2025年03月07日

【潜伏SENPUKU】My Cinema File 2979

潜伏.jpg

2013年 日本
監督: 保坂延彦
出演: 
土屋貴子:波子/松岡祥子
なだぎ武:山路
東野克:
真由子:
宮下雄也:

<シネマトゥデイ>
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地下鉄サリン事件をはじめ、数々の社会的事件を引き起こしたオウム真理教の元信者、菊地直子の17年間にわたる逃亡生活をモデルにした人間ドラマ。指名手配犯として逃亡、潜伏を続ける新興宗教団体の女性信者と、彼女をかくまい続けた同居男性の出会いと別れを、ドキュメンタリータッチで描く。監督は、『そうかもしれない』などの保坂延彦。お笑い芸人のなだぎ武と、『さまちゃれ 泣かないで、マンドリン』などの土屋貴子が同居人と信者を演じる。
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人目を避けるようにして1人の女性がアパートに帰ってくる。近所の人に話しかけられてもあいまいに返事をする。部屋の中は殺風景で、生活感がまるで感じられない。そんな部屋の中で男が座禅を組んでいる。部屋に入った女は質素なジャージに着替えをすませると、隣に座って同じように座禅を組む。しばらくして欲情した男が女の上に乗る。しかし、女の目はどこかうつろで、男の行為が終わるのをひたすら待っている感じである。

冒頭から意味ありげな様子の2人だが、実は2人とも「カーマの家」という新興宗教の信者である。その前は4人であったが、逃亡生活を送っているようで、リーダーの指示で男女2人ずつのペアに分かれる。女は波子という偽名を与えられる。男はタサカ。逃亡資金をもらい波子はサカタととあるホテルに身を寄せる。交わると告げるタサカに、女は教義に反するのではと反論するが、教祖の例を持ち出してタサカは説得する。互いにもう1人の相手の方が良かったのではと言い合う。

波子とタサカはともに全国指名手配されている。その内容からどうやらこれはオウム真理教のことだろうとわかってくる。やがてタサカと波子はアパートを借りて一緒に住み、社会に溶け込む。波子はとある会社で事務員として職を得る。少し表情が暗いが、仕事はよくでき、社長の覚えもめでたい。そんな波子はある日、会社の同僚の山路から食事に誘われる。どうやら山路は波子に好意を抱いており、波子もまんざらではない。しかし、逃亡犯だという事実が波子の心に重くのしかかる。

それでも人の心は抑えきれぬもの。波子もいつしか山路に惹かれていく。そして波子は山路に同棲相手がいる事を伝える。そこでどう反応するかで男の気持ちも確かめられる。山路は考えがあって会社を辞めるが、改めて波子に告白し2人は一緒になる事になる。波子も仕事を辞めて老人ホームの事務員になり、2人の新しい生活が始まる。やがて波子は仕事に慣れ、同僚たちからも信頼を寄せられるようになる。しかし、本名である松岡祥子の顔写真付きのポスターが貼られ、懸賞金がかけられるニュースに波子の心中も穏やかではない。

実際の逃亡生活はどんなものか、一般人には想像しにくいものもある。たとえば波子は病気になるが、保険証を持っていないので病院にもいけない。山路からプロポーズされるが、波子は結婚はできないと言う。それは住民票が本人の名前でしかなく、籍を入れるにもリスクがある。そうした状況がさり気なく描かれる。指名手配されて逃亡している身であればこうした不自由は当然であるからおかしな事ではないが、そうした実態を改めて知るという意味では参考になる映画であると言える。

実在のオウム真理教の元信者をモデルにした映画であるとされているが、どこまで事実を描いているのかわからない。実際にはあまり犯罪行為には関わっていなかったそうであるが、ならばもっと早くに出頭してもよかったようにも思えてしまう。タサカという男も不思議な男で山路がタサカに会いに行った時の行動は不思議な対応と言える。面白いかどうかと問われれば、微妙な内容。それでもそういう事実(フィクションが入っていたとしても)を知るという意味では有意義な映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年09月28日

【トーマス・クラウン・アフェアー】My Cinema File 2917

トーマス・クラウン・アフェアー.jpg

原題: The Thomas Crown Affair
1999年 アメリカ
監督: ジョン・マクティアナン
出演: 
ピアース・ブロスナン:トーマス・クラウン
レネ・ルッソ:キャサリン・バニング
デニス・リアリー:マイケル・マッキャン
フランキー・フェイソン:パレッティ
フリッツ・ウィーヴァー:ジョン・レイノルズ
マーク・マーゴリス:ハインリヒ・ヌーツォン
フェイ・ダナウェイ:精神分析医

<映画.com>
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絵画強盗を道楽にする大富豪と保険会社の敏腕女性調査員の危険な駆け引きを描くサスペンス。スティーヴ・マックイーン、フェイ・ダナウェイ主演で映画化された「華麗なる賭け」のリメイク。監督は『ダイ・ハード1』「3」のジョン・マクティアナン。脚本はオリジナルのアラン・R・トラストマンの原案を元に、「ミセス・ダウト」のレスリー・ディクソンと「スフィア」のカート・ウィマーが担当。製作はボー・セントクレアと主演の「ダンテズ・ピーク」のピアース・ブロスナン。撮影は「ディープ・インパクト」(第2班)のトム・プリーストリー。音楽は『ロッキー』シリーズのビル・コンティ。衣裳は元『ヴァニティ・フェア』誌のデザイナーのケイト・ハリントン。共演は「リーサル・ウェポン4」のレネ・ルッソ、オリジナルでヒロインをつとめたフェイ・ダナウェイ(「ジャンヌ・ダルク」)、「サンドラ・ブロックの恋する泥棒」のデニス・レアリー、スーパーモデルのエスター・カニャーダス、「ビッグ・リボウスキ」のベン・ギャザラほか。
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映画は今から25年前の製作。当時観た記憶があるが、内容は忘却の彼方。新しい気持ちで再鑑賞に至る。

主人公のトーマス・クラウンは、ニューヨークで投資会社を経営する大富豪。精神分析医とのカウンセリングが随所に挿入される。女医役で登場するのはフェイ・ダナウェイ。往年の美人女優であるが、この映画の元ネタである「華麗なる賭け」ではヒロインを演じていたという事からの起用なのだろう。「女性はトーマスを信用していいものか」と問うフェイ・ダナウェイ女医に、トーマスは「利害が対立するのでない限り信用していい」と答える。トーマスはジェームズ・ボンドを意識したかのような二枚目である。

ある朝、トーマスはメトロポリタン美術館に立ち寄り、クロワッサンをかじりながらゴッホを眺める。警備員とも軽口を交わし、顔なじみである様子。隣にはモネの名画があり、そちらの方が価値が高いのにトーマスは感心を示さない。そしてトーマスはそのまま出社する。ちょうどその頃、美術館に4人組の泥棒が入り込む。美術品を装った中に潜り込み、隙を見て館内に侵入する。厳重な警戒網を次々と攻略していく4人組。しかし、最後の最後で警備員の扮装を見破られ、館内には警報が響き渡る。

その時、仕事を終えて会社を出たトーマスが何気なく美術館に入ってくる。警報が鳴り響き、絵画フロアが閉鎖される瞬間、鞄を置いて鉄格子が降りるのを防ぎ、手早くモネの絵を盗み出す。大富豪でありながら、金では満たされないスリルを求めているのだろうか。盗み出したモネを悠然と持ち帰り、地下室に飾る。盗難事件発生を受けてニューヨーク市警のマイケル・マッキャン刑事が捜査に乗り出してくる。そこに保険会社から依頼を受けたキャサリン・バニング調査員が現れる。

海外では保険の調査員も権利を認められているのか、キャサリンは美術品泥棒の一人を尋問し、彼らの役割は単なる陽動であると判断する。そして、館内のビデオを見て鉄格子を止めた鞄に注目する。モネの絵画の前のベンチにも同じ鞄が置かれており、置いた人物がトーマスであることを突き止める。下手な刑事よりも優秀である。その一方、トーマスは盗まれたモネの場所を埋めるためとして、美術館に自身の所有する絵画を貸し出す事を申し出る。誰もトーマスを疑わないであろう。ところが、その貸与のセレモニーでキャサリンはトーマスに接近する。

トーマスは、近づいてきたキャサリンをディナーに誘う。お互いに表面は優雅に装いながら、腹の中を探り合う。トーマスにとってはこれもゲームのように見える。そして警察にはできない利点として、キャサリンは何と大胆にもトーマスの自宅に忍び込む。そこで隠されていたモネを見つけ意気揚々と警察署に持ち帰る。ところが厳正なる鑑定の結果、それが偽物であることがわかる。キツネとタヌキの化かし合いという言葉は陳腐だが、ホームズとルパンの知的対決の如しである。

これに激高したキャサリンは、さらに大胆にトーマスに仕掛けて行く。ダンスパーティーに乱入し、トーマスに近づくと、一緒に踊っていた女性からトーマスを取り上げる。トーマスもこれに応じ、2人はそのまま一夜を共にする。これはミイラ取りがミイラになったのか、それともベッドをともにしても、それも相手を捕らえる戦略なのか。そのまま何度も逢瀬を重ねるようになる2人。しかし、トーマスはダンスを踊っていた若い女性と夜な夜な会っており、その写真をマッキャン刑事に見せつけられたキャサリンは動揺する。

キャサリンは果たしてトーマスを捕らえるのか、それとも大富豪で二枚目で、困難な盗みさえスマートにこなす怪盗でもあるトーマスに心を盗まれてしまったのか。なかなか先を読ませない展開が面白い。主役のトーマスを演じるのはピアース・ブロスナン。さすがに元ジェームズ・ボンドだけあって、スマートな大富豪役がピッタリと絵になる。現代版アルセーヌ・ルパンとでも言えそうなトーマス・クラウンというキャラクターの完璧な行動が心地良い。

最後までスマートなトーマス・クラウン。観るのも楽しい映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年09月24日

【ファーゴ】My Cinema File 2915

ファーゴ.jpg

原題: Fargo
1996年 アメリカ
監督: ジョエル・コーエン
出演: 
フランシス・マクドーマンド:マージ・ガンダーソン
スティーヴ・ブシェミ:カール
ウィリアム・H・メイシー:ジェリー・ランディガード
ピーター・ストーメア:ゲア・グリムスラッド
ジョン・キャロル・リンチ:ノーム・ガンダーソン

<映画.com>
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コーエン兄弟によるブラックユーモアをちりばめた異色のクライムサスペンス。厚い雪に覆われるミネソタ州ファーゴ。多額の借金を抱える自動車ディーラーのジェリーは、妻ジーンを偽装誘拐して彼女の裕福な父親から身代金をだまし取ろうと企てる。ところが誘拐を請け負った2人の男が警官と目撃者を射殺してしまい、事件は思わぬ方向へ発展していく。アカデミー脚本賞、主演女優賞をはじめ、多数の映画賞を獲得した。
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物語の舞台は1987年のミネソタ州ミネアポリス。自動車販売店の営業担当ジェリー・ランディガードは、酒場で怪しげな2人の男と落ち合う。男たちはカールとゲア。ジェリーとは初対面で、どうやら自社の整備工場のメカニックであるシェプから紹介されたようである。話の内容は穏やかではない。ジェリーは妻ジーンの誘拐を2人に依頼する。そして義父のウェイドから8万ドルの身代金をせしめるという話をする。報酬は折半である。ジェリーは、さらに要求通りに販売店から持ち出した車を仕事用兼報酬の一部として引き渡す。

義父のウェイドは自動車販売店のオーナー。つまりジェリーにとっては義父でもあり上司でもある。一方で、ジェリーはウエイドにある投資案件を持ちかけていたが、この話にウエイドが興味を示し、乗り気になる。金に困っていたジェリーはいろいろと手を打っていたようであるが投資話がまとまるなら誘拐は必要ない。しかし、中止の連絡をしようとしたが連絡がつかない。さらに投資の話もジェリーを信用しないウエイドが自らやると言い出す。それだとジェリーの取り分は減り、思惑通りにはならない。

そんな中、2人組は白昼堂々とジェリーの家に押し入ってジーンを誘拐する。ジーンを車の後部座席に押し込みアジトへ向かうが、途中の路上でパトロール中の警官に停車を命じられる。乗っていた車は販売店からそのまま持ってきたため、ナンバープレートをつけていなかったのである。カールは金を渡して済まそうとするが、警官は応じない。犯行がバレそうになり、なんとゲアが警官を射殺する。さらに偶然にもその場を通りかかった車に乗っていた若者2人にも目撃され、ゲアはこれを追いかけて2人を殺してしまう。

事件発生を受け、ブレーナード警察署の署長マージ・ガンダーソンが臨月の身を押して殺人事件の捜査に乗り出す。殺害された警察官がメモしていた車の記録から車が目撃されたモーテルを探し出し、そこで2人組と行きずりの関係を持った女達から人物風体を聴取する。また、そのモーテルから発信された電話がシェプ宛てであること、シェプの勤務先が犯罪に使用された車の所有ディーラーであることから、マージはジェリーの元を訪ねてくる。警察が動き出したことにジェリーは動揺し、質問に対する受け答えもどこかあやふやになる。

物事は必ずしも思った通りにはいかない。この映画では金に困った男が妻を誘拐させて裕福な義父から身代金をせしめようとした事を発端とし、思いもかけない殺人事件に発展して収拾がつかなくなっていく様子を描いていく。それはまるで雪面を転がる塊が大きな雪だるまになっていくかのよう。安易に知らない人物に狂言誘拐を依頼したばかりに、いつの間にか殺人事件にまで進展してしまう。それも最初は見知らぬところから始まり、ついにはジェリーの身内にも及ぶ。

一連の事件では、誰も得をしない。犯罪とはそういうものと言えばその通り。それにしても登場人物のほとんどが不幸なラストを迎える。唯一の例外は警察署長のマージ。家に帰れば平凡な夫とささやかな家庭を築いている。殺伐とした外の事件とほんのりとしたマージの家庭とは実に対照的である。それにしても雪原に埋めたあのお金はどうなったのだろう。何となく時代を感じさせるところがあると思っていたら、1996年の映画であった。思いもかけない展開という意味では、『テルマ&ルイーズ』(My Cinema File 2914)と同じような映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年09月22日

【テルマ&ルイーズ】My Cinema File 2914

テルマ&ルイーズ.jpg

原題: Thelma & Louise
1991年 アメリカ
監督: リドリー・スコット
出演: 
スーザン・サランドン:ルイーズ
ジーナ・デイヴィス:テルマ
ハーヴェイ・カイテル:ハル
マイケル・マドセン:ジミー
クリストファー・マクドナルド:ダリル
スティーヴン・トボロウスキー:マックス
ブラッド・ピット:J.D.
ティモシー・カーハート:ハーラン

<映画.com>
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『ブレードランナー』「ブラック・レイン」のリドリー・スコット監督が女性2人の友情と逃避行を描き、「1990年代の女性版アメリカン・ニューシネマ」と評されたロードムービー。
ある週末、主婦テルマとウェイトレスのルイーズはドライブ旅行に出かけるが、途中で立ち寄った店の駐車場でテルマが男にレイプされそうになり、助けに入ったルイーズが護身用の拳銃で男を撃ち殺してしまう。ルイーズには、かつてレイプ被害を受けたトラウマがあった。警察に指名手配された2人は、さまざまなトラブルに見舞われながらメキシコへ向かって車を走らせるうちに、自分らしく生きることに目覚めていく。
ジーナ・デイビスがテルマ、スーザン・サランドンがルイーズを演じ、ハーベイ・カイテル、マイケル・マドセンが共演。キャリア初期のブラッド・ピットも短い出演時間ながら印象を残した。カーリー・クーリが脚本を手がけ、1992年・第64回アカデミー賞で脚本賞を受賞。2024年2月、スコット監督自身の監修により製作された4Kレストア版でリバイバル公開。
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主人公はタイトルにもある通り、テルマとルイーズの2人の女性。ルイーズは、ウェイトレスとして働いており、専業主婦のテルマにその日から予定している旅行について電話をする。ところがテルマは、高圧的な夫に何も言えない。当然ながらルイーズとの旅行についても話せていない。テルマはとうとう夫のダリルに旅行のことを言えないまま迎えに来たルイーズの車に乗り込む。山のような荷物を積み込んだテルマは、ダリルから護身用に預かっている拳銃まで持ち出す。

普段抑圧されている反動か、テルマのテンションは高い。そして2人は、途中休憩でとある町のナイトクラブに寄る。調子に乗ったテルマは、酒を飲み、言い寄って来たハーランという男と踊る。たしなめるルイーズの声にも耳を貸さない。踊り疲れたテルマは、ハーランに連れられて外へと出る。ハーランは口説きにかかるが、テルマが断ると態度を一変させ、レイプしようとする。必死に抵抗するテルマだが、男の力にはかなわない。そこにテルマを探しにきたルイーズがやってくるが、ハーランは気にせずルイーズを侮辱する。腹を立てたルイーズは、なんとテルマが持ってきた拳銃でハーランを撃ち殺してしまう。

そのまま2人は、車で逃走する。突然の出来事にパニックに陥った2人は罵り合いながらも、現場から遠ざかる。一方、ナイトクラブではハーランの死体が発見され、警察が捜査に乗り出す。捜査にあたるのはハル刑事。目撃者からハーランがろくでなしであるとの証言を得たハル刑事は、2人組の女性を有力な容疑者として捜査を開始する。旅行どころではなくなったルイーズとテルマ。警察に捕まるのを恐れ、メキシコに逃れることを決意する。先立つ金を工面すべく、ルイーズは恋人のジミーに連絡する。ジミーは戸惑いながらもルイーズの頼みを聞き入れる。

テルマは夫のダリルに電話を入れる。ダリルは浮気で帰りが遅くなったにも関わらず、電話に出るなり「すぐ戻ってこい」とテルマを怒鳴りつける。この態度に怒ったテルマは電話を叩き切る。そしてルイーズと一緒にメキシコに行くことを決意する。2人はジミーからの送金を受け取るためオクラホマに向かう。そして途中で、ヒッチハイクをする若者のJ.Dに出会う。まだ懲りないのかテルマはJ.Dと意気投合し、気が進まないルイーズの反対を押し切ってJ.Dを車に乗せる。

オクラホマのホテルに着くと、送金するはずが、ジミー自ら金を届けに来ている。ルイーズを心配したジミーは、プロポーズの指輪を持って迎えに来たのである。そのままルイーズとジミーは、最後の夜を過ごす。一方、テルマの部屋には別れたはずのJ.D.が訪ねて来る。調子に乗ったテルマは、ルイーズが不在なのをいい事に、J.Dを部屋に招き入れる。これが2人の運命を狂わせる2つ目の出来事になる。せっかくジミーが届けてくれた逃走資金(ルイーズの全財産)をJ.Dが持ち逃げするのである。

ウエイトレスと専業主婦という2人の平凡な女性テルマとルイーズが、日頃の憂さを忘れて2人だけの旅に出るが、ふとしたきっかけで殺人事件を起こした事でその運命を大きく狂わせていくストーリー。その狂い方も半端ではない。そのきっかけを作ったのはテルマなのであるが、男に弱いところが如実に現れている。そしてお金を取られて絶望するルイーズを慰めるテルマは、自らの失態を取り返すべく、J.D.の真似をしてなんとスーパーに強盗に入る。まるで斜面を転がる雪だるまのように2人の罪は大きくなっていく。

しかし、警察の包囲網は確実に狭まっていく。思いもかけなかった2人の旅行の「行き先」。何とも言えないラストは、予想もしなかったもの。予想を裏切る映画はそれだけで面白い。それにしてもテルマが撃った事もない銃を考えもせず持ち出さなかったら、冷静になってルイーズが最初の殺人の時に自首していたら(状況からいったら正当防衛が認められていたかもしれない)、2人の運命も変わっていたのだろう。名画『明日に向かって撃て』(My Cinema File 1019)を彷彿とさせるラストシーンの映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年03月19日

【BAD LANDS バッド・ランズ】My Cinema File 2831

BAD LANDS バッド・ランズ.jpeg
 
2023年 日本
監督: 原田眞人
原作: 黒川博行
出演: 
安藤サクラ:橋岡煉梨(ネリ)
山田涼介:矢代穣(ジョー)
生瀬勝久:高城政司
吉原光夫:佐竹正敏
大場泰正:教授(宇佐美)
淵上泰史:胡屋賢人
天童よしみ:新井登茂子
江口のりこ:日野班長
岡田准一:アロハの男(友情出演)
宇崎竜童:曼荼羅(上松)

<シネマトゥデイ>
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黒川博行の小説「勁草」を、『日本のいちばん長い日』 『関ヶ原』などの原田眞人監督が映画化したクライムサスペンス。特殊詐欺を生業とする姉とその弟が、大金の動く取引に加担し、巨悪との対立に巻き込まれていく。主人公の姉弟を『万引き家族』などの安藤サクラと『鋼の錬金術師』シリーズなどの山田涼介が演じ、生瀬勝久や吉原光夫、江口のりこ、宇崎竜童などが共演する。
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どこかの倉庫のような場所の2階にあるカウンター・バー「BAD LANDS」。そこにやって来たのは常連のネリ。ネリは特殊詐欺グループに所属しているが、遅れて詐欺グループ「番頭」の高城が現れる。ネリは右耳しか聞こえないが、雑多な知識と頭の回転の速さもあって高城から一定の信頼を得ている。詐欺グループでは標的のリストを作る「名簿屋」、電話をする「かけ子」、実際に金を受け取る「受け子」やATMから金を降ろす「出し子」、「ケツモチ」のヤクザと分業が進んでいるが、中でもネリは「受け子」を補助する「三塁コーチ」の役割を担っている。

その特殊詐欺の現場。ターゲットにされた老婆が銀行から520万円を引き出す。ネリは銀行内でさり気なくその動きを観察する。そして「受け子」の“教授”と呼ばれる男を連れ、ターゲットとの待ち合わせ場所へ向かう。ネリはその間にも周囲の観察を怠らない。そして待ち合わせ場所の周辺に銀行にいた人物が多くいることから、刑事が張り込んでいると見抜き、ネリは即座に計画を中止すると、高城に連絡しその場を去る。教授は西成区の高城が所有する安アパートに住んでおり、ネリは彼を家まで送ると賃金を渡す。

そのアパートには、ネリ自身も部屋を借りている。住人はみな金のない者たちで、中でも“曼荼羅”と呼ばれる元ヤクザの老人にネリは目をかけている。映画の冒頭はそんな登場人物たちの紹介が中心。ネリには、刑務所に服役経験のある血のつながらない弟ジョーがいる。2人でペアを組んで次のターゲットを絞る「下見」に行く。証券会社や老人ホームの人間を装って各家庭の様子を聞き出し、ターゲットとなり得る高齢者をリスト化していく。ネリにも過去があり、逃走中である。そんなネリを追うのは数百億の資産を持つ投資家・胡屋である。

ネリは用心深く慎重なタイプだが、ジョーは違う。ネリを誘うと、違法賭博場を訪れる。初めこそついていたものの、ネリが曼荼羅が騒ぎを起こしたと聞いて帰ってしまい、そのあとジョーは賭けに負け続け、あっという間に250万円の借金を負ってしまう。さらに、実はジョーが賭博場に来たのは、胴元の林田から殺しの仕事を請け負うためであり、ジョーはネリに内緒で殺しの仕事を100万円で引き受ける。しかし、計画性も度胸もないジョーはあえなく失敗。おまけに仲間も1人刺殺されてしまう。

なんとか逃げ延びたものの、ジョーはもっと大金を手に入れようと、なんと高城の事務所への押し込み強盗を実行に移す。生き残った仲間とともに事務所へと押し入ると、高城を脅して金庫を開けさせようとする。ところがここでもジョーは高城に組み伏せられ、逆に刺殺されそうになる。そこへネリが戻ってくるが、予想外の状況に戸惑いながらジョーから助けを求められ、そのままネリはナイフで高城を刺してしまう。ジョーは高城にとどめを刺し、さらに負傷していた仲間をも射殺する・・・

『万引き家族』(My Cinema File 2119)以来、安藤サクラの出演映画は欠かせないが、主演映画とあって迷わず鑑賞にいたる。今度の役柄は犯罪者。過去にはいろいろあって、今は社会の片隅で身を隠して生きている。そのために特殊詐欺のグループに属している。そんなネリを追うのは、かつての雇い主である胡屋。これが金にものを言わせたいけ好かない男。秘書を侍らせ傅かせている。お気に入りの女ネリに執着していて、今もなおその行方を追っている。一方でネリの属する特殊詐欺グループを追う警察。三つ巴の展開が繰り広げられる。

ネリの周辺は徹底して社会の下層階級が集まる。そしてそこに群がる犯罪集団。高城を殺してしまったネリはジョーとともに逃走を画す。タイトルとなっているのは、ネリたちが根城にしているカウンター・バー。追われたネリとジョーには意外な結末。社会の下層でもネリは優しい。わずかな金で平気で人を裏切り、殺しさえする者もいるが、安アパートに身を寄せる者たちにネリはどこまでも優しい。犯罪映画ではあるが、その優しさに犯罪感は薄れていく。ラストで全力疾走するネリ。その行く先を想像してみたい映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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