
原題: Mary Queen of Scots
2018年 イギリス
監督: ジョージー・ルーク
出演:
シアーシャ・ローナン:メアリー・スチュアート / スコットランド女王
マーゴット・ロビー:エリザベスI世 / イングランド女王
ジャック・ロウデン:ヘンリー・スチュアート / ダーンリー卿
ジョー・アルウィン:ロバート・ダドリー / レスター伯
ジェンマ・チャン:ベス・オブ・ハードウィック
マーティン・コムストン:ジェームズ・ヘップバーン / ボスウェル伯
イスマエル・クルス・コルドバ:デビッド・リッチオ
ブレンダン・コイル:マチュー・スチュアート
イアン・ハート:メイトランド卿
エイドリアン・レスター:ランドルフ卿
ジェームズ・マッカードル:ジェームズ/スチュアート / マリ伯
デヴィッド・テナント:ジョン・ノックス
ガイ・ピアース:ウィリアム・セシル / バーリー男爵
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『レディ・バード』のシアーシャ・ローナン、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』のマーゴット・ロビーが16世紀の英国を生きた2人の女王を演じた歴史ドラマ。16歳でフランス王妃となりながら、フランス王フランソワ2世崩御により18歳で未亡人となったメアリーは、故郷のスコットランドに帰国。再び王位の座に就くが、当時のスコットランドではプロテスタント教徒の勢力が増しており、彼らは女性君主は神の意に反すると、女王メアリーの存在を快く思っていなかった。メアリーは家臣の陰謀や内乱などによって何度も王座を追われそうになり、厳しい運命に翻弄されていく。一方、イングランドを統治するエリザベスは、自分と違い美しく、結婚もして子どもを産んだメアリーに、複雑な思いを抱いていた。王位継承権をめぐりライバルもであるメアリーとエリザベスは、複雑な感情を抱きながらも互いに魅了されていき、男性社会の中で孤軍奮闘する女性として激動の時代を駆け抜けていく。ケイト・ブランシェット主演の『エリザベス』を手がけたプロデューサー陣が、エリザベスと同時代に生きたメアリーに着目して製作。メアリー役をローナン、エリザベス役をロビーがそれぞれ演じる。監督は、ロンドンの演劇界で活躍する女性演出家で、映画監督はこれがデビュー作となるジョージー・ルーク。
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映画の冒頭、映画の背景となる16世紀後半の英国の情勢が字幕で紹介される。これがないと映画の内容はよくわからない。主人公となるメアリーはスコットランド女王でカトリック教徒、幼い頃フランスへ送られ将来のフランス国王と結婚するも、夫の死により18歳でスコットランドに帰国する。スコットランドではプロテスタントがカトリックと戦っているが、プロテスタントが支配的で、メアリーの異母兄ジェームズ・ステュアート/マリ伯が権力の座にある。一方、エリザベスはイングランド女王でプロテスタントであり、イングランド女王になる権利があるというメアリーに脅威を感じている。
そのスコットランド女王のメアリーは、神に祈りを捧げたあと断頭台に挑む。時に1587年のイングランド。一体何があったのか。興味をそそられるイントロである。そして物語は1561年に遡る。スコットランド女王メアリーは夫の死を受けフランスからスコットランドへ帰ってくる。小舟で海岸に着いた一行を漁師たちが不思議そうに眺める。女王の帰還といっても小所帯である。城に到着すると、メアリーはマリ伯から歓迎される。
一方、イングランドでは28歳になるエリザベス女王は、メアリー帰国の報を受け敵意を感じる。エリザベスの側近ウィリアム・セシル/バーリー男爵は、エリザベスに結婚問題を話すが、エリザベスは結婚はしないと考えている。スコットランドの宮廷ではメアリーの秘書のリッチオが歌でメアリーを喜ばせ、メアリーはエリザベスに友好の手紙を書く。エリザベスとは対照的にメアリーは結婚はするが、愛のない政略結婚はしないと宣言する。
実はメアリーはカトリックであり、プロテスタントの牧師ジョン・ノックスと対立し、これを解雇する。その対応にマリ伯は不満を感じ、ノックスもメアリーは危険だとプロテスタント信者を前に演説する。このあたりからきな臭さが匂い始める。イングランドではエリザベスと側近がメアリーの政略結婚を考えるが、エリザベスは自分の愛人であるロバート・ダドリー/レスター伯爵にメアリーとの結婚を持ち掛ける。うまくいけばメアリーをコントロールできると考えての事である。その意を受け、ロバートはエリザベスの肖像画を持ってスコットランドを訪れる・・・
ふたりの女王としてここで登場するメアリーとエリザベスとは、ともにヘンリー8世の娘(ただし母親は違う)。物語を理解するにはある程度歴史を知っておく必要がある。まだスコットランドとイングランドが別の王国であり、姉妹ながら母親は別で(おそらく一緒に育っていないから)姉妹としての愛情も薄い。そんな2人の物語。当時の時代考証がどこまでなされているのかはわからないが、時代的には男尊女卑の時代であり、女王といっても周囲の男たちは隙あらばという雰囲気を醸し出している。
実際はどうだったのかはわからない。シアーシャ・ローナンを見ているとメアリーは良い女王に見えてしまい、またイングランド女王は狡猾に描かれるので悪役に見えてしまう。しかし、メアリーはイングランド王位に対して意欲を見せており、そうなればエリザベスとしては面白くないだろうし、防衛的な気持ちにもなるだろう。最終的にエリザベスはメアリーを処刑する。映画では描かれていないが、結局、エリザベスには子供がなく、メアリーの子供がイングランド王位を継承して現在に至るというのも皮肉に思えてしまう。
メアリーとエリザベスとの対立は、『エリザベス:ゴールデン・エイジ』(My Cinema File 179)でも描かれていたが、こちらはエリザベスが主役であり、メアリーは王位を脅かす危険な存在であった。「立場が変われば見方も変わる」ではないが、シアーシャ・ローナンのメアリーは事実をゆがませているかもしれない。エリザベスはスコットランドで反乱を起こし、メアリーを脅かす。最後は反メアリー感情の強いスコットランドにいられず、1567年7月に退位し、翌年1568年、メアリーはイングランドのエリザベスに助けを求めてイングランドに亡命する。
メアリーはしばしば親しみをこめて「クイーン・オブ・スコッツ」と呼ばれているという。それが原題になっているが、それがどういう経緯なのか、映画を観ていては(シアーシャ・ローナンを観ていては)わからない。王位を巡るドロドロとしたものがあったのだろう。イギリスの長い王位の伝統については、いろいろとドラマになる物語があり、観ていて面白い。父王の時代には『ブーリン家の姉妹』(My Cinema File 549)があった。こうしたイギリス王家にまつわる映画はこれからも観ていきたいと思わされる映画である・・・
評価:★★☆☆☆





