2008年08月23日

ルワンダの涙

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原題: SHOOTING DOGS
2006年 イギリス=ドイツ
監督: マイケル・ケイトン=ジョーンズ
出演: ジョン・ハート/ヒュー・ダンシー/ドミニク・ホロウィッツ/ルイス・マホニー/クレア=ホープ・アシティ

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ルワンダの首都・キガリ。
イギリス人のジョーは、クリストファー神父の運営する技術学校で英語教師として働いていた。
ツチ族の少女マリーをはじめ、生徒たちと触れ合いながら日々を送るジョー。
しかし彼はBBCのレイチェルから、フツ族がツチ族を虐殺している事を耳にする。
そしてある夜、事態は急変。
フツ族の大統領機墜落を機に、フツ族がツチ族の大量虐殺を始めたのだ。怯えるツチ族の人々は学校へ避難してくるが…
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ルワンダの悲劇はわずか14年前の事でしかない。
フツ族とツチ族の対立からフツ族がツチ族に対して大虐殺を行った事件である。
殺された人の数は100万人とも言われているのでもの凄い数である。
事件は映画化(ホテル・ルワンダ)やドラマ化(ルワンダ 流血の四月)されているが、この映画はまた違った視点から事件を取り上げている。

大統領機の墜落を機に始まった虐殺を逃れたツチ族の住人が国連軍の駐留している公立学校に逃れてくる。
始めは「我々の任務は平和の監視だ」と言って受け入れを渋る国連軍。
やむなく受け入れるとそこはまもなく大量難民の避難所となる。

外では道端で殺されたツチ族の人間の死体が転がっている。
死体は放置されたままでそれを野良犬が食べている。
その野良犬を撃とうとする国連軍。
原題の「Shooting Dogs」とは発砲を禁止された国連軍兵士が犬に対してだけ発砲する事を指している。
国連軍兵士は自衛の時以外は発砲するなと禁止されていたわけだが、映画の中で神父が国連軍の指揮官に「野良犬が発砲したのか(だから自衛のために撃つのか)?」と強烈な皮肉を言う。

挙句の果てに命令だとして学校の敷地から撤退していく。
撤退して兵士がいなくなれば、ナタを持ったフツ族が学校の中に乱入したちまち屠殺場と化す事は目に見えているのに、だ。

白人教師ジョーはずっと非難してきたツチ族とともに学校に留まるも最後に国連軍のトラックに乗り込む。
ツチ族の人達の絶望的な視線を背中に浴びながら・・・
一方、その場に留まる事を決意した神父。
人としてどういう選択をすべきなのか、観る者にも選択を迫られる。
生き残ったジョーと殺された神父。
選択の結果は理想通りにはいかない。

この映画には事件の被害者たちがスタッフとして参加している。
エンディングで一人一人が紹介される。
みんな「親族何人を失う」というテロップ付だ。

事件を対岸の火事として扱った西欧先進諸国。
たまにはいろいろと考えてみるにはいい映画だ。


評価:★★☆☆☆

posted by HH at 11:34 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2008年08月16日

スパイ・ゾルゲ

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2003年 日本
監督: 篠田正浩
出演: イアン・グレン/本木雅弘/椎名桔平/上川隆也/永澤俊矢/榎木孝明

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昭和十六年東京。
いつものように一日が始まった尾崎家に特高警察がなだれ込む。
あっという間に連行されるこの家の主人尾崎秀実。
またドイツ大使館へも出入りしていた特派員ゾルゲも同時に逮捕されていた。
それは最大のスパイ事件発覚の瞬間であった・・・
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実在のスパイ、ゾルゲの半生を綴った映画である。
ゾルゲはアジアにおいて勢力を強めつつあった日本で活動していたソ連のスパイである。
ロシア革命を経て労働者の国として成立していたソ連に対しては、世界各国に共産主義に共鳴するシンパがおり帝国主義列強はみな警戒していた。
当時は資本主義陣営、ファシズム陣営、共産主義陣営が三つ巴の対立にあったのだ。

当然諜報活動も盛んだったわけで、ゾルゲ事件は日本側の協力者尾崎秀実が時の首相近衛文麿とも親交があった事から国内に大きな波紋を投げかけた。
こうした予備知識をもって観ると非常に興味深い。

映像としては戦前の上海や東京がCGで再現されている。
最近はこういう映像も自然になってきたとはいえ、まだ着物姿の人が多く往来する銀座の様子などはCGならではであろう。

ロシア人とドイツ人の両親を持つゾルゲが共産主義革命に共鳴してソ連のスパイとなって来日。
そのゾルゲに協力する尾崎。
なぜ国を裏切ってスパイ活動をしていたのか。
中国通であった尾崎は帝国主義勢力に縦断される中国の現状に心を痛める。
背後で進行する事件とともに彼らの活動が描かれるわけであるが、戦前の歴史がよく理解できる。

スパイ=裏切り者であるわけであるが、映画ではそんな彼らの心情も描かれ、それなりの事情があったのだという事がよくわかる。
また、ソ連のために妻をモスクワに残して日本で9年も活動していたゾルゲであるが、疑心暗鬼なスターリンからはその活動が疑われ、粛清を恐れて帰国もできなかったのは皮肉である。

映画ゆえに多少の脚色はあるのだろうが、歴史上の事件を扱っているだけに歴史好きには興味ひとしおといったところではないだろうか。
歴史好きでなくても観ておいて損はない映画である。


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 10:04 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2008年08月13日

フリーダムランド

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原題: FREEDOMLAND
2005年 アメリカ
監督: ジョー・ロス
出演: サミュエル・L・ジャクソン/ジュリアン・ムーア/イーディ・ファルコ/ロン・エルダード/ウィリアム・フォーサイズ

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刑事のロレンゾは黒人低所得者が住むアームストロング団地を担当し、住人から厚い信頼を寄せられていた。
そんなある日、病院に手を血まみれにした女性が現れた。
彼女――ブレンダは、アームストロング団地で黒人男性にカージャックされたと、駆けつけたロレンゾに告げる。
しかしその態度に違和感を覚えるロレンゾ。
彼がさらに問い詰めると、ブレンダは追い詰められた表情で答えた。
「後部座席に4歳の息子が乗っていた」と…
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原作は全米でベストセラーになったそうだ。
そんな宣伝文句に惹かれて観てみたのだが・・・

フリーダムランドというのは1950年代に閉鎖された養護院の跡地。
さらわれた子供がいるのではないかと捜索される場所なのであるが、ストーリーの中ではなんら重要な役割を果たしていない。
何でタイトルになっているのか、映画ではわからない。

ある晩カージャックの被害者ブレンダが病院に現れる。
担当刑事ロレンゾが対応する。
車の中には4歳の子供がいたとわかり緊急手配。
翌日から大捜索が始まる。
現場のアームストロング団地は低所得黒人が住んでいる。
隣町の警察が犯人が潜んでいる可能性が高いとして団地を封鎖。
やがて住民と警官との間に不穏な空気が流れ始める・・・

初めはサスペンスかと思っていたらそうではなかった。
なぜかロレンゾはブレンダが何かを隠している、本当の事をすべて話していないと半信半疑で捜索を手伝う。
やがて判明する事実。

格差社会が話題となっているアメリカの低所得者層。
そんな人々の人間ドラマである。
ブレンダ自身が孤独な女性。
隣町の警察署に勤める兄がいるも子供と二人の暮らしをひっそりとしてきた。
ロレンゾ刑事も息子が服役中。
団地の住人たちもみんな問題を抱えている。

なるほど、小説にしたら何やら重厚なものになりそうである。
しかし、映画になるとその重厚さは伝わってこない。
たぶん映画ならではの時間制限から人物・背景などが十分に描ききれないのだろう。
ベストセラー小説としてはちょっと物足りないストーリーだ。

サミュエル・L・ジャクソンはありとあらゆる映画に出演している印象があるほどいろいろな映画に出ている。
このブログでは「コーチ・カーター」を取り上げたが、あくの強いキャラクターである。

原作もサミュエル・L・ジャクソンの演技も今一傑作には結びつかなかったと言えよう・・・


評価:★★☆☆☆


posted by HH at 23:59 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2008年08月09日

黒い潮

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1954年 日本
監督: 山村聡
出演: 山村聡/東野英治郎/津島恵子/夏川静江/滝沢修

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毎朝新開社の社会部記者速水は、警視庁詰めの記者筧から行方不明の秋山国鉄総裁が、轢死体となって発見されたという報をうけた。
複雑な政治的問題を孕む社会情勢から、この事件の真相は容易に判断できず、捜査当局も、単なる状況報告に止っていた。
他社の新聞は他殺説を主張したが、この事件を担当する速水は、正確な記事を客観的にという立場から自、他殺のいずれとも推定せず、見透しさえ書かなかった・・・
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1949年、まだ米国の占領下の日本で起こった下山事件を扱った古い映画である。
下山(映画では秋山)国鉄総裁が突然失踪し翌朝轢死体で発見されたこの事件は、自殺とも他殺とも断定できないまま捜査本部が解散となり、真相不明のままになっている。
松川事件、三鷹事件とともに戦後の国鉄三大ミステリー事件とされている。

ストーリーはこの事件を追う毎朝新聞の記者たちを描く。
リーダーの速水は正確な記事を客観的に書くという信念のもと、自殺説・他殺説いずれにも偏らず報道する。
ところが他社は自殺説、他殺説をそれぞれ展開し報道合戦を繰り広げる。

そんな中どっちつかずの毎朝新聞のスタンスは世の中から孤立。
社内外からの猛烈な圧力下、速水はスタンスを貫く。
結局どちらともつかないまま捜査本部解散によって事件は終了。
三鷹事件などの新たな大事件発生で新聞社はまた忙しくなる・・・

実在の事件を基にした映画であるが、何せ製作は1954年。
ストーリーそのものもそうであるが、それ以上に当時の世相が興味深い。
CGが発達した現在ではおよそほとんどの映像表現は可能であると思われるが、やはりその時代に撮影したという強みには及ばない。

国産車が普及せず社用車は左ハンドルの外国車。
タクシーもそうであり、空車の札を手で変える。
持ち歩くのは巨大なカメラ。
夏であるが当然エアコンなどはなく、氷屋に氷柱を社内に届けてもらい記者たちは触ったりタオルを冷やして顔を拭いたりして涼を取る。
交代で宿直。
活字を拾う女工。
男は24時間365日仕事、という世相・・・

半世紀前の作り物でない日本がそこにあり、どれもこれもが斬新である。
あそこは有楽町かなどと推察するのも楽しい。
おどろおどろしい効果音やナレーションなど現代では違和感を覚える構成も然り。
温故知新ではないが、時折こうした古い映画を観るのは結構好きである。
たまには趣向を変えて観てみてはいかがだろうか・・・


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 10:53 | 東京 🌁 | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2008年08月04日

フラガール

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2006年 日本
監督: 李相日
出演: 松雪泰子/豊川悦司/蒼井優/山崎静代/岸部一徳/富司純子

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昭和40年。
エネルギーの需要は石炭から石油へとシフト、世界中の炭鉱が次々と閉山していた。
そんな中、福島県いわき市の炭鉱会社は、地元の温泉を活かしたレジャー施設「常磐ハワイアンセンター」の計画を進めていた。
目玉となるのは、フラダンスのショー。
早速、本場ハワイでフラダンスを学び、松竹歌劇団で踊っていたという平山まどかを東京から招き、地元の娘たちのダンス特訓を始める。
しかし数世代も前から山で生きてきた住民は、閉山して“ハワイ”を作る計画に大反対。
まどかや娘たちへの風当たりも強く…
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石炭から石油へと移り行く時代。
雇用対策も含めて計画され作られた「常磐ハワイアンセンター」のフラガールズの実話を描いた作品である。
主役はもちろんフラガールズなのであるが、時代の変化についていこうとする人達、ついていけない人達の葛藤も観ていて興味深い。

もはや時代の要求に応えられなくなった石炭。
いくら掘っても必要とされないのだ。
なのに抵抗する鉱夫たち。
「30年掘ってきて紙切れ一枚で首か」と怒る鉱夫。
そこには長年やってきた事に対する誇りと今更他の事はできないという焦りがにじみ出ている。
そんな彼らが、時代の変化に合わせで変わろうとする人達に冷たく当たるのもまた人情である。

移り行く時代の中で、炭鉱の町にハワイをつくろうと考えた発想も面白いが、実現に向けたストーリーも面白い。

目玉のフラダンスの講師として東京から招かれた平山まどか。
髪型に服装にどれをとっても田舎町とは不似合いである。
フラガール募集に集まった女性たちも衣装を見て逃げ出す。
たった4人残ったメンバー。
「こんな田舎でど素人の田舎娘に何ができる」とやる気のないまどか。
そのまどかが一人で踊るのを覗いていた4人のメンバーが、そのあざやかな踊りを観て反感を一新。
弟子入りを志願しフラガールズの活動が本格化する。

そこからの紆余曲折。
冷ややかに観ていれば臭いシーンも多いのであるが、気にせず観ているとところどころで心に響くシーンが続く。

「強いものが生き残るのではない、変化できるものが生き残るのである」という言葉をダーウィンは残した。
己の強さを誇示し続けた鉱夫たちと、ハワイアンセンターのオープンに情熱を傾けた人達。
ビジネスにも通じる映画として観る価値もある。
フラガールズたちの奮闘はやがて鉱夫たちの心をも動かしていく・・・

行った事はないが、子供の頃に聞いた事がある「ハワイアンセンター」の響き。
今でも残っているスパリゾートハワイアンセンターに行ってみたくなった・・・


評価:★★★☆☆
posted by HH at 23:46 | 東京 🌁 | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ