2017年04月30日

【フェンス】My Cinema File 1723

フェンス.jpg

原題: Fences
2016年 アメリカ
監督: デンゼル・ワシントン
出演: 
デンゼル・ワシントン: トロイ・マクソン
ヴィオラ・デイヴィス: ローズ・リー・マクソン
スティーヴン・ヘンダーソン: ジム・ボノ
ジョヴァン・アデポ: コーリー・マクソン
ラッセル・ホーンズビー: ライオンズ・マクソン
ミケルティ・ウィリアムソン: ガブリエル・マクソン

<映画.com>
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オスカー俳優デンゼル・ワシントンの3作目となる長編映画監督作。アメリカの劇作家オーガスト・ウィルソンによる、ピューリッツァー賞などを受賞した名作戯曲「フェンス」を、10年にリバイバル上演された舞台版で主演し、トニー賞主演男優賞を受賞したワシントンが、自らのメガホンで映画化。ワシントンは監督のほか製作、主演も兼ね、舞台版でもワシントンと共演したヴィオラ・デイビスが妻役を務めている。1950年代の米ピッツバーグを舞台に、元プロ野球選手でいまはゴミ収集員として働くトロイと妻ローズ、そしてその息子たちと、アメリカに生きる黒人家族の人生や関係を描く。第89回アカデミー賞で作品賞をはじめ4部門でノミネートされ、ヴィオラ・デイビスが助演女優賞を受賞した。
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 舞台は1950年代のピッツバーグ。ある黒人家族の物語。一家の主人はトロイ・マクソン。毎日清掃車に乗って市内を回っている。相棒のジムと仕事帰りに一杯やるのが楽しみといった感じである。はっきり言って、生活水準は低そうである。そんなトロイの元に、ある日息子のライオンズが訪ねてくる。そして10ドル貸してくれと借金を願い出る。ライオンズは、正業に就かず、ミュージシャンになる夢を追いかけているが、そんな息子に嫌悪感を抱くトロイは憤激し、親子喧嘩となる。妻のローズが取りなさなければ、絶縁となっていたかもしれない。

 さらに次男のコリーが大学のフットボールチームにスカウトされているとローズから知らされるが、トロイは息子が白人社会で成功できるわけがないと考えていて、これに反対する。どうやらトロイ自身、過去に自分が黒人差別によって野球で活躍できなかったという無念があるようである。当然、そんなことでコリーは夢を諦めたくない。しかし、トロイは無情にも、「大学のリクルーターがきても入部同意書にサインしない」と言い放つ。

 そんなマクソン家の様子をドラマは追う。ローズはトロイに自宅の周りにフェンスを立てて欲しいと頼む。トロイはフェンス作りをコリーに手伝うように命じる。さらにフットボールを優先し、シーズン中にアルバイトを休むということに対し、トロイは烈火のごとく怒る。コリーはコリーで、影響が出ないようにアルバイトはシーズンオフの時にだけ出勤する許可も取ってあったが、トロイは聞く耳を持たず、親子の対立は深まって行く。

 トロイには、ガブリエルという兄がいる。しかし、ガブリエルは戦争で頭部を負傷し、以来精神障害を来していて、警察の世話になることもある。トロイには、ガブリエルの戦傷手当3,000ドルで家を建てたという負い目がある。そしてトロイには、文字が読めず、運転免許証も保有していないという引け目があったが、昇進を勝ち取り、ゴミ収集トラックの運転手の地位を獲得する。

 家では家長として絶対権力を振る舞うトロイ。ある日、浮気相手のアルベルタの妊娠が発覚するが、トロイはそれを堂々とローズに告げる・・・ある意味、亭主関白のトロイの姿は、立派でもある。我が家でこんな態度を取ったら大変なことになる。しかし、それで家族がうまく行くかというと、それはまた別の問題。マクソン家も決してうまく行っているわけではない。

 人は誰でも自分なりに正しいと思う意見がある。問題は、それをどう他人と分かち合うかである。自分の意見を通すことばかり考えていると、他人との関係は決してうまく行かない。それが家族の間であっても然りであり、マクソン家の問題は見事にそれを表している。ライオンズとコリーは男であるがゆえに、父親と激しく対立する。それに対し、妻のローズは涙ながらに抗議するだけ。このあたりは生活の糧をトロイに頼るほかない立場ゆえかもしれない。

 結局、トロイは考え方を改めることなく、家族間の対立も解消されないまま。ラストの家族の再会の寂しさ溢れる雰囲気にそれは現れている。他人だから見える欠点はある。我が身に手を当ててみれば、同様のこともあるかもしれないと思う。こうした家族のドラマは、深くドラマの世界に想いを馳せ、それによって己の問題を考えさせてくれるところがある。

 主演はデンゼル・ワシントン。この作品ではなんと監督もこなしている。この人は、ヒーローにもなれば、悪人にもなり、酔いどれのダメ人間にもなりと幅広い。この映画でも頑固オヤジ振りが実にすごい。息子の夢に対する強烈な否定も、自分自身の辛い過去がベースにあるのだろうし、そこは気の毒な気もするが、せっかくだったらもう少しいいオヤジであって欲しかったところでもある(もっとも、それでは映画が成り立たない)。

 さすが、デンゼル・ワシントンといった感があるが、それ以外にも全体的に深い味わいのある映画である・・・


評価:★★☆☆☆





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2017年04月15日

【シェフ 三ツ星フードトラック始めました】My Cinema File 1715

シェフ 三ツ星フードトラック始めました.jpg

原題: Chef
2015年 アメリカ
監督: ジョン・ファヴロー
出演: 
ジョン・ファヴロー:カール・キャスパー
ソフィア・ベルガラ:イネズ
ジョン・レグイザモ:マーティン
スカーレット・ヨハンソン:モリー
オリヴァー・プラット:ラムジー・ミッシェル
ボビー・カナヴェイル:トニー
エムジェイ・アンソニー:パーシー
ダスティン・ホフマン:リーバ
ロバート・ダウニー・Jr:マーヴィン

<シネマトゥデイ>
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『アイアンマン』シリーズなどの監督で俳優のジョン・ファヴローがメガホンを取り、究極のサンドイッチを売る旅をする元一流レストランのシェフを演じるドラマ。店を辞め、偶然キューバサンドイッチと出会ったシェフが、フードトラックでサンドイッチを売りながら人生を取り戻していくプロセスを映す。共演には、ダスティン・ホフマン、ロバート・ダウニー・Jr、スカーレット・ヨハンソンといった豪華キャストが集結。人生と料理をテーマにした温かいストーリーに、爽快な感動を味わえる。
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 主人公のカール・キャスパーは腕のいいシェフ。現在ロサンゼルスのレストランで雇われシェフをしている。離婚していて、10歳の息子と定期的に会っている。そんなある日、料理の評論家が店にくることになる。はりきるキャスパーは、新メニューを提供することにするが、定番料理を提供せよというオーナーの意見と衝突、渋々これを受け入れる。ところがそれが裏目に出て、カールは酷評されてしまう。

 プライドを傷つけられたカール。内心はらわたが煮えくり返っているのがわかる。息子との何気ない会話からツイッターを始めたカールは、評論家とネットで論争となり、新メニューを食べに来いと公開のけんかを売ってしまう。当日この対立は盛り上がり、平日にも関わらず満席となる。しかしオーナーはあくまでも定番料理の提供を命じ、カールはついに店を首になる。評論家には、敵前逃亡といわれ、激怒したカールは評論家を店内で罵倒し、悪いことにネットでそれが拡散されてしまう。

 そうなると次にカールを雇う店もなく、カールは職もプライドもなにもかも失ってしまう。失意のカールに同情した元妻イネズの提案で、彼は息子のパーシーを連れてイネズの故郷であるマイアミを訪れる。そこでカールは熱々のキューバサンドイッチの美味しさを知り、これをかねてからイネズに提案されていたフードトラックでの移動販売をやることにする。イネズの元夫に古いトラックを譲ってもらったカールは、パーシーと二人で修理に取り掛かる・・・

 この映画を観ていて、いろいろと感じるところがある。まずは離婚の日常化だ。カールも離婚していて、妻とは友人関係を築き、子供との面会もシステマチックにルーティン化している。子供からすると父親と離れて暮らすのは寂しそうであるが、夫も妻もそれぞれの生活を楽しんでいる。やがて日本もそうなるのであろうか。

 また、料理と批評家とネットの存在。カールは実に楽しそうに料理し、包丁の腕前も素人目にすごい。こんなに楽しそうにやっているのを見ると、自分でも何か作ってみたくなる。そしてそれを批評する人。はっきり言って料理など人の好き好きだと思う。それをあれこれと批評するのは勝手だが、今はSNSですぐ拡散される時代。それで店の来客数にも影響があるわけで、無責任な言動一つで店が潰れることもありうるわけである。

 フードトラックで息子と相棒とキューバサンドを作って売るカール。息子も実に楽しそうである。「遊園地に行くよりお父さんと話したり何かをする方がいい」という健気な言葉には、親子のあり方も込められている。最後のカールの決断は清々しいものである。
 カールの付き合っている女性がスカーレット・ヨハンソンであり、いけ好かないレストランオーナーはダスティン・ホフマンだったり、元妻の元夫がロバート・ダウニーJr.だったりとなぜか脇に豪華キャスト。料理といい、出演者といい実に豪華である。

こんなフードトラックが近くに来たら、是非とも買ってみたいと思わされる一作である・・・


評価:★★☆☆☆





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2017年04月08日

【Re:LIFE〜リライフ〜】My Cinema File 1713

Re:LIFE〜リライフ〜.jpg

原題: The Rewrite
2014年 アメリカ
監督: マーク・ローレンス
出演: 
ヒュー・グラント:キース・マイケルズ
マリサ・トメイ:ホリー・カーペンター
ベラ・ヒースコート:カレン・ギャブニー
J・K・シモンズ:ハロルド・ラーナー学科長
クリス・エリオット:ジム・ハーパー教授
アリソン・ジャニー:メアリー・ウェルドン教授
アニー・Q:サラ

<シネマトゥデイ>
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『ラブソングができるまで』のヒュー・グラントとマーク・ローレンス監督が4度目のタッグを組んだ人間ドラマ。田舎の大学でシナリオ講座を受け持つことになった落ち目の脚本家が、映画を愛する生徒たちとの交流を通してやる気を取り戻していくさまを描く。『セッション』で鬼教師を演じオスカーに輝いたJ・K・シモンズが涙もろい学科長という対照的な役柄を好演するほか、作中のキーパーソンとなるシングルマザーにオスカー女優マリサ・トメイがふんする。
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ヒュー・グラントといえば、「ちょっと気弱なダメ男」というイメージがあるが、まさにそのイメージ通りのハートフルな映画。ヒュー・グラント演じるのは、若くしてアカデミー脚本賞を受賞した脚本家のキース。しかしその栄光から後、ヒット作に恵まれず、エージェントに仕事を頼みこんでいる日々。

そんな中、エージェントからニューヨーク州ビンガムトンの大学での講師の話が舞い込む。背に腹は代えられず渋々引き受けたキースだが、就任早々知り合った学生カレンと寝てしまい、懇親会では学内の実力者ウェルドン教授を侮辱したり、挙句に受講生は提出書類ではなくルックスで選考するなど、身を入れて仕事に取り組まない。頼るのは過去の栄光のみ。

講義が始まると、いきなりシナリオを1か月で書けと宿題を出して1カ月間の休講を宣言し、ウェルドン教授にさらに睨まれてしまう。やがてシングルマザーで、アルバイトをしながら生計を立てている学生のホリーが受講を希望してくる。脚本に対するひたむきなスタンスに断り切れず受講を認めるキース。ここまではヒュー・グラントのダメ男の真骨頂である。

キースはちょっと見栄を張ったりしながら、あくまでもハリウッド復帰までのつなぎとしか仕事を考えていない。隣家には人のいい同僚がいて、人情家の学科長のラーナーがいて、面白おかしく物語はすすむが、やがて生徒たちの熱心さがキースの心に少しずつ変化をもたらしていく。ある意味、「ヒュー・グラント映画」の路線をまっすぐ歩んでいく映画である。

それにしても、キースが本当に大事なことに気付いていく過程は、心温まるものがある。純真な生徒たちは、実にシンプルな質問をキースに投げかける。それに答えていくうちに、キース自身も新たな気付きを得ていく。そして才能を認めた生徒に対しては、自ら売り出しを手伝う。決して手柄を横取りするではなく、無償の協力姿勢は観ていて心地よい。そして最後にキースが下す決断も心温かくなる。

自分たちの日常や仕事に当てはめて考えてみてもいいかもしれない。そうすればまた何かのヒントになるかもしれない。示唆に富むエンターテイメントとして、これからも「ヒュー・グラントらしい」主演作を期待したいと思う一作である・・・


評価:★★☆☆☆




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2017年04月03日

【闇金ウシジマくんPART3】My Cinema File 1710

闇金ウシジマくんPart3.jpg

2016年 日本
監督: 山口雅俊
出演: 
山田孝之: 丑嶋馨
本郷奏多: 沢村真司
藤森慎吾: 加茂守
浜野謙太: 戌亥
やべきょうすけ:柄崎

<シネマトゥデイ>
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山田孝之が高金利の金融屋を演じる人気シリーズで、真鍋昌平による原作コミックの「フリーエージェントくん編」「中年会社員くん編」を基にした社会派ドラマ。女性を口説くためネットビジネスで一獲千金を狙うフリーター、遊ぶ金欲しさに借金を重ねるサラリーマンに丑嶋馨が立ちはだかる。主演の山田のほか綾野剛、本郷奏多、藤森慎吾らが出演。監督は、これまでのシリーズ同様、山口雅俊。欲にまみれた登場人物たちの行く末と、大金が動く危険なマネーゲームが見どころ。
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原作漫画でその存在を知り、映画版はなぜかPART2を観たもののPART1を観ていないというイビツな形で向き合っているこのシリーズであるが、PART2を観る限り映画版も面白く、したがってPART3たる本作品の鑑賞にいたるもの。

 「闇金ウシジマくん」というタイトルながら、主人公であるはずのウシジマくんはあまり表だって活躍しない。「闇金だから」かもしれないが、シリーズの主役は「闇金で金を借りる人たち」である。しかも「闇金で借りる=普通のところでは借りられない」人たちだから、その実態はまさに社会の暗部といったところである。

 今回の主役は派遣労働者の沢村真司とサラリーマンの加茂守である。沢村は派遣会社で何とか食いつないでいる。街で撮影中のタレント麻生りなを見かけながら、金のない自分には無縁だと絶望的な気分に浸っている。そんな中、秒速で億を稼ぐと町中にCMが溢れるネット長者の天生祥のセミナーに目が留まる。参加するだけなら無料という謳い文句にセミナーに参加した沢村は、これに賭けてみようと親から本講座に必要な100万円を借り入れる・・・

 一方、妻がいながら保険のセールスレディと浮気をしているサラリーマンの加茂守は、日々嫌がらせを受けているが、それを金を無心してくる同僚の仕業と思いこんでいる。同僚に渡す金と密かに狙っている美人キャバ嬢を落とすためには金が足りず、ウシジマくんのカウカウファイナンスを訪れる。5万円の申し出に対し、利息前払で渡されるのは2万5千円。とんでもない暴利であるが、借りる方は「後で何とかなる」と考えるのだろう。大して疑問も持たずに借りていく・・・

 怪しげなネット長者も、ふたを開けて見れば次々に追加で金を要求され、それを払わないと稼げないと思わされる仕組み。当然、世の中そんなに甘くない。ちょっと考えれば、主催者に100万円、200万円と払うのだったら、そこで売っている教材を30万円で買った方が早いとわかりそうなものであるが、思い込んだらそういう正論は頭に浮かんでこないのだろう。沢村はそれでも賢く、やがて騙す方へとシフトしていく。

 こういう人間たちを見ていると気分が沈んでくる。原作漫画もやたら暗い。ウシジマくんは要所要所に登場するも、主人公はやっぱりこのどうしようもない人間たちである。しかし、ウシジマくんも何もしないわけではない。すべて元の木阿弥となった沢村に、「お前は自分の全人生を賭けて勝負したんだろ?すげーじゃねえか。なんもしてねー奴よりよっぽどマシだ。」と語ったりする。その是非はともかく、沢村の行動は「よっぽどマシ」なのであり、ウシジマくんのセリフは真実である。

 そんなシリーズも次のファイナルで終わりのようである。ここまで来たからには観ないといけない。そして今さらながら、PART1もである。どんなエンディングなのか。原作もそこまでは読んでいないので、楽しみにしたいと思うのである・・・


評価:★★☆☆☆





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2017年03月18日

【グランド・ジョー】My Cinema File 1703

グランド・ジョー.jpg

原題: Joe
2013年 アメリカ
監督: デビッド・ゴードン・グリーン
出演: 
ニコラス・ケイジ: ジョー
タイ・シェリダン: ゲイリー
ゲイリー・プールター: ゲイリーの父
ロニー・ジーン・ブレビンズ: ウィリー

<映画.com>
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ニコラス・ケイジが主演し、過去の犯罪歴に振り回されながらも真面目に生きようとする男と、父親の暴力に耐える少年が織り成す交流と苦難を描いた人間ドラマ。アメリカ南部の田舎町で暮らす男ジョーには複数の前科があったが、現在は森林伐採業者として真面目に働き、周囲の人々からも慕われていた。ある日彼は、仕事が欲しいという15歳の少年ゲイリーを雇うことに。ゲイリーは酒に溺れて働こうとしない父親の暴力に耐えながら、母や妹を養っていた。一緒に働くうちに親子のような関係を築いていくジョーとゲイリーだったが、そんな2人に過酷な運命が待ち受けていた。『ツリー・オブ・ライフ』のタイ・シェリダンがゲイリー役を繊細に演じ、第70回ベネチア国際映画祭で新人俳優賞を受賞した。監督は『スモーキング・ハイ』のデビッド・ゴードン・グリーン。ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち 2016」上映作品。
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 物語の舞台となるのは、アメリカ南部の田舎町。主人公のジョーは、黒人たちを使いながら森林伐採を行っている。といっても、ジョーの役柄はいわば現場監督であり、自分のおんぼろの車にみんなを乗せて森へと向かう。そして伐採というのも正確ではなく、正確に言えば「枯らす」作業である。なんでも普通の木を切ってはいけないらしく、枯れ木ならそれが認められているようで、よって一本一本鉈で傷をつけては除草剤のような毒液を木にかけ、あとで伐採できるように枯らしていくのである。

一方、飲んだくれの父親の下で暮らす家族4人。15歳の息子ゲイリーが父をたしなめるも、父親は聞く耳持たず。生活費を稼ぐべく、ゲイリーはジョーに頼み込んで働かせてもらうことにする。なんとなく察した時ジョーはゲイリーを雇い、ゲイリーも喜んで一生懸命働く。しかし、ジョーが気を利かせて父親も一緒に雇うが、父親はサボってばかり。息子の健気さとは対照的である。

ゲイリーは、ジョーの下で一生懸命働く。しかし、働いたお金は父親が暴力で奪い取り、酒代に消える。そんなある日、ゲイリー親子は、ジョーに恨みを持つ男と知り合う。ゲイリーは男を殴り倒すが、ジョーを恨む男はジョーを銃撃する。このあたり、その後のきな臭い展開を匂わせるところがある。

ジョーが毎日仕事場へ仲間を運ぶ車はボロボロであり、いつも仲間たちから「買い換えろ」と言われている。しかし、そんな車をゲイリーは欲しがる。そしてジョーに900ドルで譲ってもらう約束をし、懸命にお金を貯め始める。そんなゲイリーにジョーは目をかける。老人と少年との交流、そして車がそれに絡むとなると、なんとなくクリント・イーストウッドの『グラン・トリノ』を連想してしまう。事実、この映画は知ってか知らずしてか『グラン・トリノ』とかぶる部分が多い。

映画自体は、実に静かなストーリー。ノースリーブのシャツが南部の雰囲気を伝えてくれているような気がしてくる。そして飲んだくれのゲイリーの父親。なんと本物のホームレスだというが、本当にダメな飲んだくれの親父である。ゲイリーのやるせなさ。もう少し年齢を経れば、殴り返せる体力もついて負けないのであろうが、まだそこまではいかず、家族の中で唯一の働き手であるにもかかわらず、金を親父に取られてしまう・・・そんなやるせなさが、よく伝わってくる。

ニコラス・ケイジも本当に色々な役をやるものである。ここでは、クリント・イーストウッドに十分対抗していたと思う。何か夢があるでもなく、目的があるわけでもない。働いてはいるものの、家族がいない身では誰のために働くでもない。娼館で憂さを晴らすのがせいぜい。保安官の友人がいるから、飲酒運転など多少の目溢しは得られる程度。そんな男がゲイリーに目をかけたのは、自分の息子のような感情を持ったのかもしれない。

そんな愛情をかけられたゲイリーが、映画の後で果たしてどんな大人になっていくのか。ちょっと想像してみたくなってしまう映画である・・・


評価:★★☆☆☆






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