2011年06月30日

おとうと

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2010年 日本
監督: 山田洋次
出演: 吉永小百合/笑福亭鶴瓶/蒼井優/小林稔侍/加瀬亮

<STORY>********************************************************************************************************
早くに夫を亡くした吟子は、東京の私鉄沿線の一角で、小さな薬局を女手一つで切り盛りしながら娘の小春を育て、義母の絹代と3人で暮らしていた。
小春とエリート医師の結婚が決まり、一家は幸せの絶頂にあった。
そして結婚式当日。
和やかに始まった披露宴に、にわかに暗雲が―吟子の夫の13回忌で大暴れしたのを最後に、音信不通になっていた吟子の弟・鉄郎が紋付き袴で現れたのだ・・・
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しっかり者の姉とダメな弟。
タイトルの通り、そんな兄弟愛を描いた山田洋次監督の人情ドラマである。

主演は吉永小百合。
夫を亡くし、一人薬局を切り盛りしながら義母と一人娘と暮らしている。
一人娘の小春は、薬剤師になって店を手伝う一方で、医師との結婚が決まり幸せの絶頂期にある。
そんな小春の結婚式に、音信普通だった“叔父”が突然やってくる。

酒癖が悪いため、「飲まない」と約束していたにも関わらず、飲んで酔って醜態をさらす。
旅芸人として全国を回り、たまに帰ってくれば、常識外れで空気の読めない立ち居振る舞いで一族の鼻つまみ者。
そんな叔父を笑福亭鶴瓶が自然に演じる。

結婚式はぶち壊すし、借金は押し付けてくる。
ダメダメ人間のおとうと・鉄郎だが、姉吟子は事あるごとに庇う。
吟子の一人娘小春のエピソードと吟子と鉄郎のエピソードが人情味溢れて綴られていく。

どうして吟子はこんなにも鉄郎をかばうのだろうか。
単に吉永小百合のキャラクターに合わせたシナリオなのか。
観ているとそんな風に思うかもしれない。
しかし、姉弟の組み合わせを持つ親の立場からすると、また違ったように見える。
親亡きあと、弟がダメ人間になったとしても、やっぱりお姉ちゃんには面倒をみてほしいものだと、親の立場からは思えてしまう。
きっと二人の親も、吟子の事を空の上から褒めているに違いない。

この二人を見ていると、「ダメな兄貴としっかり者のの妹」というあるコンビが頭に浮かぶ。
山田洋次監督も、きっとフーテンの寅さんを意識しているに違いない。
まあ寅さんの方が、もっとしっかりしているかもしれないが・・・

吉永小百合のどこまでも非の打ちどころのないキャラクターと鶴瓶のどんぴしゃりとハマったキャラクターと、小春の蒼井優のどこか幸薄げなキャラクターが見事にブレンドされた心温まるドラマである・・・


評価:★★★☆☆





posted by HH at 23:05 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年06月18日

アン・ハサウェイ/裸の天使

裸の天使.jpg

原題: HAVOC
2005年 アメリカ
監督: バーバラ・コップル
出演: アン・ハサウェイ / ビジョウ・フィリップス / シリ・アップルビー / マイケル・ビーン / ジョセフ・ゴードン・レヴィット / マット・オレアリー

<STORY>********************************************************************************************************
LAの裕福な家庭に育ちながら、退屈な生活に飽きたらずコカインとケンカに明け暮れる毎日のアリソン。
さらなる刺激を求めて、仲間とヒスパニック街に出かけた彼女は、メキシコ人のヤクの売人ヘクトルと出会い、彼らストリート・ギャングのエキサイティングな生き方に魅了される。
しかし、仲間に入れてほしいと持ちかけた彼女に、ヘクトルが出した条件は、サイコロを振って出た目の数だけ、彼の仲間たちとセックスをすることだった…
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邦題は「アン・ハサウェイ/裸の天使」。
アン・ハサウェイと言えば、美人女優。
見ているだけで何時間でも過ごせるようなキュートな美女だ。
そんなアン・ハサウェイが主演の映画とあれば、無条件に観たいと思うもの。
そんな単純な動機で観た映画である。

観終わって気がつく。
なぜ邦題に「アン・ハサウェイ」と入っているのか。
もちろん、アン・ハサウェイ主演という事をセールスしたいのだろうが、本当のところは「それ以外には何の魅力もない映画だから」である。
ストーリーは、実につまらない。

アン・ハサウェイ演じるアリソンは、お金持ちの家の高校生。
しかし両親は多忙でいつもアリソンとはすれ違い。
冷蔵庫に貼ったメモで会話する毎日。
彼氏たちと毎日をおもしろかしく過ごすもどことなく満たされない。
何をしても面白くない。

そんなある日、ヒスパニックたちが多く住むダウンタウンへと繰り出す。
場末の危険な香りが漂い、カッコつけていた彼氏は地元のギャングに凄まれて、ビビって帰る。
危険な状況に驚きながらも、その強烈な刺激に惹かれたアリソンは、女たちだけでダウンタウンに乗り込んでいく・・・

裕福な白人と貧しいヒスパニック。
アメリカの格差ある貧富の差を象徴したような二つの地域。
ヒスパニックたちは、白人居住地区に立ち入っただけで警官たちに職務質問を受ける。
ストーリーとは別にそんなアメリカ社会の一面を垣間見る事ができる。

見所はアン・ハサウェイの立ち居振る舞いだけなのであるが、トップレスシーンもあったりして、こんな映画なのにここだけは観る価値があるかもしれないと思ったりする。
続きは適当に想像して下さいと言いたげなエンディング。
もうちょっと続きを丁寧に描いたら、それなりの映画になっていたかもしれず、残念な気もする。

ただこの映画は邦題がすべてを語っている。
アン・ハサウェイだけ観てよしとすべきなのだろう・・・


評価:★☆☆☆☆

アン・ハサウェイ出演映画
「ジェイン・オースティン 秘められた恋」
「レイチェルの結婚」
「パッセンジャーズ」
「アリス・イン・ワンダーランド」
「プラダを着た悪魔」
「ブロークバック・マウンテン」


     
posted by HH at 23:53 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年06月04日

正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官

正義のゆくえ.jpg

原題: Crossing Over
2009年 アメリカ
監督: ウェイン・クラマー
出演: ハリソン・フォード/レイ・リオッタ/アシュレイ・ジャッド/ジム・スタージェス/クリフ・カーティス

<STORY>********************************************************************************************************
ロサンゼルス、移民・関税執行局(I.C.E.)のベテラン捜査官マックス・ブローガンは、不法滞在の移民たちを取り締まりながらも、彼らの境遇に同情していた。
メキシコから不法入国してきた若い母親のミレヤは、息子をアメリカに残したまま、メキシコに強制送還されてしまう。
女優を目指しオーストラリアから観光ビザで入国クしたクレアは、グリーンカードを手に入れるため、偶然出会った移民判定官の男に身を任せる…。
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舞台となるのはアメリカ移民・関税執行局(I.C.E.)。
外国からの不法移民・就労を取り締まる部署だ。
冒頭、このICEがある工場に一斉捜査に入る。
蜘蛛の子を散らすように逃げ回る労働者たち。
みんな不正に入国し、隠れて働く就労者だ。

踏み込んだ捜査官の一人がマックス・ブローガンを演じるハリソン・フォード。
昔は主演映画は見逃せなかったが、最近はめっきりお目にかかれなかった。
「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」で久々にヒットシリーズを復活させて以来のご対面である。
人情家の捜査官としての登場である。

捕まえたうちの一人が若きメキシコ人の母親。
子供を預けて働きに来ている。
周りから同情的なのを責められているマックスは、感情を殺して仕事をする。
必死になってマックスに子供の事を訴える母親は無情にもそのまま強制送還させられる。
知らん顔を決め込むはずのマックスは、ベッドに入ってからいたたまれなくなって子供を捜しに行く。

オーストラリアから来たクレア。
韓国人の親子。
イラン人の一家。
ユダヤ人の男。
アラブ人の親子。
様々な登場人物たちが永住権を得ようとしているが、それぞれに現実が立ちふさがる。

アメリカは移民の国。
それがアメリカのアイデンティティでもあるが、無制限に受け入れているわけではない。
9.11テロ以降は、テロ対策の意味合いも加わっているようだ。
メキシコからは働き口を求めて人々が流入している。
映画では描かれていなかったが、そうした安い労働者を雇う工場にも意図があるに違いない。

アメリカにはアメリカの正義があり事情がある。
しかし随所でほころびは生じる。
法の執行は正義でも、それに携わる人間次第でそれは無情なものになる。
ハリソン・フォードの活躍に心を奪われる暇などなく、映画が投げかける問題的に気を取られてしまう。
考えればなかなか重い映画である。

ICEの人たちも、マックスや同僚のハミードのような相手の気持ちのわかる人間ばかりであったなら、捜査対象となる人たちも救われるのだろうが・・・
アメリカの一面を見る事のできる映画である・・・


評価:★★★☆☆
     
    

   
  
posted by HH at 23:32 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年05月29日

エレジー

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原題: Elegy
2008年 アメリカ
監督: イサベル・コイシェ
出演: ペネロペ・クルス/ベン・キングズレー/デニス・ホッパー/パトリシア・クラークソン/ピーター・サースガード

<STORY>********************************************************************************************************
著名な大学教授デヴィッドは、今日もテレビで自分の著書を解説している。
表面的には「成功者」の彼だが、家庭はとうの昔に壊れ、息子とも良い関係を築けない。
また、女性には愛よりもSEXを求める日々を送っていた。
そんな彼の前に美しい学生コンスエラが現れる。
娘ほど歳の離れた彼女にデヴィッドはひと目で虜になり、親密な関係になる。
しかし、いつか来る「別れ」を恐れ、デヴィッドは彼女との関係に一線を引こうとする。
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30歳の年の差があるカップルの恋愛物語。
ストーリーよりもむしろ出演者に興味を引かれた映画と言った方が正確だ。
なにせ超美形女優のペネロペ・クルスと禿頭がトレードマークの名優ベン・キングスレー共演となれば、ちょっと見逃したくはない。

大学教授デヴィッドは、独身。
別れた妻との間には不仲の息子がおり、20年間続いているセックスパートナーがいる。
ショーペンハウアーの名言に、「結婚とは、男の権利を1/2にし義務を2倍にすること」というのがあるが、デヴィッドの生活は「権利をそのままにして義務を免除されている」に等しい。

そんなデヴィッドが、ある時自分が教える教室に魅力的な女性コンスエラがいるのを見つける。
そしてパーティーで巧みに話しかけ、なんと恋愛関係にまで発展させてしまう。
しかしながら「万物は流転する」ものであり、都合の良い状況はいつまでも不変というわけにはいかない。
家に招き、両親に合わせたいと願うコンスエラの気持ちに、デヴィッドは答えられない。
若い女性とセックスだけを楽しむという男にとって都合の良い状況は長く維持できない。
そして、とうとう「その時」がやってくる。

人は誰でも年をとる。
20年来の関係を続けるキャロライン。
成功している経営者でもある彼女が、だんだんと周囲が自分を女として見なくなってきているとぽつりと漏らす。
いつまでも若いままではいられない。
若いコンスエラに対して踏み込めなかったデヴィッドの気持ちもわかるような気もする。

テーマが男と女、年齢と恋愛という事だからか、妙にいろいろと感じる事の多い映画である。
男であればこういう悩みもいいかもしれない。
タイトルの「エレジー」とは、哀歌という意味があるそうである。
タイトルの重みがずっしりと響いてくる映画である・・・


評価:★★☆☆☆
    

     
posted by HH at 22:54 | 東京 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年05月15日

マイライフ、マイファミリー

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原題: The Savages
2007年 アメリカ
監督: タマラ・ジェンキンス
出演: ローラ・リニー/フィリップ・シーモア・ホフマン/フィリップ・ボスコ/ピーター・フリードマン/デヴィッド・ザヤス/ベンガ・アキナベ

<STORY>********************************************************************************************************
独身を謳歌する大学教授のジョンと、契約社員に就きながら作家を目指しているウェンディのサヴェージ兄妹。
ニューヨークでそれぞれ淡々とした日々を送っていた彼らはある日、父のレニーが認知症との報せを受ける。
しかし、ジョンとウェンディは自分たちの経済状況や、かつて彼らに酷い仕打ちをし今や他人同然である父の面倒を見ることに戸惑うばかり。
だが、父の後妻も亡くなり、頼れる身寄りがジョンとウェンディしかいないため、彼らは仕方なく面倒を引き受けるのだった。
父の最期を看取る役割を担ってしまい、悪戦苦闘するジョンとウェンディだが…。
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日本劇場未公開の家族ドラマ。
原題に「The Savages(サベージ家の人々)」とあるように、認知症になった父とその息子と娘の物語である。

大学教授の兄ジョンと作家を目指す妹ウェンディ。
ある日離れて暮らす父レニーが認知症になったと知らせが来る。
詳細は明らかにされていないが、それまでどこに住んでいるかも知らなかった様子。
そして父が一緒に住んでいた内縁の妻も亡くなる。

冒頭のこの父を巡る関係が実にアメリカ的である。
一緒に暮らしていた介護士は内縁の妻を担当している。
トイレを流し忘れたレニーに対し、介護士はあんたの担当ではないと言ってトイレを自分で流すように言う。
契約で仕事をきちんと明確に分けているわけである。

さらに内縁の妻が亡くなり、双方の子供たちが向かい合う。
互いの親二人が契約でそれぞれの財産は別々に管理する取り決めをしていた事が明らかになる。
家は妻名義であった事から、レニーは追い出される事になる。
内縁とはいえ夫婦間で契約書を取り交わしているのがアメリカ的である。

こうして父を引き取る事になったジョンとウェンディ。
それぞれ独身で父を引き取って面倒を見る事もできず、施設に入れる事になる。
ジョンは3年付き合った恋人がいるが、ポーランド人の彼女はビザが切れて国外退去になる。
結婚すれば留まれるのに、ジョンはそうしない。
ウェンディは不倫を続けている。
家族それぞれが事情を抱えている。

そんなサベージ家が淡々と描かれていく。
盛り上がりに欠けるドラマではあるが、誰もの身にも起こりうる事だけに、どこか他人事ではない。
父を案じながらも、兄妹も必死に自分の人生を生きているのである。

時に喧嘩しながらも、二人で父親と多くの時間を過ごす二人。
それぞれ家族を持たない兄妹にもいずれ待っている未来がある。
その時どうするのだろうと、ふと思う。
ラストのジョンの言動は、それに対する答えのような気がする。
日本では公開されなかった理由はよくわかるが、観ないのは損だと思える映画である・・・


評価:★★☆☆☆


      
posted by HH at 22:20 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ