2009年09月22日

クライマーズ・ハイ

クライマーズ・ハイ.jpg

2008年 日本
監督・脚本 : 原田眞人
原作 : 横山秀夫
脚本 : 加藤正人/成島出
出演 : 堤真一/堺雅人/尾野真千子/高嶋政宏/山崎努

<STORY>********************************************************************************************************
1985年8月12日、群馬県御巣鷹山にJAL123便が墜落、死者520人の大惨事が起こった。
前橋にある北関東新聞社では、白河社長の鶴の一声により、一匹狼の遊軍記者・悠木和雅が全権デスクに任命される。
そして未曽有の大事故を報道する紙面作り―闘いの日々が幕を開けた。
さっそく悠木は県警キャップの佐山らを事故現場へ向かわせる。
そんな時、販売部の同僚で無二の親友・安西がクモ膜下出血で倒れたとの知らせが届く…
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「クライマーズ・ハイ」とは登山者の興奮状態が極限まで達し、恐怖感が麻痺してしまう状態のことである。
「ランナーズ・ハイ」という走る者の興奮状態はよく聞くからなんとなくわかる。
この映画、当初は山男の山物語かと思っていたのでちょっと敬遠していた。
そういう意味では少し考えた方がいいように思えたが、映画を観終わってみるとなかなかな納得のタイトルである。

御巣鷹山の日航機墜落事故は24年を経た今も、当時ニュースを見ていた者からすると強烈な印象が残っている。
そんな強烈な印象はこの映画に出てくるような記者たちが送り出していたものである。
映画自体はフィクションだが、似たようなことがきっとどこの現場でも行われていたのではないか、と想像させられる。

新聞記者は事件を報道する者である。
それを見るのは我々であり、大いに関心のあるところである。
しかし報道の裏側では様々な経緯・やり取りがある。
新聞の紙面作りはその新聞社の生命線であるが、そこには現場の人間達の思惑が入り乱れる。
何を1面に持ってくるのか、構成はどうするのか・・・
あらためて普段我々が目にするニュースは、知らず知らずのうちに新聞社のフィルターを通されているのだと感じる。

内容的には★★★★☆になりかけたが、迷って★★★☆☆とした。
面白かったのであるが、やはりところどころ引っ掛ったのだ。
全権デスク悠木が山男である事はわかったのであるが、子供とのエピソードがわかりにくかった(子供が事故に巻き込まれたのだと思っていた)し、倒れた親友との絡みがわかりにくかった。
新聞社内の権力関係もよくわからなくて指揮系統が乱れているようにも思えた。
原作を読んでいないのでよくわからないが、映画の枠内に収めるために端折った感がする。
大事故を熱くなって追う男たちの姿は感動的ですらあるので、もう少し違う形であったら、ひょっとしたら名画になっていたかもしれないと思わせられる。

最前線で突入取材を敢行する佐山の記者魂も素晴らしい。
記者がみんなこういう熱い人間だったら、新聞の紙面ももっと違うものになるような気がする。
今の新聞はただムードに流され、深い思考のない薄っぺらな記事があまりにも多い。
「サラリーマン記者」の無難な記事が多すぎるのである。
それゆえにここで熱く働く男たちの姿は感動的である。

「ハイ」の状態は、第3者にはわかりにくいものである。
だがそれがわかるような気になる映画である・・・


評価:★★★☆☆
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2009年09月07日

KIDS

KIDS.jpg

2007年 日本
監督:  荻島達也
原作 :  乙一
出演 :  小池徹平/玉木宏/栗山千明/永岡佑/仲野茂/斉藤由貴/泉谷しげる

<STORY>********************************************************************************************************
町の工場で働くタケオは、いきつけのダイナーで見慣れない少年、アサトと出会う。
テーブルの塩を手を使わずに引き寄せているアサト。
彼には、特殊な能力があるのだった。
チンピラに絡まれたタケオを不思議な力で救い、二人に友情が芽生える。
しかし、タケオはアサトがその力を使うことをよく思っていなかった。
ダイナーのバイトで、いつもマスクをしているシホに、想いを寄せるアサトは、シホの悲しい過去を知り、ある行動に出る・・・
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それぞれ悲しい過去を抱えた二人の青年と一人の女性との交流を描いた映画。
舞台はとある地方の町。
日常的に暴力が絶えない。
といってもそれは一部の若者達の間だけであり、子供たちはのんびりと育っていたりする。

そんな町にある特殊能力を持った青年アサトがやって来る。
彼はあらゆるものを自分に引きつけるという能力を有している。
テーブルの上の塩を引きつけるという事から始まり、何と相手の怪我を自分に移すという事まで出来てしまう。
それも新しい傷ばかりか古い傷までも。

そんなアサトを演じるのは小池徹平。
「ホームレス中学生」では中学生を演じていたが、今回は夜間高校に通うティーンエイジャー。
年齢の割には若い役を演じていても違和感がない。

一方アサトと強引に友達になってしまうタケオは玉木宏。
これまで「変身」「ミッドナイト・イーグル」などでは好青年であったが、ここでは喧嘩に明け暮れるワイルドな青年。
ちょっとイメージが違う役柄であるが、様になっている。
あんまりテレビでは見かけない気がするのだが、映画中心に活動する方針なのだろうか。

アサトの能力を中心に3人の交流が描かれる。
ともに親に対する愛情に飢えたところがあり、そこにトラウマを抱える。
ストーリーとしては悪くないかもしれないのだが、なんとなく全体的に薄っぺらに思えてしまった。
アサトの能力は別として、どことなくリアリティにかけるところが原因だろうと思う。

久しぶりに見た斉藤由貴が懐かしかった・・・


評価:★★☆☆☆
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2009年09月05日

ナイロビの蜂

ナイロビの蜂.jpg

原題: The Constant Gardener
2005年 イギリス
監督: フェルナンド・メイレレス
出演: レイフ・ファインズ/レイチェル・ワイズ

<STORY>********************************************************************************************************
それは、しばしの別れのはずだった。
英国外務省一等書記官のジャスティンは、ナイロビの空港からロキへ旅立つ妻テッサを見送った。
「行ってくるわ」「じゃ2日後に」それが妻と交わす最後の会話になるとも知らずに…。
ジャスティンに事件を報せたのは、高等弁務官事務所所長で、友人でもあるサンディだった。
テッサは車で出かけたトゥルカナ湖の南端で殺された。
彼女は黒人医師アーノルドと共に、スラムの医療施設を改善する救援活動に励んでいた。
今回もその一環のはずだったが、同行したアーノルドは行方不明、警察はよくある殺人事件として事件を処理しようとする…
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舞台はケニア。
外務省一等書記官のジャスティンはガーデニングを趣味とする穏やかな英国紳士。
周囲に波風を立てる事なく一生穏やかに暮らすタイプである。
それと正反対なのが妻テッサ。
気が強く、正義感に燃えて相手に突っかかって行く。
その妻が何者かに殺害される。

始めは一緒に出かけた黒人医師との不倫を疑ったジャスティン。
しかし、調べていくにつれ意外な事実が判明してくる。
大手製薬会社がこの地で治験を行っていたが、それは人体実験にも近いものであった。
医療施設が整っていないところで無料診察を実施するが、診察の条件として治験が入っているのである。
そして現地の人はその意味するところを知らない。
得られたデータを元に新薬が作られ先進国で利用される・・・
ジャスティンは妻の死の裏側に巨大な陰謀の影を感じる・・・

タイトルは「ナイロビの蜂」とあるが、これは映画の中で大手製薬会社と組んで暗躍する地元の団体からとったもので、原題は「The Constant Gardener」。
テッサと知り合う事がなければ、穏やかな人生を送ったであろうジャスティンの事である。
亡き妻に対する愛情から真実に迫る彼は、妻の知られざる姿を知れば知るほど妻がやろうとしていた事を理解するようになる。
それは妻への愛情であり、アフリカを食い物にする者たちに対する怒りである。

「ブラッド・ダイヤモンド」でも安い労働力でダイヤモンドを掘り出す先進国のエゴが描かれていたが、この映画では命そのものが安く扱われる。
新薬の開発には副作用の調査が不可欠であるが、下手な副作用であれば命に関わる。
ならばアフリカでやってしまえという発想である。
そしてアフリカでは人が死ぬのも珍しくなく、その原因が副作用であったとしても闇から闇である。
人間の汚い姿である。

原作はジョン・ル・カレ。
何だかスパイ小説専門作家のようなイメージであったが、こんな小説も書くのかとちょっと意外であった。
監督はあの「シティ・オブ・ゴッド」のフェルナンド・メイレレス。
ブラジルの凄まじい暴力で衝撃的な映画であったが、こうした発展途上国の背筋が凍るような実情を表現するのが得意なようである。

テッサを演じたレイチェル・ワイズもこれでオスカー(助演女優賞)を獲得。
美しい顔立ちが印象的であるが、美しい妻、正義感に燃える女、ケニアの人達に愛情を注ぐボランティア、いろいろな表情がここでは印象的であった。
オスカーも頷ける。
ちょっともの悲しいラストであった・・・


評価:★★☆☆☆

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2009年08月29日

マイ・ブルーベリー・ナイツ

マイブルーベリーナイツ.jpg

原題: My Blueberry Nights
2007年 フランス・香港
監督・製作・原案・脚本 : ウォン・カーウァイ
出演:  ノラ・ジョーンズ/ジュード・ロウ/デイヴィッド・ストラザーン/レイチェル・ワイズ/ナタリー・ポートマン

<STORY>********************************************************************************************************
恋人に捨てられたエリザベスは彼のことが忘れられず、彼の行きつけのカフェに乗り込む。
そんな彼女を慰めてくれたのは、カフェのオーナー・ジェレミーと、甘酸っぱいブルーベリー・パイ。
それからのエリザベスは、夜更けにジェレミーと売れ残りのパイをつつくのが日課になる。
しかしそんなある日、彼女は突然ニューヨークから姿を消す。
恋人への思いを断ち切れずにいたエリザベスは、あてのない旅へとひとり旅立ったのだった…
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雰囲気的にはアメリカ映画なのであるがなぜかフランス・香港合作というちょっと変わった映画。
といっても内容的にはアメリカ映画そのものである。
ストーリーは失恋したエリザベスが、あるカフェのオーナーとそこのブルーベリー・パイに慰められ、やがて旅に出るというもの。
カフェ・オーナーとの出会いと旅先で出会った人との交流との2部構成とでもいう内容である。

カフェのオーナーはジュード・ロウ。(「スルース」、「スターリングラード」、「イグジステンズ」
旅先で出会う女性にレイチェル・ワイズ(「コンスタンティン」「ファウンテン〜永遠に続く愛」)。
それとナタリー・ポートマン(「スターウォーズシリーズ」、「Vフォー・ヴェンデッタ」)とくると何だかそれだけで得した気分になるというもの。

しかし、内容的には短い時間に詰め込み過ぎている感は否めない。
前半のジェレミーとの出会いからエリザベスは約300日間の旅に出てるのだが、その間のエピソードは2つだけである。
旅の間、NYにいるジェレミーに手紙を書くのだが、内容もさらっと触れた程度。
長い物語をダイジェストでお届けしますといった感じを受ける。

個人的に期待していたナタリー・ポートマンの出番も最後のエピソードだけで短いものであった。
ただ、ダイジェストなりによくまとまっていたのも確かである。
全体の印象としては悪くない。
毎夜売れ残っていたブルーベリー・パイに何となく悲運な自分の運命を重ね、遠回りしながらも自分の居場所を探すエリザベス。
若い頃にありがちな迷いに共感できた気がする。
こんな旅をしてみてかったが、そんな暇なかったなと羨ましくも思う。

失恋は誰でもある事であるが、その痛みは当人にしかわからない。
だから失恋したエリザベスの気持ちもなんとなくしかわからない。
恋人の部屋の下から、窓に映った恋人とその新しい恋人が仲睦まじくしているところを見上げる辛さも本当の意味では当人にしかわからない。
ただ、エリザベスと一緒に旅をして、そこで出会った人を見て思うのだ。
人生いろいろだ、と。
自分一人が不幸を背負っているわけではない。
みんないろいろと抱えて生きているのである。
そして誰にでも平等に朝がやって来る・・・

もう少しいろいろなエピソードも観てみたかったと思うが、これだけでもいいかもしれない。
学生時代よりも、少し社会経験を積んでから観てみたい映画である・・・


評価:★★★☆☆

posted by HH at 21:59 | 東京 ☔ | Comment(0) | TrackBack(2) | ドラマ

2009年08月25日

ホームレス中学生

ホームレス中学生.jpg

2008年 日本
監督 : 古厩智之
原作 : 田村裕
出演 : 小池徹平/西野亮廣/池脇千鶴/イッセー尾形/古手川裕子

<STORY>********************************************************************************************************
中学2年生の田村裕は、クラスの人気者。1学期最終日には、気になっていた女子から映画に誘われ、上機嫌で帰宅すると、家の周りの様子がおかしい。
団地の前には田村家の家具が山のように積まれ、カギが変えられて中にも入れない。
兄、姉と玄関の前で途方に暮れていると、父親がやって来て「今日で我が家は解散!」とだけ言って、去って行った。
事態を把握し、立ち往生する3人。
しかし、それは人生最高の夏休みの幕開けだった・・・
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お笑い芸人の麒麟というコンビがあるらしい。
その相方の一人である田村裕の体験談を元にしたベストセラーの映画版である。

父親が突然家族の解散宣言をしどこかへ行ってしまう。
家は差押えで入れない。
あとに残された子供3人は途方に暮れる・・・
一見ありそうもない設定だが実話だというのだから驚きである。

田村は当時中学生。
男の子だからであろうか、「何とかなる」と言って兄姉と別れる。
しかし何とかなるはずもなく、公園で寝泊りする毎日。
食べるものにも困ってダンボールまで口にする。
それなりに年季の入った大人であれば、あれこれと知恵を働かせるのだろう。
だが中学生だ。
よく万引きに走らなかったものだと感心する。

そして思い余って友達に頼んでご飯を食べさせてもらう。
映画では食べ物をアップで強調するシーンが多用されている。
普段ありがたみも感じずに何気なく食べているご飯でも、ひもじい思いをしたあとには輝いて見えるもの。
そんな田村の思いが画面から伝わってくる。
なかなかのショットだと思う。

雨水で体を洗っていた身には風呂のお湯さえ泉の如し。
今の日本は実に豊かで物資が溢れかえっているが、こういう立場にたってみると、一つ一つのありがた味がしみじみと伝わってくる。
映画を観てそれを感じる人がどれくらいいるのであろうか。

そして手を差し伸べてくれる周りの人達。
思い余って友達の家に転がり込んだ田村。
4人の子持ちのその家はけっして広いとはいえない住まい。
家計だって楽ではないだろう。
それでも「ここにいなさい」と言える事はたいへんな事だ。
そんな人達に助けられる田村兄弟。

兄弟を演じるのは小池徹平に池脇千鶴。
とても中学生・高校生という役をやる年ではないのであるが、そこは演技力のなせる業か、なんとなく違和感なくなりきっている。
そして何とも味のあるのが、「解散宣言」をする父親のイッセー尾形。
「太陽」では昭和天皇を見事に演じきったが、ここでもいかにもという父親になりきっている。
お笑い芸人としてよりももはや立派な役者ではないかと思われる。

そんなキャストが演じる兄弟の姿はちょっと感動的である。
今の世の中甘えたような人間が多いと感じるが、それはあまりにも恵まれすぎているゆえに成長できないのだと思わざるを得ない。
長男といえども大学生。
なのにとてもしっかりとしている。
そんな姿にそう感じる。
多くの気付きが得られる映画である・・・


評価:★★★☆☆
posted by HH at 21:52 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(1) | ドラマ