2010年12月08日

悲しみが乾くまで

悲しみが乾くまで.jpg

原題: THINGS WE LOST IN THE FIRE
2008年 アメリカ
監督: スサンネ・ビア
出演:  ハル・ベリー/ベニチオ・デルトロ/デヴィッド・ドゥカヴニー/アリソン・ローマン/ジョン・キャロル・リンチ

<STORY>********************************************************************************************************
オードリーは、夫と二人の子供たちに囲まれ、平凡だが幸せな日々を送っていた。
しかし、事件に巻き込まれた夫が射殺される。
愛する人を失った悲しみから立ち直れなかったオードリーは、夫の幼馴染みで親友のジェリーを思い出す。
彼は弁護士だったが、今はドラッグで堕落していた。
オードリーはそんな彼を好きではなかったが、自分と同じように夫を深く理解し、愛していてくれたことを知り、親近感を持ち始める。
オードリーは、それぞれが立ち直るため、共同生活をしようと提案する・・・
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なんとなくわかったようなわからない映画というのが、最も端的な感想である。
どう解釈すれば良いのだろう。
いつも観たまま感じたままをモットーとする自分であるが、素直に評価すれば「面白くない」となる。
もっと違う着眼点とかあるのだろうか、などと思ってしまう。

冒頭でいきなり葬式。
喪主と思しき女性が、あれこれと指図。
そして肝心な人物に連絡していなかった事を思い出す。
電話も通じないところに住む人物とは・・・

そして徐々に全体像が浮かび上がる。
亡くなったのは、主人公オードリーの夫。
子供たちのためにアイスクリームを買いに行ったところ、トラブルに巻き込まれて射殺されてしまったのである。
何気なく見送った夫がそのまま帰って来ないという現実に、オードリーは打ちのめされる。

葬儀の時に思いだして呼んだのは、夫の幼馴染ジェリー。
弁護士だったのに麻薬に溺れ、堕落している彼をオードリーは快く思っていなかった。
そんな彼を葬儀に呼んだのは、最後まで彼を大切にしていた夫に対する思いからに他ならない。
自宅の離れに住まわせて、奇妙な同居生活を始める。

ストーリーは、そんなオードリーの期待に応え、麻薬から抜け出そうとするジェリーとオードリーの姿を描く。
夫の死から立ち直れないオードリー。
子供たちを挟んでストーリーは展開していく。
淡々とストーリーは進んでいくが、これといった大きな事件が起こるわけではない。
さすがにハル・ベリーは見事な美人なのだが、映画はそれだけなのである。

気持ちはわかるが、映画としてはどうもな。
そんな後味の映画である・・・


評価:★★☆☆☆

   
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2010年11月30日

100歳の少年と12通の手紙

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原題: OSCAR AND THE LADY IN PINK
2008年 フランス
監督・脚本 : エリック=エマニュエル・シュミット
音楽 : ミシェル・ルグラン
出演 : ミシェル・ラロック/アミール/アミラ・カサール/ミレーヌ・ドモンジョ/マックス・フォン・シドー

<STORY>********************************************************************************************************
白血病で入院中の少年オスカーは10歳にして余命わずか。
真実を明かそうとしない医師や両親の態度に傷つき、誰とも口をきかなくなる。
ただ1人、偶然病院内で出会った宅配ピザの女主人で口の悪いローズにだけは心を開く。
ピザの注文と引き替えにオスカーの話し相手になることを引き受けたローズは、余命12日のオスカーに1日を10年と考えれば120歳まで生きられると助言し、毎日神様に手紙を書くことを提案する・・・
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白血病で余命わずかな少年が主人公の映画、というと何だかよくありがちな「お涙ちょうだい」ドラマを連想してしまう。
確かに観ているうちに涙腺はうるうる緩んでくるし、周りからは鼻をすする音が聞こえてくる。
しかし、それはけっして安易な「お涙ちょうだい」ドラマに嵌められたわけではない。
ちょっと涙のポイントが異なるのである。

主人公は10歳の少年オスカー。
ある時オスカーは、いつも来るはずのない日に両親が病院に来ているのを見つける。
そして主治医のデュッセルドルフ先生と両親の会話を聞き、自分の命が長くない事を知ってしまう。
自分が死ぬという事実よりも、その事実に打ちひしがれた両親がそのまま帰ってしまった事に、むしろショックを受ける。

両親に心を閉ざしたオスカーが心を許したのが宅配ピザの女主人ローズ。
とにかくいつも口汚くののしっていて、あっけらかんとしている。
デュッセルドルフ先生と契約をして、ピザの宅配条件でオスカーの話相手を引き受ける事になる。
期間は12日間。
それが自分の寿命だと悟るオスカーに、「1日で10年生きる」と考えるようにローズは提案する・・・

こうしてオスカーとローズの12日間が始る。
毎日人並みにその年齢相応の一日を送るオスカーとローズの交流が見所となる。
お涙ポイントは、普通であれば懸命の治療空しく、主人公がみんなに見守られて命を引き取るシーンだと思うが、先にも述べた通りこの映画はちょっと違う。
そんなシーンはまったくない。

1日で10歳年をとりながら成長するオスカー。
両親を拒絶しながらもやがて許す事になる。
愛なんて馬鹿らしいと軽蔑し、恋人にも「愛している」と言わなかったローズが、やがていつのまにか息子にそっと「愛している」と言えるようになる。
世の中すべてが敵であるかのように口汚くののしっていたローズが、次第に変わっていく。
ピザを配達するのが交換条件で引き受けたはずなのに、いつのまにかピザの方はどうでもよくなっていく・・・
そうした登場人物の変化が、観る者の涙腺を心地良く刺激する。

女性の目からするとオスカー少年に目が行くのかもしれないが、次第次第に変わっていくローズの姿が、個人的には良かったと思う。
それにしても貫禄あるデュッセルドルフ先生は、なんとマックス・フォン・シドー。
名優だが、フランス語をしゃべっているのにびっくりした。
穏やかな医師として存在感を示していた。

涙腺の緩い人は、ハンカチ必需品の映画である・・・


評価:★★★☆☆

    
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2010年11月27日

セントアンナの奇跡

セントアンナの奇跡.jpg

原題: Miracle at St. Anna
2008年 アメリカ=イタリア
監督: スパイク・リー
原作・脚本 : ジェームズ・マクブライド
出演:  デレク・ルーク/マイケル・イーリー/ラズ・アロンソ/オマー・ベンソン・ミラー/ジョン・タトゥーロ

<STORY>********************************************************************************************************
ニューヨークの郵便局で働く定年間近の局員が、ある日窓口で切手を買いに来た男性客をいきなり銃殺した。
男の名はヘクター。
前科や借金などもなく、精神状態も良好の実直な男だった。
家宅捜査の結果、彼の部屋から長きに渡って行方不明となっていたイタリアの貴重な彫像が発見された。
一向に犯行動機を口にしないヘクターだが、やがて重い口を開く。
謎を解く鍵は第2次世界大戦真っ只中の1944年、イタリアのトスカーナにあった・・・
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タイトルからは何となく感動的なストーリーを想像してしまい、期待に胸を膨らませて観た映画である。
冒頭、ニューヨークの郵便局。
窓口で働く職員ヘクターが切手を買いに来た男性客を凝視する。
そしておもむろに取りだしたルガーで男性客を射殺する。

ヘクターの部屋からはイタリアの彫像が発見され、それが高価なものであると判明する。
謎だらけの冒頭のシーンであるが、黒人のヘクターと第二次大戦中のドイツ軍用拳銃とイタリアの彫像。
それがストーリーのキーファクターとなる。

そしてストーリーは第二次大戦下のイタリアへと飛ぶ。
すでに米軍がイタリアに侵攻し、ドイツ軍と戦火を交える。
現地のパルチザンがこれに加わる。
米軍の部隊は黒人部隊。
同じ軍内と言えども白人は黒人を見下す。

この対立も一つのキーとなる。
米軍内の黒人と白人の対立。
パルチザンもドイツ軍に内通する裏切り者を抱える。
ドイツ軍も冷酷な大佐とそれに反発する大尉の対立がある。
敵と戦う一方で内部にも矛盾を抱える勢力が、戦争という大きな流れの中で相対峙する。

そんな最前線にありながら、味方舞台と離れた米黒人兵のビショップ、トレイン、ヘクター、スタンプが、イタリアの田舎町の人々と交流する。
ドイツ軍が現住民を虐殺したセントアンナの虐殺は歴史上の事実らしいが、この事件が起こる中で、やがて登場人物たちの運命が交叉する。

奇跡といえば確かにそうなのかもしれないが、正直に言って何となく理解しにくい内容だった。
無理に結論付けている気もしなくもない。
163分という時間もちょっと長さを感じてしまう映画である。


評価:★★★☆☆

    
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2010年10月24日

ダウト −あるカトリック学校で−

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原題: DOUBT
2008年 アメリカ
監督・原作戯曲・脚本 : ジョン・パトリック・シャンリィ
出演:  メリル・ストリープ/フィリップ・シーモア・ホフマン/エイミー・アダムス

<STORY>********************************************************************************************************
1964年のニューヨーク。
ブロンクスにあるカトリック学校セント・ニコラス・スクールでは、校長のシスター・アロイシスが厳格な指導を信条に日々職務を果たしていた。
一方、生徒の人気を集めるフリン神父は、ストイックな因習を排し進歩的で開かれた教会を目指していた。
しかし、唯一の黒人生徒ドナルドと不適切な関係にあるのではないかという疑惑が持ち上がり、シスター・アロイシスによる執拗な追及が始まるのだった…。
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この映画はもともと舞台のものらしい。
それゆえなのか、俳優同士のガチンコのぶつかり合いでストーリーは進んで行く。
舞台は舞台で観てみたい気にさせられる映画である。

ストーリーはあるカトリック学校で始る。
校長はメリル・ストリープ演じる怖い女校長。
そしてその学校が付属する教会の神父として登場するのがフィリップ・シーモア・ホフマン。
教会とそれに付属するカトリック学校という日本ではあまり馴染みのない制度だ。

ここで神父に疑惑(DOUBT)が起こる。
黒人生徒ドナルドとの性的関係である。
疑惑の発端は、担任のシスター・ジェイムズがフリン神父がドナルドの下着を彼のロッカーに入れたのを見た事である。
さらにドナルドが教会のワインを飲んでいた事がわかる。
報告を受けた校長は直ちにフリン神父追及を始める。

メリル・ストリープも大迫力。
その怖い姿は「プラダを着た悪魔」の編集長そのままである。
そしてフィリップ・シーモア・ホフマン。
黒にかぎりなく近い灰色の人物としてはうってつけ。
この人が出てくるだけで疑惑(DOUBT)は深まる。

厳しい追及の手を緩めない校長と、必死に弁護するフリン神父。
間で右往左往するシスター・ジェイムズ。
疑惑はあるが、事を荒立てる事に不安を感じて神父を信じてしまおうとしたいシスターを演じるのは、エイミー・アダムス。
シリアスな役柄なのであるが、「魔法にかけられて」での能天気なお姫様の雰囲気を十分に備えている。
大ベテラン二人の間で、存在感が光る。

白か黒かと思って見ているうちに、ドナルドの母親が登場し、白でも黒でもない意見が飛び出してくる。
そこでは、貧しい黒人家庭で「事情を抱えた」息子の将来を案ずる母親の切実な気持ちが露わにされる。
正義は確かに必要だが、歪んだ社会の中では正義に蓋をする必要もあるのではないかと思わせられる。

校長、神父、母親3者の意見のどれに与するかは個人の考え方だとは思うが、簡単にこれと決めにくいものがある。
そして最大の疑惑は疑惑として観る者の判断にゆだねられる。
なるほど舞台らしい濃厚なドラマである。


評価:★★☆☆☆



     
posted by HH at 11:45 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2010年10月23日

UNエージェント

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原題: Résolution 819
2008年 フランス・ポーランド・イタリア
監督: ジャコモ・バティアート
出演: ブノワ・マジメル/イポリット・ジラルド/カロリナ・グルツカ/ケン・デュケン

<STORY>********************************************************************************************************
1995年7月、国連が保護する「安全地帯」に指定されていたスレブレニツァから、8,000人を超えるムスリム人(ボシュニャク人)が消息を絶った。
事態を重く見た旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷(ICTY)はフランス人捜査官ジャックを派遣する。
捜査を開始したジャックは、ラトコ・ムラディッチ率いるスルプスカ共和国軍による恐るべき戦争犯罪を知る。
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ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を題材とした映画である。
同じ題材としては、過去に「ハンティング・パーティー」を観たが、これとはまた趣向が違う。

この映画で取り上げられているのは、スレブレニツァの虐殺と言われている事件。
ムラディッチ将軍が率いるスルプスカ共和国軍によるムスリム人虐殺事件である。
この事件の捜査のために派遣されたのはフランス人の捜査官ジャック。
映画は基本的に実話であるが、この捜査官ジャックは複数の人物を元にした架空の人物らしい。

かつて『7つの隣国、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字により構成される1つの国』と言われたユーゴスラビアだが、チトー死後に大分裂。
紛争が勃発して各地で民族浄化と言われる虐殺事件が起こる。
この映画の題材となっているスレブレニツァの虐殺もその一つ。

映画の冒頭では市街地にスルプスカ共和国軍による砲撃が出てくる。
国連軍が派遣されているものの、手も足も出ない、出せない。
現地の指揮官による空爆要請も却下されてしまう。
挙句の果てには、国連軍の目の前で住人が連れ去られてしまう。
理想とは裏腹に国連の持つ機能の限界が描かれている。
さらには国連軍はヘルメットや装備などを奪われ、これが後にスルプスカ軍が国連軍に扮して、ムスリム人をおびき寄せて虐殺を行うというあり様にも発展する。

映画は主人公のジャックが、懸命の捜査を通じてやがて戦争犯罪人として、ムラディチ以下の人物を逮捕していくのであるが、どうも事件の紹介という感が漂う映画である。
1時間半という短さのせいか、早送りされた感じで映画は進む。
日本ではほぼ無名の俳優陣は新鮮だが、それがスポットライトが俳優陣よりも事件に当っているような感じがする一因でもある。

正直言って映画の出来はともかく、このような事件が現代でも起こり続けている事に暗鬱な気分にさせられる映画である。
ちなみに原題はスレブレニツァを安全地帯に指定した国連決議のことである。


評価:★★☆☆☆


     
posted by HH at 11:33 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ