
原題: Aline
2020年 フランス・カナダ
監督: バレリー・ルメルシエ
出演:
バレリー・ルメルシエ:アリーヌ・デュー
シルバン・マルセル:ギィ=クロード
ダニエル・フィショウ:アリーヌ母
ロック・ラフォーチュン
アントワーヌ・ベジナ:ジャン=ボバン
ビクトリア・シオ:アリーヌ・デュー(歌)
<映画.com>
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世界的歌姫セリーヌ・ディオンの半生をモチーフに描いた音楽映画。1960年代、カナダ。ケベック州に暮らす音楽好きな一家の14人目の末っ子アリーヌは、5歳の時に人前で歌いはじめ、その並外れた歌唱力で町の話題を集める。やがてアリーヌは歌手を夢見るようになり、母は娘の夢をかなえるため地元の有名音楽プロデューサー、ギィ=クロードにデモテープを送る。彼の尽力で12歳にしてデビューを果たしたアリーヌは、すぐに天才少女としてもてはやされるように。しかしギィ=クロードは彼女を世界的な大歌手にするため数年間の活動停止を決め、英語の特訓やダンスの授業などに専念させる。そしてついに、世紀の歌姫への階段を駆けあがる旅が始まる。それはアリーヌとギィ=クロードにとって、真実の愛と出会う旅でもあった。映画監督としても活躍するフランスの女優バレリー・ルメルシエが監督・脚本・主演を務め、セリーヌ・ディオンの軌跡を忠実に再現した。
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「世界的歌姫セリーヌ・ディオンの半生をモチーフに描いた音楽映画」という事で興味を持って観た映画。そう言えば割と歌手の自伝ドラマは多いように思う。これまでにもエルトン・ジョン(『ロケットマン』(My Cinema File 2868))、エルヴィス・プレスリー(『エルヴィス』(My Cinema File 2731))、ロレッタ・リン(『歌え!ロレッタ愛のために』(My Cinema File 2681))、ジュディ・ガーランド(『ジュディ 虹の彼方に』(My Cinema File 2622))、クイーン(『ボヘミアン・ラプソディ』(My Cinema File 2019))とある。それだけ歌手はドラマチックに生きているということであろうか。
物語はカナダ・ケベック州の田舎町で始まる。父アングロマードと母シルヴェットのデュー夫妻は14人もの子宝に恵まれる。最後に生まれた末娘は、アリーヌと名付けられ5歳にして結婚式の余興で歌を披露する。音楽好きの一家の中でもずば抜けた歌唱力に恵まれるアリーヌ。その才能に気づいた家族は、地元の音楽プロデューサー、ギィ=クロードにデモテープを送る。今か今かと返事を待ち焦がれる家族だが、当のギィ=クロードからは何の連絡もない。しびれを切らした母親が電話するとなんとテープを聞いてすらいない。電話をするとようやくデモテープを聞いてくれるが、聞いてすぐに飛びついてくる様は愉快である。
時にアリーヌは12歳。その歌声を「ダイヤの原石」と絶賛したギィ=クロードはすぐさま、彼女をデビューさせる。レコードを制作し、テレビ番組にも売り込む。するとその歌唱力から話題になり、しまいにフランスのテレビ番組からも出演依頼がくる。母のシルヴェットは常に娘に付き添い娘の世話をする。もっと大きな舞台にという母の希望に、ギィ=クロードは世界で通用するアーティストに育てたいとして、英語を学ばせ、歯列矯正をし、ダンス教室にも通わせる。ケベック州の公用語はフランス語であり、本人はフランス語しか話せなかったのである。
課題を真面目にこなしたアリーヌは、ギィ=クロードの目論見どおり世界各国で人気を博していく。アリーヌのライブツアーは年々大規模となり、スタッフとして兄のジャン=ボバンも帯同するようになる。もちろん、母親も常にそばに付き添う。そんな中、アリーヌはいつしかギィ=クロードを1人の男性として意識するようになる。しかしギィ=クロードはアリーヌの26歳も年上で、しかも離婚歴があり子供もいるとなると親としてはいい顔はできない。しかし、恋心というものは反対されてしぼむものではない。やがてギィ=クロードもアリーヌの気持ちを受け入れる。
2人は恋人として付き合い始め、そして当然の流れとして結婚という事になる。ここに至り両親も2人の結婚を祝福する。その後もアリーヌが声帯を痛めてショーを中断する事態となり、3ヶ月もの休養をせざるを得なくなったり、さらになかなか子どもが出来ないことから不妊治療を受けたりというエピソードが続く。スタッフのフレッドはゲイのメイクアップアーティストであるが、アリーヌはフレッドに人に言えない悩みを打ち明けたりして親しくする。フレッドも家族とともにアリーヌを支える人物である。
映画は当然ながらアリーヌの歌唱シーンがふんだんに盛り込まれる。さすがに知っている曲も多い。面白いのは、映画『タイタニック』(My Cinema File 219)の主題歌「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」を初めて聞いたアリーヌが、あまり好きな曲ではないと言った事。しかし、それは映画とともに世界中で大ヒットし、アカデミー賞授賞式で歌を披露する。その際、フレッドのアドバイスで衣装を変えて評判となり、2人はさらに親友というべき関係になっていく。
その歌唱シーンだが、実に本人によく似ていると思って聞いていたが、実は口パクだったと観ていて気付いた。無理もないので気にもならなかったが、実は流れていたのは本人の歌ではなく、別の歌手が代役をしていたと知って驚く。そちらの方が凄い。これまでのアーティストの映画は、エルトン・ジョンもプレスリーもクイーンのフレディ・マーキュリーも最後に悲劇的な部分があったが、この映画にはそんな影はない。長男と双子の女児に恵まれ、私生活も充実していく。それは本人が金と名声に溺れる事がなかったからなのだろうかと思ってみる。
有名なアーティストのこうした自伝的映画は、普段うかがい知れないアーティストの一面を観られて興味深い。サングラスをかけてヘッドフォンをしないと寝られなくなったり、ベガスのショーを続けなければならないストレスに、自宅に1人ではいられないとフレッドの家に泊まりに行ったりとそれなりに苦労はある。それでもラストで「私は音楽に人生を捧げた普通の女」という歌詞の歌を熱唱するアリーヌの姿にご本人の幸せを願ってしまう。こういう自伝的映画もいいなと思わせてくれる一作である・・・
評価:★★☆☆☆





