2009年03月23日

【サイドカーに犬】My Cinema File 366

サイドカーに犬.jpg

2007年 日本
監督: 根岸吉太郎
出演:  竹内結子/古田新太/松本花奈/ミムラ/鈴木砂羽/トミーズ雅/温水洋一/樹木希林/椎名桔平

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不動産会社に勤める薫は、ある朝ふいに1週間の有給休暇をとった。
馴染みの釣堀で釣り糸をたらしながら、ふと、父が会社を辞め、母が家を出て行った数日後のことを思い出した。
ヨーコさんという女性が家に来るようになった。
たばこをスパスパ吸い、自転車を乗り回し、夕食には、「エサ」と言って麦チョコを食べさせる、破天荒な人だった。
しかし、子供と対等に向き合って話をしてくれるヨーコさんを薫は好きになっていく…
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原作は芥川賞の候補にもなったという長嶋有という作家の小説。
タイトルは主人公の少女が回想シーンで犬がすましてサイドカーに乗っているのを見て、その凛々しさに私もああなりたいと思ったところから来ている。

映画は20年前の少女時代に父の愛人であった女性との交流を思い出すという内容である。
父の愛人を演じるのが竹内結子。
どちらかというと清楚な感じの役柄が多いが、ここではタバコをスパスパと吸い、男にも物怖じしない破天荒な女性として登場する。

30歳の薫が回想する20年前。
20年と言う歳月は長いようでいてそんなに昔ではない。
街の様子も「ALWAYS 三丁目の夕日」ほどの時代考証は必要ない。
しかし、車だったりコカ・コーラの缶だったりという細かいディーテールに「考えているな」と思わせられるところがある。

ドラマとは直接の関係はないが、舞台とされているのが東京都国立市。
今は取り壊されてしまった国立駅やそこから延びる大学通りもさりげなく移っている。
国立といえば「山口百恵が住んでいる街」なのであるが、竹内結子が「百恵ちゃんの家を見に行こう」というシーンがある。
国立に行けば一度は見学に行くものであるが、どうも作者はそこらへんが詳しいようである。
そして「三浦友和にギターを教えた男」忌野清志郎の歌が挿入歌というのも国立つながりと言えそうだ。

ドラマの見所はそれまで母親によって決められていた世界を10歳の少女が破っていくところだ。
たぶん普段はあまり食べられなかった麦チョコをヨーコさんはなんのためらいもなく何袋も買い物籠に放り込む(しかも国立の紀伊国屋スーパーでだ)。
それをカレーのお皿に入れて出されたりする。
お母さんなら目を向いてしまう事を10歳の薫は理解している。
コーラなんかも飲んではいけないと言われていたのだろうし、他人の家の庭に黙って入り込んだりする事も、だ。
自転車の乗り方も教えてくれて、次第に自分の世界が広がっていく薫。

そんな薫だが愛人がどういう存在なのかわかるはずもなく、いつもあっけらかんとしていたヨーコさんが突然涙ぐんだ理由もわかるはずもない。
家出していた母親が突然帰って来てヨーコさんと取っ組み合いの喧嘩をする理由も然りだ。
突然誘われてついて行った伊豆。
何でヨーコさんはそこに行こうと言ったのかも子供にはわからない。

30歳になった薫が社会の現実と向き合う中で、ふと思い出すヨーコさん。
大人になった薫が20年たってもヨーコさんを思い出すのは、きっと今度は同じ大人の女としてヨーコさんと話をしたてみたいと思ったからなのかもしれない。
芥川賞候補となったのもなんだか頷ける気がする。

竹内結子は破天荒な役柄でもやっぱり竹内結子であり、ファンとしても楽しめる一作である・・・


評価:★★☆☆☆
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2009年03月02日

【赤線地帯】My Cinema File 359

赤線地帯.jpg

1956年 日本
監督: 溝口健二
出演: 若尾文子/三益愛子/町田博子/京マチ子/木暮実千代

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特飲店「夢の里」には一人息子修一のために働くゆめ子、汚職で入獄した父の保釈金のために身を落したやすみ、失業の夫をもつ通い娼婦のハナエ、元黒人兵のオンリーだったミッキーなどがいた。
国会には売春禁止法案が上提されていた。
「夢の里」の主人田谷は、法案が通れば娼婦は監獄へ入れられるといって彼女等を失望させた・・・
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我が国では1958年の売春防止法制定までは半ば公認で売春が行われていた。
それが行われていた地域がいわゆる赤線地帯と称されていたが、映画は吉原=浅草を舞台とした赤線地帯で働く女たちの悲喜交々のドラマである。

世の中では正論として売春防止法の制定が叫ばれ、国会では法案が審議されている。
(映画は1956年製作であり、この時点ではまだ法案が成立していない)
しかし、まだまだ戦後の爪痕が残る日本でそれ以外に生活の手段を持たない女たちがいる。
理想と現実のギャップが存在するのである。
それは国会に提出された法案が4回も流れている事からも伺える。

舞台はそんな赤線地帯にある一軒のカフェーである。
カフェーとは今では死語と化したが、当時の風俗店である。
女たちは外で客引きをし、それぞれの部屋へ連れ込んで「接待」する。
そんな当時のカフェーの様子を窺い知るには貴重な映画だ。
その昔、「純喫茶」という看板をよく見かけたが、それはこうした風俗営業の「特殊喫茶」に対して、コーヒーだけを提供するという意味だとも始めて知った。

まだまだ貧しく職住が未分離の様子も興味深い。
女たちが客を接待する部屋はまた自分たちが生活する部屋でもある。
田舎を訪ねたゆめ子が立ち寄ったそば屋。
客は茶の間に上がってコタツに入ってうどんをすする・・・

生活のために働く女たちも子供を抱えていたりする。
稼ぎのために必死になって客に媚を売り、客引きに精を出す。
カフェーの主人は「売春防止法が成立したらお前たちはどうやって暮らしていくのだ、俺たちは政府に代わって社会事業をしているんだ」と女たちに向って言う。
女たちも頭ではそれに反発しつつ、現実の生活を前にその言葉を否定できない・・・

結局、売春防止法は成立するのであるが、現在でもソープランド他各種形態で現実的に売春は存在している。
「この商売は300年続いているんだ、という事は必要な商売なんだよ」という女将のセリフが重みを持って響く。

古い映画には古い映画の良さをいつも感じる。


評価:★★☆☆☆
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2009年02月15日

【臨死】My Cinema File 352

臨死.jpg

原題: THE INVISIBLE
2007年 アメリカ
監督: デビッド・S.ゴイヤー
出演: ジャスティン・チャットウィン/マルガリータ・レヴィエヴァ/マルシア・ゲイ・ハーデン/クリス・マークエット/アレックス・オルグラン

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不良グループに目を付けられた高校生ニックは暴行を受け、森に置き去りにされる。
瀕死の重傷を負ったニックが目覚めるといつもと何か様子が違っていた。
母親が自分の写真を見て泣いている。
友人に助けを求めて話かけても彼の前を素通りしていく…
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大ヒット映画「ゴースト〜ニューヨークの幻」は強盗に殺された男が霊魂となって愛する女性を守る話であった。
この映画もそれと似ていなくもない。
ただ違いは邦題にある通り「臨死」で本人は死んでいないという点だ。

高校生のニックは優等生。
しかし不良グループとのいざこざで痛めつけられ瀕死の重傷を負う。
ニックが死んだと勘違いした不良グループのボス、アニーはニックを森に隠してしまう。
気がついたニックは学校へ行くものの、誰も彼もがニックを無視する。
そしてニックは自分が死につつあるという事実に気がつく・・・

平行して不良グループのアニーの事が語られる。
弟の食事の支度すらしようとしない継母。
父親も家庭には無関心。
亡き母を偲びながらやり切れぬ思いを社会に対してぶつけていく。

「ゴースト」では守るべき人は恋人であったが、ここでは自分自身(の体)。
霊魂という存在はどこにでも行けるが、生きている人間にコンタクトがとれない。
そのもどかしさがポイントとなってくる。
果たしてどうやって自分自身を助けるのか。

ある意味透明人間の面白さにも通じるが、自分の見ていないところで他人がどうしているのかは結構気になるところ。
ニックも自分のいないところ(霊魂なので気がつかない)での母親の行動、クラスメートの言動、そしてアニーの家庭環境などを覗き見てそれまで気がつかなかった事に気がついていくのである。
そうした心の成長も裏のストーリーとしてはある。

あまり大して期待もせずに観た映画であったが、意外と楽しめた一作である。


評価:★★☆☆☆

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2009年02月14日

【ブラック・スネーク・モーン】My Cinema File 351

ブラックスネークモーン.jpg

原題: BLACK SNAKE MOAN
2006年 アメリカ
監督: レイグ・ブリュワー
出演: サミュエル・L・ジャクソン/クリスティーナ・リッチ/ジャスティン・ティンバーレイク/S・エパサ・マーカーソン

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アメリカ南部の田舎町。
畑仕事をしながら静かに暮す元ブルース・ミュージシャン、ラザラスはある朝、道端で血だらけになって倒れている若い女を拾った。
女の名はレイ。
子供の頃の虐待の影響でセックス依存症となっていた彼女は、恋人のロニーが入隊したため、孤独に耐えられなくなりドラッグと酒に溺れ、男に殴られたのだった。
レイを家につれて帰り看病するラザラスは、逃げないようにと太い鎖を彼女の体に巻くのだった…
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それぞれがそれぞれに事情を抱えた人間ドラマである。
ロニーは不安定症を抱え、発作に苦しむ男。
そんな彼を落ち着かせ支えるのはレイ。
しかしロニーは現状を打破すべく入隊してしまう。

取り残されたレイは子供の頃の虐待がもとでセックス依存症となっており、ロニーがいない生活に耐えられない。
男を求めて町に出るが、ロニーの友人に殴られ道路に捨てられる。

そんなレイを拾ったのが、弟に女房を寝取られた元ミュージシャンのラザラス。
手厚く看護するものの目を放すと錯乱して歩き回るレイを抑えるために鎖で縛る。
やがて意識が戻っても男を求めるレイを治療すべく鎖でつないだままの生活を始める・・・

主人公ラザラスを演じるのはサミュエル・L・ジャクソン。
癖のある俳優だ。
「シャフト」では我が道を行く刑事を、「コーチ・カーター」では熱い教師を、同じ刑事でも「フリーダムランド」では熱い人情派だった。
アクションでもドラマでも存在感が大きい。

一方でセックス依存症のレイを演じるのはクリスティーナ・リッチ。
「アダムス・ファミリー」の黒髪の少女であり、直近での「耳に残るは君の歌声」「ウェス・クレイヴン’S・カースド」とまた違った役柄で、ちょっと同じ女優だとわからなかった。

そんな二人が織りなす人間ドラマ。
レイを治すといいながら結局は自らをも立ち直らせていくラザラス。
底辺で呻き(moan)ながら必死に生きていこうとする人間の営み。
たまにはこういうストレートなドラマもいいかもしれない・・・


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 11:36 | 東京 🌁 | Comment(0) | TrackBack(2) | ドラマ

2009年02月11日

【ショコラの見た世界】My Cinema File 349

ショコラの見た世界.jpg

2006年 日本
監督: 行定勲
出演: 竹内結子/大塚ちひろ/和田聰宏/藤本七海

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小学校の頃のテンコは、姉のショコラが旅先で遭遇したという不思議な“おとぎ話”を聞くのが大好きだった。
しかし、ある夏の暑い日にショコラは溶けるようにこの世を去った。
それから7年後のある雨の日、テンコは、姉のかつてのボーイフレンドだったジダンを偶然再会する。
“おとぎ話”だと思っていた姉のエピソードが、ジダンのケータイのメモリーに美しい映像として残されていた。
想像していた世界がケータイの画面に姉の姿とともによみがえる。
そしてショコラが最後に伝えたかったメッセージ。
テンコとジダンは、彼女が最後に立ち寄った「奇跡の場所」へと向かう。そこでふたりが目にしたものは…
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「遠くの空に消えた」に続く行定勲監督作品である。
珍しい事に50分という短い映画である。

タイトルとなっている「ショコラ」とは登場人物である治男(はるお)の死んだ恋人であり典子(のりこ)の姉のニックネームである。
登場人物はいずれも名前の漢字を音読みしてつけたニックネームで呼ばれる。
治男は「ジダン」であり、典子は「テンコ」であり、そして「初子(はつこ)」は「ショコラ」である。
おもしろいなと思ったのは、残念ながらこのニックネームだけだった。

姉がしてくれたおとぎ話を懐かしむ妹。
そして偶然出会った姉の元恋人が携帯に保存していた姉の動画にそのおとぎ話が事実だった事を知る。
7年前に現代のような携帯動画が利用できたかどうかは置いておくとして、どうにもこうにもピンとこない映画である。

ファンタジーなのであるが、「わざとらしく作られすぎたファンタジー」とも言うべきものでちっともほんわかとしてこない。
雨宿りした喫茶店でジダンとテンコによって語られるショコラの世界。
美しく酔いしれていたのは行定勲監督だけだったのかもしれない。

そうはいっても竹内結子ファンなら必見である事は間違いない・・・


評価:★☆☆☆☆

posted by HH at 11:02 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ