2017年08月27日

【アンダーカバー】

アンダーカバー.jpg

原題: Imperium
2016年 アメリカ
監督: ダニエル・ラグシス
出演: 
ダニエル・ラドクリフ:ネイト・フォスター
トニ・コレット:アンジェラ
トレイシー・レッツ
デビン・ドルイド
パベウ・シャイダ
ネスター・カーボネル
サム・トラメル

<映画.com>
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『ハリー・ポッター』シリーズのダニエル・ラドクリフが主演を務め、テロ計画を阻止するためネオナチ組織に潜入した実在のFBI捜査官マイケル・ジャーマンの体験を映画化。アメリカで放射性物質セシウム6缶の行方がわからなくなり、首都ワシントンを標的にした大型テロの可能性が浮上した。FBIは白人至上主義者のカリスマ的存在であるダラス・ウルフの情報を収集するため、若手捜査官ネイトに潜入捜査を命じる。自らの頭をスキンヘッドにして白人至上主義者になりきったネイトは、ウルフと面識のあるネオナチ青年ビンスの仲間になることに成功するが……。ラドクリフがスキンヘッド姿で主人公ネイト役を熱演。ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2017」上映作品。
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主人公は、FBI捜査官ネイト・フォスター。体の小さなネイトは、頭脳派タイプで、肉体派の仲間からはからかわれる日々。おりしもワシントンDCで大量のセシウムが輸入された事実が判明する。テロ組織の手に渡れば大規模なテロに利用されるかもしれない。捜査本部は国内のアラブ組織をターゲットにするが、唯一、国内テロ課のアンジェラ捜査官は白人至上主義者のグループの可能性を指摘する。

そんなアンジェラは、ネイトを呼び出すと白人至上主義者のグループへの潜入捜査を命じる。彼女は、ダラス・ウルフという男のラジオ番組に注目していて、その番組はネオナチやKKKなどの差別団体から支持されており、カリスマ的存在のウルフは「近々大きな計画がある」と宣言していたのである。ネイトは、自分には荷が重すぎると躊躇するが、アンジェラは彼を説得する。

ネイトは、ウルフについて学び、頭をスキンヘッドにし、元海兵隊の軍人で医薬品会社を経営していてどんな薬品でも手に入るという経歴を作り上げる。そしてメンバーが出入りするパブで、まずはウルフを知るという男ヴィンスという親しくなる。それを機に、ネイトは、ヴィンスの友人ジェリーを始めとして様々な男たちと接触する。やがて、ダラス・ウルフの決起集会に参加するチャンスが訪れ、ネイトはついにウルフに紹介される・・・

『アンダーカバー』とは、文字通り潜入捜査。主人公のネイトは、特命を受けて白人至上主義者の集団に潜入する。白人至上主義者と言っても、ネオナチやKKKなど様々な団体がある。みんな入れ墨等をしていかにも過激で、白人社会の人種差別を強く意識させられる。潜入したネイトは自ら入れ墨を入れ、すっかりなり切っていく。捜査が終わったらどうするんだろうと観ている方は余計な心配をしてしまう。

潜入捜査については、しばしば映画でも採り上げられている。中でも個人的に印象に残っている映画としては、アル・パチーノの『クルージング』があり、香港映画の『インファナル・アフェア』、それをリメイクした『ディパーテッド』があるが、ミイラ取りがミイラになる(なりそうになる)ところが潜入捜査をテーマとしたストーリーの面白さがあると言え、この映画もそんな臭いが途中までして良かったと思う。

ダニエル・ラドクリフは、『ハリー・ポッター』では適役だと思っていたが、シリーズを下って『ハリー・ポッターと死の秘宝』となると成長してしまって子役には合わなくなっていたが、実はとても小柄なんだとこの映画で気付かされる。「子供の頃いじめられていた」という主人公のイメージにピッタリである。

ストーリーは最後に小規模などんでん返しがあってそれなりに楽しめるが、「潜入捜査の代表作」には程遠い。ほどほどに面白いというのが、正直な感想である。白人至上主義者の集団をもうちょっと突っ込んで描いていたら、もしかしたらもっと面白かったんじゃないかと思う。単なる奇人の類ではなく、今世界でも数が増えている移民排斥の動きなんかの背景と絡めてみても面白かったかもしれないと思う。

そんなところが、個人的に「普通の映画」を脱しきれなかった所以である。ダニエル・ラドクリフには、次回作を期待したいと思う・・・


評価:★★☆☆☆




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2017年08月26日

64 ロクヨン 後編

64 ロクヨン 後編.jpg

2016年 日本
監督: 瀬々敬久
原作: 横山秀夫(『64』)
出演: 
佐藤浩市:三上義信
綾野剛:諏訪
榮倉奈々:美雲
夏川結衣:三上美那子
窪田正孝:日吉浩一郎
坂口健太郎:手嶋
筒井道隆:柿沼
鶴田真由:村串みずき
赤井英和:望月
菅田俊:漆原
烏丸せつこ:日吉雅恵
椎名桔平:辻内欣司
滝藤賢一:赤間
奥田瑛二:荒木田
仲村トオル:二渡真治
吉岡秀隆:幸田一樹
瑛太:秋川
永瀬正敏:雨宮芳男
三浦友和:松岡勝俊
緒形直人:目崎正人

<シネマトゥデイ>
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『クライマーズ・ハイ』などで知られる横山秀夫の原作を基に、『感染列島』などの瀬々敬久監督と『ザ・マジックアワー』などの佐藤浩市主演で映画化した犯罪ドラマの後編。昭和時代の最後の1週間にあたる昭和64年に起きた未解決誘拐事件と、新たに発生した類似の事件の謎に迫る。県警の広報官を演じる佐藤のほか、綾野剛、榮倉奈々、永瀬正敏、三浦友和ら豪華キャストが集結。事件の行く末はもちろん、警察と記者クラブとの摩擦や警察内の対立、主人公の娘の行方など怒とうの展開に目がくぎ付け。
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前編のラストで発生した誘拐事件。捜査本部が設置され騒然となる署内。主人公三上は、広報官として捜査本部に情報提供を求めるが、情報提供を拒否される。やがて犯人の要求が明らかとなり、その内容が昭和64年に起きた少女誘拐殺人事件「ロクヨン」に酷似していることが判明する。同じ犯人によるものなのか、それとも模倣犯なのか。これにより、予定されていた警察庁長官による激励訪問が中止される。

ポストを巡るキャリアとノンキャリの暗闘。そしてせっかくマスコミとの信頼関係を構築しつつあった三上は、捜査本部の実名公開拒否で再び関係悪化の危機に陥る。三上は何とか実名情報を得ようと、今や鉄のカーテンが引かれた捜査本部の様子を伺い、信頼するかつての上司、刑事部捜査一課長の松岡に迫る。松岡の周辺には捜査一課の刑事がガードを張り巡らせ、マークされている三上は近づけない。この同じ警察内の対立構造がこの物語のだいご味でもある。

ロクヨン模倣事件の捜査が進む一方、ロクヨン関係者の動向が描かれる。被害者の父親雨宮芳男は、妻に先立たれ一人寂しく暮らしている。当時自宅班に所属していた日吉は引きこもりとなり、同じく幸田は「幸田メモ」なるものを残して退職している。事件当時の隠された何かが蠢く。そして記者クラブでは、実名非公開に対する記者たちの非難の怒号が飛び交い、刑事部から派遣された落合刑事は対応できずに追い詰められる。

通常の刑事ドラマでは、犯人と刑事の息詰まる死闘が描かれるものであるが、ここでは警察内の対立、警察と記者との対立、キャリアとノンキャリアとの対立等が中心となっていて、他の刑事ドラマにはない面白さがある。この後編では、実際に事件が起こるが、広報官からすると、敵対しているかのような刑事部も捜査はきちんとやっている。その進展もまた手に汗握る。

マスコミと広報室の対立、広報室と刑事部の対立、キャリアとノンキャリアの対立、ロクヨン事件で隠蔽された事実、それぞれの登場人物たちが複雑に絡み合う展開は、ストーリーから目が離せない。このあたりは原作の面白さを映像の世界で見事に再現。息つく暇もない濃厚なストーリーである。

主演は佐藤浩市。この人は、どこか陰のある人物がよく似合っている。ここでは刑事部(とキャリア上司)とマスコミとの間で苦労し、一方家庭では娘が家出して行方がわからないという心労を抱えている。押しつぶされそうな日々で、被害者の雨宮の前でつい涙を流してしまったりする。部下思いでもありすべての重荷を自ら背負っている。適役という感じがする。

一方で、捜査一課長として登場するのが三浦友和。かつての二枚目俳優もすっかり大貫禄。刑事部としての立場を守りつつ、かつての部下三上にそっと情報をもらす。厳しさの中に思いやりを秘め、個人的に印象に残るキャラクターである。その他、綾野剛や榮倉奈々、椎名桔平や奥田瑛二といった重鎮が多数出演し、見所満載。映画化するならこのくらいはしてほしいという願い通りのものと言える。

原作を読んでも良し、映画を観ても良し。
実に面白い作品である・・・


評価:★★★☆☆



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2017年08月25日

64 ロクヨン 前編

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2016年 日本
監督: 瀬々敬久
原作: 横山秀夫(『64』)
出演: 
佐藤浩市:三上義信
綾野剛:諏訪
榮倉奈々:美雲
夏川結衣:三上美那子
窪田正孝:日吉浩一郎
坂口健太郎:手嶋
筒井道隆:柿沼
鶴田真由:村串みずき
赤井英和:望月
菅田俊:漆原
烏丸せつこ:日吉雅恵
椎名桔平:辻内欣司
滝藤賢一:赤間
奥田瑛二:荒木田
仲村トオル:二渡真治
吉岡秀隆:幸田一樹
瑛太:秋川
永瀬正敏:雨宮芳男
三浦友和:松岡勝俊

<シネマトゥデイ>
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『半落ち』などの原作者・横山秀夫が執筆した小説を、佐藤浩市ほか豪華キャストで映画化した犯罪ドラマの前編。平成へと年号が変わる直前の昭和64年に起きた未解決の誘拐事件「ロクヨン」をめぐり、県警警務部の広報官を主人公に警察内部の対立や県警記者クラブとの衝突などを浮き彫りにしていく。監督は『ヘヴンズ ストーリー』などの瀬々敬久。主演の佐藤のほか、綾野剛、榮倉奈々、瑛太らが出演。緊張感あふれる演出と演技で描かれる、お蔵入り事件の謎や登場人物たちの確執に注目。
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原作を読んでめちゃくちゃ面白かったため、映画化されるとあって観ることに迷いはなかったこの映画。さらに期待感を抱かせたのは、前編後編の二部作になっていたこと。いくら原作が面白くても、これを普通の2時間程度の映画の枠に収めるには絶対に無理がある。それを前編・後編と二部構成にしたのは、当然と言えば当然であるが、やはり嬉しいことである。

昭和64年1月、小1の少女が何者かに誘拐される。群馬県警捜査班の主人公三上は、誘拐された少女の家、雨宮家にやってくる。緊迫した中、犯人から身代金を要求する電話があり、父親の雨宮芳男は丸越デパートのスーツケースに現金を詰め、犯人が要求する場所へ車を走らせる。転々と場所が変わり、その都度雨宮は移動し翻弄される。そして最後に、犯人の要求通りスーツケースを川へ投げ落とす。しかし、後日発見されたスーツケースは空で少女は遺体となって発見される。時に昭和天皇崩御により、時代は昭和から平成へと変わる。その興奮の中で、事件は大きく扱われることもなく終わる。

それから14年、主人公の三上は妻の美那子とともに遺体安置所にいる。遺体を確認した三上は、遺体が彼らの娘ではなかったことに安堵する。三上の娘は、数年前から家出して行方不明になっているのである。その三上は、群馬県警で広報官として働いている。上司の赤間は、娘の捜索のため歯型等の情報を渡すように求めているが、その「親切」はおざなりで、娘の生存を信じている三上はそれを拒んでいる。

一方、広報官として働く三上は、ある交通事故を巡り実名報道を巡って記者クラブの記者たちと対立している。内心では実名報道を認めたい三上だが、加害者が公安関係者の家族であったことから、忖度した上層部が公表を許可しない。開かれた広報を目指す三上は、己の信念と組織の命令との間で頭を痛めている。さらにそんな時、警察庁長官が、現在も捜査中の昭和64年に起きた少女誘拐殺人事件の被害者訪問が計画され、記者クラブに取材協力を申し入れる。実名報道を巡って対立する三上は、記者クラブのボイコット宣言にさらに苦悩を深める・・・

タイトルの64(ロクヨン)とは、警察の事件を指す符丁で、冒頭に起こったわずか7日間しかなかった昭和64年の少女誘拐事件のこと。前編は、この事件の発生と主人公の苦悩とが淡々と描かれていく。それまで警察を舞台にした物語といえば、大体が「刑事」が主役で、広報官というのは珍しい。そして、警察内部での不協和音。マスコミと良好な関係を築きたいと考える広報と、与える情報は必要最小限にとどめたい警察上層部をはじめとする刑事部等の対立。これはこれで興味深い。

14年が経過し、いまだ犯人の目星すらつかない64(ロクヨン)。警察上層部とマスコミとの間で苦しい立場に立たされる三上。いわゆるキャリア組として君臨する上層部は本当に憎々しげに描かれる。実際もこれに近いようなことはあるのかもしれないと感じる。キャリアとノンキャリア、そして階級格差。こうした警察内部の人間関係は、どこまでフィクションなのかはわからないが、前編での面白さを支えている。

そしていよいよ事件が起こる。この先は後編へと続くのであるが、ここまででも十分に面白い。原作の持つ面白さが、前後編編成となったことでうまく表せていると思う。後編へと自然にのめりこませてくれる前編である・・・


評価:★★★☆☆




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2017年05月21日

ザ・スクワッド

ザ・スクワッド.jpg

原題: THE SQUAD
2015年 フランス/イギリス
監督: バンジャマン・ロシェ
出演: 
ジャン・レノ:セルジュ
アルバン・ルノワール:カルティエ
カテリーナ・ムリーノ:マルゴー
ティエリー・ヌーヴィック:ベッカー


<シネマトゥデイ>
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『レオン』をはじめ数多くの出演作を誇るジャン・レノ主演のポリスアクション。パリ警視庁特殊捜査チームと凶悪な強盗団が、すさまじい戦いを繰り広げる。メガホンを取るのは、『ザ・ホード −死霊の大群−』などのバンジャマン・ロシェ。『ゴール・オブ・ザ・デッド』などのアルバン・ルノワール、『プレイ‐獲物‐』などのカテリーナ・ムリーノらが共演する。派手な銃撃戦やカーチェイス、無口な男を演じるジャンの雰囲気に引き込まれる。
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 主人公は、パリ警視庁の特殊捜査チームを率いる刑事セルジュ。冒頭から何やら倉庫に押し入った強盗団を急襲する。メンバーは、みな腕利きで、あっという間に強盗団を叩きのめし逮捕する。しかし、その手法は過激かつ暴力的で、たたでさえ庶民に不人気なフランス警察は、批判の的となる。新任の署長ベッカーは、そんなやり方に反対。セルジュと署長のベッカーは過去の因縁もあり、着任早々不服従の態度のセルジュとの間には不穏な空気が漂う。

 メンバーからは信頼の厚いセルジュではあるが、なかでもマルゴーとは不倫関係。しかもマルゴーの夫がベッカーだったりするから、穏やかではない。そんな中、宝石店で強盗殺人事件が発生する。日中店内に押し入った強盗団が、居合わせた女性客を射殺して逃走したもの。セルジュは、その手口から犯人はかつて自ら逮捕したものの証拠不十分で釈放せざるを得なかったアルミン・カスペールだと睨む。

 さっそく、「いつもの」やり方でカスペールとその仲間たちを連行するが、強硬な取り調べにもかかわらず決定的な証拠は出ない。さらに射殺された女性客を調べると、別人の犯行である可能性が高まり、カスペールは釈放される。セルジュのこの失態から、日頃のベッカーの不満もあって、チームとともにセルジュは捜査を外されてしまう。そうこうするうちに、再び同一犯と見られる強盗事件が発生する・・・

 フランス映画界の第一人者ともいうべきジャン・レノ。その出演作品はハズレが少ない。安心して観られる俳優さんと言える。そんなジャン・レノ主演となれば、観ない手はない。今回はフランス警察の刑事。と言っても、推理を得意とする渋いデカではなく、「西部警察」的なノリの強硬班である。そしてそんな強硬班となると、世間の不評を買って上司の覚えが悪いというのはある意味王道パターン。ジャン・レノ演じるセルジュは、やっぱり上司であるベッカー署長と事あるごとに対立している。

 そんなセルジュだが、密かにベッカーの奥さんと浮気しているというところはフランス的なのかもしれない。そしてその奥さんであるマルゴーは、セルジュ指揮下の強硬班のメンバーだったりする。そしてこの手のパターンとしては、やっぱり凶悪犯が登場する。宝石店を襲撃し、女性客を射殺し、高性能マシンガンを連射する。果たして今のフランスでもこういう事態は普通にあり得るのだろうかとちょっと思ってみたりする。

 凶悪犯との対峙が物語の本筋。上司との対立があって、ロマンスがあって悲劇もあるが、それを乗り越えて凶悪犯を退治する。そうした王道的なストーリーでも、それをいかに見せるかがその映画ならではと言えるだろう。この映画では、ジャン・レノの存在感だけでも満足であったが、脇役ながらアクション部門を引き受けたアルバン・ルノワールの存在も良かったと思う。

 安心して観られるフランス発の刑事アクション映画である・・・


評価:★★☆☆☆





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2016年08月21日

誰も守れない/誰も守ってくれない

誰も守ってくれない.jpg

2008年 日本
監督: 君塚良一
出演: 
佐藤浩市: 勝浦卓美
志田未来: 船村沙織
松田龍平: 三島省吾
佐野史郎: 坂本一郎
柳葉敏郎: 本庄圭介
石田ゆり子: 本庄久美子
木村佳乃: 尾上令子

<シネマトゥデイ>
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殺人犯の妹になった少女と、彼女を保護する刑事の逃避行を通じて日本社会の理不尽さを問う社会派ドラマ。『踊る大捜査線』シリーズの脚本を手掛けた君塚良一が脚本と監督を兼ね、過熱するマスコミ報道と容疑者家族の保護をテーマにした問題作を撮り上げた。兄の逮捕で世間から糾弾される少女に志田未来、彼女を守る刑事に佐藤浩市。手持ちカメラの擬似ドキュメンタリー手法が非情な社会感情を浮き彫りにし、観る者の心に迫る。
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本編の映画の公開に合わせ、テレビでその前編となるドラマを放映するという手法は、いろいろな映画で行われていると思う。個人的に記憶しているのは、『HERO』だろうか。映画とドラマと両方楽しめる効果もあるが、時間の短い映画の欠点を補うという効果もあると思う。この映画も、本編である『誰も守ってくれない』と前編にあたる『誰も守れない』とのドラマと映画のコンビである。

前編にあたるドラマでは、ある企業の人物が暴漢に襲われ、「家族も覚悟しろ」と言い残していったことから、警察は家族の警護を始める。娘の令子を警護することになったのは刑事の勝浦。実は勝浦は3年前のある事件で心に傷を負っており、一度カウンセリングに行ったが、そのとき担当した医師が令子であった。警護に反発する令子。一方で、勝浦の相棒の三島は、令子の医院に訪れる不審人物に気がつく・・・

前編のドラマは一件落着するが、ラストで幼い姉妹が18歳の若者に刺殺されるという事件が発生し、世間は騒然となる。そんな前編のラストを受けて、本編の物語が始まる。犯人はすぐに逮捕されるものの、自宅はマスコミが取り囲む。呆然とする家族を前に、警察の「加害者家族保護」のプログラムが始動する。慌ただしく形式的な離婚手続きを行い、家族全員が妻の姓に変わる。

所轄の勝浦は、三島とともに娘の保護を命じられる。娘を連れ出すも、車はマスコミの車両の追跡を受け、手配したホテルには情報を嗅ぎつけたマスコミが押し寄せる。思い余った勝浦は、マスコミの追撃を振り切り、娘の沙織を自宅へと連れ帰る。勝浦の家族は妻が娘を連れて家を出ており、勝浦は沙織のために令子に助けを求める。

前編のドラマを観ていれば、勝浦と令子の関係も良くわかり、勝浦がなぜ沙織のために令子を呼んだのかがわかる。だが、映画だけだとピンとこないかもしれない。そして勝浦と上司の微妙な関係。勝浦は三島に冗談半分に「シャブ漬けにするぞ」と言うが、この意味も前編のドラマを観ていないとわからない。3年前のある事件と勝浦への影響もわからないだろう。よくよく考えてみれば、前編のドラマを観ていないと、本編の映画もわからない部分が多いかもしれない。たまたま続けて観たからよかったものの、本編の映画を観るならその前に前編のドラマも観ておきたい。

本編の映画は、加害者の保護がテーマになっている。加害者の家族というのも微妙な立場だ。世間からは加害者と同一視され、非難はされても同情は得にくい。一方で、突然降りかかった思いもかけない災難は、被害者家族にも通じるものがある。事実、加害者の船村家にはマスコミが大挙して押し寄せ、おそらくあたりは騒然としてご近所もかなりの迷惑だろう。

実際に同じことをするのかどうなのかわからないが、警察は「保護」という名目で夫婦に対し離婚・再婚の手続きを行い、合法的に姓を変更する。事件は真実なのかと混乱する中、無理に手続きを促され、夫婦の心情はいかにと思わせられる。そして何よりも中学生の娘も、通学できなくなることを告げられ、携帯には友人たちからの興味本位のメールが殺到する。

ネットでは本来匿名にされるはずの犯人の名前が特定され、公開される。さらには家族も写真まで公開される。犯人に対する憎しみは家族にも及び、さらに保護している警察への非難から担当の勝浦までもが家族情報を含めて公開されてしまう。今や絵空事ではなく、犯人の名前程度ならすぐにネットに情報が流出しているわけであり、歯止めの効かない恐ろしさがある。実際はみんな匿名をいいことに、コソコソ動いているだけのネット住人で、映画のような現実はあまりないと思うが、それにしても現代社会というものを改めて考えさせられる。

ストーリー的な面白さでいけば、正直言ってイマイチである。ただ、問題提起という意味では、先端を行くドラマかもしれない。どうなるかと思われた大騒動も意外な決着をみる。それもまた現代のネット社会の特徴かもしれない。いろいろと感じさせてくれる映画である・・・


評価:★★☆☆☆





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