2010年01月16日

闇の子供たち

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2008年 日本
監督・脚本 : 阪本順治
原作 : 梁石日
出演: 江口洋介/宮崎あおい/妻夫木聡/佐藤浩市/鈴木砂羽

<STORY>********************************************************************************************************
日本新聞社バンコク支局で、幼児人身売買を取材する記者、南部は、日本人の子供がタイで心臓の移植手術を受けるという情報を得る。
知人に金を握らせ、臓器密売の元仲介者に接触した南部は、提供者の幼児は、生きたまま臓器をえぐり取られるという衝撃の事実を知る。
取材を続ける南部は、ボランティアの少女、恵子と知り合う。
純粋すぎてすぐ感情的になる恵子に苛立つ南部だが、善悪に対する感覚が麻痺している自分を恥じてもいた・・・
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東南アジアへの売春ツアーといえば、一時期問題になった。
日本の物価が高く、それゆえに海外、それもアジアへ行けば安く「楽しめる」からである。
そうした問題については目新しいものではないが、この映画で問題とされているのは「臓器売買」。
しかも提供されるのは心臓で、提供するのは生きている人間とくるとさすがに衝撃を受ける。
臓器といっても腎臓のように1つ取っても大丈夫というのであれば、まだわからなくもないが、心臓となるとそれはもはや殺人以外の何ものでもない。

主人公はバンコクで働く日本人記者南部。
日本からの情報で臓器売買のネタを追う事になる。
そして独自のルートでたどり着いたブローカーから聞いた心臓移植の情報に愕然とする。
提供を受けるのは日本人の子供。
提供者はタイの貧しい家の子供。
身に迫る危険を顧みず取材を続けていく。

日本人ボランティアの恵子は、子供たちのための施設で働き始める。
ある時行方がわからなくなった生徒が売春宿で働かされているという情報を掴み、施設の人達と捜索を始める。
そして行き着いた売春宿で働かされていたのはいずれも子供たち・・・

この映画はフィクションである。
ゆえにある程度はドラマチックに描かれているところもあるだろう。
だが、本質的な部分ではおそらく同様のケースも多いのだろう。
そしてその根底には貧困という問題がある。

「需要があるから供給がある」のか、「供給があるから需要がある」のかは判然とはしない。
しかし、先進国に住む人間として求められているのはモラル以外の何ものでもない。
この映画は娯楽作品というジャンルには入れにくいものがある。
「問題提起」という意味合いが強いのだ。
見たくもないが確実に存在している負の部分。
それを考えるきっかけになる映画といえる・・・


評価:★★☆☆☆
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2009年12月26日

落下の王国

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原題: The Fall
2006年 アメリカ
監督・製作・脚本 : ターセム
出演: リー・ペイス/カティンカ・アンタルー/ジャスティン・ワデル/ ダニエル・カルタジローン /レオ・ビル

<STORY>********************************************************************************************************
1915年のアメリカ、オレンジの木から落ちて怪我をし、入院中の5歳の少女、アレクサンドリア。
人懐こい少女は、あどけない笑顔で病院中の人々に可愛がられていた。
ある日、足の怪我でベッドから起きられない青年と知り合う。
病室に入ってきた利発そうな少女に、青年は自分が作った物語を聞かせる。
たちまち夢中になって、続きを聞かせてとせがむ少女。
しかし、それは少女に自殺するための薬を盗み出させるための作戦だった…。
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物語の舞台は1915年のアメリカ。
ある病院で出会った青年と少女。
青年は映画のスタントマンで、おそらく撮影中の事故で半身不随となってしまった。
おまけに恋人も俳優に奪われて自暴自棄になっている。
一方無邪気な少女アレクサンドリアは腕を骨折して入院しているものの、暇をもてあまして病院内を探検している。
そんな少女と青年が出会う。

青年は幼い少女に話しかけ、他愛もないおとぎ話を語り始める。
動けない自らに代わって自殺するための薬を取ってこさせようと企んだのであるが、語り始めるうちに次第に物語は膨らんでいく。
ストーリーは青年と少女の交流と、青年が語るおとぎ話とが平行して進む。

タイトルにある「落下の王国」。
現代は”Fall”であるが、どうやらスタントマンとして様々な落下シーンに臨んだ青年を暗示している。
自暴自棄になって「落ちていく」事も暗示しているのかもしれない。
少女アレクサンドリアはどこまでも無邪気。
青年の語るおとぎ話にぐいぐいと引き込まれていく。

そんな少女に架空のおとぎ話を語るうちに、いつしか自暴自棄になっていた青年の心も癒されていく。
まだ映画勃興期のアメリカ。
映画発展の礎となった人達の苦労がわずかながら偲ばれるところもある。
たまにはこういう映画もいいかもしれない・・・


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 18:43 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2009年12月19日

山のあなた 徳市の恋

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2008年 日本
監督・編集 : 石井克人
出演 : 草なぎ剛/加瀬亮/マイコ/広田亮平/三浦友和/堤真一

<STORY>********************************************************************************************************
新緑の季節。
目の不自由な按摩の徳市と福市が、山の温泉場に向う道を歩いている。
彼らは前を歩く人間の数や性別、どこから来たかをかぎ分けられる鋭い勘の持ち主。
その彼らの横を1台の馬車が駆け抜けていく。
馬車には東京から来た女性・三沢美千穂、大村真太郎、真太郎の甥・研一が乗っていた。
徳市たちが温泉場の按摩宿泊所に落ち着くと、宿屋・鯨屋から呼び出しがかかる。
徳市が療治に向うと、お客は美千穂だった・・・
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山間の温泉場を舞台とした按摩と東京から来た女の物語。
冒頭、二人の按摩が山道を歩いている。
季節によって移動する彼らは海の温泉場から山の温泉場に向っているらしい。
盲目ではあるものの、足取りはしっかりしており、「目明きを追い抜く」のを密かな楽しみとして歩いている。
草なぎ剛演じる徳市は向うから歩いてくる子供の人数もピタリとあてるなど勘が鋭い。
温泉場に着くと馴染みの宿屋に赴き、知り合いに挨拶する様はとても盲目とは思えない。

徳市は宿に宿泊していた東京から来ているという女性客に呼ばれる。
肩をもみながら彼女が悩みを抱えている事をさり気なく見抜く。
さらに東京から来ているという伯父と甥の二人。
徳市と彼ら彼女との交流を静かに綴っていく。
時はおそらく戦前。
下界から遮断されたが如き山間の温泉場でのそんなお話はなんともいえない味わいがある。

徳市を演じるのはSMAPの草なぎ剛。
同じSMAPのキムタクが、「武士の一分」「HERO」で映画においても才能を示しているが、草なぎ剛も良い味出している。
今後映画界での活躍もあるのだろうか。

女性客を演じるマイコはこれがデビュー作のようである。
年は若いようであるが、和服姿のちょっと怪しげな女性客。
独特の雰囲気を醸しだしている。
整った顔立ちだし、これからメジャーになるのだろうか。
三浦友和や堤真一などの大物もさり気なく出てくる、ちょっと味わい深い映画である。


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 11:48 | 東京 ☀ | Comment(1) | TrackBack(1) | ドラマ

2009年12月13日

紙屋悦子の青春

紙屋悦子の青春.jpg

2006年 日本
監督:  黒木和雄
原作 : 松田正隆
出演 :  原田知世/永瀬正敏/松岡俊介/本上まなみ/小林薫

<STORY>********************************************************************************************************
鹿児島の片田舎に住む紙屋悦子は、兄夫婦と3人、寄り添うように暮らしていた。
長引く戦争に、不安は募るが、酸っぱくなった芋に文句を言ったり、亡き父の思い出話に大笑いしたりと、家族と過ごす時間は、楽しいものであった。
ある日、悦子に見合い話が持ち上がった。
相手は、兄の高校の後輩である明石少尉の親友、永与少尉だった。
悦子と明石は、密かに心を寄せ合っていた。
しかし、海軍航空隊に所属する明石は、明日の命も危ぶまれる身。
自分よりも、生き残る可能性が高い永与に、悦子を任せようとしたのだった・・・
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タイトルは「紙屋悦子の青春」とあるものの、事前にタイトルを観て内容を想像しているとかなり違う印象を受ける。
「紙屋」とあるから、「紙」の仕事をしているのかと思ったら大間違い。
単なる苗字にしか過ぎない。
「神谷」とでも考えておいた方がいいだろう。

そして「青春」とあるから、若く甘酸っぱい日々を想像していたが、実際はかなり静かな映画で、あの日の出来事とでも言えるようなものであった。
ほぼ全編にわたって会話だけでストーリーは進む。
場面も現代の病院の屋上、昭和20年の紙屋家(食卓と玄関)だけである。
登場人物たちの静かな会話だけがこの映画のすべてである。

しかしながらそうした会話がしみじみと伝わってくる。
ストーリーの骨子としては冒頭に出てくる老夫婦(悦子夫妻)が、戦時中に結婚する事になった経緯が淡々と描かれるのである。
波乱と言えば、もともと悦子が心を寄せていた明石少尉が、親友を悦子に紹介する事だろうか。
海軍航空隊に所属するパイロットである自分の行く末を考え、整備兵で生き残る確立の高い親友に好きな女性を譲ったのである。
戦時中の切ない恋が唯一の盛り上がりとなる。

しかしながら、その静けさのあまりかしみじみと心に残る映画である事も確かである。
原田知世と本上まなみの、友人でありながら義姉妹という関係や、同じく本上まなみ・小林薫の兄夫婦との関係も穏やかでしっとりとしたものである。
現代版の小津映画を観ているような印象を受けた映画である・・・


評価:★★☆☆☆

posted by HH at 11:21 | 東京 ☀ | Comment(1) | TrackBack(0) | ドラマ

2009年12月11日

あの日の指輪を待つ君へ

あの日の指輪を待つ君へ.jpg

原題: Closing the Ring
2007年 イギリス=カナダ=アメリカ
監督:  リチャード・アッテンボロー
出演:  シャーリー・マクレーン/クリストファ・プラマー/ミーシャ・バートン/ピート・ポスルスウェイト/ブレンダ・フリッカー/ネーヴ・キャンベル/グレゴリー・スミス

<STORY>********************************************************************************************************
1991年アメリカ。
長年連れ添った夫を亡くしたばかりのエセル・アンは、アイルランドの青年ジミーから突然の電話を受ける。
エセルの名とテディという名が刻まれた指輪をベルファストの丘で発見したというのだ。
50年前、永遠を誓った愛を失い、以来心を閉ざして生きてきたエセル。
夫の死に涙ひとつ見せず、娘のマリーに冷たいと非難されても決して心の内を語らなかった彼女に、封印した過去と向き合う時がやって来る・・・
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人はいろいろな過去を抱えて生きている。
あるものは良い思い出、そしてあるものは思い出したくもない過去。
エセル・アンのそれは恋人と誓った永遠の愛。
しかし、戦争という環境がそれを許さず、親の反対から二人だけで挙げた結婚式から時をおかずして恋人テディは戦死してしまう。
以来、エセル・アンはテディの友人と結婚し、子供も生まれるが心は封印して人生を送る・・・

何やら切ないロマンチックなストーリーに思われるが、現実的にはあまり共感性が湧いてこない。
二人の幸せ絶好調の時にはそれなりに楽しそうであるのだが、恋人(正式には夫)が戦死し、以来心を閉ざして生きてきたというのが、どうにもあまりよくは思えない。
50年という月日は長い。
子供も生まれればその成長を喜び、次第に時が傷跡を癒していくもの。
50年もの長きにわたって心を閉ざしてなんて、どうだろうと思ってしまう。

映画だからそれはそれで楽しめば、と思うもののこういうストーリーは主人公に共感できないとダメである。
「タイタニック」でもやっぱり亡き恋人を思う老婆が出てきた。
しかし、彼女は恋人との約束を守って精一杯人生を生きた。
そうして年老いて恋人との短いひと時を思い出していた。
だから共感度が高かったのである。
そういう心情がどうにも今一の映画だった。

舞台はアイルランドのベルファストであるが、そこにIRAのテロが加わり、不可思議なストーリー構成がよくわからない。
無理にこじつけられたように思えるストーリーも今一である。

主演のシャーリー・マクレーンは「西の魔女が死んだ」のサチ・パーカーのお母さんだという。
親子より老姉妹という気がしてならないが、いったいいくつなんだろうと思ってしまう。
あまり評価はできない映画だった・・・


評価:★☆☆☆☆
posted by HH at 23:10 | 東京 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ