2009年11月08日

告発のとき

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原題: In the Valley of Elah
2007年 アメリカ
監督・脚本・製作 : ポール・ハギス
出演:  トミー・リー・ジョーンズ/シャーリーズ・セロン/スーザン・サランドン/ジエームズ・フランコ/ジェイソン・パトリック

<STORY>********************************************************************************************************
2004年、ハンクの元に息子のマイクが軍から姿を消したと連絡が入る。
イラクから戻ったマイクが基地へ戻らないというのだ。
ハンクも引退した元軍人だった。
息子の行動に疑問を持ったハンクは基地のある町へと向かう。
帰国している同じ隊の仲間たちに聞いても、皆マイクの行方を知らなかった。
やがてマイクの焼死体が発見されたという連絡が入る。
ハンクは地元警察の女刑事エミリーの協力を得て、事件の真相を探ろうとするが…。
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最近はコーヒーのポスターでお馴染みのトミー・リー・ジョーンズ。
この映画は「ノーカントリー」と同じ年に撮影されている。
彼が演じるのはイラクから帰還後行方不明となった息子マイクを探す退役軍人ハンク。
行方不明という知らせに居ても立ってもいられず自ら探しに行く。

退役後も軍隊時代の習慣が身についているハンク。
ベッドをきっちりと畳み、靴をぴかぴかに磨き、服やズボンの皺もきっちりと伸ばす。
根っからの軍人であると思わせられる。
自らもベトナム従軍の経験を持っている。
そしてすぐにマイクの死体が発見される。

マイクの死の真相を探ろうとするハンク。
しかし軍の実情を知っているハンクは地元警察を頼る。
ここで登場するのが女刑事エミリー。
シャーリーズ・セロンだ。

交通課から実力で刑事になったが、カラダで昇進したんだろうと同僚刑事からのやっかみと嫌がらせに耐える毎日。
「スタンド・アップ」でセクハラに立ち上がった姿とダブってくる。
つまらない事件をあてがわれていた彼女にハンクが助けを求めてくる。

捜査が進むと軍の壁が立ち塞がる。
署内では協力する者がいない女性刑事とハンクの捜査が続く。
原題はダビデとゴリアテの故事に登場するエラの谷。
少年ダビデが巨人ゴリアテを倒した場所である。
小さなものが大きなものに立ち向かう様を暗示したタイトルはなかなかなものだと思う。

やがて事件の真相が判明するが、イラクの駐留米軍がかつてのベトナム化しつつある様子を暗示する。
アメリカにとってもイラクは重い存在になりつつあるようだ。
今後こうした映画が増えるのだろうか。
星条旗に対するハンクの姿勢が印象に残る。

大物二人の競演が見応えたっぷりの映画である。


評価:★★★☆☆
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2009年11月07日

さよなら。いつかわかること

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原題: Grace Is Gone
2007年 アメリカ
監督・脚本 : ジェームズ・C・ストラウス
音楽 : クリント・イーストウッド
出演 : ジョン・キューザック/シェラン・オキーフ/グレイシー・ベドナルジク/アレッサンドロ・ニヴォラ

<STORY>********************************************************************************************************
ホームセンターで働くスタンレーは、二人の女の子の父親。
母親は陸軍軍曹として、イラクに赴任中だった。
長女のハイディは、父親のいない時に、こっそり戦争のニュースを見ていた。
スタンレーは、母親を恋しがる娘たちとうまく接することが出来ず、いつもぎこちなく食卓を囲んでいた。
ある日、妻が亡くなったという報せが届く。
突然の妻の死を伝えることが出来ないスタンレーは、娘たちと小旅行に出かけることを思いつく…。
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男女平等のアメリカらしい映画である。
ともに軍人同士であったスタンレーとグレース夫妻。
ところがスタンレーは近視が理由で除隊となる。
軍に残った妻は、イラクへと赴任する。
そして帰らぬ人となる。
残された父と二人の娘の数日間の物語である。

女性も兵士として戦地へ赴いているアメリカ。
女性兵士が最前線で戦うということはないのだろうが、それでも戦死するケースというのも当然ありうるわけである。
ましてやイラクでは最前線というものがあるわけではない。
そんなアメリカならではの映画である。

軍関係者が戦死の知らせを伝えにくるシーン。
ドアを明けたところに軍服姿の二人が立っているのを見て、スタンレーは何があったかを悟る。
子供にその事実を言い出せず、思い立って旅行に出かける。
母親だったら泣き崩れるのであろう。
父親ゆえにそれができない。

かねてから行きたいと思っていた遊園地に突然行く事になり、無邪気に喜ぶ次女。
父親に隠れてイラクのニュースをみる長女は、しっかりしているとはいえまだ子供だ。
そんな二人に事実を告げられないスタンレーと3人の旅が静かに続く。

なんとなく弱々しいジョン・キューザックが父親として登場。
これはこれでハマっている気がする。
そしてクリント・イーストウッドが音楽を担当と珍しい。
短いが、淡々として盛り上がりにかけるきらいもなくはない。
テーマとしては面白いといえる映画だろう・・・


評価:★★☆☆☆

posted by HH at 23:59 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2009年10月31日

みかへりの塔

みかへりの塔.jpg

1941年 日本
監督: 清水宏
出演: 奈良真養/笠智衆/森川まさみ/横山準/古谷輝男/緒方喬/日守新一/忍節子

<STORY>********************************************************************************************************
乱暴者や、盗癖・虚言癖のある子供などなど、問題児ばかりを集めた教護施設で日夜、子供たちの教育に頭を悩ませる先生や保母たち。
そこへ新たに多美子という非行少女が入学してくるが、反抗的な彼女は学院の生活やルールを無視して周囲の連中といざこざを起こしたり、脱走を企てたりして、保母の夏村を困らせる。
またある日、卒業生の1人が学院を訪ねてくるが、実は彼は社会復帰に失敗して舞い戻ってきたことが判明し……。
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1941年というとまさに太平洋戦争開戦の年である。
この年の12月8日に真珠湾攻撃が起こったわけである。
それに先立つ事、すでに中国戦線では泥沼の日中戦争が続いており、米英との対立が深刻化。
国内世論も騒然としていた時代。
それでもこうして映画が作られている。

舞台はとある山間部の教護施設。
親元を離れた子供たちが集団で生活している。
問題児たちが集められているのであるが、その問題のレベルが問題である。
乱暴者や、盗癖・虚言癖のある子供などであるが、現代の水準からいくとどこが問題なのだと思ってしまう。

実際、子供たちは朝5時に起き、自分たちで布団をたたみ(おねしょをした子は自分で干し)掃除をし、揃って学校へと向う生活振り。
今の子供たちにできるだろうかと思う。
中には「とうちゃんはこの頃お酒をやめて真面目に働いています」なんて手紙が子供のところへ来ているから、子供ばかりの問題というわけでもなさそうである。

確かに細々としたところでは毎日問題が起こってはいるのであるが、子供の世界では当然と言えるレベルだと思える程度の問題である。
それが「問題」とされるのは、社会の許容度が今よりもずっと狭かったのかもしれない。
そうした学校で、職員たちは親代わりを兼ねて一緒に暮らしている。

学校にある塔が、象徴として描かれる。
この象徴の下で日々の暮らしが描かれていく。
水はすべて井戸の水。
子供たちが当番で汲みに行く。
やがてこの井戸が枯れかかり、水の確保が重要課題となる。
学校の脇を通る汽車の線路には踏み切りも柵もなくむき出しのまま。
水泳は川だ。
戦時下とは思えないのどかな田舎の暮らしぶり。

若き日の笠智衆が活き活きと演技している。
ついつい今の子供たちと比較して、まったく問題ない子供たちが、「問題児」とされているのだけが違和感漂うものの、ほのぼのとした気分になる。
このあと最も辛くて厳しい時代に突入していくわけであるが、この子達はみんなどうしたのだろうとふと思ってしまった。

この頃、すでに日本映画はかなり高い水準にあったのだと思わせられた映画である。


評価:★★☆☆☆

posted by HH at 19:51 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2009年10月26日

椿山課長の七日間

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2006年 日本
監督: 河野圭太
脚本 : 川口晴
原作 : 浅田次郎
出演 : 西田敏行/伊東美咲/成宮寛貴/志田未来/須賀健太

<STORY>********************************************************************************************************
デパートに勤務する椿山課長はバーゲンで大忙しの中、倒れて突然死してしまう。
そんな椿山が目を覚ました場所は天国と地獄の中間に位置する“中陰役所”だった。
ここでは「天国行き」か「地獄行き」かの審判を下されるのだが、自分の死に納得がいかず、かつ戻る事情があると判断された者は、3日間だけ現世に戻ることが許される。
突然死した椿山は、現世への“逆送”を希望。
戻ってきた椿山は正体を隠すため若い美女の姿になり…
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原作は浅田次郎の小説。
浅田次郎の小説は、胸に何かが残るものが多く、そのためか映画化されるものも多い。
代表的なのは「鉄道員(ぽっぽや)」であるが、「メトロに乗って」もそうであり、「憑神」もそうである。
どれもが普通の人達の、それでいて心に残るストーリーである。

しかし、小説の映画化の場合は大きな問題点がある。
つくる方からすれば、「小説の世界を2時間という制約のある映画の世界にどう移し変えるか」であり、観る方からすれば、「読んでから観るべきか、観てから読むべきか」というジレンマである。
両方を満足させる映画となるとなかなか難しい。

しかも、近年は原作不足なのであろうか、小説の映画化が多い。
この浅田次郎を始めとして、東野圭吾・伊坂幸太郎・梨木香歩・・・
そして小説を読んでしまうと、やはり映画の魅力が半減する事もまた確かである。
この「椿山課長の七日間」は、残念ながらその典型となってしまった。

死んだあとにわずかな期間だけ現世に戻されることを許されたら・・・
そんなことをテーマにしたこの映画。
主人公は働き盛りで突然倒れて死んでしまったデパート勤務の椿山。
家のローンはまだ残っているし、残してきた老父や妻や子供の事を考えるととてもではないが「死んでいる場合ではない」と現世への「逆送」を希望する。
そして初七日までというルールにしたがって現世に戻るのであるが、あの世のルールによって現世に混乱を起こさないため、生前とは似ても似つかない美女の姿になって蘇る。

小説では主人公の戸惑い、倒れるに至った過酷なストレス、「死んでなどいられない」という悲痛な心情が細かく描写されて、読む者の共感を誘う。
しかし映画ではさらりと触れられているだけである。
仕方がない、といえばその通りなのであるが、原作を読まない者にそれが十分伝わるのであろうかと考えてしまう。

ストーリーは概ね原作に沿ってすすむ。
人は自分のことはよくわかっているが、そして自分の周りの人の事もよくわかっているつもりではあるが、得てして知らぬは自分ばかりという事もあるもの。
主人公の椿山は、死んでから現世に逆送される事によりそんな「知らなかった真実」を知る。

もしも生前それを知っていたら、どんな対応をしたのだろうか。
そんなことを想像してみるのもまた楽しい事である。
そしてそういう自分にも、今現在「知らない真実」があるのだろうか、と。

椿山にとって「知らなかった真実」はどれも衝撃的であった。
だがそれらの真実を通して最後にとった行動は心温まるものである。
うまく映画化されていなくても、そこは「浅田次郎の世界」である・・・


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 22:12 | 東京 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2009年10月25日

結婚しようよ

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2008年 日本
監督・脚本 : 佐々部清
出演:  三宅裕司/真野響子/藤澤恵麻/AYAKO/金井勇太/岩城滉一 /モト冬樹/入江若葉/松方弘樹

<STORY>********************************************************************************************************
香取家の主人・卓は、不動産会社に勤める平凡なサラリーマン。
専業主婦の妻・幸子、大学生の長女・詩織、バンド活動に情熱をそそぐ次女・歌織の一家4人で、卓の決めた「晩ご飯は必ず全員揃って食べる」というルールを守って暮らしてきた。
だが詩織は想いを寄せる苦労人の青年と会うため、歌織は波に乗り始めたバンド活動のため、揃わない日が増えていく。
家族との時間が何より幸福だった卓は、すっかり意気消沈してしまい…
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「結婚しようよ」というタイトルを見た瞬間、
♪僕の髪が肩まで伸びて、君と同じになったら、約束通り 街の教会で 結婚しようよ♪
という歌が蘇る。
そんな吉田拓郎全盛時代を知る者には懐かしくなる映画である。

そういう者の期待を裏切る事なく、この映画には全編を通して吉田拓郎の歌が流れる。
本人が歌ったものばかりではない。
中で歌われる曲もそうである。
主人公のサラリーマン卓の次女がオーディションで歌うキャンディーズの「やさしい悪魔」、「アンドゥトロワ」しかり、森進一の代表曲「襟裳岬」しかり、である。
拓郎ファンであればそれだけで満足かもしれない。

ストーリーはど真ん中のファミリードラマである。
家族第一主義の香取卓。
毎日仕事が終わるとまっすぐ家に帰り、家族全員で夕食を食べる。
それが卓の決めた香取家のルール。
ずっと破られる事なく続いてきたルールであるが、長女はある青年と恋におち結婚の話がでる。
次女は仲間たちと音楽の道に進もうとする中で、香取家のルールも存亡の危機を迎える。

誠実な仕事ぶりの卓、好きな青年ができて家族との間で悩む長女、歌の道に進みたい次女、そしてかつてはギターを抱えて歌っていた卓自信の過去。
そうしたエピソードが織りなされて進んでいく。
これでもか、というくらいに「くさい」ストーリー展開。
それでも観続けられるのは、吉田拓郎メドレーがあるからだろうか。

かつては青春時代を謳歌していた若者も、やがては人の親となりいつのまにか若者達から古いと反発されるようになる。
そんなお父さんに三宅裕司がぴったりとあてはまる。
くさ過ぎるドラマを真面目に真面目に作ってしまったという感じの映画であるが、たまにはこういうホームドラマもいいのではないだろうか・・・


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 11:06 | 東京 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ