2010年11月27日

【セントアンナの奇跡】My Cinema File 631

セントアンナの奇跡.jpg

原題: Miracle at St. Anna
2008年 アメリカ=イタリア
監督: スパイク・リー
原作・脚本 : ジェームズ・マクブライド
出演:  デレク・ルーク/マイケル・イーリー/ラズ・アロンソ/オマー・ベンソン・ミラー/ジョン・タトゥーロ

<STORY>********************************************************************************************************
ニューヨークの郵便局で働く定年間近の局員が、ある日窓口で切手を買いに来た男性客をいきなり銃殺した。
男の名はヘクター。
前科や借金などもなく、精神状態も良好の実直な男だった。
家宅捜査の結果、彼の部屋から長きに渡って行方不明となっていたイタリアの貴重な彫像が発見された。
一向に犯行動機を口にしないヘクターだが、やがて重い口を開く。
謎を解く鍵は第2次世界大戦真っ只中の1944年、イタリアのトスカーナにあった・・・
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タイトルからは何となく感動的なストーリーを想像してしまい、期待に胸を膨らませて観た映画である。
冒頭、ニューヨークの郵便局。
窓口で働く職員ヘクターが切手を買いに来た男性客を凝視する。
そしておもむろに取りだしたルガーで男性客を射殺する。

ヘクターの部屋からはイタリアの彫像が発見され、それが高価なものであると判明する。
謎だらけの冒頭のシーンであるが、黒人のヘクターと第二次大戦中のドイツ軍用拳銃とイタリアの彫像。
それがストーリーのキーファクターとなる。

そしてストーリーは第二次大戦下のイタリアへと飛ぶ。
すでに米軍がイタリアに侵攻し、ドイツ軍と戦火を交える。
現地のパルチザンがこれに加わる。
米軍の部隊は黒人部隊。
同じ軍内と言えども白人は黒人を見下す。

この対立も一つのキーとなる。
米軍内の黒人と白人の対立。
パルチザンもドイツ軍に内通する裏切り者を抱える。
ドイツ軍も冷酷な大佐とそれに反発する大尉の対立がある。
敵と戦う一方で内部にも矛盾を抱える勢力が、戦争という大きな流れの中で相対峙する。

そんな最前線にありながら、味方舞台と離れた米黒人兵のビショップ、トレイン、ヘクター、スタンプが、イタリアの田舎町の人々と交流する。
ドイツ軍が現住民を虐殺したセントアンナの虐殺は歴史上の事実らしいが、この事件が起こる中で、やがて登場人物たちの運命が交叉する。

奇跡といえば確かにそうなのかもしれないが、正直に言って何となく理解しにくい内容だった。
無理に結論付けている気もしなくもない。
163分という時間もちょっと長さを感じてしまう映画である。


評価:★★★☆☆

    
posted by HH at 00:22 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2010年10月24日

【ダウト −あるカトリック学校で−】My Cinema File 621

ダウト〜あるカトリック学校で〜.jpg

原題: DOUBT
2008年 アメリカ
監督・原作戯曲・脚本 : ジョン・パトリック・シャンリィ
出演:  メリル・ストリープ/フィリップ・シーモア・ホフマン/エイミー・アダムス

<STORY>********************************************************************************************************
1964年のニューヨーク。
ブロンクスにあるカトリック学校セント・ニコラス・スクールでは、校長のシスター・アロイシスが厳格な指導を信条に日々職務を果たしていた。
一方、生徒の人気を集めるフリン神父は、ストイックな因習を排し進歩的で開かれた教会を目指していた。
しかし、唯一の黒人生徒ドナルドと不適切な関係にあるのではないかという疑惑が持ち上がり、シスター・アロイシスによる執拗な追及が始まるのだった…。
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この映画はもともと舞台のものらしい。
それゆえなのか、俳優同士のガチンコのぶつかり合いでストーリーは進んで行く。
舞台は舞台で観てみたい気にさせられる映画である。

ストーリーはあるカトリック学校で始る。
校長はメリル・ストリープ演じる怖い女校長。
そしてその学校が付属する教会の神父として登場するのがフィリップ・シーモア・ホフマン。
教会とそれに付属するカトリック学校という日本ではあまり馴染みのない制度だ。

ここで神父に疑惑(DOUBT)が起こる。
黒人生徒ドナルドとの性的関係である。
疑惑の発端は、担任のシスター・ジェイムズがフリン神父がドナルドの下着を彼のロッカーに入れたのを見た事である。
さらにドナルドが教会のワインを飲んでいた事がわかる。
報告を受けた校長は直ちにフリン神父追及を始める。

メリル・ストリープも大迫力。
その怖い姿は「プラダを着た悪魔」の編集長そのままである。
そしてフィリップ・シーモア・ホフマン。
黒にかぎりなく近い灰色の人物としてはうってつけ。
この人が出てくるだけで疑惑(DOUBT)は深まる。

厳しい追及の手を緩めない校長と、必死に弁護するフリン神父。
間で右往左往するシスター・ジェイムズ。
疑惑はあるが、事を荒立てる事に不安を感じて神父を信じてしまおうとしたいシスターを演じるのは、エイミー・アダムス。
シリアスな役柄なのであるが、「魔法にかけられて」での能天気なお姫様の雰囲気を十分に備えている。
大ベテラン二人の間で、存在感が光る。

白か黒かと思って見ているうちに、ドナルドの母親が登場し、白でも黒でもない意見が飛び出してくる。
そこでは、貧しい黒人家庭で「事情を抱えた」息子の将来を案ずる母親の切実な気持ちが露わにされる。
正義は確かに必要だが、歪んだ社会の中では正義に蓋をする必要もあるのではないかと思わせられる。

校長、神父、母親3者の意見のどれに与するかは個人の考え方だとは思うが、簡単にこれと決めにくいものがある。
そして最大の疑惑は疑惑として観る者の判断にゆだねられる。
なるほど舞台らしい濃厚なドラマである。


評価:★★☆☆☆



     
posted by HH at 11:45 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2010年10月23日

【UNエージェント】My Cinema File 620

UNエージェント.jpg

原題: Résolution 819
2008年 フランス・ポーランド・イタリア
監督: ジャコモ・バティアート
出演: ブノワ・マジメル/イポリット・ジラルド/カロリナ・グルツカ/ケン・デュケン

<STORY>********************************************************************************************************
1995年7月、国連が保護する「安全地帯」に指定されていたスレブレニツァから、8,000人を超えるムスリム人(ボシュニャク人)が消息を絶った。
事態を重く見た旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷(ICTY)はフランス人捜査官ジャックを派遣する。
捜査を開始したジャックは、ラトコ・ムラディッチ率いるスルプスカ共和国軍による恐るべき戦争犯罪を知る。
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ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を題材とした映画である。
同じ題材としては、過去に「ハンティング・パーティー」を観たが、これとはまた趣向が違う。

この映画で取り上げられているのは、スレブレニツァの虐殺と言われている事件。
ムラディッチ将軍が率いるスルプスカ共和国軍によるムスリム人虐殺事件である。
この事件の捜査のために派遣されたのはフランス人の捜査官ジャック。
映画は基本的に実話であるが、この捜査官ジャックは複数の人物を元にした架空の人物らしい。

かつて『7つの隣国、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字により構成される1つの国』と言われたユーゴスラビアだが、チトー死後に大分裂。
紛争が勃発して各地で民族浄化と言われる虐殺事件が起こる。
この映画の題材となっているスレブレニツァの虐殺もその一つ。

映画の冒頭では市街地にスルプスカ共和国軍による砲撃が出てくる。
国連軍が派遣されているものの、手も足も出ない、出せない。
現地の指揮官による空爆要請も却下されてしまう。
挙句の果てには、国連軍の目の前で住人が連れ去られてしまう。
理想とは裏腹に国連の持つ機能の限界が描かれている。
さらには国連軍はヘルメットや装備などを奪われ、これが後にスルプスカ軍が国連軍に扮して、ムスリム人をおびき寄せて虐殺を行うというあり様にも発展する。

映画は主人公のジャックが、懸命の捜査を通じてやがて戦争犯罪人として、ムラディチ以下の人物を逮捕していくのであるが、どうも事件の紹介という感が漂う映画である。
1時間半という短さのせいか、早送りされた感じで映画は進む。
日本ではほぼ無名の俳優陣は新鮮だが、それがスポットライトが俳優陣よりも事件に当っているような感じがする一因でもある。

正直言って映画の出来はともかく、このような事件が現代でも起こり続けている事に暗鬱な気分にさせられる映画である。
ちなみに原題はスレブレニツァを安全地帯に指定した国連決議のことである。


評価:★★☆☆☆


     
posted by HH at 11:33 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2010年10月17日

【オーストラリア】My Cinema File 619

オーストラリア.jpg

原題: AUSTRALIA
2008年 オーストラリア
監督・原案・脚本 : バズ・ラーマン
出演 : ニコール・キッドマン/ヒュー・ジャックマン/デヴィッド・ウェンハム/ブライアン・ブラウン/ジャック・トンプソン

<STORY>********************************************************************************************************
第二次世界大戦前夜のオーストラリア。
イギリス人貴族のレディ、サラ・アシュレイは、夫を捜しに北部の町・ダーウィンにやって来た。
彼女を迎えたのは無骨なカウボーイ、ドローヴァー。
夫の領地に着いたサラは、夫が何者かに殺されたことを知る。
彼女に残されたのは、広大な牧場と1500頭の牛だった。
牧場を立て直すため牛を売ることを決心したサラは、ドローヴァーの力を借り、牛を引き連れ出発する…。
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オーストラリアといえば、エアーズロックにグレートバリアリーフなどといった雄大な自然に恵まれた観光地という印象があるが、砂漠と原住民アボリジニという問題もある。
これはそんな砂漠とアボリジニのオーストラリアを舞台とした恋愛映画である。

時は1939年、ヨーロッパでは第二次世界大戦が始ろうとしている。
イギリス人貴族のサラ・アシュレイはオーストラリアに行ったきりの夫を探しにダーウィンにやってくる。
澄ました貴婦人のサラを無骨な男ドローヴァーが出迎える。
貴婦人と埃の舞う街と荒くれ男たちというミスマッチ。

なんとか夫の領地に辿りついたサラであるが、対面したのは夫の遺体。
アボリジニの矢で射抜かれて絶命していた。
残された屋敷にはアボリジニのメイドたちと混血の少年ナラ。
オーストラリアは当時「同化政策」という、白人とアボリジニの混血児を隔離して白人社会で育てるという政策を取っており、ナラは警察から逃げ回っていた。
これが全編を通じての背景となる。

ナラのおかげで牧場で不正を働いていたフレッチャーを追い出したサラは、母親を失ったナラを慰めるうちに情が湧いてくる。
夫の残した牛と牧場を狙って安く買いたたこうとする地主。
サラを助けて牛をダーウィンまで運ぶドローヴァー。
ストーリーは本場の西部劇さながらの展開で進んで行く。

牧場を畳んでイギリスに帰ろうとしていたサラがドローヴァーに惹かれ、ナラを放置できなくなっていく。
やがて始る太平洋戦争でダーウィンは日本軍の爆撃も受ける。
こうした中で描かれる2時間40分の大作はかなり見応えがある。
このまますべて受け入れて観てしまうのもそれなりに楽しめる。

しかしながら結局なんだか優越的な立場の白人が、混血の子を保護するという白人の「上から目線」も感じる映画でもある。
「同化政策」を反省するテロップも出るのではあるが、白人視線が最後まで気になる事も確かである。
まあ白人が創っているのであるから、当然といえば当然なのであるが・・・

とはいえ、貴婦人然としていたニコール・キッドマンが、荒くれた土地でなりふり構わず同化していくストーリーは痛快だ。
周りの婦人たちが顔をしかめるのもお構いなく、悪に立ち向かい自分を通していく。
そんな主人公像はニコール・キッドマンのイメージにあっている。

さまざまな要素が盛り込まれたストーリーも面白い。
観る価値十分の映画である。


評価:★★★☆☆



    
posted by HH at 12:05 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2010年09月27日

【マンデラの名もなき看守】My Cinema File 611

マンデラの名もなき看守.jpg

原題: Goodbye Bafana
2007年 フランス=ドイツ=ベルギー=南アフリカ
監督: ビレ・アウグスト
出演 :  ジョセフ・ファインズ/デニス・ヘイスバード/ダイアン・クルーガー

<STORY>********************************************************************************************************
南アフリカで刑務所の看守として働くジェームズ・グレゴリーがロベン島の刑務所に赴任した1968年、アパルトヘイト政策により、反政府運動の活動家の黒人が日々逮捕され、投獄されていた。
グレゴリーはそこでネルソン・マンデラの担当に抜擢される。
黒人の言葉・コーサ語が解るので、会話をスパイするためだ。
妻のグロリアは夫の出世を喜び、順風満帆のようだった。
だがマンデラに初めて会った時から、グレゴリーは特別な印象を抱き始める・・・
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タイトルにある通り、これは元南アフリカ大統領ネルソン・マンデラが、投獄されていた時に看守だったジェームズ・グレゴリーの手記を映画化したものである。

アパルトヘイト廃止後の南アフリカに焦点を当てた「レッドダスト」、27年間の投獄生活を経て自由の身となり、さらに大統領となったネルソン・マンデラとラグビーチームを描いた「インビクタス/負けざるものたち」
今年に入って何だか南アフリカ付いているような気もするが、言ってみればその第3弾とも言える。

今回は投獄中のネルソン・マンデラの看守ジェームズ・グレゴリーにスポットを当てているところが興味深い。
(まあ本人の手記であるから当然なのであるが・・・)
マンデラの自伝である「自由への長い道」を読むと、グレゴリー氏の事はちょっとだけ出てくる。
もしかしたらグレゴリー氏が思うほどマンデラは彼の事をあまり意識していなかったのではないかと思ってしまう。

手記の方は読んでいないからなんとも言えない。
ただ、冒頭でマンデラをテロリストと信じて厳しい目つきで見ていたグレゴリーが、やがてマンデラの言動に惹きつけられていく様子は、あんまりはっきり描かれていない。
それゆえにマンデラに影響されていく様子が何か唐突なものに感じてしまう。
広場で運動のため歩かされているマンデラに、グレゴリーが寄り添って歩きながら話しかけるシーンがある。
たちまちグレゴリーは注意を受ける。
そんな状況下でなぜ、マンデラの言動に惹かれていくのか、映画を見ているだけではわかりにくい。
それに「自由への長い道」を読んでいたからこそ、展開についていけたところがあったが、読んでない人には果たしてどうだったのだろうかという疑問は残った。

マンデラは終身刑であったとはいえ、刑務所で虐待されていたわけではなく、むしろ自身弁護士として様々な権利の申し立てをしていた。
のちに国内情勢、国際的批判の中でマンデラがロベン島の刑務所から本土の刑務所に移されていくが、その背景も映画ではよくわからない。

もう少し丁寧に描かれていれば多少は感動的になったのかもしれない。
街中で白人警官が、黒人たちにIDの提示を求めるシーンがある。
提示できない者は片っ端から投獄される。
赤ん坊を抱いた母親に対してでさえ容赦はなく、それを目撃したグレゴリーの娘はショックを受ける。
そうしたアパルトヘイトの現実がもう少し見たかった気もする。

何度も辞めようとして慰留されるグレゴリー。
コーサ語が話せるという特技が彼を体制が必要とする人間たらしめたようである。
原題のBafanaとは彼が幼少時に一緒に遊んでいた黒人の子供の名前。
彼が「名もなき看守」だったのかどうか。
原題・邦題とも何だかしっくりこない映画である・・・


評価:★★☆☆☆

     
posted by HH at 23:13 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ