2011年06月04日

正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官

正義のゆくえ.jpg

原題: Crossing Over
2009年 アメリカ
監督: ウェイン・クラマー
出演: ハリソン・フォード/レイ・リオッタ/アシュレイ・ジャッド/ジム・スタージェス/クリフ・カーティス

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ロサンゼルス、移民・関税執行局(I.C.E.)のベテラン捜査官マックス・ブローガンは、不法滞在の移民たちを取り締まりながらも、彼らの境遇に同情していた。
メキシコから不法入国してきた若い母親のミレヤは、息子をアメリカに残したまま、メキシコに強制送還されてしまう。
女優を目指しオーストラリアから観光ビザで入国クしたクレアは、グリーンカードを手に入れるため、偶然出会った移民判定官の男に身を任せる…。
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舞台となるのはアメリカ移民・関税執行局(I.C.E.)。
外国からの不法移民・就労を取り締まる部署だ。
冒頭、このICEがある工場に一斉捜査に入る。
蜘蛛の子を散らすように逃げ回る労働者たち。
みんな不正に入国し、隠れて働く就労者だ。

踏み込んだ捜査官の一人がマックス・ブローガンを演じるハリソン・フォード。
昔は主演映画は見逃せなかったが、最近はめっきりお目にかかれなかった。
「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」で久々にヒットシリーズを復活させて以来のご対面である。
人情家の捜査官としての登場である。

捕まえたうちの一人が若きメキシコ人の母親。
子供を預けて働きに来ている。
周りから同情的なのを責められているマックスは、感情を殺して仕事をする。
必死になってマックスに子供の事を訴える母親は無情にもそのまま強制送還させられる。
知らん顔を決め込むはずのマックスは、ベッドに入ってからいたたまれなくなって子供を捜しに行く。

オーストラリアから来たクレア。
韓国人の親子。
イラン人の一家。
ユダヤ人の男。
アラブ人の親子。
様々な登場人物たちが永住権を得ようとしているが、それぞれに現実が立ちふさがる。

アメリカは移民の国。
それがアメリカのアイデンティティでもあるが、無制限に受け入れているわけではない。
9.11テロ以降は、テロ対策の意味合いも加わっているようだ。
メキシコからは働き口を求めて人々が流入している。
映画では描かれていなかったが、そうした安い労働者を雇う工場にも意図があるに違いない。

アメリカにはアメリカの正義があり事情がある。
しかし随所でほころびは生じる。
法の執行は正義でも、それに携わる人間次第でそれは無情なものになる。
ハリソン・フォードの活躍に心を奪われる暇などなく、映画が投げかける問題的に気を取られてしまう。
考えればなかなか重い映画である。

ICEの人たちも、マックスや同僚のハミードのような相手の気持ちのわかる人間ばかりであったなら、捜査対象となる人たちも救われるのだろうが・・・
アメリカの一面を見る事のできる映画である・・・


評価:★★★☆☆
     
    

   
  
posted by HH at 23:32 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年05月29日

エレジー

エレジー.jpg

原題: Elegy
2008年 アメリカ
監督: イサベル・コイシェ
出演: ペネロペ・クルス/ベン・キングズレー/デニス・ホッパー/パトリシア・クラークソン/ピーター・サースガード

<STORY>********************************************************************************************************
著名な大学教授デヴィッドは、今日もテレビで自分の著書を解説している。
表面的には「成功者」の彼だが、家庭はとうの昔に壊れ、息子とも良い関係を築けない。
また、女性には愛よりもSEXを求める日々を送っていた。
そんな彼の前に美しい学生コンスエラが現れる。
娘ほど歳の離れた彼女にデヴィッドはひと目で虜になり、親密な関係になる。
しかし、いつか来る「別れ」を恐れ、デヴィッドは彼女との関係に一線を引こうとする。
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30歳の年の差があるカップルの恋愛物語。
ストーリーよりもむしろ出演者に興味を引かれた映画と言った方が正確だ。
なにせ超美形女優のペネロペ・クルスと禿頭がトレードマークの名優ベン・キングスレー共演となれば、ちょっと見逃したくはない。

大学教授デヴィッドは、独身。
別れた妻との間には不仲の息子がおり、20年間続いているセックスパートナーがいる。
ショーペンハウアーの名言に、「結婚とは、男の権利を1/2にし義務を2倍にすること」というのがあるが、デヴィッドの生活は「権利をそのままにして義務を免除されている」に等しい。

そんなデヴィッドが、ある時自分が教える教室に魅力的な女性コンスエラがいるのを見つける。
そしてパーティーで巧みに話しかけ、なんと恋愛関係にまで発展させてしまう。
しかしながら「万物は流転する」ものであり、都合の良い状況はいつまでも不変というわけにはいかない。
家に招き、両親に合わせたいと願うコンスエラの気持ちに、デヴィッドは答えられない。
若い女性とセックスだけを楽しむという男にとって都合の良い状況は長く維持できない。
そして、とうとう「その時」がやってくる。

人は誰でも年をとる。
20年来の関係を続けるキャロライン。
成功している経営者でもある彼女が、だんだんと周囲が自分を女として見なくなってきているとぽつりと漏らす。
いつまでも若いままではいられない。
若いコンスエラに対して踏み込めなかったデヴィッドの気持ちもわかるような気もする。

テーマが男と女、年齢と恋愛という事だからか、妙にいろいろと感じる事の多い映画である。
男であればこういう悩みもいいかもしれない。
タイトルの「エレジー」とは、哀歌という意味があるそうである。
タイトルの重みがずっしりと響いてくる映画である・・・


評価:★★☆☆☆
    

     
posted by HH at 22:54 | 東京 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年05月15日

マイライフ、マイファミリー

マイライフ、マイファミリー.jpg

原題: The Savages
2007年 アメリカ
監督: タマラ・ジェンキンス
出演: ローラ・リニー/フィリップ・シーモア・ホフマン/フィリップ・ボスコ/ピーター・フリードマン/デヴィッド・ザヤス/ベンガ・アキナベ

<STORY>********************************************************************************************************
独身を謳歌する大学教授のジョンと、契約社員に就きながら作家を目指しているウェンディのサヴェージ兄妹。
ニューヨークでそれぞれ淡々とした日々を送っていた彼らはある日、父のレニーが認知症との報せを受ける。
しかし、ジョンとウェンディは自分たちの経済状況や、かつて彼らに酷い仕打ちをし今や他人同然である父の面倒を見ることに戸惑うばかり。
だが、父の後妻も亡くなり、頼れる身寄りがジョンとウェンディしかいないため、彼らは仕方なく面倒を引き受けるのだった。
父の最期を看取る役割を担ってしまい、悪戦苦闘するジョンとウェンディだが…。
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日本劇場未公開の家族ドラマ。
原題に「The Savages(サベージ家の人々)」とあるように、認知症になった父とその息子と娘の物語である。

大学教授の兄ジョンと作家を目指す妹ウェンディ。
ある日離れて暮らす父レニーが認知症になったと知らせが来る。
詳細は明らかにされていないが、それまでどこに住んでいるかも知らなかった様子。
そして父が一緒に住んでいた内縁の妻も亡くなる。

冒頭のこの父を巡る関係が実にアメリカ的である。
一緒に暮らしていた介護士は内縁の妻を担当している。
トイレを流し忘れたレニーに対し、介護士はあんたの担当ではないと言ってトイレを自分で流すように言う。
契約で仕事をきちんと明確に分けているわけである。

さらに内縁の妻が亡くなり、双方の子供たちが向かい合う。
互いの親二人が契約でそれぞれの財産は別々に管理する取り決めをしていた事が明らかになる。
家は妻名義であった事から、レニーは追い出される事になる。
内縁とはいえ夫婦間で契約書を取り交わしているのがアメリカ的である。

こうして父を引き取る事になったジョンとウェンディ。
それぞれ独身で父を引き取って面倒を見る事もできず、施設に入れる事になる。
ジョンは3年付き合った恋人がいるが、ポーランド人の彼女はビザが切れて国外退去になる。
結婚すれば留まれるのに、ジョンはそうしない。
ウェンディは不倫を続けている。
家族それぞれが事情を抱えている。

そんなサベージ家が淡々と描かれていく。
盛り上がりに欠けるドラマではあるが、誰もの身にも起こりうる事だけに、どこか他人事ではない。
父を案じながらも、兄妹も必死に自分の人生を生きているのである。

時に喧嘩しながらも、二人で父親と多くの時間を過ごす二人。
それぞれ家族を持たない兄妹にもいずれ待っている未来がある。
その時どうするのだろうと、ふと思う。
ラストのジョンの言動は、それに対する答えのような気がする。
日本では公開されなかった理由はよくわかるが、観ないのは損だと思える映画である・・・


評価:★★☆☆☆


      
posted by HH at 22:20 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年05月09日

人生に乾杯

人生に乾杯.jpg

原題: Konyec
2007年 ハンガリー
監督: ガーボル・ロホニ
出演: エミル・ケレシュ/テリ・フェルディ/ユディト・シェル/ゾルターン・シュミエド/ロシック・ジョコ

<STORY>********************************************************************************************************
運命的な出会いを機に結婚したエミルとヘディも、今では81歳と70歳。
互いに恋に落ちていた頃のことなどすっかり忘れていた。
年金だけでは暮らしていけず、借金取りに追われる毎日の中、ついに二人の出会いのきっかけだったダイヤのイヤリングまで借金のカタに取られてしまう。
高齢者に冷たい世の中に怒りを覚えた夫のエミルは、イヤリングを奪い返すために持病のぎっくり腰を押して20年ぶりに愛車のチャイカを飛ばし、郵便局を紳士的に強盗!
それを皮切りに次々と紳士的強盗を重ねていく。
一度は警察に協力した妻のヘディも、奮闘する夫の姿にかつての愛しい気持ちを思い出し、手を取り合って逃げる決心をする。
二人の逃避行は、やがて民衆を巻き込んで思いもかけない展開に…。
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ちょっと珍しいハンガリー映画である。
元共産圏の国というのは、独特の過去がある。
冒頭で若き日のエミルとへディの出会いも、詳しい事情はわからないが、そんな時代背景を反映したものである。
二人の出会いのシーンを入れるという工夫が、ドラマを一層引きたてている。

劇的な出会いをした二人もすでに老境。
しかし年金だけでは暮らして行けず、家賃の督促から逃げる日々。
ある日強制執行を受け、へディはずっと大切にしてきたダイヤのイアリングを渡してしまう。
エミルは決意を固め、愛車のチャイカに乗って郵便局へと向かう。

郵便局で、最初の強盗に成功。
そして次々に犯行を重ねていく。
イアリングを取り返し、新しいテレビを買う。
しかし、なんとものどかな強盗で、たちまち足が付きテレビで指名手配されてしまう。
へディもそんなエミルにやがて合流する。

老人の銀行強盗というストーリーだが、凶悪性はまるでない。
愛車のチャイカは、30年間共産党幹部の運転手をした褒美にもらったシロモノ。
すでにハンガリーでも日本車を含め、先進国の車が溢れている中、いかにも旧式である。
しかし、その頑丈な構造と駆動ゆえに警察の手から逃れられるのだから面白いものである。

二人の逃避行はやがて世間の関心を呼ぶ。
年金だけでは暮らしていけないという事情はどこも一緒ゆえに共感を呼んだのである。
ここらあたりは、資本主義へとシフトした事によって生じた歪みなのかもしれない。
老人の銀行強盗のドラマという形を取りながら、社会に問題提起する意図が、ひょっとしたらあるのかもしれない、とふと思う。

老人ののんびりした逃避行がいつまでも続くわけがなく、やがて二人は警察に追いつめられる。
ラストのオチは、個人的には無理があるなと思うが、やっぱり映画だから暗い結末にするわけにもいかなかったのかもしれない。
こうした外国映画も、たまにはいいものである。


評価:★★☆☆☆
   

    
posted by HH at 22:38 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年05月07日

ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない

ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない.jpg

2009年 日本
監督: 佐藤祐市
出演: 小池徹平/田辺誠一/マイコ/池田鉄洋/田中圭/中村靖日/

<STORY>********************************************************************************************************
ニート生活を送ってきた26歳のマ男は、母親を事故で亡くしたことで一念発起。
情報処理の資格を取得する。
しかし入社試験に落ち続け、最終的にパスしたのが、ある小さなIT企業だった。
そこで働くメンバーは、責任感ゼロのリーダー、お調子者のリーダーの腰巾着、挙動不審なPCオタクなど、超クセ者揃い。
おまけに初出社日から毎日サービス残業をさせられ、徹夜の連続という、ありえない仕事場だった・・・
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ちょっと変わったタイトルだが、これはネット上の掲示板に主人公が立てたスレッドである。
掲示板に書き込みをしつつ、ストーリーが進むという形式をとっている。
そして“ブラック会社”と聞くと、何やら反社会的な事をしている会社のようなイメージを持っていたが、何の事はない、下請けで条件の悪い会社という事であった。

高校でいじめに遭ってドロップアウトし、ニート暮らしをしていた主人公が、母親の死を期に働きに出る。
しかし、中卒の彼が就職できたのは小さなIT企業。
社長のスペルミスから「マ男」とニックネームをもらい勤め始める。
(マサオとすべきところ「サ」がぬけてしまったのだ)

ところが頭から怒鳴り散らし無理難題を押し付けるリーダーを始め、お調子者、挙動不審者などのメンバーの中でマ男は戸惑うばかり。
しかも仕事は下請けで、顧客から無理な納期を約束させられ、徹夜の連続。
もちろんすべてサービス残業で、マ男は自ら死の行進(デスマーチ=デスマ)に駆り出されるソルジャーと自虐的。
そんな中でも唯一庇ってくれる常識人藤田が心の支えとなる。

基本的に無茶な職場で無茶な人たちに囲まれて限界まで追いつめられる主人公マ男の物語。
中卒の彼には「辞める」という選択肢は取り難い状況にあるのだが、掲示板に満たされぬ思いを綴りながら、奮闘する毎日が描かれる。
正直言ってほとんど期待もせずに観た映画ではあるものの、いつのまにか引きこまれていた。

その理由の一つには、主人公マ男を演じた小池徹平の存在があるかもしれない。
女装したら実に美人なのではないかと思わせられる容姿はともかくとして、ここでは非人間的な職場でひたすら頑張るサラリーマンとして登場。
前年には中学生役(「ホームレス中学生」)を違和感なくこなしているほど童顔なのだが、気弱な役がよく合っている。

崖っぷちに立たされて後がないマ男にとって、いくら嫌でも辞めるわけにはいかない。
しかし、デスマの流れの中で絶望的な努力をするマ男に、いつの間にか感情移入してしまっているのである。
少々登場人物たちの個性が強調され過ぎているところはなきにしもあらずであるが、それは御愛嬌と言えるだろう。

期待が低かった分、観てちょっと得した気分になった映画である・・・


評価:★★☆☆☆
   




    
posted by HH at 22:24 | 東京 🌁 | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ