2008年10月05日

人間の壁

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1959年 日本
監督: 山本薩夫
出演: 香川京子/宇野重吉/高橋昌也/宇津井健/高橋とよ

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佐賀県津田山市。
活気のない炭鉱と貧しい漁場の間を街なみが走り、山の麓に小学校があった。
新学年が始まりふみ子は五年三組の担任に決った。
夫の健一郎は佐賀県教組の執行委員である。
出世主義者で、家庭では横暴だった。
数日後、ふみ子は同僚の須藤とともに校長に呼ばれ、共稼ぎを理由にして退職を勧告された。
退職勧告は全国的な規模で行われ佐賀県では二六○人の教師に出された。
県当局は、教師の整理で赤字財政を解決しようとしたのだ・・・
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時折興味を持って古い映画を観ている。
そこからはストーリーだけではなくていろいろなものが見られるからである。
この映画も1959年というからもう50年前の映画という事になる。
昭和34年であるから「ALWAYS 続・三丁目の夕日」と同じ年代である。

舞台は長崎県のとある学校。
当時の学校の様子も興味深い。
職員室では席で男性職員は平気でプカプカとタバコを燻らす。
教室にいる生徒はざっと見ても50人くらいいる。
主人公のふみ子は共稼ぎの教師であるが、借家の台所では井戸のポンプを押して水を出し、網の上でサンマを焼く。
蒸気機関車が走り、無人踏切を汽車と交差して渡る様などは今なら問題になるだろう。
そんな日常生活の一つ一つが興味深い。

出演者も宇野重吉、宇津井健、菅井きん、東野英治郎等お馴染みの俳優が出ている。
宇野重吉なんかおじいさんのイメージしかないが、50年前はさすがに若い。
宇津井健は若くて元気だけが取り得の若い熱血先生なのだが、どうもイメージとマッチしない。
逆に東野英治郎と菅井きんは当時からあまり変わらない。
こういう楽しみ方もいいものである。

県の財政難から教師のリストラが行われる事になり、まずその対象として共稼ぎの女性教師ふみ子らがターゲットになる。
露骨な退職勧告も今なら大問題だ。
これに対して初めは組合には無関心だったふみ子も、次第に自分達を守ってくれる組合に目を向けるようになり、やがて同僚教師への不当な圧力に「一人で戦っていてはだめだ」と組合の重要性に目覚めて立ち上がるまでが描かれている。

ここで出てくる組合は今話題の日教組。
といってもここでは純粋な労働者(教師)を保護する真の意味の組合として描かれている。
日教組礼賛映画か、と某元大臣など目を丸くするかと思いきや、ここでは日教組を本来の教師を守る組織として描いている。
それが実は本来のあり方なのだ。
いつから横道にずれて行ったのだろう。
その後の迷走からいつの間にか日本の癌と言われるまでになってしまった日教組。
初心忘れるべからずと言いたくなる。

そんな意識も起こさせる、温故知新にもやっぱり映画はいいものである。


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 21:43 | 東京 ☁ | Comment(1) | TrackBack(2) | ドラマ

2008年09月27日

オール・ザ・キングスメン

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原題: All The King's Men
2006年 アメリカ
監督: スティーヴン・ゼイリアン
出演: ショーン・ペン/ジュード・ロウ/ケイト・ウィンスレット/アンソニー・ホプキンス

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1949年、ルイジアナ州。
新聞記者ジャックがウィリーと出会ったのは、役人であるウィリーが郡の汚職を非難していた頃だった。
やがて職を辞したウィリーに、州知事選立候補の転機が訪れる。
当初は対立候補の当て馬だったウィリーだが、形勢が逆転、遂に州知事になる。
その頃ジャックは記者を辞め、ウィリーの参謀になっていた。
時が経ち、ウィリーの権力は絶大になり、いつしか彼自身が嫌っていた汚職やスキャンダルにまみれ…
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ルイジアナ州を舞台とした政治ドラマ。
政治家といえば汚職。
汚職と言えば政治家。
両者は切っても切れない関係というのは洋の東西を問わず同じらしい。
そんな汚職を嫌い、貧しい人々の味方になろうと州知事に立候補するウィリー。

最初は対立候補の票を分散させるための当て馬として利用されていたのだったが、その事実を知った時からエンジンがかかる。
対立候補が行かない田舎の隅々まで訪れ、時にはトラックの荷台の上から演説をする。
聞き手が数人でもお構いなしの演説姿に次第に大衆の支持を集め、とうとう地滑り的勝利で州知事となる。

新聞記者ジャックはそんなウィリーに興味を惹かれ、やがてウィリーの参謀となる。
ウイリーを好ましく思うのは貧しい大衆。
好ましく思わないのは石油会社などの企業や富裕層。
反対派はあの手この手でウィリーの失脚を狙う。
ウィリーも身を守るためにはきれいごとだけではすまなくなる。

「権力は腐敗する」、歴史学者アクトンの有名な言葉を思い出す。
大衆のための政治をしようとしたウィリーが、それを実現するためであればどんな手段でも正当化できるのか。
正義とは何なのか。
ウィリー自身も権力を身につけたあと尊大になり、また浮気もする。
ルイジアナという地方の州の話ではあるが、どこにでもあてはまる話でもある。

ウィリーがかつて想いを寄せていたアンを演じるのはケイト・ウィンスレット。
かつては純粋だった少女も苦労を重ねるうちに・・・という女性の雰囲気を見事にかもし出している。
「タイタニック」「ホリデイ」とはまた違った魅力である。

観終わってつくづくと思う。
All the King’s men というタイトルは見事だ。


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 22:42 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2008年09月20日

いつも心に太陽を

tosirwithlove.jpg

原題: To Sir, with Love
1967年 アメリカ、イギリス
監督: ジェームズ・クラベル
出演: シドニー・ポアチエ/ジュディ・ギースン/クリスチャン・ロバーツ/ルル

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エンジニアの仕事を探していたサッカレイは貧民街の学校の教師の職を得た。
新任教師として赴任したクラスは卒業を間近に控える高学年クラスだったが、生徒達はすべて、貧しさと問題を抱えた家庭に育ち、前任の教師をいじめぬいて追い出すほどの不良ばかりであった。
相次ぐ生徒達の嫌がらせに、これからは生徒を大人として扱うことを宣言した。
教科書を捨てて会話だけで彼等と接しようとしたのだ。
自分も貧困の中で育ち、皿洗いもしたというサッカレイに、彼らはしだいに心を開いていく。
しかし、他の教師達は依然として彼らを問題児としてしか扱わず、体育の時間には体育教師の横暴で生徒がケガをしたことで、再びサッカレイと生徒達の関係に壁ができてしまうかに思われたが・・・
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1967年というからもう42年前の映画である。
さすがにオールドファッションという感がある。
熱血教師ものといえばもうありきたりのような感じがするが、42年前という事だからその走りだったのだろう。

シドニー・ポワチエという名前も最近は聞かない。
昔の映画では「夜の大走査線」が有名だ。
この人は真面目な黒人というキャラクターがあっているように思う。

昔の映画のよいところの一つは当時の生活スタイルがよくわかる事である。
サッカレイが乗ってくるロンドンバス。
あまりにも有名なダブルデッカーであるが、当時も今とほとんど変わらない。
伝統を重んじる国ならではなのかと思ってしまう。

ファツションやヘアスタイルはさすがに時代を感じさせる。
不良生徒たちが何をしているかというと体育館でダンス。
それが親たちが顔をしかめる不良たちの行為とするなら笑ってしまう。
今ではすごく健全に見える。

エンジニアの仕事がしたかったのだが見つからず腰掛けで教師になったサッカレイ。
教師も生徒も落ちこぼれの集まりのような学校。
授業もまともに進まない。
サッカレイはある時思い立って生徒の前で教科書をゴミ箱に叩き込む。
そして一人一人を大人の紳士淑女として扱う事を宣言する。

今までの教師とまったく違うスタイルに戸惑いながらも次第に目覚めていく生徒たち。
事件もあったりするのだが、荒波を超えて卒業となる。
またサッカレイには念願のエンジニアの採用通知が届く。
大人になって社会に出て行く準備が整った生徒たちに自分の仕事をやりきった感動に浸るサッカレイ。
最後に彼が目にした学校の現実と彼の決断。
ちょっと感動的である。

昔の映画もいいものである・・・


評価:★★★☆☆
posted by HH at 10:56 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2008年09月13日

あなたになら言える秘密のこと

The Secret Life of Words.jpg

原題: The Secret Life of Words
2005年 スペイン
監督: イサベル・コイシェ
出演: サラ・ポーリー/ティム・ロビンス/ハビエル・カマラ/ジュリー・クリスティ/レオノール・ワトリング

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あらゆる感情を封印したかのように誰にも打ち解けず、黙々と工場で働くハンナ。
その真面目過ぎる働きぶりを上司にとがめられ強制的に取らされた休暇中、思いがけないことから油田掘削所の事故で大怪我をした男・ジョゼフの看護を買って出る。
向かった先は海に浮かぶ油田。
そこには陽気で腕のいい料理人をはじめ風変わりな男たちが働いていた。
彼らと生活を共にするうちにハンナは次第に笑顔を取り戻して行くのだが…
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イザベル・コイシュ監督と主演のサラ・ポーリーは、「死ぬまでにしたい10のこと」という映画以来のコンビ復活である。
この映画も雰囲気は「死ぬまでにしたい10のこと」と似ている。

工場で黙々と働くハンナ。
毎日チキンとライスとリンゴの弁当を持って無遅刻・無欠勤・無休の生活。
上司に突然呼び出され、「首ですか?」と訊ねるほどの真面目ぶり。
しかし上司の指示は「1ヶ月の休暇を取れ」というもの。
こんなセリフ言われてみたいものである。

荷物をまとめてバスに乗るハンナ。
孤独な一人旅。
食堂で偶然看護師を探しいるという男に「看護師だ」と名乗り出る。
男は油田掘削所の関係者で看護師を探していたのだ。
ちょっとした驚きである。
冒頭の油田掘削所の火災シーンとどうストーリーが結びつくのかと思っていたら、こんなところで結びついたからである。

タイトルとストーリーとにギャップを覚えつつ、どういう展開が待っているのかこの時点では予想がつかない。
ハンナは人間嫌いなのか、なぜ看護師の仕事をしていないのか、なぜ補聴器を使っているのか、一切は語られない。

看護師を必要としていたのは火災で重傷を負った一人の作業員。
そして看護の日々が始まる。
その男も何らかの秘密を抱えているようである。
そうこうしているうちに次第に打ち解けていく二人。
そしてハンナの衝撃の「告白」。

あなたになら言える秘密のこととはこういう事だったのか、と合点。
久々に良いタイトルだと感心した。
ハンナの「告白」を聞けば、それまでのハンナの暮らしぶりが霧が晴れるが如く納得のいくものとなる。
同時に覚えるやりきれなさ・・・

思わずハンナの幸せを願ってしまう。
静かで穏やかな軽い感動を覚える。

こういう映画もいいものである。


評価:★★★☆☆
posted by HH at 10:28 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2008年08月24日

眉山

眉山.jpg

2007年 日本
監督 : 犬童一心
原作 : さだまさし
出演: 松嶋菜々子/大沢たかお/宮本信子/円城寺あや/山田辰夫

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東京で働く咲子は、母の入院の知らせを受け、久しぶりに徳島に帰郷する。
母子家庭で育った咲子は、気が強く何でも一人で決めてしまう母に寂しさを感じていた。
咲子は医師、寺澤から母が献体を希望していることを知り、いらだちは募る。
ある日、母の友人から箱を手渡される。
中には、死んだと聞かされていた父から毎年届いていた手紙の束が入っていた。
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母子家庭で育った咲子。
父親の顔は知らない。
思春期の時に母親を問い詰め、自分の父親には別の家庭がある事を知らされる。
社会人となり生まれ育った徳島を出て東京で旅行代理店に勤める日々。
突然母の入院の知らせを受けて故郷に帰る。
そこで知る父親の事。

人は誰しも生まれた時の事など覚えてはいない。
父親は生まれた時から父親であり、母親は生まれた時から母親である。
しかし、当然ながら生まれるまでは(父親になり母親になるまでは)一人の男であり、女であるわけである。

母の友人から渡された風呂敷包み。
「自分が死んだら咲子に渡せとの事だったが今渡す」と渡される。
中から出てきた現金書留。
日付は自分の誕生日。
そこで咲子は自分の知らない両親の姿を知る事になる。

この映画は見る視点を変えると違う見方ができる。
結婚していながらも心惹かれる女性と出会い子供も授かる。
しかし、献身的に支えてくれる妻と捨てるわけにはいかない医院の仕事。
苦悩の末の決断は「家庭に戻る事」。
そんな一人の男の人生。

愛する男性の故郷に移り、そこで娘とともにそこのシンボルである眉山を夫として生きる道を選ぶ女の人生。

そんな母親の人生に思いを馳せる娘。


それぞれがそれぞれだ。
眉山、阿波踊りと名物に溢れる徳島を舞台に心にじんわりとくるストーリーである。

原作はなんとさだまさし。
らしいと言えばらしい、優しい映画である。

似たような体験を持つ者には心に痛く響く映画である・・・


評価:★★★☆☆

posted by HH at 10:57 | 東京 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ