2025年05月24日

【ラストマイル】My Cinema File 3013

ラストマイル.jpg
 
2024年 日本
監督: 塚原あゆ子
出演: 
満島ひかり:舟渡エレナ
岡田将生:梨本孔
ディーン・フジオカ:五十嵐道元
大倉孝二:毛利忠治
酒向芳:刈谷貴教
宇野祥平:佐野亘
安藤玉恵:松本里帆
丸山智己:小田島
火野正平:佐野昭
阿部サダヲ:八木竜平
石原さとみ:三澄ミコト
井浦新:中堂系
窪田正孝:久部六郎
市川実日子:東海林夕子
雲竜星涼:木林南
飯尾和樹:坂本誠
吉田ウーロン太:向島進
薬師丸ひろ子:三澄夏代
松重豊:神倉保夫
綾野剛:伊吹藍
星野源:志摩一未

<映画.com>
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テレビドラマ「アンナチュラル」「MIU404」の監督・塚原あゆ子と脚本家・野木亜紀子が再タッグを組み、両シリーズと同じ世界線で起きた連続爆破事件の行方を描いたサスペンス映画。
流通業界最大のイベントである11月のブラックフライデー前夜、世界規模のショッピングサイトの関東センターから配送された段ボール箱が爆発する事件が発生し、やがて日本中を恐怖に陥れる連続爆破事件へと発展する。関東センター長に着任したばかりの舟渡エレナは、チームマネージャーの梨本孔とともに事態の収拾にあたるが……。
主人公・舟渡エレナを満島ひかり、梨本孔を岡田将生が演じ、事件に巻き込まれる関係者役で阿部サダヲとディーン・フジオカ、捜査を担当する刑事役で「アンナチュラル」の大倉孝二と「MIU404」の酒向芳が出演。さらに「アンナチュラル」から三澄ミコト役の石原さとみ、中堂系役の井浦新、久部六郎役の窪田正孝ら、「MIU404」から伊吹藍役の綾野剛、志摩一未役の星野源らが再結集する。主題歌も「アンナチュラル」「MIU404」に続き米津玄師が担当した。第48回日本アカデミー賞最優秀脚本賞受賞。
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「ラストマイル」という言葉を聞いた時、反射的に物流業界における「ラストマイル」が脳裏に浮かんだ。それは「最終的な物流拠点からエンドユーザーに荷物が届くまでの最後の区間」の事で、物流業界では問題が山積しているところと何となく認識している。そんな「ラストマイル」と何か関係があるのかと思っていたら、その流通業界がまさに物語の舞台となっている。

ある日、ラストマイルを担う運送業者「羊急便」によってとあるアパートの一室に荷物が配送される。受け取り主がその荷物を開けた直後、爆発が起こり受取人が死亡するという衝撃的な事件が起きる。その翌日、世界規模のショッピングサイト「デイリーファースト」の日本支部の関東最大の物流センターにセンター長として舟渡エレナが福岡から転勤してくる。エレナを迎え入れたのは、入社2年のマネージャー梨本孔。孔の説明により、このセンターがエレナ以下9人の社員と800人もの派遣社員によって支えられていることが観る者にも伝わる。

アパートで発生した爆発事件の荷物がこのセンターから発送された荷物であることから、警視庁の毛利と刈谷がセンターにやってくる。エレナと孔はすぐさま荷物の中身が前日に発売したばかりの「デイリーファースト」社の新作スマートフォンであることを伝えるが、先行販売している海外では爆発事故など起こっていないことを明らかにする。しかし、直後にオフィスビルとショッピングモールでも同じようにこのセンターから発送された荷物が爆発するという事件が発生する。

エレナは即座にスマートフォンの出荷を止め、さらに既に出荷されたスマートフォンについても、「羊急便」の局長の八木に連絡して配送を止めさせる。責任者としては極めて適切な処置である。「羊急便」は、運送収入の6割の収益を「デイリーファースト」に依存する中小企業。そこではさらに委託ドライバーに配送を委託している。その委託ドライバーである佐野昭とその息子・亘は配送中止を受けて商品を持ち帰るが、配達が行われなかったため1品150円の報酬も発生しない。このあたり、ラストマイルにおける現代の問題点がさり気なく描かれる。

折から年間で最大規模の商戦である「ブラックフライデー」が始まっており、物流停止は大規模な損失につながる。デイリーファーストの物流センターのセキュリティ体制では、派遣社員が爆弾を荷物に入れることは不可能であり、エレナは「羊急便」の中に犯人がいると考え、次々と起こる爆発事故にも関わらず、物流自体を止めるつもりはない。やがて孔は、SNS上で何者かが「デイリーファウスト(DAILY FAUST)」を名乗りCMを作り、事件発生よりも前に「1ダース(12個)」の爆弾を仕掛けたことを予告していることを突き止める。

現在の日本で言えばAmazonに当たるのだろう。外資系の世界規模のショッピングサイトの商品に爆弾が仕掛けられ、犠牲者が出る。そんな事になったら、消費者は買い控えるだろうし、企業の損害も大変なものになる。人命第一に考えるなら、当然商品の出荷停止という事を考えないといけない。誰が、何の目的で、物語は謎に包まれたまま進んでいく。外資系はとにかく利益第一。商品の出荷を停止する事は許されない。株価に大きく影響する事態も避けなければならない。

主人公はそんな物流センターの責任者として赴任したエレナ。若い女性ながら大任を任されるが、何日も会社に泊まり込んで仕事をする猛烈パワーはいかにも外資系に好まれそうである。犯人と思しきサイトを発見するが、エレナは本社のあるアメリカの市場への影響を考え警察への連絡は翌朝6時まで控えさせる。その間に新たな被害を生むかもしれないのに、孔は怒りを隠せないまま帰宅する。そんな軋轢があるも、エレナは推理を働かせて警察も気づかない事実を基に犯人に迫っていく・・・

偽のCM情報から犯人に迫る。非情な外資系企業にあってその利益第一主義の考え方を順守しながらも、次の犠牲を防ぎ犯人へのヒントを探っていく主人公のエレナ。現場のラストマイルを担う運転手親子。その委託主である羊急便の中間管理職。そしてとある母子家庭の母娘。それぞれの物語が最後に絡み合う。そして事件の元となった元「デイリーファースト」の社員。現代の巨大なショッピングサイトが抱える様々な問題を描きながら推理小説の如く進んでいく物語。主演の満島ひかりの魅力もフルに発揮され、物語の世界に引き込まれていく。

そして意外な事件の真相と顛末。外資系企業の利益第一主義はわからなくもない。しかし、そこには狩猟民族と農耕民族の思想の違いが現れているようにも思う。稼ぐのは大事だが、それは他人を蹴落として得るものではなく、みんなで幸福を追求するものであって欲しいように思う。勝者がいて敗者がいるのではなく、敗者のいない世界を追求したいようにも思う。いろいろと考えさせてくれて、しかもエンタメの要素も忘れない。心にクリーン・ヒットした映画である・・・


評価:★★★☆☆








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2025年01月03日

【法廷遊戯】My Cinema File 2952

法廷遊戯.jpg
 
2023年 日本
監督: 深川栄洋
出演: 
義永瀬廉:久我清
杉咲花:織本美鈴
北村匠海:結城馨
戸塚純貴:藤方賢二
柄本明:奈倉哲
生瀬勝久:釘宮昌治
筒井道隆:佐久間悟
大森南朋:沼田大悟

<シネマトゥデイ>
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小説家で弁護士の五十嵐律人が司法修習生時代に上梓した小説を原作に描くミステリー。ロースクールの同級生の3人の男女が、実際に起きた殺人事件の真相を模擬裁判として追う中で、彼らの隠された真実が暴かれていく。メガホンを取るのは『桜のような僕の恋人』などの深川栄洋。『真夜中乙女戦争』などの永瀬廉、『市子』などの杉咲花、『スクロール』などの北村匠海のほか、柄本明、生瀬勝久、筒井道隆、大森南朋らが出演している。
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冒頭、電車内で女子高校生がちかんを捕まえる。ともに電車を降りるが、一緒に階段を登っていたところ、2人とも転がり落ちてしまう。それから何年かの月日が経過する。場所は法都大ロースクール。弁護士を目指す「セイギ」こと久我清儀は、幼なじみの織本美鈴と一緒に通っている。そこでは最近、勉強漬けの生徒たちの息抜きとして「無辜ゲーム」と呼ばれる模擬裁判をやっている。「無辜」とは、罪のない事。またはその人を意味する。

ゲームの主催者は、ロースクール在学中に唯一司法試験を突破した天才・結城馨。ある日、セイギは奈倉教授に呼ばれ、「無辜ゲーム」について問われる。曖昧に答えて席に戻ると、机の上に一枚のビラが置かれている。その内容は、数年前に児童養護施設で起きた殺傷事件の記事で、施設長が施設に入居する16歳の少年に刺されたというもの。そしてその少年はセイギであった。誰の仕業なのか。周りの生徒たちもざわついているが、みな関わりを避けるように顔を伏せる。

これに対し、セイギは無辜ゲームでビラを配った者を名誉棄損にかける。そしてその証人として美鈴を指名する。実は美鈴もセイギと同じ児童養護施設で育っている。事件記事のビラは、飲み会のチラシと巧妙に張り合わせられていて、めくると事件の記事が出てくるようになっている。美鈴は問われるまま飲み会のチラシを配ったのは藤方賢二だと答える。藤方は罪を認めるが、開き直ってロースクールを辞めると言い出す。

セイギは、藤方を引き留め、事情を問い詰める。しかし、ビラの写真がロッカーに報酬と一緒に入っていただけとの事。自分の成績を苦にし、セイギに悔し紛れに怒りをぶつける意味で加担したようである。その頃、美鈴は何者かにより嫌がらせを受けている。アパートの玄関窓には、例の事件の記事がアイスピックで刺し込まれ、郵便受けにもチラシが投げ込まれている。
犯人の動きから、セイギは美鈴の部屋の上の空き部屋が怪しいと睨み、中に入る。そこで謎の男が美鈴の部屋を盗聴していたとわかる。

男は悪びれもせず、ネットで見知らぬ相手に頼まれただけと白状して逃げていく。それを機に嫌がらせはなくなり、そして2年の月日が経つ。セイギと美鈴は無事、司法試験に合格し弁護士になる。そんな二人に、研究者として学院に残っていた馨から久しぶりに無辜ゲームへの誘いがくる。不信感を持ちつつ、「これが最後のゲームだ」と言う馨の言葉にロースクールに向かうセイギ。ゲームの行われていた洞窟に着いてみると、そこには胸にナイフが刺さったまま倒れている馨の姿があり、返り血を浴びた美鈴がセイギに「私を弁護して」と告げる・・・

ロースクールの同級生を巡る殺人事件のミステリー。弁護士になったばかりの主人公が、幼馴染でやはり弁護士の美鈴を弁護する。状況証拠は圧倒的に美鈴を容疑者として示している。目の前に転がる死体。凶器のナイフについた指紋、被害者の返り血を浴びた姿。冒頭の授業風景で、被害者の馨が教授の質問に答えて「冤罪」について説明する。しかし、この状況はどこをどう見ても「冤罪」とは言い難い。

殺人事件の発生までに登場人物たちの物語が語られる。何となくストーリーのキーマンであるように思われていたロースクール在学中に唯一司法試験を突破した天才・結城馨が殺されてしまうという展開にはちょっとした驚きがあった。さらに殺したのが美鈴なのであるが、美鈴は無罪を主張する。それなのに美鈴は黙秘を貫き、自ら指名した弁護士であるセイギに対しても一切黙秘する。事件現場で渡されたSDカードのパスワードも教えない。美鈴の意図が分からず困惑するのはセイギだけではなくも観る方も同じ。

そして裁判が始まるが、予想もしない展開。それと知らずにばらまかれていた伏線が回収されていく。やはり天才は天才であった。それは天才が仕掛けたゲーム。ストーリーの妙がこの映画にはある。天才とセイギと美鈴。その接点は意外なところにある。意外性に満ちたストーリーが何とも言えない味わいの映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年11月13日

【ゆれる】My Cinema File 2932

ゆれる.jpg
 
2006年 日本
監督: 西川美和
出演: 
オダギリジョー:早川 猛
香川照之:早川 稔
伊武雅刀:早川 勇
新井浩文:岡島洋平
真木よう子:川端智恵子

<映画.com>
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「蛇イチゴ」(03)でデビューを飾った西川美和監督の第2作。東京で写真家として気ままに暮らす猛(オダギリジョー)が、母親の一周忌で久しぶりに帰郷。猛は家業を継いだ兄の稔(香川照之)と幼なじみの智恵子とともに近くの渓谷へ行くが、智恵子が吊り橋から転落してしまう。智恵子の近くにいた稔が逮捕され裁判となるが、そこで猛は今まで見たことのない兄の姿を目の当たりにする……。
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東京で写真家として活躍している早川猛の下に母が亡くなったと連絡が入る。なんとなくめんどくさそうな様子で葬儀のために帰省することになる。アシスタントの女性にさり気なくキスをして車に乗り込む猛。故郷に帰りついた猛は、実家が経営するガソリンスタンドで給油をする。そこで猛は窓ガラスを拭く店員に気づいてあわてて顔をそむける。店員も運転席に座っている猛に気づき、合図をしようとしてやめる。何があったのだろうか。

葬儀に遅れて出席する猛。喪服の参列者の中に1人赤いジャンバーを着ている。会席の場では1人浮いている猛に父親が嫌味を言う。それに対して強烈な嫌味を返す猛。途端に激怒した父親を必死に抑えて宥めたのは長男の稔。稔は自由奔放に生きて好きな仕事についた猛と違い、真面目に実家のガソリンスタンドを継いで働いている。兄弟仲は悪くなく、母の遺品を整理していて、2人は幼い頃よく家族で遊びに行った霞渓流の8ミリカメラの映像を発見する。稔は猛に、智恵子も誘ってそこに行こうと提案する。

智恵子とはガソリンスタンドで働いていた女性。そして、猛は2人が一緒に働く姿を見て、稔が智恵子に気があることに気づく。兄は真面目で女性にも奥手、弟は自由奔放で女性の扱いにも慣れている。その夜、猛は稔の勧めでガソリンスタンドで働く智恵子を車で家まで送ることになる。2人は車内でとりとめのない世間話をするも、猛は智恵子の部屋まで行くと告げると、そのままベッドインする。

夜遅くに実家に帰った猛を稔が迎える。猛は後ろめたさもあったのだろう、稔に彼女と居酒屋で飲んでいたと嘘をつく。稔は猛の話に相づちを打つが、会話はどこかよそよそしい。2人とも本音を隠しているのがよくわかるシーンである。そしてこれがその後の展開で重要なシーンだとわかるシーンなのである。猛は兄が好意を抱いている智恵子を抱いた事にどこか後ろめたさがあってだと思うが、兄に呼んでもらってよかったと礼を言う。

翌日、猛と稔は智恵子を誘って3人で渓流へ出かける。子供のようにはしゃぐ稔とは対照的に、猛は久しぶりに来た渓流の自然の美しさをカメラに収めることに専念する。そんな猛が気になる智恵子。2人の話からすると、かつて2人で東京に行こうという話があり、智恵子が尻込みしたようだとわかる。今でも未練がありそうな智恵子から逃れるように猛は一人渓流の奥へと歩んでいく。対照的に稔は智恵子と距離を縮めようとする。言葉はなくてもそれぞれの気持ちが伝わってくる。

そして猛が高い吊り橋を歩く姿を見た智恵子は、「私も」とその吊り橋へ向かう。実は稔は高所恐怖症なのか吊り橋を恐れるが、智恵子を追って渡っていく。その姿は切ないくらいである。なんとか智恵子に追いついた稔だが、手を取る稔に智恵子は思わず「触らないでよ」と声を荒げてしまう。そして事件は起きる。智恵子が釣り橋から転落してしまうのである。猛は無我夢中で稔のもとに駆けつけるが、パニック状態の稔に猛は「警察を呼ぼう」と告げる。

「ゆれる」というタイトルは吊り橋の事かと思っていたが、どうもそうではない。映画は意外な方向へと向かっていく。事故だと思っていたが、稔は「智恵子は自分が殺した」と警察に出頭する。事件の後、兄の態度がおかしくなった事から、それを信用しない猛は伯父の早川修弁護士に相談に行き、裁判で稔の無罪を立証しようと奔走する。映画はそのシーンを映さないので実際に何があったのかは観ている者もわからない。幼馴染で密かに思いを寄せる智恵子を死なせてしまったことからくる自責の念に駆られての自主なのか。あるいは本当に落としたのか。

どちらとも取れる事情がいろいろとわかってくる。厳格な父、真面目な兄、自由奔放な弟。事実はどうなのか、ゆれる吊り橋の上で何があったのか?観ている者には結末が読めない。観終わってもなお疑いの気持ちがぬぐい切れない。主演はオダギリ・ジョーであるが、兄の香川照之が実にそれっぽい。役柄にぴったりあっている。ラストの稔の表情が何とも言えない。ストーリーと出演陣の熱演とに味わい深い余韻の残る映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年09月29日

【パーソナル・ショッパー】My Cinema File 2918

パーソナル・ショッパー.jpg

原題: Personal Shopper
2016年 フランス
監督: オリビエ・アサイヤス
出演: 
クリステン・スチュワート:モウリーン
ラース・アイディンガー:インゴ
シグリッド・ブアジズ:ララ
アンデルシュ・ダニエルセン・リー:アーウィン
タイ・オルウィン:ギャリー
アンムー・ガライア:警官
ノラ・フォン・バルトシュテッテン:キーラ

<シネマトゥデイ>
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『アクトレス〜女たちの舞台〜』のクリステン・スチュワートとオリヴィエ・アサイヤス監督が再び組み、第69回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞したミステリー。多忙な人々に代わって服やアクセサリーを買い付けるパーソナル・ショッパー(買物代行人)のヒロインが、顧客の私生活に触れる中で欲望を膨らませていくさまを描く。シャネルのほか、劇中を彩る華やかなファッションにも注目。
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主人公のモウリーンは、とある屋敷へとやってくる。今は誰も住んでいないその屋敷に1人残る。その夜、物音に目覚めたモウリーンは屋敷内を探しまわる。オカルト映画を思わせるシーンであるが、何事もなく終わる。安堵というより落胆という雰囲気がよくわからない。そんなモウリーンの仕事は、パリでセレブのために高級ブランドの服やアクセサリーの買い物代行をするパーソナル・ショッパー。そういう仕事があるのだと改めてセレブをうらやましく思う。

モウリーン自身は、バイクを利用し、服装も地味であるが、それ以上に厭世的な雰囲気が漂う。外国で暮らしている恋人がいて、来るように誘われるが、色よい返事はしない。その理由はパリで亡くなった兄の霊に会うためであることが明らかにされる。実はモウリーンには双子の兄がいて、2人には霊媒の能力があったという。そして生前、兄とどちらかが死んだら互いにわかるように何かのサインを送り合おうと決めていたという。パリを離れるとその合図がわからないとモーリーンは信じている。

実は冒頭で訪ねた屋敷は兄が住んでいたところ。そこでは確かに蛇口から水が勝手に出たりラップ音がしたりと奇怪な現象が起きたのであるが、やがて現れたのは口からエクトプラズムを吐く女性の霊。そしてまた別の日、モウリーンがパーソナルショッパーの仕事をこなしていると、見知らぬメールが届く。そのメールには、「私はあなたを知っている。あなたも私を知っている」と書いてある。差出人はわからない。

差出人不明のメールはモウリーンの行先や行動を先々まで理解していて、不気味さが漂う。これこそが兄の霊が送るものではないかと思うモウリーンは兄なのかと問うも答えはない。その間にもパーソナルショッパーの仕事をこなし、雇い主の家へと荷物を届ける。買うものは高級品ばかり。セレブではないが、値札を気にすることなく買い物ができるというこの職業は、結構面白いのではないかと思う。

謎のメールはモウリーンの行動を見ているかのように届く。パーソナル・ショッパーとして雇い主の契約で買い揃えた服や靴を着たり履いたりすることは、禁止されているが、謎のメールはそれを促す。だれでもそうかもしれないが、心の奥底にはセレブリティへの憧れと欲望が潜んでいる。そしてある日、モウリーンが買い物を終えて、雇い主の部屋へ向かうが、どこか様子が変であり、見まわったところ雇い主が惨殺されているのを発見する。さらに、奥の部屋から奇妙な音が聞こえ、不気味な光も見える。モウリーンはその場を逃げ出して警察に向かう・・・

この映画を観ようと最終的に決めたのは、主演が美形のクリステン・スチュワートだから。それはそれで間違ってはいなかったが、いかんせん内要的にストーリーがイマイチだったのはいなめない。タイトルが『パーソナル・ショッパー』ならそれに沿った内容にすべきだと思うが、主人公が霊媒という事でストーリーがぶれてしまう。霊魂の扱いも中途半端。ホラーとしてもミステリーとしてもどっちつかずの内容なのである。その中途半端感が映画の評価を落としている。

いったいこれは何の映画なのか。それが曖昧だったためイマイチの内容になってしまった映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年07月31日

【ラストナイト・イン・ソーホー】My Cinema File 2884

ラストナイト・イン・ソーホー.jpg

原題: Last Night in Soho
2021年 イギリス
監督: エドガー・ライト
出演: 
トーマシン・マッケンジー:エロイーズ
アニヤ・テイラー=ジョイ:サンディ
マット・スミス:ジャック
ダイアナ・リグ:ミス・コリンズ
シノーブ・カールセン:ジョカスタ
マイケル・アジャオ:ジョン
テレンス・スタンプ:銀髪の男

<シネマトゥデイ>
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ロンドンで別々の時代を生きる二人の女性の人生がシンクロするサイコスリラー。現代と1960年代のロンドンで暮らす女性たちが、夢を通して互いに共鳴し合う。監督と脚本を手掛けるのは『ベイビー・ドライバー』などのエドガー・ライト。『オールド』などのトーマシン・マッケンジー、ドラマ「クイーンズ・ギャンビット」などのアニャ・テイラー=ジョイ、ドラマシリーズ「ドクター・フー」などのマット・スミス、『コレクター』などのテレンス・スタンプらが出演する。
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主人公のエロイーズ(エリー)は、母を亡くしてから祖母と二人暮らし。そんなエリーの夢はファッションデザイナーであり、その日、エリーの下にロンドンのデザイナー学校から合格通知が届く。祖母と喜びを分かち合うエリーには、亡き母の姿が見える。どうやらエリーには霊感があるようである。田舎町を出てロンドンに行くエリーは、荷造りをしながらも希望に溢れる。そんな孫を応援しつつも心配する祖母は、どこか寂しそうでもある。

ロンドンに着いてタクシーで学生寮に向かうも、セクハラまがいの運転手の言動に都会の洗礼を浴びる。学生寮のルームメイトのジョカスタは、田舎者のエリーをどこか見下している。勉強よりも遊びに力をいれる友達と馴染むことができないエリーは、掲示板で貸し部屋についての広告を見つける。それはソーホーにある一人暮らしの高齢女性の家の一室で、レトロなその部屋をエリーは気に入り、寮を出てこの部屋で暮らすことに決める。

引越しをして最初の夜、シラ・ブラックのレコードをかけて眠りに落ちたエリーは、不思議な夢を見る。夢の中でとある建物に入り、鏡を見ると、写っているのは自分ではなく、見覚えのないブロンドの美女。彼女はサンディといい、歌手を目指してこの店に売り込みに来たのである。オーナーに会いたいというサンディに対し、バーテンダーは「ジャックと話しをしろ」とアドバイスをする。

エリーはサンディの体験を擬似体験する。ジャックはこの界隈で、スターを目指す女性を束ねている人物で、サンディはジャックと交渉して、自らのデビューを約束させ、次の日に会う約束をする。ジャックがサンディの首筋にキスをするが、夢はそこで終わる。リアルな夢に囚われるエリーは、授業に出席した自分の首筋にキスマークがあることに気づく。

次の夜もサンディの夢を見るエリー。それはジャックと恋愛関係に入っていくサンディの体験。魅惑的なサンディと一体感を得たエリーは、髪をサンディのようにブロンドに染め、夢の中でサンディが身にまとっていたドレスを思い出してデザイン案に取り入れる。その変化の様子に周りも驚く。その夜、エリーはサンディの初舞台の夢を見るが、初舞台は大勢のバックダンサーのうちの1人。ステージ衣装も露出度の多い男性客向けのものであり、楽屋へ戻ったサンディに、ジャックは男の客の相手をしろと強要する・・・

どうやらサンディは、1960年代の実在の人物だったとわかってくる。奇しくもエリーと同じ部屋で暮らしており、霊感の強いエリーがサンディの体験を毎夜擬似体験していく。それは華やかな歌手としてのものではなく、スターになれるという甘言で売春婦として扱われるもの。それを擬似体験することでエリーの心も疲弊していく。夢だからまだしも、現実の生活ではバイト先のバーでエリーは怪しい老人に声をかけられる。老人はなぜかサンディを知っているかのような発言をする。

怪しげな展開を深めていくストーリー。同じ部屋に住んでいた過去の人の体験を擬似体験するという内容は、『双葉荘の友人』(My Cinema File 2752)と似たような展開である。そして過去である以上、サンディはその後どうなって今はどうしているのかという疑問へと繋がる。それが後半へと繋がるのであるが、その意外な展開はこの映画のストーリーの妙である。やがて現実の生活でエリーは亡霊たちに付きまとわれるようになる。そして明らかになる真実。

ホラー映画と言えばホラー映画なのであるが、ホラー映画とも言い切れない。エリーに霊感がなければ1960年代に起こったこの事件は誰にも知られる事なく、終わったのかもしれない。そう考えれば不思議な感じであるが、それをまたうまくブレンドしたストーリーの勝利かもしれない。それにしても穏やかな顔のトーマシン・マッケンジーと狐顔のアニャ・テイラー=ジョイとが実に対照的な印象であった映画である・・・


評価:★★★☆☆








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