
2024年 日本
監督: 塚原あゆ子
出演:
満島ひかり:舟渡エレナ
岡田将生:梨本孔
ディーン・フジオカ:五十嵐道元
大倉孝二:毛利忠治
酒向芳:刈谷貴教
宇野祥平:佐野亘
安藤玉恵:松本里帆
丸山智己:小田島
火野正平:佐野昭
阿部サダヲ:八木竜平
石原さとみ:三澄ミコト
井浦新:中堂系
窪田正孝:久部六郎
市川実日子:東海林夕子
雲竜星涼:木林南
飯尾和樹:坂本誠
吉田ウーロン太:向島進
薬師丸ひろ子:三澄夏代
松重豊:神倉保夫
綾野剛:伊吹藍
星野源:志摩一未
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テレビドラマ「アンナチュラル」「MIU404」の監督・塚原あゆ子と脚本家・野木亜紀子が再タッグを組み、両シリーズと同じ世界線で起きた連続爆破事件の行方を描いたサスペンス映画。
流通業界最大のイベントである11月のブラックフライデー前夜、世界規模のショッピングサイトの関東センターから配送された段ボール箱が爆発する事件が発生し、やがて日本中を恐怖に陥れる連続爆破事件へと発展する。関東センター長に着任したばかりの舟渡エレナは、チームマネージャーの梨本孔とともに事態の収拾にあたるが……。
主人公・舟渡エレナを満島ひかり、梨本孔を岡田将生が演じ、事件に巻き込まれる関係者役で阿部サダヲとディーン・フジオカ、捜査を担当する刑事役で「アンナチュラル」の大倉孝二と「MIU404」の酒向芳が出演。さらに「アンナチュラル」から三澄ミコト役の石原さとみ、中堂系役の井浦新、久部六郎役の窪田正孝ら、「MIU404」から伊吹藍役の綾野剛、志摩一未役の星野源らが再結集する。主題歌も「アンナチュラル」「MIU404」に続き米津玄師が担当した。第48回日本アカデミー賞最優秀脚本賞受賞。
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「ラストマイル」という言葉を聞いた時、反射的に物流業界における「ラストマイル」が脳裏に浮かんだ。それは「最終的な物流拠点からエンドユーザーに荷物が届くまでの最後の区間」の事で、物流業界では問題が山積しているところと何となく認識している。そんな「ラストマイル」と何か関係があるのかと思っていたら、その流通業界がまさに物語の舞台となっている。
ある日、ラストマイルを担う運送業者「羊急便」によってとあるアパートの一室に荷物が配送される。受け取り主がその荷物を開けた直後、爆発が起こり受取人が死亡するという衝撃的な事件が起きる。その翌日、世界規模のショッピングサイト「デイリーファースト」の日本支部の関東最大の物流センターにセンター長として舟渡エレナが福岡から転勤してくる。エレナを迎え入れたのは、入社2年のマネージャー梨本孔。孔の説明により、このセンターがエレナ以下9人の社員と800人もの派遣社員によって支えられていることが観る者にも伝わる。
アパートで発生した爆発事件の荷物がこのセンターから発送された荷物であることから、警視庁の毛利と刈谷がセンターにやってくる。エレナと孔はすぐさま荷物の中身が前日に発売したばかりの「デイリーファースト」社の新作スマートフォンであることを伝えるが、先行販売している海外では爆発事故など起こっていないことを明らかにする。しかし、直後にオフィスビルとショッピングモールでも同じようにこのセンターから発送された荷物が爆発するという事件が発生する。
エレナは即座にスマートフォンの出荷を止め、さらに既に出荷されたスマートフォンについても、「羊急便」の局長の八木に連絡して配送を止めさせる。責任者としては極めて適切な処置である。「羊急便」は、運送収入の6割の収益を「デイリーファースト」に依存する中小企業。そこではさらに委託ドライバーに配送を委託している。その委託ドライバーである佐野昭とその息子・亘は配送中止を受けて商品を持ち帰るが、配達が行われなかったため1品150円の報酬も発生しない。このあたり、ラストマイルにおける現代の問題点がさり気なく描かれる。
折から年間で最大規模の商戦である「ブラックフライデー」が始まっており、物流停止は大規模な損失につながる。デイリーファーストの物流センターのセキュリティ体制では、派遣社員が爆弾を荷物に入れることは不可能であり、エレナは「羊急便」の中に犯人がいると考え、次々と起こる爆発事故にも関わらず、物流自体を止めるつもりはない。やがて孔は、SNS上で何者かが「デイリーファウスト(DAILY FAUST)」を名乗りCMを作り、事件発生よりも前に「1ダース(12個)」の爆弾を仕掛けたことを予告していることを突き止める。
現在の日本で言えばAmazonに当たるのだろう。外資系の世界規模のショッピングサイトの商品に爆弾が仕掛けられ、犠牲者が出る。そんな事になったら、消費者は買い控えるだろうし、企業の損害も大変なものになる。人命第一に考えるなら、当然商品の出荷停止という事を考えないといけない。誰が、何の目的で、物語は謎に包まれたまま進んでいく。外資系はとにかく利益第一。商品の出荷を停止する事は許されない。株価に大きく影響する事態も避けなければならない。
主人公はそんな物流センターの責任者として赴任したエレナ。若い女性ながら大任を任されるが、何日も会社に泊まり込んで仕事をする猛烈パワーはいかにも外資系に好まれそうである。犯人と思しきサイトを発見するが、エレナは本社のあるアメリカの市場への影響を考え警察への連絡は翌朝6時まで控えさせる。その間に新たな被害を生むかもしれないのに、孔は怒りを隠せないまま帰宅する。そんな軋轢があるも、エレナは推理を働かせて警察も気づかない事実を基に犯人に迫っていく・・・
偽のCM情報から犯人に迫る。非情な外資系企業にあってその利益第一主義の考え方を順守しながらも、次の犠牲を防ぎ犯人へのヒントを探っていく主人公のエレナ。現場のラストマイルを担う運転手親子。その委託主である羊急便の中間管理職。そしてとある母子家庭の母娘。それぞれの物語が最後に絡み合う。そして事件の元となった元「デイリーファースト」の社員。現代の巨大なショッピングサイトが抱える様々な問題を描きながら推理小説の如く進んでいく物語。主演の満島ひかりの魅力もフルに発揮され、物語の世界に引き込まれていく。
そして意外な事件の真相と顛末。外資系企業の利益第一主義はわからなくもない。しかし、そこには狩猟民族と農耕民族の思想の違いが現れているようにも思う。稼ぐのは大事だが、それは他人を蹴落として得るものではなく、みんなで幸福を追求するものであって欲しいように思う。勝者がいて敗者がいるのではなく、敗者のいない世界を追求したいようにも思う。いろいろと考えさせてくれて、しかもエンタメの要素も忘れない。心にクリーン・ヒットした映画である・・・
評価:★★★☆☆





