2009年10月12日

【君のためなら千回でも】My Cinema File 466

君のためなら千回でも.jpg

原題:The Kite Runner
ペルシャ語題: کاغذپرانباز- Kāğazparān Bāz か بادبادکباز Bādbādak-bāz)
2007年 アメリカ
監督: マーク・フォースター
出演: ハリド・アブダラ/ホマユーン・エルシャディ/ゼキリア・エブラヒミ/アフマド・ハーン・マフムードザダ/ショーン・トーブ

<STORY>********************************************************************************************************
1970年代のアフガニスタン。
裕福な家の一人息子アミールは、召使いの息子ハッサンと凧遊びをしたり、兄弟のように仲よく暮らしていた。
だがある日、小さな二人の絆は思いがけない出来事によって砕け散ってしまう。
やがてソ連がアフガニスタンに侵攻。2人の関係は修復されることなく、アミールと父親は米国に亡命する。
時は流れ、2000年のサンフランシスコ。
小説家となったアミールの元に、父親の親友から「君は今すぐ故郷に帰って来るべきだ」と電話が入る…
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原作はベストセラーとなった小説らしい。
アフガニスタンを舞台としており、今やテロの温床国家というイメージしかない同国への理解が深まる作品である。

アフガニスタン人と一言でいっても、実際はパシュトーン人とハザラ人とに別れるらしい。
そしてパシュトーン人はハザラ人を差別し、毛嫌いしている。
見かけは区別はつかないのであるが、そんな似ている人種でも差別につながるのはいずこの国でも同じなのであろう。

主人公アミールとハッサンは裕福な家の長男と召使いの子供という関係。
同世代でもあり仲良く過ごしている。
アフガニスタンでも凧上げの習慣があるようで、互いに競わせて糸を切った方が勝ちというものの様である。
糸を切られて落ちていく凧を追っていくのがハッサンの役目。
英語のタイトルThe Kite Runnerはここからきているようである。

そんな二人はある事件をきっかけに諍いを起こす。
といってもハッサンは争わずに受け入れただけなのであるが・・・
1979年のソ連によるアフガニスタン侵攻で、祖国を追われるアミールと父親。
アミールは新天地アメリカで作家として成功するが、祖国アフガニスタンはソ連撤退後も混乱が続き、タリバン政権による急進的な政策で国内は混乱に陥る。

アフガニスタンを離れたアミールと留まったハッサン。
揺れ動く祖国と二人の運命。
国が平和であるという事がどれほど重要な事なのか。
そのありがたみを感じずにはいられない映画である。


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 11:53 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2009年10月11日

【クワイエットルームにようこそ】My Cinema File 465

クワイエットルームへようこそ.jpg

2007年 日本
監督: 松尾スズキ
出演:  内田有紀/宮藤官九郎/蒼井優/りょう/妻夫木聡/大竹しのぶ

<STORY>********************************************************************************************************
佐倉明日香は28歳のフリーライター。
ようやく手にした署名コラムの執筆は行き詰まり、同棲相手ともすれ違いが続く微妙な状態。
そんなある日、明日香は気がついたら、真っ白な部屋のベッドに拘束されていた。
やってきたナースに「アルコールと睡眠薬の過剰摂取により、丸2日間昏睡状態だった」と説明されても、記憶があちこち欠如した明日香は戸惑うばかり。
だが非日常的な空間で見知らぬ人々と出会ううち、明日香の中で何かが変わり始める…
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「クワイエットルームにようこそ」変わったタイトルの映画は珍しくないが、これもタイトルだけでは内容が(どんな分野かも)わかりくい。
ここでは「クワイエットルーム」とは精神病棟の拘束室を意味している。
つまりこの映画は精神病棟を舞台とした映画なのである。

主人公の佐倉明日香はフリーライター。
取材に執筆にと精力的に活動している。
それがある日突然目が覚めると病院のベッドの上。
しかも手足は固定されて身動き取れない。
観ている方も一体何がどうなっているかわからない。
そして明日香とともに空白の記憶を埋めていく事になる。

そうして空白が埋まるにつれて明らかになる明日香の生活振り。
そしてその理由。
精神病棟までの道のりが明らかになっていくが、前半はコメディタッチの展開。
興味を持ちつつ半分引きつつといったところだ。
コメディタッチのドタバタ展開は、個人的にはどうにも好きにはなれない。

同じ病棟の医師にナースに患者達。
それぞれに個性的。
特にりょうはあの爬虫類的な顔と冷たい看護師役が妙にマッチ。
「西の魔女が死んだ」の母親役とはちょっと雰囲気が違う。

それと久々に観た大竹しのぶの怪演。
以前「黒い家」という映画を観たが、あの映画での恐ろしいまでの大竹しのぶがここに登場する。
病棟の患者を次々と追い詰めキレさせるのだが、そのやり方が実に不気味。
その他蒼井優とか妻夫木聡とか大物がさり気なく登場する。

そんな中にあって主役の内田有紀は、これまで何となく「可愛いだけのタレント」というイメージを一新させる。
退院してタクシーで帰る明日香。
その行く先にはどんな明日が待っているのか。
最後はちょっとシリアスに締めたため、引き締まったドラマとなった。

一見の価値ある映画である・・・


評価:★★★☆☆
posted by HH at 21:09 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2009年10月10日

【西の魔女が死んだ】My Cinema File 464

西の魔女が死んだ.jpg

2008年 日本
監督:  長崎俊一
原作: 梨木香歩
出演:  サチ・パーカー/高橋真悠/りょう/大森南朋/高橋克実

<STORY>********************************************************************************************************
中学生になったばかりのまいは学校へ行くのが嫌になり、ママの提案でおばあちゃんのもとでひと夏を過ごすことになる。
魔女の血筋を引くというおばあちゃんの暮らしは自給自足。
野菜やハーブを育て、昔ながらの知恵を活かしながらの生活は、まいにとって新鮮に感じられた。
課された“魔女修行”は、早寝早起き、食事をしっかり摂り規則正しい生活をするというもの。
そんな暮らしは、やがてまいの心にも変化を起こさせるのだった…
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原作は梨木香歩の小説。
学校に行けなくなった中学生のまいとおばあちゃんとの交流を描いたもので、ほぼ原作にそって映画化されている。
原作も良かったが、こういうストーリーはビジュアル面で映画に軍配が上がるかもしれない。

いわゆる不登校児となったまい。
父親は単身赴任で、母親と二人で暮らすまい。
まいの「学校へ行かない」という宣言を聞いた母親は、何も言わず田舎の母親(つまりまいの祖母)のところへまいを預ける事にする。
祖母は英語の教師としてかつてイギリスからやって来たイギリス人で、祖夫なきあとは一人暮らしである。

祖母は魔女の血を引いており、興味をもったまいは「修行」を始める。
いなかで作物を育てながら暮らす祖母。
祖母とまいの交流が、田舎の自然の中で静かに続く。
不登校にならなかったら、退屈な田舎暮らしなど望まなかったかもしれない。
それは何もまいに限った事ではなく、都会で暮らす者みなに当てはまるのではないだろうか。

登場人物も大半がまいとおばあちゃん。
やがて学校へと戻るまい。
だれでもおばあちゃんのように暮らしていれば、争い事など起きないかもしれない。
遠く祖国を離れ異国で暮らすおばあちゃん。
いろいろと思いを馳せてみたくなる。

ラストがちょっと感動的な心温まるお話である・・・


評価:★★★☆☆
posted by HH at 15:50 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2009年09月23日

【ゼア・ウィル・ビー・ブラッド】My Cinema File 458

ゼアウィルビーブラッド.jpg

原題: There Will Be Blood
2007年 アメリカ
監督・製作・脚本 : ポール・トーマス・アンダーソン
原作 : アプトン・シンクレア
出演: ダニエル・デイ=ルイス/ディロン・フレイジャー/ポール・ダノ/ケビン・J・オコナー/キアラン・ハインズ

<STORY>********************************************************************************************************
一攫千金を夢見るダニエル・プレインヴューは、幼い1人息子を連れて石油の採掘を行っていた。
ある青年から、「故郷の広大な土地に石油が眠っている」と聞いた彼は、パートーナーのフレッチャーと共に米西部の小さな町、リトル・ボストンに赴き、安い土地を買占め、油井を掘り当てる。
しかし、油井やぐらが火事になり、幼い息子は聴力を失う。
精神に混乱を来した息子を、プレインビューは彼方の土地へ追いやってしまう・・・
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何ともよくわからない映画だった、というのが正直な感想である。
良い映画というのは解説などなくても面白さが伝わってくるものだと思う。
観終わって途方に暮れ、あとで解説を読んで「ああ、そうだったのか」と思うような映画は、一つの世界として完結していない。
この映画にもいろいろと背景がありそうである。
それがわかればもっと内容を味わえたのかもしれない。

”There will be blood”というタイトルもわかったようなわからないようなタイトルである。
Bloodは血という意味であるが、それが実際に流される血を意味するのか、それとも親子の血縁といった意味なのであろうかといろいろと考えてしまった。
もっともそれがわかったところでどうだという事もないが・・・

主人公のダニエルは始めは金を掘り、次に石油を掘る。
ともに当てれば大きな見返りがある。
事故で死んだ仲間の子供H・Wを引き取って育てる優しさもあるが、それも実は商売のためで、後に事故でH・Wが聴力を失うと寄宿舎のようなところへ追い払ってしまう。

しかし石油が出る土地を買い占めるにしても、地主たちにもその土地に住まわせ、学校を建てて恩恵に預からせているのだから、根っからの悪人というほどでもないのかもしれない。
そう思っていると、弟と称して近寄ってきた男に対しては非常な行為をおこなったりする。
金に対する執着心が強く、冷酷非情な男なのかと思えば事故で死んだ部下に対する対応を見てもそうとも言い切れないところがある。

結局、そうした掴み所のなさが、なんとなく映画として迫力を感じられないところとなってしまう。
この映画で主演のダニエル・デイ=ルイスはオスカーに輝く(主演男優賞)。
確かに演技力という点ではダニエルという男を怪演したという事で評価されたのであろう。
それはそれでわかるのであるが、映画全体としての印象からすれば?マークがついてしまう。
「誰かに解説してもらわないと理解できない映画」は他人がどう評価しようが個人的にはパスだ。
ただ、「石油を巡る一人の男の物語としてはそこそこだ」、とだけは言えるのではないだろうか・・・


評価:★★☆☆☆

posted by HH at 10:46 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2009年09月22日

【クライマーズ・ハイ】My Cinema File 457

クライマーズ・ハイ.jpg

2008年 日本
監督・脚本 : 原田眞人
原作 : 横山秀夫
脚本 : 加藤正人/成島出
出演 : 堤真一/堺雅人/尾野真千子/高嶋政宏/山崎努

<STORY>********************************************************************************************************
1985年8月12日、群馬県御巣鷹山にJAL123便が墜落、死者520人の大惨事が起こった。
前橋にある北関東新聞社では、白河社長の鶴の一声により、一匹狼の遊軍記者・悠木和雅が全権デスクに任命される。
そして未曽有の大事故を報道する紙面作り―闘いの日々が幕を開けた。
さっそく悠木は県警キャップの佐山らを事故現場へ向かわせる。
そんな時、販売部の同僚で無二の親友・安西がクモ膜下出血で倒れたとの知らせが届く…
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「クライマーズ・ハイ」とは登山者の興奮状態が極限まで達し、恐怖感が麻痺してしまう状態のことである。
「ランナーズ・ハイ」という走る者の興奮状態はよく聞くからなんとなくわかる。
この映画、当初は山男の山物語かと思っていたのでちょっと敬遠していた。
そういう意味では少し考えた方がいいように思えたが、映画を観終わってみるとなかなかな納得のタイトルである。

御巣鷹山の日航機墜落事故は24年を経た今も、当時ニュースを見ていた者からすると強烈な印象が残っている。
そんな強烈な印象はこの映画に出てくるような記者たちが送り出していたものである。
映画自体はフィクションだが、似たようなことがきっとどこの現場でも行われていたのではないか、と想像させられる。

新聞記者は事件を報道する者である。
それを見るのは我々であり、大いに関心のあるところである。
しかし報道の裏側では様々な経緯・やり取りがある。
新聞の紙面作りはその新聞社の生命線であるが、そこには現場の人間達の思惑が入り乱れる。
何を1面に持ってくるのか、構成はどうするのか・・・
あらためて普段我々が目にするニュースは、知らず知らずのうちに新聞社のフィルターを通されているのだと感じる。

内容的には★★★★☆になりかけたが、迷って★★★☆☆とした。
面白かったのであるが、やはりところどころ引っ掛ったのだ。
全権デスク悠木が山男である事はわかったのであるが、子供とのエピソードがわかりにくかった(子供が事故に巻き込まれたのだと思っていた)し、倒れた親友との絡みがわかりにくかった。
新聞社内の権力関係もよくわからなくて指揮系統が乱れているようにも思えた。
原作を読んでいないのでよくわからないが、映画の枠内に収めるために端折った感がする。
大事故を熱くなって追う男たちの姿は感動的ですらあるので、もう少し違う形であったら、ひょっとしたら名画になっていたかもしれないと思わせられる。

最前線で突入取材を敢行する佐山の記者魂も素晴らしい。
記者がみんなこういう熱い人間だったら、新聞の紙面ももっと違うものになるような気がする。
今の新聞はただムードに流され、深い思考のない薄っぺらな記事があまりにも多い。
「サラリーマン記者」の無難な記事が多すぎるのである。
それゆえにここで熱く働く男たちの姿は感動的である。

「ハイ」の状態は、第3者にはわかりにくいものである。
だがそれがわかるような気になる映画である・・・


評価:★★★☆☆
posted by HH at 23:20 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ