2011年03月30日

【ラブリーボーン】My Cinema File 680

ラブリーボーン.jpg

原題: The Lovely Bones
2009年 アメリカ・イギリス・ ニュージーランド
監督: ピーター・ジャクソン
出演: シアーシャ・ローナン/マーク・ウォールバーグ/レイチェル・ワイズ/スーザン・サランドン/スタンリー・トゥッチ/マイケル・インペリオリ

<STORY>********************************************************************************************************
スージー・サーモンは、14歳のときに近所に住む男にトウモロコシ畑で襲われ、殺されてしまった。
父は犯人捜しに明け暮れ、母は愛娘を守れなかった罪悪感に苦み、家を飛び出してしまった。
スージーは天国にたどり着く。
そこは何でも願いがかなう素敵な場所で、地上にいる家族や友達を見守れる。
スージーは、自分の死でバラバラになってしまった家族のことを心配しながら、やり残したことを叶えたいと願うのだった…。
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「私はスージー・サーモン、1973年12月6日14歳で殺されたの・・・」という何やら衝撃的なイントロで映画は始る。
14歳の女の子と言えば微妙な年齢だ。
もう子供とは言いにくいし、大人にもなりきれていない。
男の子に誘われる友達を尻目に、密かにあこがれる男の子に対する切ない恋心も隠したままだ。

冒頭から殺されるとわかっているから、いつその時が来るのだろうと観てしまう。
憧れの男の子から土曜日のデートに誘われ、夢見るままに帰る帰り道、トウモロコシ畑で“その時”はやってくる。
そして殺されたあと、スージーはこの世とあの世の狭間で、愛するパパとママ、おばあちゃんと妹の家族を見守っていく事になる。

死者と生きている者の物語というと、デミ・ムーアの「ゴースト」やブルース・ウィリスの「シックス・センス」などが浮かぶ。
しかし、この映画は「ゴースト」のようにロマンティックではなく、「シックス・センス」のようにオカルトチックでもない。
ちょっとしたスリルはあるのだが、ハッピーエンドとも言い難い、不思議な映画だ。

スージーができる事といったら、家族や友人たちを見守るだけ。
彼女が見守る中で、家族はスージーを失った痛手に苦しみ、犯人を捜し、そうしながらも日々の暮らしを続けていく。
妹は少しずつ成長し、そしてスージーが経験できなかったファーストキスをいつのまにか経験する。
それを見守るスージーの複雑な心境が画面を通して伝わってくる。

主演のスージーを演じるシアーシャ・ローナンであるが、これが実に可愛い。
実はキーラ・ナイトレイ主演の「つぐない」に13歳で出演していたようなのであるが、まったく記憶にない。
「つぐない」でアカデミー賞にノミネートされたらしいから、容姿だけではなく実力もあるのだろう。
これからちょっと注目したい女優さんだ。

ストーリーは観る者にとってはハッピーエンドと言い難い。
意外性があるエンディングと言えばそう言えるのであるが、やっぱりこの手のストーリーとなると、ハッピーエンドを期待したいところだから、個人的にはどうだろうかと思う。
ちょっと心に重いモノが残ってしまった気がする・・・


評価:★★☆☆☆
 


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posted by HH at 23:03 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年03月21日

【ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜】My Cinema File 674

ヴィヨンの妻.jpg

2009年 日本
監督: 根岸吉太郎
原作: 太宰治
出演: 松たか子/浅野忠信/室井滋/伊武雅刀/妻夫木聡/堤真一/広末涼子

<STORY>********************************************************************************************************
戦後の東京で、才能がありながら放蕩三昧を続ける小説家・大谷を健気に支えて暮らす妻の佐知。
貧しさを忍びつつ幼い息子を育てていたが、これまでに夫が踏み倒した酒代を肩代わりするため椿屋という飲み屋で働き始める。
佐知は水を得た魚のように生き生きと店の中を飛び回り、若く美しい彼女を目当てに通う客で椿屋は繁盛する。
そんな妻の姿を目にした大谷は、いつか自分は寝取られ男になるだろうと呟くのだった・・・
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太宰治については、実は読んだ事がない。
暗いイメージが付きまとう太宰治に対する「食わず嫌い」が原因である。
それでも「斜陽」や「人間失格」、「走れメロス」などの代表作は知っている。
しかしこの映画の原作となる「ヴィヨンの妻」については、タイトルすら知らなかった事を告白したい。

主人公は小説家大谷の妻佐知。
夫である大谷は、才能があるとはいうものの、家庭を顧みない男で、妻の佐知は熱のある子供を病院に連れていくお金にも困るほどの貧乏暮らしを強いられている。
なのに本人は飲み歩く日々。
ある夜、夫が通う小料理屋の夫婦が大谷を泥棒と呼びながら家に押し掛けてくる。

何も知らない佐知の対応は実に見事。
夫が逃げた後、小料理屋の夫婦を家に上げ、丁寧に事情を聞き詫びを入れる。
そして盗んだお金を返した後も夫が踏み倒した飲み代を返すために、自ら小料理屋で働き始める始末。
店は若い佐知が入った事で、たちまち客が溢れ繁盛する。

店には夫と関係のあるらしい女たちが出入りするも、佐知は物静かに対応する。
幼子を抱え、忙しい店内で客に愛想を振りまき、大谷に稼いだお金を持っていかれても平然と過ごす。
まさに妻の鏡のような良妻。
今時どこをどう探してもこんな奥さんはいない。
物語の中とはいえ、果てしない憧れ感に襲われる・・・

大谷自身はそうしただらしなさはあるものの、一方でその思考の世界の奥深さは計り知れない感じがする。
そうして行きつくところは自殺願望。
まるで太宰治本人のようである。
実際、心中に失敗し、自殺ほう助未遂で取り調べを受けるところは、太宰本人とまさに被る部分である。

主人公の佐知を演じるのは松たか子。
健気な奥様が胸に沁み入る。
夫の大谷には浅野忠信。
この人のキャラなのだろうか、「母べえ」「サッドヴァケイション」のように、不器用な男がよく合っている。

その他にも堤真一や広末涼子、妻夫木聡などが出ていたりして、実はキャスティングがすごいのである。
伊武雅刀と室井滋の夫婦も実に味がある。
戦後まもなくの時代背景をバックとして、実際にはいないのだろうが妻の鏡のような女性の生きる姿に心を動かされてしまう。

食わず嫌いはやっぱり良くないかもしれない、と思わせられる映画である。


評価:★★☆☆☆

    
 
 
posted by HH at 11:45 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年03月13日

【ベルサイユの子】My Cinema File 671

ベルサイユの子.jpg

原題: VERSAILLES
2008年 フランス
監督: ピエール・ショレール
出演: ギョーム・ドパルデュー/マックス・ベセット・ド・マルグレーヴ/ジュディット・シュムラ/オーレ・アッティカ/パトリック・デカン

<STORY>********************************************************************************************************
幼い息子エンゾを連れた若い母親のニーナは凍てつくパリの街をさまよう路上生活者。
ある晩、寒さをしのぐために収容されたのはベルサイユ宮殿近くの施設だった。
翌日、パリへ戻ろうとする2人は森の中で道に迷い、森で暮らす男ダミアンに出会う。
ニーナはダミアンに道徳心があることを感じ取り、一夜を共にした後、エンゾを残し姿を消す。
その日からエンゾはダミアンと2人で生きて行くことになるのだった・・・
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幼い息子エンゾを連れた若き母親ニーナ。
家はなく、寒さをしのぐ場所を探しては息子と抱き合って寝る。
詳しいプロフィールはないものの、失業中である事は明らかであり、エンゾの父親ともとうの昔に別れている事は言われなくてもわかる。
パリは日本で言えば北海道くらいの緯度であり、ホームレスにとっては厳しいところだろうと簡単に想像がつく。
こうした人たちは多いのだろうかとふと思ってしまう。

それでもそんなニーナ親子を見つけて施設に入れてくれる組織がある。
ベルサイユにあるその施設に滞在すればいいのに、と傍から見ていて思うのだが、ニーナ親子はパリへ戻ろうとする。
パリで就職する当てを新聞で見つけたためである。
ところが森で迷い、偶然森で暮らすホームレス男ダミアンと知り合う。

ベルサイユ宮殿の周りに広がる森に、こうしたホームレスが実際に多く住んでいるのかどうかはわからないが、器用に生活している。
あろうことか、ニーナは息子をこの男の元に置いて姿を消す。
女一人でパリで職を見つけて生活基盤を築くには子供が邪魔になると考えたのだろう。
それでもあとで迎えに来るのだったら、一言頼んでも良さそうなのにとまたまた傍観者として思ってしまう。

かくして突然子供を押し付けられたダミアンとエンゾとの生活が始る。
日本でもホームレスは多く見かけるが、さすがに子連れはいない。
親にも自覚があるのか、サポートがあるのかはわからないが、やがて一時とはいえ、働き始めたダミアンの姿を見れば、子育てという本能がそうさせるのかもしれない。

映画自体はどうっていう事のないストーリーなのであるが、路上生活者(森林生活者?)の姿を見ているといろいろと考えさせられる事は多い。
たぶん、映画製作の意図もそんなところにあったのかもしれない。
真面目に働けば、少なくとも衣食住は最低限確保できるとは思うが、そうしたくはないものが何なのかよくはわからない。
結局は個人の価値観なのだろうが、共感するのは難しい。
ともあれそうした諸々の事を考えてみるきっかけとなる映画である・・・


評価:★★☆☆☆


     
posted by HH at 11:23 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年03月06日

【蟹工船】My Cinema File 670

    蟹工船.jpg

2009年 日本
監督: SABU
出演: 松田龍平/西島秀俊/高良健吾/新井浩文/柄本時生

<STORY>********************************************************************************************************
カムチャッカ沖。
蟹を缶詰に加工する蟹工船・博光丸の船内では、出稼ぎ労働者たちが安い賃金で過酷な労働を強いられていた。
少しでも手を抜くと監督・浅川の容赦のない暴力に晒されてしまう。
労働者たちは仲間の1人・新庄の言葉に従って自殺しようとするも、結局死ぬことすらできなかった。
そんなある日、新庄と塩田は漁の最中に博光丸とはぐれてしまう。
そして冬の海で寒さに凍える彼らを助けたのは、ロシアの船だった……
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「蟹工船」といえば小林多喜二。
小林多喜二といえば「蟹工船」、という最低限の基礎知識は持ってはいるものの、共産主義に共感できない私としては原作を手にとって読むという気になれなくて、これまで読んだ事はない。
しかしながら映画となるとそのハードルは低くなるのも事実で、そんなわけで観た映画である。

観てわかったのは、蟹工船とは文字通り蟹を加工する船だという事。
蟹を採り、それを船内で加工して缶詰にする。
なぜ水揚げして工場で加工しないのかはわからないが、時代の流れのなかで生まれた仕事なのだろう。
この時代、労働者たちは搾取されていた。
それがたまたま蟹工船の中だったからこの物語が生まれたわけで、工場だったら「女工哀史」のようになっていたのかもしれない。

この映画、というか原作の良さの一つは、そういう(今は廃れてしまった)仕事があったという事実を知らしめる事である。
さて、その蟹工船であるが、蟹漁と言う事でカムチャッカ沖で操業している。
今もそうだが、ロシア領の鼻先で、しかも帝国海軍の護衛付きでの操業という状態はまさに時代を感じるものである。

船内では労働者たちが過酷な労働に晒されている。
詳しい説明はないが、監督者に鞭打たれ、人権も糞もあったものではない。
まさに「死んだ方がマシ」という状況で、労働者たちは奴隷のように働かされている。
次々に語る労働者たちの育った環境もまた悲惨で、貧乏で食い扶持を減らすためだけに働きに出たような身分である。
逃げて帰るにも逃げ場所はないわけである。

こうした船内で、新庄という若者が、次第に発言権を増してゆく。
そして漁の最中に載っていたボートが本船とはぐれ、ロシア船に救われる。
やがて本船に戻った新庄は、仲間に対し団結を呼びかけていく。
まさに共産主義の宣伝のようなお話で、だからこそ小林多喜二は悲惨な最期を遂げる事になるのである。

こうした過酷な労働者の環境は、日本のみならず世界共通で、だからこそロシアで革命が起こり、史上初の社会主義国家が誕生し、だからこそ各国はその波及を恐れ「反共」が一つの国家の課題になったのである。
今エジプトやリビアで起こっている「革命」をアラブ諸国や中国が警戒するのも、同じ理屈である。
一度は成功した船内の反乱を鎮圧したのは帝国海軍であるのは、まさにそれを象徴している。

確かにこうした環境下で共産主義が生まれたのは必然であり、その後人権思想が広まり、今では(少なくとも先進国では)過去のものとなっている。
共産主義も歴史的役割を終えており、小林多喜二の原作も「歴史の過渡期」の記念碑と言えるのだろう。
今ではこの映画も、あくまでも娯楽である。

主演は松田優作の子息、松田龍平。
「悪夢探偵」を観たあとだと、暗いイメージが定着してしまいそうである。
小林多喜二=蟹工船という基礎知識だけしか持っていない人は、気軽に楽しめる教養として観ておいて損はないと思う・・・


評価:★★☆☆☆


posted by HH at 11:44 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年02月26日

【新しい人生のはじめかた】My Cinema File 668

新しい人生のはじめかた.jpg

原題: Last Chance Harvey
2008年 アメリカ
監督: ジョエル・ホプキンス
出演: ダスティン・ホフマン/エマ・トンプソン/アイリーン・アトキンズ/ジェームズ・ブローリン/キャシー・ベイカー

<STORY>********************************************************************************************************
NY在住のCM作曲家ハーヴェイは、一人娘スーザンの結婚式に出席するためロンドンへ向かう。
離婚以来久々に家族が揃うのを期待していたが、花嫁の父の役割はすでに元妻の再婚相手に委ねられていた。
追い討ちをかけるようにNYの上司からはクビを宣告する電話が。
所在なく落ち込むハーヴェイは、空港のバーで白ワイン片手にひっそりと読書をするケイトと知りあう。
孤独を抱えた2人はいつしか会話を弾ませるのだった。
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ダスティン・ホフマンと言えば、「卒業」以来注目している俳優さんだ。
「真夜中のカーボーイ」「パピヨン」「大統領の陰謀」「クレイマー、クレイマー」「トッツィー」「レインマン」・・・と名作を数え上げたらきりがない。

しかしながら最近は脇役が目についていた。
「マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋」
「主人公は僕だった」
「パフューム〜ある人殺しの物語〜」
バイプレーヤーもいいのであるが、本作では久々に主役復帰。
それがちょっと嬉しい感じである。

ダスティン・ホフマンも実年齢では70歳を越えている。
しかしながらこの映画ではもうちょっと若い役柄。
NY在住のCM作曲家ハーヴェイ。
一人娘スーザンの結婚式のためロンドンに向かう。
離婚した妻は新しいパートナーと人生をスタートさせており、ロンドンに到着早々ハーヴェイは疎外感を味わう。
さらに悪いタイミングで職も失う。

一方、空港で働くケイトは一人暮らしの母を案じながらも、自分も孤独を味わっている。
友人が男性を紹介してくれるも、うまくいかなくなって別れる事を恐れ、積極的にはなれない。
そんな二人がヒースロー空港で偶然出会う。

ハーヴェイの疎外感は相当なものだ。
てっきりみんな集まっていると思ったホテルに到着すると、ホテルに泊まるのは自分だけ。
式前夜の食事会では元妻の夫ブライアンが乾杯の音頭を取り、家族旅行の思い出を語りすっかり花嫁の父に収まっている。
とどめを刺すのは一人娘スーザンからバージンロードはブライアンと歩くという宣告。

まあたぶん家庭を顧みずに離婚の原因を作ったのはハーヴェイなのだと思うのだが、その結末は寂しいものがある。
それでもけなげに花嫁の父をアピールするところがいじらしい。
もういい年になった男と女の物語と片付けてしまうのはちょっと惜しい気がする。
随所に味わい深さが隠されている。
若い頃には何が幸せなのか、それに囲まれていてもわからないのかもしれない。
年を取るにしたがって見えてくるものもあるのだろう。

邦題は「新しい人生のはじめかた」とあって、確かにそのタイトルはストーリーにマッチしている。
ただ、原題の「Last Chance Harvey」の方がより相応しい気がする。
冒頭でプロデューサーからハーヴェイは“You have no more chavce,Harvey”と言われる。
その直後にタイトルが映し出される。
なかなかの演出だと思う。
まさにこれがハーヴェイにとってもケイトにとってもラストチャンスなのかもしれない。

ダスティン・ホフマン主演作に相応しい映画である・・・


評価:★★☆☆☆
 
  

   
posted by HH at 10:35 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ