2024年02月02日

【アントニオ猪木をさがして】My Cinema File 2809

アントニオ猪木をさがして.jpeg
 
2023年 日本
監督: 和田圭介 三原光尋
出演: 
アントニオ猪木(アーカイブ映像)
有田哲平
アビッド・ハルーン
海野翔太
オカダ・カズチカ
神田伯山
棚橋弘至
原悦生
藤波辰爾
藤原喜明
安田顕

<映画.com>
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プロレスラー、実業家、政治家として伝説的なエピソードを持ち、2022年10月に79歳でこの世を去ったアントニオ猪木のドキュメンタリー。「馬鹿になれ!」「元気ですか!?」など、誰もが一度は耳にしたことのある数々の「言葉」を残してきた猪木。その「言葉」を切り口に、アントニオ猪木という人物の真の姿に迫っていく。
映画は、猪木に影響を受け、猪木を追い続けるさまざまなジャンルの人物の、それぞれの視点から見た猪木像を語るドキュメンタリーパートのほか、80 年代に猪木ファンとなった少年が、猪木の「言葉」から力をもらいながら過ごした90年代の青春、2000年代の中年期の人生を描く短編ドラマパート、そして猪木本人の貴重なアーカイブ映像とスチール写真という3つの要素で構成。それぞれの内容から、プロレスラー・アントニオ猪木、そして人間・猪木ェ至を立体的にひも解いていく。
ドキュメンタリーパートにはお笑い芸人の有田哲平、プロレスラーのオカダ・カズチカ、俳優の安田顕ら多彩な顔ぶれが出演。短編ドラマパートではプロレスラーの田口隆祐と後藤洋央紀が出演する。ナレーションと主題歌を福山雅治が担当。
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小学校6年からプロレスを観ながら成長した身としては、アントニオ猪木のドキュメンタリーとなると観ないわけにはいかない。そんな理由から鑑賞に至る作品。

映画はその生い立ちから追う。1943年、横浜の裕福な家庭に生まれた猪木寛至は、1957年に一家でブラジルへ移民する。今もまだ現地にいる当時の事を知る人たちを訪ねて行く。コーヒー農園で働き、サンパウロの中央市場ではその体格を生かし、ケースをいくつも担ぎ上げていたという。そこで力道山にスカウトされたのは有名な話。1960年17歳でデビューするが、当時の話はジャイアント馬場との関係も含めて省略される。

そして1972年、新日本プロレスを旗揚げ。今も残る新日本プロレスの道場は当時のアントニオ猪木の自宅の一角。大田区総合体育館での旗揚げ試合については藤波辰爾が振り返る。大手のスポンサーがついているわけでもなく、倍賞美津子や倍賞千恵子も宣伝カーに乗って総動員で手作業で準備をする。翌年にはテレビ放送が始まり、70〜80年代に空前のプロレスブームを起こし、1976年6月26日には格闘技世界一決定戦と称してモハメド・アリとの異種格闘技戦が日本武道館で行われる。

猪木アリ戦については、藤原喜明が「すごい緊張感があった。負けたらプロレス界から抹殺されるような空気感だった」と当時を振り返る。そしてパキスタンでのアクラム・ペルーワン戦となる。パキスタン大統領も観戦し、7万人の観客が見守る中、猪木はペールワンの肩を締め上げて脱臼させる。「折ったぞー!」と叫び腕を突き上げる猪木の映像を見ながら、「俺たち生きて帰れないな」と藤原は思ったそうである。当時33歳、そんな危険と背中合わせの試合をしたのは、アリ戦で負った借金が理由だそうである。

藤波が語るには、八百長論に猪木は敏感で、プロレスの地位を向上への意識を常に持っていたという。「あの人ほどの演出家はいない。試合前、準備運動しながら、モニターを見ながら、選手の顔色、どんな絵が映るか、会場の空席をチェックする。空いている席があったら営業を呼んで『客を回せ』と指示を出していた」というのは、意外な一面。「徹子の部屋」に出演した猪木が「魅せる要素と戦う要素の難しさがある」と話す映像も興味深い。

本編には様々な人物が登場する。神田伯山は1987年10月4日の「巌流島の戦い」の講談を無観客の巌流島で披露している。選手の大量離脱、自身の離婚問題、事業もうまくいかない中、起死回生の一発として行われたマサ斎藤との死闘は、「時間無制限」「無観客」「ノールール」というもの。伯山は、猪木を評して「発想もなにもかも先駆者である」とし、「すごいことをしているのに過小評価されている」と語る。

俳優の安田顕は写真家の原悦生との対談を行う。お笑い芸人の有田哲平は棚橋弘至との対談を行う。棚橋については2002年2月1日の札幌大会での猪木問答が流れる。さらに棚橋は新日本プロレスの道場にかかっていた若かりしアントニオ猪木の等身大パネルを外させたという。そんな対談に加え、3部のドラマが合間合間に流れる。8時からのテレビ中継に熱中していた少年時代。猪木の言葉で友人を励ます高校生。そしてベイダーに苦戦し、リングでもがく猪木に拳を握りしめる中年男・・・

ストロング小林戦を制した猪木が語る。「一生懸命戦っても負けることもある、これは宿命なんですね。10年保つ選手生活、1年で終わってしまうかもしれない。しかし、それがファンに対しての我々の義務だと思う。誰が挑戦しても、私が勝てない相手がいるかもしれない、なかには。しかし、私はいつ何時でも受けて立つ、それで負けても悔いはない。そういうつもりです」今聞いてもなかなか深い言葉である。それはプロレスだけに当てはまるものではないように思う。

アントニオ猪木のプロレスを夢中になって観てきたから面白いと思うのは間違いない。何も知らない人が観ても面白くないかもしれない。アントニオ猪木のドキュメンタリーではあるが、それだけではない。自分自身も熱中したあの頃が懐かしく思い起こされる一作である・・・


評価:★★☆☆☆








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2019年08月08日

【わたしはマララ】My Cinema File 2112

わたしはマララ<特別編>.jpg

原題: He Named Me Malala
2015年 アメリカ
監督: デイビス・グッゲンハイム
出演: 
マララ・ユスフザイ
ジアウディン・ユスフザイ
トール・ペカイ・ユスフザイ

<映画.com>
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2014年にノーベル平和賞を史上最年少で受賞した17歳の少女マララ・ユスフザイを、『不都合な真実』のデイビス・グッゲンハイム監督が取材したドキュメンタリー。パキスタンで学校を経営する詩人の父と文字の読めない母の長女として生まれたマララは、タリバンに支配された教育事情や暮らしについてブログに綴りはじめるが、ドキュメンタリーへの出演によって身元が知れ渡り、タリバンに命を狙われる身となってしまう。そして2012年、当時15歳だったマララと友人は、スクールバスで下校途中に銃撃され、頭に大怪我を負う。世界に衝撃を与えたこの事件を中心に、マララの生い立ちや父が彼女の名に込めた想いを明かし、普通の少女がなぜ教育活動家としての道を歩むことになったのか、その真相を描く。
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マララと言えば、女子教育を訴えてタリバンに銃撃され、九死に一生を得たパキスタンの少女として知られている。そのマララを主人公としたドキュメンタリーである。マララ・ユスフザイは、1997年、学校経営をする詩人の父と文字の読めない母との間に生まれる。その名前の由来は、その昔イギリスに侵攻されたアフガニスタンを救うために戦った少女・マラライの名を父が付けたもの。何かの縁を感じさせるエピソードである。

その伝説のマラライは、「奴隷として100年生きるより、獅子として1日を生きたい」と叫び自ら前線に立ち銃弾に倒れたそうであるが、まさにマララの運命と重なってしまう。差し詰めアフガニスタン版ジャンヌ・ダルクといったところであろうか。マララの故郷はパキスタン北部にあるスワート渓谷。2007年から次第にタリバンの支配が及ぶと、少女たちは教育を受けられなくなってしまう。イスラム過激派はボコ・ハラムもそうであったが、女子教育を認めない主張がなぜか多い。

マララは父親の影響もあって勉強熱心であり、自らおかれた実情をブログに綴っていくのだが、ニューヨークタイムズのドキュメンタリーへの出演をきっかけにタリバンに身元がバレてしまい、命を狙われることとなる。そして2012年、15歳の時、友人とスクールバスで下校途中に銃撃され、頭に大怪我を負う。幸いマララは奇跡的に一命を取り留めるが、左目の辺りには、今もその時の傷跡が残っている。

辛いリハビリを経て社会復帰したマララは、再びすべての少女が教育を受けられるよう活動を始める。恐怖心もあっただろうが、ティーンネージャーであるにもかかわらず、立派としか言いようがない。日常生活では弟と喧嘩をし、ごく普通のありふれた少女である。そんな娘を支える父もマララの活動を後押しする。私だったらとにかく身を隠させるだろうに、親も立派である。

その姿勢は世界に感動を与え、各国首脳とも面会する。圧巻は16歳になったマララが国連で行ったスピーチだろうか。そして17歳でノーベル平和賞を受賞する。それはタリバンの圧政に対抗する健気な少女に対する世界の支援と言える。「弟と喧嘩する初めてのノーベル賞受賞者」というセリフにはちょっとくすりとさせられる。ドキュメンタリーであるから、マララのそんな姿を追って行く。子どもの情操教育用にもいいかもしれない。

人にはそれぞれ己の信じる道を追求する権利がある。だが、それに反対する者を銃弾で弾圧する者の正義を認めたくはない。力で自らの主張を通し、相手を黙らせようとしたタリバンであるが、それが逆に世界に自らの非道をPRすることになったのは実に皮肉である。マララのみならず不当に貶められている人たちを応援したい。そんなことを強く思わせてくれるドキュメンタリーである・・・


評価:★★☆☆☆







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2016年01月06日

【アンディフィーテッド 栄光の勝利】My Cinema File 1495

アンディフィーテッド.jpg

原題: Undefeated
2011年 アメリカ
監督: ダニエル・リンジー/T・J・マーティン

<映画.com>
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弱小アメフト部を連勝に導いた熱血コーチの奮闘と選手たちとの絆をドラマチックに描き、2011年・第84回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー映画賞を受賞したスポーツドキュメンタリー。6年前、テネシー州メンフィスの高校アメフト部のコーチに就任したビル・コートニー。就任当初のチームは最悪の状態で、試合は連戦連敗、逮捕者まで出る始末だった。ビルはそんな部員たち一人ひとりと根気強く向き合って人間性や規律を叩き込むことで、彼らを常勝チームへと育てあげていく。
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アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞した記録映画。
事前知識がほとんどない状態で観たのであるが、初めはなんだかドキュメンタリーのようだとのんきに思っていたら、本当にドキュメンタリーだった。正直言ってドキュメンタリーにはあまり興味が湧かないので、もし知っていたらたぶん観なかっただろうし、途中で気がついて観るのをやめようかと思ったが、最後まで観て正解だった映画である。

舞台は、アメリカ、テネシー州メンフィス北部の町にあるマナサス高校。
もともとは自動車のタイヤ工場があって栄えていた町らしいが、今は工場も閉鎖され、荒れ果てた貧困地区となっている町にある公立校である。そこのアメリカン・フットボール部マナサス・タイガースは、補助金も少なく、試合をすれば負けるという弱小チーム。そんなチームを変えようと6年前から白人のビル・コートニーがコーチを引き受けている。

貧困地区とあって、生徒はほとんどが黒人。
冒頭、生徒たちに質問が飛ぶ。
「親戚を含め身内の者が刑務所に入っている人?」
するとほとんどの生徒の手が上がる。
日本ではほとんど考えられない環境だと思う。

そんな生徒たちを白人のコーチが指導していく。主に登場する生徒は、OC、マネー、チェイビス。いずれも高校生とは思えない巨体。ドキュメンタリーゆえか、生徒同士喧嘩してコーチの制止も聞かず帰ってしまったりする。それをコーチのコートニーは家に行き、話をし、諭して連れ帰る。なかなかの苦労だと思う。フットボールのコーチというより、生活指導もかなり入っている様子。

連戦連敗のチームがやがて常勝に転じるのであるが、練習風景は普通だし、何が変化をもたらしたのかは結局よくわからない。それがドキュメンタリーゆえなのかもしれないし、アメフトに焦点を当てきれなかったところなのかもしれない。ただ、コートニーが唱えていた「人間性、規律、チーム優先」という言葉は、よくチームに徹底されていたようだし、このあたりの指導が良かったのかもしれない。

コートニーの教えを守って努力していたマネー。
彼は途中で膝を怪我して試合に出られなくなる。
どうしても出たいと医師に訴える姿が印象的。
スポーツをやっていて、そして怪我をしたことがある者ならばその心境はよくわかるだろう。

そしてそんな彼に、あるオファーがもたらされる。
「人知れず努力していれば、どこかで誰かが見ていてくれる」というコートニーの言葉に泣き崩れるマネーの姿が感動的である。思わずもらい泣きのシーンであるが、ドキュメンタリーであることを考えると、ドラマ以上にドラマチックである。

肝心のアメフトの迫力は正直言っていまひとつだった。
そこはドキュメンタリーゆえに「作れなかった」のだろう。
ただ、コーチをはじめとして選手たちの姿が、それに変わるものを見せてくれる。
タイトルにある“Undefeated”とは、アメフトの試合での「不敗」という意味でつけたのかもしれないが、個人的には一人一人の生きるスタンスを表しているようにも思えた。

アカデミー賞受賞も納得のドキュメンタリーである・・・


評価:★★☆☆☆






posted by HH at 21:20| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | ドキュメンタリー/ドキュメンタリー風 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月20日

【ピラミッド5000年の嘘】My Cinema File 1054

ピラミッド5000年の嘘.jpg

原題: The Revelation Of The Pyramids
2011年 フランス
監督: パトリス・プーヤール

<Movie Walker 解説>
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クフ王の墓として知られるエジプト・ギザの大ピラミッドを、37年間かけて調査、研究。さらに6年間もの年月を費やして徹底的な検証を行った科学ドキュメンタリー。エジプト考古学はもちろん、建築学、地質学、物理学、人類学、天文学など幅広い分野で活躍する専門家たちが結集。これまでの定説や伝説が、次々に覆されていく。
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紀元前2700〜2500年代に国王・王族などの墓として建造されたと伝えられているピラミッドの中でも最大規模を誇り、クフ王の墓として知られているギザの大ピラミッド。
このピラミッドを巡るドキュメンタリーである。

ドキュメンタリーと言っても「パラノーマル・アクティビティ」のようなフェイク・ドキュメンタリーもあるからわからないのであるが、これは登場するのはピラミッドと各専門家だから、信じてもいいのかもしれない、などと思いつつ観ていく。

まずは一般的な検証から。
巨大な石をいかにして正確に積み上げたのか。
しかも建設期間はクフ王の在位していた20年と言われている。
しかし、一つあたり車一台分の重みのある石を使って20年で建設したとなると、そのペースは石一つ当たり2分半だという。

ただ石を積み上げただけでなく、内部には正確な角度で下る通路があり、四面は正確に東西南北を指している。また数学的知識の確率されていない時代にもかかわらず、ピラミッドを計測するとそこには円周率や黄金数、メートル法などが使われている。

ピラミッドとは一見無関係なイースター島の謎のモアイ像、マチュピチュの空中都市など同じように精巧に作られた遺跡群があり、それらはイースター島とギザを結ぶ線上に存在しているという事実。しかもその線上をぐるりと地球一周すると、カンボジアのアンコールワットやペルーのクスコなどの遺跡群が並び、しかもその位置関係は黄金比率に従っていたりする。
すべて偶然とするには、あまりにも・・・

さらにはスフィンクスに隠された謎があり、そのスケールは天体に及ぶ。
2万6千年を周期とする天体時計の存在。
それが過去の進んだ文明からのメッセージとすると、ある恐るべき警告に気がつく。
真面目なドキュメンタリーなのか、それともエンターテイメントなのか判別はつかねども、今までどこでも聞いた事のない事柄だけに、その内容に圧倒される事は確かである。

ただ、映画が公開されて世界的に何か問題提起のような動きがあるわけでもなし、世論が動いた形跡もない。と言う事は、専門家から見れば「それは違うだろう」というものがあるのかもしれない。邦題は「嘘」となっているが、原題は「暴露」。原題の方が当然内容に近い。

あくまでも知的好奇心を刺激されるエンターテイメントという位置付けなのか、それとも驚愕の真実なのか。実に興味深いドキュメンタリーである・・・


評価:★★☆☆☆


    



    
    

posted by HH at 22:52| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ドキュメンタリー/ドキュメンタリー風 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月02日

【シッコ】My Cinema File 423

シッコ.jpg

原題: SiCKO
2007年 アメリカ
監督: マイケル・ムーア

<STORY>********************************************************************************
医療保障の破滅によって崩壊し、粉々にされ、場合によっては命を絶たれてしまったごく普通のアメリカ人数名のプロファイルで幕をあける本作は、その危機的状況が、4700万人の無保険の市民たちだけでなく、官僚形式主義によってしばしば締め付けられながらも保険料を律儀に支払っている、その他数百万人の市民たちにも影響を及ぼしていることを明らかにする。
いかにしてこれほどの混乱状態になったのか、それだけを述べた後、観客はすぐに世界へ連れ出される。カナダ、イギリス、フランスといった国を訪れるのだが、それらの国々では、国民全員が無料医療という恩恵を受けているのだ。またムーアは、9・11事件の英雄の一団を集結させる。彼らは、アメリカにおいて医学的治療を拒否され、今も衰弱性疾患に苦しむ救助隊員たちであった…
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世界一豊かな国といえばどこを想像するであろうか。
アメリカ合衆国は間違いなく誰もがその候補とするのに反対はしない国である。
しかし、そんなアメリカにも大きな穴が開いていた。
これはそのアメリカの医療保障制度の欠点を取り上げたドキュメンタリーである。

シッコというと日本人としては変なものを連想してしまう。
だがこれは「変人」「狂人」という意味のスラングらしい。
そしてその意味は映画を観るとよくわかる。

日本では、というか先進国では国民健康保険制度があるので、病気になった、怪我をしたという時に病院に行くのは当たり前の事である。
ところがアメリカではまず先に財布の中身を確認しなければならない。
冒頭ではお金がないため、自分で傷口を縫う人の姿が紹介され、驚く事になる。
また中指と薬指を切断してしまった人が、中指60,000ドル、薬指12,000ドルと請求され、中指は諦めた事もショッキングである。一方、カナダでは5本切断した人が、すべて元通り縫合してもらっている。

アメリカには約3億人の人口のうち5,000万人が医療保険に加入していない。
それらの人々はちょっとした怪我や病気でも法外な費用を要求される事になる。
(これは日本でもそうである)
しかし、ではだからと言って加入していれば安心かと言えばそうではない。
加入者も保険金を請求すると様々な事情から保険金をもらえない事が多い。

@当時は意識不明の重態であったにもかかわらず「救急車が使用される場合には、事前に連絡が無ければ保険は適用されない」と言われた
A複数の医師からなる病院の医療チームが「この検査と手術が必要」と言っているにもかかわらず、保険会社はそんな検査や手術は必要ないとして保険金の支払いを拒否し、結果として治療を受けられずに亡くなった

保険会社専属の医師はあれこれと理由をつけて支払いを拒絶し、その否認率の高さによって高額のボーナスを支給される。
保険会社による議会や議員への工作は当然・・・
アメリカの病める実態に唖然とする。

一転してカナダ、フランス、イギリスと先進国へ飛ぶ。
すべて医療がただの国である。
その当然であるべきはずの様子にほっとするのである。
9.11のボランティア活動によって肺などに障害をもったボランティアたちを連れて、マイケル・ムーアはアメリカの仮想敵国キューバを訪れる。
そして彼らはそこで皆ただで治療を受けられてしまう。

なぜ世界一の国アメリカでこんな状況なのかと思わざるを得ない。
アメリカに気軽に旅行に出かける我々であるが、行く前に保険にきちんと入っておかないと大変な事になるみたいである・・・
これは観ておいた方がいいドキュメンタリーである・・・


評価:★★★☆☆



posted by HH at 11:06| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | ドキュメンタリー/ドキュメンタリー風 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする