
原題: Bruised
2021年 アメリカ
監督: ハル・ベリー
出演:
ハル・ベリー:ジャッキー・ジャスティス
エイダン・カント:デシ
シーラ・アティム:ブッダカン
エイドリアン・レノックス:エンジェル
ワレンチナ・シェフチェンコ:レディキラー
ダニー・ボイド・Jr:マニー
<シネマトゥデイ>
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『マイ・サンシャイン』などのハル・ベリーが監督と主演を務めたドラマ。不名誉な引退をした元格闘家の女性が、息子との再会を機に再起を図る。ドラマシリーズ「サバイバー:宿命の大統領」などのエイダン・カント、『レッド・ライト』などのアドリアーニ・レノックス、ドラマ「アガサ・クリスティー 蒼ざめた馬」などのシーラ・アティムのほか、ヴァレンティーナ・シェフチェンコ、リーラ・ローレンらは出演する。
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元UFC選手のジャッキー・ジャスティスは、試合の最中に相手から逃げるという最悪の負け方をして選手を引退する。それが尾を引いたのか、現在は清掃員の仕事をしながら元マネージャーのデシと暮らしている。デシは働いておらずヒモ状態。そんな有様だから暮らしぶりもよくない。デシはジャッキーに復帰を促すも、本人にそのつもりはない。そんなある日、デシはジャッキーを地下格闘技の場に連れていく。
そこではルールもろくにないようなむき出しのファイトの場所。相手を倒した大女が勝ち名乗りを挙げるが、ジャッキーに気付くと露骨に挑発してくる。初めはいなしていたジャッキーだが、プライドを踏みにじる挑発にキレて勝負を受ける。最初こそ劣勢だったが、そこは昔取った何とかで華麗な動きであっという間に大女をぶちのめす。それはまだまだ現役で通じる動き。これを見ていた大手ジムを経営しているイマキュートという男がジャッキーをスカウトする。そしてトレーナーのブッダガンに会えと伝える。
不機嫌なままデシと帰宅したジャッキーを待っていたのは、長年仲が悪く疎遠だった母親のエンジェル。露骨に嫌悪感をむき出しにするジャッキーだが、要件というのは離婚して父親が引き取っていたジャッキーの子供マニーの養育のこと。何と警官だったジャッキーの元夫が、内偵捜査中に撃ち殺されてしまったと言う。さらにその現場を見てしまったマニーは、精神的ショックから言葉を話せなくなってしまったとの事。マニーを半ば押し付けるようにして帰って行く母親。
血を分けた息子を追い出すわけにもいかず、やむなく家に置くが、自身マニーとどう接したらいいのか分からず戸惑い、さらに恋人のデシもいい顔をしない。家族を養わなければならなくなった事もあり、ジャッキーはブッダガンを訪ね、トレーニングを始めることになる。一方、言葉を話さないマニーに対し、ジャッキーは少しずつ歩み寄っていく。マニーが父親と一緒にキーボードを弾きながら歌う動画を見つけ、ジャッキーはキーボードをプレゼントする。マニーの顔にはにかみながら笑顔が浮かぶ。
トレーニングに精を出すジャッキーではあるが、合間にマニーの学校で編入手続きをする。そこでしゃべろうとしないマニーはお漏らしをしてしまう。子育てとの両立は難しく、トレーニングにやむを得ずマニーを連れて行くジャッキー。ブッダガンはそんなジャッキーの苦労を見て優しくマニーの面倒をみる。やがてイマキュートから、レディキラーという選手とのタイトルマッチを持ちかけられる。ブランクのあるジャッキーには厳しい相手だが、負けても1万ドルのファイトマネーに、ジャッキーは首を縦に振る・・・
落ち目の選手が家族のために無謀ともいえるタイトルマッチに臨むというストーリーは、どこか『ロッキー』(My Cinema File 32)に相通じるところがある。ジャッキー自身、恵まれているとは言えない子供時代を過ごし、母親との確執にも母親さえ知らない辛い過去がある。自暴自棄とも言える生活にピリオドを打ったのは、突然現れた我が子。家族のために厳しいトレーニングをこなし、無敵のチャンピオンに挑む。
ボクシングではなく総合格闘技であるのもUFCがメジャーになってきた証なのだろうか。演じるハル・ベリーは相当練習を積んだのか、技のキレも素人目には本職と見分けがつかない。最後の対戦相手であるレディキラーを演じるのは実際のUFCのチャンピオンらしい。迫力ある試合展開はなかなか見応えがある。試合の迫力、1人の選手の再生、そして母子のドラマ。ハル・ベリーは監督を務めたというし、力が入っていると感じる映画である・・・
評価:★★☆☆☆