
2013年 日本
監督: 廣木隆一
原作: 伊坂幸太郎「透明ポーラーベア」/石田衣良「魔法のボタン」/本多孝好「Sidewalk Talk」
出演:
「透明ポーラーベア」
戸田恵梨香/濱田岳/金子ノブアキ/三津谷葉子/鈴木杏
「魔法のボタン」
多部未華子/池松壮亮/リリー・フランキー
「Sidewalk Talk」
真木よう子/金井勇太
<TSUTAYA 解説>
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伊坂幸太郎、石田衣良、本多孝好、人気男性作家による恋愛アンソロジーを映像化した「UULA」オリジナルドラマ。戸田恵梨香、多部未華子、真木よう子の3人が恋に悩む女性を演じたオムニバスストーリー。監督は『余命1ヶ月の花嫁』の廣木隆一。
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映画かと思っていたら、実はソフトバンクモバイルのスマートフォン向け総合エンタメアプリUULAのオリジナルドラマなのだという。しかし、鑑賞という点においては映画もドラマも区別がつくわけではない。内容はと言えば、伊坂幸太郎、石田衣良、本多孝好といったメジャー作家による原作をオムニバスで展開するもの。作家が作家だけに、ハズレも少ないだろうと選んだドラマである。
最初は伊坂幸太郎の「透明ポーラーベア」。
2人のカップルユウキとチホが市電で何処かへと向かう。会話の内容からユウキが福岡へ転勤するのだという。どうやら遠距離恋愛になるらしい。どうにも寂しさを堪えきれないチホ。「今日は転勤の話はなし」と言って、2人で豊橋総合動物園に入って行く。よくあるカップルのデート風景。そこでユウキは偶然、ある男トガシに出会う。それは姉の最後の彼氏だった男。今は別の彼女とやはり動物園に来ている。
ここで、冒頭に北極熊の着ぐるみと戯れる女が出てくる。これが実はユウキの姉。姉はいろいろな男と付き合ってきている。それはミュージシャンだったり、マジシャンだったり。そして別れるたびに旅に出ている。最後に別れた時に出た旅の行先が北極。テレビでは、その北極で身元不明の死体が発見されたと報じられている。ユウキの姉は、実は4年前に旅に出て以来、行方不明になっている。2組のカップルは、北極熊のブースの前に来ると行方不明になった姉のことを思い起こす・・・
2話目は、石田衣良の「魔法のボタン」。
冒頭、リュウスケはベッドから起き上がった女に別れを告げられる。「別の男と結婚する」のだと。呆然とするリュウスケは、それから失意の日々を送る。ある日、幼馴染の萌枝から電話を受け、久しぶりに飲みに行く。萌枝は、幼稚園から高校までずっとリュウスケと一緒。しかし、いつもジャージ姿で化粧っ気のない萌枝は、リュウスケにとっては恋愛対象外だった。
いつものようにジャージ姿で現れた萌枝と飲みに行くリュウスケ。気晴らしになったことから、リュウスケは萌枝にしばらくの間週末にデートしようと誘う。リュウスケは恋のリハビリのため、そして萌枝は女子力アップのため。そして2人は毎週末デートを重ねる。やがてリュウスケは萌枝にスカートを履くように進める。女性らしい格好をして化粧をした萌枝は、あるバーへ行く・・・
3話目は、本多孝好の「Sidewalk Talk」。
登場するのはある夫婦。レストランでディナーを共にするが、妻が夫に差し出したのは離婚届。どうやら夫婦で最後の晩餐らしい。会話の合間に挟まれるのは、2人のこれまでの出会いからのエピソード。女はバリバリのキャリアウーマン。彼女を狙う友人から当て馬として誘われた男はそこで初めて女と出会う。面白くない男は途中で席を立つが、表で見つけた花を手折って女に手渡す。これが女の心を掴む。
プロポーズは女から。外資系企業で働く女は、建築士の男より収入も多い。休日には2人で散歩し、買ったパンを分け合って食べる仲睦まじさ。一度妊娠するも、流産してしまうといった過去がある。なぜ離婚に至ったのかは詳しく語られない。やがてディナーは最後のデザートへと移り、2人は食事を終える。互いに指輪を外し、いよいよ別々に帰ろうとするが、その時女がつけていた香水に男が気づく。その香水には2人の間で約束があった・・・
いずれも派手ではないが、じんわりと心に染み入るような静かな恋愛が描かれる。人の数だけドラマはあり、恋愛風景もまたさまざまな景色がある。人気作家の手による恋愛ドラマはどれも心が和む。しかし、個人的には最後の夫婦の物語が良かったと思う。互いに本音を語れない。ただ、2人の歴史がその本音を炙り出す。並んで歩く2人の姿に、どこか羨ましさが残る。
恋愛ドラマも若い頃のようなものではなく、最後の夫婦の物語のようなものに親密感を覚える。これは観る人個人の好みが反映されると思う。観る人それぞれで、心に残るものも違うだろう。たまには静かな恋愛に心を浸してみたいと思わせてくれるドラマである・・・
評価:★★☆☆☆