2009年10月10日

西の魔女が死んだ

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2008年 日本
監督:  長崎俊一
原作: 梨木香歩
出演:  サチ・パーカー/高橋真悠/りょう/大森南朋/高橋克実

<STORY>********************************************************************************************************
中学生になったばかりのまいは学校へ行くのが嫌になり、ママの提案でおばあちゃんのもとでひと夏を過ごすことになる。
魔女の血筋を引くというおばあちゃんの暮らしは自給自足。
野菜やハーブを育て、昔ながらの知恵を活かしながらの生活は、まいにとって新鮮に感じられた。
課された“魔女修行”は、早寝早起き、食事をしっかり摂り規則正しい生活をするというもの。
そんな暮らしは、やがてまいの心にも変化を起こさせるのだった…
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原作は梨木香歩の小説。
学校に行けなくなった中学生のまいとおばあちゃんとの交流を描いたもので、ほぼ原作にそって映画化されている。
原作も良かったが、こういうストーリーはビジュアル面で映画に軍配が上がるかもしれない。

いわゆる不登校児となったまい。
父親は単身赴任で、母親と二人で暮らすまい。
まいの「学校へ行かない」という宣言を聞いた母親は、何も言わず田舎の母親(つまりまいの祖母)のところへまいを預ける事にする。
祖母は英語の教師としてかつてイギリスからやって来たイギリス人で、祖夫なきあとは一人暮らしである。

祖母は魔女の血を引いており、興味をもったまいは「修行」を始める。
いなかで作物を育てながら暮らす祖母。
祖母とまいの交流が、田舎の自然の中で静かに続く。
不登校にならなかったら、退屈な田舎暮らしなど望まなかったかもしれない。
それは何もまいに限った事ではなく、都会で暮らす者みなに当てはまるのではないだろうか。

登場人物も大半がまいとおばあちゃん。
やがて学校へと戻るまい。
だれでもおばあちゃんのように暮らしていれば、争い事など起きないかもしれない。
遠く祖国を離れ異国で暮らすおばあちゃん。
いろいろと思いを馳せてみたくなる。

ラストがちょっと感動的な心温まるお話である・・・


評価:★★★☆☆
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2009年09月23日

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

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原題: There Will Be Blood
2007年 アメリカ
監督・製作・脚本 : ポール・トーマス・アンダーソン
原作 : アプトン・シンクレア
出演: ダニエル・デイ=ルイス/ディロン・フレイジャー/ポール・ダノ/ケビン・J・オコナー/キアラン・ハインズ

<STORY>********************************************************************************************************
一攫千金を夢見るダニエル・プレインヴューは、幼い1人息子を連れて石油の採掘を行っていた。
ある青年から、「故郷の広大な土地に石油が眠っている」と聞いた彼は、パートーナーのフレッチャーと共に米西部の小さな町、リトル・ボストンに赴き、安い土地を買占め、油井を掘り当てる。
しかし、油井やぐらが火事になり、幼い息子は聴力を失う。
精神に混乱を来した息子を、プレインビューは彼方の土地へ追いやってしまう・・・
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何ともよくわからない映画だった、というのが正直な感想である。
良い映画というのは解説などなくても面白さが伝わってくるものだと思う。
観終わって途方に暮れ、あとで解説を読んで「ああ、そうだったのか」と思うような映画は、一つの世界として完結していない。
この映画にもいろいろと背景がありそうである。
それがわかればもっと内容を味わえたのかもしれない。

”There will be blood”というタイトルもわかったようなわからないようなタイトルである。
Bloodは血という意味であるが、それが実際に流される血を意味するのか、それとも親子の血縁といった意味なのであろうかといろいろと考えてしまった。
もっともそれがわかったところでどうだという事もないが・・・

主人公のダニエルは始めは金を掘り、次に石油を掘る。
ともに当てれば大きな見返りがある。
事故で死んだ仲間の子供H・Wを引き取って育てる優しさもあるが、それも実は商売のためで、後に事故でH・Wが聴力を失うと寄宿舎のようなところへ追い払ってしまう。

しかし石油が出る土地を買い占めるにしても、地主たちにもその土地に住まわせ、学校を建てて恩恵に預からせているのだから、根っからの悪人というほどでもないのかもしれない。
そう思っていると、弟と称して近寄ってきた男に対しては非常な行為をおこなったりする。
金に対する執着心が強く、冷酷非情な男なのかと思えば事故で死んだ部下に対する対応を見てもそうとも言い切れないところがある。

結局、そうした掴み所のなさが、なんとなく映画として迫力を感じられないところとなってしまう。
この映画で主演のダニエル・デイ=ルイスはオスカーに輝く(主演男優賞)。
確かに演技力という点ではダニエルという男を怪演したという事で評価されたのであろう。
それはそれでわかるのであるが、映画全体としての印象からすれば?マークがついてしまう。
「誰かに解説してもらわないと理解できない映画」は他人がどう評価しようが個人的にはパスだ。
ただ、「石油を巡る一人の男の物語としてはそこそこだ」、とだけは言えるのではないだろうか・・・


評価:★★☆☆☆

posted by HH at 10:46 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2009年09月22日

クライマーズ・ハイ

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2008年 日本
監督・脚本 : 原田眞人
原作 : 横山秀夫
脚本 : 加藤正人/成島出
出演 : 堤真一/堺雅人/尾野真千子/高嶋政宏/山崎努

<STORY>********************************************************************************************************
1985年8月12日、群馬県御巣鷹山にJAL123便が墜落、死者520人の大惨事が起こった。
前橋にある北関東新聞社では、白河社長の鶴の一声により、一匹狼の遊軍記者・悠木和雅が全権デスクに任命される。
そして未曽有の大事故を報道する紙面作り―闘いの日々が幕を開けた。
さっそく悠木は県警キャップの佐山らを事故現場へ向かわせる。
そんな時、販売部の同僚で無二の親友・安西がクモ膜下出血で倒れたとの知らせが届く…
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「クライマーズ・ハイ」とは登山者の興奮状態が極限まで達し、恐怖感が麻痺してしまう状態のことである。
「ランナーズ・ハイ」という走る者の興奮状態はよく聞くからなんとなくわかる。
この映画、当初は山男の山物語かと思っていたのでちょっと敬遠していた。
そういう意味では少し考えた方がいいように思えたが、映画を観終わってみるとなかなかな納得のタイトルである。

御巣鷹山の日航機墜落事故は24年を経た今も、当時ニュースを見ていた者からすると強烈な印象が残っている。
そんな強烈な印象はこの映画に出てくるような記者たちが送り出していたものである。
映画自体はフィクションだが、似たようなことがきっとどこの現場でも行われていたのではないか、と想像させられる。

新聞記者は事件を報道する者である。
それを見るのは我々であり、大いに関心のあるところである。
しかし報道の裏側では様々な経緯・やり取りがある。
新聞の紙面作りはその新聞社の生命線であるが、そこには現場の人間達の思惑が入り乱れる。
何を1面に持ってくるのか、構成はどうするのか・・・
あらためて普段我々が目にするニュースは、知らず知らずのうちに新聞社のフィルターを通されているのだと感じる。

内容的には★★★★☆になりかけたが、迷って★★★☆☆とした。
面白かったのであるが、やはりところどころ引っ掛ったのだ。
全権デスク悠木が山男である事はわかったのであるが、子供とのエピソードがわかりにくかった(子供が事故に巻き込まれたのだと思っていた)し、倒れた親友との絡みがわかりにくかった。
新聞社内の権力関係もよくわからなくて指揮系統が乱れているようにも思えた。
原作を読んでいないのでよくわからないが、映画の枠内に収めるために端折った感がする。
大事故を熱くなって追う男たちの姿は感動的ですらあるので、もう少し違う形であったら、ひょっとしたら名画になっていたかもしれないと思わせられる。

最前線で突入取材を敢行する佐山の記者魂も素晴らしい。
記者がみんなこういう熱い人間だったら、新聞の紙面ももっと違うものになるような気がする。
今の新聞はただムードに流され、深い思考のない薄っぺらな記事があまりにも多い。
「サラリーマン記者」の無難な記事が多すぎるのである。
それゆえにここで熱く働く男たちの姿は感動的である。

「ハイ」の状態は、第3者にはわかりにくいものである。
だがそれがわかるような気になる映画である・・・


評価:★★★☆☆
posted by HH at 23:20 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2009年09月07日

KIDS

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2007年 日本
監督:  荻島達也
原作 :  乙一
出演 :  小池徹平/玉木宏/栗山千明/永岡佑/仲野茂/斉藤由貴/泉谷しげる

<STORY>********************************************************************************************************
町の工場で働くタケオは、いきつけのダイナーで見慣れない少年、アサトと出会う。
テーブルの塩を手を使わずに引き寄せているアサト。
彼には、特殊な能力があるのだった。
チンピラに絡まれたタケオを不思議な力で救い、二人に友情が芽生える。
しかし、タケオはアサトがその力を使うことをよく思っていなかった。
ダイナーのバイトで、いつもマスクをしているシホに、想いを寄せるアサトは、シホの悲しい過去を知り、ある行動に出る・・・
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それぞれ悲しい過去を抱えた二人の青年と一人の女性との交流を描いた映画。
舞台はとある地方の町。
日常的に暴力が絶えない。
といってもそれは一部の若者達の間だけであり、子供たちはのんびりと育っていたりする。

そんな町にある特殊能力を持った青年アサトがやって来る。
彼はあらゆるものを自分に引きつけるという能力を有している。
テーブルの上の塩を引きつけるという事から始まり、何と相手の怪我を自分に移すという事まで出来てしまう。
それも新しい傷ばかりか古い傷までも。

そんなアサトを演じるのは小池徹平。
「ホームレス中学生」では中学生を演じていたが、今回は夜間高校に通うティーンエイジャー。
年齢の割には若い役を演じていても違和感がない。

一方アサトと強引に友達になってしまうタケオは玉木宏。
これまで「変身」「ミッドナイト・イーグル」などでは好青年であったが、ここでは喧嘩に明け暮れるワイルドな青年。
ちょっとイメージが違う役柄であるが、様になっている。
あんまりテレビでは見かけない気がするのだが、映画中心に活動する方針なのだろうか。

アサトの能力を中心に3人の交流が描かれる。
ともに親に対する愛情に飢えたところがあり、そこにトラウマを抱える。
ストーリーとしては悪くないかもしれないのだが、なんとなく全体的に薄っぺらに思えてしまった。
アサトの能力は別として、どことなくリアリティにかけるところが原因だろうと思う。

久しぶりに見た斉藤由貴が懐かしかった・・・


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 23:16 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2009年09月05日

ナイロビの蜂

ナイロビの蜂.jpg

原題: The Constant Gardener
2005年 イギリス
監督: フェルナンド・メイレレス
出演: レイフ・ファインズ/レイチェル・ワイズ

<STORY>********************************************************************************************************
それは、しばしの別れのはずだった。
英国外務省一等書記官のジャスティンは、ナイロビの空港からロキへ旅立つ妻テッサを見送った。
「行ってくるわ」「じゃ2日後に」それが妻と交わす最後の会話になるとも知らずに…。
ジャスティンに事件を報せたのは、高等弁務官事務所所長で、友人でもあるサンディだった。
テッサは車で出かけたトゥルカナ湖の南端で殺された。
彼女は黒人医師アーノルドと共に、スラムの医療施設を改善する救援活動に励んでいた。
今回もその一環のはずだったが、同行したアーノルドは行方不明、警察はよくある殺人事件として事件を処理しようとする…
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舞台はケニア。
外務省一等書記官のジャスティンはガーデニングを趣味とする穏やかな英国紳士。
周囲に波風を立てる事なく一生穏やかに暮らすタイプである。
それと正反対なのが妻テッサ。
気が強く、正義感に燃えて相手に突っかかって行く。
その妻が何者かに殺害される。

始めは一緒に出かけた黒人医師との不倫を疑ったジャスティン。
しかし、調べていくにつれ意外な事実が判明してくる。
大手製薬会社がこの地で治験を行っていたが、それは人体実験にも近いものであった。
医療施設が整っていないところで無料診察を実施するが、診察の条件として治験が入っているのである。
そして現地の人はその意味するところを知らない。
得られたデータを元に新薬が作られ先進国で利用される・・・
ジャスティンは妻の死の裏側に巨大な陰謀の影を感じる・・・

タイトルは「ナイロビの蜂」とあるが、これは映画の中で大手製薬会社と組んで暗躍する地元の団体からとったもので、原題は「The Constant Gardener」。
テッサと知り合う事がなければ、穏やかな人生を送ったであろうジャスティンの事である。
亡き妻に対する愛情から真実に迫る彼は、妻の知られざる姿を知れば知るほど妻がやろうとしていた事を理解するようになる。
それは妻への愛情であり、アフリカを食い物にする者たちに対する怒りである。

「ブラッド・ダイヤモンド」でも安い労働力でダイヤモンドを掘り出す先進国のエゴが描かれていたが、この映画では命そのものが安く扱われる。
新薬の開発には副作用の調査が不可欠であるが、下手な副作用であれば命に関わる。
ならばアフリカでやってしまえという発想である。
そしてアフリカでは人が死ぬのも珍しくなく、その原因が副作用であったとしても闇から闇である。
人間の汚い姿である。

原作はジョン・ル・カレ。
何だかスパイ小説専門作家のようなイメージであったが、こんな小説も書くのかとちょっと意外であった。
監督はあの「シティ・オブ・ゴッド」のフェルナンド・メイレレス。
ブラジルの凄まじい暴力で衝撃的な映画であったが、こうした発展途上国の背筋が凍るような実情を表現するのが得意なようである。

テッサを演じたレイチェル・ワイズもこれでオスカー(助演女優賞)を獲得。
美しい顔立ちが印象的であるが、美しい妻、正義感に燃える女、ケニアの人達に愛情を注ぐボランティア、いろいろな表情がここでは印象的であった。
オスカーも頷ける。
ちょっともの悲しいラストであった・・・


評価:★★☆☆☆

posted by HH at 12:16 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ