
原題: 花椒之味 Fagara
2019年 香港
監督: ヘイワード・マック
出演:
サミー・チェン:ユーシュー
メーガン・ライ:ルージー
リ・シャオフェン:ルーグオ
リウ・ルイチー:ジャン・ヤーリン
ウー・イエンシュー:リウ・ファン
リッチー・レン:チョイ・ホーサン
ケニー・ビー:ハー・リョン
アンディ・ラウ:クォック・ティンヤン
<MOVIE WALKER PRESS解説>
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父が遺した火鍋店を継ぎ、秘伝のスープを再現する過程を通して、香港、台北、重慶と別々の土地で育った三姉妹が、家族の温かさに触れて、自分自身と向き合う癒しと成長の物語。プロデューサーは2020年にヴェネチア国際映画祭で生涯功労賞を受賞したアン・ホイ。父親の死によって初めてお互いの存在を知った三姉妹には、真面目な性格のハー・ユーシュー(夏如樹)役に香港のトップスター、サミー・チェン、プロのビリヤード選手でボーイッシュな次女オウヤン・ルージー(欧陽如枝[知])役に台湾の女優メーガン・ライ、ネットショップのオーナーの三女シア・ルーグオ(夏如果)役に中国の女優リー・シャオフォンが選ばれた。脚本・監督は「烈日当空(原題)」のヘイワード・マック(麥曦茵)。また、豪華俳優たちが香港・台湾・中国から集結。ユーシューが心を開く麻酔医チョイ・ホーサン(蔡浩山)にリッチー・レン(任賢齊)、元婚約者クォック・ティンヤン(郭天恩)にアンディ・ラウ(劉コ華)、ルージーの母親ジャン・ヤーリン(張雅玲)役に台湾のベテラン、リウ・ルイチー(劉瑞h)、ルーグオの祖母リウ・ファン(劉芳)役に中国国家一級俳優のウー・イエンシュー(吳彥姝)、ふらふらして頼りないが愛情あふれる父親ハー・リョン(夏亮)役に歌手・俳優のケニー・ビー(鍾鎮濤)など。この映画の「花椒の味」とは何か。三姉妹の名前に込められた「祈り」が心に沁みわたる。
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香港の旅行代理店で働くユーシューのもとに、疎遠だった父が倒れたとの報せが入ったところから物語は始まる。すぐに病院に駆け付けたユーシューだが、父は既に亡くなったあとであった。久しぶりに父リョンの火鍋店「一家火鍋」へ行き、遺品の携帯を見ていると、自分とよく似た名前があるのに気づく。葬儀の日、携帯で見た名前のルージーが台北から、そしてオレンジに髪を染めたルーグオが重慶からそれぞれ出席する。実は3人はそれまでお互いの存在を知らなかったが、異母姉妹であるとわかる。
変わった葬儀だと思って観ていたが、実はそれは道教の葬儀だと説明される。部屋の中にもかかわらず火を焚いて炎の周りを舞ったり、副葬品を燃やしたりする儀式などが興味深い。しかし、父の宗教は仏教だったと教えられる。そのあたりも含めて父とユーシューの間柄が疎遠だったことをうかがわせる描写である。それもそのはず、父はユーシューが小さい頃、他に女を作って家を出ていたのである。その女の娘がルージーで、実はそのあとにも女がいて、ルーグオが生まれたのである。
ちょっと考えると複雑な関係の3姉妹である。長女のユーシューには父が出て行ったあとの母との生活の記憶がある。亡くなる直前、病気の母の下に戻ってきた父であるが、そんな父に反発する気持ちが心のどこかにある。次女のルージーは、母が再婚し、また別の家庭があってそこに居心地の悪さを感じている。実母との会話もいつもぎこちない。三女のルーグオは、母親が再婚でカナダに行く時、おばと呼べと言われてカナダへ行かずに祖母との同居を選んでいる。3姉妹それぞれが家族との間で人間関係のもつれを抱えている。
あとに残された火鍋店。契約期限は1年残っているが、父は料理を自分でやっていて、その下で働いていた店員は肝心な料理ができない。ユーシューはいったんは店舗を売却しようとするが、長年働いてきた店の再開を切望する従業員の思いを受け、また亡き父に対しそこかしこに残るものから伝わってくるものがあり、火鍋店を継ぐ決意をする。とはいえ、慣れない客商売にユーシューは自転車操業で店の切り盛りに追われる。そんな時、次女と三女が火鍋店に現われ手伝いを申し出る・・・
こうして始まった3姉妹の奮闘記。ルージーとルーグルもまた家庭に居場所を見いだせないという事情もある。父の死によって初めて会った姉妹だが、父の残した火鍋店が姉妹の新たな居場所になっていく。父親がいったいどういう死因で亡くなったのかは描かれていない。しかし、その死は急だったようで、それは店の後継が何も決まっていないことに現れている。店を再開したのはいいが、肝心の火鍋の味が出せない。客からも味が変わったと言われてしまったりする。
それでも3姉妹が仲良く協力しあって店を切り盛りする様子は見ていて心地良い。もしも天国があって父親がこの様子を見たら、きっと驚き、そして目を細めるに違いない。3姉妹それぞれが個人的には悩みを抱えている。世の中なかなか思う通りにはいかないもの。それでも3姉妹がそろったことで、それなりの道を見出していく様子が見ていて心地良い。亡き父親も随所で笑顔で登場するが、そもそも女癖が悪かったところは映画では不問に付される。そこを突っ込むと3姉妹の物語が霞んでしまう。
父を亡くした3姉妹の物語というと、なんとなく『海街diary』(My Cinema File 1737)を連想してしまう(こちらは4姉妹だけど)。女だけの姉妹というのも独特の関係性があるように思う。長女、次女、三女とそれぞれに性格が違い、それぞれの生き方がある。姉妹がそれぞれ香港、台北、重慶と3つの地域出身というのも面白い。中国が台湾も中国だとみなしているのかと勘ぐってしまうが、それはそれとして、それぞれ違った地域(香港、台湾、本土)というのも含みがあるのかもしれない。
香港映画ではあまりお目にかからないように思える味わい深い人間ドラマである・・・
評価:★★★☆☆





