2016年06月19日

ナイトクローラー

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原題: Nightcrawler
2014年 アメリカ
監督: ダン・ギルロイ
出演: 
ジェイク・ジレンホール:ルイス・ブルーム
レネ・ルッソ:ニーナ・ロミナ
リズ・アーメッド:リック
ビル・パクストン:ジョー・ロダー
アン・キューザック:リンダ

<シネマトゥデイ>
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第87回アカデミー賞脚本賞にノミネートされたサスペンス。事件や事故現場に急行して捉えた映像をテレビ局に売る報道パパラッチとなった男が、刺激的な映像を求めるあまりに常軌を逸していく。脚本家として『ボーン・レガシー』などを手掛けてきたダン・ギルロイが、本作で監督に初挑戦。『ブロークバック・マウンテン』などのジェイク・ギレンホールを筆頭に、『マイティ・ソー』シリーズなどのレネ・ルッソ、『2ガンズ』などのビル・パクストンらが出演。報道の自由のもとで揺らぐ倫理という重いテーマが、観る者の胸をざわつかせる。
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「ナイトクローラー」とは、夜を這いつくばるというようなニュアンスなのだろうが、実に内容によくマッチしたタイトルであると思う。
主人公のルイスは、冒頭からいかにも怪しげな男。あちこちからモノを盗み、どうやらそれを売って暮らしている。一応、仕事には就きたいと思っているようで、盗品を売り込みに行った会社の社長に盗品だけではなく自らをも売り込む。しかし、盗品を売り込みに来た男をいくらそれを買っている立場とはいえ、雇う者などいない。

ある時、ルイスは偶然通り掛かった事故現場で被害者を助ける警官を撮影している男に出会う。男はいわゆるパパラッチ。撮った映像を目の前でテレビ局に売り込んでいるのを目撃し、「閃く」。早速、盗品を売って粗末なカメラと警察無線傍受セットを買い込むと、ポンコツの車を操って夜の街に繰り出して行く。

パパラッチの世界も、素人が真似をしてすぐにうまくいくものではないだろうが、素人なりに物怖じしないルイスは、事件現場では被害者を至近距離まで接近して撮影し、警官に追い払われる。プロが守る一線も素人にはわからない。しかしこの迫真の映像が、プロデューサーのニナに気に入られ、以後ルイスはニナの元に映像を届けるようになる。同時に仕事を探していたリックを雇い、コンビで夜の徘徊を始める。

パパラッチと聞くと、プライベートも関係なく人の迷惑顧みずに写真を撮りまくるというイメージがあるが、ルイスはまさにそれを地で行く。「いい映像」を撮るためなら、躊躇なく法もモラルも踏みつぶしていく。一方、ニナからはどんな映像にニーズがあるのかを聞き出し、「売れる映像」を撮る創意工夫も見せていく。この男、まともに働いていたら、仕事がデキる男になっていただろう。

ルイスにとっては、傷ついて横たわる被害者も「売れる材料」でしかない。事故現場では、「いい映像」を撮ろうと、倒れているけが人を救助するどころか「いいポジション」に移したりする。そして、ルイスの持ち込む映像を視聴率のために反対の声を押し切って次々とオンエアするニナ。挙句、ルイスの行動はどんどんエスカレートしていく・・・

ルイスを演じるのは、ジェイク・ギレンホール。もともと個性派的なところがある俳優さんだが、こういうちょっとアブない役柄はなんとなくピッタリのように思える。そしてアクの強いプロデューサーのニナ。どっちもどっちのモラル観のない二人であるが、二人の役者さんの迫力なのだろうか、強烈なインパクトの残るものとなっている。「見る者」がいるから「見せる者」がいて、だから「撮る者」がいる。ルイスの姿は実に醜いのであるが、果たしてそうと言い切れるのであろうかと思ってみたりする。

考えれば深いテーマの映画である・・・


評価:★★☆☆☆





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2016年06月11日

サンバ

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原題:Samba 
2014年 フランス
監督: エリック・トレダノ/オリビエ・ナカシュ
出演: 
オマール・シー:サンバ
シャルロット・ゲンズブール:アリス
タハール・ラヒム:ウィルソン
イジア・イジュラン:マニュ
イサカ・サワドゴ:ジョナス

<シネマトゥデイ>
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日本でもヒットを記録したフランス映画『最強のふたり』の監督エリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュ、俳優オマール・シーが再びタッグを組んだコメディードラマ。料理人を目指してひたむきに勤務していたにもかかわらず国外退去を命じられた移民の青年が、追い込まれた状況でも周囲の人々を笑わせ、元気にしていくさまを描く。主人公をオマールが、燃え尽き症候群のボランティア女性をシャルロット・ゲンズブールが演じる。個性豊かな登場人物と温かな物語に心をつかまれるとともに、オマールの人懐っこい笑顔に魅了される。
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『最強のふたり』はなかなかいい映画だったし、その監督コンビと主演が一緒ということで、観てみることにした映画。もちろん、予告もそれなりに期待できそうだったということもある。

主人公は、タイトルにもある通り、セネガルから来て働いている青年サンバ。料理店で皿洗いをしながら、料理人になることを夢見ている。しかし、ある時ビザの更新を忘れ、失効させてしまう。そしてそのまま無情にも国外退去を命じられる。拘束されているサンバの下へやってきたのが、ボランティアのアリス。もともと大企業に勤めていたが、心を病んで休職。社会復帰のリハビリとしてボランティアに参加していたのである。

移民に感情移入してはいけないと教えられていたアリスだが、ひたむきなサンバに携帯の番号を教えてしまう。そして事あるごとにサンバを助けていく。サンバは国外退去処分となった身分を隠し、様々な手段を講じて仕事をしながら食いつなぐ。同じような仲間と知り合い、共に助け合いながら社会の片隅に居場所を築いていくのである・・・

映画は時として世相を反映し、お国柄が出たりもする。この映画の主人公はセネガルからの労働者サンバ。料理店で働いているとはいえ、仕事は皿洗いである。そしてビザが失効し国外退去を命じられた後も、身分を隠し働き続ける。しかし、見つかれば強制退去であり、あらゆるツテをたどってIDを確保し、仕事を確保する。「来るたびに名前が違う」と事情を把握している担当者に言われたりする・・・

このあたりは移民社会のフランスならではだろう。労働者を求めるトラックが到着すると、我先にと必死にアピールし、仕事をもらおうとする。そういえば『メトロマニラ〜世界で最も危険な街〜』でも似たような光景が描かれていた。当然賃金は最低ランクだし、中にはサンバも巻き込まれたように、気がつけば盗人の見張りだったりするものもあるかもしれない。

そうした底辺の人々のことなど大半の人々は意識もしない。アリスのようにボランティアでサポートする人たちもいるが、「必要以上に感情移入するな」と諭す同僚のようだったりする。日本でも少子高齢化に対する政策として、移民を主張する意見もあるが、こうした実情もよく見ておく必要があるかもしれない。

ストーリーは程よくハートウォーミングさせてくれる内容。アメリカ映画とはまた一味違う趣のあるフランス映画である・・・


評価:★★☆☆☆




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2016年06月05日

マイ・インターン

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原題: The Intern
2015年 アメリカ
監督: ナンシー・マイヤーズ
出演: 
ロバート・デ・ニーロ:ベン・ウィテカー
アン・ハサウェイ:ジュールズ・オースティン
レネ・ルッソ:フィオナ
アンダーズ・ホーム:マット
ジョジョ・クシュナー:ペイジ
アンドリュー・ラネルズ:キャメロン
アダム・ディヴァイン:ジェイソン
ザック・パールマン:デイビス
ジェイソン・オーリー:ルイス
クリスティーナ・シェラー:ベッキー

<映画.com>
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『プラダを着た悪魔』のアン・ハサウェイと名優ロバート・デ・ニーロが共演したハートフルドラマ。ファッションサイトのCEOとして活躍する女性が40歳年上の男性アシスタントとの交流を通して成長していく姿を描いた。ニューヨークに拠点を置く人気ファッションサイトのCEOを務めるジュールスは、仕事と家庭を両立させながら誰もが羨むような人生を歩んでいた。ところがある日、彼女に人生最大の試練が訪れる。そんな折、会社の福祉事業で雇われたシニアインターンのベンが、ジュールスのアシスタントに就く。ジュールスは人生の大先輩であるベンから様々な助言をもらい、次第に心を通わせていく。監督・脚本は『ホリデイ』「恋愛適齢期」のナンシー・マイヤーズ。「セックス・アンド・サ・シティ2」の衣装を手がけたスタッフによる洗練されたファッションも見どころ。
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名優ロバート・デ・ニーロとアン・ハサウェイの共演といえば、それだけで観る価値はあるというもの。その2人の心地よい友情物語である。

アン・ハサウェイ演じるのは、人気ファッションサイトのCEOジュールズ。わずかな期間で急成長し、今や200名を超える社員を擁している。そこへ社会貢献の一環として採用された70歳のベンがアシスタントとして配属される。もともと電話帳製作会社に勤めていたベンだが、妻を亡くし、暇を持て余した挙句の社会復帰であった。

ジュールズも時代の先端を行く存在。ネット企業として起業し、わずかな期間で急成長。CEOとして会社を切り盛りし、家では夫が主夫として子供の面倒から一切の家事をみている。そこへやってきたベンは、電話帳製作会社の元部長。業種も年齢もジュールズとは真逆の存在である。配属初日に机の上に置いたのは、電卓に品質の良さそうなペンにアナログの時計等々。このギャップが微笑ましい。

忙し過ぎてシニアのインターンを採用することすら忘れていたジュールズ。ベンに仕事はメールで指示するとだけ言い置くが、待てど暮らせど指示のメールは来ない。ベンはふてくされるでも腹を立てるでもなく、いつの間にか社内で仕事を見つけ仲間を助けている。ある日、ジュールズの専属運転手が飲酒しているのを見つけ、さり気なく運転を変わる。ここから2人の距離が縮まっていく。

忙し過ぎる仕事、家庭では夫を頼りにしつつも夫婦間の関係はいつしかすれ違うことが多くなっている。それでも仕事ではライバルの研究をし、顧客サービスを追及し、社員にも的確な指示を出すジュールズ。そして自分の立場をわきまえ、1歩身を引きながらも自分自身であることを忘れないベン。スーツは不要と言われるが、それが自分のこだわりと、毎朝ビシッと身を固めて出勤する。2人の仕事に対するスタンスは、ビジネスマンにはヒントになる要素が溢れていると思う。

ある日、ジュールズは、母親宛に間違ってメールを送信してしまう。絶対に読まれたくないジュールズは、会社のIT専門スタッフに知恵を求める。しかし、ベンは家に忍び込んでPCから削除すれば良いと提案する。なんでも先端の知識が一番というわけではないことをさり気なく示すエピソードであるが、こういうところにシニアの域に近づいた者の心得がある気がする。

物語は、ベンとジュールズの交流を描いていき、それはそれで心暖まる映画である。一方で、『プラダを着た悪魔』と同様、ビジネスマンにとっては仕事に対するスタンス等参考になる部分も多い。自分がベンだったら、あるいはジュールズだったら、と想像しながら見ると、いいヒントに溢れていると思う。

大人向けの実にいい映画である・・・


評価:★★★☆☆



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2016年05月21日

エヴァの告白

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原題: The Immigrant
2013年 アメリカ
監督: ジェームズ・グレイ
出演: 
マリオン・コティヤール:エヴァ・シブルスカ
ホアキン・フェニックス:ブルーノ・ワイス
ジェレミー・レナー:オーランド(エミール)
エレーナ・ソロヴェイ:ロジー・ヘルツ
ダグマーラ・ドミンスク:ベルヴァ
マヤ・ワンパブスキー:エディタ・ビストリッキー
アンジェラ・サラフィアン : マグダ・シブルスカ

<Movie Walker解説>
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『エディット・ピアフ 愛の讃歌』でアカデミー賞主演女優賞に輝いたマリオン・コティヤール主演のヒューマンドラマ。幸せを求めてアメリカへ移住した女性が、娼婦に身を落としてまでも懸命に生きようとする姿を描く。彼女を翻弄する裏社会の男をホアキン・フェニックス、思いを寄せるマジシャンをジェレミー・レナーが演じる。
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原題は、「移民」とある通り、映画は1921年のニューヨークから始まる。ポーランドからアメリカに渡ってきたエヴァとマグダの姉妹。咳き込むマグダと手続きを不安そうに見守るエヴァ。エヴァはイギリス外交官の通訳をしていたということで英語が話せる。しかし、エヴァの不安は的中し、マグダは肺病を疑われて隔離、エヴァ自身も引受人の住所が怪しく、かつ船中での不適切行為があったとかで入国にストップがかかる。

見知らぬ外国で頼りにする叔母も迎えに来ない中、本国への送還を告げられるエヴァ。そこに現れたのが興行師のブルーノ。エヴァの必死の訴えに、係官に袖の下を渡し、エヴァを連れ出す。連れて行かれた先では、女たちが衣装を着飾り、舞台で踊る。そしてどうやらそれは表の姿で、裏では女たちに客を取らせている。

時は第一次世界大戦後であり、混乱の欧州から新天地に大勢の人たちが押し寄せたのであろう。移民たちの扱いも温かみのあるものでないことは仕方ないのであろう。そして身一つで渡ってきた移民たちが日々の稼ぎを得るのも簡単ではなかったであろう。頼みの綱の叔母と会えず、妹のマグダは隔離されて治療費が必要となると、エヴァが体を売るようになるのは自然の成り行きなのかもしれない。

マグダと会うこともままならない日々を過ごすうちに、エヴァはマジシャンのオーランドと知り合う。なぜかエヴァに好意を持つオーランド。実はオーランドはブルーノのいとこで、二人は旧知の仲であるが、ブルーノはオーランドを嫌っている。当然のごとく、エヴァに近づくオーランドを嫌悪する。やがてブルーノは「護身用」と称して銃まで用意する。

ポーランドでは目の前で両親を殺され、姉妹で助け合ってようやく新大陸へやってきたものの、まともな暮らしすらままならぬエヴァ。日々生き抜き、マグダの治療費を稼ぐ。オーランドに対しても、頼りにする一方で信用しないと言い切るエヴァは、自分だけが頼りである。願いはと聞かれて、「幸せになること」と答えるが、その幸せは特別なことではなく、妹のマグダと一緒に体を売らずに済む生活を送ることなのだろう。

そんなささやかな「幸せ」すら遠いエヴァに心が傷む。そしてそれぞれ形は違えどもエヴァに好意を寄せるブルーノとオーランド。二人の男もよくよく考えれば必死に生きている。時代といえば時代だったのかもしれないが、ふたりの男の運命もまた物悲しい。ブルーノとエヴァの画面を分けたラストシーンも印象深い。最後にエヴァは幸せになれたのだろうか。「普通の幸せ」を手にできたと信じたいところである。

主演はマリオン・コティヤール。アカデミー主演女優賞を獲得した『エディット・ピアフ 愛の讃歌』をはじめとして、『ダークナイト・ライジング』『インセプション』『コンテイジョン』『サハラ、熱砂の愛』など、気がつけば結構多数の出演作を観ている。ただ、この映画は印象度からいけば、『エディット・ピアフ 愛の讃歌』に劣らぬ出演作だと思う。

似たような物語が実際には数多くあったのかもしれない。
遠い昔の他国にそんな思いを馳せてみた映画である・・・

評価:★★★☆☆


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2016年05月10日

紳士協定

紳士協定.jpg

原題: Gentleman's Agreement
1947年 アメリカ
監督: エリア・カザン
出演: 
グレゴリー・ペック: フィリップ
ドロシー・マクガイア: キャシー
アン・リヴィア: グリーン夫人
ジューン・ハヴォック: エレイン
セレステ・ホルム: アン
ジョン・ガーフィールド: デイヴ

<映画.com>
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反ユダヤ主義に対して果敢な挑戦を行なったジャーナリストの姿を通し、アメリカ社会の恥部を描く。1947年度アカデミー作品賞、監督賞、助演女優賞(セレステ・ホルム)を受賞。製作はダリル・F・ザナック、監督は「ラスト・タイクーン」のエリア・カザン、原作はローラ・Z・ホブスン、脚本はモス・ハート、撮影はアーサー・ミラー、音楽はアルフレッド・ニューマンが担当。出演はグレゴリー・ペック、ドロシー・マクガイア、ジョン・ガーフィールド、セレステ・ホルムなど。
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アカデミー賞の作品賞・監督賞を同時受賞している作品というのは、結構名画だと個人的には考えている。そんな名画に分類され、なおかつタイトル名も知っているのにまだ観たことがないということで、観てみることにしたこの映画、なんともう70年近く前の作品ということになる。

物語は、主人公のフィリップが息子とともにニューヨークへやってくるところから始まる。フィリップは名の知れた作家で、雑誌社の編集長ジョンに招かれたのである。そこで反ユダヤ主義に関する記事を依頼されたフィリップは、アイディアを練るうちに自らユダヤ人であると称し、周囲の反応をレポートすることを思いつく。ジョンの賛同を得たフィリップは、周囲がまだ自分を知らないことをいいことに、早速ユダヤ人であることを告知する。

まずは新たにフィリップの秘書となった女性が就職差別について教えてくれる。ユダヤ風の名前で応募したところ不採用となり、今の名前で応募したところ採用になったという。両方とも履歴書の内容は同じなのに、である。しかもそれが今の職だと明かされ、フィリップはショックを受ける。

さらに周囲の反応の変化はてきめんで、アパートの管理人からかかりつけの医師もやんわりと差別反応を示す。恋人とハネムーンを予定していた高級ホテルは「非公開」だと言われ、確かめに訪れると、やんわりと宿泊を断られる。さすが自由と平等の国、誰も表立って露骨な差別はしない(する人もいる)。

そうした差別は露骨でないだけに始末が悪く、自分は差別主義ではないと思う大多数の善人も、差別や偏見を前に「沈黙」という形で後押しをしていることに気がつかない。フィリップのイライラは、やがて恋人のキャシーとの衝突につながり、婚約解消となってしまう。また、息子は学校で言われなきいじめに遭って泣いて帰ってくる。

日本人の感覚でいくと、黒人差別は露骨でわかりやすいが、ユダヤ人差別はわかりにくい。ただ、シェイクスピアの「ベニスの商人」にも表れるくらいその歴史は古く、その最たるものがナチスによるホロコーストであり、アメリカ社会でも暗黙の存在なのだろう。「暗黙」ゆえに、様々な「暗黙の了解」があり、それが「紳士協定」な訳である。

この映画が創られたことは、そうした差別解消への動きなのだろうし、オスカーに輝いたというのもアメリカ社会の意思のように思われる。特に大事なのは、キャシーのように自分は差別などしないと思いながら、周囲との協調という名目でいつの間にか無難に「紳士協定」に従い、差別の後押しをしてしまっていることであろう。実に深い物語である。

主演のグレゴリー・ペックは、これでもかというくらいに二枚目であり、当時の世相とともに映画の雰囲気が伝わってくる。温故知新ではないが、映画大国アメリカの歴史を感じさせる映画である。まだ観ぬ名画も多く、折に触れて観たいと考えている。「作品賞+監督賞」はやっぱり間違いないと確信させてくれる一作である・・・

評価:★★☆☆☆




posted by HH at 20:36 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ