2025年02月19日

【天使のくれた時間】My Cinema File 2970

天使のくれた時間.jpg

原題:The Family Man
2000年 アメリカ
監督: ブレット・ラトナー
出演
ニコラス・ケイジ:ジャック・キャンベル
ティア・レオーニ:ケイト・レイノルズ
ドン・チードル:キャッシュ・マネー
ジェレミー・ピヴェン:アーニー
ソウル・ルビネック:アラン・ミンツ
ジョセフ・ソマー:ピーター・ラシッター
マッケンジー・ヴェガ:アニー・キャンベル

<映画.com>
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多忙なビジネスマンが別の人生を生きることで愛の大切さを知るラヴ・メルヘン。監督は「ラッシュアワー」のブレット・ラトナー。脚本はデイヴィッド・ダイアモンドとデイヴィッド・ワイスマン。撮影は「ワンダー・ボーイズ」のダンテ・スピノッティ。音楽は『プルーフ・オブ・ライフ』のダニー・エルフマン。衣裳は『あの頃ペニー・レインと』のベッツィ・ハイマン。出演は「60セカンズ」のニコラス・ケイジ、「ディープ・インパクト」のティア・レオーニ、「ミッション・トゥ・マーズ」のドン・チードル、「ベリー・バッド・ウェディング」のジェレミー・ピヴェンほか。
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折に触れ、かつて観た映画を観直している。この映画はニコラス・ケイジの多作な出演作の中でも印象深い方に入る映画として記憶に残っている。

時に1987年、ジャックはロンドンにある銀行での研修へ向かうため恋人のケイトと空港に来ている。ジャックは金融の世界へ、ケイトは法律の世界へとそれぞれのキャリアを築くため、一時的に離れ離れになる別れを惜しんでいる。話し合って決めた結論なのに、直前になってケイトは「考え直して欲しい」とジャックを引き留める。されど一度決めた事だからとジャックは旅立っていく。

それから13年後、ニューヨークのウォール街で成功し大手投資会社の社長になったジャックは、優雅な独身生活を満喫している。自宅は豪華な高層マンションで、女性とも浮名を流している。どうやら、ケイトとは別れてしまったようである。成功の裏にあるのはハードワーク。クリスマス・イヴの夜にも幹部を招集し、2日後に控えた重要なM&Aについての会議をしていると、その間にケイトから連絡が入ったと秘書が報告する。あえて何もせずジャックは帰路に着く。

途中で立ち寄ったコンビニで黒人の青年キャッシュと店員とのトラブルに遭遇する。店員の理不尽な対応に激怒したキャッシュは銃を突きつけるが、ジャックが穏やかに交渉し事なきを得る。ジャックはキャッシュと話をするが、その会話の中で「僕はなんでも持ってる」と答えると、キャッシュは「これから何が起きてもあんたの責任だ」という不思議な言葉を残して去っていく。

翌朝、ジャックが目を覚ますと部屋の雰囲気が一転している事に気付く。隣にはかつて別れたはずのケイトが寝ており、2人の子供が「パパ!」と起こしにくる。わけがわからず、マンハッタンの高層マンションにある自分の部屋に戻るも、なぜか顔見知りだった警備員も理事仲間の知人もよそよそしい態度を取る。極めつけは、勤務先の投資会社に行くと社長の名前に自分の名前はなく、何もかもが変わっている。状況を理解できないジャックの前に現れたキャッシュは、「答えは自分で探せ」とだけ告げると姿を消してしまう。

ジャックは仕方なくケイトのいた家に戻るが、そこには自分の知らない自分の生活がある。時にクリスマスであり、2人で友人宅のパーティーに参加する。そこでも顔見知りの知人たちとの交流があるが、誰もが「投資会社に勤めているジャック」ではないジャックを前提に話をする。唯一娘のアニーだけが様子のおかしいジャックを「パパじゃない」と言う。どうやら父に変装した宇宙人だと思ったようである。

不可解なままジャックは新たな世界での生活を始める。弁護士のケイトはボランティアでの仕事が多く、タイヤの小売り店に務めるジャックはそれほど稼ぎがあるわけでもない。2人の子供を保育園に送り届け、仕事に向かう。そしてだんだんとその世界は、1987年にジャックが海外研修を中止し、戻ってケイトと結婚した世界であることが分かってくる。羽振りの良いかつての独身生活と庶民的でも家族に囲まれた生活。どちらがいいかは難しいところだが、ジャックは元の世界の栄光が忘れられない。

「今生きている人生とは別の人生があったかもしれない」という思いは誰もが抱くかもしれない。しかしそれはたいてい「今よりもいい人生」という事が多いと思う。しかし、ここでは主人公のジャックは今の生活に満足していて、ケイトや子供たちとの生活を望んでいないというところが一味違う。それは務めるタイヤ店に投資会社の会長が偶然やって来た時、ここぞとばかりに自分の能力を売り込むところに現れている。会長の興味を引く事はたやすい事であり、ジャックは難なくそれに成功する。

しかし、嫌々ながら続けていた「家族との生活」が次第にジャックの心に浸透していく。それまで気がつかなかったものに気付いていくジャック。やはり大切なものは金や社会的な地位ではないという事に気付くジャックの姿に、観る者は安堵する。ラストでジャックとケイトは空港のカフェで話をする。2人でどんな話をしたのだろうか。2人の幸せなその後を想像してみたくなる一作である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年11月09日

【ウォンカとチョコレート工場のはじまり】My Cinema File 2931

ウォンカとチョコレート工場のはじまり.jpg

原題: Wonka
2023年 アメリカ
監督: ポール・キング
出演: 
ティモシー・シャラメ:ウィリー・ウォンカ
ヒュー・グラント:ウンパルンパ
キャラー・レイン:ケイラ・レーン・ヌードル
キーガン=マイケル・キー:警察署長
パターソン・ジョセフ:スラグワース
マット・ルーカス:プロドノーズ
マシュー・ベイントン:フィクルグルーバー
サリー・ホーキンス:ウィリー・ウォンカの母
ローワン・アトキンソン:神父

<シネマトゥデイ>
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ロアルド・ダールの児童小説を映画化した『チャーリーとチョコレート工場』の前日譚。同作に登場する工場長ウィリー・ウォンカがチョコレート工場を作るまでを描く。監督・脚本は『パディントン』シリーズなどのポール・キング。若き日のウォンカを『君の名前で僕を呼んで』などのティモシー・シャラメが演じ、『ラブ・アクチュアリー』などのヒュー・グラント、オスカー女優オリヴィア・コールマン、『シェイプ・オブ・ウォーター』などのサリー・ホーキンス、『ビーン』シリーズなどのローワン・アトキンソンらが共演する。
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何となく既視感のあるタイトルだと思っていたが、映画『チャーリーとチョコレート工場』(My Cinema File 4)の前日譚だとは知らなかった。『チャーリーとチョコレート工場』(My Cinema File 4)では、世界一と称されるウィリー・ウォンカの不思議なチョコレート工場の物語であったが、この映画はその工場ができるまでを描くものである。

主人公のウィリー・ウォンカは、亡き母との約束である世界一のチョコレート店を開業するため、有名チョコ店が建ち並ぶ町「グルメ・ガレリア」へとやってくる。船で働きながらの旅の末、グルメ・ガレリアに到着する。しかし、働いて手にした手持ち金はたちまち底をついてしまう。凍えるような寒空の下、お金がなくて野宿をするウォンカに、ある男がとある宿を紹介してくれる。

親切心あふれる女将のミセス・スクラビットに「宿代は後払いで良い」と言われて感謝しつつその宿に泊ることにするウォンカ。しかし、何やら少女が密かに契約書を読めと合図する。膨大な契約文言が隠れているのにウォンカは気づくが、そのままサインして眠りにつく。次の日、ウォンカはアーケードのまん中でチョコを売り始める。それは何とも不思議なチョコで、食べた者は空中に浮かび上がる。たちまちウォンカの魔法のチョコは評判になる。

ところがそこに町の警察がやってくる。警察署長自らがやってきて、「この町は夢見ることを禁じている」と告げる。そしてウォンカのチョコと売上金を没収してしまう。ウォンカが宿に戻ると、今度は女将のミセス・スクラビットが宿代を請求してくる。ところが請求金額は本来の宿代のほかにさまざまなオプションがついて到底払えない金額になっている。そして「払えなら働いて返せ」とウォンカを地下部屋へと放り込む。

地下には、ウォンカと同じように宿主に騙されて働かされている人たちがいる。少女ヌードルもその一人。捨て子だったヌードルは、スクラビットに育てられていたが、そこで働かされていた。契約書を読めと合図してくれたヌードルは、ウォンカになぜ契約書にサインしたのかと問うも、じつはウォンカは文盲だったのである。そんな状況でもウォンカはチョコレート作りの夢を忘れておらず、亡くなった母の教えとともにグルメ・ガレリアでチョコレート店を開く夢を語る。

グルメ・ガレリアには、チョコレートの販売を独占する3人のチョコレート店主がいて「チョコレート組合」を結成している。警察署長をも買収し、街のチョコレート販売を牛耳っている。そんな3人にとって、美味しいチョコを作るウォンカは、大いなる脅威であり、3人はウォンカを亡き者にしようと悪だくみをする。一方、そんなある夜、ウォンカの部屋にチョコを盗もうと忍び込む小人が現れる。その名は「ウンパルンパ」と名乗るオレンジ色の肌の小さな紳士であった・・・

こうしてグルメ・ガレリアにチョコレート店をオープンするという夢に向けて動くウォンカを3人のチョコレート組合の男たちが妨害するという展開でストーリーは進む。夢に向けて動くウォンカは妨害にもめげずにチョコレート作りを行う。どんな味なのかは想像するしかないが、チョコレートという誰もが好むものだけに、観ているうちにチョコレートを食べたくなる。ウォンカが作るのは、いかにも不思議なチョコレート。食べると体が浮いてしまったりするものもある。

オレンジ色の肌の小さな紳士ウンパルンパの存在も不思議であるが、きっと子どもが観たら大喜びだろうと思う(たぶん観終わったらチョコレートを食べたがるだろう)。子どもでなくてもチョコレートを食べたくなる。『チャーリーとチョコレート工場』(My Cinema File 4)もそうであったが、ラストまでまるでディズニーランドで遊んでいるような気分で楽しめる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年11月02日

【天間荘の三姉妹】My Cinema File 2929

天間荘の三姉妹.jpg
 
2022年 日本
監督: 北村龍平
原作: 高橋ツトム
出演: 
のん:小川たまえ
門脇麦:天間かなえ
大島優子:天間のぞみ
高良健吾:魚堂一馬
山谷花純:芦沢優那
萩原利久:早乙女海斗
平山浩行:早乙女勝造
柳葉敏郎:魚堂源一
中村雅俊:宝来武
三田佳子:財前玲子
永瀬正敏:小川清志
寺島しのぶ:天間恵子
柴咲コウ:イズコ

<MOVIE WALKER PRESS解説>
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臨死状態となった魂が辿り着く天空と地上の間の温泉旅館を舞台に、「生きること」について描いたヒューマンストーリー。橋ツトムの漫画「天間荘の三姉妹−スカイハイ−」を『ルパン三世』の北村龍平が実写映画化した。『この世界の片隅に』ののん、『あの子は貴族』の門脇麦、『紙の月』の大島優子が天間荘の三姉妹を演じるほか、高良健吾、柳葉敏郎、寺島しのぶ、柴咲コウらが脇を固める
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地上と天界の間に存在する街「三ツ瀬」が物語の舞台。いわゆる死の世界と現世の中間という位置づけのようである。この死の世界と現世の中間というところは、いろいろなところで舞台として利用されているように思う。漫画の「死役所」もそうだったし、映画『パレード』(My Cinema File 2883)もそうであった。この映画では、「三ツ瀬」と呼ばれる中間世界にある旅館「天間荘」がタイトルの通り舞台となる。

とあるタクシーがこの天満荘に向かっている。乗っているのはマスクで顔を覆う(その理由はあとでわかる)運転手と謎の案内人イズコ、そして「客」である小川たまえ。たまえは死んでいるわけではなく、現世で交通事故に遭い、瀕死の重傷である。臨死状態にある者の魂がこの三ツ瀬に来ることができる。そして天満荘に滞在し、「現世に戻るか」「天界に旅立つか」を選択するのである。

天間荘に到着したたまえは、幼い頃に母親を失い、育ててくれた父親も行方不明になり地上では天涯孤独の身。それでも明るい性格で、天間荘の眼前に広がる海に素直に感動する。そしてイズコに旅館の若女将とその妹に紹介されるが、そこで驚きの事実を告げられる。なんと若女将ののぞみと、その妹かなえは、たまえの腹違いの姉妹だという。父親はのぞみとかなえの小さい頃に家を出てしまい、たまえの母と知り合ったという事である。それにしても、「のぞみ」「かなえ」「たまえ」とは、昔の欽ちゃんのコント番組の三姉妹のようである。

そんな理由もあって、のぞみとかなえの母親、大女将の天間恵子はたまえもその父の事も良く思っていない。そして「働かざる者食うべからず」とたまえに働くように言う。のぞみは反対するが、たまえは明るい性格でむしろ積極的に天間荘の従業員として働くことを望む。こうしてたまえは天間荘で働き始める。天満荘には他にも宿泊客がいる。それはのぞみも緊張するという財前玲子。

のぞみはさっそくたまえを連れて挨拶に行くが、財前は気難しい性格で、のぞみが持って行った生け花を酷評する。のぞみは財前に苦手意識を持っていることもあり、たまえに財前の担当を任せる。最初は気難しかった財前だが、明るく天真爛漫なたまえに次第に魅了され、徐々に心を開いていく。そんなある時、たまえは財前に「走馬灯」を見ようと提案する。それは文字通りこれまでの人生を振り返ることが出来るもの。

走馬灯でそれまでの人生を振り返った財前。結婚生活はうまくいかず、一人娘とは離れ離れになってしまう。やがて視力を失い、現世に戻る意欲もなく天満荘に長期滞在していたが、昏睡状態の自身の病室に娘と孫が寄り添っている事を知る。生き別れになっていた娘の姿を目にし、そして初めて孫の姿を見た財前の心に現世に戻る意欲が沸いてくる。そしてまた「天間荘」に新たな宿泊客が訪れる。それは芦沢優那という若い女性。優那は高校でいじめにあい、自殺未遂で臨死状態となっている。

そんな宿泊客とのエピソードを織り交ぜ、一方でたまえはかなえの職場である水族館に遊びに行き、誘われるままイルカのトレーナーの練習をするようになる。それにしても、なぜたまえの義姉妹が都合よく天間荘にいるのか疑問が生じてくる。天満荘だけではなく、三ツ瀬にはほかの住民もいる。その人たちはみんなあの世とこの世のはざまで暮らしているのか。それはまたなぜなのか。

かなえにはまた漁師の恋人がいる。なぜ恋人も一緒に三ツ瀬にいるのか。そんなに都合よく一緒に死んでいるのか。恋人には現世に残した父親がいる。一人息子を失った父親は一人寂しく暮らしている。そんな湧き上がる疑問に物語はちゃんとした答えを用意している。そしてタクシードライバーの正体も判明する。生と死の間の世界がほんとうにあるとしたら、そこで人は何をするのであろうか。

そんなところがあるとしたら、そこはきっと恐ろしい場所ではないように思える。慌ててあの世へ行かなくても、天間荘でちょっと憩いひと時を過ごすのもいいかもしれない。そんな事を考えながら映画を観ていた。家族を二度も捨てたたまえの父親の隠されていた悲しい事情。当然の流れとして、現世に戻ることを決意するたまえ。亡くなった人たちの想い。この手の物語はやはり心を揺さぶるものがある。

原作もそのうち読んでみたいと思わされる。主演ののんのどこまでも明るいキャラクターも物語に彩りを添える映画である・・・


評価:★★★☆☆







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2024年07月27日

【パレード】My Cinema File 2883

パレード.jpg
 
2024年 日本
監督: 藤井道人
出演: 
長澤まさみ:美奈子
坂口健太郎:アキラ
横浜流星:勝利
森七菜:ナナ
黒島結菜:大城麻衣子
中島歩:佐々木博
若林拓也:古賀充
北村有起哉:神田
深川麻衣:みずき

<シネマトゥデイ>
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この世から旅立った人々の視線で、残された者たちへの思いをつづるヒューマンドラマ。ある女性が、はぐれてしまった一人息子を捜すうちにさまざまな人々と出会い、自分がすでに死んでいることを知る。監督などを務めるのは『最後まで行く』などの藤井道人。『MOTHER マザー』などの長澤まさみ、『サイド バイ サイド 隣にいる人』などの坂口健太郎、『ヴィレッジ』などの横浜流星のほか、黒島結菜、田中哲司、寺島しのぶ、リリー・フランキーらがキャストに名を連ねる。
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東日本大震災と思われる津波に襲われ、波打ち際に倒れていた美奈子が眼を覚ます。周りは瓦礫の山で、1人息子の良の名を呼びながら美奈子はあてどなくさまよう。救助隊が慌ただしく作業をしているが、美奈子が話しかけても誰も返事をしない。避難所となっている体育館に行き着いたところ、知り合いを見つけて話しかける。しかし、答えてはくれず、美奈子が触ろうとしても触れない。美奈子は、途方に暮れてしまう・・・

そこに、ある男が車で通りかかり、美奈子に「危ないですよ」と声を掛ける。それまで誰からも相手にされなかった美奈子は、慌ててその男の元に駆け寄って、なぜか周りの人が話してくれない、触れる事も出来ないと話す。男は「僕らの所へ行きましょう」と言って、美奈子を車に乗せる。着いた場所は、遊園地のような場所。そこには数人の男女がいてくつろいでいる。たじろぐ美奈子に、その場にいた男は、自分たちはすでに死んでおりやり残した事があって先には行けていないと教える。

話によると、全国各地にこのような場所があって、死んで現世に未練がある人たちが集まっているという。そこにいるのは、小説家のアキラ、ヤクザの勝利、映画プロデューサーのマイケル、スナックのママのかおりと銀行員の田中という面々。事情がわかった美奈子だが、遊んでいるようにしか見えない面々を見てイライラする。アキラは、そんな美奈子を夜の街に連れ出す。そこには各地から続々と集まる人々が歩いている。アキラは「月に一度、新月の夜にこうして集まって会いたかった人を探すのだと教える。

それは月に一度のパレード。落ち着きを取り戻した美奈子は、やっと現実を受け入れ、ここに残って良を探す事を決意する。遊園地にいるメンバーにもそれぞれの人生があった。ヤクザの勝利は数年前、抗争で撃たれて死んでいる。しかし、彼は遺して来た彼女が気がかりである。七回忌に自分の墓へ行くと、組長が組を畳む事にしたと報告している。そして近くに花を持った彼女・みずきがいるのを見つける。勝利は、みずきを追いかけて家に行くと、そこには新しい彼氏がいる。優しそうな彼氏と結婚することを知り、そして満足した勝利は成仏して行く。

かおりは、遺して来た子どもたちが気がかりで、長年見守っている。母亡き後も、協力しあって逞しく生きる子どもたち。そして長女に子どもが出来たのを見届け、満足する。同じように、酪農家の家に生まれたアキラは若くして病を患い、人生の大半を闘病に費やす。厳格だった父親は、アキラの代わりに慣れない小説を書き始めている。やがて遊園地にまた1人、セーラー服の女の子が辿り着く・・・

「パレード」というタイトルからは一見かけ離れたストーリー。この世に思いを残して死んだ主人公が、同じような死者達と一時を過ごす。美奈子は地元紙の記者だったが、同僚はみな自分の身を案じてくれつつ、日々の仕事に追われている。そしてようやく最愛の息子が生きていることを知るが、声をかけてやる事もできない。母親としては、息子の生存を喜びつつ、それでもまだ7歳と幼い我が子に胸を痛める。

人は死んだら何もなくなり無に返ると理性ではわかっているが、それでもこんな事があってもいいなと思ってしまう。人はなかなか思い残す事なく死ねるという事はないようにも思う。マイケルも若い頃の後悔を抱えている。そして美奈子も思いを遂げるが、それはどこか「ここまででいい」という思いのような気がする。そして映画は意外な結末を迎える。それは観る者の心をちょっと温めてくれる。人間は死んだら何も残らないと理性的に思うより、この映画のようにワンクッションあるのだと思うと幸せな気分になる。

映画のラストに英語で「マイケルに捧ぐ」と出てくる。なんだか実話のように思えた映画である・・・


評価:★★★☆☆









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2024年01月03日

【ほんとうのピノッキオ】My Cinema File 2793

ほんとうのピノッキオ.jpeg

原題: Pinocchio
2019年 イタリア
監督: マッテオ・ガローネ
出演: 
フェデリコ・エラピ:ピノッキオ
ロベルト・ベニーニ:ジェペット
ジジ・プロイエッティ:人形劇一座の親方
ロッコ・パパレオ:ガット/ネコ
マッシモ・チェッケリーニ:ヴォルペ/キツネ
マリーヌ・ヴァクト:ファータ/妖精
アリーダ・バルダリ・カラブリア:幼少期のファータ
マリア・ピア・ティモ:ルマーカ/カタツムリ
マッシミリアーノ・ガッロ:コルヴォ/カラス
ジャンフランコ・ガッロ:チヴェッタ/フクロウ
ダヴィデ・マロッタ:グリッロ/おしゃべりコオロギ
テコ・セリオ:裁判官
アレッシオ・ディ・ドメニカントーニオ:ルチーニョロ

<シネマトゥデイ>
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カルロ・コロディが執筆したイタリアの児童文学「ピノッキオの冒険」を実写映画化したダークファンタジー。父親であるジェペットじいさんの家を飛び出しておとぎの森へと誘われたピノッキオが、不思議な生き物たちに遭遇しながら冒険を繰り広げる。監督と共同脚本を手掛けるのは『ドッグマン』などのマッテオ・ガローネ。ピノッキオ役のフェデリコ・エラピをはじめ、『ライフ・イズ・ビューティフル』などのロベルト・ベニーニ、『17歳』などのマリーヌ・ヴァクトらが出演する。
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ピノキオと言えば、子供の頃に親しんだ童話であるが、それが改めて実写映画化されたのが本作。しかも母国イタリアで製作となれば、ストーリーがどうという事ではなく、「どんな風に映像化されているのか」という興味から観てみようと鑑賞に至る。

木工職人のジェペットは、貧しい暮らしで日々の食事もままならないほど困窮している。食堂へ行くものの、お金がないので、やれこの椅子はガタがきているから直してやろうとか、椅子が大丈夫なら机が傾いているから直してやろうと店主に持ち掛ける。事情を察した店主が食事をさせてくれる有様。

そんなある日、町に人形劇の一団がやってくる。興味を持ったジェペットが馬車の中を覗きこむと、人形がズラリと並んでいる。これを造れば売れると考えたのか、ジェペットは人形を造ろうと決める。一方で、木工屋のサクランボ親方は、仕事をしようとした時、1本の丸太がひとりでに動いたために腰を抜かすほど驚く。そこへタイミングよくやってきたジェペットに「木が欲しい」と言われ、一も二もなくこの木をタダで渡す。

何も知らぬジェペットは、質の良いものが手に入ったと大喜びして、早速人形造りに取り掛かる。不思議なことに、造り始めてまもなく丸太から心臓の鼓動が聞こえる。不思議に思うも、ジェペットはそのまま人形を完成させる。そして、「パパだよ。パパと言ってごらん」と話し掛ける。人形に話しかけるのはよくある事。しかし、その人形が「パパ」と返事するのは普通ではない。喜んだジェペットは、人形にピノッキオと名付ける。

ピノッキオはすぐに歩き、一目散に外へ走り出してしまう。ジェペットが慌てて後を追うが見つからない。探し疲れ果てたジェペットが家に帰ると、暖炉に足を突っ込み、足を燃やしてしまったピノッキオが動けなくなっている。子供から目が離せないのは同じである。そしてコオロギが現れ、ピノッキオに忠告するも耳を貸さず、父の言いつけも守れない。ピノッキオのためにジェペットが着ている服を売って教科書を買い、学校へ連れて行くも、いつの間にか抜け出して人形劇を見に行ってしまう。

人形劇を見に行ったピノッキオだが、座長の目に留まり、操り糸がついていないのに動いていることに目をつけられ、そのまま一座と共に連れて行かれる。さすがに帰りたいと訴えるピノッキオに、座長も金貨5枚を手渡して解放してくれる。ところが、帰りの道中、1人で歩いていたピノッキオは、キツネとネコとに出会う。ピノッキオが金貨5枚を所持していることを知ったキツネとネコは「金貨を埋めて増やそう」と持ち掛ける・・・

こうしてピノッキオの冒険は進んでいく。ピノッキオはジェペットの言いつけも守らず、コオロギの忠告も聞かず、キツネとネコに騙され金貨を奪われる。運よく妖精に助けられ、「人間になるにはいい子になることが前提」と告げられる。ウソをつけば鼻が伸びてしまうのもおなじみ。見ている子供は、自然とウソをつくのが悪いことであり、いい子にしないといけないと思うようになる。実に教育的指導が行き届いた物語である。

やがて言うことをきかなかったピノッキオの性格に変化が現れ、妖精の下できちんと学校に通って勉強し、友達もできる。紆余曲折を経てジェペットと再会し、これを助けてめでたく人間になれるというおなじみのストーリーである。実写版のピノッキオは、木目の入った顔立ちで、なかなか人間っポイ人形である。途中の「冒険」を通じた成長は微笑ましいものがある。むしろ最初から素直であるよりも人間の子供になれた喜びは大きいのかもしれない。

オリジナルの作品は19世紀末のもの。100年以上の長期にわたり親しまれ、こうして映画化もされるという事は、それだけ作品の持つ人の心に残るものがあるという事である。実際、児童文学と言えども、大人でも十分楽しめるものがあるし、最後に人間になれたピノッキオの姿に目が細む思いがする。子供向けのお話を実写版というスケールで大人向けにした、誰もが楽しめる一作である・・・


評価:★★☆☆☆








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