2023年01月28日

【空母いぶき】My Cinema File 2648

空母いぶき.jpeg
 
2019年 日本
監督: 若松節朗
原作: かわぐちかいじ
出演: 
西島秀俊:秋津竜太(いぶき艦長)
佐々木蔵之介:新波歳也(いぶき副長)
藤竜也:涌井継治(群司令)
戸次重幸:淵上晋(第92飛行群群司令)
市原隼人:迫水洋平(アルバトロス隊隊長)
玉木宏:瀬戸斉昭(はつゆき艦長)
高嶋政宏:滝隆信(はやしお艦長)
山内圭哉:浮船武彦(いそかぜ艦長)
佐藤浩市:垂水慶一郎(内閣総理大臣)
益岡徹:石渡俊通(官房長官)
本田翼:本多裕子(ネットニュース記者)
中井貴一:中野啓一(コンビニエンスストア店長)

<映画.com>
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「沈黙の艦隊」で知られるかわぐちかいじ原作のベストセラーコミック「空母いぶき」を、西島秀俊と佐々木蔵之介の共演で実写映画化。国籍不明の軍事勢力から攻撃を受ける中、それぞれの立場で国民の命と平和を守るため奔走する者たちの姿を描く。世界が再び「空母の時代」に突入した20XX年。日本の最南端沖で国籍不明の軍事勢力が領土の一部を占拠し、海上保安庁の隊員を拘束する事態が発生。未曾有の緊張感に包まれる中、政府は初の航空機搭載型護衛艦「いぶき」を中心とした護衛艦群を現場に派遣するが……。西島が、航空自衛隊のパイロットとしての実績を買われていぶき艦長に抜擢された秋津竜太、佐々木が、海上自衛隊の生え抜きながら副長に甘んじる新波歳也を演じる。監督は「沈まぬ太陽」『ホワイトアウト』などの大作を手がけてきた若松節朗。脚本は「機動警察パトレイバー」の伊藤和典と『亡国のイージス』の長谷川康夫。『ローレライ』 『亡国のイージス』などで知られる作家の福井晴敏が企画に携わっている。
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日本についに空母が導入されたありうる近未来。
時は12月23日。沖ノ鳥島西方の初島付近に国籍不明の20隻の船団が現われる。巡視船くろしおが警備にあたっていたが、船団から突如銃撃を受ける。船団はくろしおの乗組員を拘束すると初島に上陸する。ただちに政府に一報が入ると、垂水総理大臣や石渡官房長官、外務大臣や防衛大臣などが招集され、対策が協議される。そして空母いぶき(と言っても世間体を憚ってか「航空機搭載型護衛艦」と称される)および護衛艦4隻、潜水艦1隻の護衛艦隊を派遣する。

ちょうど訓練航海中だったいぶきには、2名の記者が取材のために乗り込んでいる。国籍不明の船団はやがて“東亜連邦”の所属と判明する。海上警備行動に入ったいぶきだが、突然ミサイルを発射する。防空体制で応じるも、一部が被弾し、戦闘機用のリフトが故障してしまう。緊急事態に記者は部屋で待機するよう言われる。記者としては絶好のスクープであるが、事前の協定によって情報統制を受けている。

さらに敵対行動を取る東亜連邦軍は、ミグ60機を搭載した空母グルシャを現場に向かわせており、その前には潜水艦が先行している。護衛艦隊の潜水艦はやしおがこれに対峙する。東亜連邦の潜水艦はいぶきに接近し、護衛艦隊には緊張感が漂う。専守防衛を旨とする自衛隊とすれば、敵に攻撃を受けての応戦は国民に対しても国際社会に対しても言い訳が立つが、先制攻撃はそうではない。しかし、先制攻撃を許していぶきの沈没を招けば被害は甚大である。

結局、東亜連邦の潜水艦は攻撃することなく、いぶきの真下を通過する。そんな緊張下、群司令の涌井が倒れ、指揮権が艦長の秋津に委譲される。いぶきの艦橋では、「攻撃やむなし」を主張する艦長の秋津と「攻撃はするべきではない」と主張する副長の新浪の意見が対立する。そうした中、偵察行動をしていた空自機2機が、東亜連邦軍機に撃墜され、自衛隊初の戦死者が出る。政府内では垂水総理に史上初の「防衛出動」を命じるべきだとの意見が出る・・・

原作はこの手の軍事モノが特異なかわぐちかいじの漫画。原作漫画はすべて読んだわけではないが、中国が突如として侵略してくるストーリーになっていた。あえて架空の「東亜連邦」にしたのは、中国を刺激しないための配慮なのかもしれない。現実的には、尖閣諸島を巡る動きから、中国の侵略という原作漫画の方がよりリアリティがある。あえて中国との衝突があるとしたらこんな感じなのかもしれないと思ってみたりする。

空母いぶきとは名打ってはいるものの、敵の戦闘機や潜水艦などと戦火を交えるのは潜水艦と護衛艦が中心。一応、空母から艦載機が飛び立つものの、空母が中心的な活躍をするわけではない。だが、迎撃ミサイルを発射したり、戦闘機同士の空戦などの戦闘シーンはそれなりの迫力がある。こうした戦闘シーンはこうした実写映画の見どころの一つだろう。

ドラマの合間にとあるコンビニエンスストアの様子が描かれる。何もなければクリスマス商戦で湧きかえるところ。しかし、炎上する護衛艦の姿がネットニュースで流れ、総理の緊急会見が開かれると、買いだめに走る市民が殺到する。政府内では強硬派と慎重派の意見が対立し、無邪気で平和な世間との対比が浮き彫りにされる。強硬派がいいか慎重派がいいかというのではなく、こうした事態になった時にどうすべきなのかといつの間にか考えている。

護衛艦隊、政府、世間(コンビニ)という3つの現場がそれぞれ描かれ、ストーリーそのものよりもこうした事態が生じた場合はどんな事が起こるのか、そういうシミュレーションを見せてくれるという意味では、意義深い映画である。平和が一番であるし、我が国から軍事行動を起こすことはないものの、周辺国もそうだとは限らない。それに備えるべきなのか、それとも備えること事態が過剰なのか。そうしたこともこの映画は考えるヒントを与えてくれる。

季節もクリスマスという平和の象徴的な時期というのも物語の背景を彩る。豪華俳優陣のキャストでいろいろと楽しめる内容である。原作漫画は読み終えてはいないが、映画とはだいぶ雰囲気が違うようだし、それはそれで読んでみたいと思う。表面だけ観ると軽いが、考えると深い映画である・・・


評価:★★☆☆☆









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2022年12月28日

【ランボー】My Cinema File 2634

ランボー.jpeg

原題: First Blood
1982年 アメリカ
監督: テッド・コッチェフ
出演: 
シルヴェスター・スタローン:ジョン・ランボー
リチャード・クレンナ:サミュエル・トラウトマン大佐
ブライアン・デネヒー:ウィル・ティーズル
ビル・マッキニー:デイヴ・カーン
ジャック・スターレット:アーサー・ギャルト
マイケル・タルボット:バルフォード
クリス・マルケイ:ウォード
ジョン・マクリアム:オーヴァル・ケラーマン
アルフ・ハンフリーズ:レスター
デヴィッド・カルーソ:ミッチ・ロジャース
デヴィッド・L・クローリー:シングルトン
ドン・マッケイ:プレストン
パトリック・スタック:クリント・モーガン中尉

<映画.com>
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ベトナムでグリーン・ベレーとして活躍した男が警察の嫌がらせに怒りを爆発させ、数百人の警官と死闘をくり広げる。製作はシルヴェスター・スタローンとバズ・フェイシャンズ。エグゼクティブ・プロデューサーはマリオ・カサールとアンドリュー・ヴァイナ、デイヴィッド・マレルの小説「たった一人の軍隊」(早川書房)をスタローンとマイケル・コゾル、,ウィリアム・サックハイムが共同で脚色、監督は「ノース・ダラス40」のテッド・コッチェフ、撮影はアンドリュー・ラズロ、音楽はジェリー・ゴールドスミスが担当。出演はシルヴェスター・スタローン、リチャード・クレナ、ブライアン・ドネイ、デイヴィッド・カルーソ、ジャック・スターレット、マイケル・タルボット、デイヴィッド・クロウリイほか。パナビジョンで撮影。
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『ロッキー』と並んでシルベスター・スタローンの代表作と言えるシリーズの原点。衝撃的な面白さだったのを今でも覚えている。

1981年12月。1人の男がワシントン州の山間を歩いているところから物語は始まる。男はベトナム帰還兵ジョン・J・ランボー。ようやく辿り着いたところはかつての戦友デルメア・ベリーの家。家族に写真を見せて自己紹介をするが、当のデルメアは前年の夏に既に亡くなったと聞き、ランボーはショックを受ける。さらにデルメアの母から死因はベトナム戦争の化学戦での後遺症で、がんを患ったと聞かされ、ランボーは言葉を失う。

デルメアの家を後にしたランボーは、歩いてホリデーランドという街にやってくる。そんなランボーに声を掛けたのは街の保安官ティーズル。親切にもランボーをパトカーに乗せるが、実は厄介ごとを避けるためによそ者である彼を街から追い出すためのもの。町外れまで来てランボーを降ろすと、街へとUターンする。高圧的でとんでもない保安官である。降ろされたランボーは、しかし再び足を街へと向ける。

そんなランボーを見たティーズルは、ランボーを逮捕する。罪状は浮浪罪と公務執行妨害。そして、ランボーがサバイバルナイフを持っているとわかると、これに凶器所持を加える。保安官事務所に連行すると、他の保安官とともにランボーに高圧的態度で望む。身体を洗うと称して消防用のホースで水をぶっかけるシーンは印象的である。そしてランボーは、時折フラッシュバックに襲われる。

それは、ベトナム戦争時代の捕虜の経験。身体中に刻まれた刀傷は、その時つけられたもの。保安官たちが警棒でランボーを羽交い絞めにして、シェーピングクリームをつけずに髭を剃ろうとして保安官の1人ウォードが剃刀を顔に近づけた瞬間、ランボーの脳裏にベトコンから受けた拷問の記憶が蘇る。錯乱したランボーは、留置所にいた保安官たちを片っ端から叩きのめすと、押収されていたサバイバルナイフを取りかえし、保安官事務所から逃走する。

そして通行人からバイクを奪い、街中をパトカーとカーチェイスを繰り広げ、最後は山中へと逃走する。この事態に、ティーズルは、ミッチやレスターらと共に警察犬を導入し、山中の捜索に取り掛かる。ここからランボーが驚異的な能力を発揮する。冬山にタンクトップ1枚の姿だったが、ナイフを使い、ボロ切れを纏って山中を移動する。しかし、渓谷の絶壁まで追い詰められると、ヘリからの銃撃を避け、眼下にある木に向かって飛び降りる。

ランボーを追う保安官たちは、やがてランボーが元グリーンベレーで勲章を受けた英雄だとわかる。しかし、知らずにヘリから銃撃しようとして、ヘリからガルトが転落死するに至り、ティーズルも引っ込みがつかなくなる。ランボーが木に落ちた時にできた腕の裂傷をサバイバルナイフの柄に仕込んだ針で自ら縫合するシーンも印象的である。そしてここからティーズルが呼び寄せた警官隊200人とランボーとの死闘が始まる。

ランボーは、ベトナム戦争で培ったゲリラ戦を山中で展開する。ランボーが仕込んだトラップで保安官たちが次々と倒れる。最後の1人となってしまったティーズルに、突如現れたランボーが喉元にサバイバルナイフを突きつけ、「調子に乗ると、もっと悲惨な戦いになるぞ」と脅すシーンも印象的である。それまでの戦争映画とはまったく毛色の違う映画であり、『ディア・ハンター』(My Cinema File 299)や『プラトーン』(My Cinema File 1439)といった負のイメージとは異なるベトナム戦争映画である。

山中で繰り広げられるランボーと州警察および州兵部隊の戦い。ランボーが展開するゲリラ戦の迫力。戦いはやがて街中にもおよび市街戦の様相を呈してくる。ランボーの上官サム・トラウトマン大佐が、「私は、別にランボーを助けに来たわけじゃない。皆さんを守りに来た」とさりげなく語る言葉も心地よく響く。その後のシリーズの展開で、ランボーの活躍もすっかり馴染みとなってしまったが、この第1作の強烈な印象は今もなお心に残っている。

さすがに何度も観ると観慣れてしまうが、若き日のシルベスター・スタローンの魅力はこの映画の中で健在である。個人的に記憶に深く残る映画である・・・


評価:★★★★☆








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2022年10月09日

【T-34 レジェンド・オブ・ウォー】My Cinema File 2604

T-34 レジェンド・オブ・ウォー.jpeg

原題: T-34
2018年 ロシア
監督: アレクセイ・シドロフ
出演: 
アレクサンドル・ペトロフ:ニコライ・イヴシュキン
ヴィンツェンツ・キーファー:クラウス・イェーガー
イリーナ・ストラシェンバウム:アーニャ・ヤルツェヴァ
ヴィクトル・ドブロヌラボフ:ステパン・サヴェリエヴィチ・ヴァシリョノク
アントン・ボグダノフ:ディミヤン・ヴォルチョク
ユーリイ・ボリソフ:セラフィム・イオノフ
ウヴォルフガング・チェルニー:ヴォルフ・ハイン
ジョシュア・グロース:ティーリケ
ディルク・シンプソン:グリム
ロビンソン・レイチェル:ハインリヒ・ヒムラー

<シネマトゥデイ>
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『戦火のナージャ』などのニキータ・ミハルコフ監督が製作を務めた戦車アクション。ナチスドイツの捕虜収容所を舞台に、ソ連の捕虜兵たちがナチスに抵抗する姿を描く。『アトラクション 制圧』で共演したアレクサンドル・ペトロフとイリーナ・スタルシェンバウムらが出演。本物のソ連製戦車T-34を使用し、役者が自ら操縦した。
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最近、ロシア映画を観る機会が増えているが、特に多いと感じるのは戦争映画。やはり「大祖国戦争」は映画の題材として事欠かないのだろう。この映画もそんな「大祖国戦争」=第二次世界大戦を題材にした映画である。

時に1941年。食糧運搬の任についていたソ連軍の新米士官ニコライ・イヴシュキン少尉は、雪原でドイツ軍の戦車と出くわす。炊事車両では勝負にすらならず、あるのは逃げの一手。戦車の動きが鈍いところをうまく利用し、巧みに車両を操って何とか脱出する。なんとか食糧を届けるも、そこは敵の攻撃の前に今にも防衛戦が突破されそうな状況。唯一残っていた戦車も戦車長が戦死して動きが取れない。そこで敵戦車から逃げ切った行動力と判断力が評価され、イヴシュキンは戦車長に抜擢される。

イヴシュキンに任されたのはT-34戦車。イヴシュキンは、操縦手のステパン、砲手のディミヤン、装填手のセラフィムと共に友軍撤退の支援へと向かう。ドイツの戦車軍団を待ち伏せたイヴシュキンのT-34戦車は、次々とドイツ軍の戦車を撃破していくが、ドイツ軍戦車中隊を率いるイェーガー大佐のIII号戦車と激突し、相打ちの末、イヴシュキンらは捕らえられて捕虜となる。

時は過ぎ、1944年。イヴシュキンはドイツの収容所に収監されているが、その反抗精神は健在で、7度の脱走を試みている。いずれも失敗したイヴシュキンは、近く処刑されることになる。そんなある日、イェーガー大佐は実戦演習の的として捕虜を利用することになり、戦車兵を選抜する。そこでかつて自分と死闘を繰り広げたイヴシュキンに目が留まる。

イヴシュキンはイェーガー大佐からこの役目を命じられるが、イヴシュキンが素直に応じる訳が無い。しかし、イェーガー大佐も残忍さを備えており、捕虜の通訳アーニャを殺すと脅すに至り、イヴシュキンはこれを受ける。そして同じく捕虜にされていたステパン、ディミヤン、セラフィムをメンバーに選ぶ。イヴシュキンらに与えられたのは戦場で回収されたT-34戦車。戦車内には死体が放置されたままという状況。

しかし、ドイツ軍にも油断があり、イヴシュキンたちは戦車の中に砲弾や手榴弾が残されているのを見つけ、これを死体の埋葬に紛れて埋めて隠す。そしてイヴシュキンたちは演習中に逃亡する作戦を立て、入念に計画を練り上げて戦車の整備に励む。アーニャもイヴシュキンたちの脱走計画に協力することにし、情報を提供する。そして迎えた演習当日。イヴシュキンたちは密かに隠していた砲弾を回収してT-34に搭載すると、ドイツ軍の士官候補生らが駆るパンター戦車を攻撃し、まんまと演習所から脱走することに成功する・・・

ドイツの捕虜収容所からたった1輌のT-34戦車で逃走するイヴシュキンたち。そしてこれを追うイェーガー大佐が率いるドイツ軍のパンター戦車部隊。この顛末が描かれていく。ロシア映画であるため、たった1輌でもT-34は強い。そこは都合よくできているのであるが、この映画の見どころの一つは戦車戦。T-34戦車は第二次世界大戦で名を売ったソ連の名戦車。実際のパンターやティーガーらのドイツ軍の戦車との実力差はよくわからないが、ミリオタには満足いく内容かもしれない。

ストーリーは単純だが、戦車線の迫力もあって、充分楽しめる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2022年07月03日

【インターセプター】My Cinema File 2563

インターセプター.jpeg

原題: Interceptor
2022年 アメリカ・オーストラリア
監督: マシュー・ライリー
製作総指揮:クリス・ヘムズワース
出演: 
エルサ・パタキ:JJ・コリンズ大尉
ルーク・ブレイシー:アレグザンダー・ケッセル
アーロン・グレナン
マイエン・メフタ
リス・マルドゥーン
ベリンダ・ジョンブウェ
クリス・ヘムズワース:電気屋の店員
マーカス・ジョンソン

<映画.com>
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テロリストに占拠された絶海のミサイル迎撃基地を舞台に、核ミサイルの危機からアメリカを守るべく戦う女性大尉の活躍を描いたアクション。ある事件をきっかけに国防総省の仕事から外されたJJ・コリンズ大尉は、太平洋上に浮かぶミサイル迎撃基地に配属される。そんな矢先、アメリカ各地の複数の都市がテロ組織による核ミサイル攻撃の標的となり、コリンズ大尉の基地も内部に潜入していたテロリストたちに占拠されてしまう。管制室に立て籠ったコリンズ大尉は、残されたわずかな時間の中で核攻撃を阻止するべく壮絶な戦いを繰り広げる。『ワイルド・スピード』シリーズのエルザ・パタキーが主演。パタキーのパートナーであるクリス・ヘムズワースが製作総指揮を務め、カメオ出演もしている。オーストラリアの作家マシュー・ライリーが初メガホンをとり、「コラテラル」のスチュアート・ビーティーと共同で脚本を手がけた。Netflixで2022年6月3日から配信。
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冒頭、アラスカにおける米軍基地が何者かによって襲撃される。基地はすぐに米軍によって奪還されるが、破壊活動によってその機能は停止する。基地が担っていたのは、ロシアから発射される核ミサイルを察知し迎撃する機能。これを海洋に位置するもう一つの迎撃基地・SBX-1とによって担っている。今やロシアからのミサイル攻撃を迎撃できるのはSBX-1のみとなる。

そんな騒動の最中、SBX-1にJJが赴任してくる。迎えた女性軍人の言動から、かつてJJはこの基地に配属されたことが窺える。そして何やら曰く付きの事件があったとその言動からわかる。基地の司令官はJJに好意的。基地は洋上にポツンと浮かぶまさに孤島。実際にこのような迎撃施設があるのかどうかはわからないが、かなりストレスの溜まりそうな施設である。そんな中、アラスカの基地襲撃によって緊張感が漂う。

JJが着任し、行き着く間もなく事件は起こる。隊員に扮装していたテロリストたちが突然凶行に及び、司令官は射殺される。咄嗟に身を守ったJJは、司令室をロックして立て籠る。一方、ロシアでは移動式の核ミサイルが16基何者かによって奪われるという事件が起きる。テロリストはその標的をアメリカの16の都市だと宣言する。今やそれを迎撃できるのはSBX-1のみであり、ここをテロリストに占拠されると、アメリカはテロリストの核攻撃に無防備となってしまう。

司令室に立て籠ったのはJJ以下2人。1人は襲撃によって気を失っている。司令室は強固に守られているとは言え、テロリストたちは隔壁を焼き切る作業に入る。基地の危機にペンタゴンはすぐにシールズに出動を要請するが、到着までに90分かかる状況。ここにJJの孤立無援の戦いが始まる。閉鎖的な空間で、主人公が数で上回る敵と対峙するというのはよくあるパターン。『ダイ・ハード』然りである。

主人公は女性軍人のJJ。JJが背負っていた過去というのは、実はセクハラ被害の過去。相手は英雄的な中将。地位を利用した卑劣なもので、JJはこれに屈することなく中将を告発する。中将は除隊となるが、やはり軍隊は男の組織。男なら「ちょっと触ったぐらい」という感覚がある。同情は除隊となった中将に集まり、JJは軍隊内で嫌がらせを受けるようになり、挙句に自殺未遂を図っている。助けたのはやはり軍人の父。「決して諦めるな」とJJに教え諭す。

そんな過去を背負ったJJ。テロリスト集団のリーダー、アレグザンダー・ケッセルは何とかJJを懐柔しようと試みるがJJは応じない。人質にした基地隊員をドアの向こうで射殺されても指令室を開けることを拒む。しかし、気を失っていた隊員が実はテロリストの一派であり、隙をつかれたJJはテロリストたちの司令室への侵入を許してしまう。シールズの到着にはまだ間がある。そして世界に対して警告を発したアレグザンダー・ケッセルは、まず最初の一発の発射を命じる・・・

それほど期待せずに観始めた映画であるが、いつの間にか引き込まれていく。それほどストーリーが秀逸というわけではない。JJの奮闘ぶりが予想外の面白さをもたらしていくのである。女性ながら柔らかな筋肉に力強さがみなぎる。それはさながら決してマッチョではなかったブルース・ウィリスがナカトミビルで孤軍奮闘したように、である。テロリストたちとの間で司令室をめぐる緊迫感ある戦いが手に汗握らせる。

最近は、女性が活躍する格闘アクションも珍しくないが、「力強い」アクションはまだ少ないかもしれない。『エージェント・マロリー』(My Cinema File 1180)のジーナ・カラーノくらいだろうか。JJ演じるエルサ・パタキは、製作総指揮を兼ねるクリス・ヘムズワースの奥さんだという。そのクリス・ヘムズワースも電気店店員として出演している。今後、夫婦アクションでの活躍もあるのかもしれない。

予想外に面白かった一作である・・・


評価:★★★☆☆







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2021年05月04日

【ハンターキラー 潜航せよ】My Cinema File 2399

ハンターキラー 潜航せよ.jpeg

原題: Hunter Killer
2018年 アメリカ
監督: ドノバン・マーシュ
出演: 
ジェラルド・バトラー:ジョー・グラス
ゲイリー・オールドマン:チャールズ・ドネガン
コモン:ジョン・フィスク
リンダ・カーデリニ:ジェーン・ノーキスト
トビー・スティーブンス:ビル・ビーマン
ミカエル・ニクビスト:アンドロポフ

<映画.com>
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『ジオストーム』 『エンド・オブ・ホワイトハウス』のジェラルド・バトラー主演で描いた潜水艦アクション。ロシア近海で1隻の米海軍原子力潜水艦が消息を絶ち、捜索に向かったジョー・グラス艦長率いる攻撃型原潜「ハンターキラー」は、現場付近に沈んでいたロシア原潜の生存者を捕虜にする。同じ頃、ロシア国内で世界を揺るがす陰謀が企てられていることが判明。ハンターキラーに陰謀阻止のための過酷なミッションが下される。その任務を達成するには、絶対不可侵のロシア海域へ潜航せねばならず……。原作は、小説家ドン・キースと米海軍潜水艦の元艦長ジョージ・ウォレスによるベストセラー小説。共演に『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』でアカデミー賞を受賞したゲイリー・オールドマン。製作は『ワイルド・スピード』シリーズのニール・H・モリッツ。監督は『裏切りの獣たち』のドノバン・マーシュ。
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冒頭、ロシア近郊のバレンツ海。アメリカ海軍原潜タンパ・ベイは、ロシアの原潜の動向をチェックしていたところ、ロシアの原潜が突然攻撃を受けて撃沈される。と同時にタンパ・ベイも攻撃を受けなす術もなく撃沈される。事態を受けたアメリカ海軍少将のフィスクは、調査のために別名“ハンターキラー”と呼ばれる攻撃型原潜アーカンソー号の派遣を決定する。

フィスク少将は、アーカンソー号の艦長として、海軍兵学校出身ではないものの、現場経験が豊富なジョー・グラスを抜擢する。早速捜索に向かったアーカンソー号がバレンツ海で発見した物は、無残に破壊されたタンパ・ベイとロシア原潜の残骸。その直後、アーカンソー号は、氷山の下に潜んでいたロシア原潜の魚雷攻撃を受ける。現代の潜水艦同士の交戦がこのようなものなのかわからないが、アーカンソー号は攻撃を回避し、反撃の末これを撃沈する。

その頃地上では、時にロシア大統領ザカリンがロシア海軍基地を現地視察に訪問したところ。そしてこれをロシア国防大臣のドゥーロフが迎える。ところがドゥーロフは、突然ザカリン大統領を拘束する。他国に依存しないロシア国家の樹立を目指したクーデターであり、それはアメリカ攻撃をも目論む危険なもの。この情報を受けた国家安全保障局(NSA)はすぐにビーマン隊長率いるネイビーシールズ精鋭部隊4名を秘密裏にロシアに送り込むことを決定する。

一方、最初に撃沈されたロシア原潜の残骸跡を調査していたアーカンソー号では、ロシア原潜は内部から破壊されたものと判明する。さらには生存者がいることも分かり、艦長のアンドロポフを含む3名のロシア人を救出する。陸と海中での2つの動き。下手をすれば第3次世界大戦にもなりかねないこの事態にフィスクは、ロシアに潜入中のネイビーシールズにザカリンを救出させ、アーカンソー号に収容するというプランを提言する。こうして、深海と陸を又にかけた作戦が始動する・・・

潜水艦のドラマと言えば、名作『Uボート』(My Cinema File 2258)があり、その他にも『U-571』(My Cinema File 2363)『K-19』(My Cinema File 2311)などがあるが、概ね駆逐艦との戦闘があり、爆雷攻撃の恐怖に限界潜水深度を超過して艦体を軋らせながらの潜水等が出てくるものであるが、この映画は少し傾向が異なる。

一つは地上潜入隊員との共同作戦であり、潜水艦戦以外にも見どころがあること、さらにロシア側も正規軍と反乱軍との分裂があり、敵潜水艦館長アンドロポフの協力がうまく得られたがゆえにアーカンソー号の作戦が成功するというストーリーがある。そういう意味で、原潜を主人公とした映画というよりは、原潜が登場する映画という風にも言える。Uボートならいくらでも戦闘シーンが作れるが、現代の潜水艦戦となるとなかなかストーリーも難しいのかもしれないと思ってみる。

作戦遂行のためには、自国水域の深海を熟知したロシア原潜の艦長の協力は不可欠と考えるグラスに対し、副長のエドワーズをはじめとする一部の乗組員は、ロシア人は信用できないとして不満を持つ者もいて、それがドラマを盛り上げたりする。ネイビーシールズの活躍も盛り込み、絶体絶命ハラハラドキドキの展開もあって、気が付けば結構物語に引き込まれている。

主演は、この手のアクションモノには貫禄のジェラルド・バトラー。共演のゲイリー・オールドマン以外には見知らぬ布陣であるが、最後まで盛り上がって楽しめた映画である・・・


評価:★★★☆☆








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