
2023年 日本
監督: 深川栄洋
出演:
義永瀬廉:久我清
杉咲花:織本美鈴
北村匠海:結城馨
戸塚純貴:藤方賢二
柄本明:奈倉哲
生瀬勝久:釘宮昌治
筒井道隆:佐久間悟
大森南朋:沼田大悟
<シネマトゥデイ>
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小説家で弁護士の五十嵐律人が司法修習生時代に上梓した小説を原作に描くミステリー。ロースクールの同級生の3人の男女が、実際に起きた殺人事件の真相を模擬裁判として追う中で、彼らの隠された真実が暴かれていく。メガホンを取るのは『桜のような僕の恋人』などの深川栄洋。『真夜中乙女戦争』などの永瀬廉、『市子』などの杉咲花、『スクロール』などの北村匠海のほか、柄本明、生瀬勝久、筒井道隆、大森南朋らが出演している。
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冒頭、電車内で女子高校生がちかんを捕まえる。ともに電車を降りるが、一緒に階段を登っていたところ、2人とも転がり落ちてしまう。それから何年かの月日が経過する。場所は法都大ロースクール。弁護士を目指す「セイギ」こと久我清儀は、幼なじみの織本美鈴と一緒に通っている。そこでは最近、勉強漬けの生徒たちの息抜きとして「無辜ゲーム」と呼ばれる模擬裁判をやっている。「無辜」とは、罪のない事。またはその人を意味する。
ゲームの主催者は、ロースクール在学中に唯一司法試験を突破した天才・結城馨。ある日、セイギは奈倉教授に呼ばれ、「無辜ゲーム」について問われる。曖昧に答えて席に戻ると、机の上に一枚のビラが置かれている。その内容は、数年前に児童養護施設で起きた殺傷事件の記事で、施設長が施設に入居する16歳の少年に刺されたというもの。そしてその少年はセイギであった。誰の仕業なのか。周りの生徒たちもざわついているが、みな関わりを避けるように顔を伏せる。
これに対し、セイギは無辜ゲームでビラを配った者を名誉棄損にかける。そしてその証人として美鈴を指名する。実は美鈴もセイギと同じ児童養護施設で育っている。事件記事のビラは、飲み会のチラシと巧妙に張り合わせられていて、めくると事件の記事が出てくるようになっている。美鈴は問われるまま飲み会のチラシを配ったのは藤方賢二だと答える。藤方は罪を認めるが、開き直ってロースクールを辞めると言い出す。
セイギは、藤方を引き留め、事情を問い詰める。しかし、ビラの写真がロッカーに報酬と一緒に入っていただけとの事。自分の成績を苦にし、セイギに悔し紛れに怒りをぶつける意味で加担したようである。その頃、美鈴は何者かにより嫌がらせを受けている。アパートの玄関窓には、例の事件の記事がアイスピックで刺し込まれ、郵便受けにもチラシが投げ込まれている。
犯人の動きから、セイギは美鈴の部屋の上の空き部屋が怪しいと睨み、中に入る。そこで謎の男が美鈴の部屋を盗聴していたとわかる。
男は悪びれもせず、ネットで見知らぬ相手に頼まれただけと白状して逃げていく。それを機に嫌がらせはなくなり、そして2年の月日が経つ。セイギと美鈴は無事、司法試験に合格し弁護士になる。そんな二人に、研究者として学院に残っていた馨から久しぶりに無辜ゲームへの誘いがくる。不信感を持ちつつ、「これが最後のゲームだ」と言う馨の言葉にロースクールに向かうセイギ。ゲームの行われていた洞窟に着いてみると、そこには胸にナイフが刺さったまま倒れている馨の姿があり、返り血を浴びた美鈴がセイギに「私を弁護して」と告げる・・・
ロースクールの同級生を巡る殺人事件のミステリー。弁護士になったばかりの主人公が、幼馴染でやはり弁護士の美鈴を弁護する。状況証拠は圧倒的に美鈴を容疑者として示している。目の前に転がる死体。凶器のナイフについた指紋、被害者の返り血を浴びた姿。冒頭の授業風景で、被害者の馨が教授の質問に答えて「冤罪」について説明する。しかし、この状況はどこをどう見ても「冤罪」とは言い難い。
殺人事件の発生までに登場人物たちの物語が語られる。何となくストーリーのキーマンであるように思われていたロースクール在学中に唯一司法試験を突破した天才・結城馨が殺されてしまうという展開にはちょっとした驚きがあった。さらに殺したのが美鈴なのであるが、美鈴は無罪を主張する。それなのに美鈴は黙秘を貫き、自ら指名した弁護士であるセイギに対しても一切黙秘する。事件現場で渡されたSDカードのパスワードも教えない。美鈴の意図が分からず困惑するのはセイギだけではなくも観る方も同じ。
そして裁判が始まるが、予想もしない展開。それと知らずにばらまかれていた伏線が回収されていく。やはり天才は天才であった。それは天才が仕掛けたゲーム。ストーリーの妙がこの映画にはある。天才とセイギと美鈴。その接点は意外なところにある。意外性に満ちたストーリーが何とも言えない味わいの映画である・・・
評価:★★☆☆☆