2012年01月07日

ザ・ロード

ザ・ロード.jpg


原題: The Road
2009年 アメリカ
監督: ジョン・ヒルコート
出演: ヴィゴ・モーテンセン/コディ・スミット=マクフィー/ロバート・デュヴァル/ガイ・ピアース/シャーリーズ・セロン

<STORY>********************************************************************************************************
文明が崩壊して10年あまり。
空を厚い雲が覆い、寒冷化が進んだ世界には生物の姿はなく、食料もわずかしかない。
生き残った人々のなかには、人を狩り人肉を食らう集団もいた。
そんな大地を、ひたすら南を目指して歩く親子がいた。
道徳や理性を失った世界で、父親は息子に正しく生きることを教える。
自分たちが人類最後の「希望の火」になるかもしれないと。
人間狩りの集団におびえながらも、二人は海にたどり着く…。
********************************************************************************************************

原作はピューリッツァー賞受賞の小説との事。
核戦争か天変地異か何かのウィルスなのかはわからないが、文明が崩壊したあとの世界。
ある父と子が南を目指して歩く。
食べるものもなく、動物も植物も目にする事もない。
そんな世界は毎日生きる事だけが為すべき事。

食べるモノがなくなると人間は理性も失い、やがて共食いを始める集団が出てくる。
親子は食べ物を確保して生き残る事だけではなく、こうした「人肉食い」の集団からも逃れなければならない。
厄介なものはやはり人間というわけである。

男の妻は、そんな世界に絶望して自ら命を断つ。
いずれは肉食集団につかまり、レイプされ殺されて食べられるのなら、そんな未来を迎える前に命を絶つという決断を下したのである。
それ以来、男は一人で息子を育てている。
「あの子が寒くないように南へ行って」という妻の言葉に従い、南を目指す。

映画はそんな親子の姿を追う。
観ながらいろいろと考えさせられる。
妻の決断を弱いモノと片付ける事はできない。
親子で生き残って、その先に何があるというのだろう。
自分達が老いて死んだあと、息子はどうなるのだろう。
ただ毎日生き残る事だけの人生にどんな価値があるのだろう。
毎日本能のままに食べるモノを探してうろつく姿は、残念ながら野良犬と変わらない。

父親は、それまでの経験でとにかく用心深い。
途中で出会ったよぼよぼの老人にすら、警戒を解かない。
それに対して、純粋に育った息子は寛容だ。
食べ物を与えようとし、手をつないで共に歩こうとする。
息子の寛容性が一服の清涼剤のようだ。
しかし、寝ている間に食料を持って逃げられるかもしれないという可能性は考えないといけない。
文明は、刑罰というタガがあってはじめて成り立っているのかもしれない。

名もなき父親を演じるのは、ヴィゴ・モーテンセン。
そう言えば、クローネンバーグ監督の「ヒストリー・オブ・バイオレンス」でも家族を守る父親として登場した。
頼るべきもののない中で、家族を守る父という形では相通じるものがある。
登場人物の少ない映画なわりには、妻としてシャーリーズ・セロン、途中で出会う老人はロバート・デュバル、最後に表れる男がガイ・ピアースとそれなりの役者が揃っている。

ストーリーを楽しむという映画ではなく、観て考えるという映画だ。
そこがピューリッツァー賞の所以なのかもしれない。
人として生きるという意味を考えさせられる映画である。


評価:★★☆☆☆
                    
                        
posted by HH at 21:55 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年11月27日

FLOWERSフラワーズ

Flowers.jpg

2010年 日本
監督: 小泉徳宏
出演: 蒼井優(凛)/鈴木京香(奏)/竹内結子(薫)/田中麗奈(翠)/仲間由紀恵(慧)/広末涼子(佳)

<STORY>********************************************************************************************************
2009年(平成21年)、奏(かな)はピアニストの夢にも行き詰まり、長年付き合った恋人とも別れ、意気消沈していた。
お腹の中には子どもがいたのだ。
祖母の告別式であった妹・佳(けい)は既に息子を産み、幸せそうな生活を送っていた…。
1936年(昭和11年)奏の祖母にあたる凛は会ったことのない男性と結婚すべきかどうか悩んでいた。
時代は巡り、物語は1960〜1970年代の凛の三人の娘、薫、翠、慧の恋愛・結婚の軌跡を追う。
********************************************************************************************************

クレジットの出演女優のリストを観ているだけで、なんと豪華なと思ってしまった。
よくぞ集めたものである。
資生堂が、自社製品「TSUBAKI」のCMに出ていた女優さんを集め、制作・特別協賛したというが、こうした貢献でいい映画が出来あがるなら好ましいと思う。

物語はある家族の年代記。
トップは昭和11年の凛。
女学校を出た凛は親の決めた結婚を明日に控えて、心は揺れ動く。
父と娘のやり取りは、いかにも古き時代のそれ。
挙句に式の当日、凛は花嫁衣装のまま家を飛び出してしまう。

続いて昭和40年代の3姉妹。
凛の長女薫は、亡き夫との思い出の新婚旅行の地を一人訪れる。
二女の翠は、当時としては珍しいキャリアウーマン。
セクハラや「女のくせに」という風当たりを受けつつ、恋人にプロポーズされて思い惑う。
三女の慧は二人目の子供を授かるが、もともと体が弱く医者からは出産を諦めるようにと言われる。

そして現代の姉妹。
慧の長女奏は、ピアニストの夢は遠ざかり、お腹の中には分かれた恋人の子供を抱え思い迷う。
二女の佳は、夫と子供と幸せそうに過ごしている。

悩みを抱えた3世代の女性達。
時代を背景にそれぞれの悩みと向き合う。
当人たちのとっては大きな悩みも、時代を経て世代が変わると、その流れの中に埋もれていってしまう。
凛の葬儀に集まった人たちは、凛の結婚式での顛末をもはや誰も記憶していないだろう。
その中で一人奏の抱える苦悩も、やがては同じように埋もれていくのだろう。

それぞれオムニバス形式で描かれるが、昭和40年代のシーンは、とくに映像が懐かしい感じがした。
ファッションやオフィスの様子や車などが、丁寧に再現されていて、ストーリーと別のところで感心。
高度成長期も遠い過去になりつつある。

親と子とのシーンでは、少しうるうるする場面もあり、全体的には好印象。
欲を言えば各シーンがもう少し長ければ、というところだ。
現代のシーンでは、凛の葬儀が一つの舞台となっている。
そこにいるはずの薫と翠も描いて欲しかったと思うのだ。

奏と佳もやがて次の世代へとバトンを渡す。
こうして時代は流れていく。
個人的にはこの手のストーリーが好きな事もあって、大手企業が金に余せて有名女優を並べて終わったというだけの映画にならなかったところが良かったところだろう。
観る価値の十分ある映画である。


評価:★★★☆☆

                      

    
     
posted by HH at 23:58 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

レクイエム

レクイエム.jpg


原題: Five Minutes of Heaven
2009年 イギリス・アイルランド
監督: オリヴァー・ヒルシュビーゲル
出演: リーアム・ニーソン/ジェームズ・ネスビット/アナマリア・マリンカ/

<STORY>********************************************************************************************************
爆弾テロや殺人が日常茶飯事となっていた1975年の北アイルランドで、アルスター義勇軍のメンバーである17歳のアリスター・リトルは、報復テロとしてカトリック教徒である19歳のジム・グリフィンを殺害する。
しかし、その現場をジムの8歳になる弟ジョーに目撃される。
33年後、加害者であるアリスターと被害者の弟ジョーがテレビ番組の企画で顔を合わせることになる。
********************************************************************************************************

アイルランド紛争も世界の中では大きな紛争の一つであった。
そのアイルランド紛争まっ最中の1975年。
アルスター義勇軍のメンバーであったアリスターは、自分達の仲間の受けた報復として、相手の男を射殺する。
その男は引っ越す予定であり、あえて殺害する事もなかったのであるが、仲間に対する虚栄心から計画を実行する。

そして現場では一部始終を相手の弟に目撃される。
弟のジョーは、母親からは何もしなかった事を責められ続け、それが心の傷となって残る。
33年後、テレビの企画で、ジョーはすでに服役して釈放されていたアリスターとの対談番組に出演する事になる。

映画は若き日のアリスターが殺害を実行するまでと、33年後にアリスターと被害者の弟ジョーとの再開の場面とに二分される。
前半部分は映画の導入部分だ。
激化する紛争。
その中で殺人をも厭わない抗争。
若き日のアリスターが一人の男を射殺するまで。

そして後半。
33年後にアリスターと殺された男の弟とが出会う。
どのような出会いとなるのかが興味の焦点。
しかしながら、どうも肝心のこの部分が感情移入できない。
33年のブランクを飛び越え過ぎなのである。

その33年の間にどんな人生があったのか。
母親に兄の死の責任を押し付けられ、それがトラウマとなったジョー。
それはよくわかるのであるが、アリスターの方はよくわからない。
わからないまま、二人の出会いを見ていても心に残るものはない。
90分と時間が短いのだから、もう少し丁寧に二人の背景・心情を描いていっていたら、あるいはもう少し心に残るものになったかもしれない。

なんだか中途半端な映画である・・・


評価:★☆☆☆☆


                    
posted by HH at 00:55 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年11月20日

オーケストラ

オーケストラ.jpg


原題: Le Concert
2009年 フランス
監督: ラデュ・ミヘイレアニュ
出演: アレクセイ・グシコフ/メラニー・ロラン/フランソワ・ベルレアン/ミュウ・ミュウ/ドミトリー・ナザロフ

<STORY>********************************************************************************************************
かつてボリショイ交響楽団の天才指揮者だったアンドレは、今はさえない劇場清掃員として働いている。
ある日パリのシャトレ劇場から、出演できなくなった楽団の代わりの出演依頼FAXを偶然目にした彼に、とんでもないアイデアが閃いた。
クビになったかつての楽団仲間を集めて偽のオーケストラを結成し、ボリショイ交響楽団代表としてパリに乗り込もうというのだ。
早速元チェロ奏者のグロスマンに話を持ちかける……。
********************************************************************************************************

オーケストラが演奏練習する様子をうっとりと眺めるアンドレ。
実は劇場の清掃員。
サボっている姿を支配人に咎められる。
そんな彼は、支配人の部屋を掃除している時に、パリのシャトレ劇場からの演奏依頼のFAXを見つけてしまう。
閃いたアイディア。

さっそく友人のグスマンにアイディアを持ちかける。
俺たちで代わりに演奏に行こうと。
実はブレジネフ時代に、仲間のユダヤ人バイオリニストをかばって、アンドレはKGBからタクトを取り上げられたのだった。

30年のブランクも気にせず、「計画」に突き進むアンドレ。
一緒にやっていた頃から30歳年を取ったメンバーを集める。
一難去ってまた一難の連続なのだが、とうとう計画が動き出す。
さらにパリの一流バイオリニストとの共演まで、話が進んでしまう。
荒唐無稽な計画とドタバタ風の展開に、すっかりコメディ映画かと思う。

パリで共演するバイオリニストは美形のアンヌ・マリー・ジャケ。
自身アンドレのファンと好意的だが、にわか集めの楽団はパリに着いた途端、勝手な行動をして、リハーサルにも集まらない。
土壇場で破談の危機が迫る。

一方で、アンドレの不遇の過去が次第次第に明らかになる。
そして、アンヌ・マリーとの因縁。
チャイコフスキーの「バイオリン協奏曲」の演奏に執念を燃やすアンドレ。
物語の展開と明かされる過去とが対比されて進む。

ドタバタ風の喜劇は、やがてシリアスな展開へと移行する。
ブランクのある劇団が、自らの正体を偽り、ろくにリハーサルもせずに本番に臨む。
クラッシックの演奏を聞いても、その良し悪しを聞きわける耳などない。
しかしながら、俳優陣たちの表情でなんとなくそれがわかる。
そうした演出が、クラッシック音楽に疎い身にはありがたい。

アンヌ・マリーのソロに感化された劇団員たちが、30年の時を越えて本物の演奏をする。
その感動が、チャイコフスキーとともに伝わってくる。
コメディ風の映画として観ていたのに、ラストのチャイコフスキーの演奏とバックに流れる映像は、ストーリーを引き締め、心地良い感動をもたらす。

いい映画じゃないかと思わず独り言が漏れた映画である・・・


評価:★★★☆☆
                 


  
    
    
posted by HH at 23:03 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年11月14日

映画版ねこタクシー

ねこタクシー.jpg

2010年 日本
監督: 亀井亨 
出演: カンニング竹山/鶴田真由/山下リオ/芦名星/室井滋

<STORY>********************************************************************************************************
間瀬垣勤は、人付き合いが苦手なタクシー運転手。
日の当たらない公園で弁当を食べるのが唯一の楽しみだった。
そんな間瀬垣を、じっと見つめる猫がいた。
まるでおじさんのようなふてぶてしい目つきをし、首輪には「御子神」と書かれている。
猫の何とも言えない貫禄に魅了された間瀬垣は、タクシーに猫を乗せ、猫カフェならぬ、猫タクシーを思いつく・・・
********************************************************************************************************

タイトルに「映画版」とあるのを見ると、テレビドラマか何かの映画化版なのかと思ったら、その通りだった。
テレビドラマの方は観ていないし、と言うよりやっていたのも知らなかったほどである。
したがって、テレビドラマ版との比較はできないが、映画は単独でも十分楽しめるのは確かである。

主人公は人付き合いの苦手なタクシー運転手間瀬垣。
今日もカーナビの操作がうまくいかず、客からきちんと料金をいただけない。
営業所でも成績は最下位。
給料も当然少ないのだが、それでも何とか生活していられるのは、妻が教師をしているからのようである。

少ない小遣いを節約するため、ランチは公園で弁当を食べる。
ある時、その公園で1匹の猫と出会う。
「御子神」と名札を付けたその猫と、コムギと言う名の猫を猫屋敷に住む老婆からもらい受けた間瀬垣は、家に猫を連れて帰る。
そして、タクシーに乗せて仕事に取り掛かる・・・

主演はカンニング竹山。
あまりよく知らないが、コメディアンらしい。
これが気の弱い主人公を好演。
猫がきっかけで、口もきいてくれなかった娘が、猫を買うのに反対する妻と対立した時に味方になってくれる。
最下位だった営業成績が、ぐんぐん伸びる。
いつの間にか、間瀬垣の人生に追い風が吹いてくる。

しかし、物語はそう簡単にはいかない。
役所からクレームがつき、猫を乗せる事ができなくなる。
よくありがちなパターンだ。
そこから孤軍奮闘する間瀬垣。

妻を演じるのは鶴田真由なのであるが、これが実に良い奥さんなのである。
初めこそ猫を買うのを反対するものの、その後はしっかりと旦那さんを支える。
どうしてこんな冴えない男が、こんな奥さんと結婚できたのだろう。
いくらドラマでも納得がいかないところがある。

猫を巡る物語は、間瀬垣にも大きな転機をもたらす事になる。
気弱な男が少しずつ、殻を破っていく物語は観ていて心地良い。
映画版ゆえダイジェストになったところもある感じがするが、それはそれで気にはならない。
ちょっとほのぼのとしていて、それでいて楽しめる映画である。


評価:★★☆☆☆
             
  



     
posted by HH at 22:59 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ