2017年10月08日

【沈黙 -サイレンス-】

沈黙−サイレンス−.jpg

原題: Silence
2015年 アメリカ
監督: マーティン・スコセッシ
原作: 遠藤周作
出演: 
アンドリュー・ガーフィールド:セバスチャン・ロドリゴ
アダム・ドライバー:フランシス・ガルペ
浅野忠信:通辞
キアラン・ハインズ:ヴァリニャーノ
リーアム・ニーソン:クリストバン・フェレイラ
窪塚洋介:キチジロー
イッセー尾形:井上筑後守
塚本晋也:モキチ
小松菜奈:モニカ
加瀬亮:ジュアン
笈田ヨシ:イチゾウ

<シネマトゥデイ>
********************************************************************************************************
遠藤周作の小説「沈黙」を、『ディパーテッド』「タクシードライバー」の巨匠マーティン・スコセッシが映画化したヒューマンドラマ。キリシタンの弾圧が行われていた江戸初期の日本に渡ってきたポルトガル人宣教師の目を通し、人間にとって大切なものか、人間の弱さとは何かを描き出した。17世紀、キリスト教が禁じられた日本で棄教したとされる師の真相を確かめるため、日本を目指す若き宣教師のロドリゴとガルペ。2人は旅の途上のマカオで出会ったキチジローという日本人を案内役に、やがて長崎へとたどり着き、厳しい弾圧を受けながら自らの信仰心と向き合っていく。スコセッシが1988年に原作を読んで以来、28年をかけて映画化にこぎつけた念願の企画で、主人公ロドリゴ役を『アメイジング・スパイダーマン』のアンドリュー・ガーフィールドが演じた。そのほか『シンドラーのリスト』のリーアム・ニーソン、『スター・ウォーズ フォースの覚醒』のアダム・ドライバーらが共演。キチジロー役の窪塚洋介をはじめ、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシといった日本人キャストが出演する。
********************************************************************************************************

原作は、かつて私も読んだことがある遠藤周作の『沈黙』。随分と重苦しい小説であったが、遠い昔のキリシタン弾圧の様子が伺えて、なかなか興味深い内容であった。そんな原作の映画化とあって、それも監督がマーティン・スコセッシとあれば、これはもう観るしかないのである。

17世紀。江戸初期の日本では、幕府によるキリシタン弾圧が行われている。日本での布教活動を行っていた宣教師フェレイラが捕らえられ棄教したとの報せが届き、俄かには信じられない弟子のロドリゴとガルペが日本への渡航を志願する。既に鎖国政策が行われており、渡航手段を求めていた2人は、マカオで日本人のキチジローを紹介され、その手引きで長崎に上陸する。

しかし藩の取り締まりは厳しく、弾圧を恐れた隠れキリシタンたちはそれを隠して暮らしている。宣教師が上陸したという知らせに驚喜した村人たちに匿われるも、身を隠すのが精一杯の日々で、フェレイラ神父の行方は要として知れない。次第に焦りが生じてくる。それでも隣村へと活動範囲を広げていくが、しかしキチジローの裏切りに遭い、とうとうロドリゴは捕らえられてしまう。

キリシタン弾圧と言えば、踏み絵であるが、それがここでも登場する。かつてキチジローは、この踏み絵を踏み自身は許されるが、拒否した家族は全員殺されるという過去を持っている。1人生き残ったキチジローは、ある種卑屈な思いを持っている。しかし、ロドリゴを捕らえた長崎奉行井上筑後守は、こうした安易な方法は取らない。目の前で村人の首を刎ね、簀巻きにして海に突き落とす。ロドリゴは神の沈黙を嘆き、自らの無力を知る。村人を救う方法は、自らの棄教しかない・・・

井上筑後守のやり方は実に賢い。過去に宣教師を直接拷問したが、棄教させるどころか宣教師たちはそれを自らに課された試練と捉え、むしろ神の御名において喜んで死んでいくのを目にしたため、やり方を変えたのであろう。ロドリゴとガルペは、神への信仰と人々とを救うこととを天秤にかけられるわけである。神の教えに従って人を救うためには、その神への信仰を捨てなければならないわけであり、まさに神父にとっては究極の選択なわけである。

そしてロドリゴは、井上筑後守の差配でとうとうフェレイラ神父と再会する。そのフェレイラ神父は、知らせにあった通り棄教しているのである。それは、首に血抜きの傷をつけられて逆さづりされるという拷問を受け、その辛さを味わわされた上で、目の前で信者たちが同じ拷問を受けて苦しむ様を見せつけられての結果である。

単なるエンターテイメントだけではなく、物語の突き付ける選択は重い。私自身、クリスチャンではないし、他人に信仰を説くようなこともないし、こういう環境では迷いなく棄教するだろうし、そもそも信者にすらならないからなかなか想像するのは難しい。しかしながら、神への絶対的な信仰を抱いていて、師の棄教など天地がひっくり返ってもあり得ないと信じるロドリゴたちの心境は良く伝わってくる。

遠藤周作の小説は内容も暗いし非常に重い。その重みがじっくりと伝わってくる160分の世界である・・・


評価:★★★☆☆




posted by HH at 00:00 | 東京 🌁 | Comment(0) | 歴史ドラマ

2017年06月24日

サン・オブ・ゴッド

サン・オブ・ゴッド.jpg

原題: Son of God
2014年 アメリカ
監督: クリストファー・スペンサー
出演: 
ディオゴ・モルガド:イエス・キリスト
ローマ・ダウニー:聖母マリア
グレッグ・ヒックス:ピラト
エイドリアン・シラー:カイアファ
アンバー・ローズ・レバ:マグダラのマリア
ダーウィン・ショウ:ペトロ
セバスチャン・ナップ:ヨハネ

<シネマトゥデイ>
********************************************************************************************************
2013年3月からヒストリーチャンネルで放送された、全10話のテレビシリーズ「ザ・バイブル」を基にした歴史ドラマ。イエス・キリストの誕生から復活までを、壮大なスケールで追い掛けていく。メガホンを取るのは、「ザ・ローマ 帝国の興亡」などのテレビドラマで活躍するクリストファー・スペンサー。モデル出身のディオゴ・モルガドがキリストを熱演、その美しいルックスが、アメリカでの公開時に話題となった。政治や歴史の情勢からもキリストの運命を見つめるという視点にも注目。
********************************************************************************************************

イエス・キリストの生涯を描いた映画というと、何だかたくさん創られているような気がするが、具体的に思い出そうとするとなかなか出てこない。かろうじて、かつて『ナザレのイエス』という映画を観に行った記憶があるのと、そう言えばチャールトン・へストンの『ベン・ハー』に出てきたなというくらいである。あるいはテレビドラマのような形で観たりしているのだろうかとも思う。いずれにせよ、改めてキリスト映画として向かい合う。

冒頭、人類の誕生(もちろんアダムとイヴである)から、ノアの箱舟、モーゼの脱出、ダビデと旧約聖書の歴史が神と人類の関わりという形でさらりと語られる。そして、貧しい馬小屋でマリアの子供としてイエスが生まれる。次に成人したイエスがペテロと出会い、不漁を嘆くペテロに豊漁をもたらせてスカウトする。「世界を変えよう」という誘い文句には何となく違和感を覚える。

やがてイエスは、行く先々で歩けない者を歩かせたりと奇跡をもたらす。山上の垂訓や水の上を歩いたり、姦淫の罪を犯した女に対し、律法通り石で打とうとする人々を前に「罪を犯したことのない者だけが打つが良い」と告げる。よく知っているエピソードが続いて行く。そしてそれを面白くないと思うのが、パリサイ人の司教。それはそうだろう、自分の話を聞いていた人たちがイエスの方へ行ってしまうわけであるから、「商売あがったり」なわけである。

神に成り代わり「罪を許す」と語るイエスに、「冒涜だ」と難癖をつける司教。「罪を許すことができるのは神だけだ」という理屈はもっともでもある。一方でローマの圧政が描かれる。エルサレムの人々は、税金を取られいわれなき迫害にも耐えるしかない。イエスのもたらす混乱にローマによる一層の介入を警戒する動きも出てくる。そしてそれがイエスの逮捕と処刑へと繋がって行く。このあたり、取り締まる方にも一理を与えていて面白いと思う。

聖書は全世界でもっとも多くの人に読まれている本だと言われているが、となれば新約聖書のイエスをめぐる物語も多くの人が知っているであろう。この映画は、そんな誰もが知っているエピソードを綴って行くわけで、何か独自の解釈があるとも思えないし、それを改めて観て面白いのかどうかわからない。イエスの物語を改めて描いた目的は何なのか、興味深い気もする。

イエス・キリストといえば痩せたイメージがあるが、主演のディオゴ・モルガドという役者さんは実にイケメンのいい男。身にまとったオーラはよく雰囲気が出ていたと思う。難をいえば、キリスト教徒ではないと使徒について詳しくわからないから、どうも物語の深みを感じられないところだろうか。さすがにユダとペテロについてはわかったがヨハネがどういう生涯を辿ったかわからず、冒頭とラストのシーンに何か意味があったのかと悶々としたものが残ってしまったことだろう。

キリスト教初心者にはいいかもしれないが、そうでない自分にはちょっとフラストレーションの溜まる映画なのであった・・・


評価:★★☆☆☆






posted by HH at 00:00 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史ドラマ

2017年02月04日

日本のいちばん長い日

日本のいちばん長い日.jpg

2015年 日本
監督: 原田眞人
原作: 半藤一利
出演: 
役所広司: 阿南惟幾(陸軍大臣)
本木雅弘: 昭和天皇
山崎努: 鈴木貫太郎(内閣総理大臣)
堤真一: 迫水久常(内閣書記官長)
松坂桃李:畑中健二(陸軍少佐、軍務課員)

<シネマトゥデイ>
********************************************************************************************************
半藤一利のノンフィクションを基にした群像歴史ドラマ大作。太平洋戦争での日本の降伏決定から、それを国民に伝えた玉音放送が敢行されるまでの裏側を見つめていく。メガホンを取るのは、『クライマーズ・ハイ』、『わが母の記』などの原田眞人。キャストには『わが母の記』などの役所広司、『おくりびと』などの本木雅弘、『ツナグ』などの松坂桃李ら実力派が集結し、昭和天皇や阿南惟幾陸相をはじめとする実在の人物を熱演する。身をていして現在の平和の礎を築いた人々の思いに引き込まれる。
********************************************************************************************************

 1945年、太平洋戦争も日本軍の敗色が濃厚になる中、77歳の鈴木貫太郎に組閣の命が下る。鈴木貫太郎は、高齢でもあり一度は辞退するが、昭和天皇の強い希望を受け内閣総理大臣に就任する。当時は陸海軍からそれぞれ内閣に大臣を出す慣例になっており、陸軍はこれを利用して内閣をコントロールしてきたが、今回その任は阿南惟幾に委ねられる。

 戦局が好転することもなく、やがて連合国からポツダム宣言を受諾するよう通告がある。内閣はこの受け入れを巡り紛糾するが、阿南陸相をはじめとする陸軍軍人は本土決戦を主張する。そしてそうこうするうちに、広島、長崎に原爆が投下され、ソ連が参戦してくる。ここに至ってもポツダム宣言の文言の解釈を巡って陸軍の主戦派が抵抗を見せ、ついに、その結論は御前会議で天皇の聖断によることになる。

 天皇の聖断でポツダム宣言受諾が決定されるが、それを不服とする陸軍の畑中少佐ら若手将校らがクーデターを画策。畑中少佐は、本土決戦になかなか同意しない森・近衛師団長の説得を諦めこれを殺害、命令書を偽造して偽の命令を発布するとともに、宮内省の役人などを軟禁し、玉音放送のレコードを奪おうと放送協会にも進入する。一方、大きな仕事を片付けた阿南陸相は、静かに自刃の時を迎える・・・

 歴史の教科書では、ポツダム宣言を受諾して日本は「スムーズに」降伏するのであるが、そこに至るにこれほどの動きがあったというのは、驚きである。当時は2.26事件などに見られるように、反対派を殺して自らの主張を通すことなど何でもないという雰囲気があったのかもしれない。つくづく恐ろしい時代であったと思う。

 共産党などは「天皇の戦争責任」などと主張していたが、この映画を観ると天皇の果たしていた役割というものがよく理解できる。そんな昭和天皇を演じるのは本木雅弘。かつて『太陽』で、イッセー尾形が演じてそっくりだと思ったが、本木昭和天皇もなかなかいい雰囲気である。『おくりびと』ですっかり役者として認識していたが、がらりと違う雰囲気になっているのはさすがという気がする。

 降伏に強硬に反対する陸軍を代表しながら、天皇の意向を汲みながら冷静に行動する阿南陸相。東条英機内閣が継続していたらどうなっていたのだろうと思わざるを得ない。そして最後は、「切腹」。武士の時代のしきたりをいまだしっかりと順守しているところが、当時の陸軍であったのだろう。

 映画はエンターテイメントではあるものの、こうした歴史の教科書と言う意味では教科書よりもはるかに記憶に残るものだろう。我々の大事な歴史の1ページとして、観ておきたい映画である・・・


評価:★★☆☆☆





posted by HH at 00:00 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史ドラマ

2016年12月03日

ルートヴィヒ

ルートヴィヒ.jpg

原題: Ludwig II.
2012年 ドイツ
監督: マリー・ノエル/ペーター・ゼーア
出演: 
ザビン・タンブレア: ルートヴィヒ(18歳から26歳)
ゼバスチャン・シッパー: ルートヴィヒ(40歳)
ハンナー・ヘルツシュプルング: エリザベート -オーストリア皇妃
エトガー・ゼルゲ: リヒャルト・ワーグナー
フリードリヒ・ミュッケ: リヒャルト・ホルニヒ
ユストゥス・フォン・ドホナーニ: ヨハン・ルッツ
ザムエル・フィンツィ: ローレンツ・マイヤー
トム・シリング: オットー
ポーラ・ビール: ゾフィ

<映画.com>
********************************************************************************************************
ルキノ・ビスコンティも「ルートヴィヒ 神々の黄昏」(1972)で取り上げたバイエルン王ルートビヒ2世の生涯を描いた歴史大作。ドイツ連邦の統一をめぐって激しい主導権争いが繰り広げられていた19世紀半ば、類まれな美貌をもちながらも、その高い美意識と強烈な個性ゆえに周囲の支持や理解を得られず、「狂王」とまで呼ばれたルートビヒ2世の波乱の人生を描く。15歳の時に見た歌劇「ローエングリ」に感銘を受け、作曲家のワーグナーを崇拝するようになったたルートビヒは、皇太子でありながらも政治や権力に無関心で、芸術だけに熱中していた。やがて父の急死によりわずか18歳で即位したルートビヒは、戦争が迫る中でも「国民の安全に必要なのは、詩と音楽の奇跡だ」と主張し、ワーグナーを宮廷に招き入れ独自の理想を掲げるが……。
********************************************************************************************************

かつてドイツの地にあったバイエルン王国の国王ルートヴィヒ2世の生涯を描いた作品。ルートヴィヒは、皇太子ながら音楽を愛し、最新式の銃の試射に立ち会わされるも興味を示さない。そんな皇太子に国王は顔をしかめる。将来の国王教育を本格化させようとした矢先に、国王マクシミリアン2世は突然崩御してしまう。

思いもよらず国王に即位したルートヴィヒであるが、自分の自由にできるようになると、早速ワーグナーを招聘する。その革命的な思想からワーグナーを嫌っていた閣僚は反対するも、君主には逆らえない。 かくしてワーグナーを招聘したルートヴィヒは、軍備よりも芸術関連の充実に取り掛かる。

時に地域ではビスマルク率いるプロイセンの台頭著しく、きな臭さが漂う国際情勢。軍備拡張と戦争準備を閣僚は進言するも、ルートヴィヒは聞き入れない。ルートヴィヒは「狂王」という異名を取っているが、このあたり微妙である。確かに、国際情勢に基づけば、軍備拡張と近代化は必須であるが、戦争をすれば兵士が死ぬと主張するルートヴィヒの理想は間違っていない。たった一人動員令の署名を拒み続ける平和主義の国王を軟弱と言い切れるだろうか。

結局、孤立無援のルートヴィヒは、動員令に署名し、プロイセンとの戦争に突入する。そして強力なプロイセン軍の前に、バイエルンは敗北する。結果から見れば、戦争に反対したルートヴィヒの判断は正しかったと言えるわけであるが、音楽によって戦争を回避しようとする王の理想は、さすがに受け入れ難いだろう。

一方、ルートヴィヒは芸術ならぬゲイ術にも向いていたようで、婚約は破棄し、側近と禁断の関係を結びそうになる。フランスのナポレオン3世と交流し、ドイツ統一の歴史的背景で台頭するプロイセンとの衝突を回避しようとするが、大きな流れを変えるには至らない。そんな現実からの逃避か、ルートヴィヒは隠遁してしまう。

この方が本当に王としてふさわしかったのかどうかはわからない。ただ、何度も映画化されているということは、それだけ題材として面白かったということなのかもしれない。それにしても芸術を愛好したこの国王が、今も観光名所として世界的に名高いノイシュバンシュタイン城を作ったというのは意外な事実である。もしも側近が一致団結してルートヴィヒの考えに従って政治を行っていたら・・・ちょっと妄想してみたくなる。
映画は歴史の勉強にもなる。改めてそんなことを考えた作品である・・・


評価:★★☆☆☆





posted by HH at 11:58 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史ドラマ

2016年11月21日

白鯨との闘い

白鯨との闘い.jpg

原題: in the Heart of the Sea
2015年 アメリカ
監督: ロン・ハワード
出演: 
クリス・ヘムズワース:オーウェン・チェイス
ベンジャミン・ウォーカー:ジョージ・ポラード
キリアン・マーフィー:マシュー・ジョイ
トム・ホランド:トーマス・ニッカーソン
ベン・ウィショー:ハーマン・メルヴィル
ブレンダン・グリーソン:老年期のトーマス・ニッカーソン
ミシェル・フェアリー:ニッカーソン夫人

<シネマトゥデイ>
********************************************************************************************************
ハーマン・メルヴィルの「白鯨」の裏側に迫るナサニエル・フィルブリックのノンフィクション「復讐する海 捕鯨船エセックス号の悲劇」を基に描く驚異のサバイバルドラマ。19世紀を舞台に、白い大型のマッコウクジラと捕鯨船の乗組員たちとの壮絶なバトルを描く。主人公を『アベンジャーズ』シリーズなどのクリス・ヘムズワースが演じ、『ダ・ヴィンチ・コード』などのロン・ハワードが監督を担当。大海原で繰り広げられるクジラと人間の究極の闘いに息をのむ。
********************************************************************************************************

 1850年、ハーマン・メルヴィルと名乗る無名の作家が、トーマスという男を訪ねてくる。トーマスはかつて遭難したエセックス号という捕鯨船の最後の生き残りであり、疑惑のある遭難の真相について聞くのが、メルヴィルの目的であった。しかし、なぜか頑なに口を閉ざすトーマス。それでも夫人の説得もあり、トーマスはようやく真相を語り始める・・・

 時に1819年、エセックス号は捕鯨基地ナンタケットを出港する。船長は家柄だけで選ばれた未経験者のポラード。本来、船長を約束されていたベテランの一等航海士チェイスは、それが不満。そしてその船には、14歳の孤児トーマスも初めて乗りこんだ。当時はまだ石油燃料はなく、主力は鯨油。今でこそ日本は捕鯨で世界各国から批判されているが、アメリカは当時の捕鯨大国。しかし、リスクもある事業であり、エセックス号も成果を期待されての出港であった。

 3ヶ月目でクジラを発見し、さっそく捕獲。エセックス号は帆船で、クジラを発見すると船員はボートに分散し、クジラに接近。そして銛を投げ込むというのが、当時の漁法。しかしクジラは巨体であり、ボートは小さく、その漁法は死闘に近い。普通の漁のように釣り上げて殺すということができないわけであり、よくそれで捕獲できていたものだと感心してしまう。

 捕獲したクジラは、エセックス号に引き寄せ、押し寄せるサメを追い払いつつ解体しながら鯨油を取る。鯨油は脳にあるようで、猛烈な匂いの中、体の小さなトーマスが潜り込んでそれを汲み出す。こうした捕鯨シーンは、ストーリーとは関係ないものの、当時の様子が伺われて興味深い。映像も迫力があり、ある意味勉強になるのではないかと思う。現代の映画の効能かもしれない。

 しかし、以降クジラと遭遇することなく、時間が過ぎていく。そして寄港した港で、南太平洋でのクジラの大群の目撃情報を得る。しかし、同時に巨大な白鯨に襲われたという話も聞く。何かと対立していた船長のポラードと航海士のチェイスであるが、利害は一致し、4,800キロ離れた噂の海域に臨むことになる。首尾よく、クジラの大群を発見し、色めき立つ船員たち。しかし、捕獲に乗り出した船員たちを巨大な白鯨が襲い、ダメージを負ったエセックス号は漏れた鯨油への引火もあり、沈没してしまう・・・

 タイトルのイメージからすると、この白鯨との闘いがメインとなるかと思っていたが、さにあらん。人間は巨鯨に手も足も出ず、なす術もない。何とか沈みゆく船から食料と帆を確保するのが精いっぱい。そして太平洋の真ん中で、船員たちは小さなボートで取り残される。陸地から4,800キロの海上である。僅かな水と食料を積んだボートは、帆を張れはしたが、その実態は漂流に近い。チェイスとトーマスの乗るボートでは食料が尽きる。死んだ仲間の死体を海に埋葬しようとすると、チェイスは「貴重品を無駄にするな」と戒める・・・

 トーマスが長年苦しんでいたのは、その漂流中の体験。話を聞いた作家のメルヴィルが、取材した実話ではなくそこから創作したフィクションが名作『白鯨』だというが、そんな名著の隠され続けてきた衝撃の実話というのがこの映画の売りである。何だかまたしても邦題にイメージをずらされてしまったが、難を言えばもう少し後日談をしっかり描いて欲しかったと思うところである。

 ラストでトーマスは石油が採掘されたというニュースを聞く。まさに時代の流れを感じさせるシーンである。映像の迫力も十分であり、深みのある物語である・・・


評価:★★☆☆☆







posted by HH at 20:58 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史ドラマ