2008年04月26日

大いなる陰謀

LIONS FOR LAMBS.jpg

原題:  LIONS FOR LAMBS
2007年 アメリカ
出演:  トム・クルーズ/メリル・ストリープ/ロバート・レッドフォード

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ベテラン・ジャーナリスト、ジャニーン・ロスは、未来の大統領候補と目されるジャスパー・アーヴィング上院議員の独占インタビューに赴き、対テロ戦争の新作戦について知らされる。
同じ時刻、カリフォルニア大学の歴史学教授マレーは、優秀であるのに勉学に身が入らない学生トッドを呼び出し、志願兵となった教え子2人の話を始める。
そして、アフガニスタンでは志し高い2人の若き兵士が最前線に送られていた・・・
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ロバート・レッドフォード、トム・クルーズ、メリル・ストリープが競演!というだけで見る価値は十分にありそうなこの映画。
テーマは重厚。

長引くイラク戦争。
9.11直後の熱狂はどこへやらの厭戦ムード漂う中、国の威信を取り戻そうとある作戦を進める軍部とそれをPRすべく一人のジャーナリストにアプローチするアーヴィング上院議員(トム・クルーズ)。
そしてこの独占インタヴューに半信半疑で望むジャーナリスト、ジャニーン(メリル・ストリープ)。
一方才能ある若者にある想いを語る教授マレー(ロバート・レッドフォード)。
三者三様の想いが同時平行で進む。

アメリカの行く末を案じ、国の威信を高めようと熱き想いを語るアーヴィング上院議員。
しかし、そこにはいずれは大統領へという野心も潜む。
一方で志願して戦場に臨み、絶体絶命のピンチに陥る二人の兵士。

それぞれがそれぞれの立場で想いをぶつけ合う。
正解は語られない。
「これからアメリカはどこへ進むべきなのか?」という問い掛けが映画を通して語られる。
観る者自身が考えないといけない。

全編を通してそれぞれの会話で映画が進んでいくのだが、しかしどうにも何かが足りない。
映画はエンターテイメント。
なのにメッセージの発信に一生懸命になりすぎたような印象だ。
1時間半という短い時間も物足りない。
重厚なテーマなだけにもっとじっくりと時間をかけた方が良かったのではと思われる。

大物同士の競演ゆえに大いなる期待を抱いていたのだが、ちょっぴり肩透かしであった。
だが大いに考えさせられる映画ではある。


評価:★★☆☆☆
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2008年04月21日

うず潮

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1964年 日活
出演: 吉永小百合/奈良岡朋子/東野英治郎/山内賢/浜田光夫/二谷英明

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大正十一年林フミ子は県立尾道高等女学校の最上級生であった。
フミ子の母ミノと義父の茂介が行商で歩く貧しい生活であったが、フミ子は明るい文学の好きな少女であった。
おかずのたしにと、小川でしじみを取るフミ子に、網元の次男坊佐々木二郎は、好意をもって魚を贈ったりする、楽しい学生生活であった。
この頃フミ子は国語の教師森に、作文の批評を仰いでいた。
一方フミ子の家庭は茂介が遠く行商に出たまま、借金はかさみ、フミ子も月謝や修学旅行費を催足されていた・・・
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この映画は今から44年前、1964年の作品である。
吉永小百合は当時19歳。
他の出演者もみな若々しい。

舞台は大正15年の尾道。
行商人の娘林フミ子は女学校の生徒。
貧しいながらも明るく健気に生きる主人公の林フミ子を吉永小百合が演じる。

ストーリーはこの手のドラマにありがちなものだ。
だめな父親。
貧しい暮らし。
貧しさゆえに諦めざるを得ない出来事。
それでも明るく生きる主人公とそれを支えるまわりの人々の人情・・・

それはそれで良いのであるが、バックグラウンドもまた興味深い。
尾道と言えば今では観光地であるが、ここでは単なる田舎の村。
女学校といっても主は花嫁修業。
一杯四銭のうどん。
当時はローンなどというものはなく、貧しいものの金融手段は「つけ」と「質屋」。
間借りしている部屋は民家の2階で当然、部屋以外はすべて共有。
着物もバイオリンも新品などとは縁もなく、すべて質流れである。

そうした風俗を今と比較してみるのも一興である。
映画が今よりも娯楽として高い位置を占めていた1964年のこの年、吉永小百合は9本の映画に出演。
「サユリスト」と呼ばれるファンを生んだ。
心温まる人情ドラマであるとともに「温故知新」を求めて観てみる価値ある映画である。


評価:★★☆☆☆
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2008年04月19日

さくらん

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2007年 日本
出演: 土屋アンナ/椎名桔平/成宮寛貴/木村住乃/菅野美穂

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お蘭によって吉原の玉菊屋に連れてこられた8歳の少女。
きよ葉と名付けられた彼女は、高級花魁・粧ひに面倒を見られることになった。
玉菊屋から脱走を図り続けるきよ葉だったが、粧ひに導かれ吉原一の花魁を目指す事を決意する。
やがて17歳となったきよ葉は、美貌と鼻っ柱の強さで一躍江戸中の注目を集める存在に。
そんなきよ葉は、お客として来たうぶな青年・惣次郎と初めての恋に落ちるのだが…
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この映画、原作は漫画らしい。
見たこともないのでそれはそれ、これはこれで白紙の状態で見た。

8歳で吉原に連れて来られた少女の成長物語である。
少女は「きよは」と名づけられ、そこでの「教育」が始まる。
しかし、自由奔放なきよはは脱走を繰り返し「枠」にはまろうとしない。
先輩の花魁に「お前になど花魁にはなりたくてもなれない」と言われ、逆に発奮。
一躍売れっ子の遊女となる。

土屋アンナがそのハスキーボイスで、型破りな遊女を演じている。
ストーリーもまずまず面白いのだが、それ以外にも江戸風物詩としても見所はある。

花魁の世界は階級社会。
そのトップが花魁であり、遊女=花魁ではない。
禿(かむろ)と呼ばれる付き人から始まり新造という新人を経て階段を上がっていく。
客に呼ばれて出かける時は大名行列のように列をなして歩くのだが、この時履いている下駄が特殊で重くて普通には歩けないため「八の字」を描くように歩く・・・

こうした事がさりげなく描かれている。
艶やかな着物の数々も彩りを添える。
前回のマリー・アントワネットも豪華絢爛衣装であったが、十分対抗している。
またところどころに挿入される椎名林檎の唄もなぜか妙にマッチしていた。
(ちなみに椎名林檎の唄など知らないのだが、それでも印象に残るのである)

そして所々で登場する「金魚」。
水槽の中にいれば美しいがそこから出れば生きられない、として一見華やかな花魁も郭の中でしか生きられないことを現している。
トータルして芸術作品のような趣が感じられる。
木村佳乃や菅野美穂も花魁として登場し、濡れ場のシーンも出てくるのが個人的には意外な感じを持った。

最後まで「らしさ」を失わないきよは。
己を通す姿はストーリー的にも面白い。
いろいろな切り口で解説できそうな映画であるが、一番肝心なのは単純に見て楽しめる映画であるという事であろうか。


評価:★★★☆☆
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2008年04月07日

ロード・オブ・ウォー

lord_of_war.jpg

原題: LORD OF WAR
2005年 アメリカ
出演: ニコラス・ケイジ/イーサン・ホーク/ジャレッド・レト/ ブリジット・モイナハン/イアン・ホルム

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ソビエト連邦崩壊前夜のウクライナに生まれたユーリー・オルロフは、少年時代に家族とニューヨークへ渡り、両親が営むレストランを手伝いながら育った。
ある日ロシア人ギャングの銃撃戦を目撃したユーリーは、レストランが食事を提供するように、戦場に武器を供給する仕事をしようと決心する。
弟のヴィタリーとパートナーを組んで闇の世界に足を踏み入れたユーリーは、混沌とした世界情勢を追い風に、瞬く間に世界有数の武器商人へと上り詰めていく。
だがその動向を嗅ぎつけたインターポールのバレンタイン刑事が背後に迫っていた・・・
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需要のあるところに供給あり。
主人公のユーリーはいわゆる「死の商人」である。
あらゆる手段を駆使して武器を仕入れ、それを必要としているところに売る。
合法を装うが闇ルートが専門だ。
もともと持っていた商才が生かされユーリーは成功を収める。

前半はユーリーが成功への階段を駆け上る様が痛快に描かれる。
自分を卑下した大物商人を出し抜き、インターポールの捜査を巧みにすり抜ける。
憧れのモデルと結婚し豪邸に居を構える。

しかしこの商売にはモラルとの強烈な葛藤がともなう。
なにせ商品は人殺しの道具だ。
それが使われる時、血が流される。

使われるのは武器の生産能力を持たない発展途上国。
支払われるのは麻薬やダイヤモンド。
ダイヤモンドに関しては、「ブラッド・ダイヤモンド」でも描かれていた。

後半はこの商売の持つ暗部が描かれる。
ユーリーも次々と大事なものを失っていく。
正義感にかられたインターポールのバレンタイン刑事と最後に対峙したユーリーが語る言葉にこの映画のメッセージが込められている。

「最大の商人はあんたのボス、アメリカ合衆国大統領だ。
俺たちの商売の1年分を1日で売り上げる。
俺たちは必要悪だ。」
そしてテロップにも武器の輸出国=国連常任理事国5大国と出てくる。

メッセージ性の強い映画ではあるが、娯楽作品としても十分に楽しめる。
こういうところが映画のいいところだろう・・・


評価:★★☆☆☆

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2008年03月31日

手紙

手紙.jpg

2006年 日本
出演: 山田孝之/玉山鉄二/沢尻エリカ/吹石一恵/尾上寛之/吹越満/風間杜夫/杉浦直樹

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工場で働く20歳の武島直貴は、職場の人間ともまるで打ち解けず、人目を避けるように暮らしていた。
それというのも唯一の家族である兄・剛志が、直貴の学費欲しさに盗みに入った邸宅で老婆を殺してしまったからだった。
兄が罪を犯したのは、自分のせいだ。
そう自責する直貴は、せめてもの償いにと服役中の兄から届く手紙に丁寧な返事を書き続けていた。
そんなある日、更生した元服役囚と出会った直貴は、一度はあきらめたお笑い芸人の夢に再び挑戦しようと決意する・・・
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原作は東野圭吾の小説。
東野圭吾といえばサスペンス・ミステリーなどの作品が多いが(最近では「ガリレオ」がテレビドラマ化されていた)、この「手紙」は殺人犯の弟の苦悩を描いた直球勝負の小説である。
強盗殺人で無期懲役などといえば世間は被害者に同情的だ。
それを「加害者の弟」にスポットライトを当てたのがポイントだ。

心優しき兄剛志は殺人罪で服役中。
弟直貴としては、兄の罪の原因は直貴が大学へ行くための資金が欲しかったためであり、恨む事はできない。
されど世間の冷たい仕打ちで大学進学を断念した上に仕事や住居を追われることしばしば。
さらには夢であるお笑い芸人への道や最愛の女性との結婚も諦めざるを得なくなる。

そんな弟直貴の苦悩が綴られる。
唯一の慰めが、直貴になぜか好意を寄せる由実子の存在だ。
冷たくされても裏に表に直貴の支えとなろうとする。

兄と弟を唯一つなぐのがタイトルとなっている手紙。
手紙を通しての兄と弟の交流。
そして苦悩・・・
親友寺尾や由実子に支えられながら家庭を築き、しだいに世間との係わり合いを広げて生きていく弟直貴。
被害者とのからみも交え、重厚なテーマでありながら感動的なドラマである。

通常こういった小説を映画化するのは難しい。
小説の世界を2時間程度の映画で描ききる事は困難な事が多いからだ。
だが、原作は文庫本400ページ程度であったためか見事に2時間の枠に収まっている。
映画でも小説でも同じような感動が味わえる。

唯一難をいえば弟直貴がめざした夢の違いだろうか。
原作はバンドであるが映画ではお笑い芸人。
満たされぬ思いを唄に託すのはしっくりくるが、世間に背を向けた暗い存在とネアカが要求されるお笑い芸人はどうもマッチしない。
(ネタは面白いのだが・・・)

時としてまともに議論をすれば何時間もかかりそうなテーマを映画や小説は雄弁に語る事がある。
キリスト教の「原罪」を理解したければ「氷点」(三浦綾子作)を読めばいいように。
これは日本版「罪と罰」といえるだろう。


評価:★★★★☆
posted by HH at 22:40 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(1) | ドラマ