2011年03月06日

蟹工船

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2009年 日本
監督: SABU
出演: 松田龍平/西島秀俊/高良健吾/新井浩文/柄本時生

<STORY>********************************************************************************************************
カムチャッカ沖。
蟹を缶詰に加工する蟹工船・博光丸の船内では、出稼ぎ労働者たちが安い賃金で過酷な労働を強いられていた。
少しでも手を抜くと監督・浅川の容赦のない暴力に晒されてしまう。
労働者たちは仲間の1人・新庄の言葉に従って自殺しようとするも、結局死ぬことすらできなかった。
そんなある日、新庄と塩田は漁の最中に博光丸とはぐれてしまう。
そして冬の海で寒さに凍える彼らを助けたのは、ロシアの船だった……
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「蟹工船」といえば小林多喜二。
小林多喜二といえば「蟹工船」、という最低限の基礎知識は持ってはいるものの、共産主義に共感できない私としては原作を手にとって読むという気になれなくて、これまで読んだ事はない。
しかしながら映画となるとそのハードルは低くなるのも事実で、そんなわけで観た映画である。

観てわかったのは、蟹工船とは文字通り蟹を加工する船だという事。
蟹を採り、それを船内で加工して缶詰にする。
なぜ水揚げして工場で加工しないのかはわからないが、時代の流れのなかで生まれた仕事なのだろう。
この時代、労働者たちは搾取されていた。
それがたまたま蟹工船の中だったからこの物語が生まれたわけで、工場だったら「女工哀史」のようになっていたのかもしれない。

この映画、というか原作の良さの一つは、そういう(今は廃れてしまった)仕事があったという事実を知らしめる事である。
さて、その蟹工船であるが、蟹漁と言う事でカムチャッカ沖で操業している。
今もそうだが、ロシア領の鼻先で、しかも帝国海軍の護衛付きでの操業という状態はまさに時代を感じるものである。

船内では労働者たちが過酷な労働に晒されている。
詳しい説明はないが、監督者に鞭打たれ、人権も糞もあったものではない。
まさに「死んだ方がマシ」という状況で、労働者たちは奴隷のように働かされている。
次々に語る労働者たちの育った環境もまた悲惨で、貧乏で食い扶持を減らすためだけに働きに出たような身分である。
逃げて帰るにも逃げ場所はないわけである。

こうした船内で、新庄という若者が、次第に発言権を増してゆく。
そして漁の最中に載っていたボートが本船とはぐれ、ロシア船に救われる。
やがて本船に戻った新庄は、仲間に対し団結を呼びかけていく。
まさに共産主義の宣伝のようなお話で、だからこそ小林多喜二は悲惨な最期を遂げる事になるのである。

こうした過酷な労働者の環境は、日本のみならず世界共通で、だからこそロシアで革命が起こり、史上初の社会主義国家が誕生し、だからこそ各国はその波及を恐れ「反共」が一つの国家の課題になったのである。
今エジプトやリビアで起こっている「革命」をアラブ諸国や中国が警戒するのも、同じ理屈である。
一度は成功した船内の反乱を鎮圧したのは帝国海軍であるのは、まさにそれを象徴している。

確かにこうした環境下で共産主義が生まれたのは必然であり、その後人権思想が広まり、今では(少なくとも先進国では)過去のものとなっている。
共産主義も歴史的役割を終えており、小林多喜二の原作も「歴史の過渡期」の記念碑と言えるのだろう。
今ではこの映画も、あくまでも娯楽である。

主演は松田優作の子息、松田龍平。
「悪夢探偵」を観たあとだと、暗いイメージが定着してしまいそうである。
小林多喜二=蟹工船という基礎知識だけしか持っていない人は、気軽に楽しめる教養として観ておいて損はないと思う・・・


評価:★★☆☆☆


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2011年02月26日

新しい人生のはじめかた

新しい人生のはじめかた.jpg

原題: Last Chance Harvey
2008年 アメリカ
監督: ジョエル・ホプキンス
出演: ダスティン・ホフマン/エマ・トンプソン/アイリーン・アトキンズ/ジェームズ・ブローリン/キャシー・ベイカー

<STORY>********************************************************************************************************
NY在住のCM作曲家ハーヴェイは、一人娘スーザンの結婚式に出席するためロンドンへ向かう。
離婚以来久々に家族が揃うのを期待していたが、花嫁の父の役割はすでに元妻の再婚相手に委ねられていた。
追い討ちをかけるようにNYの上司からはクビを宣告する電話が。
所在なく落ち込むハーヴェイは、空港のバーで白ワイン片手にひっそりと読書をするケイトと知りあう。
孤独を抱えた2人はいつしか会話を弾ませるのだった。
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ダスティン・ホフマンと言えば、「卒業」以来注目している俳優さんだ。
「真夜中のカーボーイ」「パピヨン」「大統領の陰謀」「クレイマー、クレイマー」「トッツィー」「レインマン」・・・と名作を数え上げたらきりがない。

しかしながら最近は脇役が目についていた。
「マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋」
「主人公は僕だった」
「パフューム〜ある人殺しの物語〜」
バイプレーヤーもいいのであるが、本作では久々に主役復帰。
それがちょっと嬉しい感じである。

ダスティン・ホフマンも実年齢では70歳を越えている。
しかしながらこの映画ではもうちょっと若い役柄。
NY在住のCM作曲家ハーヴェイ。
一人娘スーザンの結婚式のためロンドンに向かう。
離婚した妻は新しいパートナーと人生をスタートさせており、ロンドンに到着早々ハーヴェイは疎外感を味わう。
さらに悪いタイミングで職も失う。

一方、空港で働くケイトは一人暮らしの母を案じながらも、自分も孤独を味わっている。
友人が男性を紹介してくれるも、うまくいかなくなって別れる事を恐れ、積極的にはなれない。
そんな二人がヒースロー空港で偶然出会う。

ハーヴェイの疎外感は相当なものだ。
てっきりみんな集まっていると思ったホテルに到着すると、ホテルに泊まるのは自分だけ。
式前夜の食事会では元妻の夫ブライアンが乾杯の音頭を取り、家族旅行の思い出を語りすっかり花嫁の父に収まっている。
とどめを刺すのは一人娘スーザンからバージンロードはブライアンと歩くという宣告。

まあたぶん家庭を顧みずに離婚の原因を作ったのはハーヴェイなのだと思うのだが、その結末は寂しいものがある。
それでもけなげに花嫁の父をアピールするところがいじらしい。
もういい年になった男と女の物語と片付けてしまうのはちょっと惜しい気がする。
随所に味わい深さが隠されている。
若い頃には何が幸せなのか、それに囲まれていてもわからないのかもしれない。
年を取るにしたがって見えてくるものもあるのだろう。

邦題は「新しい人生のはじめかた」とあって、確かにそのタイトルはストーリーにマッチしている。
ただ、原題の「Last Chance Harvey」の方がより相応しい気がする。
冒頭でプロデューサーからハーヴェイは“You have no more chavce,Harvey”と言われる。
その直後にタイトルが映し出される。
なかなかの演出だと思う。
まさにこれがハーヴェイにとってもケイトにとってもラストチャンスなのかもしれない。

ダスティン・ホフマン主演作に相応しい映画である・・・


評価:★★☆☆☆
 
  

   
posted by HH at 10:35 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年02月24日

ヒアアフター

ヒアアフター.jpg

原題: Hereafter
2010年 アメリカ
監督: クリント・イーストウッド
出演: マット・デイモン/セシル・ド・フランス/フランキー・マクラレン/ジョージ・マクラレン/ジェイ・モーア

<STORY>********************************************************************************************************
パリで活躍するジャーナリストのマリー(セシル・ドゥ・フランス)は、恋人と一緒に休暇で訪れていた東南アジアで、津波に遭遇。
波に飲まれて生死の境を彷徨ったものの、何とか一命を取り留める。
だが、帰国した後も、呼吸が停止した時に見た不思議なビジョンを忘れることができず、仕事が手につかなくなってしまう。
しばらく休暇を取ることになったマリーは、自分が見たビジョンが何だったのかを突き止めようと、調査を開始する……。********************************************************************************************************

タイトルにある“Hereafter”とは、「あの世」の意味らしい。
この映画ではそのタイトル通り、あの世の住人と語る男が主人公のドラマである。
その主人公を演じるのがマット・デイモン。
そして監督がクリント・イーストウッドとくれば、これは昨年公開された「インビクタス/負けざる者たち」のコンビ再来となる。
さらに制作総指揮がスティーヴン・スピルバーグとなれば、もう見逃す手はない。
映画はそんな期待に応えてくれた・・・

主な登場人物は3人。
パリのジャーナリスト、マリー。
恋人とのバカンス中に津波に飲み込まれ、臨死体験をする。
そしてそれ以来、その時に見た映像の事が忘れられなくなる。

サンフランシスコに住むジョージ。
霊能力者で、相手の手に触れる事で、その人に関わる死者と交信できる能力を持つ。
しかし、その能力を「呪われたモノ」として、封印しようと苦悩する。
そしてロンドンに住むマーカス。
仲の良かった双子の兄ジェイソンが、事故で突然死んでしまう。
ショックから立ち直れず、死者と話せるという霊能力者を訪ねて回る。

3人の登場人物が、それぞれ並行して描かれていく。
冒頭、バカンス中のマリー。
フランス人だからフランス語を話すのは当然なのだが、「何でも誰でも英語を喋るハリウッド映画」では違和感がある。
そういえば、クリント・イーストウッドは「硫黄島からの手紙」でも、全編日本語で撮影した実績がある。
ひょっとしたら、“現地の言葉”に対するこだわりがあるのかもしれない。

それにしても死者と話ができるという能力は、本当にあるならどうなるのだろう。
ジョージはその能力ゆえに苦悩する。
仲良くなりかけた女性にも去られ、自らその能力を封印しようとする。
しかし、欲を言えば、もう少し苦悩するに至るエピソードがあった方が良かった。
最愛の者を失って悲しむ者に、ジョージの存在は救いとなりそうに思えるからだ。
なのになぜ、その能力を封印しようとするのであろうか・・・

それにしてもマット・デイモンは、アクションからシリアスなストーリーまで多才に演じ分けるなと思わせられる。
しかしながら、共通しているのは「物静かな男」という部分だ。
「インビクタス/負けざる者たち」のキャプテン、ピナールもジェイソン・ボーンも物静かな男だし、「グッド・シェパード」「バガー・ヴァンスの伝説」もみなそうだ。
だが、それがまた彼の魅力でもあると思う。

あの世の話とはいっても、あの名作「シックス・センス」のような展開とはまったく異なるものになっていた。
死者との対話の部分よりも、3人の登場人物たちの人間像、人間ドラマにスポットライトが当てられているのである。
味わい深いラストが良かった・・・


評価:★★★☆☆


   
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posted by HH at 23:14 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(1) | ドラマ

2011年02月15日

バガー・ヴァンスの伝説

バガーヴァンスの伝説.jpg

原題: The Legend of Bagger Vance
2000年 アメリカ
監督: ロバート・レッドフォード
出演: ウィル・スミス/マット・デイモン/シャーリーズ・セロン/ジャック・レモン/ジェイ・マイケル・モンクリーフ

<STORY>********************************************************************************************************
'28年ジョージア州サヴァンナ。
伝説のゴルファーであるジュナ(M・デイモン)は戦場で心傷つき、隠遁生活を送っていた。
一方、自殺した父に代わりゴルフ場を切り盛りするジュナの元恋人アデール(S・セロン)は大不況にあえぐゴルフ場を救うため、エキジビジョン・マッチを企画、ジュナを出場させようとする・・・
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監督ロバート・レッドフォード、主演ウィル・スミス、そしてマット・デイモンとシャーリーズ・セロンが共演となるとこれは垂涎モノの映画である。
今まで見逃していたのが悔やまれる。
そして映画は見事期待通りの作品となっている。

ジョージア州サバンナで名声をほしいままにしたゴルファー・ジュナ。
勇んで志願した第1次大戦で心に傷を負い、今はクラブを置いて怠惰な生活を送っている。
かつての恋人アデールは、大恐慌の影響で自殺した父親の負債を返すべく、残されたゴルフ場で再起のイベントを計画する。
2人のトップ・ゴルファーを招聘し、エキジビジョン・マッチで対決させようというものだ。
そして地元代表として、ジュナにも出場を要請する。

埃を被っていたクラブを取りだし、練習を始めるジュナ。
しかし、ブランクの影響は大きい。
そこに現れたのは不思議な男バガー・ヴァンス。
彼はたった5ドルでジュナのキャディーを申し出る。

第1次世界大戦に大恐慌という歴史の荒波の中で、試練にさらされる人々。
一方でゴルフという貴族的なスポーツの対比。
膨大な負債を負い、借金返済のためにゴルフ場を売るように迫られたアデールが思いつきで口走ったイベントが、地元の人々に活気を与え街を上げてのイベントになっていく。
そうした背景が、映画に彩りを与えている。

主役はウィル・スミスなのであるが、映画が始って30分、忘れた頃にようやく画面に登場する。
映画は一人の少年の目を通して語られるのであるが、もう一人の主役はマット・デイモン演じるジュナ。
第1次大戦で傷つき、恋人もゴルフも捨てるが、街の人々の声援に心を動かされ、2人のトッププロとの対戦に向かう。
その心境の動きも映画の見所。

不思議な男バガー・ヴァンスの素性は謎のまま。
その正体は観る者の判断に委ねられる。
映画を観終わって思いだしたのは、「フィールド・オブ・ドリームス」である。
あの映画で主人公レイを導いた“声”とバガー・ヴァンスとが重なってイメージされた。
観る者によっては、あるいはそれが事実なのかもしれない・・・
そんな思いにさせられる映画である。

これは観ないと人生の損失だ・・・


評価:★★★★☆

    
posted by HH at 23:06 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年01月30日

レスラー

レスラー.jpg

原題: The Wrestler
2008年 アメリカ
監督: ダーレン・アロノフスキー
出演: ミッキー・ローク/マリサ・トメイ/エヴァン・レイチェル・ウッド/マーク・マーゴリス/トッド・バリー

<STORY>********************************************************************************************************
“ザ・ラム”のニックネームで知られ、かつては人気を極めたものの今では落ち目でドサ廻りの興業に出場しているレスラー、ランディは、ある日、ステロイドの副作用のために心臓発作を起こし、医者から引退を勧告されてしまう。
馴染みのストリッパー・キャシディに打ち明けると、家族に連絡するように勧められる。
長らく会ってない娘・ステファニーに会いにいくが、案の定、冷たくあしらわれてしまって…。
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主人公は往年の名レスラー、ランディ“ザ・ラム”ロビンソン。
冒頭で1980年代のランディの活躍ニュースが流される。
観衆を熱狂させ、悪役レスラー・アヤットラーとの世紀の一戦は今もファンの間で伝説となっている。
物語はそんな栄光の時代の20年後である。

既に肉体のピークは過ぎ、地方巡業でかろうじて現役を維持。
トレーラーハウスで暮らし、生活のためスーパーで働く。
それでも家賃が払えなくて、しばし家主から締め出されてしまう生活。
プロモーターから支給されるギャラも、寂しい限り。

会場に入れば、いまだにレスラー仲間からは尊敬を集める。
肘やひざに分厚くテーピングを施し、リングに向かう姿は痛々しい。
そんなレスラーを演じるのは、ミッキー・ローク。
かつては二枚目で鳴らしたミッキー・ローク。
二枚目俳優はみなそれなりにダンディに年を取るものであるが、この人の変貌は凄い。
とても「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」や「ナイン・ハーフ」のミッキー・ロークと同一人物とは思えない。

驚くのはプロレスラーの舞台裏を赤裸々に綴っている事。
試合前に試合展開の打ち合わせをする。
テーピングテープにカミソリを仕込み、流血を演出する。
常人離れした肉体を保つためにステロイドを始めとして、薬物を大量に摂取する。
虚像の裏の世界をリアルに描き、それが物語に厚みを加える。

試合後に心臓発作を起こして倒れるランディ。
手術によって一命は取り留めたものの、レスラーとしては再起不能の宣告を受ける。
孤独に耐えかね、長年音信不通の娘と連絡するも冷たくされる。
栄光の時代に遠征、遠征で家庭を顧みなかった事が窺い知れる。
家族のために働いていたのか、自らの栄光に酔いしれて家庭を顧みなかったのかは定かではないが、栄光と引き換えの代償は大きい。

栄光のリングで生きてきた男。
リングでしか生きられない男。
リングから離れようとしても離れられない現実。
とっくに限界を越えてしまった肉体。

一人のレスラーの生きる姿が息苦しく目に映る。
ミッキー・ロークもそんなレスラーになりきっている。
それは何だか「栄光の二枚目時代」を誇る彼自身の姿ともダブって見える。
ラストがちょっと切ないこの映画は、ミッキー・ロークそのものなのかもしれない。

見応えのある映画である・・・


評価:★★★☆☆

    
    
posted by HH at 22:13 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ