2017年12月18日

【タイムループ】

タイム・ループ 7回殺された男.jpg

原題: Inkarnacija
2016年 セルビア
監督: フィリプ・コバチェビッチ
出演: 
ストヤン・ジョルジェビッチ: 男
デルコ・ステパノフ: ドクター

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街中のベンチで男が目覚めるところから物語は始まる。男に記憶はなく、混乱状態にある。そこへ突如現れた白い仮面の男たち。囲まれた瞬間、男は仮面の男たちに射殺される。そしてまた、冒頭と同じシーン。前回射殺された記憶の残っている男は、今度はともかくその場を離れる。するとまた白い仮面の男たちが現れ追ってくる。逃げる男。しかし、逃亡空しくまたしても男は射殺される。

そしてまた冒頭のシーンに戻る。3回目となる男は、目覚めたあと街をさまよう。相変わらず記憶は戻らないものの、その脳裏に家族が殺され、残った少年に誰かが銃を突き付けている場面が過る。そしてまた仮面の男たちから逃げるも、こんどは途中で頭を打ち、病院に搬送される。自分の顔を確認する男。所持品は携帯電話とマッチ。そしてそこにも白い仮面の男たちが現れ、病院のスタッフともども射殺される・・・

『タイムループ』というタイトルにある通り、街中のベンチで男は毎回目覚め、そして
白い仮面の男たちに射殺される。観ている者からすると、その繰り返しは謎に満ちている。記憶をなくした男の正体は?なぜ追われて殺されるのか、白い仮面の男たちの正体は、そしてそもそもであるが、なぜ同じシーンが繰り返されるのか?これらの問いに、「なるほど!」という答えを用意できていたのなら、これはかなりの傑作映画になっていたことであろう。

射殺されてタイムループを繰り返すたびに、学習効果もあって男は毎回違う行動を取る。4回目では、見覚えのある建物に逃げ込み、自分の記憶を消したという医者と出会う。ベンチの下に括りつけられていた石を持ち歩くが、それは通りの石畳の敷石であり、そこに隠されていた「541」と書かれたメモを発見する。そしてまた男は白い仮面の男たちに射殺される。

タイムループモノはいろいろと映画も創られていると思うが、度重なる失敗から学び改善していくという意味では、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』と似通っている。ここでは男は謎の白い仮面たちに何回も射殺され、その経験を基に次第に生き残る時間が長くなり、そして失われた記憶の謎に迫まっていく。

そしてついに真相らしきものに行き当たるのであるが、白い仮面の男たちは最後まで謎のままであり、そして最大の謎である「なぜタイムループするのか」という疑問はスルーされてしまう。『オール・ユー・ニード・イズ・キル』では、その理由が説明されていたのと大きな違いである。これが何よりの不満点。

日本では珍しいセルビア映画。それが日本で観られるということは、本国やヨーロッパでは高い評価でもされたのかもしれないが、正直言ってそんなに面白いというほどでもない。謎はある程度解明してくれないと、共感することができなくなってしまう。最後まで謎めいていたのは意図的なのかそれともアイデアが思いつかなかったのか。最初は面白そうだと思っていたが、最後までそれが持たなかったのが残念と言える映画である・・・


評価:★★☆☆☆





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2017年12月15日

【バグダッド カフェ ニュー ディレクターズ カット版】

バグダッド・カフェ ニュー・ディレクターズ・カット版.jpg

原題: Out of Rosenheim、英題:Bagdad Café
1987年 西ドイツ
監督: パーシー・アドロン
出演: 
マリアンネ・ゼーゲブレヒト:ヤスミン
CCH・パウンダー:ブレンダ
ジャック・パランス:ルーディ
クリスティーネ・カウフマン:デビー
モニカ・カローン:フィリス

<シネマトゥデイ>
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アメリカ西部の砂漠のモーテルに集まる個性的な人々と、ドイツから来た旅行者の交流を描き、世界中に熱狂的なファンを生み出した傑作がニュー・ディレクターズ・カット版として復活。美しい映像とともに鮮烈な印象を残す主題歌「コーリング・ユー」はアカデミー賞最優秀主題歌賞にノミネートされ、多くの人々を魅了した。製作から20年、パーシー・アドロン監督自らが再編集、色と構図(トリミング)を新たに調整し直し、現代によみがえらせた不朽の名作をスクリーンで堪能したい。
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以前観たのであるが、内容を思い出せないという映画は結構あったりする。そういう映画は得てして「つまらなかった映画」である場合が大半なのであるが、中には名作の誉れの高いものもある。この映画はその代表とも言えるもの。以前からもう一度観たい映画のリストに入っていたのだが、今回鑑賞に至るもの。

砂漠に止めた車の中で、中年の夫婦が何やら争っている。腹を立てた妻は車を降りると大きなトランクを持って歩きだす。同じく腹を立てた夫は車で走り去る。照り付ける太陽の下、妻ヤスミンは砂漠の中の一本道をあてもなく歩き始める。『バグダッド・カフェ』と言えば、何といってもけだるいムードの主題歌「Calling You」であるが、歩くヤスミンのバックにそれが流れる。何とも言えない印象的なシーンである。

やがてヤスミンは、「バグダッド・カフェ」と看板を掲げたさびれたカフェに辿りつく。夫は途中引き返してヤスミンを探しに来たが、ヤスミンはこれを隠れてやり過ごしている。よほど腹を立てたのであろう。「バグダッド・カフェ」はガソリンスタンドとモーテルをも兼ねているが、働かない夫に妻ブレンダは口うるさい。やがて夫は出て行ってしまう。そんなところにやってきて「泊まりたい」と告げるヤスミンをブレンダは不審気に眺める。おそらく泊りに来る人などほとんどいないのであろう。

しかしそのモーテルは無人ではなく、ハリウッドで看板を描いていた男などが住んでいる。実はブレンダはケンカの際、誤って夫のカバンを持ってきてしまっている。男物の衣服の詰まったカバンを見つけたブレンダは保安官を呼ぶ始末。一方のヤスミンは、掃除をしていない部屋を見回すと、部屋の中に留まらず看板まで掃除したり、挙句にカフェを手伝い始める。さらに夫のカバンに入っていた手品セットを披露するなどして行くうちに、やがて訪れる長距離トラックのドライバーたちが集まり始め、寂れた「バグダッド・カフェ」にも次第に活気がでてくる……

こうして「バグダッド・カフェ」を舞台にしたドラマが展開されて行く。ピアノの練習をしていた息子は、それまでうるさがられていただけであったのに、ヤスミンはそれを褒めてくれる。ドライバーたちはヤスミン目当てに休憩に寄るようになる。看板を描いていた男はヤスミンをモデルにして絵を描き始める。気難しかったブレンダもやがて笑顔が日常的になって行く。ヤスミンは、美人でもなんでもない太ったおばさんなのに、である。

この映画の何がいいのかと問われると、正直わからない。ではつまらないかと言うとそうではない。ヤスミンを中心にして活気を取り戻して行く様子は見ていてしみじみとした味わいを残す。あえて言うならこの味わいこそがこの映画の魅力なのかもしれない。専門家や通の見方はまた違うのかもしれないが、そんなものわからない素人としては、観たまま感じたままがすべてである。そしてそんな深い味わいに、ジェヴェッタ・スティールの歌う「Calling You」が絶妙にブレンドされる。

映画も観るタイミングによって感じ方もいろいろなのかもしれない。若い頃観て何も感じなかった映画であっても、今観たらまた違う感じが得られるのかもしれない。そうだとしたら、この映画はその典型である。昔観て何も感じなかった「名画」と評判の高い映画をこれだから観ずにはいられない。折に触れ観ていきたいと改めて思う。
そんな気持ちにさせてくれる映画である・・・


評価:★★☆☆☆






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2017年12月02日

【カニバル】

カニバル.jpg

原題: Caníbal
2013年 スペイン・ルーマニア・ロシア・フランス
監督: マヌエル・マルティン・クエンカ
出演: 
アントニオ・デ・ラ・トーレ:カルロス
オリンピア・メリンテ:ニーナ/アレクサンドラ
アルフォンサ・ロッソ: アウロラ

<シネマトゥデイ>
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スペインの映画賞の最高峰であるゴヤ賞で、作品賞や監督賞など8部門にノミネートされた衝撃のロマンス。美しい女性たちを殺しては、その肉を食してきた殺人鬼の男が、ある女性に心を奪われたのを機に、その運命が大きく変わりだす。メガホンを取るのは、短編やドキュメンタリーでも活躍してきたマヌエル・マルティン・クエンカ。『アイム・ソー・エキサイテッド!』などのアントニオ・デ・ラ・トレが、仕立て屋と殺人鬼という二つの顔を持つ主人公を熱演。純愛と背徳が拮抗する物語に加え、美しい映像も見どころ。
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主人公のカルロスは、グラナダの旧市街で仕立て屋を営んでいる。カルロスには連続殺人鬼としての側面も持っていて、冒頭でカップルに目をつけるとその車の跡を追い事故を起こさせて女性のみを連れ去る。行先は山中にある人気のない山小屋で、そこに女性を運ぶと解体し、なんとその肉を自宅の冷蔵庫に持ち帰ってストックしている。そしてどうやらディナーでそれを優雅に食している。

そんなカルロスが住むアパートに、ルーマニアからきた美しいアレクサンドラと女性が暮らし始める。ある日、アレクサンドラが何やら口論の末、カルロスに助けを求めてくる。カルロスはアレクサンドラを車に乗せると、例の山小屋へと連れて行く。そしてアレクサンドラは「行方不明」となる・・・

物語はこれで終わらず、行方不明となったアレクサンドラを訪ねて双子の姉ニーナが訪ねてくる。ニーナはアレクサンドラが行方不明になったのは、両親の金を盗んで逃げたためと信じており、カルロスはそんなニーナを何かと手助けするようになる。そしてしまいにはアレクサンドラが持ち逃げしたという両親のお金を立て替えることまでする。殺人鬼もとうとうニーナに惹かれていった様子。そしてカルロスはニーナを山小屋に連れていく。

美しい女性を次々に殺害するという点では、『パフューム』を思い出した。『パフューム』は、匂いを求めて女性を殺害したが、ここで登場するカルロスは肉を食すため。人肉がうまいのかどうかはわからないが、冷蔵庫にみっちりと詰まった肉は本物ならグロテスクでしかないだろう。

カニバリズムを扱った映画であるが、グロテスクなシーンは皆無であり、内容の割にはスマートな映画である。しかしその反面、本当は世にも恐ろしい物語なのにそれが無味無臭になってしまっている感がある。連続殺人鬼モノとしては、『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』なんてのもあったが、やはりある程度の「不快さ」はあってもいいと思う。どうしても迫力不足を感じるところではある。

創り手にはいろいろな思い、考えがあると思うが、作品の受け手の受け取り方もまた十人十色。個人的には、この映画の無味無臭さがインパクトの弱さにしか感じられなかったというのが正直なところ。「この後どうなるのだろう」と想像させるラストは良かったかもしれないが、それ以外はイマイチだったとしたい映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2017年11月30日

【トラッシュ!−この街が輝く日まで−】

トラッシュ!−この街が輝く日まで−.jpg

原題: Trash
2014年 イギリス/ブラジル
監督: スティーヴン・ダルドリー
出演: 
リックソン・テベス:ラファエル
エデュアルド・ルイス:ガルド
ガブリエル・ウェインスタイン:ラット
マーティン・シーン:ジュリアード神父
ルーニー・マーラ:オリヴィア
バグネル・モーラ:ジョゼ・アンジェロ
セルトン・メロ:フェデリコ

<シネマトゥデイ>
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ゴミ山に暮らす3人の貧しい少年が、ある財布を拾ったことから絶望の街に奇跡を呼び起こしていくドラマ。監督は『リトル・ダンサー』『愛を読むひと』などのスティーヴン・ダルドリー、脚本を『ラブ・アクチュアリー』などロマコメの名手リチャード・カーティスが手掛ける。過酷な環境でたくましく生きる少年たちには、オーディションで選び出された無名の少年たちを起用し、名優マーティン・シーン、『ドラゴン・タトゥーの女』などのルーニー・マーラが脇を固める。
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以前、『シティ・オブ・ゴッド』や『シティ・オブ・メン』という映画を観て知ったブラジルの貧民街の事情。平和な我が国からは想像もつかなくて衝撃を受けたが、それ以来ブラジルを舞台にした映画に興味を持っているが、これはそんなブラジルの貧民街を舞台にした映画。

冒頭、アパートの自室で何やら秘密めいた鍵とメモを財布に入れる男。警官隊が到着すると男の部屋へと殺到する。いち早く気付いた男は逃げ出すが、追い詰められて逮捕される(そこで酷い暴行を加えられる)。しかしその直前、大事に持っていた財布を放り投げると、財布はゴミ収集車に落下しそのままいずこへと運び去られていく・・・

そんなゴミ収集車が到着するのは、いずこかにある広大なゴミの山。個人的にかつて訪れたことがあるフィリピンのスモーキーマウンテンを思い出す。ここも映画のセットというより、実際にあるのだろう。ゴミ収集車が次々とゴミを吐き出すと、近隣に住む住人たちが集まってきてゴミを漁る。これで生活をしているのだろうが、やっぱりすごい光景である。主人公の3人の少年ラファエル、ガルド、ラットもそんなゴミを漁る人々の一員。そしてラファエルは、男が捨てた財布を拾う。

実は、男は腐敗政治家の右腕であったが、ボスを裏切って裏帳簿とともに大金を盗み出していた。冒頭のメモと鍵はその隠し場所の文字通りカギとなるもの。腐敗政治家はその捜索を警察にやらせている。ここでは警察も正義の味方ではない。捕まった男も拷問の上、殺害されている。警官のフェデリコは陣頭指揮を取り、ゴミの山に集う人々に報酬を提示して財布を探させる。警察を信用しないラファエルは、わずかな報酬には目もくれず、何やら秘密めいた財布の謎を探ろうとする。

そんなゴミの山の村には、白人の牧師ジュリアードとアシスタントのオリヴィアがいる。オリヴィアは子供たちにボランティアで英語を教えている。この牧師とオリヴィアを演じるのが名優マーティン・シーンとルーニー・マーラ。なんでこの2人が出ているんだろうと思うが、他の俳優陣はすべて知らない俳優たちばかりなので、個人的にはインパクトが大きい。そんな神父とオリヴィアを巻き込んで、少年たちは財布に秘められた謎を探っていく。

それにしても社会の貧困・腐敗というものは、実に恐ろしい。ゴミを漁って生活する人々の姿はそれだけでも現代日本の我々にとっては衝撃的であるが、警察も簡単に不正になびき、人殺しも簡単にやってのける。悪徳警官フェデリコもラファエルを捕らえ、財布のありかを吐かせようと平気でいたぶり、あまつさえ殺害を指示する有様。少年たちも当然警察を信用しないし、大人に脅されるのは日常である中で、なんとか立ち回っている。ストーリーとは別に、そうした社会の様子が観ていて重くのしかかる。

そんな中で、ラファエルたちは財布に秘められた謎を一つ一つ解いていく。それはある意味推理モノ的な面白さもある。刑務所に住むじいさんに会うためオリヴィアに頼むなんて子供らしからぬ芸当を見せたりする。最後は明るいラストが待っていて、実に爽快である。そこに至る軽妙な展開と重い社会背景などが相まって、期待通りの満足感を得られた映画である・・・


評価:★★☆☆☆





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2017年11月17日

【ヒトラー最後の代理人】

ヒトラー最後の代理人.jpg

原題: The Interrogation
2016年 イスラエル
監督: エレズ・ペリー
出演: 
ロマナス・フアマン: ルドルフ・ヘス
マチ・マルチェウスキ: アルバート

<映画.com>
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第2次世界大戦中にアウシュビッツ強制収容所の所長を務め、終戦後に死刑に処された実在の人物ルドルフ・フェルディナント・ヘスの自叙伝をもとに描いた歴史ドラマ。ナチス・ドイツ敗戦後の1946年。アウシュビッツ強制収容所で最も長く所長を務めたルドルフ・ヘスは、ポーランドの刑務所で裁判にかけられるのを待っていた。ヘスの取り調べを担当する若き判事アルバートは、ヘスが持ち込んだシアン化合物系の殺虫剤ツィクロンBによって101万人もの人間が虐殺されたことなど、収容所で行われていた恐ろしい行為の数々を明らかにしていく。ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2017」上映作品。
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邦題を見ると、何やらヒトラーが出てきてその代理人として何かするようなイメージがある。しかし、原題の意味は『尋問』。その原題の通り、映画の内容は元アウシュビッツ強制収容所所長のルドルフ・ヘスに対する尋問である。ヒトラーはどこにも出てこない。例によって内容を無視した興味を煽るだけの目的の邦題がイメージをダウンさせてくれる。

舞台は1946年のポーランド、クラクフ。ソ連の捜査官アルバートは、ルドルフ・ヘスの尋問を命じられる。「完全な自白を取れ」との指示で、アルバートはヘスが収監されている刑務所へと向かう。取調室で対面するが、ヘスは沈思黙考。アルバートの尋問に対しても沈黙を守る。アルバートは録音機を止め、監視兵を退室させると内ポケットから結婚指輪を取り出し、ヘスに渡す。これを機に、ヘスは少しずつアルバートの質問に答えていく。

ヘスは、もともと農家であったが、ナチス親衛隊に入隊する。そしてヒトラーの側近ヒムラーから強制収容所での仕事を勧められ、ザクセンハウゼン強制収容所に勤める。そこでヘスは親衛隊の将軍アイケに会う。アイケはヒトラーの思想や命令に違反する者は、たとえ家族であっても許さないという男。やがてザクセンハウゼンからアウシュビッツへ異動になったヘスは、所長の地位に就き、古い建物を収容施設に変えることを命じられる。

そしてヘスは、ヒムラーにアウシュビッツ強制収容所に大量虐殺のための場所を建て、そこで虐殺の実行を命じられる。まずはソ連の政治将校が対象となり、はじめは銃殺だったものが、シアン化合物を使ったガスによる虐殺が始まる。ヘスはその全てに立会う。内心深く苦しみ、苦しみが大きい時は家族のもとに戻れなかったと語る。冒頭で渡された指輪が意味する通り、ヘスもまた家族の幸せを願う1人の夫であり、父親としての顔を持つ。

映画は、淡々とヘスの自白を追っていく。全体的に灰色の画面が、内容の暗さと相俟って観ているこちらまで暗い気持ちにさせてくれる。アルバートは、ヘスの話を聞きながらしばし苦悶する。泊っている部屋に女性を呼び込むが、それで癒しを得ていたのであろう。ユダヤ人の強制収容所にまつわる映画は数多く創られているが、あれこれ視点を変えて良く創られるものだと思う。スポットライトをどこに当てるかによって、その数には限りがない。

アウシュビッツ強制収容所の話と言ってもヒトラーもドイツ兵もユダヤ人の囚人も出てこない。唯一、ヘスと同じ囚人の1人が突然シャベルでヘスを殴りつけるところで囚人が出てくるが、その正体がユダヤ人なのかヘスと同じ戦争犯罪人なのかわからなかった。アルバートは思わずヘスを守って加害者をシャベルで殴るが、もしかしたらヘスに対する共感が生まれていたのかもしれない。そのアルバートは、ホテルの部屋で裸の女性と向き合うシーンが出てくるが、その意味も結局わからなかった。

心理描写が中心で、そこを観る者に訴えたかったのかもしれないが、わかりにくかったこともあって、どうも共感があまり湧いてこなかったのが正直なところ。眠気を催すことしばしばであった。こういう映画もあっても良いと思うが、もう少しわかりやすくしてくれた方がありがたかったところである。
そういう意味で、少し残念だったと言える映画である・・・


評価:★★☆☆☆





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