2012年08月18日

ブルー・バレンタイン

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原題: Blue Valentine
2010年 アメリカ
監督: デレク・シアンフランス
出演: ライアン・ゴズリング(Dean)/ミシェル・ウィリアムズ(Cindy)/フェイス・ワディッカ(Frankie)/マイク・ヴォーゲル(Bobby)

<STORY>********************************************************************************************************
ディーンとシンディ夫婦は、ひとり娘のフランキーと3人暮らし。
病院で忙しく働くシンディは、猛勉強の末、看護師の資格を取った努力家。
一方のディーンは、朝からビールを飲みながらペンキ塗りの仕事をしている。
2人はお互いに対して不満を持っているが、その話になると必ず喧嘩になってしまう。
そんなある日、可愛がっていた愛犬が事故死する。
その事を娘に気付かれないようにと、シンディの父親の家に1日預ける事にする。
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原題をそのまま邦題にしたこの映画。
原題には何か意味がありそうなのだが、残念ながらよくわからない。
物語は一組の夫婦の姿を描いていく。
それも出会って結婚に至るまでの幸せな過程と、すれ違い、疲れ果て、どうしようもなくなって別れていく過程。
時間を隔て、同時進行形で描いていく事で、ある意味“切なさ”を感じさせる映画となっている。

冒頭、飼い犬がいなくなる。
娘のフランキーはパパを起こしに行く。
優しく話を聞き、ママを起こす。
イラつきながら、簡単な朝食を二人に食べさせ仕事に出かけていくママ、シンディ。
のんびりと見送るパパ、ディーン。
思えばもう夫婦のすれ違いは表れている。

結局愛犬は車に轢かれて死んでおり、娘に気付かれないように埋葬する。
なんとなくギクシャクした夫婦関係を修復しようと、夫婦二人の時間を提案するディーンだが、向かった先はラブホテル。
途中のスーパーでボビーに会ったと報告するシンディだが、それに対して不機嫌になるディーン。

現在のディーンとシンディの姿を一通り見せられたあとで、物語は二人の結婚前にスリップする。
ディーンは髪も増え、若々しい。
シンディもスマートで美人。
大学に通うシンディはイケメンのボビーと付き合っており、祖母の老人ホームで偶然ディーンに出会う。

向学心を持ち医学を学ぶシンディと、高校中退でアルバイトで生計を立てているディーン。
付き合うならまだしも、結婚となるとどうだろうと良識ある者なら考えてしまうが、ある事情もあって二人は惹かれ合い結婚する。
その過程は純真で、“愛こそすべて”。

しかし、結婚は限りなき“現実の世界”。
シンディの両親もそうだし、やがてシンディ自身も限りなき“現実の世界”で愛が薄れていく事になる。
されどいまだ“愛こそすべて”の世界に生きるディーン。

過去と現在が交互に描かれる。
そこから感じるのは、やっぱりそうなってしまうのかという現実。
現実を経験し、悟っている経験者=親はだからこそ娘の結婚相手に敏感になる。
初めて会ったディーンに対し、無言のうちに両親から発せられる反対のオーラはそれをよく物語っている。

ディーンは家族を愛し、家族第一の姿勢を崩さない。
しかしそれで十分と考えてしまっている。
妻には妻の現実の生活があり、それは家事であったり仕事であったり娘の世話だったりする。
そうした雑事には目を向けず、朝からビールを飲んでそこそこの仕事をして、娘とだけ戯れる。
その危うさにディーンは気付かない。
何だか身につまされる思いがする。

愛が崩壊していく過程は、正義が滅びる姿にも通じる。
理想通りいかない現実を見せつけられているようだ。
それは多くの夫婦に通じる事なのかもしれない。
互いにすれ違うさまはひょっとしたら己にも当てはまるかもしれない、とふと思う。
ディーンの後ろ姿を他人事と思わないようにした方がいいかもしれない。
そんな風な事を考えさせられた映画である・・・


評価:★★☆☆☆
      




    
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2012年08月14日

ウォール・ストリート

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原題: Wall Street: Money Never Sleeps
2010年 アメリカ
監督: オリヴァー・ストーン
出演: マイケル・ダグラス(Gordon Gekko)/シャイア・ラブーフ(Jake Moore)/ジョシュ・ブローリン(Bretton James)/キャリー・マリガン(Winnie Gekko)/スーザン・サランドン(Jake's Mother)/フランク・ランジェラ(Louis Zabel)/チャーリー・シーン(Bud Fox)

<STORY>********************************************************************************************************
2008年のニューヨーク。
投資銀行に勤めるジェイコブは順風満帆の人生を送っていた。
結婚を前提に付き合っている女性ウィニーとの交際も順調だった。
ところが、勤める投資銀行が急激な業績悪化により株価が暴落、突然破綻し、ジェイコブ自身も資産を失ってしまう。
それが、金融業界の黒幕ブレトンの陰謀だと知ったジェイコブは、刑務所を出た元大物投資家のゲッコーに接近する。
そのゲッコーは、ウィニーの実の父親でもあった。
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記録によれば、映画「ウォール街」を映画館に観に行ったのは1988年4月18日の事だ。
それからなんと20年経っての続編。
こういう映画作りっていうのもいいものだと思う。

当時ウォール街を肩で風を切って闊歩していたゴードン・ゲッコー。
されどインサイダーで捕まって8年のムショ暮らし。
出所の時に返されたバカでかい携帯電話が時間の経過を物語る。
本当はゲッコーほどの大物なら出所してからすぐ動きそうなものだが、映画化を待って大人しくしていたようだ。

現代、若手のホープ、ジェイコブは投資銀行に勤めている。
社長のルーにも気に入られていて、恋人のウィニーとも仲睦まじい。
そんなある日、ルーから巨額のボーナスを受け取る。
なんと145万ドルだから、さすが桁が違う。
会社は赤字だと言うのになぜだと問うも、浮かない顔のルーははぐらかす。
そしてやがて会社は倒産し、ルーは自らの命を断つ。

出所後、出版に講演にと活躍しているゴードン・ゲッコーは、実はウィニーの父親。
ウィニーにプロポーズしたジェイコブは、それを口実にゲッコーに近づく。
刑務所入りし、その後の長男の死もあって、実の娘から絶縁されているゲッコー。
娘との復縁を望み、若きジェイコブにアドバイスをし始める。

ゲッコーの逮捕にも、ルーの自殺にも金融業界の黒幕ブレトンが絡んでいるとわかる。
そんなブレトンの下で働き始めるジェイコブ。
目端が効いて、そつがないし、チャンスと見れば畳みこむ。
こういう人たちがウォール・ストリートを支配しているのだろう。
倒産する投資会社は何となくリーマン・ブラザーズを彷彿とさせるし、サブプライム・ローン問題に大騒ぎになった当時の裏側を見ているような感覚になる。
映画は虚構とは言え、ある程度の真実は見せてくれると思う。

生き馬の目を抜くようなウォール・ストリートの世界。
正直言ってストーリーについていくのも大変。
登場人物たちが何を意図して、何をやろうとしているのか、ミソは何なのか、よくわからない。
自分もそんなに金融の世界に疎いとも思えないのだが・・・

今やすっかり売れっ子のシャイア・ラブーフが、スーツを着こなして街を闊歩する。
さすが役者、「トランス・フォーマー」シリーズや、「イーグル・アイ」のように翻弄されて右往左往したりせずにしっかりと行動している。
マイケル・ダグラスは白髪になって一層の貫禄だし、前作でも登場したチャーリー・シーンが同じ役で登場したのもお愛想なのだろう。

ストーリーは少々わかりにくかったが、虚構の世界の雰囲気はよくわかるし、「大事なものって結局は」というオチもそれなりの落とし所だし、いろいろな切り口で観ると面白い映画だと思う・・・


評価:★★☆☆☆





    
   
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2012年08月11日

セラフィーヌの庭

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原題: Séraphine
2008年 フランス=ベルギー=ドイツ
監督: マーティン・プロボスト
出演: ヨランド・モロー(Seraphine Louis)/ウルトリッヒ・トゥクール(Wilhelm Uhde)/アンヌ・ベネント(Anne-Marie Uhde)/ジュヌヴィエーヴ・ムニク(Mme Duphot)

<STORY>********************************************************************************************************
1912年、フランス・パリ郊外のサンリス。
貧しく孤独な女性セラフィーヌの日々を支えていたのは、草木との対話や歌うこと、そしてなによりも絵を描くことだった。
ある日、彼女はアンリ・ルソーを発見し、ピカソをいち早く評価したドイツ人画商ヴィルヘルム・ウーデに見出され、その後、彼の援助のもと、個展を開くことを夢見るようになる。
そんな中、第一次世界大戦が起こり……。
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実在の女流画家セラフィーヌ・ルイを描いた作品。
時代は20世紀初頭。
パリ郊外のサンリス。
孤独なセラフィーヌは家政婦をして暮らしを立て、絵を描く事を楽しみとしている。

と言っても家政婦をしてのわずかな給金では絵具も買えず、すべて身の周りのものをうまく加工して色を作り出し、どうしても作れない白の絵の具だけを買うといった様子。
もちろんキャンバスなども買えるわけもなく、木の板に描く有り様。
そんなある日、ドイツからやってきた画商のウーデの世話をする事になる。

偶然見つけた絵に心を動かされたウーデ。
こうして画商ウーデとセラフィーヌの付き合いが始る。
しかし1914年に第1次世界大戦が勃発。
ドイツ人のウーデはフランスを離れる。
やがて戦後、フランスを訪れたウーデは、セラフィーヌかせ変わらず絵を描き続けていて、腕も上がっている事を知る。
そしてスポンサーとなり、個展の計画も立てるのだった。

絵画の世界にはそれほど詳しくはないから、セラフィーヌ・ルイという画家の事もこの映画で初めて知った。
貧しいがゆえに絵具も手作り。
今の感覚から言ったら驚きだ。
当時からしたら高価な絵の具を買える人は限られており、ほとんどの人は絵とは無縁かあるいはこうした工夫を凝らしていたのかもしれない。
そしてこうした情熱が、長い絵画の歴史を支えてきたのかもしれないと思う。

天才と聞違いは紙一重とはよく言われる。
主人公のセラフィーヌも映画では奇行が見られる。
そして大恐慌の影響もあって、楽しみにしていた個展が開けないとわかると精神に異常をきたしていく。
やはりセラフィーヌもそうした部分があったのかもしれない。

映画としては大きな盛り上がりもなく、淡々と進んでいく。
見方によっては退屈でもあるかもしれない。
しかしながら、見方によってはフランスの郊外をバックに味わいのある映画にも映るだろう。
こういう画家がいた、という事実を知るだけでも良い映画であるかもしれない・・・


評価:★★☆☆☆




     
   
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2012年07月31日

天と地

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原題: Heaven & Earth
1993年 アメリカ
監督: オリヴァー・ストーン
出演: ヘップ・ティー・リー(Le Ly)/トミー・リー・ジョーンズ(Major Steve Butler)/ジョアン・チェン(Mama)/ハイン・S・ニョール(Lely's father)/デビー・レイノルズ(Abigail)

<STORY>********************************************************************************************************
1949年、フランス支配下のインドシナの農村で、小作農民のプング夫婦に女の子が生まれた。
未熟児のゆえ間引きを勧められたが、母親のママ・プングはこの子にも生きる権利があると断り、レ・リーと名付けて慈しんで育てた。
レ・リーが10代になったころ、ヴェトナム戦争が勃発。
2人の兄はヴェトコンに身を投じて北へ行き、村に残ったレ・リーもヴェトコンのスパイとして働く。
だが、南ヴェトナム軍に捕らえられたレ・リーは過酷な拷問を受ける。
なんとか兵士を買収して村に戻った彼女に、村人は仲間を売った二重スパイの烙印を押す。
身も心も引き裂かれた彼女は、ママと一緒にサイゴンへ出る・・・
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オリバー・ストーン監督と言えば、ベトナム戦争を題材とした代表作「プラトーン」が真っ先に思い浮かぶ。
これはそんなオリバー・ストーン監督のベトナムものという事で嫌が上にも興味が湧きたつ映画である。
映画自体は1993年制作という事で、もう"ビンテージ"モノであるが、個人的には何とこれまで観る機会に恵まれなかった“まだ見ぬ強豪”とでも言える作品だ。

物語は、実在の女性レ・リーの自伝。
レ・リーの家族は、フランス軍に家を焼かれ、続くアメリカとの戦争では村にも戦火がおよび、さらにやって来た北ベトナム軍に二人の兄は身を投じと、歴史の運命に翻弄される。

レ・リー自身もゲリラと疑われて南ベトナム側から拷問を受ける。
なけなしの金で役人を買収して家族に助け出されるも、逆に釈放された事でベトコンからは裏切り者と烙印を押され、レイプまでされる。
母親と二人サイゴンへ働きにでるも、住み込んだ家の主人によりレ・リーは妊娠する。
すると夫人の迫害で屋敷を追い出され、身重の体で世間に放り出され、必死に食いつなぐ事になる。
やがてあるアメリカ兵スティーブと知り合い、結婚。
米軍の撤退とともに、アメリカにわたる。

まさに波間に漂う小舟の如く、運命に翻弄される一人の女性。
女たちは、生き抜くためには体も売る。
身重のレ・リーを養うために娼婦をする姉。
訪ねてきた父親のいるところで男の相手をする。
父にとっても姉にとっても、レ・リーにとっても地獄のような環境だ。

そんなベトナムでの生活と対照的なアメリカでの生活。
画面も自然と明るさを増す。
アメリカの豊かさがこれでもかというくらいに強調される。
余った食べ物も平気で捨てられる。
ベトナムでは、レ・リーはゴミあさりすらしていたのに、である。

人間は贅沢になれていくもの。
必死で生きる必要がなくなれば、不平不満も顔を出す。
地獄から救い出されたレ・リーも、次第にスティーブとの仲は悪くなっていく・・・
それもやはり人間なのであろう。

米兵スティーブを演じるのは、トミー・リー・ジョーンズ。
最近はボスのCMや「メン・イン・ブラック」などでも渋いおじさんというイメージで通っているが、さすがに20年前のこの映画では若くておまけに痩せている。
レ・リー役のヘップ・ティー・リーと比べると顔が異様に大きく感じられる。

もはやベトナム戦争もすっかり過去の傷跡。
今ではイラクであるが、戦争をし続ける国アメリカにとっては、連続する歴史の一ページなのかもしれない。
それにしても過酷な運命を生き抜いたレ・リー。
実話の重みがヒシヒシと伝わってくる。
戦争のない国に生まれて育った幸せを改めて実感させられる。

20年経ってもまったく色褪せていない、オリバー・ストーン監督のこれも代表作の一つとして記憶に留めたい映画である・・・
 

評価:★★★☆☆
    

     
    
posted by HH at 23:42 | 東京 ☀ | Comment(1) | TrackBack(0) | ドラマ

2012年07月29日

クレアモントホテル

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原題: Mrs. Palfrey at the Claremont
2005年 アメリカ・イギリス
監督: ダン・アイアランド
出演: ジョーン・プロウライト(Mrs. Palfrey)/ルパート・フレンド(Ludovic Meyer)/アンナ・マッシー(Mrs. Arbuthnot)/ロバート・ラング(Mr. Osborne)/ゾーイ・タッパー(Gwendolyn)

<STORY>********************************************************************************************************
最愛の夫に先立たれた老婦人サラ・パルフリーがロンドンのクレアモントホテルにやってくる。
滞在客らの好奇の目に居心地の悪さを感じつつも、妻として母として生きてきた人生に区切りを付け、心機一転自立して生きようという決意は揺るがなかった。
ある日、出先で転んでしまったパルフリー夫人は作家志望の青年ルードに助けられ、お礼に夕食に招待する。
ところが、ホテルの客たちはルードを夫人の孫だと誤解してしまう・・・
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主人公の老婦人サラ・パルフリーがロンドンにあるクレアモントホテルにやってくる。
事前に調べたようであるが、実際に到着してみると、想像していたものとだいぶ違って戸惑うサラ。
部屋は狭く眺めも悪い。
夕食も正装ではなく、普段着だ。
滞在客はみんな一癖も二癖もありそう。

ホテルに長期滞在するという事にあまり馴染みがないせいか、ストーリーがしっくりこないところがあるのは事実。
登場人物たちはみなクレアモントホテルの長期滞在客。
サラも次第に他の客たちと打ち解けて行く。

ある日外出した際に、サラは転倒してしまう。
手助けしてくれたのが、イケメンの若者ルード。
サラとルードの間で、へんな名前同士だという会話がなされるが、日本人にはピンとこない。

これを機に、孤独な二人は親しくなっていく。
サラには娘と孫がいるが、どうもサラとは考え方がだいぶ違う。
ルードも母親とはうまく行っていない。
そんな二人が意気投合してしまう。
こうしたありがちな家族関係も、映画の一部として背景で語られている。

人生も残り時間が限られてきた人たち同士の交流。
そして未来のある若者と、かつて謳歌していた喜びを思い出すサラ。
華やかな内容とは程遠いものの、しみじみとした味わいが伝わってくる。
人生をどう過ごすかという事は、本当に大切な事だ。
相手の事を一方的に思っているだけではうまくいかない。
他人に囲まれていながら、ぼろいホテルでも幸せに毎日を過ごすサラ。
いろいろと考えさせてくれ、ちょっと心が温かくなる映画である。


評価:★★☆☆☆




     
posted by HH at 22:41 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ