2024年12月30日

【ブルーズド 打ちのめされても】My Cinema File 2949

ブルーズド 打ちのめされても.jpg

原題: Bruised
2021年 アメリカ
監督: ハル・ベリー
出演: 
ハル・ベリー:ジャッキー・ジャスティス
エイダン・カント:デシ
シーラ・アティム:ブッダカン
エイドリアン・レノックス:エンジェル
ワレンチナ・シェフチェンコ:レディキラー
ダニー・ボイド・Jr:マニー

<シネマトゥデイ>
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『マイ・サンシャイン』などのハル・ベリーが監督と主演を務めたドラマ。不名誉な引退をした元格闘家の女性が、息子との再会を機に再起を図る。ドラマシリーズ「サバイバー:宿命の大統領」などのエイダン・カント、『レッド・ライト』などのアドリアーニ・レノックス、ドラマ「アガサ・クリスティー 蒼ざめた馬」などのシーラ・アティムのほか、ヴァレンティーナ・シェフチェンコ、リーラ・ローレンらは出演する。
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元UFC選手のジャッキー・ジャスティスは、試合の最中に相手から逃げるという最悪の負け方をして選手を引退する。それが尾を引いたのか、現在は清掃員の仕事をしながら元マネージャーのデシと暮らしている。デシは働いておらずヒモ状態。そんな有様だから暮らしぶりもよくない。デシはジャッキーに復帰を促すも、本人にそのつもりはない。そんなある日、デシはジャッキーを地下格闘技の場に連れていく。

そこではルールもろくにないようなむき出しのファイトの場所。相手を倒した大女が勝ち名乗りを挙げるが、ジャッキーに気付くと露骨に挑発してくる。初めはいなしていたジャッキーだが、プライドを踏みにじる挑発にキレて勝負を受ける。最初こそ劣勢だったが、そこは昔取った何とかで華麗な動きであっという間に大女をぶちのめす。それはまだまだ現役で通じる動き。これを見ていた大手ジムを経営しているイマキュートという男がジャッキーをスカウトする。そしてトレーナーのブッダガンに会えと伝える。

不機嫌なままデシと帰宅したジャッキーを待っていたのは、長年仲が悪く疎遠だった母親のエンジェル。露骨に嫌悪感をむき出しにするジャッキーだが、要件というのは離婚して父親が引き取っていたジャッキーの子供マニーの養育のこと。何と警官だったジャッキーの元夫が、内偵捜査中に撃ち殺されてしまったと言う。さらにその現場を見てしまったマニーは、精神的ショックから言葉を話せなくなってしまったとの事。マニーを半ば押し付けるようにして帰って行く母親。

血を分けた息子を追い出すわけにもいかず、やむなく家に置くが、自身マニーとどう接したらいいのか分からず戸惑い、さらに恋人のデシもいい顔をしない。家族を養わなければならなくなった事もあり、ジャッキーはブッダガンを訪ね、トレーニングを始めることになる。一方、言葉を話さないマニーに対し、ジャッキーは少しずつ歩み寄っていく。マニーが父親と一緒にキーボードを弾きながら歌う動画を見つけ、ジャッキーはキーボードをプレゼントする。マニーの顔にはにかみながら笑顔が浮かぶ。

トレーニングに精を出すジャッキーではあるが、合間にマニーの学校で編入手続きをする。そこでしゃべろうとしないマニーはお漏らしをしてしまう。子育てとの両立は難しく、トレーニングにやむを得ずマニーを連れて行くジャッキー。ブッダガンはそんなジャッキーの苦労を見て優しくマニーの面倒をみる。やがてイマキュートから、レディキラーという選手とのタイトルマッチを持ちかけられる。ブランクのあるジャッキーには厳しい相手だが、負けても1万ドルのファイトマネーに、ジャッキーは首を縦に振る・・・

落ち目の選手が家族のために無謀ともいえるタイトルマッチに臨むというストーリーは、どこか『ロッキー』(My Cinema File 32)に相通じるところがある。ジャッキー自身、恵まれているとは言えない子供時代を過ごし、母親との確執にも母親さえ知らない辛い過去がある。自暴自棄とも言える生活にピリオドを打ったのは、突然現れた我が子。家族のために厳しいトレーニングをこなし、無敵のチャンピオンに挑む。

ボクシングではなく総合格闘技であるのもUFCがメジャーになってきた証なのだろうか。演じるハル・ベリーは相当練習を積んだのか、技のキレも素人目には本職と見分けがつかない。最後の対戦相手であるレディキラーを演じるのは実際のUFCのチャンピオンらしい。迫力ある試合展開はなかなか見応えがある。試合の迫力、1人の選手の再生、そして母子のドラマ。ハル・ベリーは監督を務めたというし、力が入っていると感じる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2023年12月02日

【クリード 過去の逆襲】My Cinema File 2777

クリード 過去の逆襲.jpeg

原題: Creed III
2023年 アメリカ
監督: マイケル・B・ジョーダン
出演: 
マイケル・B・ジョーダン:アドニス・クリード
テッサ・トンプソン:ビアンカ・クリード
ウッド・ハリス:リトル・デューク
フロリアン・ムンテアヌ:ヴィクター・ドラゴ
ミラ・デイヴィス=ケント:アマーラ・クリード
ホセ・ベナビデス・Jr:フェリックス・チャベス
ジョナサン・メジャース:“ダイヤモンド” デイミアン(デイム)・アンダーソン

<映画.com>
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『ロッキー』シリーズを継承したボクシング映画『クリード』のシリーズ第3作。マイケル・B・ジョーダンが前2作に続いて主演を務め、本作では自ら長編初メガホンをとった。
かつてロッキーが死闘を繰り広げた親友アポロの息子アドニス・クリード。ロッキーの魂を引き継ぎ世界チャンピオンとなった彼の前に、刑務所から出所した幼なじみのデイムが現れる。2人はかつて家族同然の仲間であったが、デイムはクリードの少年時代のある過ちによって18年間の服役を強いられ、復讐心に燃えていた。クリードは封印してきた自らの過去に決着をつけるべく、デイムとの戦いに向けて猛トレーニングを開始する。
クリードの幼なじみで最強の敵となるデイムを『アントマン&ワスプ クアントマニア』のジョナサン・メジャース、クリードの妻ビアンカを前2作に続いてテッサ・トンプソンが演じる。
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早くもシリーズ第3弾。スピンアウトがいつのまにか本シリーズになっている感があるが、これはこれで大歓迎である。物語は2002年のアメリカ・ロサンゼルスで始まる。15歳のアドニス・クリードは母親に内緒で家を抜け出すと、友人のデイミアン(デイム)と共に車で外出する。2人が向かったのは賭博ボクシング場で、デイムは選手、アドニスはセコンドとして参加。試合はデイムが圧倒的な力でKO勝ちを収める。しかし、食事をしようと立ち寄ったダイナーの前で、1人の中年男を見かけたアドニスは、いきなり殴りかかり事件が起きる。

それから18年後、キンシャサでヘビー級チャンピオンとしてリッキー・コンランとの引退タイトル戦に臨んでいたアドニスは、見事KO勝ちし、有終の美を飾る。第3弾で早くも引退というのは早すぎる感がある。そしてそれから3年、アドニスは長年のセコンド・トニーとともにボクシングジムを経営し、ジム所属の現役ヘビー級チャンプのフェリックス・チャベスの次回タイトル戦のプロモート活動に勤しんでいる。妻ビアンカは音楽プロデューサーとして活躍し、娘アマーラも聴覚障害を持ちながらも健やかに育っている。

そんなある日、アドニスは18年ぶりにデイムと再会する。18年前の事件により刑務所に収監されていたデイムに対し、そのきっかけを作ったアドニスはどこか居心地が悪い。それでも食事に誘い話をする。デイムは刑務所で何通も手紙を書いたと言うも、心当たりがないアドニスは戸惑う。アドニスの表情には、引け目と不安が見て取れる。そんなアドニスに対し、デイムの頼みは意外にもボクシングチャンピオンになりたいというもの。アドニスはデイムをジムのスパーリングパートナーに迎え入れる。

しかし、デイムはアドニスよりも年上。しかも後日、フェリックスとスパーリングしたデイムは、オヤジ扱いされたこともあり、反則紛いのパンチを繰り出して乱闘状態になる。二度とデイムを上げないと激高するトニーをアドニスは懸命になだめる。フェリックスの次回タイトル戦の挑戦者が、前作でアドニスの前に立ちふさがったヴィクター・ドラゴに決定する。しかし、そのレセプションパーティーで、ドラゴが暴漢に襲われて腕を負傷してしまう。ドラゴの負傷でタイトル戦開催が危ぶまれたアドニスは、デイムの強引な頼みを受けて、挑戦者として指名する。

かつてロッキーも無名ながら当時のチャンピオンアポロの指名を受けてタイトル戦に臨んだ。同じ構図だが、実際に可能なのかと思わなくもない。そして行われたフェリックスvsデイムのタイトル戦であるが、デイムはラフファイトを駆使しつつ、3ラウンドでKO勝ちを納め、公約通り新チャンピオンとなる。ところがその裏でデイムとドラゴを襲った暴漢とが繋がっている事がわかり、また母親がデイムから届いていた手紙を隠していたことなどがわかる。デイムとと対峙したアドニス。二人の仲は決裂する。

こうしてメインは、アドニスとデイムとの対決へと向かう。一旦、引退したものの、それを撤回して再びリングへと向かうアドニス。しかし、相手のデイムは、かつて少年時代に信頼の絆で結ばれていた友。しかも逮捕されたきっかけはアドニスが作ったもの。そうした濃い人間ドラマは、『ロッキー』(My Cinema File 32)以来連綿とシリーズの根底をなすもの。引退から3年ぶりのカムバックには前作で対決したドラゴがスパーリング・パートナーを買って出る。

トレーニング の迫力と試合の迫力は相変わらず。リングでは2人の拳が激しく交差する。ボクシングシーンばかりではなく、アドニスと妻ビアンカと娘のアマーラとのドラマもストーリーに彩りを添える。シリーズ第3弾で早くも一旦引退というのは早すぎる感がある。このシリーズはまだまだアドニスには現役で頑張ってほしい。しかも今回はロッキーも出てこなかった。ちょい役でもいいから登場して欲しかったと思わざるを得ない。

次回作にも大いに期待したい一作である・・・


評価:★★☆☆☆










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2022年11月20日

【ウォーリアー】My Cinema File 2621

ウォリアー.jpeg

原題: Warrior
2011年 アメリカ
監督: ギャビン・オコナー
出演: 
ジョエル・エドガートン:ブレンダン・コンロン
トム・ハーディ:トミー・コンロン
ニック・ノルティ:パディ・コンロン
ジェニファー・モリソン:テス・コンロン
フランク・グリロ:フランク・カンパーナ
ケヴィン・ダン:ジト校長
マキシミリアーノ・ヘルナンデス:コルト・ボイド
カート・アングル:コーバ
<映画.com>
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アルコール中毒の父親が原因で離ればなれになっていた兄弟が総合格闘技の対戦相手として再会する姿を、『インセプション』のトム・ハーディと『スター・ウォーズ』新3部作、『アニマル・キングダム』のジョエル・エドガートン共演で描いた人間ドラマ。アル中の父親から逃れるため母親と一緒に家を出たトミーが、14年ぶりに父親のもとを訪ねてきた。学生時代にレスリング選手として活躍していた彼は、高額の賞金がかけられた総合格闘技イベント「スパルタ」に出場するため、元ボクサーである父親にコーチ役を依頼する。一方、かつて格闘家の選手だったトミーの兄ブレンダンは、現在は教師として働きながら妻子を養っていたが、娘の病気に高額な医療費がかかり自己破産の危機に陥ってしまう。ブレンダンは愛する家族を守るため、総合格闘技の試合で金を稼ぐ事を決意する。兄弟の父親役をニック・ノルティが好演し、アカデミー助演男優賞にノミネートされた。
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舞台はアメリカ合衆国ピッツバーグ。初老の男パディが疲れた足を引きずって自宅に帰ってくると、玄関先に若者が座り込んでいる。それはパディの次男トミー。2人の様子から再会は久しぶりで、しかも2人の仲が良くないことが窺われる。ウィスキーのボトルを飲むように渡すトミーに対し、パディは頑なにこれを拒否する。パディはアルコールが元で家庭を崩壊させており、トミーの目には憎しみが宿る。

父を憎むトミーが父の下を訪ねたのは、コーチを依頼したいというもの。実はパディは、かつては優秀なトレーナーであり、2人の息子はレスリングで優秀な成績を残していたのである。海兵隊を除隊したらしいトミーは、とある理由で金を必要としており、総合格闘技の大会『スパルタ』に出場して、優勝賞金500万ドルを狙おうとしていた。地元のジムにふらりとやってきたトミーは、そのジムの練習生となる。

ジムで大きな顔をしていたのは、『スパルタ』に出場予定の有名選手。相手を見下すその態度は太々しい。あっという間にスパーリングパートナーを倒してしまったその男に、なんとトミーはスパーリングを申し入れる。怪我をしても知らないぞという脅しを気にもせず、リングに上がるトミー。そしてスパーリングが開始されると、瞬く間に男を倒すトミー。これによりトミーはジムオーナーのコルトに認められ、『スパルタ』への参戦権を獲得する。

一方、パディの長男ブレンダンは、今は高校の物理教師をしている。パディの酒乱に悩まされたトミーと母親が逃げ出した後、しばらくは父パディと共に暮らしていたが、堕落した父の元を去っている。妻テスと子供にも恵まれたが、子供が難病に罹り高額な医療費の支払いに迫られ、今やローン返済が滞り、家を差し押さえられる寸前になっている。金策に困ったブレンダンは、総合格闘技の小さな試合に出場し、そこで賞金を手にする。

ところが、これが発覚して停職に追い込まれる。停職でも返済は待ったなし。追い詰められたブレンダンは、旧友のジム経営者兼トレーナーのフランクの下を訪ね、選手としての復帰と『スパルタ』への出場を訴える。フランクは渋るものの、ブレンダンの窮状を理解しており、ちょうどフランクのジムの選手が、トレーニング中の大怪我で『スパルタ』に参加できなくなってしったこともあり、この依頼を引き受ける。

パディはかつての振る舞いを反省し、今や1000日間にわたる禁酒に成功している。トミーが戻ってきたこともあり、ブレンダンの下を訪ねるが、ブレンダンは頑なにこれを拒否し、孫にも会わせない。兄弟と言えど、トミーとブレンダンにも蟠りはある。病気の母親を1人で看取ったトミーには、兄ブレンダンに対する恨みもある。ブレンダンにしてみれば、母親とトミーと共に家を出なかったのは、当時恋人で会った今の妻テスのため。母より恋人と父を選んだブレンダンを許せないトミー。ブレンダンも母の葬式に自分を呼ばなかったトミーを叱責する。

そんな親子関係と2人の息子の関係を描きながら、『スパルタ』に参戦するトミーとブレンダンを物語は追う。トミーは母方の姓を名乗って出場しているため、周囲には2人が兄弟であるとはわからない。優勝候補はロシアの強豪コーバ。その強さは圧倒的。トミーはストレートな破壊力で1回戦を突破する。ブレンダンは相手の打撃に苦戦しながらも巧みな関節技で相手からタップを奪う。

格闘技のドラマは、ボクシング映画を筆頭に数多あるが、総合格闘技はなかなか珍しい。ロシアの強豪コーバを演じるのは、プロレスラーのカート・アングル。その迫力はさすがに本物である。総合格闘技は打撃あり、関節技ありのもの。トミーとブレンダンの戦い方のスタイルも打撃のトミーと関節技のブレンダンというように分かれる。その格闘シーンの迫力は、『ロッキー』シリーズにも劣らない。

互いに勝ち進めば兄弟対決は避けられないし、その前に強豪コーバの存在もある。濃厚な人間ドラマがブレンドされた格闘ドラマは、ついに決勝戦へと進む。父と息子それそれが苦悩を抱えている。織りなされる人間ドラマは観る者の心を打つ。格闘シーンの迫力だけでなく、人間ドラマの部分でも『ロッキー』シリーズに劣らぬものがある。

なんでこの映画が話題にならなかったのだろうかと疑問に思う。それほどに印象深い格闘ドラマである・・・


評価:★★★★☆








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2019年07月15日

【クリード 炎の宿敵】My Cinema File 2102

クリード 炎の宿敵.jpg

原題: Creed II
2018年 アメリカ
監督: スティーブン・ケイプル・Jr.
脚本: シルベスター・スタローン/ジュエル・テイラー
出演: 
マイケル・B・ジョーダン:アドニス・クリード
シルベスター・スタローン:ロッキー・バルボア
テッサ・トンプソン:ビアンカ・テイラー
フィリシア・ラシャド:メアリー・アン・クリード
ドルフ・ラングレン:イワン・ドラゴ
フロリアン・“ビッグ・ナスティ”・ムンテアヌ:ヴィクター・ドラゴ
ウッド・ハリス:トニー・“リトル・デューク”・バートン
アンドレ・ウォード:ダニー・“スタントマン”・ウィーラー
ブリジット・ニールセン:ルミドラ・ドラゴ

<シネマトゥデイ>
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『ロッキー』シリーズでロッキー・バルボアと激闘を繰り広げたアポロ・クリードの息子を主人公に据えた『クリード チャンプを継ぐ男』の続編。父の命を奪ったイワン・ドラゴの息子との戦いを軸に、クリードがさらなる成長を遂げる。監督は短編やテレビシリーズを手掛けてきたスティーヴン・ケイプル・Jr。シルヴェスター・スタローン、マイケル・B・ジョーダンらが前作に続いて出演している。
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 前作でシリーズは完結したと思わせていた『ロッキー』シリーズを、なんとライバルアポロ・クリードの息子を主人公にしてスピンアウト継続してしまったスタローン。俳優としてではなく、ストーリーテラーとしても才能があるなと思っていたが、今回はさらに驚かされてしまった。なんと、主人公のアドニス・クリードのライバルとして『ロッキー4』でアポロを死に追いやり、ロッキーの前に立ちふさがったイワン・ドラゴの息子を登場させたのである。これだけで俄然内容に興味を惹きつけられる。

 そのドラゴの物語はウクライナ・キエフに飛ぶ。イワン・ドラゴの息子のヴィクターは、ボクシングの試合で相手をマットに沈める。それを満足そうに見つめるイワン・ドラゴ。さらに観戦していたアメリカのプロモーターが満足気な表情を浮かべる。一方、前作でWBCの現チャンピオンのダニエル・ウィーラーを追い詰めたアドニス・クリードは再戦の時を迎えている。アドニスはウィーラーに負けてムスタングを取られており、そういう因縁の再戦でもある。

 ロッキーは癌を克服し、アドニスのセコンドにつく。勢いの差であろうか、アドニスは見事ウィーラーを圧倒しKO勝ちを収める。ベルトと一緒にムスタングも取り返したアドニスは恋人ビアンカにプロポーズする。まさに幸福の絶頂期。その頃、TVではドラゴ親子のアドニスへの挑戦表明の記者会見が流れている。『ロッキー4』でも同じような記者会見をやっていたが、それを彷彿とさせる。

 そしてフィラデルフィアの自分のレストランに戻ったロッキーに1人の客が訪ねてくる。それこそがかつてソ連のエリートボクサーだったイワン・ドラゴ本人。イワン・ドラゴはロッキーに負けた後、財産や名誉を失い妻にも逃げられたことを語り、唯一残された息子ヴィクターとともにロッキーや自分を見下した人間に復讐をすることを語る。会見を見ていたアドニスは挑戦を受けることに決め、ロッキーに報告する。しかしロッキーは反対し、結果的にアドニスと袂を分かつことになる。
 
 かつてのライバルの息子同士という対戦。しかも、父親は自分の父親を(試合で)殺した因縁の相手となればなおさら盛り上がる。さらに単なるボクシングの勝ち負けだけではなく、ロッキーと息子、ドラゴ親子、アドニスとビアンカとそれぞれの人間ドラマが伏線としてストーリーに厚みを加える。この映画の主人公はアドニス・クリードであるが、ドラゴ親子にはドラゴ親子の物語があり、それぞれがそれぞれの人生では主人公なのである。そんな主人公同士の物語ゆえに、サイドストーリーも面白い。

 そしてやっぱり個人的にはトレーニングシーンに注目したい。ロッキーの頃からだけではなく、アドニスのトレーニングもまた良し。今回も接近戦を強化するため、リングの中央にタイヤを置き、その中に片足を突っ込んでスパーリングをするシーンが出てくる。なかなか目新しく迫力がある。一点難を言えば、敵地であるロシアに乗り込んでの対戦となれば、やっぱり『ロッキー4』で見せてくれた雪の中でのトレーニングを思い出してしまった。できればその再現を期待したかったところである。
 
 試合の迫力は言うことなし。これも『ロッキー4』以来久しぶりに登場したルミドラ(ブリジット・ニールセン)も年を取ったが迫力ある姿でストーリーに彩を添える。ラストの大熱戦の結末は意外なものであったが、納得度は大である。映画のラストでドラゴ親子は静かにトレーニングを再開する。親子で並んで走る姿に、次の彼らのドラマの続きを想像させる。やっぱりこのシリーズ、単なるボクシング映画ではない。

 ロッキーとアドニスには次にどんなドラマがあるのだろうか。"名脚本家"のスタローンに期待したいと思わずにはいられない一作である・・・


評価:★★★☆☆







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2018年01月19日

【サウスポー】My Cinema File 1862

サウスポー.jpg

原題: Southpaw
2015年 アメリカ
監督: アントワン・フークア
出演: 
ジェイク・ギレンホール:ビリー
レイチェル・マクアダムス:モーリーン
フォレスト・ウィテカー:ティック
オオーナ・ローレンス:レイラ・ホープ
カーティス・"50セント"・ジャクソン:ジョーダン・メインズ
ナオミ・ハリス:アンジェラ・リベラ

<シネマトゥデイ>
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愛する妻がこの世を去り、娘とも引き離され全てをなくしたボクシングの元世界チャンピオンが、再び頂点を目指し娘との絆を取り戻すため奮闘するドラマ。どん底からの再起を図る主人公を、『ナイトクローラー』などのジェイク・ギレンホールが体当たりで演じる。共演にはオスカー俳優フォレスト・ウィテカー、『007』シリーズなどのナオミ・ハリス、『スポットライト 世紀のスクープ』などのレイチェル・マクアダムスら実力派が集結。監督を、『トレーニング・デイ』などのアントワーン・フークアが務める。
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 スポーツを描いた映画なり物語は、栄光を目指して駆け上がっていくストーリーが多いと思う。ボクシング映画の代名詞とも言える『ロッキー』(My Cinema File 32)もまさにそんな映画の典型であった。無名の男が努力の末にチャンピオンを倒すというのが、一種のセオリーである。ところがこの映画の場合、主人公はボクシング世界ライトヘビー級王者のビリー"ザ・グレート"・ホープ。4団体の統一チャンピオンで47戦全勝という戦績は、まさにトップ・オブ・トップであり、従来のセオリーからは外れている。

 そんな世界最強の王者は、美しい妻モーリーンと一人娘のレイラとともに豪華な自宅に住み、高級車に乗り、成功者として誰もが羨むよう生活を送っている。冒頭でもビリーは、防衛戦を戦い強烈な右を浴びせて挑戦者をノックアウトする。しかし、その戦い方はディフェンスを軽視したもので、常に殴り合いとなるリスクの高いスタイル。当然ながら、妻モーリーンはいつもビリーの身を案じている。

 ある日、ビリーが育った施設を支援するパーティーにビリー夫妻は出席する。ところがそこへかねてからビリーを挑発しているエスカバーが現れ、挑発を繰り返す。それが妻モーリーンへの侮辱に至り、激怒したビリーはモーリーンの制止を振り切り殴り合いの喧嘩をしてしまう。その混乱の中、エスカバーの兄弟が拳銃を撃ち、それが運悪くモーリーンに命中してしまい、モーリーンはビリーの腕の中で息をひきとる・・・

 失意のビリーは気力を失い、有利を予想されていた試合で惨敗し、タイトルを失う。さらに問題行動を起こしたビリーは、ついに1年間の謹慎処分を宣告される。また、かねてから悪化していた収支はついに限界を超え、家屋敷を含めて財産を失うことになる。そして、なによりも大切な最愛の娘レイラは、裁判所の命令により親権を剥奪され児童施設に引き取られてしまう・・・

 こうしてビリーは、栄光の座から転げ落ちる。しかし、ビリーには最愛の娘を取り戻すという目的が生まれ、再び栄光を目指す。ここにスポーツ映画の「セオリー」が無事復活する。ロッキーもクラバー・ラングに執拗に挑発され、タイトルを失った(『ロッキー3』(My Cinema File 1327))。そして初心に戻り、みすぼらしいジムを経営するティックに頭を下げてトレーニングを依頼する。こういう這い上がる姿こそがスポーツ映画の見所である。

 ビリーはビリーの失ったベルトを締めているエスカバーを倒すべくトレーニングに明け暮れる。ティックとの対立。そして独特のトレーニング。いやでもロッキーを思い出す。そしてボクシング映画の成否に欠かせないのが試合のシーンだろう。ジェイク・ギレンホールも『ナイトクローラー』(My Cinema File 1562)などでは「優男」というイメージだったが、ここでは流石に見事に鍛え上げている。

 そして何といっても、試合の迫力。『ロッキー』(My Cinema File 32)もかなり迫力があったが、この映画ではさらにリアリティーが増している。これは観ていてなかなかの迫力である。さらにビリーのファイトスタイルは「打たれてもそれ以上に打ち返す」スタイルであり、何と矢吹丈顔負けのノーガード戦法まで繰り出す。この迫力がさらなる魅力を引き出す。

 そんな迫力ある試合を決めたのは、タイトルにある「左」。失った栄光と娘を取り戻し、そしてビリーが一回り大きくなって行く姿がなかなか胸に響いてくる。『ロッキー』(My Cinema File 32)シリーズ以来の感動のボクシング映画である・・・


評価:★★★☆☆








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