2011年05月09日

人生に乾杯

人生に乾杯.jpg

原題: Konyec
2007年 ハンガリー
監督: ガーボル・ロホニ
出演: エミル・ケレシュ/テリ・フェルディ/ユディト・シェル/ゾルターン・シュミエド/ロシック・ジョコ

<STORY>********************************************************************************************************
運命的な出会いを機に結婚したエミルとヘディも、今では81歳と70歳。
互いに恋に落ちていた頃のことなどすっかり忘れていた。
年金だけでは暮らしていけず、借金取りに追われる毎日の中、ついに二人の出会いのきっかけだったダイヤのイヤリングまで借金のカタに取られてしまう。
高齢者に冷たい世の中に怒りを覚えた夫のエミルは、イヤリングを奪い返すために持病のぎっくり腰を押して20年ぶりに愛車のチャイカを飛ばし、郵便局を紳士的に強盗!
それを皮切りに次々と紳士的強盗を重ねていく。
一度は警察に協力した妻のヘディも、奮闘する夫の姿にかつての愛しい気持ちを思い出し、手を取り合って逃げる決心をする。
二人の逃避行は、やがて民衆を巻き込んで思いもかけない展開に…。
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ちょっと珍しいハンガリー映画である。
元共産圏の国というのは、独特の過去がある。
冒頭で若き日のエミルとへディの出会いも、詳しい事情はわからないが、そんな時代背景を反映したものである。
二人の出会いのシーンを入れるという工夫が、ドラマを一層引きたてている。

劇的な出会いをした二人もすでに老境。
しかし年金だけでは暮らして行けず、家賃の督促から逃げる日々。
ある日強制執行を受け、へディはずっと大切にしてきたダイヤのイアリングを渡してしまう。
エミルは決意を固め、愛車のチャイカに乗って郵便局へと向かう。

郵便局で、最初の強盗に成功。
そして次々に犯行を重ねていく。
イアリングを取り返し、新しいテレビを買う。
しかし、なんとものどかな強盗で、たちまち足が付きテレビで指名手配されてしまう。
へディもそんなエミルにやがて合流する。

老人の銀行強盗というストーリーだが、凶悪性はまるでない。
愛車のチャイカは、30年間共産党幹部の運転手をした褒美にもらったシロモノ。
すでにハンガリーでも日本車を含め、先進国の車が溢れている中、いかにも旧式である。
しかし、その頑丈な構造と駆動ゆえに警察の手から逃れられるのだから面白いものである。

二人の逃避行はやがて世間の関心を呼ぶ。
年金だけでは暮らしていけないという事情はどこも一緒ゆえに共感を呼んだのである。
ここらあたりは、資本主義へとシフトした事によって生じた歪みなのかもしれない。
老人の銀行強盗のドラマという形を取りながら、社会に問題提起する意図が、ひょっとしたらあるのかもしれない、とふと思う。

老人ののんびりした逃避行がいつまでも続くわけがなく、やがて二人は警察に追いつめられる。
ラストのオチは、個人的には無理があるなと思うが、やっぱり映画だから暗い結末にするわけにもいかなかったのかもしれない。
こうした外国映画も、たまにはいいものである。


評価:★★☆☆☆
   

    
posted by HH at 22:38 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年05月07日

ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない

ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない.jpg

2009年 日本
監督: 佐藤祐市
出演: 小池徹平/田辺誠一/マイコ/池田鉄洋/田中圭/中村靖日/

<STORY>********************************************************************************************************
ニート生活を送ってきた26歳のマ男は、母親を事故で亡くしたことで一念発起。
情報処理の資格を取得する。
しかし入社試験に落ち続け、最終的にパスしたのが、ある小さなIT企業だった。
そこで働くメンバーは、責任感ゼロのリーダー、お調子者のリーダーの腰巾着、挙動不審なPCオタクなど、超クセ者揃い。
おまけに初出社日から毎日サービス残業をさせられ、徹夜の連続という、ありえない仕事場だった・・・
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ちょっと変わったタイトルだが、これはネット上の掲示板に主人公が立てたスレッドである。
掲示板に書き込みをしつつ、ストーリーが進むという形式をとっている。
そして“ブラック会社”と聞くと、何やら反社会的な事をしている会社のようなイメージを持っていたが、何の事はない、下請けで条件の悪い会社という事であった。

高校でいじめに遭ってドロップアウトし、ニート暮らしをしていた主人公が、母親の死を期に働きに出る。
しかし、中卒の彼が就職できたのは小さなIT企業。
社長のスペルミスから「マ男」とニックネームをもらい勤め始める。
(マサオとすべきところ「サ」がぬけてしまったのだ)

ところが頭から怒鳴り散らし無理難題を押し付けるリーダーを始め、お調子者、挙動不審者などのメンバーの中でマ男は戸惑うばかり。
しかも仕事は下請けで、顧客から無理な納期を約束させられ、徹夜の連続。
もちろんすべてサービス残業で、マ男は自ら死の行進(デスマーチ=デスマ)に駆り出されるソルジャーと自虐的。
そんな中でも唯一庇ってくれる常識人藤田が心の支えとなる。

基本的に無茶な職場で無茶な人たちに囲まれて限界まで追いつめられる主人公マ男の物語。
中卒の彼には「辞める」という選択肢は取り難い状況にあるのだが、掲示板に満たされぬ思いを綴りながら、奮闘する毎日が描かれる。
正直言ってほとんど期待もせずに観た映画ではあるものの、いつのまにか引きこまれていた。

その理由の一つには、主人公マ男を演じた小池徹平の存在があるかもしれない。
女装したら実に美人なのではないかと思わせられる容姿はともかくとして、ここでは非人間的な職場でひたすら頑張るサラリーマンとして登場。
前年には中学生役(「ホームレス中学生」)を違和感なくこなしているほど童顔なのだが、気弱な役がよく合っている。

崖っぷちに立たされて後がないマ男にとって、いくら嫌でも辞めるわけにはいかない。
しかし、デスマの流れの中で絶望的な努力をするマ男に、いつの間にか感情移入してしまっているのである。
少々登場人物たちの個性が強調され過ぎているところはなきにしもあらずであるが、それは御愛嬌と言えるだろう。

期待が低かった分、観てちょっと得した気分になった映画である・・・


評価:★★☆☆☆
   




    
posted by HH at 22:24 | 東京 🌁 | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年04月11日

私の中のあなた

わたしの中のあなた.jpg

原題: My Sister's Keeper
2009年 アメリカ
監督: ニック・カサヴェテス
出演: アビゲイル・ブレスリン/ソフィア・ヴァジリーヴァ/キャメロン・ディアス/ヘザー・ウォールクィスト/ジェイソン・パトリック/アレック・ボールドウィン

<STORY>********************************************************************************************************
11歳の少女アナは、白血病の姉に臓器を提供するドナーとして、遺伝子操作によってこの世に生まれた。
母サラは愛する家族のためなら当然と信じ、アナはこれまで何度も姉の治療のために犠牲を強いられてきた。
そんなある日、「もうケイトのために手術を受けるのは嫌。私の体は、自分で守りたい」と、アナは突然、両親を相手に訴訟を起こす。
しかし、その決断にはある隠された理由があった…
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白血病の少女を取り巻く家族の物語というと、何だかお涙ちょうだいモノに思えてしまうが、この映画は一ひねりも二ひねりもしてあって、安易なドラマに陥っていないところが評価できる。
「冒頭から姉のドナーとして私は生まれた」などと衝撃的な告白があって、掴みとしてはうまいと思う。

主人公は11歳の少女アナ。
姉のケイトは白血病で、治療の成果も今一つ。
治療に必要な臍帯血、輸血、骨髄移植には適合性が要求される。
肉親であっても完ぺきではなく、100%完璧なドナーは遺伝子操作で新たな子供を作るという方法があるとの医師の勧めで、両親が産んだのがアナである。

これもまたちょっと衝撃的な話だ。
そういえば、ユアン・マクレガーの主演した「アイランド」という映画は、金持ちたちが将来の疾病に備えて、初めから同じ遺伝子を持つ自分の分身を作っておくという内容の近未来ドラマだったが、発想は似ている。
そして生まれてからアナは何度も移植で辛い思いをしてきている。

そんなアナが、訴訟勝率91%の弁護士を訪ね、もう姉のドナーになるのは嫌だから移植を拒絶できるようにしてほしいと訴える。
両親を相手に子供が訴訟を起こすというのも、訴訟社会アメリカらしい。
しかし、考えてみればこれも道理。
いくら親だからといって、子供に臍帯血、輸血、骨髄移植といった事を強いるのは許されるのだろうか。

子供には十分な判断能力がないとされ、日本でも未成年者の行為には法律でも制約が加えられている。
だからといって、移植などの体を傷つける行為を親が代わって承認できるものなのだろうか。
最後にアナに要求されたのは腎臓移植。
それまでは痛みは伴っても体の中で再生産できるものだった。
しかし臓器はそうはいかない。
難しいテーマを投げかけてくれる映画である。

ケイトは治療で髪の毛がすべて抜け落ちている。
おしゃれに興味を持つ年頃なのに、それはかなり可哀そうな状態。
父、母、アナ、そして弟の目を通してケイトを取り巻く家族の様子が描かれていく。
家族それぞれの思いは至極もっとも。
それぞれ形は違えども、家族に対する思いは共通している。
そんな思いが、観ていてじんわりとさせられるところだろう。

母親として登場するのはキャメロン・ディアス。
これまでとは打って変わって我が子の治療に執念を燃やす母親として登場。
だんだんと歳を取るにつれて役柄も変化するもの。
これから母親役も少しずつ増えていくのかもしれない。

ケイトの決断と兄弟愛には心動かされるものがある。
いろいろな事を考えさせられる映画である・・・


評価:★★★☆☆
     

    
  
posted by HH at 23:00 | 東京 🌁 | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年04月01日

紀ノ川

紀ノ川.jpg

1966年 日本
監督: 中村登
原作: 有吉佐和子
出演: 司葉子/岩下志麻/有川由紀/東山千栄子/田村高廣/丹波哲郎

<STORY>********************************************************************************************************
明治32年、22歳の春を迎えた紀本花は紀州有功村六十谷の旧家真谷家に嫁いだ。
夫敬策は24歳の若さで村長の要職にあった。
婚儀は盛大なものだったが、花を好いていた敬策の弟浩策はうかぬ顔だった。
翌年の春、ようやく真谷家の家風に慣れた花は妊った。
そして花は、実家の祖母豊乃に教えられて慈尊院へ自分の乳房形を献上し、安産を祈った・・・
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有吉佐和子の小説を映画化した1966年の作品。
舞台は和歌山県。
タイトルにある通り紀の川が流れるほとりの村で、明治・大正・昭和と3つの時代を生きた主人公花の物語である。

冒頭、古式ゆかしき花嫁姿の女性が家族に見守られ、船に乗り込む。
船は静かに川を下り、花は婚家に嫁ぐ。
相手は旧家真谷家の長男敬策。
24歳ながらにして既に村長を務めている。
弟の浩策は不機嫌な様子。

広大な自宅での披露宴。
宴もたけなわの最中、中座した新婚夫婦はそのまま奥の部屋へ案内され、女中たちが「お休みなさいませ」と言って下がっていく。
昔はこんな感じだったのだろうか、とふと思い出す。
そう言えば、規模こそ全然違うが、子供の頃祖父の家で見た叔母の結婚式もこんな感じだった。

昔は一族の財産はすべて長男が総取り。
次男以下は肩身の狭い居候か、婿養子に行くしかない。
しかし真谷家は財産もあり、分家する事になる。
弟の浩策が不機嫌なのは、花が好きだからだと敬策に言われ、戸惑う花・・・

原作は読んでいないのだが、これはかなりの長編だと思う。
この結婚式から明治・大正・昭和と時間の流れを追ってストーリーは流れていく。
それはまるで川の流れのように・・・
花にはやがて長男と長女文緒が生まれる。
そして文緒にはさらに長女華が生まれる。

主人公花の一代記と言える映画であるが、なぜだか落ち着かない。
その理由はと言えば簡単で、物語の展開が早過ぎるのである。
たぶん長い小説を無理に映画の枠の中に収めようとしたのであろう、その無理が早い展開に落ち着かなさを生み出してしまっているのである。
一つ一つのエピソードをもっと盛り上げて欲しかった気がする。
例えば弟浩策が密かに花に心惹かれるエピソードも、もっと何かあっても良かったような気がするのである。

花を演じるのは司葉子。
文緒は岩下志麻。
敬策は田村正和のお兄さん田村高廣だし、弟の浩策は丹波哲郎。
みんな年配の姿しか知らないから、この映画では若々しくて新鮮である。
特に岩下志麻などは、『極道の妻たち』で「なめたらいかんぜよ」のセリフが強烈だったが、この頃からすでにあのイメージを漂わせている。
気の強い男勝りの文緒は若いながらも極妻なのである。

166分の長い映画であるが、早送りを観ているような感じで、どうも落ち着かない映画だった。
ゆったりと流れる紀ノ川とはちょっと違ったようである。
原作はひょっとしたらもう少し味わい深いのかもしれない。
いつか読んでみようかと思う・・・


評価:★★☆☆☆
    

   
   
posted by HH at 23:50 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年03月30日

ラブリーボーン

ラブリーボーン.jpg

原題: The Lovely Bones
2009年 アメリカ・イギリス・ ニュージーランド
監督: ピーター・ジャクソン
出演: シアーシャ・ローナン/マーク・ウォールバーグ/レイチェル・ワイズ/スーザン・サランドン/スタンリー・トゥッチ/マイケル・インペリオリ

<STORY>********************************************************************************************************
スージー・サーモンは、14歳のときに近所に住む男にトウモロコシ畑で襲われ、殺されてしまった。
父は犯人捜しに明け暮れ、母は愛娘を守れなかった罪悪感に苦み、家を飛び出してしまった。
スージーは天国にたどり着く。
そこは何でも願いがかなう素敵な場所で、地上にいる家族や友達を見守れる。
スージーは、自分の死でバラバラになってしまった家族のことを心配しながら、やり残したことを叶えたいと願うのだった…。
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「私はスージー・サーモン、1973年12月6日14歳で殺されたの・・・」という何やら衝撃的なイントロで映画は始る。
14歳の女の子と言えば微妙な年齢だ。
もう子供とは言いにくいし、大人にもなりきれていない。
男の子に誘われる友達を尻目に、密かにあこがれる男の子に対する切ない恋心も隠したままだ。

冒頭から殺されるとわかっているから、いつその時が来るのだろうと観てしまう。
憧れの男の子から土曜日のデートに誘われ、夢見るままに帰る帰り道、トウモロコシ畑で“その時”はやってくる。
そして殺されたあと、スージーはこの世とあの世の狭間で、愛するパパとママ、おばあちゃんと妹の家族を見守っていく事になる。

死者と生きている者の物語というと、デミ・ムーアの「ゴースト」やブルース・ウィリスの「シックス・センス」などが浮かぶ。
しかし、この映画は「ゴースト」のようにロマンティックではなく、「シックス・センス」のようにオカルトチックでもない。
ちょっとしたスリルはあるのだが、ハッピーエンドとも言い難い、不思議な映画だ。

スージーができる事といったら、家族や友人たちを見守るだけ。
彼女が見守る中で、家族はスージーを失った痛手に苦しみ、犯人を捜し、そうしながらも日々の暮らしを続けていく。
妹は少しずつ成長し、そしてスージーが経験できなかったファーストキスをいつのまにか経験する。
それを見守るスージーの複雑な心境が画面を通して伝わってくる。

主演のスージーを演じるシアーシャ・ローナンであるが、これが実に可愛い。
実はキーラ・ナイトレイ主演の「つぐない」に13歳で出演していたようなのであるが、まったく記憶にない。
「つぐない」でアカデミー賞にノミネートされたらしいから、容姿だけではなく実力もあるのだろう。
これからちょっと注目したい女優さんだ。

ストーリーは観る者にとってはハッピーエンドと言い難い。
意外性があるエンディングと言えばそう言えるのであるが、やっぱりこの手のストーリーとなると、ハッピーエンドを期待したいところだから、個人的にはどうだろうかと思う。
ちょっと心に重いモノが残ってしまった気がする・・・


評価:★★☆☆☆
 


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posted by HH at 23:03 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ