込む。
ストーリー的にも、キャスト的にも満足できた映画である・・・


評価:★★☆☆☆
      
      
posted by HH at 23:22 | 東京 ☔ | Comment(0) | TrackBack(1) | ドラマ

2012年05月20日

ノルウェーの森

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2010年 日本
監督: トラン・アン・ユン
原作: 村上春樹
出演: 松山ケンイチ/菊地凛子/水原希子/高良健吾/霧島れいか/玉山鉄二

<STORY>********************************************************************************************************
親友・キズキを自殺で失ったワタナべは、東京で大学生活を送り始める。
ある日、ワタナベは偶然にキズキの恋人だった直子と出会い、毎週直子と東京の街を散歩するようになる。
しかし、直子の20歳の誕生日、精神的に不安定になった直子と夜を共にする。
それ以来、ワタナベは直子と連絡がとれなくなってしまう。
さらに喪失感が深まり心を病んだ直子は、京都の療養施設に入所していたのだ。
直子に会いたくても会えない状況の中で、ワタナベは大学で出会った不思議な魅力を持つ女の子・緑にも惹かれていく。
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村上春樹原作小説の映画化。
機会があれば一度読んでみようと思いながら、ずるずると月日を過ごし、先に映画を観る事になった。
若者のあてどなく揺れ動く心が、共感を持って伝わってくる気がする物語である。

舞台は1960年代。
高校生のワタナベは、親友キズキとその幼馴染みであり恋人でもある直子と楽しい日々を過ごしている。
ところが、キズキが突然自殺してしまう。

東京で大学生活を送り始めたワタナベ。
周囲は学園紛争で騒然としているが、ワタナベは一人読書の世界に没頭している。
そして偶然直子と再会する。
直子はキズキの自殺によって心を病んでいたが、ワタナベとの再会で少しずつ回復に向かう。
しかし20歳の誕生日、初めてワタナベと結ばれた夜、何気ないワタナベの一言で直子はワタナベの下を去ってしまう。

寮で一緒のプレイボーイの先輩とともに女の子と遊んだり、緑という女の子と知り合い親しくなっていき、心の病から療養施設に入った直子にも会いに行き、ワタナベの生活は女の子が常に入れ替わり占めていく。
ただの女好きに見えるが、ワタナベはそれぞれと真剣に生きている感じがする。
たぶん、そうなのであろう。
そんな若者の心理がよく伝わってくる。

主演は松山ケンイチ。
「カムイ外伝」のカムイの印象が残っているが、ここでは物静かな青年として登場。
役柄とイメージはよくあっている感じを受けた。
一方相手役は菊地凛子。
「バベル」で話題となった女優さんだが、この2作を観てみるとどことなく心に影を持った役柄のイメージが出来てしまいそうな気がする。
個人的にはこれがデビュー作となる水原希子に興味を引かれた。
今後は本格的にスクリーンに登場するのであろうか?

諸行無常、万物は流転する。
ワタナベを取り巻く環境も、女の子たちとの関係も、ワタナベの意思とは無関係に否応なしに変化していく。
揺れ動く若者の心。
誰もがいつか通ってくる道。

あてどない未来。
目の前の道はどこに続いていくのか。
映画の舞台となった60年代後半から、半世紀近くの月日が経過している。
その後、ワタナベはどんな人生を送ったのだろう。
ちょっと想像してみたくなった映画である・・・


評価:★★☆☆☆
    
     

      
posted by HH at 22:35 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ