2010年07月15日

【情愛と友情】My Cinema File 570

情愛と友情.jpg
 
原題: Brideshead Revisited
2008年 イギリス
監督: ジュリアン・ジャロルド
出演:  マシュー・グード /ベン・ウィショー /ヘイリー・アトウェル /エマ・トンプソン /マイケル・ガンボン

<STORY>********************************************************************************************************
オックスフォード大学に入学したチャールズは、貴族の息子セバスチャンと出会い、友情とも愛情ともつかぬ妖しい関係を深めていく。
しかし、セバスチャンの屋敷“ブライズヘッド”に招かれたチャールズは、彼の美しい妹ジュリアにも惹かれてしまうのだった。
一見すると由緒正しき豪奢な貴族一家。
その実、家庭内は敬虔なカトリック信者である母親のマーチメイン夫人によって仕切られ、彼女の厳格さに閉口した夫のマーチメイン卿はヴェネチアへ逃避し、セバスチャンとジュリアも母の強制的な信仰的教育に苦しんでいた・・・
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「情愛と友情」という邦題はなんだかわかったようなわからないようなものである。
原題は「再び訪れたブライズヘッド」とでも訳すべきであろうか、「ブライズヘッド」という屋敷を舞台とした貴族の物語であるが、どちらにしてもタイトルはいまいちピンとこない。

イギリスは階級社会と言われている。
日本人には馴染みにくいのだが、この映画を観ればそれがよくわかる。
主人公のチャールズは貧しい家の出身。
オックスフォード大学に入学するも周りの貴族の子弟たちとは歴然とした差がある。
立ち居振る舞いのすべてが鼻もちならず、絶対友達にはなれないと思うのだ。

入学早々知り合ったセバスチャンはそんな貴族の子弟の一人。
招かれてランチに行くも、シャンパンにワインにと優雅な食事に、やたら出身を話題にする会話。
庶民からかけ離れた貴族社会に戸惑うのはセバスチャンだけでなく、観ているこちら側も同じである。

続いてセバスチャンに家に招待される。
出掛けて行ったお屋敷は城と見間違うばかりの大邸宅。
庶民派の私としては、ついつい「掃除が大変そう」と思ってしまう。
もしも我が家だとしたら、絶対手伝わされるに違いないと実に庶民的な発想をしてしまう。

そしてセバスチャンの母親を囲んでの優雅な食事。
しかしながらこの母親、カトリックだと言う。
イギリスは英国国教会のはずだし、カトリックの貴族がどういう位置付けになるのか、ここら辺はかの国の事情に通じていないからわからない。
そしてこれが後々大きな意味を持ってくる。

同性愛のセバスチャンと彼の妹のジュリア。
セバスチャンに対する友情と、ジュリアに対する愛情。
貴族の生活と母親の信仰。
いろいろな要素がミックスされ、濃厚なストーリーが展開される。
厚いハードカバーの文学作品を読んでいるが如き映画である・・・


評価:★★☆☆☆

     
posted by HH at 22:40 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2010年07月03日

【バーンアフターリーディング】My Cinema File 566

バーンアフターリーディング.jpg

原題: Burn After Reading
2008年 アメリカ
監督・製作・脚本 : ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン
出演 :  ブラッド・ピット/ジョージ・クルーニー/ジョン・マルコヴィッチ/フランシス・マクドーマンド/ティルダ・スウィントン

<STORY>********************************************************************************************************
CIAの機密情報が書き込まれた1枚のCD-ROMを、勤務先のフィットネスセンターで拾ったチャドとリンダ。
チャドはそれを利用して一攫千金を狙う大胆な計画を思いつく。
そのころ、元CIA諜報員のオズボーンは、機密情報の紛失にうろたえていた。
一方、オズボーンの妻ケイティは、財務省連邦保安官ハリーと不倫中で…
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「ノーカントリー」のコーエン兄弟が監督・制作・脚本まで手掛けた一作。
出演者をみると、ブラピ、ジョージ・クルーニー、ジョン・マルコビッチと意外な大物が出演していてちょっと驚く。

「読み終えたら燃やせ」というタイトルは何やらスパイ映画のようであるが、その名の通りのスパイ映画である。
しかし007シリーズのようなものを想像するとだいぶ違う。

CIAのアナリスト、オズボーンは飲酒が原因で機密情報に接する機会の少ない部署への転属を言い渡される。
しかし、激怒したオズボーンはその場で辞めてしまう。
そしてそれまでの経験を基にした暴露本の執筆に取り掛かる。

そんなオズボーンの妻ケイティは、財務省連邦保安官のハリーと不倫中。
ケイティはオズボーンと別れるためにパソコンのデータをすべてコピーするが、その中には暴露本のデータも含まれており、それが偶然フィットネスクラブに勤めるチャドとリンダの手に渡る。

オズボーン、ケイティ、ハリー、チャド、リンダ、そしてCIA。
オズボーンは自尊心を守ろうとし、ケイティはオズボーンと別れてハリーと一緒になりたくて、ハリーはただいろいろな女性とお楽しみしたいだけで、チャドは面白半分でお金を得ようとし、リンダは整形手術の費用が欲しかっただけなのである。
そんな交わる事のない人々が微妙に絡み合い、驚くべき展開に発展する。

その意外性のあるストーリーが見どころ。
バカバカしいと言えばバカバカしい。
シリアスなんだか不真面目何だかわからない映画だし、なのになんでこんな大物が出ているのか不思議なのだが、やっぱり面白いと思う気持ちが若干勝った映画である。


評価:★★☆☆☆

     
posted by HH at 11:36 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2010年06月28日

【春よこい】My Cinema File 565

春よこい.jpg

2008年 日本
監督:  三枝健起
原作・脚本 : 中村努
出演 :  工藤夕貴/西島秀俊/時任三郎/宇崎竜童/吹石一恵/ 高橋ひとみ

<STORY>********************************************************************************************************
唐津市呼子町で漁業を営む芳江。
夫の修治は、不慮の事故で借金取りを死なせ、4年間、姿を消していた。
父親と息子のツヨシを養うため、芳江は必死で働いていた。
ある日、交番に貼られた指名手配犯の父親の写真を眺めるツヨシの姿が地元新聞に掲載される。
その記事が元で噂が蒸し返され、芳江は仕事を休業に追い込まれてしまう。
記事を書いた記者、岡本は責任を感じ、修治を捜し出し、たった1日でも家族の時間を作る事を決意する・・・
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2008年作といえば、本当に最近の公開作品なのだが、あんまり記憶に残ってない。
気が付かなかったのか、あんまり宣伝していなかったのか・・・
もちろん、何の情報もなく観る事になった。

時代は30年ほど前の九州が舞台。
一人のチンピラが一軒の家に土足で上がり込んで船の鍵を奪っていく。
追いかけるその家の主である修治。
船の上で乱闘となり、チンピラはアクシデントで頭を打って死んでしまう。
修治はそのまま逃走。
残された妻の芳江は息子ツヨシとともに、世間の風当たりに耐えながら暮らしている・・・

もともとは船を買うための借金が元なのだが、それがどうやらあこぎな高利貸しの手に渡って、チンピラが借金のカタに船を取りに来たとの事らしい。
そんな事って現実的にあり得ないだろう、などと突っ込むのはナンセンス。
ナンセンスなのだが、やっぱりある程度は現実味というものを持たせてほしいと思う。
それに状況からして正当防衛だろうし、今やそのくらいの知識は誰だって持っているだろう。
ちょっと苦しい不自然な前提でドラマは始まる。

父親が指名手配されているとなれば、子供が学校でイジメられるのは当然の成り行き。
父親を恋しがる息子の姿を大々的に報じてしまう地元新聞。
個人情報のない時代だとはいえねぇ・・・それはいかんだろうと思わず突っ込みを入れてしまう。
残された芳江とツヨシの親子。
ツヨシの担任と新聞記者のその兄。
彼らの織りなす人間模様。

新聞記者の兄は、先日「真木栗ノ穴」で主演を演じていた西島秀俊。
けっこう二枚目なんだな、この人。
それに刑事役で登場したのは宇崎竜童。
これが何となく味のある刑事なのである。
主演の 工藤夕貴や時任三郎よりもいい味出していた感じである。

何となく感動映画に仕上げたかったんだろうなという感じは伝わってくるのであるが、その試みは空振りだったようである。
やっぱり不自然な前提が苦しかったのと、ストーリー展開が読めてしまったのがその原因だ。
こういう映画って難しいだろうな・・・


評価:★★☆☆☆

     
posted by HH at 22:54 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2010年06月20日

【そして、私たちは愛に帰る】My Cinema File 562

そして、私たちは愛に帰る.jpg

原題: Auf der anderen Seite(独)/The Edge of Heaven(英)/Yaşamın kıyısında(トルコ)
2007年 ドイツ/トルコ/イタリア
監督:  ファティ・アキン
出演 :  バーキ・ダヴラク/ハンナ・シグラ/ヌルセル・キョセ/トゥンジェル・クルティズ/ヌルギュル・イェシルチャイ/パトリシア・ジオクロース

<STORY>********************************************************************************************************
ハンブルクに住む大学教授のネジャットの老父アリはブレーメンで一人暮らしだったが、同郷の娼婦イェテルと暮らし始める。
ところが、アリは誤ってイェテルを死なせてしまう。
ネジャットはイェテルが故郷トルコに残してきた娘アイテンに会うためにイスタンブールに向かう。
そのアイテンは反政府活動家として警察に追われ、出稼ぎでドイツへ渡った母を頼って偽造パスポートで出国し、ドイツ人学生ロッテと知りあう・・・
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ふだん観る映画はその大半がアメリカ映画か邦画であり、その他の国の映画は数が少ない。
個人的な趣味もあるが、やっぱり配給量の差というものもあるだろう。
数が少ないながらも我々の目に留まるという事は、逆に厳選された映画だけが配給されているとも言えるかもしれない。
そんな期待をもって観た「ドイツ=トルコ」映画である。

一人暮らしの老人アリが一人の女性に声をかける。
場所は雰囲気からすると娼婦街。
元気だなと思う反面、相手の娼婦もえらくくたびれているなというのが正直なところ。
やがてこの娼婦イェテルも27の娘がいるとわかる。
見た目の判断は間違っていなかったわけである。

アリもイェテルも出身はトルコ。
ドイツでは労働者の移民が問題となっているが、そんな社会的問題をまさに映し出す内容なんだろうと想像する。
日本でも民主党が「移民受け入れ増」を主張しているが、それに伴う事象をいろいろと考慮しないといけないだろう。
やがてアクシデントから同居していたイェテルをアリは殺してしまう。

シーンが変わってトルコで反政府活動に加わるアイテン。
指名手配され仲間の手引きでドイツへと逃れる。
知り合ったロッテの家でロッテの母と議論になる。
「トルコではお金持ちでなければ教育は受けられない、それを改善するために戦っている」と主張するアイテン。
「そんなのトルコがEUに加盟すれば解決する」と答えるロッテの母。

EU神話のようなものを感じさせるシーンである。
こうしたセリフが映画の中で語られるという事は、市民の間にもそんな感覚があるのかもしれない。
トルコの抱える問題があぶり出される映画である。

そんな2つの物語が後半で一つに融合していく。
交わる事のなかった二つの家族が「死」をきっかけに交わっていく。
同時に壁があった二組の親子の間からその壁がなくなる。
社会問題を浮き彫りにしつつ、親子の愛情を描いた映画であり、やっぱり配給される理由は十分に理解できる映画だと言える。

たまにはこういう映画もいいものである・・・


評価:★★☆☆☆


     
posted by HH at 11:11 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2010年06月15日

【真木栗ノ穴】My Cinema File 560

真木栗ノ穴.jpg

2007年 日本
監督・脚本 : 深川栄洋 
出演:  西島秀俊/粟田麗/木下あゆ美/キムラ緑子/北村有起哉

<STORY>********************************************************************************************************
売れない小説家の真木栗勉は、古いアパートで小説を書く日々を送っていた。
ある夜、彼は部屋の壁に二つの「穴」がある事に気付く。
真木栗は官能小説の執筆を依頼される。
隣の男が女を引っ張り込んで、情事に耽る様子を覗いては小説のネタにしていた。
ある日、彼はアパートを見上げている美しい女を目にする。
どうやら部屋を探しているようだ。
隣室宛の荷物を預かった真木栗は、反対側の「穴」を覗いてみた。
すると、あの女が…
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あらすじをまったく知らずに映画を観始めるというのは面白い経験だ。
メジャーな映画は大抵あちこちで宣伝活動をしているから、否が応でもある程度のあらすじはわかってしまう。
少なくともホラーなのかファンタジーなのかSFなのかはわかるものだ。
それゆえに、まったく予備知識なく観られる映画というのは貴重でもある。

この映画はまさにそんな一作。
ただし、未知の映画とはいってもそれはあくまでも「私にとって」という意味である。
ほとんどタイトルだけで観る事を決めたこの映画。
タイトルと言ってもただの気まぐれでしかない。

冒頭で400字詰め原稿用紙に万年筆で文章を書く男真木栗が登場。
どうやらタイトルは男の名前らしい。
今ならパソコンだろうから、少し昔の作家といった感じだ。
いい男だが売れない作家。
一つの連載が終わるも次の連載の目処はたたない。
行きつけの中華料理店で、パートの女性に声をかけられアパートに誘われる。
「うちでお風呂に入らない?」

「お風呂に入っていかない」と誘われてついていく真木栗。
一人狭いユニットバスに浸かっていると、女が入ってくる。
「穴」で連想される一つに「のぞき」がある。
当然、その先にはエロチックなものがあり、「そうか、これはそういう映画か」と一人頷く。

「穴」は壁の穴であり、ご丁寧に両方の壁に空いているものだから、両隣がのぞけてしまう。
ふとしたきっかけで連載が決まるも、それは何と官能小説。
おまけに担当が若い女性。
両隣を覗くうち作品のアイディアが次々とわいてくる。
空いている隣に越してきた若き女性。
もはや完全な官能ストーリーへと発展していく・・・

真木栗はいい男なのに、なぜか女に対してはクールだ。
周りで渦巻く官能の世界。
中心にありながら彼だけは官能の世界へは向かわない。
やがて、彼自身もその世界に飛び込む事を決意した時、ストーリーは意外な方向へと進んで行く。

そうか、そういう映画だったのか。
思わず観終わってつぶやいた映画である・・・


評価:★★☆☆☆
     
    
posted by HH at 22:21 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ