2024年11月14日

【銀の匙 Silver Spoon】My Cinema File 2933

銀の匙 Silver Spoon.jpeg
 
2014年 日本
監督: 吉田恵輔
出演: 
中島健人:八軒勇吾
広瀬アリス:御影アキ
市川知宏:駒場一郎
黒木華:南九条あやめ
上島竜兵:校長
吹石一恵:富士先生
西田尚美:駒場の母
親吹越満:八軒の父
哀川翔:アキの叔父
竹内力:アキの父
石橋蓮司:アキの祖父
中村獅童:中島先生

<シネマトゥデイ>
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週刊少年サンデーで連載され人気を博しテレビアニメ化もされた荒川弘のコミックを、『麦子さんと』などの吉田恵輔監督が実写映画化した青春ドラマ。北海道の農業高校に入学した主人公が、酪農実習や部活に苦悩しながらも仲間たちと絆を深め、農業をめぐる理想と現実のはざまで葛藤しつつ命の大切さを学んでいく。主演は、アイドルグループSexy Zoneの中島健人。共演には広瀬アリス、市川知宏、黒木華、中村獅童など多彩なキャストがそろう。
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八軒勇吾は厳しい父親の教育方針により学業に注力し進学校に進学したものの、その高いレベルについていけず、学力は伸び悩む。そんな八軒に対して父親は冷たい態度で臨む。限界を悟った八軒は、高校の進学先として北海道にある農業高校を選ぶ。そこを選んだのは、全寮制であるため家から出られるというもの。父親の落胆を押し切って農業高校に進学する。

しかし、八軒はさっそく新たな現実に直面する。農業高校に進学する生徒は、殆どが家が農家という学生ばかり。将来は家業を継ぐという明確な目標があり、ただ逃げてきた八軒とはそもそもの心構えが違う。将来の夢をしっかり持っている同級生に対して、八軒だけが何もない。学力では勝るものの、次第に劣等感を抱くようになっていく。

しかし、クラスメートは進学校で一緒だったクラスメート達とは異なり、温かいのが八軒には救いとなる。朝も早くから家畜の世話をし、慣れない農作業に八軒の学園生活は想像以上に大変なものとなる。そんな中でも美人の同級生の御影アキに誘われて馬術部に入る。そしてあっという間に夏休みがやってくる。

しかし、八軒にとって夏休みに実家に戻るという選択肢はなく、夏休みをどう過ごそうかと悩む八軒に、御影アキが声を掛ける。アキの家で夏の間アルバイトをしないかというもの。アキに心惹かれる八軒は、二つ返事で引き受ける。しかし、仕事は当然ながら楽ではない。隣に届け物をしてくれと頼まれて飛び出すが、隣の家まで何キロもある。真面目に必死になって一つ一つの仕事に取り組む・・・

進学校に通っていた主人公が、ドロップアウトし、とにかく家を出たいという理由だけで全寮制の高校に逃げ込む。しかし、そこにはそこでの厳しい現実がある。生き物を相手にする仕事に休みはなく、世話も怠れない。それでも懸命に取り組む主人公の姿は観ている者に共感を呼ぶ。泊まり込みのアルバイトでは、搾乳の栓を締め忘れて大量の牛乳を無駄にしてしまう。さすがに給料は受け取れないという八軒に対して、御影の家族は温かい。随所で心を刺激してくれる。

さらにクラスメートの家が営む農場が潰れてしまうという事件が起こる。厳しい農家の経営も背景に描かれる。せっかく育てても、育てた家畜はいずれ屠殺して食料となる。家畜に思い入れがあるとそれが辛くなる。主人公はとある豚に名前をつけて世話をするが、「その日」がやってくる。そこでの主人公の行動はなかなか心温まるものである。

農家はみな家族総出で働いており、家族で働く姿は美しくもあり、厳しい現実でもある。クライマックスは、北海道で行われているばんえい競馬。馬の障害物競争であるが、クラスメートのために一肌脱ごうと八軒は奮闘する。何となくコメディの類かと思っていたが、いわば親が敷いた路線から逃げてきた主人公が、自分の生きる道を見つけていく物語であり、いつのまにか心動かされる展開である。

主人公の成長に心が温かくなり、予想外に面白かったと素直に言える映画である・・・


評価:★★★☆☆








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2024年10月04日

【ハロー!純一】My Cinema File 2919

ハロー純一.jpg


2014年 日本
監督: 石井克人 吉岡篤史 川口花乃子
出演: 
満島ひかり:アンナ先生
加部亜門:純一
康太:中山大嶋
芽奈:前田さん
森下能幸:アチキタ先生
森岡龍:タカオさん
我修院達也:おじいちゃん
池脇千鶴:倉本のお母さん
津田寛治:店員

<映画.com>
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「スマグラー おまえの未来を運べ」「鮫肌男と桃尻女」の石井克人監督が、個性豊かな小学生の子どもたちを主人公に描いたラブコメディ。個性的な6人の仲間たちといつも一緒にいる内気な少年・純一は、優等生の前田さんに片思い中。そんなある日、彼らのクラスに教育実習のアンナ先生がやって来る。巻き髪にミニスカート、ピンヒールという派手な姿で授業中も無駄話ばかりのアンナ先生に振り回されながらも、次第に打ち解けていく子どもたち。やがて彼らは、仲間の1人である倉本のため、あるイベントを決行するべく立ちあがる。アンナ先生役に『愛のむきだし』「夏の終り」の満島ひかり。
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満島ひかり主演というだけで観る事にしたこの映画であるが、実は小学生を中心としたコメディである。

 物語の中心となるのは6人の小学生。その中心はタイトルにある通り純一。仲の良い同級生たちと池のほとりで遊んでいる時、純一が青い携帯電話を拾う。みんなまだ携帯など持っていない。ふざけて携帯を投げ合っていて、受け取りそこねて携帯を池の中に落としてしまう。そこにタイミング悪く落とし主の青年・タカオがやってくる。水に浸かって壊れた携帯を握っていたのは純一。みんなで「ごめんなさい」と頭を下げる。何となくほのぼの感漂うイントロである。

 純一は密かにクラスメートの前田さんに恋心を抱いている。1か月前に前田さんからうさぎさんの消しゴムを借りたものの、返せないままになっている。実に小学生らしい行動である。そんな純一たちのクラスに教育実習生のアンナ先生が来ることになる。若くて美人のアンナ先生にクラスはざわめく。小学生でなくてもざわめくだろう。ミニスカートにピンヒールの女子大生である。

純一たちの担任で独身のアチキタ先生も心がざわめく。ところが、アチキタ先生が所用でいなくなり、アンナ先生の算数の授業になるが、しおらしい態度は一変、話はいつしか前夜にナンパされた話になる。そしてその翌日、アンナ先生のスポーツカーに釘で落書きされるという事件が発生する。誰が、なぜという疑問が湧く。激怒したアンナ先生は、待ち伏せして犯人が再び現れるのを待つ・・・

ストーリーの展開がどうにも小学生向けの感が否めない。実際その通りなのかもしれない。コメディではあるものの、オーバーアクションや下手なドタバタ劇は小学生向けのドラマの感がある。そのため、オトナには、ちょっときついところがある。本性を表したアンナ先生は喫煙所で一服するが、そこに居合わせてしまった純一から大事な消しゴムを取り上げてしまう。さらに仲良し組のクラモトがスーパーでバンドエイドを万引きして捕まってしまう・・・

クラモトの両親は父親のギャンブル癖が原因で夫婦喧嘩が耐えない。困窮する家計費を補うべく、パートで働く母の手は荒れ、せめて誕生日にバンドエイドをプレゼントしたいと小学生のクラモトは思う。そんなクラモトのため、純一たち仲良し組は母親へのプレゼントを考える。そして冒頭で携帯を壊してしまったタカオに頼み、楽器を借りて演奏することを思いつく・・・

こうしてほのぼのとした展開が続く。やはり小学生向けのドラマであり、観続けるのも厳しいものがある。タイトルは、純一の家の前をたびたび自転車で通る黒人とギャルのカップルから純一が「ハロー」と声を掛けられるところからきている。だからなんだという事もないが、満島ひかりの孤軍奮闘空しく、子供番組を観ている感が否めない。満島ひかりというだけで観る事にした己を少し反省した映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年09月17日

【タレンタイム 優しい歌】My Cinema File 2910

タレンタイム優しい嘘.jpg
原題: Talentime
2009年 マレーシア
監督: ヤスミン・アフマド
出演: 
パメラ・チョン:ムルー
マヘシュ・ジュガル・キショール:マヘシュ
モハマド・シャフィー・ナスウィップ:ハフィズ
ハワード・ホン・カーホウ:カーホウ
アディバ・ヌール

<MOVIE WALKER PRESS解説>
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2009年に亡くなったマレーシアの女性監督ヤスミン・アフマドの遺作を、製作から8年を経て劇場公開。ピアノの上手な女子学生、二胡を演奏する優等生など高校生たちが、宗教や民族の違いによる葛藤を抱えながら、音楽コンクール“タレンタイム”を目指す。ドビュッシーの『月の光』、バッハの『ゴールドベルク変奏曲』などのクラシックに加え、マレーシアの人気アーティスト、ピート・テオが作曲したオリジナル曲など、多彩な音楽が物語を彩る。
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物語の舞台はマレーシア。とある高校では、「タレンタイム」と呼ばれるコンテストの開催時期が近づいている。今回が7回目。「タレンタイム」とはどういうものかと思うも、それは“Talent Time”の略称だとわかればなんとなく内容の想像はつく。出場者は学生から7名、教師から7名である。そして、学生の中から選抜を経てファイナリストが選出されるが、ファイナリストはなぜかバイクでの送迎を受けられることになっていて、送迎する係の学生が別途7名選出されることになっている。

ムルーは使用人のいる裕福な家庭で両親と妹2人と一緒に暮らしている。しかし、母親は3人の娘に厳しい教育方針を取り入れており、ムルーはタレンタイムの選抜オーディションに参加したいと母親には言い出せずにいる。一方、母親と姉と暮らしているマヘシュは、聾唖の青年で、母親の一存で送迎係に立候補する。家では叔父の婚礼の儀式の準備が進んでいる。晩婚の叔父は、早めに結婚相手を探すよう、マヘシュに諭す。

タレンタイムの準備は着々と進む。校長自ら生徒のオーディション審査を開始。生徒達は得意な歌や楽器、ダンスを次々と披露する。ムルーもピアノの弾き語りを披露する。中でも一人だけ、校長が絶賛する生徒がいる。それは自作の歌をギターの弾き語りで聞かせた転校生のハフィズである。多少音程に難はあるが、それは関係ないという校長の言葉に、ハフィズは喜ぶ。

送迎係の最初の仕事は、オーディション合格者に通知を渡すこと。マヘシュの担当はムルーとなり、さっそく合格通知を届けに行く。しかし、タイミング悪く、家族団らんの夕食時であったため黙ってオーディションを受けた事が母親にバレてムルーは怒られてしまう。しかし、両親の恋の歌を歌ったと報告すると、母親は喜んで許してくれる。翌日、リハーサルに向かうムルーを迎えに来たのは、マヘシュではなく教師であった。マヘシュは、叔父が婚礼の儀式の最中、隣人とのトラブルで殺されてしまったのである。

物語はタレンタイムに向けてリハーサルが行われ、順調に進んでいく。その過程でさまざまな事情が描かれる。ファイナリストに選ばれたハフィズは、母親が脳に腫瘍を患って入院している。同じファイナリストになったカーホウはハフィズに成績トップの座を脅かされてカンニング疑惑を仕組む。恋愛感情がしずかに生まれるムルーとマヘシュだが、互いに宗教が違う。弟を殺されたマヘシュの母親は、弟の死を受け止めきれず、またマヘシュが異教徒の異性と付き合うことを許さない。

そうしたサイドストーリーを経て「タレンタイム」の本番を迎える。マレーシアという国は、様々な民族と宗教とが入り混じるのであろう。そんな中で、マヘシュとムルーは互いに思いを募らせていく。日本とは違う異国社会はそれだけでも興味深い。マレンタイムの本番だが、教師部門は描かれない。そのあたりが何とも言えない中途半端感があるが、生徒部門は心が温かくなるシーンもあり、それが日本でも観られる事になったゆえんなのだろう。

たまにはこうした異国映画もいいものだと思わせてくれる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年03月29日

【小説の神様 君としか描けない物語】My Cinema File 2835

小説の神様 君としか描けない物語.jpeg
 
2020年 日本
監督: 久保茂昭
原作: 相沢沙呼
出演: 
佐藤大樹:千谷一也
橋本環奈:小余綾詩凪
佐藤流司:九ノ里正樹
杏花:成瀬秋乃
莉子:千谷雛子
坂口涼太郎:野中
山本未來:河埜
片岡愛之助:千谷昌也
和久井映見:千谷優理子

<シネマトゥデイ>
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作家・相沢沙呼の小説を、『HiGH&LOW』シリーズなどの久保茂昭監督が実写映画化した青春ドラマ。あらゆる面で対照的な2人の高校生小説家が、協力してベストセラー作品を生み出そうと奮闘する。ネガティブな売れない作家をEXILEやFANTASTICS from EXILE TRIBE のメンバーで『4月の君、スピカ。』などの佐藤大樹、ドSの売れっ子作家を『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』などの橋本環奈が演じる。
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高校2年生の千谷一也は、クラスでもわりと目立たない存在。学校では文芸部に所属している。そして、実は「千谷一夜」というペンネームで小説家デビューしている。その事実は隠しており、知っているのは文芸部の部長九ノ里だけである。しかし、一也は小説家としてはスランプ状態で、中学でデビューして以降は本も売れず、ネットでも酷評されて自信を失っている。だが、母子家庭で妹も心臓病で入院中とあって、一也は売れる小説を書く必要に迫られている。

ある日、一也は部長の九ノ里の頼みで、同じクラスの転校生・小余綾詩凪を文芸部に勧誘することになる。ところが、もともと奥手の一也ゆえに声のかけ方が分からず、「小説は好きですか?」と聞いてしまい、恥ずかしさのあまり教室を駆け出してしまう。その後、一也は妹の見舞い前に立ち寄った本屋で、同じく高校生小説家「不動詩凪」の平積みされた文庫本を目にする。自分との差は歴然としており、心穏やかではない。そして妹も「不動詩凪」の大ファンとなればなおさらである。

一也の所属する文芸部の部員は2人しかいない。そこに、1年生の成瀬が入部希望でやってくる。成瀬は「千谷一夜」の小説の大ファンであり、たまたま一也が本人だと知って狂喜乱舞する。「千谷一夜」の小説への熱い思いを吐露する成瀬に、自信のなさから苛立つ一也。そこへ詩凪もやってくる。自暴自棄的な一也の不甲斐なさを責め、「小説の神様を信じてないのか?」と問う。これがタイトルのゆえん。日本は八百万の神々の国。トイレにも神様がいるのであり、小説に神様がいてもおかしくない。

それからまたしばらくして、一也は担当編集者の河埜に呼び出される。スランプに喘ぐ一也に対し、河埜は「不動詩凪」との共作を提案する。「不動詩凪」がプロットを考え、それを一也が文章にするというもの。逡巡する一也だが、「話題性があるから売れる」という河埜の言葉を受け快諾する。そして姿を現した「不動詩凪」の正体は、小余綾詩凪であった。このあたり、いかにも作られたストーリーだが、そこはあまり突っ込まないことにする。

ストーリーはこうしてコンビを組むことになった一也と詩凪とが2人で1つの作品を生み出していく様子を追っていく。自分一人で作品を書いていた詩凪がなぜ文章を他人に任せるのか。そこにはそれらしい理由が説明されるのであるが、どうも取って付けた感が否めない。まぁ、それはあまり突っ込まないのがいいだろうと思う。2人の小説家コンビが、喧嘩しながら最後にはいい作品を完成させるというのは、ありがちと言えばありがちな、王道とも言えるストーリーである。

高校の部活を題材にした映画となれば、その種類は様々であるが、取材と称して部員全員でテニス部に体験入部をするなどのエピソードも含めて、「作られた感」が強く漂う。フィクションはみな作り物ではあるが、そこに自然にストーリーを展開していくか、わざとらしさが目について「作られた感」が色濃く出てしまうかは脚本家の手腕なのかもしれないが、時折興覚め感を感じたのは事実である。まぁ、主演の橋本環奈がどこまでもかわいらしいのでいいのかもしれない。

これはこれで、一度観れば十分だと思う映画である・・・


評価:★★☆☆☆










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2022年09月16日

【坂道のアポロン】My Cinema File 2594

坂道のアポロン.jpeg
 
2018年 日本
監督: 三木孝浩
原作: 小玉ユキ
出演: 
知念侑李:西見薫
中川大志:川渕千太郎
小松菜奈:迎律子
真野恵里菜:深掘百合香
山下容莉枝:伯母
松村北斗:松岡星児
野間口徹:千太郎の父
中村梅雀:迎勉
ディーン・フジオカ:桂木淳一

<MOVIE WALKER PRESS>
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小学館漫画賞に輝き、テレビアニメにもなった小玉ユキの人気コミックを、青春映画の名手と呼ばれる三木孝浩監督が映画化した青春ドラマ。音楽を通して友情や愛を深めていく3人の高校生を、Hey! Say! JUMPの知念侑李と、中川大志、小松菜奈ら若手実力派たちが演じる。小田和正による書き下ろしの主題歌も物語を盛り上げる。
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冒頭、1人の医師西見薫が子供たちのリクエストに答えてピアノを弾く。それが病院には似つかわしくない、そして子供が喜びそうもないジャズ。無理矢理感が強いが、そこから物語は10年前の1966年の長崎・佐世保へと移る。当時まだ高校生だった西見薫は、上り坂にうんざりしながら転校生としてとある高校にやってくる。家庭の事情からの転校であるが、東京からやって来たお屋敷に住む転校生は、田舎の高校生には好機の目とやっかみにさらされる。

そんな薫にクラス委員の律子が声を掛けてくるが、薫は律子に屋上の場所を聞く。屋上くらい聞くまでもないだろうという心の声は封印する。薫は教室内での息が詰まりそうな雰囲気から逃れて屋上に行くが、そこで寝ていた大柄で横柄な口を利く千太郎と出会う。出会う間も無く千太郎は上級生と屋上入り口のカギをめぐって喧嘩になる。この千太郎が実は薫のクラスメイトでもあり、律子とは幼馴染である。

律子はクラス委員でもあることから、薫を気遣う。そんな律子に薫は、地元のレコード店を聞くと、なんと律子の自宅が偶然にもレコード店であり、薫は律子に案内されて店に向かう。すると、レコード店の地下室がスタジオになっていて、そこにはドラムをたたく千太郎の姿がある。千太郎は巧みなスティック裁きを見せるが、奏でるのはジャズ。薫はピアノを弾くことができるが、クラシック派。しかし、千太郎の姿を楽しそうに見る律子の姿を見て対抗心を抱き、レコードを買ってジャズの練習を始める。

薫がジャズの名盤“モーニン”を弾きこなせるようになると、千太郎との仲は急速に縮まっていく。そんな千太郎には憧れの兄貴分がいて、その兄貴分である桂木淳一が東京から一時帰郷する。淳一は千太郎のジャズの師匠でもあり、薫と千太郎と淳一、律子の父勉の4人でセッションを繰り返す日々でこの年の夏休みは埋まっていく。薫は律子に惹かれていくが、律子の心は千太郎にある。しかし、千太郎は砂浜で知り合った美女・百合香に恋してしまう・・・

物語は、3人の若者の青春ドラマ。男2人と女1人。1960年代の佐世保は、米海軍基地もあって、そんな時代背景の下、ジャズを中心に物語が進む。薫は裕福な家に住んでいるが、そこは叔母の家。千太郎にも悲しい出自がある。なんでジャズだったのかと言えば、それは現代の若者はジャズには見向きもしないだろうというのがあるかもしれない。アポロンとは有名なギリシャ神話の神様だが、実は音楽の神様でもある。

高校生活はたった3年しかない。あっという間に過ぎてしまった己の高校時代が脳裏を過ぎる。時代背景はだいぶ異なるが、大人になっては体験できない世界がそこにはある。ほのかな恋心はあっても、大人のような恋愛関係はほとんどなく、物語は純粋な青春ドラマ。同じ時代を背景にしていても大学生の『ノルウェーの森』( My Cinema File 869)や『無伴奏』( My Cinema File 2004)と雰囲気が違うのは、大学生と高校生の違いが大きいだろう。

純粋な青春ドラマにしばし浸ってみるにはいい映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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