2016年01月06日

アンディフィーテッド 栄光の勝利

アンディフィーテッド.jpg

原題: Undefeated
2011年 アメリカ
監督: ダニエル・リンジー/T・J・マーティン

<映画.com>
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弱小アメフト部を連勝に導いた熱血コーチの奮闘と選手たちとの絆をドラマチックに描き、2011年・第84回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー映画賞を受賞したスポーツドキュメンタリー。6年前、テネシー州メンフィスの高校アメフト部のコーチに就任したビル・コートニー。就任当初のチームは最悪の状態で、試合は連戦連敗、逮捕者まで出る始末だった。ビルはそんな部員たち一人ひとりと根気強く向き合って人間性や規律を叩き込むことで、彼らを常勝チームへと育てあげていく。
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アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞した記録映画。
事前知識がほとんどない状態で観たのであるが、初めはなんだかドキュメンタリーのようだとのんきに思っていたら、本当にドキュメンタリーだった。
正直言ってドキュメンタリーにはあまり興味が湧かないので、もし知っていたらたぶん観なかっただろうし、途中で気がついて観るのをやめようかと思ったが、最後まで観て正解だった映画である。

舞台は、アメリカ、テネシー州メンフィス北部の町にあるマナサス高校。
もともとは自動車のタイヤ工場があって栄えていた町らしいが、今は工場も閉鎖され、荒れ果てた貧困地区となっている町にある公立校である。
そこのアメリカン・フットボール部マナサス・タイガースは、補助金も少なく、試合をすれば負けるという弱小チーム。
そんなチームを変えようと6年前から白人のビル・コートニーがコーチを引き受けている。

貧困地区とあって、生徒はほとんどが黒人。
冒頭、生徒たちに質問が飛ぶ。
「親戚を含め身内の者が刑務所に入っている人?」
するとほとんどの生徒の手が上がる。
日本ではほとんど考えられない環境だと思う。

そんな生徒たちを白人のコーチが指導していく。
主に登場する生徒は、OC、マネー、チェイビス。
いずれも高校生とは思えない巨体。
ドキュメンタリーゆえか、生徒同士喧嘩してコーチの制止も聞かず帰ってしまったりする。
それをコーチのコートニーは家に行き、話をし、諭して連れ帰る。
なかなかの苦労だと思う。
フットボールのコーチというより、生活指導もかなり入っている様子。

連戦連敗のチームがやがて常勝に転じるのであるが、練習風景は普通だし、何が変化をもたらしたのかは結局よくわからない。
それがドキュメンタリーゆえなのかもしれないし、アメフトに焦点を当てきれなかったところなのかもしれない。
ただ、コートニーが唱えていた「人間性、規律、チーム優先」という言葉は、よくチームに徹底されていたようだし、このあたりの指導が良かったのかもしれない。

コートニーの教えを守って努力していたマネー。
彼は途中で膝を怪我して試合に出られなくなる。
どうしても出たいと医師に訴える姿が印象的。
スポーツをやっていて、そして怪我をしたことがある者ならばその心境はよくわかるだろう。

そしてそんな彼に、あるオファーがもたらされる。
「人知れず努力していれば、どこかで誰かが見ていてくれる」というコートニーの言葉に泣き崩れるマネーの姿が感動的である。
思わずもらい泣きのシーンであるが、ドキュメンタリーであることを考えると、ドラマ以上にドラマチックである。

肝心のアメフトの迫力は正直言っていまひとつだった。
そこはドキュメンタリーゆえに「作れなかった」のだろう。
ただ、コーチをはじめとして選手たちの姿が、それに変わるものを見せてくれる。
タイトルにある“Undefeated”とは、アメフトの試合での「不敗」という意味でつけたのかもしれないが、個人的には一人一人の生きるスタンスを表しているようにも思えた。

アカデミー賞受賞も納得のドキュメンタリーである・・・


評価:★★☆☆☆






2013年07月20日

ピラミッド5000年の嘘

ピラミッド5000年の嘘.jpg

原題: The Revelation Of The Pyramids
2011年 フランス
監督: パトリス・プーヤール

<Movie Walker 解説>
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クフ王の墓として知られるエジプト・ギザの大ピラミッドを、37年間かけて調査、研究。
さらに6年間もの年月を費やして徹底的な検証を行った科学ドキュメンタリー。
エジプト考古学はもちろん、建築学、地質学、物理学、人類学、天文学など幅広い分野で活躍する専門家たちが結集。これまでの定説や伝説が、次々に覆されていく。
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紀元前2700〜2500年代に国王・王族などの墓として建造されたと伝えられているピラミッドの中でも最大規模を誇り、クフ王の墓として知られているギザの大ピラミッド。
このピラミッドを巡るドキュメンタリーである。

ドキュメンタリーと言っても「パラノーマル・アクティビティ」のようなフェイク・ドキュメンタリーもあるからわからないのであるが、これは登場するのはピラミッドと各専門家だから、信じてもいいのかもしれない、などと思いつつ観ていく。

まずは一般的な検証から。
巨大な石をいかにして正確に積み上げたのか。
しかも建設期間はクフ王の在位していた20年と言われている。
しかし、一つあたり車一台分の重みのある石を使って20年で建設したとなると、そのペースは石一つ当たり2分半だという。

ただ石を積み上げただけでなく、内部には正確な角度で下る通路があり、四面は正確に東西南北を指している。
また数学的知識の確率されていない時代にもかかわらず、ピラミッドを計測するとそこには円周率や黄金数、メートル法などが使われている。

ピラミッドとは一見無関係なイースター島の謎のモアイ像、マチュピチュの空中都市など同じように精巧に作られた遺跡群があり、それらはイースター島とギザを結ぶ線上に存在しているという事実。
しかもその線上をぐるりと地球一周すると、カンボジアのアンコールワットやペルーのクスコなどの遺跡群が並び、しかもその位置関係は黄金比率に従っていたりする。
すべて偶然とするには、あまりにも・・・

さらにはスフィンクスに隠された謎があり、そのスケールは天体に及ぶ。
2万6千年を周期とする天体時計の存在。
それが過去の進んだ文明からのメッセージとすると、ある恐るべき警告に気がつく。
真面目なドキュメンタリーなのか、それともエンターテイメントなのか判別はつかねども、今までどこでも聞いた事のない事柄だけに、その内容に圧倒される事は確かである。

ただ、映画が公開されて世界的に何か問題提起のような動きがあるわけでもなし、世論が動いた形跡もない。
と言う事は、専門家から見れば「それは違うだろう」というものがあるのかもしれない。
邦題は「嘘」となっているが、原題は「暴露」。
原題の方が当然内容に近い。
あくまでも知的好奇心を刺激されるエンターテイメントという位置付けなのか、それとも驚愕の真実なのか。
実に興味深いドキュメンタリーである。


評価:★★☆☆☆


    



    
    

2009年08月02日

【シッコ】My Cinema File 423

シッコ.jpg

原題: SiCKO
2007年 アメリカ
監督: マイケル・ムーア

<STORY>********************************************************************************
医療保障の破滅によって崩壊し、粉々にされ、場合によっては命を絶たれてしまったごく普通のアメリカ人数名のプロファイルで幕をあける本作は、その危機的状況が、4700万人の無保険の市民たちだけでなく、官僚形式主義によってしばしば締め付けられながらも保険料を律儀に支払っている、その他数百万人の市民たちにも影響を及ぼしていることを明らかにする。
いかにしてこれほどの混乱状態になったのか、それだけを述べた後、観客はすぐに世界へ連れ出される。
カナダ、イギリス、フランスといった国を訪れるのだが、それらの国々では、国民全員が無料医療という恩恵を受けているのだ。
またムーアは、9・11事件の英雄の一団を集結させる。彼らは、アメリカにおいて医学的治療を拒否され、今も衰弱性疾患に苦しむ救助隊員たちであった…
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世界一豊かな国といえばどこを想像するであろうか。
アメリカ合衆国は間違いなく誰もがその候補とするのに反対はしない国である。
しかし、そんなアメリカにも大きな穴が開いていた。
これはそのアメリカの医療保障制度の欠点を取り上げたドキュメンタリーである。

シッコというと日本人としては変なものを連想してしまう。
だがこれは「変人」「狂人」という意味のスラングらしい。
そしてその意味は映画を観るとよくわかる。

日本では、というか先進国では国民健康保険制度があるので、病気になった、怪我をしたという時に病院に行くのは当たり前の事である。
ところがアメリカではまず先に財布の中身を確認しなければならない。
冒頭ではお金がないため、自分で傷口を縫う人の姿が紹介され、驚く事になる。
また中指と薬指を切断してしまった人が、中指60,000ドル、薬指12,000ドルと請求され、中指は諦めた事もショッキングである。
カナダでは5本切断した人が、すべて元通り縫合してもらっていた。

アメリカには約3億人の人口のうち5,000万人が医療保険に加入していない。
それらの人々はちょっとした怪我や病気でも法外な費用を要求される事になる。
(これは日本でもそうである)
しかしではだからと言って加入していれば安心かと言えばそうではない。
加入者も保険金を請求すると様々な事情から保険金をもらえない事が多い。

@当時は意識不明の重態であったにもかかわらず「救急車が使用される場合には、事前に連絡が無ければ保険は適用されない」と言われた
A複数の医師からなる病院の医療チームが「この検査と手術が必要」と言っているにもかかわらず、保険会社はそんな検査や手術は必要ないとして保険金の支払いを拒否し、結果として治療を受けられずに亡くなった人

保険会社専属の医師はあれこれと理由をつけて支払いを拒絶し、その否認率の高さによって高額のボーナスを支給される。
保険会社による議会や議員への工作は当然・・・
アメリカの病める実態に唖然とする。

一転してカナダ、フランス、イギリスと先進国へ飛ぶ。
すべて医療がただの国である。
その当然であるべきはずの様子にほっとするのである。
9.11のボランティア活動によって肺などに障害をもったボランティアたちを連れて、マイケル・ムーアはアメリカの仮想敵国キューバを訪れる。
そして彼らはそこで皆ただで治療を受けられてしまう。

なぜ世界一の国アメリカでこんな状況なのかと思わざるを得ない。
アメリカに気軽に旅行に出かける我々であるが、行く前に保険にきちんと入っておかないと大変な事になるみたいである・・・
これは観ておいた方がいいドキュメンタリーだ。


評価:★★★☆☆

2009年05月18日

【アース】My Cinema File 394

アース.jpg


原題: EARTH
2007年 ドイツ/イギリス
監督: アラステア・フォザーギル/マーク・リンフィールド

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50万年前、まだ若い地球に巨大な隕石が衝突した。
その影響は大きく、地球の地軸は23.5度も傾いてしまう。
しかしこの傾きがあったからこそ、地球には四季のうつろい、寒暖の差、そして生命が生み出されることになったのだ。
そんな傾きと太陽の光が作り上げた地球の姿を、北極から南極へと旅をしながら見ていこう。
まずは北極に住むホッキョクグマの親子の様子から……
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タイトルにもある通り、地球上の動物たちの様々な生体を捉えたドキュメンタリーである。
冒頭、一面の雪と氷の世界の北極圏。
冬眠からホッキョクグマが目覚めて活動を始める。
大自然の中で生きる動物たちの生活である。
しかし、どこか例年と様子が違う。
地球温暖化で氷が解け始めるのが早いのである・・・

そこからカメラは地球を南下していく。
ロシアのツンドラ地帯で暮らすアムールヒョウ。
ヒマラヤを渡る渡り鳥。
アフリカで水を求めて旅するアフリカゾウとそれを狙うライオン。
海ではクジラの親子。
そんな動物たちを淡々と紹介していく。

時としてはどうやって撮ったのだろうと驚いてしまう映像も多い。
近年はCGなどの映像技術でほとんどどんな映像でも表現可能となっている。
だから、映像自体に対する驚きも薄れつつある。
しかし、本物の持つ迫力がこの映画にはある。

弱肉強食の自然界。
心情的には手を差し伸べたくなるものも多い。
だが食物連鎖の中に生きる動物たちに対し、一時の感情から一部にだけ手を差し伸べるのは正しい事ではない。
それをわかりきったようにしてカメラは彼らを映し出していく。
ほのぼのとして微笑ましいものもあるが、全体的にはこの素晴らしい自然の生態系を地球温暖化という魔の手が侵食しつつあるという主張だ。

これだけの自然がまだまだ残っているという事実。
まだまだ十分に間に合うという事実。
映画によってそれが実にわかりやすく紹介される。
動物たちの生態は十分子供向けでもある。
親子で会話をしながら観るのにも適している。
休みの日に家族で観てはいかがだろうか・・・


評価:★★☆☆☆

2008年12月28日

【東京裁判】My Cinema File 322

東京裁判.jpg

1983年 日本
監督: 小林正樹
ナレーター: 佐藤慶

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昭和23年1月22日。
ポツダム宣言にもとづいて、連合軍最高司令官マッカーサー元帥が、極東国際軍事裁判所条例を発布し、戦争そのものに責任のある主要戦犯を審理することにした。
満州事変から支那事変、太平洋戦争におよぶ17年8ヵ月間、日本を支配した指導者百名以上の戦犯容疑者の中から、28名が被告に指定され、法廷は市ヶ谷の旧陸軍省参謀本部、現在の自衛隊市ヶ谷駐屯地に用意された。
裁判官及び検事は、降伏文書に署名した9ヵ国と、インド、フィリッピンの計11ヵ国代表で構成され、裁判長にはオーストラリア連邦代表、ウイリアム・F・ウェッブ卿が、主席検察官にはアメリカ合衆国代表、ジョセフ・B・キーナン氏が選ばれた。
一方弁護団は28人に対する主任弁護人が全部そろわず、キーナン検事団とはあまりにも格差がありすぎた・・・
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戦後に行われた連合国による極東国際軍事裁判を記録したドキュメンタリーである。
そもそも「裁判」という名がついているが、これはその名に値しないと個人的には考えている。
専門家による批評はあるだろうが、シンプルに考えて「裁判官と検察と弁護士」、この三者が分立してこそ公平な裁判と言えるが、「裁判官&検察vs弁護士」という構図では公平な裁判とは言い難い。
これは戦勝国による敗戦国に対する報復以外の何物でもない。

映画は裁判の進展を時の世情を間に挟みながらナレーションで補足するという形で進行し、裁判事態の進行をわかりやすくしてくれている。
不公平な裁判ではあるが、冒頭のアメリカ人弁護士による陳述は連合国側の勝者の理論をするどくつくもので敵ながらあっぱれと感じる。
少なくとも弁護士についてはきちんとなされていたようである。

連合国側も一枚岩ではない。
すでに冷戦の息吹は芽生えており、米ソの鞘当も見られる。
最悪の戦犯とされる東条英機も覚悟を決めていたのか堂々としており、アメリカ側のつたない通訳に文句をつけたりするところは臨場感溢れている。

そんな東条の発言が天皇の戦争責任追及につながりそうになると、それを不都合と考えるアメリカ側はキーナン検事が水面下で東条と調整をし、天皇に責任が及ばないように発言をしていくくだりがある。
これなども所詮この裁判がアメリカの意図した通りに進むように図られている証左であり、まことに滑稽である。

「ワールド・オブ・ライズ」で披露されたアメリカのその傲慢さはすでにこの時に現れている。
そんなアメリカに対し、「自分は敗戦の結果について国民に対しては責任があるが、連合国側に対しては自衛戦争であり責任はない」と東条英機ははっきり述べる。

靖国問題の根本は戦犯の合祀にある。
しかし肝心の戦犯とはこの茶番劇裁判でアメリカによって決められたものである。
勝者の理論で決められた戦犯。
277分という非常に長い映画であるが、生きた歴史の記録であり必見であると思う・・・


評価:★★☆☆☆