
2013年 日本
監督: 保坂延彦
出演:
土屋貴子:波子/松岡祥子
なだぎ武:山路
東野克:
真由子:
宮下雄也:
<シネマトゥデイ>
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地下鉄サリン事件をはじめ、数々の社会的事件を引き起こしたオウム真理教の元信者、菊地直子の17年間にわたる逃亡生活をモデルにした人間ドラマ。指名手配犯として逃亡、潜伏を続ける新興宗教団体の女性信者と、彼女をかくまい続けた同居男性の出会いと別れを、ドキュメンタリータッチで描く。監督は、『そうかもしれない』などの保坂延彦。お笑い芸人のなだぎ武と、『さまちゃれ 泣かないで、マンドリン』などの土屋貴子が同居人と信者を演じる。
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人目を避けるようにして1人の女性がアパートに帰ってくる。近所の人に話しかけられてもあいまいに返事をする。部屋の中は殺風景で、生活感がまるで感じられない。そんな部屋の中で男が座禅を組んでいる。部屋に入った女は質素なジャージに着替えをすませると、隣に座って同じように座禅を組む。しばらくして欲情した男が女の上に乗る。しかし、女の目はどこかうつろで、男の行為が終わるのをひたすら待っている感じである。
冒頭から意味ありげな様子の2人だが、実は2人とも「カーマの家」という新興宗教の信者である。その前は4人であったが、逃亡生活を送っているようで、リーダーの指示で男女2人ずつのペアに分かれる。女は波子という偽名を与えられる。男はタサカ。逃亡資金をもらい波子はサカタととあるホテルに身を寄せる。交わると告げるタサカに、女は教義に反するのではと反論するが、教祖の例を持ち出してタサカは説得する。互いにもう1人の相手の方が良かったのではと言い合う。
波子とタサカはともに全国指名手配されている。その内容からどうやらこれはオウム真理教のことだろうとわかってくる。やがてタサカと波子はアパートを借りて一緒に住み、社会に溶け込む。波子はとある会社で事務員として職を得る。少し表情が暗いが、仕事はよくでき、社長の覚えもめでたい。そんな波子はある日、会社の同僚の山路から食事に誘われる。どうやら山路は波子に好意を抱いており、波子もまんざらではない。しかし、逃亡犯だという事実が波子の心に重くのしかかる。
それでも人の心は抑えきれぬもの。波子もいつしか山路に惹かれていく。そして波子は山路に同棲相手がいる事を伝える。そこでどう反応するかで男の気持ちも確かめられる。山路は考えがあって会社を辞めるが、改めて波子に告白し2人は一緒になる事になる。波子も仕事を辞めて老人ホームの事務員になり、2人の新しい生活が始まる。やがて波子は仕事に慣れ、同僚たちからも信頼を寄せられるようになる。しかし、本名である松岡祥子の顔写真付きのポスターが貼られ、懸賞金がかけられるニュースに波子の心中も穏やかではない。
実際の逃亡生活はどんなものか、一般人には想像しにくいものもある。たとえば波子は病気になるが、保険証を持っていないので病院にもいけない。山路からプロポーズされるが、波子は結婚はできないと言う。それは住民票が本人の名前でしかなく、籍を入れるにもリスクがある。そうした状況がさり気なく描かれる。指名手配されて逃亡している身であればこうした不自由は当然であるからおかしな事ではないが、そうした実態を改めて知るという意味では参考になる映画であると言える。
実在のオウム真理教の元信者をモデルにした映画であるとされているが、どこまで事実を描いているのかわからない。実際にはあまり犯罪行為には関わっていなかったそうであるが、ならばもっと早くに出頭してもよかったようにも思えてしまう。タサカという男も不思議な男で山路がタサカに会いに行った時の行動は不思議な対応と言える。面白いかどうかと問われれば、微妙な内容。それでもそういう事実(フィクションが入っていたとしても)を知るという意味では有意義な映画である・・・
評価:★★☆☆☆