2010年02月14日

休暇

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2007年 日本
監督: 門井肇
出演:  小林薫/西島秀俊/大塚寧々/大杉漣/柏原収史

<STORY>********************************************************************************************************
刑務官の平井は、職場で当たり障りのない付き合いを続け、40歳を越えた今も独身だった。
ある日、姉の紹介でシングルマザーの美香と見合いをする。
仲人に乗せられ、会ったその場で、二人の結婚は決まったような雰囲気に。
しかし、平井は、この結婚にささやかな希望を持っていた。
処刑の際、下に落ちて来た体を支える役をやれば、1週間の休暇が取れる。
美香を新婚旅行に連れて行きたい平井は、「支え役」を自ら志願するのだった…。
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刑務官という普段あまり日の当たらない職業に就く主人公平井。
そんな彼の姿を通し、刑務官の日常と苦悩を描く映画である。

真面目一筋に生きる彼は40歳を過ぎてようやくシングルマザーの美香と見合い結婚をする。
朴訥としたその様子からたぶんそれまで女性とあまり付き合った事はなかったと思われる。
それが子連れのシングルマザーと結婚する事になる。
慣れない女性との付き合いに加えて子供までできて、そのぎこちなさがうまく表現されている。

平行して刑務官としての日常が描かれる。
死刑囚として収監されているのが金田。
独居房で絵を描いて過ごす。
そんなある日、金田にも刑の執行日がやってくる。

金田がなぜ死刑になったのかはわからないが、大人しい日常生活からは死刑になるような人間には思えない。
刑務官にとってもそれは同様で、なのに仕事で彼を殺さないといけないという事実はかなり刑務官にとっても酷なのだろう。
執行のメンバーに選別されると一日休暇が与えられる。
そして絞首刑の時、死刑囚を支える(息絶えるまで動かないように押さえる)「支え役」ともなると一週間の休暇が与えられる。

そんな様子はどこまで実情を現しているのかわからないが興味深い。
死刑囚とはいえ、一人の人間が死ぬまで押さえているというのも嫌な役回り。
休暇が与えられるのも無理もないのかもしれない。
普通は誰も志願などしないのだが、平井はあえて志願する。
父の葬儀で休暇を取り尽くしてしまった平井は、新婚旅行に行く事ができなかったのである。

人を殺す役目を休暇を取るために志願する。
その葛藤が、この映画のポイントだ。
慶弔休暇は有給休暇とは別に取れるのではないのだろうか、などと野暮な詮索をしても仕方がない。
そこは映画だし、理由はどうあれ自分だったらどうするだろうと考えてみるのも興味深い。

観終わってなかなか面白いテーマの映画だと感じた。
日本映画も最近は幅広くなってきたとつくづく感じたのである・・・


評価:★★★☆☆


    
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posted by HH at 23:59 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2010年01月31日

レッドダスト

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原題: Red Dust
2004年 イギリス
監督: トム・フーパー
出演: ヒラリー・スワンク/キウェテル・イジョフォー/マリウス・メイヤーズ/イアン・ロバーツ

<STORY>********************************************************************************************************
アパルトヘイト廃止後の南アフリカでは、民族和解委員会の聴聞会で全ての罪を告白することで犯罪者が恩赦を受けていた。
ある時弁護士のサラは、元警官の恩赦申請に異議を申し立てた黒人政治家・アレックスを助けることになる・・・
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南アフリカの悪名高きアパルトヘイト。
すでに廃止されて久しいが、廃止された時に民族和解というものが進められ、聴聞会ですべての罪を正直に告白すれば過去の罪が免責されるという制度を導入した。
それ自体知らなかったが、それにしても思い切った政策である。
過去どんなに酷い事をしてもそれをすべて告白すれば許されてしまうのである。

元警官ヘンドリックスが制度を利用して恩赦を申し立てる。
彼はかつて黒人の抵抗グループのメンバーだったアレックスを捕らえ、拷問したのであった。
その恩赦申請を審議する聴聞会に当のアレックスは弁護士のサラとともに出席する。
実はアレックスには大事な目的があった。
それはその時一緒に逮捕され、直後に行方がわからなくなった友人ジゼラの行方(殺されて埋められた場所)を聞き出す事であった。

映画は過去のヘンドリックスの罪を暴く形で進んでいく。
アレックスもジゼラの行方を追及すると目論んでいるが、今ひとつ歯切れが悪い。
自身地元で育ち、白人の立場で黒人と付き合っていたために逮捕された経歴を持つサラがそれに協力する。
事件の経緯が明らかになるにつれ、アレックスが隠していた事実が明らかになり、彼も一転、裏切り者と仲間たちに糾弾される。

すべてを告白すれば恩赦となり自由の身となる制度。
「報復」よりも「真実」を優先し、対立してきた白人と黒人を融和させて一つの国として未来に目を向けやっていこうという趣旨なのだろうが、人間の感情はそう簡単にはいかない。
家族を殺された者が、目の前で殺した人間が自由になる事を本当に受け入れられるのか。
自分に当てはめて考えてみるととても難しい。
なかなか重いテーマである。


評価:★★★☆☆
    
posted by HH at 22:48 | 東京 ☀ | Comment(2) | TrackBack(0) | ドラマ

2010年01月30日

再会の街で

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原題: Reign Over Me
2007年 アメリカ
監督: マイク・バインダー
出演:  アダム・サンドラー/ドン・チードル/ジェイダ・ピンケット=スミス/リヴ・タイラー

<STORY>********************************************************************************************************
ニューヨークの歯科医アランは美しい妻と二人の娘に恵まれ、さらに仕事は順調、他人もうらやむ生活を送っていた。
ある日アランは大学時代のルームメイト、チャーリーを街で見かける。
彼は“9.11”で妻子を亡くして以来、消息がわからなくなっていたのだ。
後日アランは再びチャーリーと遭遇するが、彼は昔のことを覚えていない様子。
だが、自宅アパートに招待してくれた。
そこは何とも言えない不思議な空間で…
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主人公アランは歯科医。
表面上は順風満帆な人生。
しかし、どこ何かが足りない。
そんな時に大学時代のルームメイト、チャーリーを街で見かける。
再会したチャーリーはアランの事をまともに覚えていない。
「9.11」で家族すべてを失い、失意の中で精神を病んでいたのだった。

一方ドナという美人の患者に突然迫られるアラン。
拒絶すると「治療中に暴行を受けた」と訴えると脅される。
友情からチャーリーとしばしば夜中に外出するようになると、妻との間には不協和音が生じる・・・
チャーリーとドナと妻との間で苦悩するアラン・・・

何となくわかったようなわからないような映画。
この映画の主人公はやっぱりアランなのだが、どうも美人患者ドナとの絡みの意味がわからないし、結局チャーリーとの絡みも何が言いたいのかよくわからない。
「9.11」が何か意味があるのかもよくわからない。
傷ついた人達の再生の物語という意味なのかもしれないが、どうもなぁというのが正直な感想である。

バックに流れる70年代、80年代のロックも個人的に馴染みがないからかもしれない。
原題はザ・フーの曲名らしいが、歌声でわかったのはブルース・スプリングスティーンだけだった。
背景が理解できればもう少しわかるのかもしれないが、残念ながら今ひとつとしか言えない映画である・・・


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 12:40 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2010年01月24日

12人の怒れる男

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原題: 12
2007年 ロシア
監督:  ニキータ・ミハルコフ
出演: セルゲイ・マコヴェツキイ/ニキータ・ミハルコフ/セルゲイ・ガルマッシュ/ヴァレンティン・ガフト/アレクセイ・ペトレンコ/ユーリ・ストヤノフ/セルゲイ・ガザロフ

<STORY>********************************************************************************************************
ロシアでチェチェンの少年がロシア軍将校だった養父を殺害するという事件が起きた。
少年は第一級殺人の罪に問われ、検察は最高刑を求刑。
有罪となれば一生刑務所に拘束される運命だ。審議が終了し、市民から選ばれた12人の陪審員は、改装中の陪審員室の代わりに学校の体育館に通された。
携帯電話も没収され、全員一致の評決が出るまで幽閉されることに。
12人の長い長い審議が始まった・・・
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原題である「12」をみても何の映画かわからないが、邦題「12人の怒れる男」をみればそれがハリウッド映画(原題12 Angry men)のリメイクだとわかる。
名優ヘンリー・フォンダが出演したハリウッド版は、印象深い良い映画である。
そういう名画が頭に入っている人に対してはちょっとハンディがある映画なのかもしれない。

ストーリーはさすがにロシア版という事で、ロシア国内事情にあわせてアレンジされている。
ロシアでは死刑が廃止されているので、最高刑は終身刑である。
そしてチェチェンの少年がロシア軍将校だった養父殺害の罪で起訴されている。
ロシアの事情はよくわからないが、チェチェンといえば紛争地域であるし、ロシア語も話せないという少年は、ハリウッド版の被告が黒人青年であった事と同様、ロシア人からみれば「いかにも犯罪を犯しそうな」人間と捉えられるのだろう。
そして誰がみても有罪は明らかという状況で、陪審員たちは審議に入る。

誰もが簡単な評決だと考え、すぐに終わると思い、ろくに議論もせずに評決に入る。
陪審員制度は全員一致が原則である。
そして一人だけ無罪を主張する。
と言っても、名探偵よろしく事件の疑問点を上げて「おかしい」と主張するわけではない。
ただ、「人一人の一生がかかっているのにこんなに簡単に決めていいのか?」という単純な理由である。

当然周りからはブーイング。
みんな次の予定を抱えていたからだ。
彼はやむなく無記名での再投票を主張し、全員が有罪なら有罪に同意すると最後は折れる。
ところが無記名の投票でもう一人無罪とした者が現れる・・・

ここからの長い展開はハリウッド版と同様である。
日本でも「裁判員制度」がスタートし、こうした陪審員制度への感心が高まっている。
実際の審議はどのようなものかわからないが、登場人物の「簡単なモノに思えても、結果が重要だから慎重に扱うべき」というスタンスは大いに共感するところである。
このロシア版でもそれがすべてと言える。
実際、そこから「そういえば・・・」という意見が生まれてきたのである。

これから裁判員に選ばれる機会があるのかどうかはわからない。
だがもしもそんな機会に巡りあったなら、この二つの映画を思い出して(できればハリウッド版をもう一度観て)出かけたいものである・・・


評価:★★☆☆☆

posted by HH at 11:39 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2010年01月16日

闇の子供たち

闇の子供たち.jpg

2008年 日本
監督・脚本 : 阪本順治
原作 : 梁石日
出演: 江口洋介/宮崎あおい/妻夫木聡/佐藤浩市/鈴木砂羽

<STORY>********************************************************************************************************
日本新聞社バンコク支局で、幼児人身売買を取材する記者、南部は、日本人の子供がタイで心臓の移植手術を受けるという情報を得る。
知人に金を握らせ、臓器密売の元仲介者に接触した南部は、提供者の幼児は、生きたまま臓器をえぐり取られるという衝撃の事実を知る。
取材を続ける南部は、ボランティアの少女、恵子と知り合う。
純粋すぎてすぐ感情的になる恵子に苛立つ南部だが、善悪に対する感覚が麻痺している自分を恥じてもいた・・・
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東南アジアへの売春ツアーといえば、一時期問題になった。
日本の物価が高く、それゆえに海外、それもアジアへ行けば安く「楽しめる」からである。
そうした問題については目新しいものではないが、この映画で問題とされているのは「臓器売買」。
しかも提供されるのは心臓で、提供するのは生きている人間とくるとさすがに衝撃を受ける。
臓器といっても腎臓のように1つ取っても大丈夫というのであれば、まだわからなくもないが、心臓となるとそれはもはや殺人以外の何ものでもない。

主人公はバンコクで働く日本人記者南部。
日本からの情報で臓器売買のネタを追う事になる。
そして独自のルートでたどり着いたブローカーから聞いた心臓移植の情報に愕然とする。
提供を受けるのは日本人の子供。
提供者はタイの貧しい家の子供。
身に迫る危険を顧みず取材を続けていく。

日本人ボランティアの恵子は、子供たちのための施設で働き始める。
ある時行方がわからなくなった生徒が売春宿で働かされているという情報を掴み、施設の人達と捜索を始める。
そして行き着いた売春宿で働かされていたのはいずれも子供たち・・・

この映画はフィクションである。
ゆえにある程度はドラマチックに描かれているところもあるだろう。
だが、本質的な部分ではおそらく同様のケースも多いのだろう。
そしてその根底には貧困という問題がある。

「需要があるから供給がある」のか、「供給があるから需要がある」のかは判然とはしない。
しかし、先進国に住む人間として求められているのはモラル以外の何ものでもない。
この映画は娯楽作品というジャンルには入れにくいものがある。
「問題提起」という意味合いが強いのだ。
見たくもないが確実に存在している負の部分。
それを考えるきっかけになる映画といえる・・・


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 23:41 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(1) | ドラマ