2009年08月06日

その名にちなんで

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原題: The Namesake
2006年 アメリカ・インド
監督: ミーラー・ナーイル
原作 :  ジュンパ・ラヒリ
出演: カル・ペン/タブー/イルファン・カーン/ジャシンダ・バレット/ズレイカ・ロビンソン

<STORY>********************************************************************************
1974年、インド・コルカタの学生ガングリーは列車事故に遭い、九死に一生を得る。
彼の命を救ったのは、ニコライ・ゴーゴリ著の「外套」を握りしめていたからだった。
事故の直前に親しくなった老人から受けた海外に出て経験を積めとのアドバイスに従い、アメリカの大学へ。
そして親の進める見合いで結婚し、家族に祝福されながら、ニューヨークでの生活を始める。
妻はやがて妊娠、生まれてきた男の子に“ゴーゴリ”と名付けた・・・
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あるインド人家族の長きにわたる生活を描いた映画である。
「その名にちなんで」というタイトルはロシアの作家ゴーゴリの名前をつけられた一家の長男の事。
しかし、これは長男の人生でもあるが、父親、そして母親の物語でもある。

インドの列車の中からストーリーは始まる。
ゴーゴリの「外套」を読む青年アショケ。
直後の事故で九死に一生を得る。
やがて結婚し、アメリカに渡る。

新妻との見合いのシーン。
脱いであったアメリカ製の靴にそっと足を通すアシマ。
アメリカから嫁探しのため一時帰国していたアショケとあっさりと結婚が決まる。
インドの風習が珍しい。

地球を半周してたどり着いたアメリカ。
コインランドリーでの慣れない洗濯。
誰も知る人のいない環境でやがて長男を生む。
インドでは祖母が名付け親になるが、すぐつけるわけではない。
何と6歳になるまでかかる例もあるそうである。
名前を決めないと出生証明が出せず、したがって退院もできないと言われ、仮のつもりで「ゴーゴリ」と名付ける。

異文化と異文化の交流がこの映画の何といってもみどころである。
ドラマは急ピッチで展開する。
4歳になってニコルという正式名称を与えられるも、それを断ってゴーゴリを本人は貫く。
しかし思春期になったゴーゴリは、実はロシアではかなりの変人という事を知り傷つく。
両親はインド人でもアメリカ生まれのアメリカ育ちであるゴーゴリはすっかりアメリカ人である。

そんなゴーゴリが、やがてインド人としての自らのアイデンティティーを意識していく。
結婚をするならやはり文化風習がおなじ民族同士にすべきなのか。
あまりにも異なる二つの文化を対比しているとそんな思いが脳裏を過ぎる。

映画の原作も監督もインド人らしい。
自らの経験を踏まえてのドラマは自ら語り継ぐ民族の誇りなのかもしれない。
インド人ならずとも自らの民族を今一度思い返して意識してみたくなる映画である・・・


評価:★★☆☆☆
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2009年07月28日

つぐない

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原題: Atonement
2007年 イギリス
監督: ジョー・ライト
原作: イアン・マキューアン
出演: キーラ・ナイトレイ/ジェイムズ・マカヴォイ/シーアシャ・ローナン/ロモーラ・ガライ/ヴァネッサ・レッドグレイヴ/ブレンダ・ブレッシン

<STORY>********************************************************************************
第二次世界大戦前夜、夏のイングランド。
政府官僚の娘で未来の大作家を自負する13歳のブライオニーは、大学を卒業したばかりの姉セシーリアと使用人の息子で幼なじみのロビーのただならぬ関係を察知し、ロビーへの警戒心を抱く。
そして事件は起きる。
ブライオニーの嘘の証言によって、愛しあう恋人たちは無残にも引き裂かれ、犯した過ちの重さにブライオニーが気づいたときには、泥沼の戦争が始まっていた・・・
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第二次世界大戦前夜、1935年のイングランド。
上流階級のセシーリアとブライオニー姉妹。
ブライオニーは13歳にして恋愛をテーマにした戯曲を書き、才能に溢れるがちょっとおませな少女。
セシーリアは表面とは裏腹に使用人の子であるロビーに心惹かれている。

ロビーからセシーリアへの手紙を託されたブライオニーは中味を見てしまう。
13歳の少女にとっては大人のエロティックな手紙は衝撃的。
おまけに二人が屋敷の片隅で愛し合う姿を目撃してしまい、ロビーに対する嫌悪感を抱く。
そして友人が草むらの中で男に覆いかぶさられているのを見てしまうと、暗闇の中で男を確認しなかったにも関わらず、犯人はロビーだと証言するブライオニー。
上流階級と使用人の子。
そんな背景もあって、ロビーは刑務所へと送られる・・・

前半は階級社会イギリスで、ロビーとセシーリアの人目を偲ぶ恋と妹ブライオニーの関係が綴られる。
愛だの恋だのに憧れる13歳にとって恋愛とはどこかしら美しいものであり、実際に愛し合う男女の行為は生々し過ぎて理解できない。
そんなブライオニーの心情は、大人からすれば微笑ましく映るものである。

潔癖なブライオニーにとって愛する姉のそんな姿は、逆にロビーに対する反感へとつながる。
13歳という年齢は実に微妙だ。
草むらで抱き合っていた友人も「押し倒された」とブライオニーに語ったが、それに抵抗したのかどうかは怪しいところだ。
むしろ後半のシーンでは同意の上であったように思わせられる。

現代であればそんな少女の証言一つで刑務所というのも行き過ぎだと思われるが、そこが戦前のイギリス社会ゆえか。
引き裂かれたロビーとセシーリア。
13歳ゆえの過ちと言えばそうなのかもしれない。
そしてその「つぐない」はあまりにも切ないもの。
原作は読んでいないが名作の香り漂う作品である。


評価:★★★☆☆
posted by HH at 10:14 | 東京 ☀ | Comment(1) | TrackBack(0) | ドラマ

2009年07月05日

いつか眠りにつく前に

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原題: Evening
2007年 アメリカ
監督 : ラホス・コルタイ
出演 : クレア・デインズ/ヴァネッサ・レッドグレイヴ /メリル・ストリープ/グレン・クローズ/トニ・コレット/ナターシャ・リチャードソン/パトリック・ウィルソン/ヒュー・ダンシー

<STORY>********************************************************************************
重い病に倒れた老女アンは、2人の娘と夜勤の看護婦に見守られ、自宅のベッドで静かに人生の最期を迎えようとしていた。
混濁する意識の中で、アンは娘たちが聞いたこともない「ハリス」という名を口走る。
彼女の意識は、40数年前の夏の日へと戻っていた。
親友ライラの結婚式でブライズメイドをするため、ライラの別荘を訪れていたアンは、ライラの弟で大学の同級生だったバディと再会。
さらに一家のメイドの息子で、今は医者をしているハリスと出会う・・・
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人には誰にでも歩んできた人生がある。
そしてその数だけドラマがある。
そんな事を改めて感じさせる映画である。

老女アンは病でいつお迎えが来てもおかしくない状態。
娘二人が付き添うが、うわ言で「ハリス」という名前を口走る。
「過ちを犯した」「バディを殺した」という言葉が続く。
思い当たる節のない娘二人は疑問を抱く・・・

映画は若い時代のアンを平行して描く。
売れない歌手として生計を立てる一方で、親友ライラの結婚式に参加したアン。
そこでライラの弟バディと再会し、そしてハリスと出会う。
ライラはハリスに思いを寄せるが、片想いに絶望し結婚へ踏み切る。
そんなライラに同情しつつもハリスに惹かれるアン。
そんなアンを慕うバディ。
それぞれがそれぞれの想いを秘めて結婚式の当日を迎える。
そして運命は大きく変わっていく・・・

心惹かれながらも結局ハリスと一緒になる事はなかったアンとライラ。
人生は必ずしもうまくいく事ばかりではない。
アンもライラもその後、子供をもうけ幸せに暮らしてきた。
しかし、どうしても「歩む事のなかったもうひとつの人生」が心を過ぎる。
時計の針を戻す事はできない。

人生に「もしも」はつきものであるだろうが、やっぱり「もしもあの時・・・」と考えてしまうのは人の常。
人生の最後に人は走馬灯のように歩いてきた人生を振り返るという。
その時強烈に蘇ってくるのはやっぱり「もしもあの時・・・」の思いなのだろうか?
思い当たる節のある人も多いのではないだろうか。

年をとったライラがアンを見舞いに来る。
ライラを演じるのはメリル・ストリープ。
ライラの若い頃とそっくりだな、と感心していたらなんと若いライラを演じたメイミー・ガマーは実娘であるという。
カエルの子はカエルなのだろうが、今後どんな活躍をするのだろうか・・・


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 10:17 | 東京 🌁 | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2009年06月27日

ここに幸あり

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原題: JARDINS EN AUTOMNE
2006年 フランス・イタリア・ロシア
監督・脚本・出演 : オタール・イオセリアーニ
出演 : セヴラン・ブランシェ/ミシェル・ピコリ/ジャン・ドゥーシェ/リリ・ラヴィーナ/アルベール・メンディ/ヤニック・カルパンティエ

<STORY>********************************************************************************
大臣のヴァンサンは、ある日突然辞任に追い込まれ、仕事も住む家も愛人も失ってしまう。
別れた元妻にも相手にされず、行き場を無くした彼を迎え入れてくれたのは老いて尚頼れる母と昔の友人たちだった。
地位も財産も関係なく、仲間たちと飲んで食べて歌って過ごすうちに、今まで気づかなかった小さな喜びや、素敵な出会いが巡ってくる。
色んなものを失ってはじめてヴァンサンは自由気ままに人生を謳歌し始めるのだった・・・
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フランスってこんな国なのだろうか?
あらためてそう思った。
大臣のヴァンサンは突然その職を追われる。
多くの男のように突然放り出されると世の中でなすすべもない。
おまけに家も愛人も元妻にさえ相手にされない。

自宅を占拠され行き場を失った挙句、窓から汚物をかけられる有り様。
その昔はトイレなども発達していず、窓から投げ捨てていたという話を聞いた事があるが、そんな伝統なのだろうか?
しかし、このヴァンサンはどこかたくましい。
その場で助けてくれた赤毛の女性と懇ろになり、さらには母親や友人たちとおもしろおかしく過ごすようになる。
そのうち次々と女性たちと「仲良く」なってしまう。

一方でヴァンサンを追い出した新大臣も暴動が発生するなどの政情不安にさらされる。
人生で大事なのは地位か名誉か金か生きがいか?
いろいろと議論の余地のあるところではあるが、たくましく生きるヴァンサンを見ているとその一つの答えがあるように思う。

ヴァンサンは決して失ったモノを嘆いてはいない。
ただ、身の回りの変化に対してフランス人らしいとでも言うべきなのだろうか、楽天主義で生きていく。
周りには友人たちもいる。
そんな彼らと心からの交流を繰り返して生きる姿は、仕事を離れると何もする事がないという人には良いお手本だ。

淡々と流れるストーリー。
ともすれば睡魔に襲われかねない静かな展開の映画であるが、じっくりと噛み締めながら観てみるといろいろと人生のヒントが詰まっていそうな映画である。


評価:★☆☆☆☆
posted by HH at 11:58 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2009年06月07日

ペネロピ

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原題: Penelope
2006年 イギリス
監督: マーク・パランスキー
出演: クリスティーナ・リッチ/ジェームズ・マカヴォイ/キャサリン・オハラ/リチャード・E・グラント/リース・ウィザースプーン

<STORY>**************************************************************************
社交界でも注目を浴びる名家・ウィルハーン家に、ブタの鼻と耳を持ったペネロピが生まれる。
娘をマスコミや世間から守るため、両親はペネロピを死んだ事に。
こうして彼女は、屋敷の中だけで生きてきた。
先祖の悪行によって一族にかけられた呪いを解く方法は、ただ一つ。
ウィルハーン家の“仲間”、つまり名家の人間にありのままの彼女を愛してもらうしかない。
だが7年もお見合いを繰り返しているのに、彼女の顔を見ても逃げ帰らない男性は現れず…!?
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童話の「みにくいアヒルの子」と「カエル王子」をブレンドさせたようなお話である。
名門ウィルハーン家の当主がお手伝いさんに手を出した。
お手伝いさんは身分の壁を越えられず、世を儚んで自殺する。
そのお手伝いさんの母親が実は魔女で、ウィルハーン家に呪いをかける。
「次に生まれた女の子はブタになる」と・・・

しかし、その後ウィルハーン家に生まれた子供はみんな男の子。
呪いの事も忘れかけたその時にペネロピが生まれる。
ブタの耳と鼻を持って・・・
母親は世間の好奇からペネロピを守るために屋敷の中だけに閉じ込めて生活させる。
呪いを解く方法はただ一つ、「名門の子息と結婚すること」。

こんな前提のドラマ。
前半はペネロピの紹介と名門の子息とのお見合いを繰り返す様子が描かれる。
名家の令嬢とのお見合いという事で、子息たちが次々とやってくる。
しかし、ペネロピを一目見ただけでみんな逃げ出してしまう。
守秘義務契約を結ばせる事で秘密を守る事が精一杯。
そんな中である男だけが、逃げずに残る。

ペネロピを演じるのはクリスティーナ・リッチ。
「ブラック・スネーク・モーン」「耳に残るは君の歌声」「ウェス・クレイヴン’S・カースド」とここのところよく出演作品を目にする。
もう十二分に大人の女性なのであるが、童顔であるせいかこの映画での少女っぽい役柄もぴったりと合っている。

呪いを解くには結婚しなければならない。
ただ結婚するとなると、特にお金に不自由しない名家の子息は容姿に拘る。
そうするとみんなペネロピを見て逃げ出してしまうわけである。
結婚さえすれば呪いが解けて美しくなれると信じる母親が、狂気のようになってお見合いに奔走する様はこっけいである。
そしてそれゆえに大事な事を忘れてしまっているのである。

ストーリーとしては当然の如く呪いは解けるのであるが、それは思ってもみなかった方法。
そしてそれは観る者にも大事な何かに気付かせてくれる方法。
「○○しさえすれば幸せになれる」
実はそういう呪いにかけられている人は多いのではないだろうか。
本当にそうなのか、他にもっと大事な事はないのか?
笑う前に自ら問いかけてみる必要があるかもしれない。
味わい深いおとぎ話である・・・


評価:★★★☆☆
posted by HH at 23:38 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ