2009年01月06日

母べえ

母べえ.jpg

2007年 日本
監督: 山田洋次
出演: 吉永小百合/浅野忠信/檀れい/志田未来/戸田恵子/坂東三津五郎

****************************************************************************************
日中戦争が泥沼化しつつある頃。
野上家では、ドイツ文学者の夫・滋と妻・佳代、そしてしっかり者の長女・初子と天真爛漫な次女・照美の4人が貧しくも明るく暮らしていた。
お互いを「父べえ」「母べえ」「初べえ」「照べえ」と呼び合う仲睦まじい家族だったが、昭和15年2月、滋が治安維持法違反で検挙されてから苦難の日々が始まった。
そんな折、滋の教え子・山崎徹が訪ねてくる。
それ以降、徹は一家の手助けをするのだった…
****************************************************************************************

上記のあらすじを読んでみてどのくらいの人が興味を持つだろうか?
はっきりいって期待してしまいました。
ちょうど日中戦争が始まって日本全体に暗雲漂う時代。
その中で健気に生きる人・・・

監督は山田洋次さんだし、主演は吉永小百合だし・・・
しかし、観終わってどうにも何かが足りない気がしてならない。
涙の一つも出てきそうなストーリーなのだが、そうならない。
いったいこの映画は何を言いたいのだろう?
それが一番わからない。

戦争中の大変な暮らし?
ならば一番大変な終戦間際がない。
特高に捕まったご主人も途中で死んじゃうし・・・
日米戦争前の生活の様子?
ラストは何の意味があるの?
すべてが中途半端としか言いようがない・・・

サユリストの人なら無条件で喜ぶのでしょうね。
それでも半分くらいまではかなり良い線いってたと思う。
まだスキヤキが食べられる時代。
母べえの意地で、スキヤキやカステラを目の前にして食べ損なった子供がべそをかいたりして、海水浴もまだ楽しめたのかとか当時の生活習慣が、(どこまで時代考証が正確なのかわからないけど)そこはかとなく興味深く観れたのだ。

しかしいよいよ日米開戦。
これからが本当に苦しい時代・・・
と思ったらあっという間の終戦。
これが実話なら別だがそうでないとなるとナレーションによる解説も余計な気がする。
吉永小百合のお母さんをあまりにもきれいに描き過ぎた一品である。


評価:★★☆☆☆


    
posted by HH at 23:10 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(2) | ドラマ

2008年12月08日

耳に残るは君の歌声

TheManWhoCried.jpg

原題:The Man Who Cried
2000年 イギリス/フランス
監督: サリー・ポッター
出演: クリスティーナ・リッチ/ケイト・ブランシェット/ジョニー・デップ/ジョン・タトゥーロ

****************************************************************************************
1927年、ロシア。
ユダヤ人の少女フィゲレは村を襲った暴動から逃れ、父親とも別れて、ロンドンへ。
スージーと名付けられた彼女は、10年後、コーラス・ガールとしてパリで働くことに。
美しく野心家のロシア人ダンサー、ローラと知り合い、アリアの名手であるイタリア人オペラ歌手ダンテの美声に惹かれるもののその人間性に失望した彼女は、やがてジプシーの青年チェーザーと恋におちる・・・
****************************************************************************************

WOWOWでは「ジョニー・デップ特集」として取り上げられたが、ここでは脇役にすぎない。
貧しいロシアの村で家族の生活をよくするためにアメリカで出稼ぎに行く父親。
当時としては本当に再会できるのかわからない最果ての地への出発であったろう。
そして残った少女も村を襲われたった一人で船に乗る。
ところが着いたところはイギリス。
そこから一人の人生が始まる。

ドラマはやがて成人し名前がスージーとなった彼女が激動の時代を生きる姿を描く。
野心家のローラと同居し、やがて彼女自身もジプシーの青年と恋に落ちる。
時は1940年。
ドイツ軍がフランスになだれ込む。
ユダヤ人である彼女も立場が危うくなっていく・・・

タイトルからするとどんなドラマなのかと思う。
原題は「The Man Who Cried」とあるが、The Manって誰だかよくわからない。
むしろ日本語版タイトルの方がなんとなくしっくりとくる気がする。
だがストーリーは平凡だ。
なにがテーマなのかよくわからない。

主役のクリスティーナ・リッチは「ウェス・クレイヴン’s カースド」を観た時にはわからなかったが、髪の毛を黒くするとその大きな目とともにあの「アダムス・ファミリー」の少女だと気がつく。
どことなく暗いイメージでむしろホラーの方が向いている気がする。
「ウェス・クレイヴン’s カースド」もホラーであるが、黒い髪のまま謎の女として登場した方がはるかに怖いと思うのだが・・・

ジョニー・デップもチョイ役という感じだ。
ケイト・ブランシェットもまたまた登場であるが、ここでは何やら訛りのある英語を喋る。
ロシア出身なのでロシア語鈍りなのかどうかはわからないが、何となく異国出身という雰囲気が出ていて、野心はあるものの女である以上男をうまく利用しなければならない、そのためには何でもやってやろうという女性を演じていて「さすが」と思ってしまう。

ストーリーはともかくとしてそれ以外のところで楽しむ映画なのだろう・・・


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 23:07 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2008年11月30日

キューポラのある街

キューポラのある街.jpg

1962年 日本
監督: 浦山桐郎
出演: 吉永小百合/東野英治郎/市川好郎/鈴木光子/森坂秀樹/浜村純/菅井きん/浜田光夫

****************************************************************************************
鋳物の町として有名な埼玉県川口市。
銑鉄溶解炉キューポラやこしきが林立するこの町は、昔から鉄と火と汗に汚れた鋳物職人の町である。
石黒辰五郎も、昔怪我をした足をひきずりながらも、職人気質一途にこしきを守って来た炭たきである。
この辰五郎のつとめている松永工場には五、六人の職工しかおらず、それも今年二十歳の塚本克巳を除いては中老の職工ばかり。
それだけにこの工場が丸三という大工場に買収され、そのためクビになった辰五郎ほかの職工は翌日から路頭に迷うより仕方なかった・・・
****************************************************************************************

温故知新で過去の名作を観るシリーズ。
ちょっと年代が上の人であれば川口と言えばキューポラ、キューポラと言えば川口とまずは反射的に思っていたはず。
そんな川口=キューポラのイメージを決定付けたといえる一作。

1962年と言えばまだ新幹線も開通していない時代。
今でも京浜東北線、東北本線の鉄橋が荒川を越えてすぐのところにある川口。
汽車から電車へと変わっているとはいえ古いタイプの電車が行き交う町でのロケは当時の町並みが覗けて興味深い。

職人気質の辰五郎を父に持つ中学3年のジュンを主人公とした物語。
鋳物工場にも近代化の波が訪れ、辰五郎の勤め先である小さな鋳物工場は大手の工場に買収され、辰五郎も職を失う。
高校へ進学したいジュンであるが、家計の事情が大きな壁となる。

ジュンがアルバイトをするパチンコ店。
台の裏で玉を補給する仕事。
家の前の水道でお釜を洗うジュン。
家はガラスの引き戸で戸を開けるとすぐに茶の間兼寝室。
電報もそのまま隣の人に預けてしまうので読まれてしまう。
個人情報も何もあったものではない。
こんなシーンに当時の世相がわかる。

友人の家族が北朝鮮へ帰る事になる。
かつて大々的に行われていた帰還事業だ。
「ほくせん(北鮮)」「なんせん(南鮮)」という言い方も新鮮だ。
辰五郎はやがて労働組合の力で職を得て働き始める。
なんだか偏りが感じられると思っていたら、原作者は共産党員だとか。

そこには目を瞑るとしても世相を反映したこうした映画は個人的には興味津々。
これからもたくさん観たいと思う。
ジュンは働きながら定時制高校へ進学する道を選ぶ。
時代の息吹だろうか溢れる希望がこぼれ落ちてきそうな映画である。

評価:★★☆☆☆
posted by HH at 12:08 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2008年11月23日

あるスキャンダルの覚え書き

NOTES ON A SCANDAL.jpg

原題: NOTES ON A SCANDAL
2006年 イギリス
監督: リチャード・エアー
出演: ジュディ・デンチ/ケイト・ブランシェット/ビル・ナイ/アンドリュー・シンプソン

****************************************************************************************
ロンドン郊外の中学で歴史を教えるバーバラは、厳格で辛辣な性格から教え子だけでなく同僚からも疎まれ、孤立していた。
そんなある日、若く美しい美術教師シーバが赴任してくる。
「彼女こそ、私が待ち望んだ女性」と直感したバーバラは、彼女をこっそりと観察しては毎夜日記に“報告”していた。
計画的にシーバに近付き、親しくなっていくバーバラ。
だがそんなある日、シーバと15歳の教え子のセックス現場を目撃し…
****************************************************************************************

外面は厳格で隙がない。
非があると完膚なきまで叩かれる。
言う事は正論だから反論しようもないが、付き合いにくい同僚というのはどこにでも一人くらいいるかもしれない。
そんな性格ゆえにバーバラは周りから孤立。
週末もマッサージに行く事くらいしか予定がない。
定年も近く、このまま孤独に老後を迎えるのかと思うと言いようのない不安に襲われる・・・

そんなバーバラの前に赴任してきた若くて美しい女性シーバ。
自分のパートナーと心密かに決めて接近していく。
生徒に手こずるところを助けてシーバの尊敬を勝ち得たバーバラはやがて家族ぐるみでの付き合いを始めていく。

日本で言えば中学の担任と言ったところだろうが、ちょっと背筋が寒くなるようなストーリーである。
バーバラが欲しかったのは人生のパートナー。
年老いた今は男は望むべくもない。
同性でしかも自分の思い通りにできるような相手を探す。
しかし、シーバの前にも実はそういう相手を取り込もうとしてどうやら失敗した過去があるとわかってくる。

シーバの弱みを巧みに利用するバーバラ。
どうにもこうにもぞっとさせられるようなところがある。
シーバも15歳の生徒とただならぬ仲になってしまうという落ち度はあるのだが、それがとんでもない弱みとなってしまう。
シーバの淫行がテーマなのか、バーバラの異常な性格がテーマなのか迷うところである。
前者の方が前受けは良さそうだが、実際は後者だ。
かといってバーバラはジャック・ニコルソンがやるような異常性格者というほどでもない。
ホラーではないのだ。

結局シーバのスキャンダルは大事となってしまう。
ジュディ・ディンチが真面目な人間がカーブを曲がり損ねた感じの女性をそれらしく演じてちょっと不気味だ。
ケイト・ブランシェットも「バベル」「エリザベス」「インディ・ジョーンズ〜クリスタル・スカルの王国」と最近いろいろと観るがそれぞれ異なるイメージで幅広い女優さんである。


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 10:32 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(1) | ドラマ

2008年11月17日

フリーダム・ライタース

freedomwriters.jpg

原題: FREEDOM WRITERS
2007年 アメリカ
監督: リチャード・ラグラヴェネーズ
出演: ヒラリー・スワンク/イメルダ・スタウントン/パトリック・デンプシー/スコット・グレン/マリオ

****************************************************************************************
様々な人種が通うウィルソン高校203教室に、新任の国語教師エリンが赴任した。
初登校日、教壇に立ったエリンを完全に無視し、喧嘩を始める生徒たち。
これまで、家の中でも外でも危険に晒されて生きて来た生徒たちに、真珠のネックレスをした白人の教師は敵でしかなかった。
エリンは、自分の小遣いで生徒全員にノートを買い与え、自分のことを書くように伝える。
書く事を覚えた生徒たちは、エリンに少しずつ心を開いていく・・・
****************************************************************************************

荒れた高校に赴任した新人教師が生徒たちの心を掴み、見事に希望を与えて独り立ちさせていく、という展開は最近観た「いつも心に太陽を」と同じである。
感動教師モノといえばだいたい似たようなストーリーになるのだろうと思いながら観ていたが、なんとこちらは実話だとわかって感動ひとしお、である。

もともとは優秀な生徒が集まる公立高校であったが、「人種差別撤廃」によってそれまで白人主流の生徒が、黒人・ヒスパニックなどのマイノリティーが大半を占めるようになる。
しかもそうしたマイノリティーは治安の悪い地区に住む貧困層だ。
「いつも心に太陽を」でも似たようなものであったが、こちらの生徒たちは「生命の危険にさらされている」という点で決定的に違う。

象徴的なシーンがある。
「ホロコースト」の意味を問われ、知っていると手を上げたものは、唯一の白人生徒一人だけであった。
しかし、続けて銃口を向けられた事がある人と問われると、ほぼ全員が手を上げたのだ。
言わんとする事を雄弁に語るシーンだ。

真珠のネックレスをした新人白人教師を鼻から相手にしていなかった生徒たち。
生徒同士でも人種対立があって一枚岩ではない。
教師仲間は、はじめからそうした生徒たちの教育を放棄してしまっている。
新人教師エリンはそうした中で一つ一つ壁を壊していく・・・

生徒に日記をつけさせるようにしたのもその方法の一つ。
クイズという形式でお互いの経験をわからせる。
YESであれば教室の真ん中に引いたラインの上に立つ。
「友達が殺された経験があるもの」という質問に全員がラインに並ぶ。
お互いに顔を見つめあい、同じ経験をしているという一体感が生まれる。
生徒が心を開き自らの経験や考えを日記に書いていく。

生徒たちが次第にうち解け合っていく過程を観るのには、ちょっとハンカチが必要かもしれない。
エリンは生徒たちに本を与えるためにバイトを掛け持ちする。
そうして渡した本に対して「新品だぜ」という感想を漏らす生徒たち。
エリンの熱意溢れる姿勢も何であれ仕事はこのくらいやらなければ、と思わされる。

ちなみに抵抗勢力の筆頭として同僚の教師が登場するが、この人がイメルダ・スタウントン。
「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」でもやっぱり反対派の筆頭教師として登場した。
くしくも同じような教師役であるが、そんなイメージがぴったりだったりするからだろうか。
もちろん、主演のヒラリー・スワンクの熱演も見所の一つだ。

心が洗われるような映画を観たい方にはお勧めの映画である。


評価:★★★☆☆
posted by HH at 23:50 | 東京 🌁 | Comment(0) | TrackBack(1) | ドラマ