2008年11月17日

フリーダム・ライタース

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原題: FREEDOM WRITERS
2007年 アメリカ
監督: リチャード・ラグラヴェネーズ
出演: ヒラリー・スワンク/イメルダ・スタウントン/パトリック・デンプシー/スコット・グレン/マリオ

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様々な人種が通うウィルソン高校203教室に、新任の国語教師エリンが赴任した。
初登校日、教壇に立ったエリンを完全に無視し、喧嘩を始める生徒たち。
これまで、家の中でも外でも危険に晒されて生きて来た生徒たちに、真珠のネックレスをした白人の教師は敵でしかなかった。
エリンは、自分の小遣いで生徒全員にノートを買い与え、自分のことを書くように伝える。
書く事を覚えた生徒たちは、エリンに少しずつ心を開いていく・・・
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荒れた高校に赴任した新人教師が生徒たちの心を掴み、見事に希望を与えて独り立ちさせていく、という展開は最近観た「いつも心に太陽を」と同じである。
感動教師モノといえばだいたい似たようなストーリーになるのだろうと思いながら観ていたが、なんとこちらは実話だとわかって感動ひとしお、である。

もともとは優秀な生徒が集まる公立高校であったが、「人種差別撤廃」によってそれまで白人主流の生徒が、黒人・ヒスパニックなどのマイノリティーが大半を占めるようになる。
しかもそうしたマイノリティーは治安の悪い地区に住む貧困層だ。
「いつも心に太陽を」でも似たようなものであったが、こちらの生徒たちは「生命の危険にさらされている」という点で決定的に違う。

象徴的なシーンがある。
「ホロコースト」の意味を問われ、知っていると手を上げたものは、唯一の白人生徒一人だけであった。
しかし、続けて銃口を向けられた事がある人と問われると、ほぼ全員が手を上げたのだ。
言わんとする事を雄弁に語るシーンだ。

真珠のネックレスをした新人白人教師を鼻から相手にしていなかった生徒たち。
生徒同士でも人種対立があって一枚岩ではない。
教師仲間は、はじめからそうした生徒たちの教育を放棄してしまっている。
新人教師エリンはそうした中で一つ一つ壁を壊していく・・・

生徒に日記をつけさせるようにしたのもその方法の一つ。
クイズという形式でお互いの経験をわからせる。
YESであれば教室の真ん中に引いたラインの上に立つ。
「友達が殺された経験があるもの」という質問に全員がラインに並ぶ。
お互いに顔を見つめあい、同じ経験をしているという一体感が生まれる。
生徒が心を開き自らの経験や考えを日記に書いていく。

生徒たちが次第にうち解け合っていく過程を観るのには、ちょっとハンカチが必要かもしれない。
エリンは生徒たちに本を与えるためにバイトを掛け持ちする。
そうして渡した本に対して「新品だぜ」という感想を漏らす生徒たち。
エリンの熱意溢れる姿勢も何であれ仕事はこのくらいやらなければ、と思わされる。

ちなみに抵抗勢力の筆頭として同僚の教師が登場するが、この人がイメルダ・スタウントン。
「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」でもやっぱり反対派の筆頭教師として登場した。
くしくも同じような教師役であるが、そんなイメージがぴったりだったりするからだろうか。
もちろん、主演のヒラリー・スワンクの熱演も見所の一つだ。

心が洗われるような映画を観たい方にはお勧めの映画である。


評価:★★★☆☆
posted by HH at 23:50 | 東京 🌁 | Comment(0) | TrackBack(1) | ドラマ

2008年11月15日

夕凪の街桜の国

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2007年 日本
監督:  佐々部清
原作 : こうの史代
出演 : 田中麗奈/麻生久美子/吉沢悠/中越典子/伊崎充則/金井勇太/藤村志保/堺正章
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原爆投下から13年後の広島。
そこに暮らす平野皆実は、打越に愛を告白される。
だが彼女は、原爆で父と妹を失い、自分が生き残っているという事が深い心の傷になっていた。
そんな彼女の想いを打越は優しく包み込むが、やがて皆実に原爆症の症状が……。
半世紀後。
今は東京で暮らす皆実の弟・旭は、家族に内緒で広島の旅に出る。
そんな父を心配する娘の七波は、ひょんなことから友人の利根東子と共に、旭の後を追って広島へ向かう……
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原爆投下から13年後といえば昭和33年。
「ALWAYS三丁目の夕日」も設定は昭和33年であった。
昭和33年という年は、ようやく戦争の暗い時代の影響から逃れ出たという意味で、象徴的な年なのであろうか。

平野皆実(みなみ)は小さな会社でOLとして働く26歳。
会社からの帰り道に靴のかかとが減るのがもったいないと裸足で帰るような倹約家だ。
貧しいあばら家で母との二人暮らし。
雨が降れば雨漏りがする。
あちこちに茶碗を置いて雨漏りの雫を受け止めるのは、懐かしいような光景だ。

母と風呂に行くシーンがある。
いきなりの入浴シーンでどきりとするのだが、他の女性客はみな体のどこかにケロイドが残っている。
皆実も上腕にケロイドがあり、それがゆえに夏でも長袖で過ごしている。
この映画は原爆の映画であるが、こうしたさり気ないシーンにはっとさせられる映画で、これでもかとばかりに悲惨さを訴える原爆映画とはかなり異なる。

そして淡々と日常が描かれていく。
疎開していた弟の旭を迎えに行くと、旭は「広島には帰りたくない」と答える。
皆実は会社の前の貯水槽にいつも手を合わせる。
川岸に広がる皆実の住む一帯に建つ建物はみんなあばらやだ。
そんなシーンからその先を観る者に想像させるのだ。

後半は現代。
旭が成長して家族を持ち、長女七波の目を通して家族の歴史が振り返られる。
ドラマを盛り上げるような派手なエピソードは一つもないが、静かに語られるがゆえに心に響くものがある。

旭が被爆者である女性と結婚しようとした時、母親が反対する。
「何のためにお前を疎開させたのか、被爆者と結婚するのか」
たったこれだけのシーンであるが、被爆者が被爆者を否定する事によりその裏に潜む差別も想像させる。

七波はそうした父親の姿を見つめる。
映画ならではであるが、父親に対する気持ちの変化も読み取れる。
奔放な役柄の田中麗奈(七波)ではあるがそうしたシーンは印象的で、じっくり観ていると気付きも多い。

今まで考えてもみなかったが、一度も行った事がない平和記念資料館にも足を運んでみたくなった。
涙腺の弱い方はハンカチ必須である。


評価:★★★☆☆
posted by HH at 12:10 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(2) | ドラマ

2008年11月02日

象の背中

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2007年 日本
監督: 井坂聡
原作 : 秋元康
出演:  役所広司/今井美樹/塩谷瞬/南沢奈央/井川遥/高橋克実/白井晃

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突然、末期の肺がんで余命半年を宣告された48歳の藤山幸弘は、残された時間をどう生きるか選択を迫られる。
妻と二人の子どもの事はもちろん、建設会社の部長として精魂傾けてきたプロジェクトも気掛かりだ。
しかし、結局は延命治療を拒否し自分なりに人生を全うしようと決断する。
激痛に耐えながら心残りのないように最後の別れを告げておきたい人たちを訪ね歩く幸弘だったが、妻の美和子には事実を言い出せずにいた・・・
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順風満帆なサラリーマン人生を送っていた男がある日突然余命の宣告を受ける。
きついだろうなと思わせられる。
しかし結局助からないのであればじたばたしても始まらない。
残りの人生をどう生きるか、残された家族には何をしてやれるのかを考えて行動するしかない。
頭では理解できるが果たしてすっぱりと覚悟を決められるだろうか?
そんな事を自問自答させられるテーマである。

なんとなく「明日の記憶」と似た感じの印象を受ける。
「明日の記憶」も順風満帆のサラリーマン人生を送る主人公が突然アルツハイマーに冒されるというものであった。
ある日突然残りの人生のカウントダウンが宣告されたら、自分だったら何をするだろう。

「明日の記憶」もこの映画も共通している特徴がある。
それはよき妻に恵まれているというものだ。
この映画でもまさに「女房の鏡」ともいうべき理想の妻が描かれる。
映画だからと言ってしまえば実も蓋もないが、こんな奥さんいたらいいのにとストーリーに関係ないところで感心してしまう。

よき妻がいて一男一女に恵まれ、瀟洒な家を構え、おまけに美しい愛人までいる。
主人公の藤山はまさにサラリーマンの理想像のような生活を送っている。
そんな彼が己の人生を見つめなおそうと初恋の人を訪ねたり、喧嘩別れしたままだった友達を訪ねたりする。
長男だけには病気の事を伝え男として跡を託す。
こういう姿は共感させられる。

これは良い映画だなと感じさせる展開。
だがそこから失速。
この手の映画は主人公の死でもって終わるものである。
どうしてもそこで盛り上げようとするのはわかるのであるが、そこは難しいところだ。
観ているうちにあまりにも「美しい人生の終焉」に醒めていく自分に気付く。
理想的な人生を歩む理想的なサラリーマンの不運ではあるが理想的な最後はあまりにも美しく、こちらの心にはまったく響かない。

原作は秋元康の小説。
原作はどうなのだろうかと思うが、映画がこうだと読む気も起こらない。
げっそりと痩せた役所広司の演技はさすがと思うが、それゆえに残念でもある。


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 09:52 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(7) | ドラマ

2008年10月26日

リトル・チルドレン

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原題: LITTLE CHILDREN
2006年 アメリカ
監督: トッド・フィールド
出演:  ケイト・ウィンスレット/パトリック・ウィルソン/ジェニファー・コネリー/ジャッキー・アール・ヘイリー

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郊外の街に住む主婦サラは、いつも娘を遊ばせに来る公園での主婦付き合いに飽き飽きしていた。
そんなある日、司法試験勉強中の“主夫”ブラッドが息子と公園にやってくる。
互いの存在に興味を抱いた2人は、子供をダシにして市民プールで毎日会うようになる。
そんな中、子供への性犯罪で服役していたロニーが釈放され、街に帰ってくる。
ブラッドの友人で元警官のラリーはこれに過敏に反応、ロニーと老母への執拗な嫌がらせを開始するが…
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タイトルは「リトル・チルドレン」となっているがこれはR−15指定の立派な不倫映画である。

冒頭で主婦サラが公園で子供を遊ばせている。
しかしどうしてもまわりの主婦とはあわない。
日本でも「公園デビュー」などと言われ、新米ママが緊張したりするようであるが、アメリカでもこういうところは似通っているらしい。

そこにやってくるのは主夫ブラッド。
アメリカらしく奥さんが働き、司法試験の勉強という建前はあるもののご主人が家の事をやっているのだ。
イケメンなので主婦連中は影でキャーキャー言うものの言葉すら交さない。
サラは5ドルを賭けて電話番号を聞きに行き、そこから二人の関係が始まる。

なぜか平行して性犯罪の前科を持つロニーが登場する。
近所ではロニーの排斥運動が展開され町中に顔写真が貼られまくる。
元警官のこれもちょっと危ない男が執拗に嫌がらせを繰り返す。
アメリカでは性犯罪者情報が登録・公開されるためであるが、日本では考えられない状況だ。
しかし、性癖などというものは刑務所に入ったくらいでは治る事はなくこのくらいした方がいいのかもしれない。
ロニーも危ない変態行為を繰り返すがどうもストーリーのサイドメニューとしてはどうなのかと思う。

いつの間にかどっぷりと不倫関係に染まったブラッドとサラ。
ブラッドの奥さんがこれに気付く。
いわゆる女の勘というやつだが、男としてはちょっと背筋が寒くなる。
やがて二人の不倫とロニーの変態騒動に区切りがつく。
他愛もないといえば他愛もないお話である。

ケイト・ウィンスレットは「タイタニック」からはや10年。
子供のいる主婦を演じていても違和感がない。
ジェニファー・コネリーも「ワンス・アポンナ・タイム・イン・アメリカ」の美少女から随分と大人になった。
ロニー役のジャッキー・アール・ヘイリーも「頑張れベアーズ」では美少年だった。

ストーリーとは別にそんなところに月日の流れを感じる。
ちょっと軽い息抜きにはいいかもしれない。


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 11:44 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2008年10月11日

荷車の歌

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1959年 日本
監督: 山本薩夫
出演: 三國連太郎/望月優子/岸輝子/左幸子

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明治二十七年--広島県の山奥の村。
地主の屋敷に女中奉公するセキは、郵便配達夫の茂市に求婚された。
茂市は、一銭も月給の上らない配達夫を止めて、荷車ひきになると言った。
茂市に好意を感じていたセキは、勘当の身となりながらも嫁いだ。
二人は、一台ずつ荷車を引いては村を出て、往復十里の道を町へ通った。
やがて車問屋になる日を胸に描きながら・・・
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「人間の壁」に引き続き山本薩夫監督の作品である。
製作も同じ1959年であるが、こちらの設定は明治〜太平洋戦争と少し時代が前である。
広島県の山奥。
いきなり郵便配達夫である茂市が現れる。
配達夫と行っても走っている。
江戸時代の飛脚となんら変わりない。
女中奉公のセキは密かに心惹かれていた茂市から一緒になろうと言われて一途に飛び込む。
親に勘当され地主にも暇を出されても身一つで飛び込んでいくのはかなり情熱的だ。

しかし茂市の家には姑がおり、しかもあばら家。
初っ端から歓迎もされず二人で荷車引きを始める。
往復10里の道のり。
10里と言えば40キロ。
夜中に起き出して働き詰めの毎日は過酷だ。
今の時代の人々であれば一日とて持たないのではないだろうか。

あばら家で薄い障子とふすまの家は冬はめちゃくちゃ寒いだろうし、姑がいたのではどうやって子供を作ったのだろうなどと邪推してしまう。
茂市もセキを叱りつけるが同じ荷車引きの労働はどうみても一緒。
少しはいたわらないかと思ってしまう。
今なら一日で離婚ものではないだろうか。

二人の日々の暮らしが描かれていく。
貧しい暮らしもさる事ながら女性の重労働が目に余る。
嫁姑問題はいつの時代も変わらない。
茂市の弁当には米の飯だが、セキの弁当には粟の飯を入れる姑。
ちょっと分けてと言ってもくれない夫・・・
やがて小学生になった長女がそんな母親を不憫に思って自分の米の弁当を食べずに残しておいて母親に食べさせる。
そんな家族の姿が描かれる。

明治・大正・昭和。
時代は荷車から馬車へ、馬車から自動車へと移り茂市たちは時代に取り残される。
それでも家を建て田畑を耕してそこそこまともな暮らしになる。
映画とはいえこんな庶民の暮らしぶりだったのだろうかと思ってもみる。

三國連太郎も老人のイメージしかないが、ここでは若い。
それ以外でも奈良岡朋子、浦辺粂子、西村晃などのお馴染みの老優が若々しい姿で出てくるのも新鮮だ。
(ただし浦辺粂子はこの頃からすでにおばあさんの雰囲気だ)
戦後間もなくの時期の映画はストーリー以外にも見所があって病みつきになりそうである・・・


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 10:49 | 東京 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ