2017年05月13日

ニュー・シネマ・パラダイス 完全オリジナル版

ニュー・シネマ・パラダイス.jpg

原題: Nuovo Cinema Paradiso
1989年 イタリア・フランス
監督: ジュゼッペ・トルナトーレ
出演: 
フィリップ・ノワレ: アルフレード
サルヴァトーレ・カシオ: サルヴァトーレ・ディ・ヴィータ(少年期)
マルコ・レオナルディ: サルヴァトーレ・ディ・ヴィータ(青年期)
ジャック・ペラン: サルヴァトーレ・ディ・ヴィータ(中年期)
アニェーゼ・ナーノ: エレナ
アントネラ・アッティーリ: マリア(中年期)
レオポルド・トリエステ: 神父
エンツォ・カナヴェイル: スパッカフィーコ(パラダイス座支配人)
プペラ・マッジオ: マリア(壮年期)

<シネマトゥデイ>
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イタリアの名匠ジュゼッペ・トルナトーレによる、映画史に残る至高の名作。イタリアのシチリアを舞台に、少年と映写技師が映画を通して心を通わせていく様を、感動的な音楽と繊細な人物描写で描き出す。映画に魅了された少年トト役を、サルヴァトーレ・カシオが愛くるしい演技で演じきった。年齢を超えた友情や少年時代の夢など、世代や時代を超えた人々に愛される物語に、“映画の魔法”という名の感動が存分につまっている。
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 この映画は、以前観たことがあるのだが、『キネマの神様』で「人生最良の映画」とされていたこともあって、もう一度観てみたくなったもの。しかしよく考えてみると、以前観たのは「劇場公開版(123分)」であり、そのあと出た「完全オリジナル版(173分)」は観ていない。そう考えて、改めて観た次第。

 物語は、ある老婆が離れて暮らす息子に電話をかけるところから始まる。なんともう30年も故郷に戻ってきていないという。その息子サルヴァトーレは、ローマ在住の映画監督。サルヴァトーレは母からの伝言で「アルフレードが死んだ」ことを知り、少年時代のことを思い出す・・・

 サルヴァトーレが育ったのは、シチリア島の僻地の村。母と妹と戦争に行ったまま帰ってこない父がいる。「トト」と呼ばれているサルヴァトーレは、唯一の楽しみが村のたった一つの娯楽施設である映画館の映写室に出入りし、映写技師のアルフレードの仕事を見守ること。アルフレードに怒られてもめげずに通い、アルフレードが編集したフィルムの切れ端をこっそり拾っては持ち帰っては家で独りそれを眺めている。映画のワンシーンのセリフを言いながら・・・

 そしてアルフレードの手がける編集が面白い。村の神父が事前に一人試写を観て、キスシーンがあるとそこをカットさせる。当時の人たちが、ネットで無修正ポルノ見放題の現代に来たら何を思うであろうか。村の住人たちも実にのどかで、映画の世界に一喜一憂し、キスシーンがカットされると一斉にブーイングを浴びせる。映画をみんなで心から楽しんでいる様子が伝わってくる。映画に対する愛情がそこかしこに現れている。

 そんなある時、アルフレードは小学校の試験を受けに来る。似たような大人たちがトトら「現役の」小学生と一緒に試験を受ける。問題が解けないアルフレードは、トトにカンニングを頼み、トトは映写室への出入り許可を条件にこれに応じる。微笑ましいやり取りである。こうしていつしかトトはアルフレードに映写機の操作を教わるようになる。そしてある日、当時使われていた発火しやすいフィルムが発火し、消火しようとしたアルフレードは失明の重傷を負い、映画館は焼け落ちる。

 残念がる村人たちだが、サッカーくじを当てた男がその金で映画館を再建する。新しい映画館は「新パラダイス座(Nuovo Cinema Paradiso〜原題〜)」としてオープンする。そして火傷で失明したアルフレードに代わり、トトが映写技師として働くことになる。新館長は寛大でキスシーンのカットもなくなり、村人たちもキスシーンにやんやの喝さいを送る。幸せ感が画面から零れ落ちてくる。

 映画は一転してトトの青年時代へと移る。映写機を手にし、あたりを撮影するトト。そんなある日、駅で美少女エレナを見かけ、一瞬で恋に落ちる。恋に悩むトトにアルフレードは王女と兵士の物語を聞かせる。この話がまたストーリーと絡み合ってくる。意中の女性を口説こうと思っている男なら是非参考にすべきであろう。このトトとエレナのシーンが「完全版」で追加されたところのようで、だからだろう、昔観た時と映画の印象が違う。

 そしてこの追加が個人的には味わい深いものがあった。誰にでも忘れられない異性はいるだろう。そんな相手との思い出が切ないものであるなら尚更であるが、このトトの青年時代のエピソードは心に刺さる。
「あの時何があったのか」
時が経って真実がわかるということもあるだろう。似たような経験をしている人なら、ちょっと感じ入ってしまうところかもしれない。そして長い物語はラストシーンへとつながる。

 全体的に「ノスタルジー」という一言に包まれていると言っても良い映画。そしてこのノスタルジーこそが、年を経れば経るほどに心に響くものである。映画はハリウッドだけのものではないと改めて思わされる。劇場版しか観ていない人は、是非この完全版を観ておきたいところだろう。残念ながら、「人生最良」とまではいかないが、間違いなく「個人映画史」に入れたい一作である・・・


評価:★★★★☆






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2017年04月04日

ラスト・デイズ

ラスト・デイズ.jpg

原題: Los ultimos dias
2013年 スペイン
監督: デビッド・パストール/アレックス・パストール
出演: 
キム・グティエレス: マテオ
ホセ・コロナド: エリック
レティシア・ドレラ: フリオ

<シネマトゥデイ>
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『REC/レック3 ジェネシス』の製作総指揮、アルベルト・マリーニと、『フェーズ6』のダビ、アレックス・パストール兄弟監督がタッグを組んだパニックスリラー。人々が外に出られなくなるパンデミックで社会が崩壊した終末世界を舞台に、隔離生活を余儀なくされた男たちが暴徒や災害などさまざまな試練に襲われながら、命懸けで愛する人を捜すさまを描く。『ヒドゥン・フェイス』のキム・グティエレス、『悪人に平穏なし』のホセ・コロナドらが出演。
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 物語は、とあるオフィスビルの地下で何やら穴を掘る作業をする人々を描くところから始まる。配給制のような食事。そしてついに穴は地下鉄のトンネルまで開通する。主人公のマテオは、人事部のエリックが車から取り出したGPSを持っているのを目ざとく見つけ、協力を申し出る。そしてその申し出を受けるエリック。

 そこで一転して物語の舞台は少し前に戻る。そこは普通の秩序に溢れる社会。マテオはセキュリティ・プロトコルの責任として働いている。そこに現れたのは、最近新たに着任した人事部のエリック。エリックは会社から大幅な人員削減の命を受けており、社員の粗さがしをしては解雇の対象としていたが、マテオも目をつけられた様子であった。

 解雇を免れようと、連日必死で作業に没頭するマテオ。しかし自宅に帰ると、そこには内縁の妻・フリアがいて、フリアは子供を欲しがっている。解雇の危機に直面しているマテオには、とてもそんな余裕はなく、諍いになってしまう。何事もなければ、平穏な世界の平穏な日常の一コマである。

 そんな世界に破滅の危機が忍び寄る。最初は、半年も自室に引き籠っている少年が自殺の予告動画をネットにアップした後、自殺するというニュース。そしてあちこちで屋内に引き籠る人々の話が聞こえてくる。マテオのアパートの隣人も同様であり、驚いたことに社内でも長期に渡って自宅に帰らず、ずっと会社内で生活している者が発見される。そして強制的に社外へ出された途端、その人物はパニック症状に陥り死亡してしまう。

 こうして謎のパニック症が人々の間に広まり、ある日とうとう会社に出社したマテオも社内で発症してしまう。フリアと朝口論したこともあり、慌てて帰宅しようとするも会社から一歩も出られなくなっている。そうして冒頭のシーンとなり、それぞれ事情を抱えたマテオとエリックは、互いの対立を超え協力して家族の元へ向けてトンネル内へと足を踏み入れる・・・

 人類が崩壊の危機に瀕するというパニック映画は数多いが、これもその一つ。なぜか「外へ出られない」という設定がユニークである。原因も対策も何もわからない。これは「そういうものだ」と思って観る他ない。そうした世界では、しばしば秩序が崩壊する。食料の生産と流通もストップするから、食料を巡っての争いはそのまま殺し合い・生き残り闘争となる。そんな崩壊した街の地下をマテオとエリックはGPSを頼りに歩いていく。

 病気ならワクチンが開発されて終わるのだろうが、ここではそれが治る気配もない。真面目に考えていけば粗の目立つ映画であるが、そこは目を瞑る。どういう結末なのだろうと想像していたら、それは意外なものであった。まぁある程度希望を持たせないといけないし、それはそれでいいのかもしれない。ただ、よくまとまってはいるものの、面白いかと問われればどうだろう。難しいところである。

数多く映画が創られている中で、こういう作品もありだろうと思わされる映画である・・・


評価:★★☆☆☆





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2016年12月15日

パレス・ダウン

パレス・ダウン.jpg


原題: Taj Mahal
2015年 フランス
監督: ニコラ・サーダ
出演: 
ステイシー・マーティン: ルイーズ
ルイ=ド・ドゥ・ランクザン: ルイーズの父
ジーナ・マッキー: ルイーズの母
アルバ・ロルバケル: ジョバンナ

<映画.com>
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2008年11月にインドの都市ムンバイで195人の犠牲者を出した同時多発テロ事件を題材に描いたフランス製サスペンスドラマ。父の転勤でインドにやって来た18歳のルイーズは、新居が決まるまでの間、ムンバイの高級ホテル「タージマハル・ホテル」に両親と一緒に滞在することに。しかし両親の外出中にホテルがテロリストの襲撃を受けて占拠され、ルイーズはひとり客室に取り残されてしまう。外の世界との唯一のつながりである携帯電話で父親と連絡を取りながら、生き延びるべく奮闘するルイーズだったが……。主人公ルイーズ役に「ニンフォマニアック」のステイシー・マーティン。共演に『あの夏の子供たち』のルイ=ド・ドゥ・ランクザン、「ハングリー・ハーツ」のアルバ・ロルバケル。新宿シネマカリテの特集企画「カリコレ2016/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2016」(16年7月16日〜8月19日)上映作品。
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2008年11月。インドのムンバイにある親子がやってくる。父の仕事の関係であり、住居が決まるまでの間家族はタージマハル・ホテルに滞在することになる。主人公となるのは、一家の娘ルイーズ。写真が趣味で、暇に任せて市内の写真を撮っている。そしてある店で映画のDVDとともに格安の携帯電話を購入する。

そんなある晩、ルイーズの両親は夫婦で外出し、ルイーズは一人部屋に残ってDVD鑑賞をすることになる。仲良く出かけていく両親を見送るルイーズ。しかし、しばらくして異様な物音に気が付く。ホテルの係員もただ部屋に入ってくれと言うばかり。フロントに電話しても同様で、「部屋の電気を消し、静かにしていてほしい」と言われ、ルイーズは不安になる。

持っていた携帯で父親に電話したところ、テロ騒動だとわかる。「部屋で隠れていろ」という父親の指示に従い、バスルームで不安な一時を過ごすルイーズ。やがて銃声も大きくなり、階下から悲鳴も聞こえてくる。両親はホテルに戻ろうとするが、警察当局の道路封鎖と渋滞とでなかなかスムーズに動けない。やがてホテル内に大きな爆発音が響き、部屋のには炎が迫り、部屋の中は煙に包まれる・・・

言葉の通じない異国でのテロ騒動。何となく先日観た『クーデター』と似ているところがある。ただし、こちらの方は実話という強みがある。言葉の通じない相手というのは、それだけで恐怖感が増すものかもしれない。状況がわからないルイーズは、父とその友人とからの交互のアドバイスを聞いて部屋で隠れている。見つかったら殺されるかもしれないという恐怖は、『クーデター』と同じである。

『クーデター』と違うのは、騒動が起こっているのは、タージマハル・ホテルを含む一角であるというところで、その外側は治安当局がコントロールできているというところ。『クーデター』は周りがほとんど敵(あるいは味方かどうか不明)という部分。やはりそこは、ドラマの持つ面白さが勝つところである。

実話の持つ強みとはいえ、それほどドラマチックな展開はなく、最後はルイーズも救助される。それは意外なほどあっさりしていて、もっと波乱があると思っていたが、事実はそういうものなのだろう。そのあっさり感が、物足りなさとなったのは事実である。その点では、フィクションである『クーデター』と比べると、差のついてしまった一作である・・・


評価:★☆☆☆☆





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2016年11月13日

ミッション:アルティメット

ミッション・アルティメット.jpg

原題: Непобедимый 
2008年 ロシア
監督: オレグ・ポゴディン
出演: 
ウラジミール・エピファンチェフ:クレミュノフ
セルゲイ・アスタホフ: シェーリング
オルガ・ファディーヴァ: ナジェージダ
ヴラジーミル・スチェクロフ: リャミン将軍
ユーリィ・ソローミン: ロコトフ将軍

<ツタヤディスカス解説>
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敏腕諜報部員が“トランスポーター”としての任務に挑むスパイアクション。諜報部員・クレミュノフは、ある事件の容疑者・シェーリングの身柄確保と連行の任務を与えられる。武装集団の妨害を受けながらも、何とかシェーリングを確保する彼だったが…。
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ロシア版007ともいうのであろうか、ロシアの諜報員の活躍を描いたアクション映画である。ロシアの映画も数は少ないものの、割と秀作が多い。何となく期待して観た所以である。

主人公は、諜報員のクレミュノフ。国家反逆罪に問われているロシアの石油王を起訴する証人であるシェーリングを「確保」すべく、イタリアへ向かう。現地で仲間たちと合流するクレミュノフ。ところが別の武装グループの襲撃を受け、仲間は全滅。クレミュノフは次々と武装グループのメンバーを撃ち倒し、見事シェーリングを確保する。そしてここから本国への移送が始まる。

この冒頭のアクションがすごい。何やらスーツケースを持って登場したクレミュノフ。その防弾仕様のスーツケースを仲間の一人は笑う。しかし、突然武装勢力に囲まれ襲撃された時、このカバンが威力を発揮する。防弾のカバンを利用して弾を防ぎながら、クレミュノフは次々と正確な射撃で相手を撃ち倒していく。これまで見たことのないアクションが新鮮。

そして無事確保したターゲットを本国まで連行するのであるが、ここからまた試練山積。何せ運ぶのは生きた人間。非力であっても抵抗するので、気が抜けない。しかも応援を頼もうにも、組織の腐敗が隅々まで行きわたっており、下手に居場所を伝えれば逆に襲撃されかねない。ロシアならではのお家事情を逆手にとっている。さらにターゲットを抹殺しようとする勢力は容赦なく襲ってくる。

このロシアンスパイであるが、ジェームズ・ボンドともイーサン・ハントともジェイソン・ボーンともタイプが異なる。ターゲットを相手にしている間、愛用のスーツケースを盗まれるは、スーツケースを超人的な動きで取り返せばターゲットに逃げられるは、とちょっと間が抜けている。送り込まれてきた唯一の仲間ナージャには、裸で迫られ見事眠らされてしまう。得意なのはコンバットアクションだけのようである。

しかしながらナージャを交えてのコンバットアクションは、見応えがある。これだけでも一見の価値があると言える。このアクションが最後まで見せ場を彩るのであるから、なかなかどうしてやるではないかロシアという感じである。
思いがけないアクションにちょっと驚かされたロシア映画。シリーズ化されるなら続けて観てみたい映画である・・・


評価:★★☆☆☆




posted by HH at 20:30 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | その他の国の映画

サウルの息子

サウルの息子.jpg

原題: Saul fia
2015年 ハンガリー
監督: ネメシュ・ラースロー
出演: 
ルーリグ・ゲーザ:サウル
モルナール・レヴェンテ:アブラハム
ユルス・レチン:ビーダーマン
トッド・シャルモン:顎鬚の男
ジョテール・シャーンドル:ニスリ医師

<シネマトゥデイ>
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ハンガリー出身のネメシュ・ラースローがメガホンを取り、強制収容所に送り込まれたユダヤ人たちがたどる壮絶な宿命に迫る感動作。仲間たちの死体処理を請け負う主人公が、息子と思われる少年をユダヤ人としてきちんと葬るために収容所内を駆けずり回る2日間を活写する。主演を務めるのは詩や小説も手掛けるルーリグ・ゲーザ。第68回カンヌ国際映画祭にてグランプリに輝いた、ホロコーストの過酷な現実を描いた物語に言葉を失う。
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 物語の舞台は、1944年のアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所。悪名名高いナチスの強制収容所であるが、主人公はここでゾンダーコマンドの一員として働くユダヤ系ハンガリー人サウル。この映画を観るまで知らなかったのであるが、ゾンダーコマンドというのは、汚れ仕事を受け持つユダヤ人の囚人のこと。その日もサウルは、ゾンダーコマンドとしてガス室に送り込まれるユダヤ人を見届ける。

 サウルは無言でユダヤ人たちを見つめる。老若男女まとめて裸にされ、「シャワー室」へと入れられる。背景にはユダヤ人たち向けに嘘の放送が流されている。シャワー後についての説明であるが、実際にはシャワー後はない。やがてシャワー室からうめき声や絶叫が聞こえ、静かになる。終わった後のシャワー室の掃除がサウルたちの仕事。死体を運び出し、残った血を洗い流す。ドイツ人たちは(というより誰でも)絶対やりたくない仕事だが、それをやらされるのがゾンダーコマンドというわけである。

 ちなみに、このゾンダーコマンドもやがて「処分」される運命なのだという。汚れ仕事でも生き残るための「特権」であればまだしも、そうでもないのは実に残酷である。そして一人の少年がまだ息のあることがわかる。ドイツ人軍医がやってきて、診察するとすぐ息の根を止める。そしてユダヤ人医師に解剖を指示し、去っていく。一部始終を見ていたサウルは、密かにユダヤ人医師の元を訪ね、解剖はせずにラビを探して埋葬したいと申し出る。

 状況はと言えば、数限りなく次々と「生み出される」死体は片っ端から焼却炉に放り込まれ、焼いた灰は川へ捨てられている。とても葬儀などしている余裕はないし、ナチスがそれを許すはずもない。理由を問われたサウルは、「息子だ」と答える。何という悲劇なのであろう。そしてサウルは、何とかラビを見つけ、祈祷した上で埋葬しようと困難な状況下、監視の目を盗んで奮闘する。

 一方で、収容所内では何らかの反乱が計画されている。サウルも反乱計画への加担を求められるが、サウルの関心はラビを探すことにある。それにしても、やはり人間は窮地に追い込まれれば何でもするもの。ラビを探すサウルの様子に、ラビであると名乗ればとにかく助かるかもしれないと、ラビを名乗る人物が現れる。でも実際はラビではない。絶望的な環境下に置いて、息子の埋葬にこだわるサウル。それが、サウルが自分の意識を保ち、生き抜く力だったのかもしれない。

 強制収容所を舞台にした物語は数多く作られている。当然、人の数だけその物語は存在するわけだから、いろいろあっても不思議ではない。この映画は、ハンガリー系ユダヤ人の物語。ビジュアルはサウルの視線を意識して撮られている様子。そして時折アップされるサウルの表情。ラストで見せたサウルの表情が何とも言えない。
 言語は多分ハンガリー語なのだと思うが、聞いていてもかけらも理解できない。珍しいハンガリー映画であり、そしてインパクトのあるホロコースト映画である・・・


評価:★★☆☆☆





posted by HH at 09:24 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | その他の国の映画