2008年09月20日

【いつも心に太陽を】My Cinema File 279

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原題: To Sir, with Love
1967年 アメリカ、イギリス
監督: ジェームズ・クラベル
出演: シドニー・ポアチエ/ジュディ・ギースン/クリスチャン・ロバーツ/ルル

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エンジニアの仕事を探していたサッカレイは貧民街の学校の教師の職を得た。
新任教師として赴任したクラスは卒業を間近に控える高学年クラスだったが、生徒達はすべて、貧しさと問題を抱えた家庭に育ち、前任の教師をいじめぬいて追い出すほどの不良ばかりであった。
相次ぐ生徒達の嫌がらせに、これからは生徒を大人として扱うことを宣言した。
教科書を捨てて会話だけで彼等と接しようとしたのだ。
自分も貧困の中で育ち、皿洗いもしたというサッカレイに、彼らはしだいに心を開いていく。
しかし、他の教師達は依然として彼らを問題児としてしか扱わず、体育の時間には体育教師の横暴で生徒がケガをしたことで、再びサッカレイと生徒達の関係に壁ができてしまうかに思われたが・・・
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1967年というからもう42年前の映画である。
さすがにオールドファッションという感がある。
熱血教師ものといえばもうありきたりのような感じがするが、42年前という事だからその走りだったのだろう。

シドニー・ポワチエという名前も最近は聞かない。
昔の映画では「夜の大走査線」が有名だ。
この人は真面目な黒人というキャラクターがあっているように思う。

昔の映画のよいところの一つは当時の生活スタイルがよくわかる事である。
サッカレイが乗ってくるロンドンバス。
あまりにも有名なダブルデッカーであるが、当時も今とほとんど変わらない。
伝統を重んじる国ならではなのかと思ってしまう。

ファツションやヘアスタイルはさすがに時代を感じさせる。
不良生徒たちが何をしているかというと体育館でダンス。
それが親たちが顔をしかめる不良たちの行為とするなら笑ってしまう。
今ではすごく健全に見える。

エンジニアの仕事がしたかったのだが見つからず腰掛けで教師になったサッカレイ。
教師も生徒も落ちこぼれの集まりのような学校。
授業もまともに進まない。
サッカレイはある時思い立って生徒の前で教科書をゴミ箱に叩き込む。
そして一人一人を大人の紳士淑女として扱う事を宣言する。

今までの教師とまったく違うスタイルに戸惑いながらも次第に目覚めていく生徒たち。
事件もあったりするのだが、荒波を超えて卒業となる。
またサッカレイには念願のエンジニアの採用通知が届く。
大人になって社会に出て行く準備が整った生徒たちに自分の仕事をやりきった感動に浸るサッカレイ。
最後に彼が目にした学校の現実と彼の決断。
ちょっと感動的である。

昔の映画もいいものである・・・


評価:★★★☆☆
posted by HH at 10:56 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2008年09月13日

【あなたになら言える秘密のこと】My Cinema File 275

The Secret Life of Words.jpg

原題: The Secret Life of Words
2005年 スペイン
監督: イサベル・コイシェ
出演: サラ・ポーリー/ティム・ロビンス/ハビエル・カマラ/ジュリー・クリスティ/レオノール・ワトリング

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あらゆる感情を封印したかのように誰にも打ち解けず、黙々と工場で働くハンナ。
その真面目過ぎる働きぶりを上司にとがめられ強制的に取らされた休暇中、思いがけないことから油田掘削所の事故で大怪我をした男・ジョゼフの看護を買って出る。
向かった先は海に浮かぶ油田。
そこには陽気で腕のいい料理人をはじめ風変わりな男たちが働いていた。
彼らと生活を共にするうちにハンナは次第に笑顔を取り戻して行くのだが…
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イザベル・コイシュ監督と主演のサラ・ポーリーは、「死ぬまでにしたい10のこと」という映画以来のコンビ復活である。
この映画も雰囲気は「死ぬまでにしたい10のこと」と似ている。

工場で黙々と働くハンナ。
毎日チキンとライスとリンゴの弁当を持って無遅刻・無欠勤・無休の生活。
上司に突然呼び出され、「首ですか?」と訊ねるほどの真面目ぶり。
しかし上司の指示は「1ヶ月の休暇を取れ」というもの。
こんなセリフ言われてみたいものである。

荷物をまとめてバスに乗るハンナ。
孤独な一人旅。
食堂で偶然看護師を探しいるという男に「看護師だ」と名乗り出る。
男は油田掘削所の関係者で看護師を探していたのだ。
ちょっとした驚きである。
冒頭の油田掘削所の火災シーンとどうストーリーが結びつくのかと思っていたら、こんなところで結びついたからである。

タイトルとストーリーとにギャップを覚えつつ、どういう展開が待っているのかこの時点では予想がつかない。
ハンナは人間嫌いなのか、なぜ看護師の仕事をしていないのか、なぜ補聴器を使っているのか、一切は語られない。

看護師を必要としていたのは火災で重傷を負った一人の作業員。
そして看護の日々が始まる。
その男も何らかの秘密を抱えているようである。
そうこうしているうちに次第に打ち解けていく二人。
そしてハンナの衝撃の「告白」。

あなたになら言える秘密のこととはこういう事だったのか、と合点。
久々に良いタイトルだと感心した。
ハンナの「告白」を聞けば、それまでのハンナの暮らしぶりが霧が晴れるが如く納得のいくものとなる。
同時に覚えるやりきれなさ・・・

思わずハンナの幸せを願ってしまう。
静かで穏やかな軽い感動を覚える。

こういう映画もいいものである。


評価:★★★☆☆
posted by HH at 10:28 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2008年08月24日

【眉山】My Cinema File 264

眉山.jpg

2007年 日本
監督 : 犬童一心
原作 : さだまさし
出演: 松嶋菜々子/大沢たかお/宮本信子/円城寺あや/山田辰夫

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東京で働く咲子は、母の入院の知らせを受け、久しぶりに徳島に帰郷する。
母子家庭で育った咲子は、気が強く何でも一人で決めてしまう母に寂しさを感じていた。
咲子は医師、寺澤から母が献体を希望していることを知り、いらだちは募る。
ある日、母の友人から箱を手渡される。
中には、死んだと聞かされていた父から毎年届いていた手紙の束が入っていた。
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母子家庭で育った咲子。
父親の顔は知らない。
思春期の時に母親を問い詰め、自分の父親には別の家庭がある事を知らされる。
社会人となり生まれ育った徳島を出て東京で旅行代理店に勤める日々。
突然母の入院の知らせを受けて故郷に帰る。
そこで知る父親の事。

人は誰しも生まれた時の事など覚えてはいない。
父親は生まれた時から父親であり、母親は生まれた時から母親である。
しかし、当然ながら生まれるまでは(父親になり母親になるまでは)一人の男であり、女であるわけである。

母の友人から渡された風呂敷包み。
「自分が死んだら咲子に渡せとの事だったが今渡す」と渡される。
中から出てきた現金書留。
日付は自分の誕生日。
そこで咲子は自分の知らない両親の姿を知る事になる。

この映画は見る視点を変えると違う見方ができる。
結婚していながらも心惹かれる女性と出会い子供も授かる。
しかし、献身的に支えてくれる妻と捨てるわけにはいかない医院の仕事。
苦悩の末の決断は「家庭に戻る事」。
そんな一人の男の人生。

愛する男性の故郷に移り、そこで娘とともにそこのシンボルである眉山を夫として生きる道を選ぶ女の人生。

そんな母親の人生に思いを馳せる娘。


それぞれがそれぞれだ。
眉山、阿波踊りと名物に溢れる徳島を舞台に心にじんわりとくるストーリーである。

原作はなんとさだまさし。
らしいと言えばらしい、優しい映画である。

似たような体験を持つ者には心に痛く響く映画である・・・


評価:★★★☆☆

posted by HH at 10:57 | 東京 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2008年08月23日

【ルワンダの涙】My Cinema File 263

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原題: SHOOTING DOGS
2006年 イギリス=ドイツ
監督: マイケル・ケイトン=ジョーンズ
出演: ジョン・ハート/ヒュー・ダンシー/ドミニク・ホロウィッツ/ルイス・マホニー/クレア=ホープ・アシティ

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ルワンダの首都・キガリ。
イギリス人のジョーは、クリストファー神父の運営する技術学校で英語教師として働いていた。
ツチ族の少女マリーをはじめ、生徒たちと触れ合いながら日々を送るジョー。
しかし彼はBBCのレイチェルから、フツ族がツチ族を虐殺している事を耳にする。
そしてある夜、事態は急変。
フツ族の大統領機墜落を機に、フツ族がツチ族の大量虐殺を始めたのだ。怯えるツチ族の人々は学校へ避難してくるが…
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ルワンダの悲劇はわずか14年前の事でしかない。
フツ族とツチ族の対立からフツ族がツチ族に対して大虐殺を行った事件である。
殺された人の数は100万人とも言われているのでもの凄い数である。
事件は映画化(ホテル・ルワンダ)やドラマ化(ルワンダ 流血の四月)されているが、この映画はまた違った視点から事件を取り上げている。

大統領機の墜落を機に始まった虐殺を逃れたツチ族の住人が国連軍の駐留している公立学校に逃れてくる。
始めは「我々の任務は平和の監視だ」と言って受け入れを渋る国連軍。
やむなく受け入れるとそこはまもなく大量難民の避難所となる。

外では道端で殺されたツチ族の人間の死体が転がっている。
死体は放置されたままでそれを野良犬が食べている。
その野良犬を撃とうとする国連軍。
原題の「Shooting Dogs」とは発砲を禁止された国連軍兵士が犬に対してだけ発砲する事を指している。
国連軍兵士は自衛の時以外は発砲するなと禁止されていたわけだが、映画の中で神父が国連軍の指揮官に「野良犬が発砲したのか(だから自衛のために撃つのか)?」と強烈な皮肉を言う。

挙句の果てに命令だとして学校の敷地から撤退していく。
撤退して兵士がいなくなれば、ナタを持ったフツ族が学校の中に乱入したちまち屠殺場と化す事は目に見えているのに、だ。

白人教師ジョーはずっと非難してきたツチ族とともに学校に留まるも最後に国連軍のトラックに乗り込む。
ツチ族の人達の絶望的な視線を背中に浴びながら・・・
一方、その場に留まる事を決意した神父。
人としてどういう選択をすべきなのか、観る者にも選択を迫られる。
生き残ったジョーと殺された神父。
選択の結果は理想通りにはいかない。

この映画には事件の被害者たちがスタッフとして参加している。
エンディングで一人一人が紹介される。
みんな「親族何人を失う」というテロップ付だ。

事件を対岸の火事として扱った西欧先進諸国。
たまにはいろいろと考えてみるにはいい映画だ。


評価:★★☆☆☆

posted by HH at 11:34 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2008年08月16日

【スパイ・ゾルゲ】My Cinema File 258

スパイゾルゲ.jpg

2003年 日本
監督: 篠田正浩
出演: イアン・グレン/本木雅弘/椎名桔平/上川隆也/永澤俊矢/榎木孝明

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昭和十六年東京。
いつものように一日が始まった尾崎家に特高警察がなだれ込む。
あっという間に連行されるこの家の主人尾崎秀実。
またドイツ大使館へも出入りしていた特派員ゾルゲも同時に逮捕されていた。
それは最大のスパイ事件発覚の瞬間であった・・・
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実在のスパイ、ゾルゲの半生を綴った映画である。
ゾルゲはアジアにおいて勢力を強めつつあった日本で活動していたソ連のスパイである。
ロシア革命を経て労働者の国として成立していたソ連に対しては、世界各国に共産主義に共鳴するシンパがおり帝国主義列強はみな警戒していた。
当時は資本主義陣営、ファシズム陣営、共産主義陣営が三つ巴の対立にあったのだ。

当然諜報活動も盛んだったわけで、ゾルゲ事件は日本側の協力者尾崎秀実が時の首相近衛文麿とも親交があった事から国内に大きな波紋を投げかけた。
こうした予備知識をもって観ると非常に興味深い。

映像としては戦前の上海や東京がCGで再現されている。
最近はこういう映像も自然になってきたとはいえ、まだ着物姿の人が多く往来する銀座の様子などはCGならではであろう。

ロシア人とドイツ人の両親を持つゾルゲが共産主義革命に共鳴してソ連のスパイとなって来日。
そのゾルゲに協力する尾崎。
なぜ国を裏切ってスパイ活動をしていたのか。
中国通であった尾崎は帝国主義勢力に縦断される中国の現状に心を痛める。
背後で進行する事件とともに彼らの活動が描かれるわけであるが、戦前の歴史がよく理解できる。

スパイ=裏切り者であるわけであるが、映画ではそんな彼らの心情も描かれ、それなりの事情があったのだという事がよくわかる。
また、ソ連のために妻をモスクワに残して日本で9年も活動していたゾルゲであるが、疑心暗鬼なスターリンからはその活動が疑われ、粛清を恐れて帰国もできなかったのは皮肉である。

映画ゆえに多少の脚色はあるのだろうが、歴史上の事件を扱っているだけに歴史好きには興味ひとしおといったところではないだろうか。
歴史好きでなくても観ておいて損はない映画である。


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 10:04 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ