2009年06月07日

ペネロピ

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原題: Penelope
2006年 イギリス
監督: マーク・パランスキー
出演: クリスティーナ・リッチ/ジェームズ・マカヴォイ/キャサリン・オハラ/リチャード・E・グラント/リース・ウィザースプーン

<STORY>**************************************************************************
社交界でも注目を浴びる名家・ウィルハーン家に、ブタの鼻と耳を持ったペネロピが生まれる。
娘をマスコミや世間から守るため、両親はペネロピを死んだ事に。
こうして彼女は、屋敷の中だけで生きてきた。
先祖の悪行によって一族にかけられた呪いを解く方法は、ただ一つ。
ウィルハーン家の“仲間”、つまり名家の人間にありのままの彼女を愛してもらうしかない。
だが7年もお見合いを繰り返しているのに、彼女の顔を見ても逃げ帰らない男性は現れず…!?
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童話の「みにくいアヒルの子」と「カエル王子」をブレンドさせたようなお話である。
名門ウィルハーン家の当主がお手伝いさんに手を出した。
お手伝いさんは身分の壁を越えられず、世を儚んで自殺する。
そのお手伝いさんの母親が実は魔女で、ウィルハーン家に呪いをかける。
「次に生まれた女の子はブタになる」と・・・

しかし、その後ウィルハーン家に生まれた子供はみんな男の子。
呪いの事も忘れかけたその時にペネロピが生まれる。
ブタの耳と鼻を持って・・・
母親は世間の好奇からペネロピを守るために屋敷の中だけに閉じ込めて生活させる。
呪いを解く方法はただ一つ、「名門の子息と結婚すること」。

こんな前提のドラマ。
前半はペネロピの紹介と名門の子息とのお見合いを繰り返す様子が描かれる。
名家の令嬢とのお見合いという事で、子息たちが次々とやってくる。
しかし、ペネロピを一目見ただけでみんな逃げ出してしまう。
守秘義務契約を結ばせる事で秘密を守る事が精一杯。
そんな中である男だけが、逃げずに残る。

ペネロピを演じるのはクリスティーナ・リッチ。
「ブラック・スネーク・モーン」「耳に残るは君の歌声」「ウェス・クレイヴン’S・カースド」とここのところよく出演作品を目にする。
もう十二分に大人の女性なのであるが、童顔であるせいかこの映画での少女っぽい役柄もぴったりと合っている。

呪いを解くには結婚しなければならない。
ただ結婚するとなると、特にお金に不自由しない名家の子息は容姿に拘る。
そうするとみんなペネロピを見て逃げ出してしまうわけである。
結婚さえすれば呪いが解けて美しくなれると信じる母親が、狂気のようになってお見合いに奔走する様はこっけいである。
そしてそれゆえに大事な事を忘れてしまっているのである。

ストーリーとしては当然の如く呪いは解けるのであるが、それは思ってもみなかった方法。
そしてそれは観る者にも大事な何かに気付かせてくれる方法。
「○○しさえすれば幸せになれる」
実はそういう呪いにかけられている人は多いのではないだろうか。
本当にそうなのか、他にもっと大事な事はないのか?
笑う前に自ら問いかけてみる必要があるかもしれない。
味わい深いおとぎ話である・・・


評価:★★★☆☆
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2009年06月05日

スラムドッグ$ミリオネア

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原題: SLUMDOG MILLIONAIRE
2008年 イギリス
監督: ダニー・ボイル
脚本 : サイモン・ビューフォイ
出演 : デーヴ・パテル/アニル・カプール/イルファン・カーン/マドゥル・ミッタル/フリーダ・ピント

<STORY>**************************************************************************
インドのスラム出身の少年ジャマールは人気番組「クイズ$ミリオネア」に出演し、あと1問で2000万ルピーを手にできるところまできた。
しかし、これを面白く思わない番組のホストは警察に連絡。
彼はズルをして正答を得ていたとされ、詐欺容疑で逮捕されてしまう。
ジャマールは警察署での警官の厳しい尋問に対し、正答を知ることになった自分の過去を話し始める。
そこには1人の少女を追い続けた彼の人生の物語があるのだった…
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今年度のオスカー作品賞受賞作品である。
日本でも「ファイナルアンサー?」で有名なクイズ番組。
元はといえばイギリスのテレビ番組「Who Wants to Be a Millionaire?」であるらしい。
今では世界各国で放送されているらしいが、この映画はそのインド版が下敷きとなっている。

その番組に出演した青年ジャマール。
学者でさえ勝ち抜けないその番組で、なんと1,000万ルピーまで到達してしまう。
スラム街出身で教養のない、テレビ局でお茶汲みをしている青年の快挙に番組ホスト(みのもんたとはちょっと雰囲気の異なる人物だ)は不快感を覚え、インチキとして警察に通報する。
取調べの中で、ジャマールは一見難解な質問になぜ答えられたか、を説明し始める。
それはスラム街で育ったジャマールと兄サリームの人生の物語である。

今でも世界には一日当たり1ドル以下で生活する貧民が五万といる。
スラムドッグと言われながらも、力いっぱい生きる人達がいる。
ジャマールもそんな一人である。
暴漢に母親を殺され、兄弟二人で生き抜く事になる。
二人の前に立ちはだかる過酷な運命。

なぜジャマールはクイズ番組に出演する事になったのか?
そしてなぜ彼は勝ちぬけたのか?
ジャマールの辿ってきた人生が、クイズの問題と共に明らかになる。
たった二人の兄弟。
兄は兄として弟を守りながらも、生き抜くために悪に手を染めていく。
それに対して弟の気楽さからか、どこまでも純粋なジャマール。

幼馴染の少女ラティカに対する変わらぬ愛情が最後までジャマールを支える。
しかし悪の世界は容赦なく二人の前に立ち塞がる。
周りの環境にもかかわらずどこまでも純粋で諦めないジャマールの姿は、やがて周りの世界を変えていく。
オスカーに輝いたのも伊達ではない。
観る価値の高い映画である。


評価:★★★☆☆

スラムドッグ ミリオネア2.jpg
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2009年05月26日

となり町戦争

となり町戦争.jpg

2006年 日本
監督: 渡辺謙作
原作 : 三崎亜記
出演 : 江口洋介/原田知世/瑛太/菅田俊/飯田孝男/小林麻子/余貴美子/岩松了

<STORY>**************************************************************************
舞坂町に暮らし始めて一年、北原修路は町の広報紙で隣りの森見町と戦争が始まる事を知る。
しかし、開戦初日を迎えても町の様子に変化はなく、戦争を実感することは何一つなかった。
広報紙に掲載される戦死者数を除いては…。
数日後、対森見町戦争推進室の香西と名のる女性から電話があり、特別偵察業務辞令の交付式への出席を促される。
その業務の延長で、やがて北原は敵地へ潜入するため香西と結婚する事になる…
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となりの町と戦争をする、という一見奇想天外な発想。
しかしそんなコメディチックな前提条件を実にシリアスに進める、という果敢な挑戦映画である。

二つ隣接する舞坂町と森見町。
突然広報に小さく開戦のお知らせが載る。
ところが開戦初日を迎えても天下の情勢に変化はない。
北原修路は毎日両町を行ったり来たりしているが、町の様子に変化はない。
しかし、広報のあるページだけは「戦死者」の数を掲載している・・・

主人公の北原の戸惑いはそのまま観る者の戸惑いでもある。
戦闘シーンに出くわすわけでもない。
ミサイルが飛んでくるわけでもなく、したがって空襲警報もない。
戦車も装甲車も登場しない。
不思議な戦争なのである。

そして突然偵察員に任命される北原。
役所の職員である香西の指示を受けて黙々と不思議な任務をこなす。
日常のありふれた「敵の」町の様子を報告する。
そしてそれが評価されるが理由はわからない・・・

主人公の江口洋介は2枚目俳優であるが、どちらかというと3枚目チックで登場する。
普段は良い男なのであるが、争い事となると腰が引けてしまうのである。
相手の原田知世も久々に観た気がする。
淡々と「業務」をこなす職員として光る存在である。

「そんなバカな」と笑い飛ばしたくなるようなとなり町との戦争という設定。
それを原田知世が真剣な表情で話すので、江口洋介も段々真面目に取りあうようになる。
我々観るものも江口洋介と同じようにドラマに引き込まれる。
ラスト近くでようやく戦争らしい緊迫シーンが登場するが、終戦となっても釈然としない。
都会に住む者にとっては不思議な習慣があるのが地方。
戦争とはいかなくても、似たような不思議な出来事がこんな地方にはあるのではないかと思わせられる。

原作の小説もヒットしたらしいが、ちょっと観てみるのも面白い映画である。


評価:★★☆☆☆


   
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2009年05月08日

グラン・トリノ

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原題: Gran Torino
2008年 アメリカ
監督・製作 : クリント・イーストウッド
出演 : クリント・イーストウッド/ビー・バン/アーニー・ハー/クリストファー・カーリー/コリー・ハードリクト/ブライアン・ヘーリー

<STORY>**************************************************************************
朝鮮戦争の帰還兵ウォルト・コワルスキーはフォード社を退職し、妻も亡くなりマンネリ化した生活を送っている。
彼の妻はウォルトに懺悔することを望んでいたが、頑固な彼は牧師の勧めも断る。
そんな時、近所のアジア系移民のギャングがウォルトの隣に住むおとなしい少年タオにウォルトの所有する1972年製グラン・トリノを盗ませようとする。
タオに銃を向けるウォルトだが、この出会いがこの二人のこれからの人生を変えていく…
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クリント・イーストウッドの最新作。
最近は監督もこなしているが、本作品では製作、主演とまさに八面六臂の活躍。
いまだ飽くなき制作欲とでもいうのだろうか、次々と生み出される作品はどれも秀作である。

「硫黄島からの手紙」では、全編通して日本人・日本語で製作した。
そこにはかつての敵国である日本及び日本人に対する穏やかな目が感じられた。
本作品でも朝鮮戦争の帰還兵ウォルトの隣人たちはアジアの少数民族である。
やはり同じようにアジア人に対する優しい眼差しが溢れている。

最近のアメリカは金融危機が輪をかけて、自信喪失しているようにみえる。
かつては世界に君臨したビッグスリーも今やクライスラーは破産法を申請し、GMもフォードも風前の灯に等しい。
そんな風潮を受けてか、映画のタイトルにもなったフォードの車グラン・トリノが時代を経ても威厳を保った存在として登場する。
かつて胸を張って歩いていたアメリカが、今のヨレヨレのアメリカに渇を入れるがごくと、である。
ウォルトの長男はトヨタに勤め、トヨタ車に乗っているが、ウォルトが丹精を込めて磨き上げるグラントリノが、かつての自動車王国のシンボルとして登場するのが象徴的である。

そしてウォルトがしばしば手にするのがM1ガーランド自動小銃。
第2次大戦で米軍の主力歩兵銃として使われていたものだ。
朝鮮戦争帰りのウォルトが、今でも愛用しているという設定である。
戦後、まさにフォードで組立工として働いていたウォルトは、まさに栄光のアメリカを今でも背負って生きているのである。

そんな誇り高いウォルトもその気難しさから家族から毛嫌いされている存在。
亡妻との約束だと言って神父が尋ねてきてもまともに相手をしようとしない。
さらにいつのまにやら近所にはアジアのモン族の者たちが住み着くようになり、かつて殺し合いをした「米を食う民族」であるだけにいまいましくて仕方がない。
しかし、ある事件を気に隣家の少年タオとの交流が始る。

そのまま平穏な日々が続いていたら
少しは穏やかに暮らしていたのかもしれないが、同じモン族のチンピラたちがそんなウォルトとタオの友情に影を差す・・・

「荒野の用心棒」で名を馳せたクリント・イーストウッド。
「ダーティー・ハリー」では時にはルールを逸脱しようとも徹底して悪を退治した。
そのスタイルは老ガンマンとなった「許されざる者」でも変わらなかった。
だが、ここでは一味違う対応を見せる。
自らの過去を清算し、若者に未来を残すウォルトは、まさに今もなお誇り高いガンマンであり、誇り高いアメリカである・・・


評価:★★★★☆


   
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posted by HH at 23:44 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(9) | ドラマ

2009年04月27日

明日への遺言

明日への遺言.jpg

2008年 日本
監督:  小泉堯史
出演:  藤田まこと/富司純子/ロバート・レッサー/フレッド・マックィーン/リチャード・ニール/西村雅彦/蒼井優/田中好子

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1945年、東條英機元首相らA級戦犯が東京裁判で裁かれる中、横浜地方裁判所では、戦争犯罪行為の命令者であるB級戦犯、及び実行者のC級戦犯の裁判が行われていた。
東海軍司令官だった岡田資中将と部下19名は空襲の際、パラシュートで降下した搭乗員を捕虜として扱わず、正式な手続きを踏まずに処刑したことで殺人の罪に問われていた。
フェザーストン主任弁護士の弁護のもと、岡田は、すべての責任は自分にある事を主張した…
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戦後の戦犯を巡る裁判としては、いわゆる「東京裁判」が有名であるが、こちらは戦争遂行のリーダーたちであるA級戦犯を扱ったもの。
それ以外の下のクラスに対してはB、C級戦犯としてもっと細々とした事件が裁かれた。

戦争犯罪といっても難しい。
そもそも戦争自体、「汝殺す事なかれ」というキリスト教の十戒に背くものである。
本件でテーマとなったのは、空襲にやってきて撃墜された米軍パイロットを捕虜として扱わず、正式な手続きを踏まずに処刑した、という事が罪になるかという事である。
米軍は無差別爆撃によって大勢の無力な市民を虐殺している。
例え正式な手続きを踏んでいなくともそれが罪になるのであれば、米軍の虐殺行為はどうなるのか?
それこそナチス同様「人道に対する罪」にあたるはずである。

そんな矛盾をはらんだ戦犯裁判。
要は戦勝国による敗戦国に対する懲らしめである。
公平性などそもそもないのが戦犯裁判なのである。

ドラマはパイロットたちを処刑した東海軍の軍人たちに対する裁判として描かれる。
司令官は岡田資中将。
処刑の事実は認めた上で、一般市民を無差別に爆撃行為自体が国際法に定めた違法なもので、したがって略式手続きで処罰したのは正当である、と中将は真っ向から反論する。
裁判自体を「法戦」と名付け、部下の罪を一人で被るべく自らの持論を主張する姿が描かれる。
不安に慄く部下を励まし法廷に立つ姿はまさに日本軍人のあるべき姿とでも言うべきものである。

注目すべきは弁護人のフェザーストン博士である。
同じアメリカ人でありながら、無差別爆撃の違法性を真っ向から主張する。
もともと公平性などない戦犯裁判でありながら、弁護人だけは公平な立場で弁護に回っており、そこだけが唯一救われるところである。
そして裁判長や中将を訴追した米軍検事でさえも、岡田の姿勢に心動かされていく・・・

戦争とは何か。
裁判とはどうあるべきか。
人としてのあり方は。
いろいろな視点から深く考えさせられる映画である。


評価:★★★☆☆
posted by HH at 10:58 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ